(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】レーザはんだ付け方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20240326BHJP
B23K 1/005 20060101ALI20240326BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H05K3/34 507E
B23K1/005 A
B23K1/00 330E
(21)【出願番号】P 2020099421
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】豊田 裕一
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-15477(JP,A)
【文献】特開昭58-64784(JP,A)
【文献】特開昭60-145264(JP,A)
【文献】特開2007-67165(JP,A)
【文献】特開2011-228635(JP,A)
【文献】特開2014-198373(JP,A)
【文献】特開2006-289464(JP,A)
【文献】特開2013-187411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00―3/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付け対象となる基板(2)のはんだ付部に対し、レーザヘッド(10)からレーザ光を照射してはんだ付けを行うレーザはんだ付け方法であって、
はんだ付けを行う位置へ前記レーザヘッドを前記基板に対して相対移動させる移動工程と、
前記移動工程での移動先となる個々の前記はんだ付部に対応するはんだ付けの条件であって
、前記レーザ光によるはんだ付けに関するはんだ付け条件
として、当該移動先でのレーザ光の照射に係る制御パラメータと、当該はんだ付部へのはんだ材料の供給に係る制御パラメータと、の少なくとも一方を設定する設定工程と、
前記はんだ付部に対応する前記はんだ付け条件が設定されている場合に、はんだ付けを開始する開始条件が成立したものとして、前記レーザ光を照射してはんだ付けを行うはんだ付け工程と、を備え、
前記移動工程中から
前記移動先のはんだ付部に対応した前記はんだ付け条件を設定することにより、当該移動工程と当該設定工程とを並行して行い、前記はんだ付けを行う位置への前記相対移動が完了したことを前記開始条件として含むレーザはんだ付け方法。
【請求項2】
前記はんだ付けを行う位置への前記レーザヘッドの相対移動が完了し、且つ前記はんだ付け条件の設定を終えた時点で、前記レーザ光を照射してはんだ付けを開始する請求項1記載のレーザはんだ付け方法。
【請求項3】
前記はんだ付け条件は、前記レーザ光の照射に係る制御パラメータと、前記はんだ付部へのはんだ材料の供給に係る制御パラメータと、を含む請求項1又は2記載のレーザはんだ付け方法。
【請求項4】
一の前記基板における複数の前記はんだ付部に対応させて複数の前記はんだ付け条件の設定を行う請求項1から3の何れか一項記載のレーザはんだ付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザはんだ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板に電子部品を実装する際に、その基板のはんだ付け部に対し、レーザヘッドからレーザ光を照射してはんだ付けを行うレーザはんだ付け方法が採用されている(例えば特許文献1参照)。
具体的には例えば、基板におけるスルーホール周囲のランドと電子部品の端子とをはんだ付けするはんだ付部として、レーザ光の熱ではんだを溶融させてはんだ付けを行う。このレーザはんだ付け方法では、はんだごてを用いた方法では対応できないような極小箇所でも非接触ではんだ付けを行うことができ、又、はんだボールの発生を抑制しつつ基板への負荷の低減を図ることができる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレーザはんだ付け方法にあっては、レーザ光による基板の焼け焦げや、熱引き等に起因するはんだ付け不良といった不具合が生じうる。そこで、基板におけるランド径等に対応させて、レーザ出力等のはんだ付け条件をはんだ付部毎に設定する或いは切替ることが考えられる。
しかしながら、実際の製造工程では例えば、一の基板における十数箇所にわたってはんだ付けが行われ、各々の箇所に対応したはんだ付け条件の設定を、多数の基板について行うものとすれば、その条件の切替えだけで多くの時間を要することとなる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、はんだ付部に対応したはんだ付け条件の設定に伴う時間の増大を抑制することができ、はんだ付けの信頼性を向上させることができるレーザはんだ付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、設定工程で個々のはんだ付け部に対応させたはんだ付け条件を設定することができるとともに、そのはんだ付け条件の設定とレーザヘッド(10)の相対移動とを並行して行うことができ、はんだ付け条件の設定をレーザヘッドの相対移動後に行うものに比して時間の短縮を図ることができる。
また、はんだ付けを行う位置へのレーザヘッドの相対移動が完了したことを開始条件として含むため、レーザヘッドの相対移動中にレーザ光を照射するといった不具合を生じさせることなく、好適なタイミングではんだ付けを開始することができ、総じて信頼性の高い接続を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態におけるレーザはんだ付け方法を説明するための、装置全体の概略構成を示す模式図
【
図2】本設備における主制御装置、供給制御装置及びレーザ制御装置の協働による処理の流れを示す図
【
図3】はんだ付け条件の設定とレーザヘッドの相対移動のタイミングを示すタイムチャート
【
図4】従来構成において、はんだ付けを開始する際の動作タイミングを説明するためのタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に模式的に示すレーザはんだ付け装置1は、はんだ付けを行うためのレーザ光を照射するレーザヘッド10と、そのはんだ付け対象となる基板2がセットされる基台11とを備える。
前記基板2は、電子部品3が実装される矩形板状の回路基板であり、板厚方向に貫通する複数のスルーホール4、及びスルーホール4各々の周囲に設けられたランド5を有する。基板2のスルーホール4に挿通された電子部品3の端子3aとランド5は、はんだを介して電気的に接続されるはんだ付部とされている。
【0009】
図示は省略するが、1つの基板2には例えば12箇所のはんだ付部が存するものとし、
図1は便宜上、1箇所のはんだ付部を代表して示すものとする。以下では、同図のはんだ付部における電子部品3の端子3a先端側を上方とし、その反対側を下方とする。また、
図1において上下方向となる基板2の板厚方向をZ方向とする。更に、基板2周辺部のうちの一辺部に沿う同図の左右方向をX方向、同図の紙面と直交する方向をY方向とする。
【0010】
レーザはんだ付け装置1において、レーザヘッド10は、例えば図示しないロボットアームを移動手段として、基板2に対しX方向、Y方向、及びZ方向への相対移動が可能である。この場合、レーザヘッド10は、多関節の前記ロボットアームの先端部に設けられ、各アームの駆動により、レーザ光の照射領域が、はんだ付けを行う端子3a及びランド5に合わさるように相対移動される(レーザ光の光軸O参照)。なお、係るレーザヘッド10の移動工程において、基板2のセット部たる基台11のセット面11aを、所謂XYテーブルとして当該基板2ごと移動させるようにしてもよい。以下では、レーザヘッド10の「相対移動」を単に「移動」とも称する。
【0011】
図1に符号12で示す糸状のはんだは、その供給源をはんだ供給装置13とする糸はんだ12である。はんだ供給装置13は、前記ロボットアームの先端側に設けられたはんだガイド13aを含む。これにより、はんだ供給装置13は、糸はんだ12をはんだガイド13aでガイドしつつ、はんだ付部へ向けて所定方向から繰り出すように構成されている。なお、
図1では説明の便宜上、はんだガイド13aとレーザヘッド10を、互いに離間した位置に示しているが、はんだガイド13aは、ロボットアームによりレーザヘッド10と共に移動されるものとする。
【0012】
レーザはんだ付け装置1には、周辺の設備として例えば基板2を搬入・搬出するための搬入用ベルトや搬出用ベルト等が付設されており、係る周辺の設備を含む設備全体を、設備15或いは本設備15と称する。本設備15では、搬入用ベルトを介してセット面11aへ基板2を搬入する搬入工程及び搬出用ベルトを介して設備外へ基板2を搬出する搬出工程の他、前記レーザヘッド10の移動工程、後述するはんだ付け条件を設定する設定工程等を含む一連の工程が自動的に行われるようになっている(後述の
図2参照)。
【0013】
ここで、
図1に示す設備15全体の制御を司る主制御装置16は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、ROM、RAM等からなる記憶部を有する。主制御装置16には、前記ロボットアーム等における各種アクチュエータや図示しない操作入力部が接続されるとともに、レーザ制御装置17、供給制御装置18等が接続されている。主制御装置16の記憶部には、制御プログラムが記憶されるとともに、基板2における個々のはんだ付部に対応する座標データ、当該はんだ付部に関連付けられたはんだ付け条件等が記憶されている。そして、主制御装置16は、レーザ制御装置17や供給制御装置18との間で通信を行い、前記一連の工程に係る処理を各制御装置17,18と協働して実行する。
【0014】
前記座標データは例えば、移動工程においてレーザヘッド10の移動先となるレーザ照射位置をX座標、Y座標、Z座標で特定するものであって、レーザヘッド10の待機位置からレーザ照射位置までのオフセット座標、或いは基板2における基準位置から個々のはんだ付部の位置に対応するオフセット座標として規定されている。具体的には、座標データは基板2の種類毎に記憶されており、又、例えば1つの基板2に12箇所のはんだ付部が存する場合には第1はんだ付部、第2はんだ付部、…第12はんだ付部の位置各々に対応させて、レーザヘッド10を順次移動させる順序データと共に記憶されるものとする。これにより、主制御装置16は、移動工程において座標データに基づき各種アクチュエータを制御し、レーザヘッド10を、はんだ付けを行う位置つまりレーザ照射位置へ順次移動させる。
【0015】
レーザ制御装置17は、レーザ光を発生させる発振部(図示略)を制御するものであり、記憶部を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。発振部から出力されるレーザ光は、レーザヘッド10から当該光軸Oに沿って基板2に向けて照射される。このレーザ光の照射に先立ち、レーザ制御装置17は、主制御装置16との間ではんだ付け条件に関する通信を行い、レーザ光の照射に係る制御パラメータを設定する。
レーザ光の照射に係る制御パラメータは、例えばレーザ光のレーザ出力(W)、照射時間(Sec)を含む。また、当該制御パラメータは、基板2の種類に応じて、はんだ付部毎のオフセット座標或いは前記順序データと関連付けて記憶されている。
【0016】
供給制御装置18は、はんだガイド13a及びはんだ供給装置13を制御するものであり、記憶部を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。レーザ光の照射に先立ち、供給制御装置18は、主制御装置16との間ではんだ付け条件に関する通信を行い、はんだ材料の供給に係る制御パラメータを設定する。
はんだ材料の供給に係る制御パラメータは、例えば糸はんだ12と基板2表面(
図1で上面)とのなす、はんだ供給角度θ、上面側から見たランド5周りにおけるはんだ供給方向、糸はんだ12の供給速度を含む。また、当該制御パラメータは、基板2の種類に応じて、はんだ付部毎のオフセット座標或いは順序データと関連付けて記憶されている。
【0017】
なお、はんだ付け条件は、例えばレーザ光がランド5からはみ出すことの無いよう、照射領域の大きさ或いはレーザ光の径寸法を設定する等の条件を追加してもよい。また、主制御装置16、レーザ制御装置17及び供給制御装置18は、夫々図示しないタッチパネル等の操作入力部を有しており、予め夫々のティーチング或いははんだ付け条件に関する設定入力が可能である。
【0018】
さて、はんだ付け条件は、「解決しようとする課題」で述べた熱引き等を考慮して、基板2の種類毎に、ランド5の形状寸法等に対応して設定することにより、はんだ付けの品質や信頼性を向上させることができる。
【0019】
しかしながら、はんだ付け条件は各種パラメータを含み、その設定・切替えについて、個々のはんだ付部に対応させて行うものとすれば、製造工程において多くの時間を要することとなり、基板2の生産効率の低下を招く問題がある。具体的には、
図4のタイムチャートに示すように、はんだ付けを開始する際、レーザヘッドを待機位置からレーザ照射位置へ移動させた後、レーザスタートを指示することにより、はんだ付け条件が設定されるものと仮定する。この場合、同図のT1及びT2で示すように、はんだ供給制御装置及びレーザ制御装置は、設備の主制御装置側からはんだ付け条件を受付けて、夫々対応する制御パラメータに切替えるための時間T1,T2を要する。このため、制御パラメータの設定終了後、直ちにレーザ光の照射を開始しても、レーザスタートの指示からはんだ付けが完了するまでに時間(T1+T2+T3)がかかり、基板2の生産効率を低下させる要因となる。
【0020】
そこで、本設備15では、
図2、
図3にて「条件切替」として示すように、個々のはんだ付部に対応する適正なはんだ付け条件を設定しながらも、これに伴う生産効率の低下を抑制するものとしている。係る構成について、同
図2、
図3を参照しながら詳述する。ここで、
図2は、説明の便宜上、1つの基板2に1箇所のはんだ付部が存する場合における処理の流れを示すものとし、又、レーザヘッド10の移動工程にて、はんだ材料の供給に係る制御パラメータを切替えるものとする。また、
図2のA1~A11、B1~B5、C1~C3は各ステップを表すものとし、前記搬入用ベルトを含む搬入手段を「搬入装置」、前記搬出用ベルトを含む搬出手段を「搬出装置」と称して説明を簡単化する。
【0021】
即ち先ず、設備15の主制御装置16は、
図2の処理をスタートすると、搬入工程において、搬入装置により基板2を機内へ投入してセット面11aにセットする(A1)。このとき、基板2において、
図1に示すようにスルーホール4に挿通されて突出するように配置される電子部品3の端子3aと、ランド5とをはんだ付部とする。
【0022】
次いで、主制御装置16は、当該基板2に対応付けられた座標データとはんだ付け条件を読み込んで、その座標データに基づきロボットアームを制御して、レーザヘッド10を原位置たる待機位置から、はんだ付部に対応するレーザ照射位置へ移動させる(A2,A3)。
【0023】
そして、主制御装置16は、A2,A3の移動工程において、はんだ材料の供給に係る制御パラメータを設定するための処理を実行する(A5~A8)。この場合、主制御装置16は、今回設定する当該基板2のはんだ付け条件を照合し、設定の切替えを要すると判定した場合(A5)、当該はんだ付け条件をセットし(A6)、供給制御装置18へ出力する(A7)。
【0024】
これにより、供給制御装置18において、はんだ付け条件の切替実行に係る情報を受付け(B1)、そのはんだ付け条件に切替える設定工程が行われる(B2)。設定工程では、はんだ材料の供給に係る制御パラメータとしての前記はんだ供給角度θ、はんだ供給方向、糸はんだ12の供給速度等のうち少なくとも1つが切替えられ、設定される。こうして、供給制御装置18は、条件切替が完了すると、その旨を示す条件切替完了信号を設備15側の主制御装置16へ出力する(B3)。
【0025】
主制御装置16は、供給制御装置18より出力された条件切替完了信号を受付け(A8)、且つレーザヘッド10のレーザ照射位置への移動が完了した(A4)と判定すると、レーザ光の照射を開始させるべくレーザ制御装置17に係る制御パラメータを出力するとともに、そのレーザ光の照射に合わせて供給制御装置18に糸はんだ12を供給させるように指示する(A9)。
【0026】
これにより、レーザ制御装置17において、レーザ光の照射に係る制御パラメータの指示を受付けると、その制御パラメータに切替える設定工程が行われる(C1)。この設定工程では、前記レーザ出力や照射時間といったレーザ光の照射に係る制御パラメータのうち少なくとも1つが切替えられ、設定される。
【0027】
レーザ制御装置17は、はんだ付け条件の設定を終えた時点で、はんだ付けの開始条件が成立したものとして、前記発振部でレーザ光を発生させてレーザヘッド10から照射させる(C2)。このはんだ付け工程において、レーザ光は、はんだ付部におけるランド5と端子3aの双方を照射領域として設定された出力で所定時間照射されるとともに、糸はんだ12は、はんだガイド13aでガイドされつつ設定された供給角度θ或いは供給方向から所定速度で当該照射領域に繰り出されて(B4)、はんだ付けが行われる。
【0028】
こうして、レーザ制御装置17によりレーザ光の照射が完了すると、その照射完了信号を主制御装置16へ出力するとともに(C3)、供給制御装置18により糸はんだ12の供給が完了すると、その供給完了信号を主制御装置16へ出力する(B5)。
主制御装置16は、レーザ制御装置17からの照射完了信号と、供給制御装置18からの供給完了信号とを受付けると(A10)、ロボットアームによりレーザヘッド10を原位置へ移動させるとともに(A11)、搬出装置により基板2をセット面11aから機外へ搬出する(A12)。こうして、主制御装置16は、上記したA1~A12、B1~B5、C1~C3を1サイクルとする処理を完了すると(A13)、
図2の「スタート」へリターンすることにより、他の基板2についても連続して処理を行うことができる。
【0029】
上記したA2~A4の移動工程中に、B2及びC1の双方の条件切替を行うように構成してもよい。この具体的な構成について、
図3のタイムチャートを参照しながら説明する。ここで、
図3のt1~t4は、レーザヘッド10の移動開始~移動完了の時点を表し、t2~t3は、供給制御装置18での制御パラメータの設定及びレーザ制御装置17での制御パラメータの設定の所要時間を表し、t4~t5は、はんだ付けの所要時間を表すものとする。
【0030】
即ち、主制御装置16は、搬入工程から処理をスタートして、投入された基板2をセット面11aにセットし(
図2のA1)、その後の移動工程の開始時つまり
図3のt1の時点で、基板2に対応付けられた座標データに基づき、レーザヘッド10を原位置からレーザ照射位置へ移動させる(A2,A3)。
【0031】
この移動工程中に、主制御装置16は、はんだ付け条件の設定工程(A5~A9、B1~B3、C1)を並行して行うべく、はんだ材料の供給に係る制御パラメータを供給制御装置18へ出力するとともに(
図3のt2)、レーザ光の照射に係る制御パラメータをレーザ制御装置17へ出力する(同t2)。これにより、移動工程中から供給制御装置18において受付けた制御パラメータに切替える設定工程と、レーザ制御装置17において受付けた制御パラメータに切替える設定工程とを行うことができる。
【0032】
この後、供給制御装置18において設定工程を終えることに伴い条件切替完了信号を主制御装置16へ出力し、レーザ制御装置17において設定工程を終えることに伴い条件切替完了信号を主制御装置16へ出力する。
【0033】
ここで、主制御装置16は、供給制御装置18及びレーザ制御装置17の双方から条件切替完了信号を受付けたt3の時点で、条件切替が完了したものとして判定する。また、
図3に例示するように、主制御装置16は、t3以降の時点であって且つレーザヘッド10のレーザ照射位置への移動が完了したt4の時点で、前記開始条件が成立したものとして、レーザスタートつまりはレーザ制御装置17にレーザ光の照射開始を指示するとともに、供給制御装置18に糸はんだ12の供給開始を指示して、はんだ付け工程を行わしめる。
【0034】
この後、主制御装置16は、はんだ付け工程が完了し、レーザ制御装置17からの照射完了信号と、供給制御装置18からの供給完了信号とを受付けたt5の時点で、レーザヘッド10を原位置へ移動させるとともに、基板2をセット面11aから機外へ搬出して、この処理を終了する。
【0035】
なお、
図2や
図3では、1つの基板2に1箇所のはんだ付部が存する場合を例に説明したが、1つの基板2に複数箇所のはんだ付部が存する場合にも、同様のレーザはんだ付け方法で処理を行うことが可能である。具体的には例えば、1つの基板2に前記第1はんだ付部、第2はんだ付部、…第12はんだ付部が存し、個々のはんだ付部ではんだ付け条件が異なっていても、
図2のA1~A10、B1~B5、C1~C3の処理或いは
図3のt1~t5のタイムチャートで説明した処理を、前記順序データに従い、はんだ付部毎に実行することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のレーザはんだ付け方法は、はんだ付けを行う位置へレーザヘッド10を基板2に対して相対移動させる移動工程と、当該移動工程での移動先となる個々のはんだ付部に対応するはんだ付けの条件であってレーザ光によるはんだ付けに関するはんだ付け条件を設定する設定工程と、はんだ付部に対応するはんだ付け条件が設定されている場合に、はんだ付けを開始する開始条件が成立したものとして、レーザ光を照射してはんだ付けを行うはんだ付け工程と、を備え、前記移動工程中からはんだ付け条件を設定することにより、当該移動工程と当該設定工程とを並行して行い、はんだ付けを行う位置への相対移動が完了したことを前記開始条件として含む。
【0037】
これによれば、設定工程で個々のはんだ付け部に対応させたはんだ付け条件を設定することができるとともに、そのはんだ付け条件の設定とレーザヘッド10の相対移動とを並行して行うことができ、はんだ付け条件の設定をレーザヘッド10の相対移動後に行うものに比して時間の短縮を図ることができる。
また、はんだ付けを行う位置へのレーザヘッド10の相対移動が完了したことを開始条件として含むため、レーザヘッド10の相対移動中にレーザ光を照射するといった不具合を生じさせることなく、好適なタイミングではんだ付けを開始することができ、総じて信頼性の高い接続を行うことができる。
【0038】
本設備15では、はんだ付けを行う位置へのレーザヘッド10の相対移動が完了し、且つはんだ付け条件の設定を終えた時点で、レーザ光を照射してはんだ付けを開始するように構成されている。このため、例えば
図3のt1~t4の移動工程時間に対する、t2~t3の設定工程時間の長短にかかわりなく、極力時間短縮を図ることができる。
【0039】
前記はんだ付け条件は、レーザ光の照射に係る制御パラメータと、はんだ付部へのはんだ材料の供給に係る制御パラメータとを含む。このため、各制御パラメータについて移動工程中から設定可能となり、
図4で説明した時間T1,T2の短縮を図ることが可能となる。
【0040】
また、一の基板2における複数のはんだ付部に対応させて複数のはんだ付け条件の設定を行うときには、係る基板2の製造工程において、大幅な時間短縮が可能となり、生産効率を高めることができる。
【0041】
本開示は、実施例(実施形態)に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
例えば、基板2におけるはんだ付部の個数やはんだ付け条件等は、上記した個数や制御パラメータに限らず、適宜変更して実施しうるものである。
【符号の説明】
【0042】
図面中、1はレーザはんだ付け装置、2は基板、3aは端子(はんだ付部)、5はランド(はんだ付部)、10はレーザヘッド、を示す。