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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20240326BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20240326BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/511 100
A61F13/511 400
A61F13/539
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020105566
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021194474
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】示崎 幸生
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103789(JP,A)
【文献】特開2018-138065(JP,A)
【文献】特開2011-200337(JP,A)
【文献】特開2003-265518(JP,A)
【文献】特開2014-014667(JP,A)
【文献】特開2008-136564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/532
A61F 13/511
A61F 13/539
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向と幅方向とを有する吸収性物品であって、
肌面側に配置された液透過性のトップシートと、
前記肌面側の反対側である非肌面側に配置された液不透過性のバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、
前記吸収体の前記肌面側に形成され、前記長手方向に延在し、着用者が排出した尿を前記長手方向に流す溝と、
前記トップシートに形成され、前記溝の内部から前記吸収体の前記肌面側へ延在し、毛細管現象により前記尿を前記溝の内部から前記肌面側に移動させる複数の微細溝と、
を備える、吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートは、互いに積層された2枚のシート部材を有し、
前記微細溝は、前記2枚のシート部材を圧搾することによって前記2枚のシート部材が接合する接合部で形成されたエンボス溝である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記溝は、前記幅方向における前記吸収体の中央部に形成されており、
前記長手方向において隣り合う前記微細溝は、互いに前記幅方向の異なる方向に前記尿を移動させる、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体には前記溝が複数形成されており、
複数の前記溝は、前記幅方向の一端部側に配置された第1溝と、前記幅方向の他端部側に配置された第2溝と、を含んで構成される、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記幅方向の中央部側に前記尿を移動させる前記微細溝は、前記吸収体の前記幅方向の端部側に前記尿を移動させる前記微細溝よりも多く設けられている、
請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記溝の外方の前記肌面側に前記尿を誘導する誘導部を更に備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、吸収性パッド(尿パッド)、生理用品等の吸収性物品が知られている。吸収性物品は、パルプや高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)により形成され、尿や体液等の液体を吸収する吸収体を備えている。特許文献1には、吸収体の長手方向に延びる溝が形成された吸収性物品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-189243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品では、尿の拡散性を高めるために吸収体に溝が形成される場合がある。しかしながら、溝の側面や底面から尿が吸収される速度は吸収体の表面から吸収される速度よりも遅く、溝の側面や底面から吸収されなかった尿が溝の後端にまで到達してしまう虞がある。このため、例えば、溝の後端を吸収体の後端部近傍に設けた場合、溝の後端から溢れ出た尿が吸収体の後端を通り越して吸収性物品から漏出してしまう虞がある。また、尿道口の位置から後側の溝の長さを短く形成すると溝の後端まで到達する尿が多くなり、尿が吸収体の幅方向に向かって流れ出して吸収体の幅方向端部から尿が漏出する横漏れが生じてしまう虞もある。
【0005】
そこで、本発明は、尿の漏出を抑制し得る吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品では、吸収体の肌面側に形成された溝と、毛細管現象により尿を溝の内部から移動させる複数の微細溝と、を設けた。
【0007】
詳細には、本発明に係る吸収性物品は、互いに直交する長手方向と幅方向とを有する吸収性物品であって、肌面側に配置された液透過性のトップシートと、前記肌面側の反対側である非肌面側に配置された液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記吸収体の前記肌面側に形成され、前記長手方向に延在し、着用者が排出した尿を前記長手方向に流す溝と、前記溝の内部から前記吸収体の前記肌面側へ延在し、毛細管現象により前記尿を前記溝の内部から前記肌面側に移動させる複数の微細溝と、を備える。
【0008】
前記トップシートは、互いに積層された2枚のシート部材を有し、前記微細溝は、エンボス溝であってもよい。
【0009】
前記溝は、前記幅方向における前記吸収体の中央部に形成されており、前記長手方向において隣り合う前記微細溝は、互いに前記幅方向の異なる方向に前記尿を移動させてもよい。
【0010】
前記吸収体には前記溝が複数形成されており、複数の前記溝は、前記幅方向の一端部側に配置された第1溝と、前記幅方向の他端部側に配置された第2溝と、を含んで構成され
ていてもよい。
【0011】
前記幅方向の中央部側に前記尿を移動させる前記微細溝は、前記吸収体の前記幅方向の端部側に前記尿を移動させる前記微細溝よりも多く設けられていてもよい。
【0012】
上記の吸収性物品は、前記溝の外方の前記肌面側に前記尿を誘導する誘導部を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記の吸収性物品であれば、尿の漏出を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るおむつの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係るおむつの平面図である。
図4A図4Aは、実施形態1に係るおむつの端面図である。
図4B図4Bは、実施形態1に係るおむつの端面図である。
図5図5は、溝の断面積と突起部の断面積の比率を変化させて漏れ抑制効果を検証した試験結果を示す表である。
図6図6は、実施形態1の変形例1に係るおむつの平面図である。
図7A図7Aは、実施形態1の変形例1に係るおむつの端面図である。
図7B図7Bは、実施形態1の変形例1に係るおむつの端面図である。
図8図8は、実施形態1の変形例2に係るおむつの平面図である。
図9A図9Aは、実施形態1の変形例2に係るおむつの端面図である。
図9B図9Bは、実施形態1の変形例2に係るおむつの端面図である。
図10図10は、実施形態1の変形例3に係るおむつの平面図である。
図11A図11Aは、実施形態1の変形例3に係るおむつの端面図である。
図11B図11Bは、実施形態1の変形例3に係るおむつの端面図である。
図12図12は、実施形態1の変形例4に係るおむつの平面図である。
図13図13は、実施形態1の変形例5に係るおむつの平面図である。
図14図14は、実施形態1の変形例6に係るおむつの平面図である。
図15図15は、装着状態における吸収体の幅方向の断面と着用者の肌面を模式的に示す図である。
図16図16は、装着状態における吸収体の幅方向の断面と着用者の肌面を模式的に示す図である。
図17図17は、実施形態2に係るおむつの平面図である。
図18図18は、実施形態2に係るおむつの端面図である。
図19図19は、微細溝数、微細溝間隔を変化させて漏れ抑制効果を検証した試験結果を示す表である。
図20図20は、実施形態2の変形例に係るおむつの平面図である。
図21図21は、実施形態3に係るおむつの平面図である。
図22図22は、実施形態3に係るおむつの端面図である。
図23図23は、実施形態3の変形例1に係るおむつの平面図である。
図24図24は、実施形態3の変形例2に係るおむつの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0016】
<実施形態1>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃(図1及び図3に示す前身頃領域1F)と背部に対向して配置される後身頃(図1及び図3に示す後身頃領域1R)とを結ぶ方向を長手方向とし、長手方向に直交する方向を幅方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とする。厚み方向は、長手方向と幅方向のいずれにも直交する。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。また、後身頃領域から前身頃領域に向かう方向に見た場合の左右を左右方向とする。
【0017】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0018】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位にレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0019】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する箇所に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシート及びアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0020】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5、吸収体6、トップシート7を有する。バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、
肌面側の反対側である非肌面側に配置されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0021】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6に接触することになる。
【0022】
また、おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間におむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。レグギャザー3AL,3ARは、おむつ1と着用者の大腿部との間に隙間が形成されるのを防ぐために設けられる。弾性部材4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数で設けられる。弾性部材4SL,4SRの配置領域が、レグギャザー3AL,3ARとなる。
【0023】
また、おむつ1は、立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rには、おむつ1の立体ギャザー3BL,3BRと同様、着用者の大腿部が位置する箇所に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って編み込まれている。よって、サイドシート8L,8Rは、おむつ1が装着状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状やW字状の形態になると、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRとなる。
【0024】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための弾性部材9ERは、吸収体6の端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0025】
吸収体6は、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6全体を俯瞰してみると、
液体を吸収した吸収体6の厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。なお、吸収体6は、短繊維や合成繊維からなる吸収コアと、吸収コアを包むコアラップシートを含んで構成されていてもよい。コアラップシートには、例えば、ティッシュペーパーが用いられる。
【0026】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0027】
図3は、伸長した状態のおむつ1を模式的に示す平面図である。おむつ1は、吸収体6の肌面側(トップシート7側)に形成された溝10を備える。溝10は、おむつ1の長手方向に延在し、着用者が排出した尿を長手方向に流して吸収体6の全体に拡散するために設けられている。例えば、溝10は、幅が40~50mmであり、長さが100~400mmである。また、溝10は、おむつ1の幅方向の中央部で且つ長手方向の両端部が前身頃領域1F及び後身頃領域1Rの中程に配置されている溝10は、着用者の尿道口に対応する領域12(以下、「尿道口対応領域12」と称する)を含んで形成される。これにより、溝10には着用者が排泄した尿が流入し易くなる。なお、長手方向における溝10の中央位置は吸収体6の中央より前身頃領域1F側となる。なお、溝10は吸収体6の吸収コアを貫通して形成されていてもよい。
【0028】
尿道口対応領域12は、溝10の長手方向の中央領域から前方の範囲に存在する。尿道口対応領域12は、着用者の尿道口がトップシート7に当接する領域、または着用者の尿道口が対向する領域であり、排尿位置である。尿道口対応領域12は、着用者の尿道口の位置の個人差や、男女差や、着用者毎に生じるおむつ1の微小な位置ずれ等を考慮して規定される。
【0029】
図4Aは、おむつ1を図3に示すA-A線で切断した端面図である。図4Bは、おむつ1を図3に示すB-B線で切断した端面図である。本実施形態において、溝10は吸収体6を厚み方向に貫通しない非貫通型に形成されている。また、図3及び図4Bに示すように、本実施形態に係るおむつ1は、溝10の内部に配置された突起部10a(「誘導部」の一例)を備える。突起部10aは、吸収体6と一体的に形成されている。例えば、溝10及び突起部10aの成型パターンに対応した成形型が外周面に形成されたフォーミングドラムに繊維を積層することによって溝10及び突起部10aが一体的に形成された吸収体6を製造することができる。
【0030】
一般的に、吸収性物品において尿の拡散性を高めるために吸収体に溝やスリットが形成される。しかしながら、溝の側面や底面から尿が吸収される速度は吸収体の表面から吸収される速度よりも遅く、多量の尿が溝の後端にまで到達して吸収性物品の後端から漏れてしまう虞がある。一方、本実施形態に係るおむつ1は、溝10の内部に形成された突起部10a(「誘導部」の一例)を備える。突起部10aは、溝10内における尿の流れを阻害することによって当該尿を溢れさせて溝10の外方の肌面側に誘導する。本実施形態に係るおむつ1は、尿道口対応領域12よりも後身頃領域1R側に突起部10aを設けることによって、尿道口対応領域12よりも後身頃領域1R側の溝10内を流れる尿の一部を溝10の外方の肌面側に誘導する。突起部10aによってトップシート7の肌面側に誘導された尿は、吸収体6の肌面側から吸収される。これにより、おむつ1は、多量の尿が溝10の後端にまで到達することを防ぎ、おむつ1の後端から尿が漏れるのを抑制できる。
【0031】
ここで、突起部10aが尿を誘導する溝10の外方の肌面側とは、溝10に隣接するトップシート7の肌面側であってもよいし、溝10に隣接する吸収体6の肌面側であってもよいし、溝10の近傍の吸収体6の肌面側であってもよいし、吸収体6のトップシート7との間であってもよい。
【0032】
また、突起部10aは、以下のような機能を有するともいえる。例えば、突起部10aは、溝10内の尿を、溝10に隣接するトップシート7の肌面側に誘導する。突起部10aは、溝10を流れる尿の一部を溝10に隣接する吸収体6の肌面側に誘導する。突起部10aは、溝10を流れる尿の一部を溝10の近傍の吸収体6の肌面側に誘導する。また、突起部10aは、吸収体6のトップシート7との間に尿を誘導してもよい。これによりおむつ1は、尿を着用者の肌に触れ難くし着用感を向上できる。
【0033】
また、本実施形態に係るおむつ1は、立体ギャザー3BL,3BRを備える。立体ギャザー3BL,3BRは、尿がおむつ1の幅方向端部から漏出する横漏れを抑制する。立体ギャザー3BL,3BRは、突起部10aによって溝10の外方の肌面側に誘導した尿が横漏れするのを好適に抑制できる。
【0034】
また、本実施形態に係るおむつ1は、レグギャザー3AL,3ARを備える。レグギャザー3AL,3ARは、おむつ1と着用者の大腿部との間に隙間が形成されるのを防ぎ、尿がおむつ1の幅方向端部から漏出する横漏れを抑制する。立体ギャザー3BL,3BRは、突起部10aによって溝10の外方の肌面側に誘導した尿が横漏れするのを好適に抑制できる。
【0035】
本実施形態では、尿道口対応領域12よりも後方(後身頃領域1R側)に等間隔で3つの突起部10aを配置している。突起部10aの配置間隔や配置数は、おむつ1全体の吸収量、サイズ、大人用、乳児用等で適宜設定可能である。突起部10aは、1つのみ形成されていてもよい。
【0036】
ここで、例えば、被介護者による一回の排尿量は150~200mlであることが知られている。150~200mlの尿が溝10の後端にまで到達しておむつ1の後端から尿が漏れるのを抑制するために、溝10から溢れる尿の量は、おむつ1の幅方向における突起部10aの断面積と溝10の断面積の比率によって調整できる。本実施形態では、溝と突起部の断面積の比率を変化させて漏れを抑制できたかを検証する試験を行った。本試験ではサンプル1~7の7種類のおむつを作成した。試験方法の手順は以下の通りである。まず、前身頃領域が上方、後身頃領域が下方となるようにおむつを長手方向に60度に傾斜した状態で設置する。次いで、おむつの尿道口対応領域にビュレットから200mlの人工尿を10ml/secの速度で注入する。次いで、10分後、同様に200mlの人工尿を注入する。この人工尿がおむつから漏出するまで人工尿の注入を繰り返し行う。なお、人工尿は、イオン交換水10L(リットル)に塩化ナトリウム80.4g、尿素194g、硫酸マグネシウム七水和物20.5g、塩化カルシウム二水和物8.4gを溶解させて作成した。
【0037】
図5は、本試験結果を示す表である。図5の「1」~「7」の欄は、本試験で作成したおむつのサンプル番号である。また、図5の「溝の断面積(mm)」の項目は、各サンプルのおむつを幅方向で切断した場合の溝の断面積を示す。図5の「突起部の断面積(mm)」の項目は、各サンプルのおむつを幅方向で切断した場合の突起部の断面積を示す。なお、突起部は、吸収体の吸収コアを包むコアラップシートとトップシートを用いて中空状に形成されている。各サンプルのおむつを長手方向で切断した場合の突起部の断面積は200mmである。図5の「比率」の項目は、各サンプルのおむつにおける突起部の断面積と溝の断面積の比の値(突起部の断面積/溝の断面積)を示す。なお、比の値にお
ける各断面積は、おむつを幅方向で切断した場合の断面積である。図5の「突起部の数」の項目は、形成した突起部の数を示している。なお、サンプル7のおむつは、突起部を形成しない場合の比較対象であるので、当該項目に突起部が形成されていないを表す「0」記載されている。なお、3つの突起部同士の間隔は20mmとした。図5の「長手方向流れ距離」の項目は、人工尿をおむつに注入した位置から当該おむつの長手方向の後身頃領域側までの人工尿の到達距離を示す。図5の「幅方向拡散距離(mm)」の項目は、各サンプルのおむつの幅方向での人工尿の到達距離である。図5の「吸収量(g)」の項目は、各サンプルのおむつが吸収した人工尿の量(g)である。図5の「漏れ抑制」の項目は、各サンプルのおむつが漏れを抑制できたか否かを示している、「漏れ抑制」中の「〇」はその欄のおむつが漏れを抑制できたことを示し、「漏れ抑制」中の「×」はその欄のおむつが漏れを抑制できなかったことを示している。なお、本試験では、人工尿の注入の2サイクル目でおむつから人工尿が漏出した場合を漏れが抑制できなかったこととした。なお、各サンプルのおむつにおいて、溝は吸収コアを貫通して形成されており、溝の幅は25mmであり、人工尿の注入位置から溝の後端までの長さは220mmである。また、各サンプルのおむつにおいて、人工尿の注入位置から後端までの吸収体の長さを330mmとし、吸収体の幅を150mmとした。吸収体において、パルプの目付は413g/mであり、SAPの目付は237g/mである。コアラップシートのティッシュペーパーの目付は237g/mである。なお、コアラップシートは吸収コアの上下に沿わして配置した。バックシートには、ポリエチレン製の被透水性シートを用いた。トップシートには、ポリプロピレン製のシートとエアスルー不織布を用いた。エアスルー不織布の目付は、20g/mである。
【0038】
図5の表に示すように、突起部の断面積と溝の断面積の比率を0.3以上0.8以下にすることで尿漏れを抑制できることが見出された。本実施形態に係るおむつ1は、幅方向で切断した場合の突起部10aの断面積と溝10の断面積の比率が0.3以上0.8以下である。この構成のおむつ1によれば、尿の漏出を抑制できる。また、突起部10aと溝10の幅方向で切断した場合の断面積の比率は、より好ましくは0.6以上0.8以下とする。図5の表に示すように、この比率のおむつでは吸収量が500g以上となっており、より多くの尿を吸収、保持することが可能である。なお、サンプル1のおむつは、比率が「1」であり、突起部により溝が長手方向で分断されている構成を備える。サンプル1のおむつは、漏れを抑制できているが、この構成では幅方向に尿が拡散され過ぎる虞がある。突起部10aと溝10の断面積の比率が0.8より大きいと幅方向に尿が拡散され過ぎる虞があるため、当該比率は0.8以下に設定されるのが好ましい。
【0039】
<変形例1>
次に、本実施形態の変形例1に係るおむつ1について図6図7Bを用いて説明する。図6は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。図7Aは、本変形例に係るおむつ1を図6に示すC-C線で切断した端面図であり、図7Bは、本変形例に係るおむつ1を図6に示すD-D線で切断した端面図である。
【0040】
本変形例において、突起部は、尿道口対応領域12よりも後身頃領域1R側に、所定間隔で溝10の内部に複数形成されている。図6に示すように、例えば、4個の突起部100L,100Rが形成されている。突起部100Lは溝10内の左側に設けられ、突起部
100Rは溝10内の右側に設けられている。左側に設けられた突起部100Lは、溝10内を流れる尿を左方に溢れさせることによって当該尿を溝10の左外方の肌面側に誘導する。右側に設けられた突起部100Rは、溝10内を流れる尿を右方に溢れさせることによって当該尿を溝10の右外方の肌面側に誘導する。このように、本変形例では、長手方向において隣り合う突起部100L,100Rは、互いに幅方向の異なる方向に尿を誘導する。これにより、本変形例に係るおむつ1は、吸収体6の幅方向中央部に形成された溝10から左右均等に尿を誘導することができ、吸収体6全体で尿を吸収することができ
るため尿漏れを抑制できる。
【0041】
<変形例2>
次に、本実施形態の変形例2に係るおむつ1について図8図9Bを用いて説明する。図8は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。図9Aは、本変形例に係るおむつ1を図8に示すE-E線で切断した端面図であり、図9Bは、本変形例に係るおむつ1を図8に示すF-F線で切断した端面図である。
【0042】
本変形例において、溝10の外方の肌面側に尿を誘導するために溝10の底部にトップシート7が接着されている。図8には、トップシート7と溝10の底部との接着領域101を点線の円で囲んで示している。本変形例では、接着領域101は4箇所形成されている。トップシート7と溝10の底部が接着されていない領域では、尿はトップシート7の非肌面側である溝10内を流れる。
【0043】
本変形例に係るおむつ1は、トップシート7が溝10の底部に接着された接着領域101と、トップシート7が溝10の底部に接着されていない領域(図8中、接着領域101以外の領域、以降「非接着領域」と称する)とを備える。非接着領域は、接着領域101から吸収体6の肌面側に向かって延在している。接着領域101においては、溝10内で尿が流れることができる空間が狭くなり、当該尿は溝10の外方に接着領域101から吸収体6の肌面側に向かって延在する非接着領域を伝って吸収体6の肌面側に誘導される。このように、接着領域から吸収体6の肌面側に延在する非接着領域までの間のトップシート7を誘導部とすることもできる。誘導部によってトップシート7の肌面側に誘導された尿は、吸収体6の肌面側から吸収される。これにより、本変形例に係るおむつ1は、多量の尿が溝10の後端にまで到達することを防ぐことで、おむつ1の後端から尿が漏れるのを抑制できる。
【0044】
<変形例3>
次に、本実施形態の変形例3に係るおむつ1について図10図11Bを用いて説明する。図10は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。図11Aは、本変形例に係るおむつ1を図10に示すG-G線で切断した端面図であり、図11Bは、本変形例に係るおむつ1を図10に示すH-H線で切断した端面図である。
【0045】
本変形例において、トップシート7と溝10の底部との接着領域101L,101Rは、尿道口対応領域12よりも後身頃領域1R側に、所定間隔で溝10の内部に複数形成されている。図10に示すように、例えば、接着領域101L,101Rが4箇所形成され
ている。接着領域101Lは溝10内の左側に設けられ、接着領域101Rは溝10内の右側に設けられている。接着領域101Lによって溝10内の左側で尿が流れることができる空間を狭くすることで、当該尿が接着領域101Lからトップシート7の非接着領域を伝って溝10の左方における吸収体6の肌面側に誘導される。また、接着領域101Rによって溝10内の右側で尿が流れることができる空間を狭くすることで、当該尿が接着領域101Lからトップシート7の非接着領域を伝って溝10の右方における吸収体6の肌面側に誘導される。このように、本変形例では、長手方向において隣り合う接着領域101L,101Rを交互に設け接着領域101L,101Rによって互いに幅方向の異なる方向に尿を誘導する。これにより、本変形例に係るおむつ1は、吸収体6の幅方向中央部に形成された溝10から左右均等に尿を誘導することができ、吸収体6全体で尿を吸収することができるため尿漏れを抑制できる。
【0046】
<変形例4>
次に、本実施形態の変形例4に係るおむつ1について図12を用いて説明する。図12は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。なお、図12
では、説明のためにサイドシート8L,8R及び弾性部材8EL,8ERの図示は省略する。
【0047】
本変形例において、吸収体6には、複数の溝が形成されている。より具体的には、吸収体6において、おむつ1の幅方向の左端部側に配置された溝11L(「第1溝」の一例)と、当該幅方向の右端部側に配置された溝11R(「第2溝」の一例)とが形成されている。溝11Lと溝11Rは、長手方向に延在しており、互いに平行である。溝11L,11Rは、幅が40~50mmであり、長さが100~400mmである。なお、長手方向において、溝11L,11Rの配置位置は、図3に示す溝10の配置位置と同様である。
【0048】
本変形例に係るおむつ1では、誘導部の一例として、突起部102a,102b,103a,103bが所定間隔で溝11L,11Rに形成されている。例えば、溝11Lの内部には、突起部102aが3個配置され、突起部102bが1個配置されている。突起部102aは、溝11L内の右側、すなわち幅方向中央部側に設けられている。一方、突起部102bは、溝11L内の左側、すなわち幅方向左端側に設けられている。幅方向中央部側に設けられた突起部102aは、溝11L内を流れる尿を吸収体6の幅方向中央部側に溢れさせることによって当該尿を当該幅方向中央部側に誘導する。幅方向左端側に設けられた突起部102bは、溝11L内を流れる尿を吸収体6の幅方向左端側に溢れさせることによって当該尿を当該幅方向左端側に誘導する。
【0049】
溝11Rの内部には、突起部103aが3個配置され、突起部103bが1個配置されている。突起部103aは、溝11R内の左側、すなわち幅方向中央部側に設けられている。一方、突起部103bは、溝11R内の右側、すなわち幅方向右端側に設けられている。幅方向中央部側に設けられた突起部103aは、溝11R内を流れる尿を吸収体6の幅方向中央部側に溢れさせることによって当該尿を当該幅方向中央部側に誘導する。幅方向左端側に設けられた突起部103bは、溝11R内を流れる尿を吸収体6の幅方向左端側に溢れさせることによって当該尿を当該幅方向右端側に誘導する。
【0050】
このように、本変形例に係るおむつ1において、吸収体6の幅方向の端部側に尿を誘導する突起部102b,103bよりも、吸収体6の幅方向の中央部側に尿を誘導する突起部102a,103aの方が多く設けられている。これにより、本変形例に係るおむつ1は、吸収体6の幅方向の中央部側に尿を誘導することができ、吸収体6の当該中央部側で相対的に多くの尿を吸収することができるため尿漏れを抑制できる。
【0051】
本変形例では、誘導部の一例として突起部を設けたが、突起部に代えて接着領域を設けてもよい。なお、本変形例においても図3等に示すように吸収体6の幅方向の中央部に溝10及び突起部10a又は図8図11Bに示すように溝10及び接着領域101,101L,101Rが形成されていてもよい。
【0052】
<変形例5>
次に、本実施形態の変形例5に係るおむつ1について図13を用いて説明する。図13は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。なお、図13では、説明のためにサイドシート8L,8R及び弾性部材8EL,8ERの図示は省略する。本変形例では、吸収体6の幅方向の端部側に尿を誘導する突起部102b,103bが設けられず、吸収体6の幅方向の中央部側に尿を誘導する突起部102a,103aのみが設けられている。これにより、本変形例に係るおむつ1は、吸収体6の幅方向の中央部側に尿を誘導することができ、吸収体6の当該中央部側で多くの尿を吸収することができるため尿漏れを抑制できる。
【0053】
本変形例では、誘導部の一例として突起部を設けたが、突起部に代えて接着領域を設け
てもよい。なお、本変形例においても図3等に示すように吸収体6の幅方向の中央部に溝10及び突起部10a又は図8図11Bに示すように溝10及び接着領域101,101L,101Rが形成されていてもよい。
【0054】
<変形例6>
次に、本実施形態の変形例6に係るおむつ1について図14を用いて説明する。図14は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。本変形例に係るおむつ1は、溝10から長手方向に対して斜め方向に、且つ、前身頃領域1F側に分岐する第1分岐溝21L,21Rと、溝10から長手方向に対して斜め方向に、且つ、後身頃領域1R側に分岐する第2分岐溝22L,22Rと、を備える。第1分岐溝21Lは、前身頃領域1Fの斜め左側に向かって延在し、第1分岐溝21Rは、前身頃領域1Fの斜め右側に向かって延在している。同様に、第2分岐溝22Lは、後身頃領域1Rの斜め左側に向かって延在し、第2分岐溝22Rは、後身頃領域1Rの斜め右側に向かって延在している。
【0055】
このように、おむつ1は、溝10から第1分岐溝21L,21R及び第2分岐溝22L,22Rを備えていてもよい。この構成によれば、おむつ1は、溝10内を流れる尿を前身頃領域1F及び後身頃領域1Rの幅方向に分散させることで、尿が吸収体6の後端側から漏出するのを抑制できる。
【0056】
なお、実施形態1及びその変形例において、溝10,11L,11Rは長手方向に沿って延在しているが、平面視において溝10,11L,11Rが当該長手方向から数度から数十度傾いた斜め方向に延在していてもよい。溝10,11L,11Rは、斜め方向に延在していても、長手方向の成分が幅方向の成分よりも長ければ、長手方向に延在しているといえる。また、本実施形態及び変形例において、溝10,11L,11Rは直線状に延在しているが、溝10,11L,11Rは、曲線状に延在していてもよい。
【0057】
また、図15は、装着状態におけるおむつ1の吸収体6の幅方向に切断した断面と着用者の肌面30を模式的に示す図である。図15に示すように、吸収体6の幅方向に切断した場合の断面形状がU字状となるようにおむつ1が着用者に装着された場合に、溝10が着用者の肌面から離れる方向の折り目位置31に位置するように配置されることが望ましい。
【0058】
また、図16は、装着状態におけるおむつ1の吸収体6の幅方向に切断した断面と着用者の肌面30を模式的に示す図である。図16に示すように、吸収体6の幅方向の断面形状がW字状となるようにおむつ1が着用者に装着された場合に、溝11L,11Rが着用者の肌面30から離れる方向の折り目位置32に位置するように配置される。
【0059】
図15及び図16に示すように、装着状態において肌面30から離れる方向の折目位置に溝を配置することで、吸収体6が肌面30から見て谷底となる位置に溝を配置させることがでる。これにより、おむつ1は、谷底となる位置に配置された溝内に尿を流入させ易くできる。
【0060】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るおむつ1について説明する。なお、上記の実施形態1に係るおむつ1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0061】
図17は、本実施形態に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。本実施形態に係るおむつ1は、溝10の内部から吸収体6の肌面側へ延在する複数の微細溝
104L,104Rを備える。微細溝104Lは、溝10の幅方向中央部から後身頃領域1R側左寄りに延在し、微細溝104Rは、溝10の幅方向中央部から後身頃領域1R側右寄りに延在している。微細溝104L,104Rは、毛細管現象によって溝10内を流れる尿を溝10の外方の肌面側に移動させる。本実施形態に係るおむつ1は、溝10内を流れる尿を溝10の外方に移動させることによって、多量の尿が溝10の後端にまで到達することを防ぎ、おむつ1の後端から尿が漏れるのを抑制できる。
【0062】
図18は、本実施形態に係るおむつ1を図17に示すI-I線で切断した端面図である。本実施形態に係るおむつ1において、トップシート7は、互いに積層された2枚のシート部材7a,7bを有する。シート部材7aは肌面側に配置されており、シート部材7bは非肌面側に配置されている。シート部材7a,7bには、液透過性を有する織布、不織布、多孔質フィルム等が用いられる。
【0063】
シート部材7a,7bは、接合部20によって接着されている。シート部材7a,7bは、溶着によって接合されている。微細溝104L,104Rは、シート部材7a,7bを接合する接合部によって形成されたエンボス溝である。エンボス溝を形成する際には、肌面側に配置されるシート部材7aを非肌面側に配置されるシート部材7bに向かって押圧しながら接合部20となる領域に熱をかけることによって溶着するとともに、シート部材7a,7bが非肌面側となる方向に押し出される。これによって、厚み方向に見て溝10と重なる微細溝104L,104Rの一部を溝10内に落とし込んで溝10の内部に配置することができる。
【0064】
また、図17に示すように、長手方向において隣り合う微細溝104L,104Rは、互いに幅方向の異なる方向に延在しているので、当該幅方向の異なる方向に尿を移動させることができる。これにより、本実施形態に係るおむつ1は、吸収体6の幅方向中央部に形成された溝10から左右均等に尿を移動させることができ、吸収体6全体で尿を吸収することができるため尿漏れを抑制できる。
【0065】
なお、微細溝104L,104Rは、1枚の嵩高の不織布を圧搾することにより形成されたエンボス溝であってもよい。また、微細溝104L,104Rを形成するために、熱圧着でフィルム化された領域や、ホットメルトが塗布された領域は、周囲の部分と比べて透液性が低くなり、より優れた作用を奏する。
【0066】
本実施形態では、微細溝数、微細溝間隔を変化させて漏れを抑制できたかを検証する試験を行った。本試験ではサンプル1~12の12種類のおむつを作成した。試験方法の手順は上記実施形態1における試験と同様である。
【0067】
図19は、本試験結果を示す表である。図19の「1」~「12」の欄は、本試験で作成したおむつのサンプル番号である。また、図19の「溝の長さ(mm)」の項目は、各サンプルのおむつの溝の長さを示す。図19の「微細溝数」の項目は、各サンプルのおむつの微細溝の合計数を示す。図19の「微細溝間隔(mm)」の項目は、各サンプルのおむつにおける溝の左右一方側の長手方向で隣り合う微細溝の間隔を示す。図19の「長手方向流れ距離」の項目は、人工尿をおむつに注入した位置から当該おむつの長手方向の後身頃領域側までの人工尿の到達距離を示す。図19の「吸収量(g)」の項目は、各サンプルのおむつが吸収した人工尿の量(g)である。図19の「漏れ抑制」の項目は、各サンプルのおむつが漏れを抑制できたか否かを示している、「漏れ抑制」中の「〇」はその欄のおむつが漏れを抑制できたことを示し、「漏れ抑制」中の「×」はその欄のおむつが漏れを抑制できなかったことを示している。なお、本試験では、人工尿の注入の2サイクル目でおむつから人工尿が漏出した場合を漏れが抑制できなかったこととした。なお、微細溝は、平面視において、幅が2mm、深さが2mm、長さが50mmである。微細溝は
、おむつの幅方向中心側から溝の延伸方向(おむつ1の長手方向)に対して30度斜め方向に延在している。微細溝は、溝の左右両側に均等数配置した。また、その他の各サンプルのおむつの構成は、上記実施形態における各サンプルのおむつと同様である。
【0068】
図19の表の「吸収量(g)」の項目に示すように、おむつの尿の吸収量が多いということは、おむつが溝の外に尿を誘導することで吸収体全体で尿を効率的に吸収したということであり、漏れ抑制の効果を奏する結果となっている。また、図19の表に示すように、溝の左右一方側の長手方向で隣り合う微細溝の間隔を20mm以内とすることで漏れを抑制できることが見出された。このため、長手方向で隣り合う微細溝104L同士の間隔は20mm以内が好ましい。また、長手方向で隣り合う微細溝104R同士の間隔は20mm以内が好ましい。
【0069】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例に係るおむつ1について図20を用いて説明する。図20は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。なお、図20では、説明のためにサイドシート8L,8R及び弾性部材8EL,8ERの図示は省略する。
【0070】
図20に示す構成と同様に、本変形例において、吸収体6には、溝11L,11Rが形成されている。本変形例に係るおむつ1は、溝11Lの内部から吸収体6の肌面側へ延在する複数の微細溝105a,105bを備える。微細溝105aは、溝11Lの幅方向中央部から後身頃領域1R側右寄り、すなわち幅方向中央部側に延在し、微細溝105bは、溝11Lの幅方向中央部から後身頃領域1R側左寄り、すなわち幅方向左端部側に延在している。また、本変形例に係るおむつ1は、溝11Rの内部から吸収体6の肌面側へ延在する複数の微細溝106a,106bを備える。微細溝106aは、溝11Rの幅方向中央部から後身頃領域1R側左寄り、すなわち幅方向中央部側に延在し、微細溝106bは、溝11Rの幅方向中央部から後身頃領域1R側右寄り、すなわち幅方向右端部側に延在している。なお、微細溝105a,105b,106a,106bは、微細溝104L,104Rと同様にエンボス溝である。
【0071】
ここで、微細溝105a,106aは、吸収体6の幅方向中央部側に尿を毛細管現象によって移動させ、微細溝105b,106bは、吸収体6の幅方向端部側に尿を毛細管現象によって移動させる。本変形例に係るおむつ1において、吸収体6の幅方向の端部側に尿を移動させる微細溝105b,106bよりも、吸収体6の幅方向の中央部側に尿を移動させる微細溝105a,106aの方が多く設けられている。これにより、本変形例に係るおむつ1は、吸収体6の幅方向の中央部側に尿を誘導することができ、吸収体6の当該中央部側で相対的に多くの尿を吸収することができるため尿漏れを抑制できる。なお、吸収体6の幅方向の端部側に尿を移動させる微細溝105b,106bを設けずに、吸収体6の幅方向の中央部側に尿を移動させる微細溝105a,106aのみを設けてもよい。
【0072】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るおむつ1について説明する。なお、上記の実施形態1及び実施形態2に係るおむつ1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0073】
図21は、本実施形態に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である
。本実施形態に係るおむつ1は、尿道口対応領域12よりも後身頃領域1R側で溝10から分岐し、尿を溝10の外方の肌面側に誘導する誘導経路107L,107Rを備える。誘導経路107Lは、溝10に接続されて後身頃領域1R側左寄りに延在している。誘導
経路107Rは、溝10に接続されて後身頃領域1R側右寄りに延在している。本実施形態においては、誘導経路107L,107Rは、各4本ずつ形成されている。誘導経路107L,107Rは、各1本ずつ形成されていてもよいし、誘導経路107L,107Rのいずれかが1本のみ形成されていてもよい。
【0074】
図22は、本実施形態に係るおむつ1を図21に示すJ-J線で切断した端面図である。誘導経路107Lは、図21に示す尿道口対応領域12側から後身頃領域1R側に向かって浅くなるように形成されている。本実施形態では、誘導経路107Lは、後身頃領域1R側に向かって浅くなるように傾斜状に形成されている。なお、誘導経路107Lは、後身頃領域1R側に向かって浅くなるように階段状に形成されていてもよい。また、図示は省略するが、誘導経路107Rも同様に後身頃領域1R側に向かって浅くなるように形成されている。誘導経路107L,107Rが形成された吸収体6は、誘導経路107L,107Rの成型パターンに対応した成形型が外周面に形成されたフォーミングドラムに繊維を積層することによって製造できる。
【0075】
なお、誘導経路107L,107Rは、階段状に形成されていてもよい。また、誘導経路107L,107Rをスロープ状に形成することで尿が流れる方向を規制し易くできる。
【0076】
本実施形態に係るおむつ1は、溝10内を流れる尿を誘導経路107L,107Rに分岐させることで、溝10の外方の肌面側に移動させて、吸収体6により吸収することができる。これにより、本実施形態に係るおむつ1は、多量の尿が溝10の後端にまで到達することを防ぎ、おむつ1の後端から尿が漏れるのを抑制できる。
【0077】
<変形例1>
次に、本実施形態の変形例1に係るおむつ1について図23を用いて説明する。図23は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。本変形例に係るおむつ1は、誘導経路107L,107Rの先端部が扇方形状に形成されている。このように、誘導経路107L,107Rの先端部を形成することで、各誘導経路における尿の出口を広げ、各誘導経路の延在方向以外の方向へも尿を誘導できる。これによって、おむつ1は、吸収体6の全体に尿を拡散させて吸収体6の全体で尿を吸収、保持することができるので、尿の漏出を抑制できる。
【0078】
<変形例2>
次に、本実施形態の変形例2に係るおむつ1について図24を用いて説明する。図24は、本変形例に係るおむつ1を伸長した状態を模式的に示す平面図である。本変形例に係るおむつ1は、誘導経路107L,107Rの先端部が枝分かれして枝部108が形成されている。枝部108は、誘導経路107L,107Rの延在方向と直交する方向に延在している。なお、枝部108は、誘導経路107L,107Rの延在方向に対して斜め方向に延在していてもよい。この枝部108は、誘導経路107L,107Rと同様にスロープ状に形成されていてもよいし、階段状に形成されていてもよい。このように、誘導経路107L,107Rの先端部に枝部108を形成することで、各枝部108を通じて各誘導経路の延在方向以外の方向へも尿を誘導できる。これによって、おむつ1は、吸収体6の全体に尿を拡散させて吸収体6の全体で尿を吸収、保持することができるので、尿の漏出を抑制できる。
【0079】
なお、上記実施形態や変形例における構成は適宜組み合わせることができる。例えば、おむつ1は、突起部10a,100L,100Rや接着領域101L,101Rの誘導部と、微細溝104L,104Rを備えていてもよいし、これらの誘導部と、誘導経路107L,107Rを備えていてもよい。
【0080】
本実施形態では、大人用(介護用)のテープ型使い捨ておむつを例示するが、本願で開示する形態は限定されるものでなく、例えば、子供用や乳幼児用のテープ型使い捨ておむつであってもよいし、大人用、子供用又は乳幼児用のパンツ型使い捨ておむつや尿取りパッド等であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 :おむつ
1F :前身頃領域
1R :後身頃領域
2F :フロントパッチ
2L :テープ
2R :テープ
3BL :立体ギャザー
3BR :立体ギャザー
3R :ウェストギャザー
4 :カバーシート
4SR :弾性部材
4SL :弾性部材
5 :バックシート
6 :吸収体
7 :トップシート
8EL :弾性部材
8ER :弾性部材
8L :サイドシート
8R :サイドシート
9ER :弾性部材
10 :溝
10a :突起部
11L :溝
11R :溝
12 :尿道口対応領域
21L :第1分岐溝
21R :第1分岐溝
22L :第2分岐溝
22R :第2分岐溝
30 :肌面
31 :折り目位置
32 :折り目位置
101 :接着領域
104L:微細溝
104R:微細溝
107L:分岐経路
107R:分岐経路
108 :枝部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
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図23
図24