(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240326BHJP
G07C 7/00 20060101ALI20240326BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240326BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60R11/02 Z
G07C7/00
H05K5/02 E
B60R11/04
(21)【出願番号】P 2020106885
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】渡部 健太郎
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080391(JP,A)
【文献】特開2017-061276(JP,A)
【文献】特開2018-188005(JP,A)
【文献】特開2004-080678(JP,A)
【文献】特開2018-122651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/04
B60R 11/02
B60R 1/00
G07C 7/00
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容する本体ケースと、
前記本体ケースに対して回動可能となるように前記本体ケースに取り付けられるカメラユニットと、前記本体ケースを接着部材を介して被取付部材に取り付けるための前記接着部材が貼り付けられ
、前記本体ケースに対して位置が固定されている貼付面とを備える電子機器であって、
前記電子機器は、
前記カメラユニットの撮像軸が所定方向となるように前記カメラユニットを回動させることにより、鉛直方向に対する前記貼付面の角度が互いに異なる第1取付姿勢および第2取付姿勢で
取り付けられた状態において使用可能であり、
前記接着部材は、前記第1取付姿勢において前記電子機器の重心を通る第1鉛直線と
前記貼付面が交差する
第1交点および前記第2取付姿勢において前記電子機器の重心を通る第2鉛直線と
前記貼付面が交差する
第2交点を含む範囲に設けられることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1取付姿勢は、前記カメラユニットの撮像軸が前記所定方向となるように回動可能となる前記貼付面の最大角度に対応する取付姿勢であり、
前記第2取付姿勢は、前記カメラユニットの撮像軸が前記所定方向となるように回動可能となる前記貼付面の最小角度に対応する取付姿勢であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記電子機器は、車両のウィンドシールドに取り付けられ、
前記接着部材は、前
記第1交点を含む前記貼付面上の第1範囲と重なり、かつ、前
記第2交点を含む前記貼付面上の第2範囲と重なるように設けられ、
前記第1範囲および前記第2範囲のそれぞれの前記車両の左右方向に直交する方向の長さは、前記第1範囲および前記第2範囲のそれぞれの前記車両の左右方向の幅よりも大きく、
前記第1範囲および前記第2範囲は、互いに重ならないように設定されることを特徴とする請求項1
または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記接着部材は、前記第1交点を含む前記貼付面上の第1範囲と重なり、かつ、前記貼付面と前記第2交点を含む前記貼付面上の第2範囲と重なるように設けられ、
前記第1範囲および前記第2範囲のそれぞれは、前記電子機器の重量および前記接着部材の接着強度の少なくとも一方に応じて設定され、
前記貼付面には、前記第1範囲を示す第1マーク、前記第2範囲を示す第2マーク、および、前記第1範囲と第2範囲を包含する第3範囲を示す第3マークの少なくとも一つが付されることを特徴とする請求項
1または
2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記接着部材の中心は、前記第1交点と前記第2交点を結ぶ線分上に位置することを特徴とする請求項
1から4のいずれか一項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の周囲の画像を撮像して記録するドライブレコーダが広く普及している。ドライブレコーダは、例えば、車両のフロントガラスに両面テープで固定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライブレコーダなどの電子機器を両面テープなどの接着部材を介して取り付ける場合、電子機器の取付姿勢によっては、接着部材が剥がれやすくなることがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、電子機器を取り付けるための接着部材の剥がれを防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の電子機器は、電子部品を収容する本体ケースと、本体ケースを接着部材を介して被取付部材に取り付けるための接着部材が貼り付けられる貼付面とを備える。電子機器は、鉛直方向に対する貼付面の角度が互いに異なる第1取付姿勢および第2取付姿勢において使用可能である。接着部材は、第1取付姿勢において電子機器の重心を通る第1鉛直線と交差する位置および第2取付姿勢において電子機器の重心を通る第2鉛直線と交差する位置を含む範囲に設けられる。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子機器が取りうる複数の取付姿勢において、電子機器を取り付けるための接着部材の剥がれを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電子機器を模式的に示す側面図である。
【
図2】電子機器の別の取付姿勢を模式的に示す側面図である。
【
図3】貼付面に貼り付けられる接着部材の配置を模式的に示す平面図である。
【
図4】比較例に係る電子機器の取付姿勢を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、図面において、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、電子機器10の第1取付姿勢を模式的に示す側面図である。電子機器10は、車両に搭載される撮像装置であり、いわゆるドライブレコーダである。電子機器10は、車両のウィンドシールドなどの被取付部材40aに対し、両面テープなどの接着部材24を介して取り付けられる。
【0012】
電子機器10は、本体ケース12と、カメラユニット14とを備える。電子機器10は、ケーブル18と、取付プレート20と、接着部材24とを備えてもよい。
【0013】
本体ケース12は、電子機器10を動作させるための様々な電子部品(不図示)を収容する。本体ケース12の内部には、カメラユニット14が撮像する画像を処理するCPUなどのプロセッサ、画像を一時的に記録する揮発性または不揮発性のメモリ、加速度センサや位置情報センサ(例えば、GNSS;Global Navigation Satellite System)などの各種センサ、外部機器と通信するための通信部品、電源回路などが収容される。これらの電子部品は、本体ケース12の内部に設けられる基板上に実装されてもよい。
【0014】
カメラユニット14は、本体ケース12の前方の端部(
図1の左側)に設けられる。カメラユニット14は、CCDセンサやCMOSセンサなどの撮像素子と、撮像素子に画像を結像させるためのレンズなどの光学素子とを有する。カメラユニット14は、矢印Aで示される撮像軸を有し、電子機器10の前方の画像を撮像する。カメラユニット14は、レーダセンサやライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)などの距離センサを備えてもよい。
【0015】
カメラユニット14は、回動軸16まわりに矢印Rに示されるように回動可能となるように本体ケース12に取り付けられることが好ましい。カメラユニット14は、矢印Aで示される撮像軸が上下方向に変化するように回動可能である。カメラユニット14は、例えば、矢印Aで示される撮像軸が車両の進行方向(前方または後方)に対応するように回動角が調整される。
【0016】
ケーブル18は、本体ケース12の後方の端部(
図1の右側)に設けられ、カメラユニット14とは反対側の端部に設けられる。ケーブル18は、電子機器10を外部機器(不図示)に接続する。ケーブル18は、電子機器10に電力を供給するための電源ケーブルや、電子機器10が搭載される車両の各種機器と通信するための通信ケーブルなどを含む。
【0017】
電子機器10は、ケーブル18を備えなくてもよく、例えば、電源ケーブルおよび通信ケーブルの少なくとも一方を備えなくてもよい。例えば、電子機器10にバッテリが内蔵される場合、電源ケーブルが設けられなくてもよい。また、電子機器10がWi-Fi(登録商標)などを用いて無線通信するよう構成される場合、通信ケーブルが設けられなくてもよい。
【0018】
取付プレート20は、本体ケース12の上部に設けられる。取付プレート20は、接着部材24を貼り付けるための貼付面22を有する。貼付面22は、電子機器10を被取付部材40aに取り付ける際、被取付部材40aに近接および対向する。接着部材24は、例えば両面接着テープであり、貼付面22と被取付部材40aの間に設けられ、貼付面22と被取付部材40aの間を接着して固定する。
【0019】
取付プレート20は、本体ケース12に対して位置が動かないように本体ケース12に固定される。取付プレート20は、本体ケース12と係合するための爪部や凹部(不図示)などを有してもよい。図示する例では、本体ケース12とは別体の部材として取付プレート20が設けられるが、本体ケース12と取付プレート20が一体的に形成されてもよい。この場合、本体ケース12の上部に貼付面22が設けられてもよく、本体ケース12が貼付面22を有してもよい。
【0020】
本体ケース12の底部には、スイッチなどの操作部28が設けられる。操作部28は、貼付面22の反対側に設けられる。操作部28を通じた入力操作により、電子機器10の動作を制御できる。
【0021】
電子機器10の取付先となりうるウィンドシールドは、車種に応じて形状が様々であり、ウィンドシールドの傾斜角が車種に応じて異なりうる。本実施の形態に係る電子機器10は、カメラユニット14の回動角を調整することで、傾斜角の異なる複数種類の被取付部材に対して取り付け可能となるよう構成される。別の言い方をすれば、電子機器10は、鉛直方向に対する貼付面22の姿勢が異なる複数の取付姿勢で使用可能である。
図1において、矢印Gにより鉛直方向(鉛直下方)が示される。
【0022】
図1は、傾斜角θ1が小さい第1被取付部材40aに電子機器10を取り付けた状態を示しており、電子機器10の第1取付姿勢を示す。第1被取付部材40aの一例は、フロントガラスであり、車両の前方(
図1の左側)が下がるように傾斜している。電子機器10は、車両の前方(
図1の左側)がカメラユニット14の矢印Aで示す撮像方向に対応するように第1被取付部材40aに取り付けられている。第1被取付部材40aの傾斜角θ1は、電子機器10が使用可能となる最小の傾斜角に対応し、例えば20度程度である。このとき、第1取付姿勢における貼付面22の鉛直方向(例えば、第1鉛直線32a)に対する角度φ1は、70度程度である。第1取付姿勢は、電子機器10が使用可能となる貼付面22の最大角度に対応してもよい。
【0023】
図1に示される第1取付姿勢において、貼付面22および接着部材24は、電子機器10の重心30を通る第1鉛直線32aと交差する位置に設けられる。言い換えれば、重心30を通る第1鉛直線32a上の第1交点34aに貼付面22および接着部材24が位置する。第1取付姿勢において接着部材24の鉛直方向の真下に電子機器10の重心30を位置させることで、電子機器10の重心30に作用する重力に起因する接着部材24の剥がれを好適に防止できる。
【0024】
図2は、電子機器10の別の取付姿勢を模式的に示す側面図である。
図2は、傾斜角θ2が大きい第2被取付部材40bに電子機器10を取り付けた状態を示し、電子機器10の第2取付姿勢を示す。第2被取付部材40bは、第1被取付部材40aと同様、車両の前方(
図2の左側)が下がるように傾斜している。電子機器10は、車両の前方(
図2の左側)がカメラユニット14の矢印Aで示す撮像方向に対応するように第2被取付部材40bに取り付けられている。カメラユニット14は、車両の前方が撮像方向となるように本体ケース12に対する回動角が調整されている。つまり、
図2に示すカメラユニット14の本体ケース12に対する回動角は、
図1に示すカメラユニット14の本体ケース12に対する回動角とは異なる。
【0025】
第2被取付部材40bの傾斜角θ2は、電子機器10が使用可能となる最大の傾斜角に対応し、例えば90度に近い角度(例えば85~90度)である。このとき、第2取付姿勢における貼付面22の鉛直方向(例えば、第2鉛直線32b)に対する角度φ2は、0度に近い角度(例えば0~5度)である。第2取付姿勢は、電子機器10が使用可能となる貼付面22の最小角度に対応してもよい。したがって、電子機器10は、第1取付姿勢における貼付面22の鉛直方向に対する角度(例えば70度程度)から、第2取付姿勢における貼付面22の鉛直方向に対する角度(例えば0~5度程度)までの角度範囲内で使用可能となるよう構成される。カメラユニット14は、このような角度範囲で使用可能となるように回動範囲が設定され、例えば70度程度の範囲に回動が制限されるよう構成される。なお、電子機器10が使用可能となる角度範囲の具体的な数値は、例示にすぎず、任意の数値範囲を設定することができる。
【0026】
図2に示される第2取付姿勢において、貼付面22および接着部材24は、電子機器10の重心30を通る第2鉛直線32bと交差する位置に設けられる。第2鉛直線32bは、重心30と第1交点34aを通る第1鉛直線32aとは異なる直線である。言い換えると、取付姿勢の変化に応じて電子機器10の重心30を通る鉛直線の方向が異なるため、第1交点34aおよび第2交点34bは、互いに異なる点となる。このとき、重心30を通る第2鉛直線32b上の第2交点34bに貼付面22および接着部材24が位置する。その結果、第2取付姿勢においても、接着部材24の鉛直方向の真下に電子機器10の重心30を位置させることができ、電子機器10の重心30に作用する重力に起因する接着部材24の剥がれを好適に防止できる。
【0027】
図3は、貼付面22に貼り付けられる接着部材24の配置を模式的に示す平面図であり、貼付面22の正面視を示す。接着部材24は、長方形または長方形の四隅が角取りされた形状を有し、x方向の幅wよりもy方向の長さlが大きい形状を有する。接着部材24は、x方向が短軸、y方向が長軸となる楕円形状を有してもよい。ここで、x方向は、カメラユニット14の回動軸に沿った方向であり、鉛直方向と貼付面22の法線方向との双方に直交する方向である。x方向は、電子機器10が設置される車両の左右方向に対応してもよい。y方向は、貼付面22に沿った方向のうち、x方向に直交する方向である。
【0028】
接着部材24は、第1交点34aおよび第2交点34bの双方と重なる位置に設けられる。つまり、接着部材24は、
図1の第1取付姿勢において重心30を通る第1鉛直線32aと交差するとともに、
図2の第2取付姿勢において重心30を通る第2鉛直線32bと交差する位置に設けられる。これにより、第1取付姿勢および第2取付姿勢のいずれにおいても、電子機器10の重心30が接着部材24の鉛直方向の真下に位置するようにできる。
【0029】
接着部材24は、第1交点34aから第2交点34bまでの範囲にわたって連続的に設けられてもよい。接着部材24は、第1交点34aと第2交点34bを結ぶ線分38の全体と重なるように設けられてもよい。線分38は、電子機器10が第1取付姿勢と第2取付姿勢の間の中間取付姿勢となる場合に、電子機器10の重心を通る鉛直線が貼付面22と交差する交点の位置に相当する。したがって、線分38の全体と重なるように接着部材24を設けることで、電子機器10が中間取付姿勢となる場合であっても、電子機器10の重心30が接着部材24の鉛直方向の真下に位置するようにできる。
【0030】
接着部材24は、第1交点34aを含む貼付面22上の第1範囲36aと重なるように配置されてもよい。第1範囲36aは、例えば、第1交点34aを中心として第1距離raとなる範囲であり、例えば、第1交点34aからra=5mm~30mmとなる範囲である。第1範囲36aは、長方形または四隅が角取りされた長方形であってもよいし、円形や楕円形であってもよい。第1範囲36aの全体と重なるように接着部材24を設けることで、第1取付姿勢における接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。第1範囲36aを画定する第1距離raは、電子機器10の重量や接着部材24の接着強度に応じて決めることができる。電子機器10の重量が重いほど、また接着部材24の接着強度が弱いほど、第1範囲36aの面積を広くする、つまり、第1距離raを大きくすることが好ましい。なお、接着部材24の接着強度とは、接着部材24の接着面積や粘着力により予め算出される値である。
【0031】
第1範囲36aは、第1範囲36aのx方向の幅waが小さく、第1範囲36aのy方向の長さlaが大きくなるよう構成されてもよい。つまり、第1範囲36aのy方向の長さlaは、第1範囲36aのx方向の幅waよりも大きくてもよい。別の言い方をすれば、貼付面22に沿った方向(例えば、x方向およびy方向)のうち、車両の発進や停止による加速度が発生する方向(例えばy方向)の長さが相対的に大きく、車両のハンドル操作による加速度が発生する方向(例えばx方向)の幅が相対的に小さくてもよい。一般的な車両の挙動では、車両の発進や停止に伴う車両の前後方向の加速度の方が、ハンドル操作による右左折やカーブの走行に伴う車両の左右方向の加速度よりも大きい。そのため、電子機器10を被取付部材40a,40bから剥離させようとする重力以外の力が作用する方向は、x方向よりもy方向の方が大きくなる。そこで、第1範囲36aのx方向の幅waよりも第1範囲36aのy方向の長さlaを大きくすることで、車両の挙動に伴うy方向の力に対抗することができ、接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。
【0032】
接着部材24は、第2交点34bを含む貼付面22上の第2範囲36bと重なるように配置されてもよい。第2範囲36bは、例えば、第2交点34bを中心として第2距離rbとなる範囲であり、例えば、第2交点34bからrb=5mm~30mmとなる範囲である。第2範囲36bは、長方形または四隅が角取りされた長方形であってもよいし、円形や楕円形であってもよい。第2範囲36bの形状および第2距離rbは、第1範囲36aの形状および第1距離raと同様に設定されてもよいし、異なるように設定されてもよい。第2範囲36bの全体と重なるように接着部材24を設けることで、第2取付姿勢における接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。第2範囲36bを画定する第2距離rbは、電子機器10の重量や接着部材24の接着強度に応じて決めることができる。電子機器10の重量が重いほど、また接着部材24の接着強度が弱いほど、第2範囲36bの面積を広くする、つまり、第2距離rbを大きくすることが好ましい。また、第1範囲36aと同様、第2範囲36bのy方向の長さlbは、第2範囲36bのx方向の幅wbよりも大きくてもよい。第2範囲36bのx方向の幅wbよりも第2範囲36bのy方向の長さlbを大きくすることで、車両の挙動に伴うy方向の力に対抗することができ、接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。
【0033】
接着部材24は、第1範囲36aおよび第2範囲36bの双方と重なるとともに、第1範囲36aおよび第2範囲36bの間の領域と重なるように設けられてよい。接着部材24は、第1交点34aと第2交点34bを結ぶ線分38から第3距離rc(例えば10mm~30mm程度)となる第3範囲36cの全体と重なるように設けられてもよい。この場合、接着部材24のx方向の幅wは、第3距離rcの2倍(つまり2rc)以上となる。また、接着部材24のy方向の長さlは、第1交点34aと第2交点34bの距離d(つまり、線分38の長さd)と第3距離rcの2倍の合計値(つまり、d+2rc)以上となる。このような第3範囲36cの全体に接着部材24を設けることで、電子機器10が第1取付姿勢、第2取付姿勢および中間取付姿勢のいずれとなる場合であっても、接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。
【0034】
接着部材24の中心24cは、第1交点34aと第2交点34bを結ぶ線分38上または線分38の近傍に位置することが好ましい。言い換えれば、線分38から接着部材24の中心24cまでのずれ量は、所定の公差(例えば5mm~10mm)以内であることが好ましい。接着部材24の中心24cが線分38の近傍に位置するように接着部材24を貼り付けることで、接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。具体的には、車両の走行挙動に起因して電子機器10にx方向やy方向の力が加わる場合であっても、接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。
【0035】
貼付面22は、上述した位置および範囲に接着部材24が貼り付け可能となるような平面を提供するように構成される。したがって、貼付面22は、接着部材24と同様、第1交点34aおよび第2交点34bと交差するように構成される。貼付面22は、第1範囲36aおよび第2範囲36bよりも広い範囲にわたって設けられることが好ましく、第3範囲36cよりも広い範囲にわたって設けられてもよい。このような位置および範囲に貼付面22を設けることで、第1取付姿勢、第2取付姿勢および中間取付姿勢を含む複数の取付姿勢において、接着部材24の剥がれをより好適に防止できる。
【0036】
貼付面22には、接着部材24の貼付位置を示すためのマークが付されてもよい。例えば、接着部材24の貼付位置の目安として、第1交点34aや第2交点34b、線分38などが貼付面22に記載されてもよい。また、接着部材24の貼付範囲の目安として、上述の第1範囲36a、第2範囲36bおよび第3範囲36cの少なくとも一つを示すマークが貼付面22に記載されてもよい。例えば、第1範囲36aの輪郭を示す第1マーク、第2範囲36bの輪郭を示す第2マーク、および、第3範囲36cの輪郭を示す第3マークの少なくとも一つが実線や破線などで貼付面22に記載されてもよい。また、第1マーク、第2マークおよび第3マークを識別するための文言が貼付面22に記載されてもよい。例えば、第1範囲36aに「貼付位置A」の文言が記載され、第2範囲36bに「貼付位置B」の文言が記載されてもよい。第1マーク、第2マークおよび第3マークは、貼付面22に付される形態に限定されず、電子機器10に添付される取扱説明書や取付指示書などに記載されてもよい。これらのマークは、例えば車種ごとに異なるウィンドシールドの傾斜度に応じて付されてもよいし、または、記載されてもよい。
【0037】
図4は、比較例に係る電子機器110の取付姿勢を模式的に示す側面図である。
図4は、
図1に示す電子機器10の第1取付姿勢と同様であるが、取付プレート120の貼付面122において接着部材124が設けられる範囲が上述の実施の形態と相違する。比較例に係る接着部材124の貼付範囲は、主に電子機器110の重量に基づいて決定されており、電子機器110の重量を支えるのに十分な接着強度を確保するという観点で、接着部材124の大きさが決められている。
【0038】
比較例では、電子機器110の取付姿勢に応じた重心130の位置が適切に考慮されていないため、
図4に示す取付姿勢において、接着部材124の鉛直方向の真下に重心130が位置していない。つまり、電子機器110の重心130を通る鉛直線132と貼付面122が交差する交点134の位置に接着部材124が存在していない。その結果、電子機器110の重心130に作用する重力に起因する力は、接着部材124を被取付部材40aから剥離させる方向に、接着部材124の端部124aに集中して加わることとなり、接着部材124が端部124aから剥がれやすくなる。接着部材124の剥がれが生じると、カメラユニット14の撮像方向がずれて車両の前方を適切に撮像できなくなるおそれがある。また、接着部材124が完全に剥がれてしまうと、電子機器110が脱落してしまう。
【0039】
一方、本実施の形態によれば、電子機器10の複数の取付姿勢において、電子機器10の重心30を通る鉛直線と交差する位置に接着部材24を設けることで、接着部材24の端部を起点とする剥がれを好適に防止できる。これにより、接着部材24の剥がれに起因する不具合を防止でき、電子機器10が適切かつ安全に使用できるようにすることができる。
【0040】
本実施の形態によれば、電子機器10の重心30を通る鉛直線と貼付面22の交点から所定の距離の範囲内にわたって接着部材24を設けることで、接着強度を高めることができる。電子機器10がドライブレコーダである場合、車両の走行中の挙動、具体的には加速、制動、旋回などに応じて貼付面22に沿った方向(
図3のx方向およびy方向)にも大きな力が加わる。本実施の形態によれば、貼付面22に沿った方向(x方向およびy方向)に接着部材24の貼付面積を広げることで、車両の走行中の挙動に応じて電子機器10の重心に作用する力に起因する接着部材24の剥がれについても好適に防止できる。
【0041】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0042】
上述の実施の形態では、第3範囲36cの全体と重なるように接着部材24を貼り付ける場合について示した。別の実施の形態では、被取付部材の傾斜角に応じて、接着部材24の貼り付け位置を変化させてもよい。例えば、車種ごとのウィンドシールドの傾斜角に応じて、つまり、電子機器10の取付姿勢に応じて、第3範囲36cの一部のみと重なるように接着部材24を貼り付けてもよい。具体的には、電子機器10が第1取付姿勢となる場合、第1範囲36aと重なる一方で、第2範囲36bの少なくとも一部とは重ならないように接着部材24を貼り付けてもよい。また、電子機器10が第2取付姿勢となる場合、第2範囲36bと重なる一方で、第1範囲36aの少なくとも一部とは重ならないように接着部材24を貼り付けてもよい。その他、電子機器10が中間取付姿勢となる場合、第1範囲36aと第2範囲36bの間の領域と重なる一方で、第1範囲36aおよび第2範囲36bの少なくとも一部とは重ならないように接着部材24を貼り付けてもよい。この場合、車種ごとの接着部材24の貼付位置が識別できるように、接着部材24の貼付位置を示すための貼付面22に付されるマークと、車種の対応表などが添付の説明書などに記載されてもよい。
【0043】
上述の実施の形態では、電子機器10の重心30の位置に応じて接着部材24の貼付位置を調整する場合について示した。別の実施の形態では、貼付面22の位置や形状、大きさなどに制約がある場合に、複数の取付姿勢において接着部材24の鉛直方向の真下に重心30が位置するように、電子機器10の重心30の位置を調整してもよい。例えば、本体ケース12に収容される電子部品の配置を変更したり、本体ケース12の内部におもりを設けたりすることで重心30の位置を調整してもよい。例えば、電子機器10の重心30が後方寄りの位置となるように重心30の位置が調整されてもよい。電子機器10の重心30を適切な位置とするように調整する重心調整機構が備えられてもよい。電子機器10の前端には回動可能なカメラユニット14があるため、カメラユニット14の近くまで取付プレート20を延在させると、カメラユニット14の回動角によっては、カメラユニット14の画角の一部が取付プレート20により遮られてしまう。この場合、電子機器10の重心30がカメラユニット14から離れた位置となるように重心30の位置が調整されてもよい。
【0044】
上述の実施の形態では、電子機器10の取付先となる被取付部材40a,40bの一例として、車両のフロントガラスを挙げたが、車両の他の部材が被取付部材40a,40bとして用いられてもよい。例えば、被取付部材40a,40bとして、車両のバックウィンドウや、車両のサイドウィンドウ、車両の室内の天井などが用いられてもよい。例えば、車両のバックウィンドウに電子機器10を取り付ける場合、電子機器10は、リア用のドライブレコーダとして機能してもよい。
【0045】
上述の実施の形態では、被取付部材に両面テープなどの接着部材を介して取り付ける電子機器10の一例として、車両に搭載されるドライブレコーダを例示した。電子機器10は、車両以外の被取付部材に取り付けて使用することが可能であり、例えば、定点カメラや防犯カメラなどの撮像装置として用いられてもよい。電子機器10は、ドライブレコーダやカメラとは異なる任意の装置であってもよく、例えば、基地局やルータといった無線通信装置であってもよいし、映像を投映するためのプロジェクタ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…電子機器、12…本体ケース、14…カメラユニット、20…取付プレート、22…貼付面、24…接着部材、30…重心、32a…第1鉛直線、32b…第2鉛直線、34a…第1交点、34b…第2交点、36a…第1範囲、36b…第2範囲、36c…第3範囲、40a,40b…被取付部材。