(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 45/47 20180101AFI20240326BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20240326BHJP
F21V 29/67 20150101ALI20240326BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20240326BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20240326BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20240326BHJP
F21S 41/155 20180101ALI20240326BHJP
F21S 41/16 20180101ALI20240326BHJP
F21S 41/255 20180101ALI20240326BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240326BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240326BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240326BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240326BHJP
【FI】
F21S45/47
F21V29/503
F21V29/67 200
F21V29/76
F21V29/83
F21S41/148
F21S41/155
F21S41/16
F21S41/255
F21Y115:10
F21Y115:30
F21Y115:15
F21W102:13
(21)【出願番号】P 2020080443
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131054(WO,A1)
【文献】特開2016-031777(JP,A)
【文献】特開2019-003908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0091632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/47
F21V 29/503
F21V 29/67
F21V 29/76
F21V 29/83
F21S 41/148
F21S 41/155
F21S 41/16
F21S 41/255
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21Y 115/15
F21W 102/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体型の光源と、
前記光源がベース部の上下いずれか一方の面に配設されたヒートシンクと、
前記光源から前記一方に放射される放射光を車両前方に反射するリフレクタと、
前記リフレクタからの反射光を車両前方に投射するレンズと、を備える車両用灯具であって、
前記レンズと前記ヒートシンクとの間に、車両前後方向に冷却風を流すように冷却ファンが配設されて
おり、
前記冷却ファンの前方には、前記リフレクタからの反射光の一部を遮光する遮光部を備えたシェードが設けられ、
前記シェードには、車両前方から見て前記冷却ファンの回転翼の一部を包含する開口部が形成されており、
前記シェードの前記開口部は、車両前方から見て前記冷却ファンの前記回転翼の外周の前記一方側に近接して取り囲むとともに、前記冷却ファンの前記回転翼の外周の前記一方とは反対の他方側については開放する、車両用灯具。
【請求項2】
前記冷却ファンは、その回転軸方向が前記レンズの光軸方向と一致するように配設されている、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ヒートシンクには、前記ベース部の前記一方の面と反対の他面において、それぞれ車両前後方向に延びる複数の放熱フィンが設けられており、
車両前後方向に見て前記放熱フィンおよび前記冷却ファンが重複している、
請求項1または2のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記ヒートシンクには、上下方向に見て前記光源を含むように、前記ベース部の前記他面から膨出する厚肉部が形成され、
前記厚肉部における車両前方側に、前記冷却ファンからの冷却風が衝突するように壁面が形成されている、
請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記厚肉部の壁面は、前記ベース部の前記他面から離れるに連れて車両後方に位置するように傾斜し、その傾斜角度が前記他面に対して45度以上かつ90度未満とされている、
請求項4に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの放射光をリフレクタにより反射させて車両前方に照射するようにした車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、いわゆるリフレクタタイプの灯具ユニットを備えた車両用灯具が知られている。これは、半導体型の光源と、その上下いずれか一方に配置されて、光源から放射される光を所定の配光パターンとして車両前方に照射するリフレクタと、を備えている。また、リフレクタの内側には熱が籠りやすいので、光源をヒートシンクのベース部に配置して、放熱性を高めることが行われている。
【0003】
例えば特許文献1に記載のものでは、金属製支持部材(ヒートシンクに相当)の天板の上面に光源であるLEDの基板が搭載される一方、天板の下面には多数の放熱フィンが突設され、さらに、その下方に冷却ファンを配置している。すなわち、放熱フィンの一部の突出長さを短くすることによって、矩形断面の収容部を画成し、ここに冷却ファンユニットを収容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記従来例では、冷却ファンユニットの収容部を画成するために、放熱フィンの一部の突出長さを短くしているので、その分は放熱性が低下してしまうことは避けられない。一方で、仮に放熱フィンの一部の突出長さを短くせずに、その下方に冷却ファンを配置しようとすると、灯具ユニットの大型化を招き、車両への搭載性が損なわれるおそれがある。
【0006】
かかる問題点を考慮して本発明の目的は、リフレクタ型の車両用灯具において、ヒートシンクのベース部の一方の面に光源を配置する場合に、放熱フィンの大きさを十分に確保して、放熱性を高めるとともに、大型化を招くことなく、冷却ファンによって冷却性能を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、以下のような態様を有する。
(1)本発明に係る1つの態様は、半導体型の光源と、該光源がベース部の上下いずれか一方の面に配設されたヒートシンクと、前記光源から前記一方に放射される放射光を車両前方に反射するリフレクタと、該リフレクタからの反射光を車両前方に投射するレンズと、を備える車両用灯具であって、前記レンズと前記ヒートシンクとの間に、車両前後方向に冷却風を流すように冷却ファンが配設されているものである。
【0008】
(2)前記(1)の態様において、前記冷却ファンの前方には、前記リフレクタからの反射光の一部を遮光する遮光部を備えたシェードが設けられ、前記シェードには、車両前方から見て前記冷却ファンの回転翼の一部を包含する開口部が形成されていてもよい。
【0009】
(3)前記(1)または(2)の態様において、前記冷却ファンは、その回転軸方向が前記レンズの光軸方向と一致するように配設されていてもよい。
【0010】
(4)前記(1)~(3)のいずれかの態様において、前記ヒートシンクには、前記ベース部の前記一方の面と反対の他面において、それぞれ車両前後方向に延びる複数の放熱フィンが設けられており、車両前後方向に見て前記放熱フィンおよび前記冷却ファンが重複していてもよい。
【0011】
(5)前記(4)の態様において、前記ヒートシンクには、上下方向に見て前記光源を含むように、前記ベース部の前記他面から膨出する厚肉部が形成され、該厚肉部における車両前方側に、前記冷却ファンからの冷却風が衝突するように壁面が形成されていてもよい。
【0012】
(6)前記(5)の態様において、前記厚肉部の壁面は、前記ベース部の前記他面から離れるに連れて車両後方に位置するように傾斜し、その傾斜角度が前記他面に対して45度以上かつ90度未満とされていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リフレクタ型の車両用灯具において、ヒートシンクのベース部の一方の面に光源を配置する場合に、他方の面に設ける放熱フィンを十分に大きくして、放熱性を高めるとともに、ヒートシンクと車両前方のレンズとの間に冷却ファンを配設したことで、大型化を招くことなく、冷却性能をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両の一例を示す平面図である。
【
図2】灯具ユニットの構成を説明するための一部分解斜視図である。
【
図3】灯具ユニットの構成を説明するための縦断面図である。
【
図4】灯具ユニットのレンズ等を外して示す正面図である。
【
図5】ヒートシンクの構造を説明するための横断面図である。
【
図6】冷却風の流れを説明するために
図3の一部を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、添付図面では、見易さのために、複数存在する同一属性の部位には、一部のみしか参照符号が付されていない場合がある。
【0016】
また、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両に乗車する運転者から見た方向を示す。また、「上」、「下」は鉛直方向での「上」、「下」でもあり、「左」、「右」は水平方向での「左」、「右」でもある。また、車両外側とは、車両の左右方向の中心を通る車両の前後軸に対して、車両の左右方向で外側を指し、車両内側とは、車両の左右方向で当該前後軸に近い側を指す。
【0017】
[車両用灯具の全体的な構成]
図1は、本実施形態の車両用灯具を備えた車両102の平面図である。図示のように本実施形態の車両用灯具は、車両102の前側の左右のそれぞれに設けられる前照灯101L、101Rであるが、以下では単に車両用灯具と記載する。
この車両用灯具は、前側に開口したハウジング(図示せず)と、開口を覆うようにハウジングに取り付けられるアウターレンズ(図示せず)とを備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に灯具ユニット10(
図2、3を参照)が配置されている。
【0018】
図2は、本実施形態の車両用灯具の灯具ユニット10の構成を示す一部分解斜視図であり、
図3は灯具ユニット10をレンズ50の光軸Zを通る鉛直面において切断した断面図であり、
図4は、シェード60、冷却ファン70、放熱フィン32の相互の位置関係を説明するために、レンズ50等を外して示す灯具ユニット10の正面図である。
なお、
図3では見やすくするために断面上に位置するものだけを記載し、断面よりも奥側に見える部分についての記載を省略している。
【0019】
本実施形態の灯具ユニット10は、一例としてロービーム用のものであり、
図2及び
図3に表れているように、光源20と、光源20を配置するヒートシンク30と、ヒートシンク30上に配置されたリフレクタ40と、光源20よりも前方に配置されたレンズ50と、レンズ50および光源20の間に配置されたシェード60と、レンズ50およびヒートシンク30の間に配設された冷却ファン70と、を備えている。
【0020】
(光源20)
光源20は、基板上に発光チップが設けられた半導体型の光源であり、本実施形態ではLEDを用いているが、LDやEL(有機EL)等を用いてもよい。基板に用いられる発光チップの形状や個数は特に限定されるものではなく、例えば、正方形状の発光チップを1つだけ基板上に配置してもよいし、複数横に並べるように基板上に配置して、長方形状の発光面を形成してもよいし、長方形状の発光チップを1つだけ基板上に配置してもよい。
【0021】
(ヒートシンク30)
ヒートシンク30は、光源20を配置するベース部31と、ベース部31から鉛直下側に突出するとともに、それぞれ前後方向に延びて、車幅方向に並ぶように設けられた複数(図の例では9個)の放熱フィン32と、を備えている。また、
図2に表れているように、ベース部31の前端から一部の放熱フィン32に繋がるように垂下し、冷却ファン70を取り付けるためのネジ固定孔33aが設けられた取付部33も設けられている。
【0022】
また、ベース部31の前端面にもネジ固定孔31aが開口しており、前記取付部33のネジ固定孔33aと併せて2つのネジ固定孔31a,33aに、それぞれネジ34が螺合されることにより、ヒートシンク30に冷却ファン70が取り付けられるようになっている。なお、
図3に表れているようにベース部31には、光源20の冷却性能をさらに高めるための厚肉部35が設けられているが、この点については後述する。
【0023】
(リフレクタ40)
リフレクタ40は、
図2、3に表れているように、光源20上を覆う半ドーム状とされ、ヒートシンク30のベース部31に取り付けられている。一例としてリフレクタ40は、回転放物面の下部を除いた形状であり、その内面には、光源20からの光を所定の配光パターンを形成するように前方側に反射する反射面が設けられている。なお、反射面の基準焦点は、光源20の発光面の中心又はその近傍に位置づけられている。
【0024】
(レンズ50)
レンズ50は、リフレクタ40によって反射された光源20からの光を前方に投射するものであり、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びガラス等の透明な材料で形成されている。一例としてレンズ50は、
図3に示すように、前方に突出した曲面からなる出射面50aと略平坦な入射面50bとを備えた非球面レンズであるが、非球面レンズに限定されない。
【0025】
また、
図2に表れているように、レンズ50の外周部には、レンズホルダ52に挟持されるフランジ部51が設けられている。レンズホルダ52は、概略円筒状のレンズ固定部53を備え、このレンズ固定部53の周縁部にレンズ50のフランジ部51が当接する。また、周方向に間隔を空けて設けられた複数の挟持片53aによって、周縁部との間にレンズ50のフランジ部51が挟持される。
【0026】
(シェード60)
図2,3に表れているようにシェード60は、リフレクタ40からの反射光の一部を遮光する遮光部61と、この遮光部61を支持するブラケット部62と、を備えている。遮光部61は、左右に延びる長方形の板状とされ、その上端部が、ロービーム配光パターンのカットオフラインを生成する形状とされている。また、遮光部61は、その前端部から後方に向かうほど上方に位置するように傾斜している。
【0027】
一方、シェード60のブラケット部62は、全体としては矩形状とされ、その左右に設けられた一対のフランジ部62aが、ハウジング側の部材に取り付けられるようになっている。また、ブラケット部62には、
図4に示すように前方から見て冷却ファン70の回転翼71全体を包含する開口部62bが形成されており、この開口部62bを介して前方から冷却ファン70に空気が供給される。
【0028】
すなわち、
図2,4に表れているように、開口部62bの断面形状は下方に開放された逆U字状であり、冷却ファン70の下半分については大きく開放する一方、上半分については回転翼71の外周を近接して取り囲む半円形状とされている。これは、リフレクタ40で上方を覆われた光源20の周囲に、暖かい空気が滞留しやすいのを抑制するためである。また、下半分が開放されているのは、上下方向を省スペース化するためである。
【0029】
(冷却ファン70)
図2に表れているように冷却ファン70は、矩形状のフレーム72内に複数のステーを介して電動モータ73を配設し、その出力軸に一体回転するように回転翼71を固定してなる。フレーム72の四隅にはそれぞれ取付け孔72aが設けられ、そのうちの対角線上に位置する2つにそれぞれネジ34を挿入して、ヒートシンク30のネジ固定孔31a,33aに螺合させることにより、冷却ファン70が取り付けられる。
【0030】
図に示す例ではフレーム72の四隅の取付け孔72aがそれぞれ、回転翼71の回転軸z1(
図3にのみ示す)と平行に延びていて、冷却ファン70は、その回転軸z1方向がレンズ50の光軸Zの方向と一致するように配設される。すなわち、冷却ファン70をヒートシンク30に取り付けるときに、前記のネジ34をネジ固定孔31a,33aに螺合させる方向が、光軸Zの方向になるので、作業性が高い。
【0031】
上述したようにヒートシンク30には、ベース部31から鉛直下側に突出する複数の放熱フィン32がそれぞれ前後方向に延びて設けられており、
図3に表れているように、冷却ファン70のフレーム72の上側の枠部分がヒートシンク30のベース部31と略同じ高さに取り付けられ、その下側に位置する回転翼71は、放熱フィン32と同じ高さに位置付けられる。
【0032】
つまり、
図4に示すように前方から見ると、シェード60の開口部62bを通して冷却ファン70の回転翼71が、ヒートシンク30の放熱フィン32と重複している。このことで、回転翼71から送り出される冷却風が効率よく、前後方向に延びる複数の放熱フィン32の間を流れて、放熱を促すようになる。放熱面積が十分に大きいことと、冷却風がスムーズに流れることとで、相乗的に冷却性能が向上する。
【0033】
(ヒートシンクの厚肉部)
そうして大きな放熱フィン32の間を流れる冷却風によって、さらに光源20の冷却性能を高めるために、本実施形態のヒートシンク30には、ベース部31の下面から膨出する厚肉部35が形成されている。この厚肉部35は、
図3に表れているように左右方向に見ると、光源20の基板よりも前後方向に長く、前後方向についてその基板を含むように設けられていて、その前方側には冷却風が衝突する壁面35aが形成されている。
【0034】
また、
図5に表れているように前後方向に見ると、厚肉部35は、左右方向については光源20を含むように、また基板一部を含むように形成されている。つまり、厚肉部35は、上下方向に見て光源20(実施形態では光源20の基板の一部)を含む範囲において、ベース部31の下面から下方に膨出しており、これにより光源20の周囲の局所的な放熱性を高めることができる。
【0035】
すなわち、上述したようにヒートシンク30には十分な大きさの放熱フィン32が設けられ、その放熱面積が大きくなっているとともに、前後方向に延びる複数の放熱フィン32の間を冷却風が流れることによって、ヒートシンク30全体としての放熱性は十分に確保されている。一方で冷却風の流れがスムーズであるがゆえに、光源20の周囲に関して局所的に熱交換が不十分になって、放熱不足になるおそれがあった。
【0036】
これに対して、前記のように光源20の配置に対応するようにベース部31に厚肉部35を設け、その前方側に壁面35aを形成すると、
図6に模式的に示すように、冷却風の流れが壁面35aに衝突して効果的に熱を奪うようになる。また、厚肉部35の周囲では冷却風が直接当たるとともに、暖かい空気が滞留せず冷却風が当たることで、光源20の周囲の局所的な放熱不足が解消される。
【0037】
この場合、ベース部31の下面に対する壁面35aの傾斜角度θが大き過ぎると、冷却風の流れに淀みを生じてしまい、流速が低下し過ぎることから、却って放熱不足になるおそれがある。一方、傾斜角度θが小さ過ぎると、冷却風の流速を好適に低下させることができない。そこで、本実施形態では、前記壁面35aを下方に向かって後方に位置する傾斜面とし、その傾斜角度θを約60~80度に設定している。
【0038】
こうすることで、
図6に矢印Aとして示すように冷却風は壁面35aに衝突し、適度に乱れを生じて効果的に熱を奪いながら、この壁面35aに沿ってスムーズに下方に向かって流れ、さらに厚肉部35の下方に回り込んで後方に流れてゆく。つまり、壁面35aに衝突した後に好適に流速の低下した冷却風によって、効果的に厚肉部35との熱交換を促進し、放熱性を高めることができる。なお、肉厚部35は、左右方向について基板を含むように形成されていてもよい。
【0039】
[実施形態の車両用灯具が奏する効果]
以上、説明したように本実施形態に係る灯具ユニット10では、
図3、6に表れているようにレンズ50とヒートシンク30との間に、前後方向に冷却風を流すように冷却ファン70を配設しており、従来までのようにヒートシンク30の下方に冷却ファンを配設するのに比べて、放熱フィン32を大きくして放熱性を高めつつも、灯具ユニット10の大型化を招くことがない。
【0040】
また、そうして放熱性を高めた複数の放熱フィン32をそれぞれ前後方向に延びるように設けるとともに、その前方に冷却ファン70を、前方から見て回転翼71が放熱フィン32と重複するように配設している。よって、この冷却ファン70から後方に送り出した冷却風が複数の放熱フィン32の間をスムーズに流れるようになり、相乗的に放熱フィン32からの放熱性を高めることができる。
【0041】
しかも、冷却ファン70の前方に配設されたシェード60には、前方から見て冷却ファン70の回転翼71を包含するように開口部62bが形成されているとともに、この開口部62bの上側は冷却ファン70の回転翼71の近傍を取り囲む半円形状とすることで、光源20の周りの暖かい空気が回り込んで冷却ファン70に吸い込まれることも抑制し、温度の低い空気をヒートシンクの放熱フィンを通して後方に送り出すことができる。
【0042】
さらに、ヒートシンク30のベース部31の下面には、上下方向に見て光源20を含む範囲において下方に膨出するように厚肉部35を設けており、その前方側に形成される壁面35aに冷却風を衝突させるとともに、厚肉部35の下方に回り込む空気の流速を好適に低下させることができる。これにより、冷却風と厚肉部35との熱交換を促進し、光源20周り局所の放熱性も高めることができる。
【0043】
[他の実施形態]
以上、本発明の望ましい実施形態について詳述したが、本発明の構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、ヒートシンク30のベース部31の上面に光源20を配置する一方、下面に放熱フィン32を設けているが、これに限らず、図示しないが、ヒートシンクのベース部の下面に光源を配置し、その下方を覆うようにリフレクタを設ける一方、ベース部の上面に放熱フィンを設けでもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、ヒートシンク30の前方に配設した冷却ファン70の前方にシェード60が設けられており、このシェード60のブラケット部62には前方から見て冷却ファン70の回転翼71全体を包含するように開口部62bが形成されているが、これにも限定されず、開口部62bは回転翼71の一部のみを包含するように形成されていてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、冷却ファン70とヒートシンク30の放熱フィン32とが、前後方向に見て重複するように設けられ、かつ、放熱フィン32は前後方向に延びるように設けられているが、これには限定されない。
【0046】
さらに、上述した実施形態では、光源20の配置に対応付けて、ヒートシンク30のベース部31の下面から下方に膨出するように厚肉部35を設け、その前方側の壁面35aの傾斜角度θを60~80度としているが、これにも限定されず、傾斜角度θは45~90度としてもよいし、壁面35aや厚肉部35を設けなくてもよい。
【0047】
加えて、上述した実施形態では、レンズ50とヒートシンク30との間に配設する冷却ファン70の回転軸z1方向を、レンズ50の光軸Z方向と一致させているが、これにも限定されず、例えば冷却ファン70の回転軸z1方向をレンズ50の光軸Zの方向よりも少し後上がりにしてもよいし、反対に少し後ろ下がりにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 灯具ユニット
20 光源
30 ヒートシンク
31 ベース部
32 放熱フィン
35 厚肉部
35a 壁面
40 リフレクタ
50 レンズ
60 シェード
61 遮光部
62b 開口部
70 冷却ファン
101L,101R 前照灯(車両用灯具)
102 車両
θ 厚肉部の壁面の傾斜角度
Z レンズの光軸
z1 冷却ファンの回転軸