(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】基礎用型枠構造物、及び基礎用型枠構造物に用いる固定ピン
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20240326BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E02D27/01 C
(21)【出願番号】P 2020102522
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】松原 由幸
(72)【発明者】
【氏名】住友 義則
(72)【発明者】
【氏名】松本 安史
(72)【発明者】
【氏名】平野 成志
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-095993(JP,A)
【文献】特開2003-193683(JP,A)
【文献】特開2004-132459(JP,A)
【文献】実開昭62-052310(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1挿通孔を有するフランジ板を備えた基礎用型枠と、
第2挿通孔を有しており、上記フランジ板に載置されたアンカー定規と、
上記第1挿通孔及び上記第2挿通孔に挿通された固定ピンと、を備えており、
上記固定ピンは、
上記第2挿通孔の内径より大きな外形のヘッドと、
上記ヘッドに連結されており、上記第1挿通孔及び上記第2挿通孔に挿入される軸部と、
上記軸部に回動可能に連結されており、上記軸部の軸線に沿って延びる挿通姿勢と、当該軸線と交差する方向に沿って延びており、端部が上記フランジ板の下面に当接する当接姿勢とに回動可能な回動体と
、を有しており、
上記端部は、
上記当接姿勢において上記フランジ板の下面に当接する第1当接面と、
上記第1当接面と交差する面であって、上記当接姿勢において上記第1挿通孔の周面に当接する第2当接面と、を有する基礎用型枠構造物。
【請求項2】
上記回動体は、矩形板状或いは棒状であって、
上記第2当接面は、上記回動体の長手方向及び回動軸線に沿って延びており、
上記第1当接面は、上記回動体の短手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第2当接面の端と繋がっている、請求項
1に記載の基礎用型枠構造物。
【請求項3】
上記回動体は、上記当接姿勢である第1当接姿勢及び第2当接姿勢に回動可能であり、
上記第1当接面は、上記フランジ板にN枚(Nは自然数)の上記アンカー定規が載置された状態の上記第1当接姿勢において上記フランジ板の下面に当接し、
上記端部は、
上記フランジ板にN枚より多い枚数の上記アンカー定規が載置された状態の上記第2当接姿勢において上記フランジ板の下面に当接する第3当接面と、
上記第2当接姿勢において上記フランジ板の上記第1挿通孔の周面に当接する第4当接面と、をさらに有する請求項
1または
2に記載の基礎用型枠構造物。
【請求項4】
上記回動体は、矩形板状或いは棒状であって、
上記第2当接面は、上記回動体の長手方向及び回動軸線に沿って延びており、
上記第1当接面は、上記回動体の短手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第2当接面の端と繋がっており、
上記第4当接面は、上記回動体の長手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第1当接面の端と繋がっており、
上記第3当接面は、上記回動体の短手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第4当接面の端と繋がっている、請求項
3に記載の基礎用型枠構造物。
【請求項5】
上記回動体は、上記軸部の先端よりも上記ヘッドに近い位置にあり、
上記軸線に直交する平面での上記軸部の断面であって、上記回動体よりも当該軸部の先端に近い部分の断面は、円形状であり、
上記挿通姿勢にある上記回動体は、上記円形状の断面を上記軸線に沿って延長した領域の範囲内にある、請求項1から
4のいずれかに記載の基礎用型枠構造物。
【請求項6】
上記回動体は、上記軸線に直交する方向において上記軸部と並んで配置されており、上記挿通姿勢において外部に露出されている、請求項
5に記載の基礎用型枠構造物。
【請求項7】
第1挿通孔を有するフランジ板を備えた基礎用型枠と、
第2挿通孔を有しており、上記フランジ板に載置されたアンカー定規と、
上記第1挿通孔及び上記第2挿通孔に挿通された固定ピンと、を備えており、
上記固定ピンは、
上記第2挿通孔の内径より大きな外形のヘッドと、
上記ヘッドに連結されており、上記第1挿通孔及び上記第2挿通孔に挿入される軸部と、
上記軸部に回動可能に連結されており、上記軸部の軸線に沿って延びる挿通姿勢と、当該軸線と交差する方向に沿って延びており、端部が上記フランジ板の下面に当接する当接姿勢とに回動可能な回動体と、を有しており、
上記回動体は、上記軸部の先端よりも上記ヘッドに近い位置にあり、
上記軸線に直交する平面での上記軸部の断面であって、上記回動体よりも当該軸部の先端に近い部分の断面は、円形状であり、
上記挿通姿勢にある上記回動体は、上記円形状の断面を上記軸線に沿って延長した領域の範囲内にあり、
上記回動体は、上記軸線に直交する方向において上記軸部と並んで配置されており、上記挿通姿勢において
、一方の側面の全部が外部に露出され
、他方の側面の全部が上記軸部に覆われている基礎用型枠構造物。
【請求項8】
上記軸部は、軸線に直交する方向において当該軸部を貫通する配置孔を有しており、
上記回動体は、上記挿通姿勢において上記配置孔内にある、請求項
5に記載の基礎用型枠構造物。
【請求項9】
上記回動体は、棒状或いは板状であって、長手方向における中央において回動可能に上記軸部に連結されている、請求項1から8のいずれかに記載の基礎用型枠構造物。
【請求項10】
上記第1当接面から突出する複数の凸或いは当該第1当接面から凹む複数の凹を有している、請求項
1から
4のいずれかに記載の基礎用型枠構造物。
【請求項11】
上記端部は、上記フランジ板の下面と当接する弧状の当接面を有している、請求項1に記載の基礎用型枠構造物。
【請求項12】
ヘッドと、当該ヘッドの一面から突出する軸部と、当該軸部に回動可能に連結された棒状或いは板状の回動体と、を備えており、
上記回動体は、
上記軸部の先端よりも上記ヘッドに近い位置に配置されており、かつ上記軸部の軸線に沿って延びる第1姿勢と、当該第1姿勢から回動した第2姿勢とに回動可能であり、
上記第2姿勢は、上記回動体の端部が、上記軸部から外れた位置において上記ヘッドの上記一面と上記軸線に沿う方向において対向する姿勢であ
り、
上記回動体の上記端部は、
上記第2姿勢において基礎用型枠のフランジ板の下面に当接する第1当接面と、
上記第1当接面と交差する面であって、上記第2姿勢において上記フランジ板に設けられた挿通孔の周面に当接する第2当接面と、を有する、固定ピン。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の基礎用型枠構造物を用いた基礎の打設方法であって、
複数の上記基礎用型枠を互いに対向させて載置する第1工程と、
上記基礎用型枠の上記フランジ板に、上記第1挿通孔と上記第2挿通孔とを重ねて上記アンカー定規を載置する第2工程と、
上記基礎用型枠の上記フランジ板の上記第1挿通孔及び上記アンカー定規の上記第2挿通孔に、上記回動体が挿通姿勢にされた上記固定ピンを挿通する第3工程と、
上記回動体を上記当接姿勢に回動させる第4工程と、
対向する複数の上記基礎用型枠の間にコンクリートを流し込んで基礎を打設する第5工程と、
上記回動体を上記当接姿勢から上記挿通姿勢に回動させた後、上記固定ピンを引き抜く第6工程と、を備える、基礎の打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎の打設に用いられる基礎用型枠と、基礎用型枠のフランジ板に載置されるアンカー定規と、アンカー定規を固定する固定ピンと、を有する基礎用型枠構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アンカーボルトを位置決めして基礎用型枠に仮固定するアンカー定規を開示する。このアンカー定規は、固定ピンが挿通される複数の挿通孔を有している。また、基礎用型枠も、固定ピンが挿通される複数の挿通孔を有している。固定ピンが、アンカー定規の挿通孔及び基礎用型枠のフランジ板の挿通孔に挿通されることにより、アンカー定規は、水平方向において基礎用型枠に固定される。そして、アンカー定規が基礎用型枠のフランジ板から浮き上がることを防止するため、クリップが用いられている。クリップは、アンカー定規及び基礎用型枠のフランジ板を上下に挟むことにより、アンカー定規の浮き上がりを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンカー定規を基礎用型枠に固定するためにクリップが用いられると、基礎の施工に必要な部品の種類及び数が増えることになる。また、クリップの取り付け作業は、アンカー定規を所望の位置に押さえつつ、クリップを開いて取り付けるために作業性が良くない。
【0005】
本発明は、基礎用型枠のフランジ板からのアンカー定規の浮き上がりを防止可能な基礎用型枠構造物、及び当該基礎用型枠構造物に用いられる固定ピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る基礎用型枠構造物は、第1挿通孔を有するフランジ板を備えた基礎用型枠と、第2挿通孔を有しており、上記フランジ板に載置されたアンカー定規と、上記第1挿通孔及び上記第2挿通孔に挿通された固定ピンと、を備える。上記固定ピンは、上記第2挿通孔の内径より大きな外形のヘッドと、上記ヘッドに連結されており、上記第1挿通孔及び上記第2挿通孔に挿入される軸部と、上記軸部に回動可能に連結されており、上記軸部の軸線に沿って延びる挿通姿勢と、当該軸線と交差する方向に沿って延びており、端部が上記フランジ板の下面に当接する当接姿勢とに回動可能な回動体を有する。
【0007】
作業者は地面に設置された基礎用型枠のフランジ板上にアンカー定規を載置する。作業者は、フランジ板に設けられた第1挿通孔及びアンカー定規に設けられた第2挿通孔に、回動体が挿通姿勢にされた固定ピンを挿通し、水平方向において、アンカー定規を基礎用型枠のフランジ板に固定する。そして、作業者は、固定ピンの回動体を挿通姿勢から当接姿勢に回動させる。固定ピンは、ヘッドと、当接姿勢にある回動体の端部とにより、基礎用型枠のフランジ板及びフランジ板に重ねられたアンカー定規を上下方向において挟む。すなわち、固定ピンは、アンカー定規がフランジ板から浮き上がることを防止する。その結果、本発明に係る基礎用型枠構造物は、水平方向においてアンカー定規を固定し、かつ、アンカー定規が基礎用型枠から浮き上がることを防止することができる。
【0008】
(2) 上記端部は、上記当接姿勢において上記フランジ板の下面に当接する第1当接面と、上記第1当接面と交差する面であって、上記当接姿勢において上記第1挿通孔の周面に当接する第2当接面と、を有していてもよい。
【0009】
挿通姿勢から回動された回動体は、第2当接面が第1挿通孔の周面に当接する当接姿勢まで回動される。したがって、回動体は、当接姿勢を超えて回動されることがない。その結果、固定ピンは、アンカー定規の浮き上がりを確実に防止することができる。
【0010】
(3) 上記回動体は、矩形板状或いは棒状であって、上記第2当接面は、上記回動体の長手方向及び回動軸線に沿って延びており、上記第1当接面は、上記回動体の短手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第2当接面の端と繋がっていてもよい。
【0011】
(4) 上記回動体は、上記当接姿勢である第1当接姿勢及び第2当接姿勢に回動可能であり、上記第1当接面は、上記フランジ板にN枚(Nは自然数)の上記アンカー定規が載置された状態の上記第1当接姿勢において上記フランジ板の下面に当接し、上記端部は、上記フランジ板にN枚より多い枚数の上記アンカー定規が載置された状態の上記第2当接姿勢において上記フランジ板の下面に当接する第3当接面と、上記第2当接姿勢において上記フランジ板の上記第1挿通孔の周面に当接する第4当接面と、をさらに有していてもよい。
【0012】
上記構成によれば、基礎用型枠のフランジ板にN枚のアンカー定規が重ねて載置された場合であっても、フランジ板にN枚より多い数のアンカー定規が重ねて載置された場合であっても、アンカー定規の浮き上がりを防止することができる。
【0013】
(5) 上記回動体は、矩形板状或いは棒状であって、上記第2当接面は、上記回動体の長手方向及び回動軸線に沿って延びており、上記第1当接面は、上記回動体の短手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第2当接面の端と繋がっており、上記第4当接面は、上記回動体の長手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第1当接面の端と繋がっており、上記第3当接面は、上記回動体の短手方向及び回動軸線に沿って延びており、その端が、上記第4当接面の端と繋がっていてもよい。
【0014】
(6) 上記回動体は、上記軸部の先端よりも上記ヘッドに近い位置にあり、上記軸線に直交する平面での上記軸部の断面であって、上記回動体よりも当該軸部の先端に近い部分の断面は、円形状であり、上記挿通姿勢にある上記回動体は、上記円形状の断面を上記軸線に沿って延長した領域の範囲内にあってもよい。
【0015】
挿通姿勢にある回動体は、軸部の円形状の断面を軸線に沿って延長した領域の範囲内にあるので、挿通姿勢にある回動体が第1挿通孔や第2挿通孔の周面に引っ掛かることなく、固定ピンは、第1挿通孔及び第2挿通孔に挿通され得る。
【0016】
(7) 上記回動体は、上記軸線に直交する方向において上記軸部と並んで配置されており、上記挿通姿勢において外部に露出されていてもよい。
【0017】
回動体は、軸線に直交する方向において軸部と並んで配置されており、挿通姿勢において外部に露出されている。作業者は、回動体を挿通姿勢にして固定ピンをアンカー定規の第2挿通孔及びフランジ板の第1挿通孔に挿通した後、外部に露出する回動体を押して当接姿勢に回動させる。
【0018】
(8) 上記軸部は、軸線に直交する方向において当該軸部を貫通する配置孔を有しており、上記回動体は、上記挿通姿勢において上記配置孔内にあってもよい。
【0019】
回動体は、挿通姿勢において、配置孔内にある。挿通姿勢にある回動体は、配置孔内にあって、軸部によって保護される。固定ピンは、回動体を挿通姿勢にして運搬或いは保管される。したがって、固定ピンを運搬或いは保管する際に、回動体が破損することが防止される。
【0020】
(9) 上記回動体は、棒状或いは板状であって、長手方向における中央において回動可能に上記軸部に連結されていてもよい。
【0021】
棒状或いは板状の回動体は、長手方向における中央において回動可能に軸部に保持されている。すなわち、回動体は、フランジ板の下面に当接する端部である第1の端部に加え、第2の端部を有する。作業者は、第2の端部を押さえて、当接姿勢にある回動体を挿通姿勢に戻した後、固定ピンを引き抜く。すなわち、回動体がその中央において回動可能に軸部に連結されていることにより、作業者が固定ピンを基礎用型枠及びアンカー定規から取り外す作業が容易になる。
【0022】
(10) 上記第1当接面から突出する複数の凸或いは当該第1当接面から凹む複数の凹を有していてもよい。
【0023】
複数の凸或いは凹により、回動体とフランジ板の下面との間の最大静止摩擦係数が増大する。したがって、回動体とフランジ板の下面との間の最大静止摩擦力が大きくなり、当接姿勢にある回動体が誤って挿通姿勢に戻ることが抑制される。その結果、アンカー定規が意図せず浮き上がることが抑制される。
【0024】
(11) 上記端部は、上記フランジ板の下面と当接する弧状の当接面を有していてもよい。
【0025】
弧状の当接面が回動体の端部に設けられることにより、回動体は、フランジ板に1枚のアンカー定規が載置された場合であっても、フランジ板に2枚以上のアンカー定規が重ねて載置された場合であっても、フランジ板の下面に当接することができる。すなわち、固定ピンは、基礎用型枠のフランジ板に載置されるアンカー定規の枚数に拘わりなく、使用することができる。
【0026】
(12) 本発明に係る固定ピンは、ヘッドと、当該ヘッドの一面から突出する軸部と、当該軸部に回動可能に連結された棒状或いは板状の回動体と、を備える。上記回動体は、上記軸部の先端よりも上記ヘッドに近い位置に配置されており、かつ上記軸部の軸線に沿って延びる第1姿勢と、当該第1姿勢から回動した第2姿勢とに回動可能であり、上記第2姿勢は、上記回動体の端部が、上記軸部から外れた位置において上記ヘッドの上記一面と上記軸線に沿う方向において対向する姿勢である。
【0027】
固定ピンは、回動体を第1姿勢にしてフランジ板及びアンカー定規の挿通孔に挿通される。第2姿勢にされた回動体は、ヘッドとともに、フランジ板及びアンカー定規を挟む。その結果、固定ピンは、水平方向においてアンカー定規をフランジ板に固定することができるとともに、フランジ板からのアンカー定規の浮き上がりを防止することができる。
【0028】
(13) 本発明に係る基礎の打設方法は、上述の基礎用型枠構造物を用いた基礎の打設方法であって、複数の上記基礎用型枠を互いに対向させて載置する第1工程と、上記基礎用型枠の上記フランジ板に、上記第1挿通孔と上記第2挿通孔とを重ねて上記アンカー定規を載置する第2工程と、上記基礎用型枠の上記フランジ板の上記第1挿通孔及び上記アンカー定規の上記第2挿通孔に、上記回動体が挿通姿勢にされた上記固定ピンを挿通する第3工程と、上記回動体を上記当接姿勢に回動させる第4工程と、対向する複数の上記基礎用型枠の間にコンクリートを流し込んで基礎を打設する第5工程と、上記回動体を上記当接姿勢から上記挿通姿勢に回動させた後、上記固定ピンを引き抜く第6工程と、を備える。
【0029】
本発明は、基礎の打設方法として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る基礎用型枠構造物及び固定ピンは、基礎用型枠のフランジ板からのアンカー定規の浮き上がりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、基礎用型枠構造物10の斜視図である。
【
図2】
図2は、固定ピン20を示す図であり、(A)は挿通姿勢における固定ピン20の正面図であり、(B)は第1当接姿勢における固定ピン20の正面図であり、(C)は挿通姿勢における固定ピン20の側面図であり、(D)は第2当接姿勢における固定ピン20の正面図である。
【
図3】
図3(A)は、固定ピン20の底面図であり、
図3(B)は、固定ピン20の水平断面図である。
【
図4】
図4は、基礎用型枠構造物10の一部の断面図であり、(A)は固定ピン20を挿通した状態を示す図であり、(B)は固定ピン20の回動体50を第1当接姿勢に回動させた図であり、(C)は、固定ピン20の回動体50を第2当接姿勢に回動させた図である。
【
図5】
図5(A)は、変形例1に係る回動体50の一部を示す図であり、
図5(B)は、変形例2に係る回動体50が第1当接姿勢ある状態を示す図であり、
図5(C)は、変形例2に係る回動体50が第2当接姿勢にある状態を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例3に係る固定ピン20を示す図であり、(A)は側面図であり、(B)及び(C)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0033】
本実施形態では、基礎の打設に用いられる基礎用型枠構造物10(
図1)が説明される。基礎用型枠構造物10は、
図1に示されるように、基礎用型枠20と、第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32と、固定ピン40と、を備える。なお、本実施形態では、布基礎の立ち上がり部の型枠である基礎用型枠20のみが示されており、フーチン部の型枠については説明が省略されている。また、本実施形態では、布基礎を例に基礎用型枠構造物10の構成が説明されるが、本発明に係る基礎用型枠構造物は、布基礎用のものに限定されず、ベタ基礎などに用いられてもよい。また、基礎には配筋が設けられるが、本実施形態では説明が省略されている。
【0034】
基礎用型枠20は、矩形板状である。基礎用型枠20は、地面や捨てコンクリートの上などに設置された設置器具を用いて設置される。以下では、基礎用型枠20が設置された状態における鉛直方向を上下方向11とし、基礎用型枠20が延びる水平方向を左右方向12とし、上下方向11及び左右方向12に直交する方向を前後方向13として説明する。
【0035】
複数の基礎用型枠20が、左右方向12において、ボルト及びナットなどの連結器具を用いて連結されている。連結された複数の基礎用型枠20と、別で連結された複数の基礎用型枠20とが、前後方向13において対向して設置されている。
【0036】
基礎用型枠20は、樹脂や金属などからなる。基礎用型枠20は、上下方向11に沿う2辺及び左右方向12に沿う2辺を有する矩形板状の型枠本体21と、型枠本体21の各辺から前後方向13に沿ってそれぞれ突出する4つのフランジ板と、を備える。4つのフランジ板のうち、型枠本体21の上端から突出するフランジ板を、フランジ板22と記載して、以下説明する。
【0037】
フランジ板22は、
図4に示されるように、厚み方向である上下方向11においてフランジ板22を貫通する複数の挿通孔23を有する。複数の挿通孔23は、同径の円形状であり、左右方向12において並び、かつ左右方向12において互いに離間している。左右方向12において隣り合う2つの挿通孔23間の距離は、例えば同一である。すなわち、複数の挿通孔23は、左右方向12において一定間隔だけ離れて位置する。挿通孔23は、第1挿通孔の一例である。
【0038】
挿通孔23には、固定ピン40が挿通されている。挿通孔23は、第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32の固定と、第2アンカー定規32の位置決めとに用いられる。詳しくは後述される。
【0039】
第1アンカー定規31は、
図1に示されるように、矩形板状である。第1アンカー定規31は、
図1及び
図4に示されるように、厚み方向である上下方向11において第1アンカー定規31を貫通する複数の挿通孔33を有する。複数の挿通孔33は、同径の円形状であり、第1アンカー定規31の長手方向(
図1における左右方向12)に並び、かつ当該長手方向において互いに離間している。隣り合う2つの挿通孔33間の距離は、例えば同一である。すなわち、複数の挿通孔33は、左右方向12において一定間隔だけ離れて位置する。挿通孔33は、第2挿通孔の一例である。
【0040】
第1アンカー定規31の長手方向における長さは、左右方向12における基礎用型枠20のフランジ板22の長さと同じである。ただし、第1アンカー定規31の長さは、基礎用型枠20のフランジ板22の長さよりも長くてもよいし、短くてもよい。第1アンカー定規31は、長手方向を左右方向12に一致させて、かつ挿通孔33を基礎用型枠20のフランジ板22の挿通孔23の上に重ねて、フランジ板22に載置される。
【0041】
挿通孔33は、フランジ板22の挿通孔23と略同径である。挿通孔23及び挿通孔33には、固定ピン40が挿通される。挿通孔23及び挿通孔33に固定ピン40が挿通されることにより、第1アンカー定規31は、フランジ板22上における左右方向12及び前後方向13の位置が固定される。
【0042】
第2アンカー定規32は、矩形板状である。第2アンカー定規32の長手方向(
図1における前後方向13)における長さは、前後方向13において対向する一対の基礎用型枠20のフランジ板22の両端の間の距離と同じである。したがって、第2アンカー定規32は、一対の基礎用型枠20の間に架設できる。
【0043】
第2アンカー定規32は、第1アンカー定規31に設けられた挿通孔33と同径の複数の挿通孔34を有している。具体的には、第2アンカー定規32は、挿通孔34を長手方向の両端部にそれぞれ有している。なお、第2アンカー定規32は、長手方向における両端部以外の位置にも、挿通孔34を有していてもよい。挿通孔34は、第2挿通孔の一例である。
【0044】
図1に示されるように、第2アンカー定規32は、前後方向13において互いに対向する一対の基礎用型枠20に架設されている。具体的には、第2アンカー定規32の長手方向における一端部が、一方の基礎用型枠20に載置された第1アンカー定規31に載置され、第2アンカー定規32の他端部は、他方の基礎用型枠20に載置された第1アンカー定規31に載置されている。また、第2アンカー定規32の挿通孔34は、第1アンカー定規31の挿通孔33と重なっている。
【0045】
挿通孔33、挿通孔34、及び挿通孔23には、固定ピン40が挿通されている。固定ピン40により、第2アンカー定規32は、第1アンカー定規31上において左右方向12及び前後方向13の位置が固定されている。
【0046】
第2アンカー定規32には、長手方向(
図1における前後方向13)における中央部に、2つの挿通孔35が形成されている。なお、本実施形態では、第2アンカー定規32に2つの挿通孔35が形成されているが、挿通孔35の数は限定されない。挿通孔35にはアンカーボルト16が挿通される。挿通孔35に挿通されたアンカーボルト16は、不図示のナットが螺合されることによって、第2アンカー定規32に吊り下げられた状態に固定される。なお、挿通孔35は、挿通孔33と同径であってもよいし、異なる径であってもよい。
【0047】
第2アンカー定規32は、第1アンカー定規31が有する複数の挿通孔33のうち、いずれの挿通孔33に固定されるかによって、左右方向12における位置が決められる。すなわち、アンカーボルト16は、第1アンカー定規31によって、左右方向12において位置決めされ、第2アンカー定規32によって、前後方向13において、一対の基礎用型枠20の間の中間位置に位置決めされている。すなわち、第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32は、基礎用型枠20に対して、アンカーボルト16を位置決めする定規である。
【0048】
固定ピン40は、第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32を、水平方向において基礎用型枠20のフランジ板22に固定するとともに、第1アンカー定規及び第2アンカー定規32の浮き上がりを防止する機能を有する。以下、固定ピン40について詳しく説明する。
【0049】
固定ピン40は、
図2に示されるように、ヘッド41と、ヘッド41から突出する軸部42と、回動可能に軸部42に連結された回動体50と、を備える。
【0050】
ヘッド41は、六角柱状である。ただし、ヘッド41は、円柱状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0051】
ヘッド41の外形は、第1アンカー定規31や第2アンカー定規32の挿通孔33の直径よりも大きい。換言すれば、ヘッド41の外形のうち、軸線49と直交する平面における最大寸法が、挿通孔33の直径よりも大きい。これにより、固定ピン40は、挿通孔33に挿通された状態において、ヘッド41が第1アンカー定規31や第2アンカー定規32の上面に当接するので、固定ピン40が挿通孔33から下方へ抜け落ちない。
【0052】
軸部42は、ヘッド41の一面である底面43から底面43に直交する向き(図における下向き)に突出している。軸部42は、概ね円柱状である。軸部42の直径(最大径)は、挿通孔33の直径及び挿通孔23の直径よりも小さい。これにより、軸部42は、挿通孔33及び挿通孔23に挿通可能である。
【0053】
固定ピン40は、ヘッド41を上にし、軸部42を下にして、挿通孔33及び挿通孔23に、上方から挿通される。以下では、固定ピン40が挿通孔33及び挿通孔23に挿通された状態における上下方向11を用いて説明がされる。
【0054】
軸部42は、ヘッド41から下方に向かって延びる上部44と、上部44から下方に向かって延びる下部45と、を有する棒状である。軸部42の軸線49は、上下方向11に沿う。
【0055】
上部44は、
図3(B)に示されるように、水平断面が半円形状である。上部44の周面のうち、曲面の部分は(
図3(B)における下側部分、
図2(C)における右側部分)、
図2(C)に示されるように、下部45の周面と連続している。換言すれば、円柱形上の軸部42は、上部44において、水平断面が小さくなるように一部が切り欠かれた形状である。
【0056】
回動体50は、下部45の上方であって、かつ上部44の側方に配置されている。回動体50は、回転により様々な姿勢となるが、いかなる姿勢においても、回動体50は、その全部が下部45よりも、ヘッド41に近い位置にある。具体的には、回動体50は、
図3(B)に一点鎖線で囲まれた配置領域46内に配置されている。配置領域46は、軸部42の下部45の上端における円形の断面と同一の形状である。回動体50が配置領域46内に配置されていることにより、
図3(A)に示されるように、回動体50は、下方から見た場合に、下部45よりも外側に出る部分がない。つまり、下部45の裏側に位置して視認できない。したがって、固定ピン40を基礎用型枠20のフランジ板22の挿通孔23及び第1アンカー定規31の挿通孔33或いは第2アンカー定規32の挿通孔34に挿通する際に、回動体50が挿通孔23の周面や挿通孔33、34の周面に引っ掛かることが防止される。配置領域46は、円形状の断面を軸線に沿って延長した領域の一例である。
【0057】
回動体50は、
図2に示されるように、概ね矩形板状である。回動体50の矩形は短冊形状である。以下では、回動体50が延びる方向、換言すれば短冊形状の長手方向を、長手方向14と記載し、回動体50の幅方向を短手方向15と記載して説明する。
【0058】
回動体50は、長手方向14における中央において、丸ピン61によって軸部42と連結されている。軸部42の上部44は、
図3(B)に示されるように、平面である側面47から凹む孔である圧入孔48を有している。また、回動体50は、丸ピン61が挿通される軸孔51を、長手方向14における中央に有している。丸ピン61は、回動体50の軸孔51に挿通され、軸部42の圧入孔48に圧入されて固定されている。回動体50を回動可能に支持する丸ピン61の軸線は、回動体50の回動軸線の一例である。なお、丸ピン61は、回動体50が抜け落ちることを防止するため、圧入される部分よりも大きな径のヘッドを有している。
【0059】
回動体50は、上述のように軸部42の上部44の側方に配置されており、一部が外部に露出している。作業者は、露出する部分に指を当てて、回動体50を回動させる。詳しくは後述する。
【0060】
回動体50は、長手方向14が軸部42の軸線49に沿う挿通姿勢(
図3(A))と、長手方向14が軸部42の軸線49と交差する第1当接姿勢(
図3(B))及び第2当接姿勢(
図3(D))との間で回動する。
図3において、第1当接姿勢における長手方向14と軸線49とがなす狭角は、第2当接姿勢における長手方向14と軸線49とがなす狭角よりも大きい。また、本実施形態では、回動体50の回動範囲は特に規制されていないので、回動体50は丸ピン61を軸として回転自在である。なお、回動体50は、挿通姿勢において、上述の配置領域46(
図3(C))内にある。挿通姿勢は、第1姿勢の一例である。第1当接姿勢及び第2当接姿勢は、第2姿勢の一例である。
【0061】
長手方向14における回動体50の長さは、上下方向11における上部44の長さと略同一である。挿通姿勢(
図3(A))において、回動体50の下端は、軸部42の下部45の上面と当接する。回動体50の下端と軸部42の下部45の上面との間に生じる摩擦力により、回動体50は、挿通姿勢に維持される。作業者が回動体50を指で押して、回動体50の下端と軸部42の下部45の上面との間の最大静止摩擦力を超える外力が回動体50に加えられることにより、回動体50は、第1当接姿勢或いは第2当接姿勢に回動する。なお、回動体50の下端が軸部42の下部45の上面に引っ掛からないように、回動体50の下端が円弧状とされ(
図2(A)、(B))、下部45の上面は、回動体50の下端の半径よりも大きな半径の円弧状とされている。
【0062】
第1当接姿勢は、第1アンカー定規31の浮き上がりを防止する姿勢である。第2当接姿勢は、第2アンカー定規32の浮き上がりを防止する姿勢である。以下、第1当接姿勢及び第2当接姿勢において第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32の浮き上がりを防止する構成について詳しく説明する。なお、以下では、回動体50が挿通姿勢であるとして(
図2(A))説明する。
【0063】
図2(A)に示されるように、回動体50は、第1当接面71、第2当接面72、第3当接面73、及び第4当接面74を、上端部70に備える。
【0064】
第2当接面72は、長手方向14及び丸ピン61が延びる方向に沿って延びる平面である、第2当接面72の上端は、回動体50の上端面と繋がっている。
【0065】
第1当接面71は、短手方向15及び丸ピン61が延びる方向に沿って延びる平面である。第1当接面71の短手方向15における一端(図における左端)は、第2当接面72の下端と繋がっている。すなわち、第1当接面71と第2当接面72とは、入り隅を形成している。
【0066】
第4当接面74は、長手方向14及び丸ピン61が延びる方向に沿って延びる平面である、第4当接面74の上端は、第1当接面71の短手方向15における他端(図における右端)と繋がっている。すなわち、第4当接面74と第1当接面71とは、出角を形成している。
【0067】
第3当接面73は、短手方向15及び丸ピン61が延びる方向に沿って延びる平面である。第3当接面73の短手方向15における一端(図における左端)は、第4当接面74の下端と繋がっている。すなわち、第4当接面74と第3当接面73とは、入り隅を形成している。
【0068】
第2当接面72は、第1当接姿勢において第1アンカー定規31の挿通孔33の周面或いはフランジ板22の挿通孔23の周面に当接して、回動体50が第1当接姿勢を超えて回動することを防止する面である。
【0069】
第1当接面71は、第1当接姿勢においてフランジ板22の下面と当接し、第1アンカー定規31の浮き上がりを防止する面である。
【0070】
第4当接面74は、第2当接姿勢において第1アンカー定規31の挿通孔33の周面或いはフランジ板22の挿通孔23の周面に当接して、回動体50が第2当接姿勢を超えて回動することを防止する面である。
【0071】
第3当接面73は、第2当接姿勢においてフランジ板22の下面と当接し、第2アンカー定規32の浮き上がりを防止する面である。
【0072】
図4を参照して、第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32の浮き上がりの防止について、さらに詳しく説明する。
【0073】
まず、基礎用型枠20のフランジ板22に載置された第1アンカー定規31について、説明する。すなわち、フランジ板22に1枚の第1アンカー定規31のみが載置されて固定ピン40により固定される場合について説明する。
【0074】
作業者は、回動体50が挿通姿勢にされた固定ピン40を、第1アンカー定規31の挿通孔33と、フランジ板22の挿通孔23とに挿通する(
図4(A))。作業者は、固定ピン40を挿通孔33及び挿通孔23に挿通した後、回動体50の下端部を指で押し、回動体50を回動させる。回動体50が回動されると、第2当接面72が、フランジ板22の挿通孔23の周面に当接する(
図4(B))。すなわち、回動体50は、第1当接姿勢まで回動し、第1当接姿勢を超えて回動しない。
【0075】
第1当接姿勢において、回動体50の上端部70は、軸部42から外れた位置において、ヘッド41の下面と、軸線49に沿う方向において対向している。そして、第1当接姿勢において、回動体50の第2当接面72がフランジ板22の挿通孔23の周面に当接するとともに、第1当接面71がフランジ板22の下面に当接する(
図4(B))。すなわち、フランジ板22及び第1アンカー定規31は、上下方向11において、固定ピン40のヘッド41と回動体50とに挟まれる。その結果、第1アンカー定規31がフランジ板22から浮き上がることが防止される。上端部70は、端部の一例である。第1当接姿勢及び第2当接姿勢は、第2姿勢の一例である。
【0076】
次に、基礎用型枠20のフランジ板22に載置された第1アンカー定規31と、第1アンカー定規31に載置された第2アンカー定規32と、が固定ピン40により固定される場合について説明する。
【0077】
作業者は、回動体50が挿通姿勢にされた固定ピン40を、第2アンカー定規32の挿通孔34と、第1アンカー定規31の挿通孔33と、フランジ板22の挿通孔23と、に挿通する(不図示)。
【0078】
作業者は、固定ピン40を挿通孔33及び挿通孔23に挿通した後、回動体50の下端部を指で押し、回動体50を回動させる。回動体50が回動されると、第4当接面74が、フランジ板22の挿通孔23の周面に当接する(
図4(C))。すなわち、回動体50は、第2当接姿勢まで回動し、第2当接姿勢を超えて回動しない。
【0079】
第2当接姿勢において、回動体50の上端部70は、軸部42から外れた位置において、ヘッド41の下面と、軸線49に沿う方向において対向している。そして、第2当接姿勢において、回動体50の第4当接面74がフランジ板22の挿通孔23の周面に当接するとともに、第3当接面73がフランジ板22の下面に当接する(
図4(C))。すなわち、フランジ板22と、第1アンカー定規31と、第2アンカー定規32とは、上下方向11において、固定ピン40のヘッド41と回動体50とに挟まれる。その結果、第2アンカー定規32がフランジ板22から浮き上がることが防止される。
【0080】
次に、固定ピン40を用いた基礎の打設について説明する。まず、作業者は、
図1に示されるように、連結した複数の基礎用型枠20と、連結した複数の基礎用型枠20とを互いに対向させて設置する。作業者が、複数の基礎用型枠20を互いに対向させて地面に設置する工程は、第1工程の一例である。
【0081】
次に、作業者は、挿通孔23と挿通孔33とが上下に重なるように、基礎用型枠20のフランジ板22の上に第1アンカー定規31を載置する。作業者が、第1アンカー定規31をフランジ板22に載置する工程は、第2工程の一例である。
【0082】
次に、作業者は、固定ピン40を第1アンカー定規31の挿通孔33及びフランジ板22の挿通孔23に挿通する。そして、作業者は、固定ピン40の回動体50を第1当接姿勢まで回動させる。作業者が、固定ピン40を第1アンカー定規31の挿通孔33及びフランジ板22の挿通孔23に挿通する工程は、第3工程の一例である。また、作業者が、第1当接姿勢まで回動体50を回動させる工程は、第4工程の一例である。
【0083】
また、作業者は、挿通孔33と挿通孔34とが上下に重なるように、2つの第1アンカー定規31間に第2アンカー定規32を架設する。そして、作業者は、固定ピン40の回動体50を第2当接姿勢まで回動させる。作業者が、第2アンカー定規32を架設する工程は、第2工程の一例である。作業者が、固定ピン40を第2アンカー定規32の挿通孔34、第1アンカー定規31の挿通孔33、及びフランジ板22の挿通孔23に挿通する工程は、第3工程の一例である。また、作業者が、第2当接姿勢まで回動体50を回動させる工程は、第4工程の一例である。
【0084】
次に、作業者は、互いに対向する基礎用型枠20の間にコンクリートを流し込んで基礎を打設する。作業者が、互いに対向する基礎用型枠20の間にコンクリートを流し込んで基礎を打設する工程は、第5工程の一例である。
【0085】
作業者は、コンクリートが固まった後、第1当接姿勢或いは第2当接姿勢にある回動体50の下端部と軸部42とを指で挟んで、回動体50を挿通姿勢まで回動させる。挿通姿勢にされた回動体50の下端が軸部42の下部45の上面と当接することにより、回動体50は、挿通姿勢で維持される。作業者は、回動体50を挿通姿勢にした後、固定ピン40を上方に引き抜く。作業者が、固定ピン40を引き抜く工程は、第6工程の一例である。
【0086】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、回動体50が固定ピン40に設けられたことにより、第1アンカー定規31や第アンカー定規32を水平方向において固定できるとともに、第1アンカー定規31や第アンカー定規32の浮き上がりを防止することができる。
【0087】
また、回動体50は、第2当接面72及び第4当接面74を有するので、挿通孔33などに固定ピン40が挿通された状態において、回動体50が第1当接姿勢や第2当接姿勢を超えて回動されることが防止される。その結果、第1アンカー定規31や第2アンカー定規32の浮き上がりが確実に防止される。
【0088】
また、回動体50は、第1当接面71及び第3当接面73を有しており、フランジ板22に第1アンカー定規31が載置された場合であっても、フランジ板22に第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32が載置された場合であっても、第1アンカー定規31や第2アンカー定規32の浮き上がりを防止することができる。すなわち、固定ピン40は、フランジ板22に載置されるアンカー定規の枚数に拘わりなく、アンカー定規の浮き上がりを防止することができる。
【0089】
また、回動体50は、上部44の側方である配置領域46(
図3(B))内に配置されている。したがって、挿通姿勢にある回動体50は、
図3(A)に示されるように下方から見て下部45に覆われている。その結果、固定ピン40を第1アンカー定規31や第2アンカー定規32の挿通孔33及びフランジ板22の挿通孔23に挿通する際に、回動体50が挿通孔33の周面や挿通孔23の周面に引っ掛かることがない。
【0090】
また、回動体50は、長手方向14における中央において回動可能に丸ピン61に連結されている。したがって、作業者は、回動体50の下端部と軸部42とを指で挟むことによって、第1当接姿勢や第2当接姿勢にある回動体50を挿通姿勢に戻すことができる。すなわち、回動体50が長手方向14における中央において回動可能に保持されていることにより、固定ピン40の使い勝手が良くなり、作業者の作業性が向上する。
【0091】
なお、上述の実施形態は、N=1の場合の例であって、第1アンカー定規31がフランジ板22に載置された状態は、N枚のアンカー定規が載置された状態の一例であり、第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32がフランジ板22に載置された状態は、N枚より多いアンカー定規が載置された状態の一例である。
【0092】
[変形例1]
本変形例では、
図5(A)に示されるように、フランジ板22の下面と当接する第1当接面71及び第3当接面73に、凹凸81が形成された例が説明される。なお、以下に説明される構成以外の構成は、実施形態で説明された構成と同じである。
【0093】
凹凸81は、第1当接面71及び第3当接面73の全面に亘って設けられている。凹凸81は、例えば、第1当接面71及び第3当接面73の端から端に亘って第1当接面71及び第3当接面73を削って生成される複数の溝によって形成される。凹凸81は、複数の凸或いは複数の凹の一例である。
【0094】
凹凸81は、第1当接面71とフランジ板22の下面との間の最大静止摩擦係数、及び第2当接面72とフランジ板22の下面との間の最大静止摩擦係数を増加させる。第1当接姿勢や第2当接姿勢にある回動体50は、増加された最大静止摩擦力を超える外力が加えられない限り、第1当接姿勢或いは第2当接姿勢に維持される。すなわち、第1当接面71及び第3当接面72に凹凸81が設けられることにおり、回動体50が、第1当接姿勢や第2当接姿勢から挿通姿勢に誤って戻ることが抑制される。
【0095】
[変形例2]
本変形例では、当接面71、72、73、74(
図2)に代えて、
図5(B)に示される弧状の当接面82を上端部70に有する回動体50が説明される。なお、以下に説明される構成以外の固定ピン40の構成は、実施形態で説明された構成と同じである。
【0096】
当接面82は、概ね、回動体50の回動軸線周りに延び、かつ回動軸線に沿って延びる弧状の湾曲面である。当接面82は、一定の半径の円弧状であってもよいし、半径が徐々に変化する弧状であってもよい。当接面82は、第1当接姿勢において、フランジ板22の挿通孔23の周面とフランジ板22の下面とが形成する角に当接し(
図5(B))、第2当接姿勢において、フランジ板22の挿通孔23の周面とフランジ板22の下面とが形成する角に当接するように形成される(
図5(C))。例えば、当接面82の形状は、試行錯誤によって決定される。
【0097】
本変形例においても、固定ピン40は、水平方向において第1アンカー定規31や第2アンカー定規32を固定できるとともに、第1アンカー定規31や第2アンカー定規32の浮き上がりを防止することができる。
【0098】
なお、変形例1と同様の凹凸81が当接面82に設けられていてもよい。
【0099】
[変形例3]
本変形例では、
図6に示されるように、軸部42の上部44に設けられた配置孔83に回動体50が配置された例が説明される。なお、以下に説明される構成以外の構成は、実施形態で説明された構成と同じである。
【0100】
固定ピン40の軸部42の上部44は、軸部42の軸線49に直交する方向において上部44を貫通する配置孔83を有する。配置孔83は、実施形態で説明した回動体50を収容可能な、上下方向11に長い長孔である。配置孔83の幅は、回動体50を収容可能なように、回動体50の厚みよりも広い。
【0101】
軸部42の上部44は、丸ピン62が圧入される圧入孔84を有している。圧入孔84は、配置孔83が上部44を貫通する方向と直交する方向において、上部44を貫通している。
【0102】
丸ピン62は、ヘッドを有さない丸棒状である。丸ピン62は、軸部42の上部44が有する圧入孔84に圧入されるとともに、回動体50の軸孔51に挿通される。丸ピン62は、軸方向の両端部において固定ピン40の軸部42の上部44に固定され、回動体50を回動可能に保持する。
【0103】
本変形例においても、固定ピン40は、水平方向において第1アンカー定規31や第2アンカー定規32を固定できるとともに、第1アンカー定規31や第2アンカー定規32の浮き上がりを防止することができる。
【0104】
また、本変形例では、挿通姿勢にある回動体50は、軸部42に覆われ、軸部42によって保護されている。したがって、固定ピン40が運搬や保管される際に、回動体50が資材などに引っ掛かって回動体50が破損することが防止される。
【0105】
[その他の変形例]
上述の実施形態では、フランジ板22に載置されるアンカー定規の最低枚数がN=1である例が説明された。すなわち、固定ピン40が、フランジ板22に載置された1枚のアンカー定規である第1アンカー定規31の浮き上がりを防止し、かつ、フランジ板22に載置された2枚のアンカー定規である第1アンカー定規31及び第2アンカー定規32の浮き上がりを防止する例が説明された。しかしながら、フランジ板22に載置されるアンカー定規の最低枚数がN=2や最低枚数がN=3など、Nが2以上であってもよい。詳しく説明すると、最低枚数N=2である場合、固定ピン40の回動体50の第1当接面71は、2枚のアンカー定規がフランジ板22に載置された場合に、フランジ板22の下面に当接するように形成され、第3当接面73は、3枚のアンカー定規がフランジ板22に載置された場合に、フランジ板22の下面に当接するように設けられる。最低枚数N=3である場合、第1当接面71は、3枚のアンカー定規がフランジ板22に載置された場合にフランジ板22の下面に当接するように設けられ、第3当接面73は、4枚のアンカー定規がフランジ板22に載置された場合に、フランジ板22の下面に当接するように設けられる。具体的には、第1当接面71及び第3当接面73は、フランジ板22に載置されるアンカー定規の枚数が増えるほど、軸孔51からの離間距離が短くなるように形成される。このように、第1当接面71及び第3当接面73は、フランジ板22に載置されるアンカー定規の最低枚数Nに応じて形成される。
【0106】
上述の実施形態では、フランジ板22に1枚のアンカー定規が載置された場合にフランジ板22の下面に当接する第1当接面71と、フランジ板22に2枚のアンカー定規が載置された場合にフランジ板22の下面に当接する第3当接面73とが固定ピン40の回動体50に設けられた例が説明された。しかしながら、第1当接面71及び第3当接面73に加え、フランジ板22に3枚のアンカー定規が載置された場合にフランジ板22の下面に当接する当接面や、フランジ板22に4枚のアンカー定規が載置された場合にフランジ板22の下面に当接する当接面が回動体50に設けられていてもよい。その場合、固定ピン40は、フランジ板22に載置されるアンカー定規の枚数に拘わりなく、アンカー定規の浮き上がりを防止することができる。
【符号の説明】
【0107】
10・・・基礎用型枠構造物
16・・・アンカーボルト
20・・・基礎用型枠
21・・・型枠本体
22・・・フランジ板
23・・・第1挿通孔
31・・・第1アンカー定規
32・・・第2アンカー定規
33・・・第2挿通孔
34・・・第3挿通孔
40・・・固定ピン
41・・・ヘッド
42・・・軸部
43・・・底面
44・・・上部
45・・・下部
46・・・配置領域
48、84・・・圧入孔
49・・・軸線
50・・・回動体
51・・・軸孔
61、62・・・丸ピン
71・・・第1当接面
72・・・第2当接面
73・・・第3当接面
74・・・第4当接面
81・・・凹凸
82・・・当接面
83・・・配置孔