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特許7459655作業車操作システム、作業車の操作方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】作業車操作システム、作業車の操作方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240326BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B66F9/24 S
B66F11/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020090219
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021185106
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100201352
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 朝子
(72)【発明者】
【氏名】三木 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】河合 清孝
(72)【発明者】
【氏名】白川 友理
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-145632(JP,A)
【文献】特開2010-228905(JP,A)
【文献】特開2007-119176(JP,A)
【文献】特開平06-166500(JP,A)
【文献】特開平07-101698(JP,A)
【文献】特開2022-034625(JP,A)
【文献】特開2022-043706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車を操作するための操作部を有する携帯端末と、
前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の高さに応じて前記操作部による前記作業車の操作を規制する制御部と、
を備える作業車操作システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記携帯端末の高さを、前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の上下方向への変位量に基づいて算出する、
請求項1に記載の作業車操作システム。
【請求項3】
前記携帯端末は、3軸方向それぞれの加速度成分を測定する加速度センサを有し、
前記制御部は、前記加速度センサの前記3軸方向それぞれの加速度成分に基づいて、前記携帯端末の上下方向への変位量を算出する、
請求項2に記載の作業車操作システム。
【請求項4】
前記携帯端末は、姿勢を検出する姿勢検出センサを有し、
前記制御部は、前記姿勢検出センサが検出した前記携帯端末の姿勢から前記加速度センサの3軸の向きを求め、求めた前記3軸の向きと前記加速度センサの前記3軸方向それぞれの加速度成分に基づいて、前記携帯端末の上下方向への変位量を算出する、
請求項3に記載の作業車操作システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記操作部に入力された、前記携帯端末の持ち運びが始まる前又は始まるときの、前記携帯端末の地表面からの初期高さを、前記操作部から取得する第一取得部と、
前記第一取得部が前記携帯端末の地表面からの初期高さを取得した後、一定の期間が経過する毎に、前記加速度センサが測定した前記3軸方向それぞれの加速度成分を前記加速度センサから取得する第二取得部と、
前記第二取得部が前記3軸方向それぞれの加速度成分を取得する毎に、取得した前記3軸方向それぞれの加速度成分と前記携帯端末の姿勢により決まる加速度センサの向きに基づいて、前記携帯端末の加速度ベクトルを求め、求めた加速度ベクトルの上下方向の加速度成分から重力加速度を減算して前記携帯端末の上下方向の加速度成分を算出する加速度算出部と、
前記加速度算出部が前記携帯端末の上下方向の加速度成分を算出する毎に、算出した前記携帯端末の上下方向の加速度成分が第一閾値よりも大きいか否かを判定し、前記第一閾値よりも大きいと判定した場合に、前記携帯端末が昇降したと判定する昇降判定部と、
前記携帯端末が昇降したと前記昇降判定部が判定した場合に、前記加速度算出部が算出した前記携帯端末の上下方向の加速度成分に基づいて、前記携帯端末の、前記一定の期間での上下方向への変位量を算出し、算出した前記変位量と前記第一取得部が取得した前記携帯端末の地表面からの初期高さから、前記第二取得部が前記3軸方向それぞれの加速度成分を取得したときの、前記携帯端末の地表面からの高さを算出する高さ算出部と、
前記高さ算出部が算出した携帯端末の地表面からの高さが第二閾値よりも大きいか否かを判定し、前記第二閾値よりも大きいと判定した場合に、前記携帯端末が高所にあると判定して、前記操作部の操作を規制する操作規制部と、
を備える、
請求項3又は4に記載の作業車操作システム。
【請求項6】
前記作業車は、格納姿勢と作業姿勢に姿勢を変化させるブームと、前記ブームの先端に設けられた作業床と、を備え、
前記第二閾値は、前記ブームが格納姿勢であるときの、地表面を基準にした前記作業床の高さの値である、
請求項5に記載の作業車操作システム。
【請求項7】
作業車を操作するための操作部を有する携帯端末を用いた前記作業車の操作方法であって、
前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の高さを求めるステップと、
求めた前記携帯端末の高さに応じて前記操作部による前記作業車の操作を規制するステップと、
を備える作業車の操作方法。
【請求項8】
作業車を操作するための操作部を有する携帯端末を用いた前記作業車を操作するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の高さに応じて前記操作部による前記作業車の操作を規制する制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業車操作システム、作業車の操作方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車は、ブーム、旋回装置等が設けられた作業機を備えるところ、その作業機には、作業性を高めるために、携帯端末によって遠隔操作できるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、オペレータの音声を集音するマイクを備える携帯端末によって操作される作業機が開示されている。この作業機は、音声を認識する音声認識部と、油圧回路に設けられた弁の開度を制御する制御部と、を備える。そして、携帯端末は、集音した音声の信号を作業機の音声認識部に送信し、音声認識部は、その信号から音声を認識する。制御部は、音声認識手段の認識結果に基づいて弁を切り換えて、作業機の各部を駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-355484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車には、安全性を保つため、オペレータがいる場所に応じて、行ってよい操作と行ってはいけない操作がある。例えば、オペレータが作業車上にいる場合、アウトリガの格納は、行ってはいけない操作である。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の作業機では、オペレータがどこにいるかによらず、作業機の各種操作が可能である。その結果、特許文献1に記載の作業機では、オペレータは、自身のいる場所と行おうとする操作があっているか否かを考慮して、作業機を遠隔操作する必要がある。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、オペレータが自身のいる場所を考慮しないで、安全に操作することができる作業車操作システム、作業車の操作方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の第一の観点に係る作業車操作システムは、
作業車を操作するための操作部を有する携帯端末と、
前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の高さに応じて前記操作部による前記作業車の操作を規制する制御部と、
を備える。
【0009】
前記制御部は、前記携帯端末の高さを、前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の上下方向への変位量に基づいて算出してもよい。
【0010】
前記携帯端末は、3軸方向それぞれの加速度成分を測定する加速度センサを有し、
前記制御部は、前記加速度センサの前記3軸方向それぞれの加速度成分に基づいて、前記携帯端末の上下方向への変位量を算出してもよい。
【0011】
前記携帯端末は、姿勢を検出する姿勢検出センサを有し、
前記制御部は、前記姿勢検出センサが検出した前記携帯端末の姿勢から前記加速度センサの3軸の向きを求め、求めた前記3軸の向きと前記加速度センサの前記3軸方向それぞれの加速度成分に基づいて、前記携帯端末の上下方向への変位量を算出してもよい。
【0012】
前記制御部は、
前記操作部に入力された、前記携帯端末の持ち運びが始まる前又は始まるときの、前記携帯端末の地表面からの初期高さを、前記操作部から取得する第一取得部と、
前記第一取得部が前記携帯端末の地表面からの初期高さを取得した後、一定の期間が経過する毎に、前記加速度センサが測定した前記3軸方向それぞれの加速度成分を前記加速度センサから取得する第二取得部と、
前記第二取得部が前記3軸方向それぞれの加速度成分を取得する毎に、取得した前記3軸方向それぞれの加速度成分と前記携帯端末の姿勢により決まる加速度センサの向きに基づいて、前記携帯端末の加速度ベクトルを求め、求めた加速度ベクトルの上下方向の加速度成分から重力加速度を減算して前記携帯端末の上下方向の加速度成分を算出する加速度算出部と、
前記加速度算出部が前記携帯端末の上下方向の加速度成分を算出する毎に、算出した前記携帯端末の上下方向の加速度成分が第一閾値よりも大きいか否かを判定し、前記第一閾値よりも大きいと判定した場合に、前記携帯端末が昇降したと判定する昇降判定部と、
前記携帯端末が昇降したと前記昇降判定部が判定した場合に、前記加速度算出部が算出した前記携帯端末の上下方向の加速度成分に基づいて、前記携帯端末の、前記一定の期間での上下方向への変位量を算出し、算出した前記変位量と前記第一取得部が取得した前記携帯端末の地表面からの初期高さから、前記第二取得部が前記3軸方向それぞれの加速度成分を取得したときの、前記携帯端末の地表面からの高さを算出する高さ算出部と、
前記高さ算出部が算出した携帯端末の地表面からの高さが第二閾値よりも大きいか否かを判定し、前記第二閾値よりも大きいと判定した場合に、前記携帯端末が高所にあると判定して、前記操作部の操作を規制する操作規制部と、
を備えてもよい。
【0013】
前記作業車は、格納姿勢と作業姿勢に姿勢を変化させるブームと、前記ブームの先端に設けられた作業床と、を備え、
前記第二閾値は、前記ブームが格納姿勢であるときの、地表面を基準にした前記作業床の高さの値であってもよい。
【0014】
本発明の第二の観点に係る作業車の操作方法は、
作業車を操作するための操作部を有する携帯端末を用いた前記作業車の操作方法であって、
前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の高さを求めるステップと、
求めた前記携帯端末の高さに応じて前記操作部による前記作業車の操作を規制するステップと、
を備える。
【0015】
また、本発明の第三の観点に係る作業車を操作するためのプログラムは、
作業車を操作するための操作部を有する携帯端末を用いた前記作業車を操作するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記携帯端末が持ち運ばれたときの、前記携帯端末の高さに応じて前記操作部による前記作業車の操作を規制する制御部、
として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、制御部が、携帯端末が持ち運ばれたときの、携帯端末の高さに応じて操作部による作業車の操作を規制する。携帯端末を持ち運ぶのはオペレータであることから、制御部は、オペレータがいる高さ方向の位置に応じて操作を規制することになる。その結果、オペレータは、自身のいる場所を考慮しないで、安全に作業車を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る作業車操作システムの操作対象である高所作業車の側面図である。
図2】作業車操作システムのシステム構成図である。
図3】作業車操作システムのハードウエア構成図である。
図4】作業車操作システムが備える携帯端末に設けられた制御部のブロック図である。
図5】作業車操作システムが実施する作業車操作処理のフローチャートである。
図6】作業車操作処理で実施される初期設定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る作業車操作システム、作業車の操作方法及びプログラムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。
【0019】
実施の形態に係る作業車操作システムは、携帯端末を用いて高所作業車を遠隔操作するシステムである。まず、図1を参照して、操作対象の高所作業車の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る作業車操作システムの操作対象である高所作業車1の側面図である。
【0021】
図1に示すように、高所作業車1は、車両11の前後左右に設けられたアウトリガ12A-12Dと、車両11の上に設けられた旋回台13と、旋回台13上に設けられたブーム14と、ブーム14の先端に設けられたバケット15と、操作装置16と、を備える。
【0022】
アウトリガ12A-12Dは、図示しないが、ボックスと、そのボックスに格納される、或いは、そのボックスから車両11の左右方向に張り出すビームとを有する。また、アウトリガ12A-12Dは、ビームの先端に設けられ、上下方向に伸縮可能なジャッキを有する。アウトリガ12A-12Dは、高所作業時に、ビームがボックスから張り出し、ジャッキが伸長することにより、ジャッキの先端のフロートを接地させて、車両11を安定させる。
【0023】
一方、旋回台13は、図示しないが、旋回歯車と、旋回歯車に噛み合った旋回ピニオンとを有し、旋回ピニオンが旋回モータによって回転することにより旋回する。そして、旋回台13は、旋回することにより、ブーム14を所望の方向に向ける。
【0024】
ブーム14は、起伏シリンダ141によって起伏する。また、ブーム14は、複数の箱型のブーム部142-144が入れ子式に組み合わされ、図示しない伸縮シリンダによって伸縮する。そして、ブーム14の先端には、上述したように、バケット15が設けられている。ブーム14は、起伏し、かつ伸縮することにより、バケット15を車両11から所望の距離だけ離れた位置に移動させる。或いは、所望の高さに移動させる。
【0025】
バケット15は、高所作業を行う作業者を搭乗するための、図示しない作業床を有する。その作業床は、作業者の安全を確保するため、囲いによって囲まれている。そして、バケット15は、上述した旋回台13とブーム14により、所望の高所に移動する。これにより、バケット15は、その所望の高所に作業者を運ぶ。また、バケット15は、図示しない平衡装置を有する。これにより、バケット15は、所望の高所に移動した場合でも、作業床を平衡に保つ。その結果、作業者の安全を確保する。バケット15の移動先は、操作装置16による操作によって決められる。
【0026】
操作装置16は、高所作業車1の運転手、高所作業を行う作業者らのいずれの者でも操作可能とするため、車両11に設けられた車両後端操作部161及び旋回台操作部162と、バケット15に設けられた上部操作部163とを有する。なお、以下、運転手及び作業者らのことをオペレータというものとする。
【0027】
車両後端操作部161は、オペレータが操作することにより、アウトリガ12A-12Dの張り出し、旋回台13の旋回、ブーム14の起伏、ブーム14の伸縮の各動作を高所作業車1に行わせる。また、旋回台操作部162は、オペレータが操作することにより、旋回台13の旋回、ブーム14の起伏、ブーム14の伸縮の各動作を高所作業車1に行わせる。上部操作部163は、オペレータが操作することにより、旋回台13の旋回、ブーム14の起伏、ブーム14の伸縮の各動作のほか、バケット15のスイングの動作を高所作業車1に行わせる。
【0028】
例えば、車両後端操作部161、旋回台操作部162又は上部操作部163は、オペレータが操作することにより、高所作業車1を格納姿勢から作業姿勢に、或いは作業姿勢から格納姿勢に動作させる。ここで、格納姿勢は、ブーム14が車両11の後方に向くと共に倒伏し、かつ最短長さに縮小した姿勢のことであり、作業姿勢は、ブーム14が車両11の後方以外の方向に向き、或いは、ブーム14が起立し、或いは、ブーム14が伸長した姿勢のことである。
【0029】
このように、車両後端操作部161、旋回台操作部162又は上部操作部163は、すなわち、操作装置16は、オペレータが操作することによって、高所作業車1を動作させる。換言すると、高所作業車1を動作させるには、操作装置16を操作する必要がある。
【0030】
しかし、操作装置16から離れた位置から、高所作業車1を見ながら遠隔操作したい要望がある。例えば、アウトリガ12A-12Dの操作は、車両後端操作部161でしかできないが、その操作をアウトリガ12A-12Dの近くで操作したいという要望がある。
【0031】
そこで、高所作業車1には、携帯端末を用いた作業車操作システム100が設けられている。次に図2図4を参照して、作業車操作システム100の構成について説明する。
【0032】
図2は、作業車操作システム100のシステム構成図である。図3は、作業車操作システム100のハードウエア構成図である。図4は、作業車操作システム100が備える携帯端末2に設けられた制御部23のブロック図である。なお、図2に示すXYZの各軸は、携帯端末2が備える加速度センサ211及び角速度センサ212の3軸の各方向を示している。
【0033】
図2に示すように、作業車操作システム100は、高所作業車1を遠隔操作するための携帯端末2と、高所作業車1に設けられ、携帯端末2と無線通信する制御装置3と、を備える。
【0034】
携帯端末2は、オペレータが携帯することが可能な小型かつ軽量な情報端末装置である。携帯端末2は、例えば、スマートフォン、タブレット型コンピュータである。携帯端末2は、図3に示すように、センサ部21、操作部22、制御部23、表示部24、通信部25及び、記憶部26を備える。なお、これら各部は、携帯端末2が備える筐体に収容されている。
【0035】
センサ部21は、携帯端末2がある環境の各種物理量を測定するため、各種センサを備える。詳細には、センサ部21は、加速度センサ211、角速度センサ212、方位センサ213及び気圧センサ214等を備える。
【0036】
加速度センサ211は、いわゆる3軸加速度センサである。加速度センサ211は、携帯端末2の変位及び姿勢を特定するため、携帯端末2に作用する加速度を測定する。詳細には、加速度センサ211は、上記加速度の3軸方向それぞれの加速度成分、すなわち、図2に示すX軸、Y軸、Z軸それぞれの加速度成分を測定する。
【0037】
図3に戻って、角速度センサ212は、ジャイロセンサと呼ばれるセンサである。角速度センサ212は、携帯端末2の姿勢、向きを特定するため、携帯端末2に作用する角速度を測定する。詳細には、その角速度の3軸方向それぞれの角速度成分を測定する。
【0038】
ここで、3軸とは、加速度センサ211の3軸と同様に、X軸、Y軸、Z軸のことである。以下、方位センサ213でも同様である。
【0039】
方位センサ213は、磁気センサ又は電子コンパスと呼ばれるセンサである。方位センサ213は、携帯端末2の向き及び携帯端末2の変位方向を特定するため、地磁気の方向を測定する。すなわち、方位センサ213は、3軸方向それぞれに対する地磁気の方向を測定する。
【0040】
一方、気圧センサ214は、気圧を測定して、携帯端末2の地表面からの高さを特定する。
【0041】
センサ部21は、上述した各種センサによって、測定された加速度、角速度、地磁気の方向、気圧等の物理量のデータを制御部23に送信する。
【0042】
一方、操作部22は、図示しないタッチパネルとマイクを有する。タッチパネルは、オペレータの接触によって入力された信号、情報を出力する。マイクは、オペレータによって入力された音声を音声信号に変換して、変換した音声信号を出力する。
【0043】
操作部22には、タッチパネル又はマイクを用いることにより、上述した高所作業車1の操作装置16と同じ入力をすることが可能である。詳細には、操作部22には、旋回台13の旋回、ブーム14の起伏、ブーム14の伸縮、バケット15のスイング、アウトリガ12A-12Dの張り出し、格納等の高所作業車1の各部を操作する入力を行うことが可能である。
【0044】
操作部22は、このような高所作業車1の各部を操作する入力がタッチパネルとマイクを用いて行われた場合、それらタッチパネルとマイクの出力を制御部23に送信する。
【0045】
制御部23は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリとを含むマイクロコンピュータを備える。CPUは、ROM又は記憶部26に記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、携帯端末2の各部を制御する。
【0046】
例えば、制御部23は、高所作業車1の操作に使用する操作画像を生成して、作成した操作画像の画像信号を表示部24に出力する。また、制御部23は、センサ部21及び操作部22の出力に基づいて生成した各種情報信号を通信部25に出力する。
【0047】
表示部24は、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。表示部24は、制御部23から出力された画像信号に従って画像を表示する。
【0048】
通信部25は、図示しない無線通信回路とアンテナを備え、インターネット、構内ネットワーク又は、車内ネットワーク等のネットワーク4に接続して、高所作業車1の制御装置3と無線でデータ通信を行う。通信部25は、例えば、制御部23から受信した各種情報信号を制御装置3に送信する。
【0049】
図3に戻って、記憶部26は、EEPROM(Electroical Erasable Programmable Read-Only Memory)又はフラッシュメモリ等の記憶装置を有し、高所作業車1を操作するための作業車操作プログラムを記憶する。
【0050】
制御部23のCPUは、記憶部26に記憶された作業車操作プログラムを読み出して実行する。これにより、制御部23は、作業車操作処理を行う。その作業車操作処理では、高所作業の安全性を高めるため、携帯端末2の高さに応じて高所作業車1を操作する操作項目に規制がかかる。制御部23は、この作業車操作処理を行うため、図4に示す、ソフトウエアとして構成される処理ブロックを有する。
【0051】
詳細には、図4に示すように、制御部23は、初期設定部231、センサデータ取得部232、加速度算出部233、昇降判定部234、高さ算出部235及び、操作規制部236を備える。
【0052】
初期設定部231は、作業車操作処理を開始するときの、携帯端末2の地表面からの初期高さを設定する部分である。
【0053】
上述したように、作業車操作処理では、携帯端末2の高さに応じて高所作業車1の操作に規制をかける。しかしながら、センサ部21の気圧センサ214では、携帯端末2を携帯するオペレータが動いたとしても、そのときの携帯端末2の正確な高さの変動を測定することが難しい。そこで、携帯端末2のより正確な高さの変動を測定するため、制御部23では、加速度センサ211が測定した加速度データを用いて高さを演算する。
【0054】
このとき、オペレータが動くことにより、携帯端末2の向きが変わって、加速度センサ211の3軸の向きが変わってしまうことがある。そこで、制御部23では、角速度センサ212が測定した角速度データを用いて、その加速度センサ211の3軸の向きの変化を演算する。そして、演算した3軸の向きの変化から実際の3軸の向きを特定したうえで、上述した、加速度データを用いた高さの演算を行う。
【0055】
しかし、携帯端末2の電源を入れて起動したときの携帯端末2の高さがわからないと、すなわち、初期高さがわからないと、加速度データを用いて高さを演算しても変位が得られるだけである。その結果、携帯時の携帯端末2の高さを求めることができない。
【0056】
また、加速度センサ211の3軸の向きの初期値がわからないと、角速度データを用いて加速度センサ211の3軸の向きの変化を演算しても、向きが変化した結果の、その向きがわからない。すなわち、携帯端末2の初期姿勢がわからないと、角速度データで姿勢変化を演算しても、姿勢変化した後の携帯端末2の姿勢がわからない。
【0057】
そこで、上述した初期設定部231は、起動したときの、携帯端末2の地表面からの初期高さを設定する。また、携帯端末2の初期姿勢を設定する。
【0058】
初期設定部231は、その携帯端末2の初期高さを設定するため、表示部24に、初期高さの入力を促すアナウンスを表示させる。そして、初期設定部231は、タッチパネル又はマイクを用いて入力された、携帯端末2の初期高さを取得する。初期設定部231は、取得した携帯端末2の初期高さを高さ算出部235に送信する。
【0059】
また、初期設定部231は、表示部24に、携帯端末2の静止を促すアナウンスを表示させる。そして、初期設定部231は、その表示があるときに、センサ部21の加速度センサ211から携帯端末2に作用した加速度のデータを取得する。取得された加速度のデータは、そのときに携帯端末2が静止していることから、重力加速度のデータである。初期設定部231は、その重力加速度のデータから上下方向を特定し、特定した上下方向を基準とした携帯端末2の姿勢を求める。より詳細には、初期設定部231は、特定した上下方向をW軸、携帯端末2の左右方向をU軸、前後方向をV軸とするUVW座標系を設定してそのUVW座標系での携帯端末2の姿勢を求める。初期設定部231は、求めた姿勢を初期姿勢として高さ算出部235に送信する。
【0060】
一方、センサデータ取得部232は、初期設定部231の設定後、一定の期間が経過する毎に、センサ部21の加速度センサ211から携帯端末2に作用した加速度の3軸方向それぞれの加速度成分データを取得する。また、センサデータ取得部232は、これとあわせて、角速度センサ212から携帯端末2に作用した角速度の3軸方向それぞれの角速度成分データを取得する。そして、センサデータ取得部232は、取得した加速度成分データ及び角速度成分データを、データを取得する毎に、加速度算出部233に送信する。
【0061】
加速度算出部233は、センサデータ取得部232が取得した加速度センサ211のデータから加速度を算出する部分である。加速度算出部233は、加速度を算出するときの前提となる加速度センサ211の3軸の向きを求めるために、センサデータ取得部232の角速度成分データを受信し、その角速度成分データに基づいて、センサデータ取得部232が角速度成分データを取得したときの携帯端末2の姿勢を求める。
【0062】
詳細には、加速度算出部233は、受信した角速度成分データから携帯端末2の姿勢変化を求める。そして、加速度算出部233は、センサデータ取得部232が角速度成分データを前回取得したときに求めた携帯端末2の前回姿勢に、求めた姿勢変化を加えることにより、携帯端末2の今回姿勢を求める。
【0063】
なお、前回姿勢に姿勢変化を加える演算からわかるように、求めた今回姿勢は、上述した初期姿勢のUVW座標系での姿勢である。
【0064】
加速度算出部233は、求めた携帯端末2の姿勢から加速度センサ211の3軸の向きを求める。詳細には、上記のUVW座標系でのX軸、Y軸、Z軸の向きを求める。さらに、加速度算出部233は、センサデータ取得部232の加速度成分データを受信する。そして、加速度算出部233は、受信した加速度成分データと求めた加速度センサ211のX軸、Y軸、Z軸の向きに基づいて、初期姿勢のUVW座標系での加速度ベクトルを求める。加速度算出部233は、求めた加速度ベクトルのW軸方向の加速度成分、すなわち、上下方向の加速度成分から重力加速度を減算する。これにより、加速度算出部233は、携帯端末2の上下方向への加速度を算出する。加速度算出部233は、算出した上下方向への加速度を昇降判定部234に送信する。
【0065】
昇降判定部234は、加速度算出部233が算出した上下方向への加速度を受信し、受信した上下方向への加速度が、一定の値よりも大きいか否かを判定する。これにより、昇降判定部234は、加速度算出部233が算出した上下方向への加速度のうち、ノイズに起因する部分を取り除く。
【0066】
昇降判定部234は、受信した上下方向への加速度が一定の値よりも大きいと判定した場合、携帯端末2が実際に上下方向に昇降したものとする。そして、昇降判定部234は、受信した上下方向への加速度を、携帯端末2の実際の上下方向への加速度として高さ算出部235に送信する。
【0067】
一方、昇降判定部234は、一定の値以下であると判定した場合、上下方向への加速度がノイズに起因するものとし、携帯端末2が実際には上下方向へ昇降しなかったものとする。この場合、昇降判定部234は、携帯端末2の実際の上下方向への加速度が数値0であると高さ算出部235に送信する。
【0068】
高さ算出部235は、受信した携帯端末2の上下方向への加速度に基づいて携帯端末2の上下方向への変位量を算出する。詳細には、高さ算出部235は、受信した携帯端末2の上下方向への加速度を2回の積分をすることにより、携帯端末2の上下方向への変位量を算出する。高さ算出部235は、この変位量の算出を上述した一定の期間が経過する毎に行う。そして、高さ算出部235は、初期設定部231から受信した携帯端末2の初期高さに、一定の期間が経過する毎に計算される変位量を加算していく。これにより、高さ算出部235は、携帯端末2の現在高さを算出する。換言すると、高さ算出部235は、携帯端末2を携帯するオペレータがいる位置の現在高さを求める。高さ算出部235は、算出した携帯端末2の現在高さを操作規制部236に送信する。
【0069】
操作規制部236は、高さ算出部235から受信した携帯端末2の現在高さが一定の高さよりも大きいか否かを判定する。ここで、一定の高さは、ブーム14が上述した格納姿勢のときの、バケット15の作業床の高さと同じに設定されている。これにより、操作規制部236は、携帯端末2を携帯するオペレータがバケット15の作業床に搭乗しているか否かを判定する。
【0070】
操作規制部236は、携帯端末2の現在高さが一定の高さよりも大きいと判定した場合、携帯端末2を携帯するオペレータがバケット15に搭乗しているものと扱う。この場合、操作規制部236は、操作部22による高所作業車1の操作を規制する。
【0071】
詳細には、操作部22には、上述したように、アウトリガ12A-12Dの張り出し、格納、旋回台13の旋回、ブーム14の起伏、ブーム14の伸縮、バケット15のスイング等の、高所作業車1各部の操作をするための入力をすることができるところ、操作規制部236は、これらの入力のうち、アウトリガ12A-12Dの張り出し、格納をする操作の入力を制限して、その入力ができない状態にする。
【0072】
換言すると、操作規制部236は、操作部22を、高所作業車1の操作装置16が備える車両後端操作部161又は、旋回台操作部162と同じ入力ができる状態から、操作装置16が備える上部操作部163と同じ入力しかできない状態にする。これにより、オペレータの操作環境を、オペレータがバケット15に搭乗して上部操作部163を操作する場合と同じ状態にする。その結果、ブーム14が作業姿勢であるときに不用意にアウトリガ12A-12Dが操作されることを防ぐ。これにより、操作規制部236は、高所作業の安全性を高める。
【0073】
操作規制部236は、規制されていない操作が操作部22を用いてされた場合、そのときの操作部22への入力を、図3に示す通信部25に送信する。そして、通信部25が無線通信をすることにより、操作部22に入力された操作内容のデータが制御装置3に送信される。
【0074】
図3に戻って、制御装置3は、携帯端末2と無線通信を行うための通信部31を備える。通信部31は、図示しない無線通信回路とアンテナを備え、ネットワーク4に接続して、携帯端末2の通信部25と無線でデータ通信を行う。
【0075】
一方、制御装置3は、図示しないが、アウトリガ12A-12Dの張り出し、旋回台13の旋回角度、ブーム14の起伏角度、伸縮量等の各部状態を測定する複数のセンサの出力信号を受信する。そして、制御装置3は、それらセンサの出力信号と上述した操作装置16の出力信号に基づいて、高所作業車1の図示しない油圧回路に設けられた制御弁の開閉、開度を制御する。これにより、制御装置3は、各種シリンダ、油圧モータに供給する作動油の流量、流れ方向を調整する。ここで、各種シリンダとは、アウトリガ12A-12Dの上述したビームを張り出させる張り出しシリンダ、ジャッキを伸長させるジャッキシリンダ、ブーム14を起伏させる起伏シリンダ、ブーム14を伸縮シリンダ等の高所作業車1に設けられたシリンダのことである。油圧モータとは、旋回台13を旋回させる旋回モータ等の高所作業車1に設けられた油圧モータのことである。その結果、制御装置3は、アウトリガ12A-12Dの張り出し、格納、旋回台13の旋回、ブーム14の起伏、伸縮等の各動作を実施する。
【0076】
制御装置3は、上述したように、携帯端末2と無線でデータ通信を行う。制御装置3は、センサの出力信号と操作装置16の出力信号に基づくほか、センサの出力信号と携帯端末2から送信されたデータ通信に基づいて、油圧回路の制御弁の開閉、開度を制御する。これにより、制御装置3は、携帯端末2による遠隔操作を実現する。
【0077】
なお、以上、携帯端末2と制御装置3の各部について説明したが、これら各部のうち、初期設定部231は、本明細書、特許請求の範囲でいうところの第一取得部の一例である。また、センサデータ取得部232は、第二取得部の一例である。さらに、昇降判定部234の判定で用いられる一定の値は、第一閾値の一例であり、操作規制部236の判定で用いられる一定の高さは、第二閾値の一例である。また、角速度センサ212は、姿勢検出センサの一例である。
【0078】
次に、図5及び図6を参照して、作業車操作システム100が実施する作業車操作処理について説明する。以下の説明では、携帯端末2が起動したときに、携帯端末2の表示部24に、記憶部26に記憶された作業車操作プログラムを起動するためのアイコンが表示されているものとする。また、作業車操作プログラムが起動された後、表示部24には、作業車操作プログラムを終了させる終了ボタンが常時表示されるものとする。
【0079】
なお、携帯端末2が備える操作部22は、音声認識部を有し、タッチパネルによって入力可能な内容が、マイクを用いた音声入力で行うことができるが、以下の説明では、理解を容易にするため、タッチパネルを用いて入力することを前提に説明する。
【0080】
図5は、作業車操作システム100が実施する作業車操作処理のフローチャートである。図6は、作業車操作処理で実施される初期設定処理のフローチャートである。
【0081】
まず、高所作業車1のオペレータが携帯端末2を携帯する。そして、携帯端末2を起動する。続いて、表示部24に表示された作業車操作プログラムのアイコンをタップする。これにより、制御部23のCPUによって作業車操作プログラムが実行される。その結果、作業車操作処理のフローが開始される。
【0082】
作業車操作処理のフローが開始されると、制御部23は、図5に示すように、まず初期設定処理を行う(ステップS1)。この初期設定処理では、上記の初期設定部231で説明した携帯端末2の初期高さと初期姿勢が設定される。
【0083】
まず、制御部23は、図6に示すように、現在の携帯端末2の高さを入力するための高さ入力画面を表示部24に表示させる(ステップS11)。例えば、制御部23は、「携帯端末2の地表面からの高さを入力して下さい」という表示と共に、携帯端末2の地表面からの高さを入力するための入力欄とテンキーを表示部24に表示させる。
【0084】
その表示を見た携帯端末2を携帯するオペレータは、操作部22のタッチパネルを用いて、現在の携帯端末2の高さを入力する。例えば、オペレータが地上にいて、携帯端末2を腰近傍に携帯する場合、オペレータは、1mと入力する。また、オペレータがバケット15に搭乗した結果、携帯端末2が地上3mにある場合、3mと入力する。
【0085】
制御部23は、ステップS11に続いて、現在の携帯端末2の高さが入力されたか否かを判定する(ステップS12)。制御部23は、現在の携帯端末2の高さが入力されたと判定した場合(ステップS12のYes)、入力された高さを携帯端末2の初期高さHtとする(ステップS13)。そして、制御部23は、ステップS11で実施した高さ入力画面の表示を終了させる(ステップS14)。
【0086】
一方、制御部23は、現在の携帯端末2の高さが入力されていないと判定した場合(ステップS12のNo)、ステップS11に戻り、高さを入力するための画面を表示部24に表示させたままとする。
【0087】
制御部23は、携帯端末2の初期高さHtを得ると、携帯端末2の初期姿勢を得るため、携帯端末2の静止を要求する静止要求画面を表示部24に表示させる(ステップS15)。例えば、制御部23は「携帯端末2を一定の向きにしたまま静止させて下さい」という表示を表示部24に表示させる。
【0088】
制御部23は、上記の静止要求画面を表示部24に表示させた状態で、センサ部21の加速度センサ211から携帯端末2に作用した加速度の3軸方向それぞれの加速度成分データを取得する。このとき、携帯端末2は静止しているので、取得された加速度成分データは、重力加速度のデータである。制御部23は、続いて、取得した加速度成分データから重力加速度が作用する方向を特定する(ステップS16)。換言すると、制御部23は、取得した加速度成分データから上下方向を特定する。そして、制御部23は、その上下方向を基準とした、上述したUVW座標系での加速度センサ211の3軸の方向を3軸の初期方向とする。同様に、UVW座標系での角速度センサ212の3軸の方向を3軸の初期方向とする。制御部23は、加速度センサ211と角速度センサ212の3軸の初期方向を求めることにより、携帯端末2の初期姿勢を特定する(ステップS17)。
【0089】
なお、以下で説明するが、制御部23は、この後のステップで携帯端末2の姿勢を再度特定する。制御部23は、このステップS17で決定した初期姿勢を最初の姿勢Pとする。
【0090】
制御部23は、携帯端末2の初期姿勢を特定した後、上記の静止要求画面の表示を終了させる(ステップS18)。さらに初期設定処理を終了させる。
【0091】
初期設定処理が終了すると、携帯端末2の初期高さHtと最初の姿勢Pが定まる。これにより、携帯端末2の加速度を測定してその加速度から携帯端末2の移動先を求めることが可能な状態となる。また、携帯端末2の角速度を測定して、その角速度から携帯端末2の姿勢変化を求めることが可能な状態となる。その結果、携帯端末2の姿勢が変化する場合でも、携帯端末2の加速度から携帯端末2の移動先をより正確に求めることが可能な状態となる。そこで、制御部23は、作業車操作処理のフローを進める。
【0092】
図5に戻って、制御部23は、初期設定処理の終了後、一定の期間ΔTが経過すると、加速度センサ211及び角速度センサ212から携帯端末2に作用した加速度及び角速度の3軸方向それぞれの加速度成分データ及び角速度成分データを取得する(ステップS2)。
【0093】
続いて、制御部23は、角速度成分データに基づいて携帯端末2の姿勢を特定する(ステップS3)。詳細には、制御部23は、今回取得した角速度成分データから携帯端末2の姿勢変化を求め、前回(n-1回、n=1,2,3・・・)特定した携帯端末2の前回姿勢Pn-1に、求めた姿勢変化を加える。これにより、制御部23は、携帯端末2の姿勢Pを特定する。
【0094】
制御部23は、携帯端末2の姿勢Pを特定した後、その特定した携帯端末2の姿勢Pから加速度センサ211の3軸の向きを特定する(ステップS4)。続いて、制御部23は、3軸の向きとステップS2で取得した加速度の3軸方向それぞれの加速度成分データに基づいて、ステップS17で特定した最初の姿勢Pでの3軸の初期方向を基準とする加速度ベクトルを求める。そして、求めた加速度ベクトルの上下方向の加速度成分から重力加速度を減算する。これにより、制御部23は、携帯端末2の上下方向への加速度を算出する(ステップS5)。
【0095】
次に、制御部23は、ノイズに起因する加速度を取り除くため、算出した携帯端末2の上下方向への加速度が一定の値よりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。
【0096】
携帯端末2の上下方向への加速度が一定の値よりも大きいと判定した場合(ステップS6のYes)、制御部23は、携帯端末2が実際に昇降したと扱い、算出した携帯端末2の上下方向への加速度を昇降による加速度とする(ステップS7)。そして、制御部23は、算出した携帯端末2の上下方向への加速度に基づいて一定の期間ΔTで携帯端末2が上下方向へ変位した変位量Dを算出する。
【0097】
一方、携帯端末2の上下方向への加速度が一定の値以下であると判定した場合(ステップS6のNo)、制御部23は、携帯端末2が実際には昇降しなかったと扱い、昇降による加速度が0であるとする(ステップS8)。そして、制御部23は、変位量Dが0であるとする。
【0098】
制御部23は、変位量Dを算出した後、或いは変位量Dを0とした後、携帯端末2の初期高さHtと前回変位量Dn-1までの変位量を足し合わせた累積変位量とを足し合わせることにより求めた前回高さに、その変位量Dを加算する。これにより、制御部23は、変位量Dから携帯端末2の現在高さを算出する(ステップS9)。
【0099】
次に、制御部23は、オペレータがバケット15の作業床にいるかどうかを確認するため、携帯端末2の現在高さが一定の高さよりも大きいか否かを判定する(ステップS10)。
【0100】
携帯端末2の現在高さが一定の高さよりも大きいと判定した場合(ステップS10のYes)、制御部23は、携帯端末2を携帯するオペレータがバケット15に搭乗しているものとし、操作部22による高所作業車1の操作を規制する(ステップS11)。すなわち、制御部23は、操作部22を用いて高所作業車1の操作をするときの操作対象を限定する。
【0101】
一方、携帯端末2の現在高さが一定の高さ以下と判定した場合(ステップS10のNo)、制御部23は、携帯端末2を携帯するオペレータが地上にいるものとし、操作部22による高所作業車1の操作を規制しない(ステップS12)。換言すると、制御部23は、操作部22を用いて高所作業車1の操作をするときの操作対象を限定しない。
【0102】
制御部23は、ステップS11又はS12の後、ステップS2に戻る。詳細には、制御部23は、ステップS11又はS12の後、前回加速度成分データ及び角速度成分データを取得したときから再び一定の期間ΔTが経過すると、ステップS2を実行する。これにより、制御部23は、再度、ステップS2-S12までのフローを続け、操作部22で操作可能な操作対象を携帯端末2の高さに応じて制限する。
【0103】
上述したように、作業車操作プログラムが起動された後、表示部24には、作業車操作処理を終了させる終了ボタンが常時表示されている。終了ボタンが押されると、作業車操作処理のフローは強制的に終了する。
【0104】
以上のように、実施の形態に係る作業車操作システム100では、携帯端末2が、携帯端末2が持ち運ばれたときの、携帯端末2の現在高さに応じて操作部22による高所作業車1の操作を規制する制御部23を備える。このため、携帯端末2を持ち運ぶオペレータが高所にいる場合でも、その高さに応じて操作部22による高所作業車1の操作が規制される。その結果、オペレータは、自身のいる場所を考慮しないで、安全に高所作業車1を操作することができる。
【0105】
また、制御部23は、加速度センサ211が測定した加速度に基づいて携帯端末2の現在高さを求める。一般にスマートフォン、タブレット型コンピュータ等の携帯端末2は、加速度センサ211を備えるので、これらスマートフォン、タブレット型コンピュータ等を用いて容易にシステムを構築することができる。
【0106】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態では、高さ算出部235は、加速度センサ211が測定した加速度に基づいて携帯端末2の現在高さを求めているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、高さを求めるためのデータを提供するセンサの種類は限定されない。例えば、高さ算出部235は、気圧センサ214が測定した気圧から携帯端末2の現在高さを求めてもよい。また、本発明では、高さ算出部235は、センサ以外のデータをもとに現在高さを求めてもよい。例えば、携帯端末2がGPS(Global Positioning System)衛星から送信されたGPS信号を受信するGPS受信部を備え、高さ算出部235は、そのGPS受信部が受信したGPS信号から携帯端末2の現在高さを求めてもよい。
【0107】
また、上記実施の形態では、高さ算出部235は、携帯端末2の現在高さを、地表面を基準に求めている。換言すると、高さ算出部235は、携帯端末2の現在高さを、地表面からの高さ、いわゆる地上高で求めている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、高さ算出部235、すなわち、制御部23が携帯端末2の高さを求めるときの、基準となる位置は任意である。例えば、制御部23は、携帯端末2の初期位置、すなわち、初期高さHtを基準に、携帯端末2の現在高さを求めてもよい。換言すると、制御部23は、初期高さHtからの携帯端末2の高さ方向への変位量を携帯端末2の現在高さとしてもよい。この場合、初期高さHtは、地表面、バケット15の作業床等の予め定めた箇所の高さであるとよく、その予め定めた箇所で作業車操作システム100を起動するとよい。
【0108】
上記実施の形態では、加速度算出部233は、角速度センサ212が測定した角速度成分データから携帯端末2の姿勢変化を求めている。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、携帯端末2が携帯端末2の姿勢を検出する姿勢検出センサを備えていればよい。そして、加速度算出部233は、その姿勢検出センサの検出結果から携帯端末2の姿勢変化を求めればよい。例えば、姿勢検出センサが方位センサ213であり、方位センサ213が3軸方向それぞれに対する地磁気の方向を測定することにより、加速度算出部233が、3軸の向きの変化、すなわち、携帯端末2の姿勢変化を求めてもよい。この場合、方位センサ213が地磁気の方向である南北方向を基準とした3軸の方向を検出するとよい。さらに、加速度センサ211が重力加速度の方向である上下方向を基準とした3軸の方向を検出するとよい。これにより、加速度算出部233は、南北方向及び上下方向を基準とした携帯端末2の姿勢を検出することができる。
【0109】
上記実施の形態では、操作規制部236が判定するときの、判定基準の一定の高さがブーム14が格納姿勢のときの、バケット15の作業床の高さである。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、判定基準の一定の高さは任意である。例えば、安全性を高めるため、判定基準の一定の高さを、格納姿勢であるときのバケット15の作業床の高さよりも低くしてもよい。
【0110】
上記実施の形態では、制御部23が昇降判定部234を備えるが、本発明はこれに限定されない。本発明では、昇降判定部234は任意の構成である。例えば、加速度センサ211の検出精度が高い場合、昇降判定部234を省略してもよい。
【0111】
上記実施の形態では、操作規制部236が、携帯端末2の制御部23に設けられているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、操作規制部236は、携帯端末2の制御部23、高所作業車1の制御装置3のいずれに設けられてもよい。
【0112】
また、本発明では、操作規制部236が行う処理を含む作業車操作処理それ自体が、携帯端末2が備える制御部23によって実行されてもよいし、高所作業車1が備える制御装置3によって実行されてもよい。また、作業車操作処理は、制御部23と制御装置3が協調することにより、実行されてもよい。従って、作業車操作処理を行う制御部23それ自体が、高所作業車1の制御装置3に設けられもよい。換言すると、初期設定部231、センサデータ取得部232、加速度算出部233、昇降判定部234、高さ算出部235及び、操作規制部236の各部分が、制御装置3に設けられてもよい。また、無線でデータ通信を行うのであれば、初期設定部231、センサデータ取得部232、加速度算出部233、昇降判定部234、高さ算出部235及び、操作規制部236の少なくとも1つが、制御装置3に設けられてもよい。
【0113】
なお、上記の実施の形態では、携帯端末2と制御装置3がネットワーク4に接続されることによりデータ通信を行っているが、携帯端末2と制御装置3が直接データ通信を行ってもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…高所作業車、2…携帯端末、3…制御装置、4…ネットワーク、11…車両、12A-12D…アウトリガ、13…旋回台、14…ブーム、15…バケット、16…操作装置、21…センサ部、22…操作部、23…制御部、24…表示部、25…通信部、26…記憶部、31…通信部、100…作業車操作システム、141…起伏シリンダ、142-144…ブーム部、161…車両後端操作部、162…旋回台操作部、163…上部操作部、211…加速度センサ、212…角速度センサ、213…方位センサ、214…気圧センサ、231…初期設定部、232…センサデータ取得部、233…加速度算出部、234…昇降判定部、235…高さ算出部、236…操作規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6