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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24D 17/00 20220101AFI20240326BHJP
   F24H 15/174 20220101ALI20240326BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20240326BHJP
   F24H 15/325 20220101ALI20240326BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20240326BHJP
   F24H 15/464 20220101ALI20240326BHJP
【FI】
F24D17/00 P
F24D17/00 L
F24H15/174
F24H15/20
F24H15/325
F24H15/335
F24H15/464
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020115653
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013235
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽太郎
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-199920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 17/00
F24H 15/174
F24H 15/20
F24H 15/325
F24H 15/335
F24H 15/464
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱器と、
前記加熱器で加熱された供給水が流れる少なくとも1つの水路部と、
前記水路部にそれぞれ設けられ、弁部材および前記弁部材を駆動する駆動部を有し、前記駆動部で前記弁部材を駆動することにより前記供給水と前記加熱器で加熱されていない非加熱水との混合率を変更して、予め設定された設定温度の混合水を生成する混合弁部と、
前記水路部において、前記混合弁部よりも前記加熱器側からそれぞれ分岐して前記水路部と前記加熱器とを接続する接続通路部、前記接続通路部を開閉する開閉弁部、および前記接続通路部を通して前記水路部に残存する前記供給水を前記加熱器へ戻すポンプを有する循環機構部と、
前記駆動部が駆動した前記弁部材の駆動量を取得する駆動量取得部と、
前記駆動量取得部で取得した前記駆動量に基づいて、前記循環機構部を制御する制御部と、
を備える給湯装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記弁部材を駆動するモータを有し、
前記駆動量取得部は、前記モータの負荷を取得する請求項1記載の給湯装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記弁部材の移動によって伸縮する伸縮部材を有し、
前記駆動量取得部は、前記伸縮部材の伸縮情報を取得する請求項1記載の給湯装置。
【請求項4】
前記駆動量取得部は、前記制御部へ無線によって取得した前記駆動量を送信する請求項1から3のいずれか一項記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の各設備に設定された温度の水を供給する給湯装置が公知である。この給湯装置は、電気やガスを用いて加熱器で加熱された供給水を生成するとともに、各設備で水道水などの加熱器で加熱されていない非加熱水と混合することにより、所望の設定温度の混合水を供給する。供給水と非加熱水とは、加熱器から吐出口へ至る水路部において設備ごとに設けられた混合弁部によって混合され、この混合率を変更することで設定温度の混合水が生成される。このように、混合弁部は、加熱器から設備へ至る水路部の途中に設けられている。そのため、水路部に残存する供給水は、時間の経過とともに温度が低下する。このように水路部における供給水の温度が低下すると、希望するタイミングに設定温度の混合水を使用できないという問題がある。そこで、混合弁部の近傍に温度センサを設け、水路部に残存する供給水の温度を検出することが提案されている(特許文献1、2参照)。このような給湯装置では、温度センサで検出した供給水の温度に基づいて、水路部に残存する供給水を加熱器に循環し、再加熱している。
【0003】
しかしながら、このような従来の技術では、混合弁部に近い位置に温度センサを必要とする。混合弁部は、加熱器から離れた例えば台所や浴室などの設備に設けられているのが一般的である。そのため、既存の給湯装置の場合、混合弁部の近傍に十分な空間がなければ温度センサの設置にともなう工事、および温度センサの故障時におけるメンテナンスが困難であるという問題がある。また、温度センサと加熱器や供給水の循環を制御する制御部とを接続する必要があり、これも工事やメンテナンスを困難にする原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5572985号明細書
【文献】米国特許第5331996号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、部品の追加を必要とすることなく、工事やメンテナンスおよび既存の機器への適用も容易であり、混合弁部の近傍における供給水の温度を高精度で検出する給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本実施形態の給湯装置は、駆動量取得部を備えている。駆動量取得部は、混合弁部において弁部材を駆動する駆動部の駆動量を検出する。混合弁部における弁部材は、供給水と非加熱水との混合率を変更するために駆動部によって駆動される。そのため、駆動部の駆動量は、弁部材の移動量つまり供給水と非加熱水との混合率、そして供給水の温度に相関する。すなわち、駆動量取得部は、駆動部の駆動量から供給水の温度を間接的に取得する。制御部は、この駆動量取得部で取得した駆動部の駆動量から、混合弁部における供給水の温度を推定し、水路部における供給水を加熱器へ戻すポンプを含む循環機構部を制御する。混合弁部は既存の給湯装置にも設けられており、また駆動部も弁部材を駆動するために設けられている。そのため、混合弁部における供給水の温度は、新たに部材を追加することなく既存の混合弁部の駆動部から取得される。また、混合弁部は、露出して設けられていることから、工事やメンテナンスも容易である。そして、温度取得部は、駆動部の駆動量から混合弁部における供給水の温度を取得する。したがって、部品の追加を必要とすることなく、工事やメンテナンスおよび既存の機器への適用が容易であり、混合弁部の近傍における供給水の温度を高精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による給湯装置の概略的な構成を示す模式図
図2】一実施形態による給湯装置に用いられる混合弁部を示す模式的な断面図
図3】一実施形態による給湯装置の概略的な構成を示すブロック図
図4】一実施形態による給湯装置における処理の流れを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態による給湯装置を図面に基づいて説明する。
図1に示すように給湯装置10は、例えば家屋やビルディングなどの建造物で用いられる。給湯装置10は、加熱器11を備えており、建造物に設定されている1つ以上の設備12へ予め設定された設定温度の混合水を供給する。設備12は、例えば建造物の浴室、洗面所、台所、湯沸かし室など混合水を必要とする箇所が該当する。
【0009】
給湯装置10は、上述の加熱器11に加え、水路部13、混合弁部14および循環機構部15を備える。加熱器11は、供給源16から非加熱水が供給される。供給源16は、例えば上水道または井戸水などから非加熱水を供給する。なお、非加熱水とは、供給源16から供給される水であって、加熱器11で加熱またはその他の機器で冷却などの温度の調整がなされていない状態の水をいう。供給源16と加熱器11との間は、非加熱水路部17で接続されている。加熱器11は、非加熱水路部17を経由して供給された水を加熱する。加熱器11は、例えばガスもしくは灯油の燃焼、または電気などを用いて水を加熱する。これにより、加熱器11は、供給源16から供給された水よりも高い温度に加熱された供給水を生成する。
【0010】
水路部13は、加熱器11で生成した供給水が流れる。水路部13は、加熱器11と1つ以上の設備12との間を接続している。水路部13は、加熱器11で生成した供給水を1つ以上の設備12へ供給するために途中で分岐している。なお、水路部13は、加熱器11と設備12との間を個別に接続するように、加熱器11から複数の設備12へそれぞれ伸びていてもよい。
【0011】
混合弁部14は、設備12にそれぞれ設けられている。混合弁部14は、加熱器11から伸びる水路部13に設けられている。すなわち、混合弁部14は、2つ以上の設備12がある場合、設備12に接続する水路部13のそれぞれに設けられている。なお、混合弁部14は、2つ以上の設備12に個別に設けるだけでなく、任意の数の設備12ごとにまとめて設けてもよい。水路部13は、加熱器11と反対側の端部が水を吐出する吐出口18である。混合弁部14は、水路部13において加熱器11と吐出口18との間に設けられている。混合弁部14は、水路部13に加え、非加熱水路部17に接続している。これにより、混合弁部14は、加熱器11から供給される加熱済の供給水と、加熱器で加熱されることなく供給源16から供給される非加熱水とを混合して、予め設定された設定温度Tdの混合水を生成する。混合弁部14で供給水と非加熱水とを混合して生成した混合水は、水路部13を通して各設備12の吐出口18から吐出される。混合弁部14の詳細は後述する。
【0012】
循環機構部15は、接続通路部21およびポンプ22を有する。接続通路部21は、水路部13から分岐して、水路部13と加熱器11との間を接続している。接続通路部21は、水路部13において混合弁部14よりも加熱器11側から分岐している。すなわち、接続通路部21は、加熱器11からの供給水の供給方向において、混合弁部14よりも上流側で分岐している。また、水路部13が複数の設備12へ分岐している場合、接続通路部21は、各水路部13から分岐してもよく、設備12へ分岐する前の水路部13から分岐してもよい。循環機構部15は、この接続通路部21を開閉する開閉弁部23を有している。ポンプ22は、接続通路部21を通して水路部13の供給水を加熱器11側へ戻す。すなわち、循環機構部15は、接続通路部21における開閉弁部23を開放し、ポンプ22を駆動することにより水路部13に残存する供給水を加熱器11側へ循環させる。なお、水路部13の供給水を適切に再加熱するためには、接続通路部21は、混合弁部14により近い位置で水路部13から分岐することが好ましい。
【0013】
上述の混合弁部14は、図2に示すように弁部材31および駆動部32を有している。弁部材31は、筒状のスリーブ33の内側を軸方向へ往復移動する。スリーブ33は、供給水入口34、非加熱水入口35および混合水出口36を有している。供給水入口34および非加熱水入口35は、スリーブ33を径方向へ貫いている。供給水入口34は、水路部13に接続し、加熱器11から供給水が流入する。非加熱水入口35は、非加熱水路部17に接続し、供給源16から非加熱水が流入する。混合水出口36は、スリーブ33の軸方向において一方の端部に設けられている。混合水出口36は、水路部13に接続し、混合された混合水が水路部13を通して吐出口18へ流出する。
【0014】
スリーブ33は、内周側に混合水路部37を形成している。混合水路部37は、供給水入口34および非加熱水入口35にそれぞれ接続するとともに、端部が混合水出口36に接続している。弁部材31は、このスリーブ33の内側において混合水路部37を軸方向へ移動することにより、供給水入口34から流入する供給水と、非加熱水入口35から流入する非加熱水との混合率を変更する。すなわち、弁部材31は、スリーブ33の軸方向へ移動することにより、供給水入口34および非加熱水入口35の開口面積を変更する。これにより、混合水路部37で混合される混合水の温度が調整され、温度が調整された混合水は混合水出口36から吐出口18へ流出する。
【0015】
混合弁部14は、弁部材31に力を加える第一弾性部材41および第二弾性部材42を有している。第一弾性部材41は、一定の弾性定数を有するばね部材であり、弁部材31を混合水出口36側に押し付ける。第二弾性部材42は、温度によって弾性定数が変化する形状記憶合金で形成されたばね部材であり、弁部材31を第一弾性部材41とは反対方向へ押し付ける。
【0016】
混合弁部14は、駆動部32を有している。駆動部32は、モータ43、回転部材44、調整部材45、移動部材46、カラー部材47および軸部材48を有している。モータ43は、回転駆動力を発生する。モータ43の回転力は、回転部材44を通して調整部材45に伝達され、調整部材45をスリーブ33の軸を中心に回転する。調整部材45は、移動部材46とねじ結合している。これにより、調整部材45の回転は、スリーブ33の軸方向における移動部材46の移動に変換される。移動部材46は、モータ43と反対側の端部がカラー部材47に接している。カラー部材47は、調整部材45と反対側の端部において軸部材48に接続しているとともに、第一弾性部材41に接している。モータ43が回転することにより、回転部材44は調整部材45とともに回転する。そして、調整部材45が回転することにより、調整部材45とねじ結合している移動部材46は、スリーブ33の軸方向へ移動する。移動部材46の移動は、カラー部材47を通して軸部材48に伝達される。その結果、モータ43が正回転方向または逆回転方向へ回転することにより、カラー部材47および軸部材48はスリーブ33の軸方向へ往復移動する。
【0017】
第一弾性部材41は、一方の端部が弁部材31に接し、他方の端部がカラー部材47に接している。これにより、第一弾性部材41は、弁部材31を混合水出口36側へ押し付ける。第一弾性部材41は、モータ43の回転によってスリーブ33の軸方向へ移動するカラー部材47に接している。そのため、第一弾性部材41が弁部材31を押し付ける力は、モータ43の回転によって調整される。すなわち、モータ43の回転によってカラー部材47が下方へ移動すると第一弾性部材41が圧縮され、第一弾性部材41の押し付け力は増大する。一方、モータ43の回転によってカラー部材47が上方へ移動すると第一弾性部材41の圧縮が軽減され、第一弾性部材41の押し付け力は減少する。
【0018】
第二弾性部材42は、一方の端部が弁部材31に接し、他方の端部がスリーブ33の混合水出口36側の端部に接している。これにより、第二弾性部材42は、弁部材31を混合水出口36とは反対側へ押し付ける。第二弾性部材42は、形状記憶合金で形成されていることから、混合された混合水の温度によって伸縮し、押し付け力が変化する。これにより、弁部材31は、駆動部32によって調整される第一弾性部材41の押し付け力と、混合水の温度によって調整される第二弾性部材42の押し付け力とが釣り合う位置で停止する。その結果、供給水が流入する供給水入口34の開口面積および非加熱水が流入する非加熱水入口35の開口面積が調整され、供給水と非加熱水との混合率が調整される。所望の設定温度となった混合水は、混合水出口36から流出する。なお、上述の混合弁部14の構成は、一例であり、供給水と非加熱水とから混合水を生成可能な構成であれば各部の形状、構造および構成などは任意に変更することができ、上述の例に限るものではない。
【0019】
給湯装置10は、上記の構成に加え、図1に示すように駆動量取得部51、制御部52および入力パネル53を備えている。駆動量取得部51は、混合弁部14の駆動部32に接続している。駆動量取得部51は、混合弁部14における駆動部32の駆動量を取得する。本実施形態の場合、駆動量取得部51は、モータ43の負荷を取得する。モータ43の負荷は、例えばモータ43に印加する電圧、モータ43に供給する電流、あるいはモータ43の回転数や回転角度など、任意に設定することができる。混合弁部14は、駆動量取得部51で取得した駆動量を出力する通信部54を有している。駆動量取得部51および通信部54は、混合弁部14に設けられている。
【0020】
制御部52は、給湯装置10の全体を制御するコンピュータである。制御部52は、図示しないCPU、ならびにROMおよびRAMなどの記憶媒体を有しており、コンピュータプログラムを実行することにより、給湯装置10を制御する。制御部52は、コンピュータプログラムを実行することにより、図3に示すように加熱器制御部55および循環制御部56をソフトウェア的に実現している。これら加熱器制御部55および循環制御部56は、ソフトウェア的に限らず、ハードウェア的に実現してもよく、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現してもよい。また、制御部52は、混合弁部14の通信部54と通信する通信部57を有している。
【0021】
駆動量取得部51は、混合弁部14で取得したモータ43の負荷を電気信号として制御部52へ出力する。この場合、駆動量取得部51は、取得した電気信号を、通信部54を通して制御部52の通信部57へ出力する。加熱器制御部55は、加熱器11に接続しており、加熱器11における水の加熱の有無および温度を制御する。循環制御部56は、循環機構部15のポンプ22および開閉弁部23と接続している。循環制御部56は、開閉弁部23による水路部13と接続通路部21との間の断続、およびポンプ22の作動を制御する。混合弁部14の通信部54と制御部52の通信部57との間は、例えばWiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの任意の規格の無線で接続されている。
【0022】
入力パネル53は、設備12にそれぞれ設けられており、吐出口18から吐出される混合水の温度などの入力を受け付ける。ユーザは、入力パネル53を通して、所望する混合水の設定温度を入力する。入力パネル53は、混合弁部14と接続している。混合弁部14は、入力パネル53から入力された設定温度Tdに基づいて制御される。なお、混合弁部14は、制御部52によって制御される構成としてもよい。この場合、制御部52は、入力パネル53から入力された設定温度Tdに基づいて、加熱器11および混合弁部14を制御する。
【0023】
混合弁部14の駆動部32におけるモータ43の駆動量は、入力パネル53から入力された設定温度Td、供給水の温度Tsおよび非加熱水の温度Tnに基づいて変化する。混合弁部14の弁部材31は、混合水出口36から流出する混合水の温度が設定温度Tdとなる位置へスリーブ33の内側を移動する。この弁部材31の位置は、設定温度Tdに基づいて、供給水の温度Tsおよび非加熱水の温度Tnによって決定される。供給水の温度Tsおよび非加熱水の温度Tnは、常に一定とは限らない。そのため、設定温度Tdが一定であっても、弁部材31の位置は変化するとともに、これを駆動する駆動部32のモータ43の負荷も変化する。そして、このモータ43の負荷は、供給水の温度Tsに相関する。そこで、駆動量取得部51は、このモータ43の負荷を取得し、制御部52へ出力する。
【0024】
次に、上記の構成による給湯装置10の作動について説明する。
加熱器11と混合弁部14とを接続する水路部13は、建物に設けられていることから、所定の全長を有するとともに、加熱器11で加熱した供給水の温度Tsよりも低温の外気にさらされる。そのため、使用されず水路部13に残存する供給水は、時間の経過とともに温度Tsが低下する。供給水の温度Tsが低下すると、混合弁部14において設定温度Tdの混合水を生成することができず、吐出口18からは設定温度Tdよりも低温の混合水が吐出されることになる。そこで、循環機構部15は、水路部13に残存する供給水を加熱器11へ循環し、供給水を再加熱する。具体的には、循環機構部15は、水路部13に残存する供給水の温度Tsが予め設定した最低温度Tiを下回ると、水路部13に残存する供給水を加熱器11へ循環する。上述のように混合弁部14のモータ43の駆動量は、供給水の温度Tsに相関する。そこで、本実施形態の場合、水路部13における供給水の温度Tsは、混合弁部14の駆動部32を構成するモータ43から取得する。
【0025】
図4に基づいて、給湯装置10における再加熱の手順の流れを説明する。
駆動量取得部51は、モータ43の負荷を取得する(S101)。駆動量取得部51は、モータ43の負荷として、例えばモータ43へ印加される電圧、モータ43へ供給される電流、モータ43の回転数、またはモータ43の回転角度などを取得する。この場合、駆動量取得部51は、例示した値以外であってもモータ43の負荷として取得してもよい。また、駆動量取得部51が取得するモータ43の負荷は、例示したものその他のものの1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0026】
制御部52は、駆動量取得部51で取得したモータ43の負荷に基づいて、供給水の温度Tsを推定する(S102)。上述のように供給水の温度Tsは、モータ43の負荷に相関する。そのため、制御部52は、モータ43の負荷に基づいて、混合弁部14の近傍における供給水の温度Ts、つまり混合弁部14の近傍において水路部13に残存する供給水の温度Tsを推定する。そして、制御部52は、S102で推定した供給水の温度Tsを用いて、この温度Tsが最低温度Ti未満であるか否かを判断する(S103)。
【0027】
制御部52において供給水の温度Tsが最低温度Ti未満であると判断すると(S103:Yes)、循環制御部56は、開閉弁部23を開放するとともに(S104)、ポンプ22を駆動する(S105)。すなわち、水路部13に残存する供給水の温度Tsが最低温度Ti未満であるとき、非加熱水と供給水とを混合しても、混合水は設定温度Tdに到達しない。そこで、制御部52は、水路部13に残存する供給水の再加熱が必要であると判断する。供給水の再加熱が必要と判断されると、循環制御部56は、開閉弁部23を開放して、水路部13と接続通路部21とを接続する。これとともに、循環制御部56は、ポンプ22を駆動し、水路部13に残存する供給水を、接続通路部21を経由して加熱器11へ戻す。これにより、水路部13に残存していた供給水は、加熱器11へ戻されて再加熱される。一方、制御部52は、S103において供給水の温度Tsが最低温度Ti以上であると判断すると(S103:No)、S101へリターンし、S101以降の処理を実行する。
【0028】
駆動量取得部51は、予め設定した時間間隔でモータ43の負荷を取得する(S106)。制御部52は、駆動量取得部51で取得したモータ43の負荷に基づいて、供給水の温度Tsを推定し(S107)、この推定した温度Tsが加熱温度Th以上であるか否かを判断する(S108)。循環制御部56は、制御部52において供給水の温度Tsが加熱温度Th以上であると判断されると(S108:Yes)、開閉弁部23を閉鎖するとともに(S109)、ポンプ22を停止する(S110)。すなわち、供給水の温度Tsが加熱温度Th以上であるとき、水路部13における供給水の温度Tsは、設定温度Tdの混合水の生成に十分な温度を有している。そこで、制御部52は、供給水の再加熱を停止すると判断する。供給水の再加熱の停止が判断されると、循環制御部56は、開閉弁部23を閉鎖して、水路部13と接続通路部21とを遮断する。これとともに、循環制御部56は、ポンプ22を停止し、供給水の再加熱を終了する。一方、制御部52は、S108において供給水の温度Tsが加熱温度Th未満であると判断すると(S108:No)、S106へリターンし、S106以降の処理を実行する。
【0029】
制御部52は、S109で開閉弁部23を閉鎖するとともにS110でポンプ22を停止して供給水の再加熱を終了すると、S101へリターンする。そして、制御部52は、S101以降の処理を実行する。
【0030】
以上説明したように一実施形態の給湯装置10は、駆動量取得部51を備えている。駆動量取得部51は、混合弁部14において弁部材31を駆動する駆動部32の駆動量として、モータ43の負荷を検出する。混合弁部14の弁部材31は、供給水と非加熱水との混合率を変更するために駆動部32によって駆動される。そのため、駆動部32の駆動量は、供給水の温度Tsに相関する。すなわち、駆動量取得部51は、駆動部32の駆動量から供給水の温度Tsを間接的に取得する。制御部52は、この駆動量取得部51で取得した駆動部32の駆動量から、混合弁部14における供給水の温度Tsを推定し、水路部13における供給水を加熱器11へ戻すポンプ22を含む循環機構部15を制御する。混合弁部14は既存の給湯装置10にも設けられており、また駆動部32も弁部材31を駆動するために既存の混合弁部14に設けられている。そのため、混合弁部14における供給水の温度Tsは、新たに部材を追加することなく既存の混合弁部14の駆動部32から取得される。また、混合弁部14は、各設備12に露出して設けられていることから、工事やメンテナンスも容易である。そして、駆動量取得部51は、駆動部32の駆動量から混合弁部14における供給水の温度Tsを取得する。したがって、部品の追加を必要とすることなく、工事やメンテナンスおよび既存の機器への適用を容易にすることができるとともに、混合弁部14の近傍における供給水の温度を高精度で検出することができる。
【0031】
また、一実施形態では、駆動量取得部51と制御部52との間は、無線によって通信可能に接続されている。すなわち、駆動量取得部51は、取得したモータ43の負荷を無線によって制御部52へ送信する。このように、駆動量取得部51と制御部52との間を無線で接続することにより、これらの間に配線を設けることなく、混合弁部14の近傍における供給水の温度が取得される。したがって、工事やメンテナンスおよび既存の機器への適用をより容易にすることができる。
【0032】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
上述の一実施形態では、駆動量取得部51と制御部52との間を無線で接続する例について説明した。しかし、駆動量取得部51と制御部52との間は、有線によって接続してもよい。例えば既存の給湯装置10において、既に混合弁部14と制御部52との間が有線で接続されている場合、この既存の配線を用いて駆動量取得部51と制御部52との間の通信を行なってもよい。
【0033】
また、上述の一実施形態では、駆動量取得部51は、混合弁部14のモータ43の負荷を取得する例について説明した。しかし、駆動量取得部51は、モータ43の負荷に代えて、第一弾性部材41または第二弾性部材42の伸縮や全長などの情報を取得する構成としてもよい。第一弾性部材41または第二弾性部材42は、供給水の温度Tsによって伸縮し全長が変化する。つまり、第一弾性部材41または第二弾性部材42の伸縮は、供給水の温度Tsに相関する。そこで、駆動量取得部51は、例えば位置センサや電気的な抵抗などを用いてこれら第一弾性部材41または第二弾性部材42いずれか一方または両方の伸縮に関する情報を駆動量として取得し、この伸縮情報に基づいて供給水の温度Tsを推定する構成としてもよい。これらの場合、第一弾性部材41または第二弾性部材42は、いずれも伸縮部材に相当する。
【符号の説明】
【0034】
図面中、10は給湯装置、11は加熱器、13は水路部、14は混合弁部、15は循環機構部、21は接続通路部、22はポンプ、23は開閉弁部、31は弁部材、32は駆動部、41は第一弾性部材(伸縮部材)、42は第二弾性部材(伸縮部材)、43はモータ、51は駆動量取得部、52は制御部を示す。
図1
図2
図3
図4