(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】衛生マスク及び衛生マスク用銅板
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240326BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2020116654
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 伸一
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005089(JP,A)
【文献】国際公開第2016/166794(WO,A1)
【文献】実開昭56-130741(JP,U)
【文献】特開2018-172807(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105795550(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を少なくとも二枚重ね合わせて構成されるマスク本体と、
二枚の前記シート状部材の間に挟み込まれた薄板状の銅板と、を有し、
前記銅板は、当該銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、当該複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を備え、
当該第2の貫通孔が設けられた部位は、前記第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大き
く、
平面視で、前記第1の貫通孔は円形であり、前記第2の貫通孔は前記第1の貫通孔が設けられた部位を起点として放射状に配置された長孔形状であることを特徴とする衛生マスク。
【請求項2】
シート状部材を少なくとも二枚重ね合わせて構成されるマスク本体と、
二枚の前記シート状部材の間に挟み込まれた薄板状の銅板と、を有し、
前記銅板は、当該銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、当該複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を備え、
当該第2の貫通孔が設けられた部位は、前記第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大き
く、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とは同等の孔径を有し、且つ、前記第2の貫通孔が設けられた部位は、前記第1の貫通孔が設けられた部位よりも密に第2の貫通孔が設けられていることを特徴とする衛生マスク。
【請求項3】
前記マスク本体は、少なくとも二枚の前記シート状部材の一部を開口部として残して袋状に形成され、
前記銅板を前記開口部から前記二枚のシート状部材の間に挟み込むことにより、前記銅板は前記マスク本体に対して着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の衛生マスク。
【請求項4】
薄板状の銅板であって、
当該銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、
当該複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を有し、
当該第2の貫通孔が設けられた部位は、前記第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大き
く、
平面視で、前記第1の貫通孔は円形であり、前記第2の貫通孔は前記第1の貫通孔が設けられた部位を起点として放射状に配置された長孔形状であることを特徴とする衛生マスク用銅板。
【請求項5】
薄板状の銅板であって、
当該銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、
当該複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を有し、
当該第2の貫通孔が設けられた部位は、前記第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大き
く、
前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とは同等の孔径を有し、且つ、前記第2の貫通孔が設けられた部位は、前記第1の貫通孔が設けられた部位よりも密に第2の貫通孔が設けられていることを特徴とする衛生マスク用銅板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生マスク及び衛生マスク用銅板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微生物やウィルス、埃等、空中を浮遊する微小異物の鼻及び口への進入を防止する目的で、また花粉症への対策として、鼻及び口を覆う衛生マスクが着用されている。この種の衛生マスクは、ガーゼ等の天然繊維の織布や不織布をフィルタとしたものが知られている。
【0003】
また、長期に亙って使用しても雑菌等が繁殖しないように、抗菌効果を有する衛生マスクなども提案されている。例えば、二枚のシート状の不織布を重ね合わせてマスク本体を形成し、二枚の不織布の間に、微細な貫通孔が複数形成された薄板状の銅板を挟み込むことにより、銅板によって、殺菌効果を生じさせるようにした衛生マスク(例えば、特許文献1参照)、また、銅繊維或いは網状の銅からなるシートを挟み込むようにした衛生マスク等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の薄板状の銅板を挟み込むようにした衛生マスクにおいては、衛生マスクが顔の凹凸に添って変形し、鼻や口の部分は衛生マスクとの間に比較的空間があるが、頬の部分等は衛生マスクとの間の隙間が小さい。そのため、銅板の略全面に亙って貫通孔を多数設けたとしても、頬の部分等、衛生マスクとの間の隙間が小さい部位では、呼気及び吸気が移動しにくい。そのため、使用者は息苦しさを感じる可能性がある。
【0006】
そこで、この発明は、従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、使用者に対して息苦しさを感じさせることなく、容易に滅菌効果を得ることの可能な衛生マスクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明の一態様によれば、シート状部材を少なくとも二枚重ね合わせて構成されるマスク本体と、二枚のシート状部材の間に挟み込まれた薄板状の銅板と、を有し、銅板は、銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を備え、第2の貫通孔が設けられた部位は、第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大きく、平面視で、第1の貫通孔は円形であり、第2の貫通孔は第1の貫通孔が設けられた部位を起点として放射状に配置された長孔形状である衛生マスクが提供される。
また、本発明の他の態様によれば、シート状部材を少なくとも二枚重ね合わせて構成されるマスク本体と、二枚のシート状部材の間に挟み込まれた薄板状の銅板と、を有し、銅板は、銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を備え、第2の貫通孔が設けられた部位は、第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大きく、第1の貫通孔と第2の貫通孔とは同等の孔径を有し、且つ、第2の貫通孔が設けられた部位は、第1の貫通孔が設けられた部位よりも密に第2の貫通孔が設けられている衛生マスクが提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、薄板状の銅板であって、銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を有し、第2の貫通孔が設けられた部位は、第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大きく、平面視で、第1の貫通孔は円形であり、第2の貫通孔は第1の貫通孔が設けられた部位を起点として放射状に配置された長孔形状である衛生マスク用銅板が提供される。
さらに、本発明の他の態様によれば、薄板状の銅板であって、銅板の中央部近傍に形成された複数の第1の貫通孔と、複数の第1の貫通孔を取り囲むように形成された複数の第2の貫通孔と、を有し、第2の貫通孔が設けられた部位は、第1の貫通孔が設けられた部位よりも単位面積あたりの開口面積が大きく、第1の貫通孔と第2の貫通孔とは同等の孔径を有し、且つ、第2の貫通孔が設けられた部位は、第1の貫通孔が設けられた部位よりも密に第2の貫通孔が設けられている衛生マスク用銅板が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用者に対して息苦しさを感じさせることなく、容易に滅菌効果を得ることの可能な衛生マスクを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る衛生マスクの一例を示す構成図であって、(a)はマスク本体の正面図、(b)は銅板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
〔衛生マスクの構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る衛生マスク1の一例を示したものであって(a)はマスク本体2の正面図、(b)は銅板3の正面図である。
衛生マスク1は、マスク本体2と銅板3とを備える。マスク本体2は、左右対称に形成され、フィルタ部11と耳掛け用の一対のゴム紐12とを備える。フィルタ部11は、二枚のシート状部材11Aで構成される。シート状部材11Aは、例えば、ガーゼ、不織布、布材、等である。
【0013】
フィルタ部11は、
図1(a)に示すように、上部が頂点11aを頂角とする略二等辺三角形を有し、略二等辺三角形の底角11b、11cどうしが弧状部11dにより弧状に結ばれた略五角形状を有する。ゴム紐12の一方は、底角11bと弧状部11dの底角11b寄りの位置11daとに取り付けられている。ゴム紐12の他方は、底角11cと弧状部11dの底角11c寄りの位置11dbに取り付けられている。
また、フィルタ部11は、二枚のシート状部材11Aのうち、底角11bから弧状部11d、底角11cを経て、頂点11aと底角11cとの中間程度の位置11aaまでが接合されて袋状になっている。底角11bから頂点11aを経て底角11cの手前の位置11aaにかけて開口部11eが形成され、この開口部11eから、銅板3を出し入れできるようになっている。
【0014】
銅板3は、薄板状であって、
図1(b)に示すように、フィルタ部11と略相似形状を有するが、フィルタ部11よりもやや小さい。銅板3は、孔径が比較的小さい第1の貫通孔3aと、長孔形状を有し、第1の貫通孔3aよりも孔の面積が大きい第2の貫通孔3bとを備える。第1の貫通孔3a及び第2の貫通孔3bは、フィルタ部11の頂点11aと対応する頂点31aを通る垂線を軸として線対称に形成されている。第1の貫通孔3a及び第2の貫通孔3bは、エッチング加工を行うことにより形成される。
第1の貫通孔3aは、銅板3の左右方向中央部の上端と、銅板3の下端からやや上の位置との間にかけての領域、つまり、衛生マスク1を装着したときに使用者の鼻及び口を含む領域と対向する領域に形成される。
【0015】
第2の貫通孔3bは、複数の第1の貫通孔3aの周囲の、底角11bに対応する角31bから底角11cに対応する角31cにかけての弧状部31dに沿った位置に、複数の第1の貫通孔3aが形成された部位を起点として角31b、弧状部31d、角31cを通る縁部に向かう放射状に形成される。第2の貫通孔3bの長さは、角31b及び角31cに近い位置ほど長くなり、弧状部31dの中央部つまり銅板3の最下端の部分で最も短くなるように形成され、複数の第1の貫通孔3aを囲むように、複数の第1の貫通孔3aを起点として放射状に形成される。つまり、第1の貫通孔3aと第2の貫通孔3bとは、第2の貫通孔3bが形成された部位は、第1の貫通孔3aが形成された部位よりも単位面積あたりの開口面積が大きくなるように形成されている。
【0016】
そして、頂点31aを通る線対称の軸と、フィルタ部11の頂点11aを通る線対称の軸とが重なるように、銅板3を、開口部11eから袋状のフィルタ部11の二枚のシート状部材11Aの間に挟み込み、この状態で、頂点11aを上として、一対のゴム紐12のそれぞれを左右の耳に掛けることで、衛生マスク1を装着するようになっている。
なお、フィルタ部11及び銅板3の形状は、
図1に示すように、上部が略二等辺三角形、下部が弧状となる略五角形状に限るものではなく、フィルタ部11の二枚のシート状部材11Aの間に銅板3を挟み込むことができればよく、例えば横長の長方形状であってもよい。
【0017】
〔効果〕
本発明の一実施形態に係る衛生マスク1は、銅板3をフィルタ部11に挟み込んでおり、ウィルスを付着させて滅菌することが期待できる銅エッチング板がフィルタ部11の二枚のシート状部材11Aに接している。そのため、シート状部材11Aに付着したウィルスが銅板3に接すること、或いは、吸気及び呼気が銅板3の第1及び第2の貫通孔3a、3bを通過する際に第1及び第2の貫通孔3a、3bに接することにより、吸気及び呼気に含まれるウィルス等を滅菌することができ、結果的に、使用者がウィルス等を吸い込むことを低減することができると共に、使用者が吐き出したウィルス等が、外部に広まることを低減することができる。
また、銅繊維シートを用いる場合に比較して、銅エッチング板からなる銅板3を用いた方が衛生マスク1の形状を維持しやすい。そのため、衛生マスク1の型崩れを防止することができると共に耐久性を向上させることができる。
【0018】
また、銅板3には、
図1(b)に示すように、第1の貫通孔3aと第2の貫通孔3bとを設けている。そのため、銅板3をフィルタ部11に挟み込んだときに使用者が息苦しさを感じることを抑制することができる。つまり、装着したときに、使用者の鼻及び口に対向する部分には小径の第1の貫通孔3aを多数配置しているため、使用者は十分に呼吸することができると共に、第1の貫通孔3aが多数形成されているため、呼気或いは吸気が多数の第1の貫通孔3aを通過するに最に銅板3によって効率よく滅菌することができる。また、使用者の鼻及び口の周辺、つまり頬等と対向する部分には、第1の貫通孔3aよりも孔の面積が大きい第2の貫通孔3bが多数形成され、第1の貫通孔3aが形成された部位よりも第2の貫通孔3bが形成された部位の方が単位面積当たりの開口面積が大きくなるようにしている。
【0019】
ここで、鼻や口に対向する部分は、衛生マスク1を掛けた状態でも、鼻や口の凹凸によって、鼻や口とシート状部材11Aとの間に隙間ができやすいため、呼吸をし易い。これに対し、鼻や口の周囲、つまり頬等と対向する部分は、シート状部材11Aとの間に隙間ができにくい。
図1(b)に示すように、鼻や口の周囲の頬と対向する部分には、第2の貫通孔3bを形成しており、第2の貫通孔3bが形成された部位は、第1の貫通孔3aが形成された部位よりも単位面積当たりの開口面積が大きい。そのため、衛生マスク1との隙間ができにくい頬等と対向する部分は、単位面積当たりの開口面積を大きくすることで、使用者は呼吸をしやすくなる。その結果、フィルタ部11全体にわたって呼吸しやすくすることができ、使用者が息苦しさ感を感じることを低減することができる。
【0020】
また、このように、息苦しさ感を与えることを回避することができるため、銅板3を、フィルタ部11に挟み込むことができる程度の大きさに形成し、フィルタ部11よりも多少小さい程度の大きさに形成した場合であっても、使用者に息苦しさ感を与えることを回避することができる。その結果、フィルタ部11全体にわたって呼気及び吸気を通過させることができ、銅板3全体に呼気及び吸気を行き渡らせることで、結果的にウィルス等を効率よく滅菌することができる。
【0021】
なお、銅板3に形成される第1の貫通孔3a及び第2の貫通孔3bは、
図1(b)に示す形状及び配置に限るものではない。鼻や口の部分と対向する、比較的フィルタ部11との隙間を形成しやすい部分における単位面積当たりの開口面積に比較して、頬等の比較的フィルタ部11との間の隙間を形成しにくい部分における単位面積当たりの開口面積の方が大きくなるように、第1の貫通孔3a及び第2の貫通孔3bの形状及び配置等を設定すればよい。例えば、第1の貫通孔3aは比較的小さい孔径の孔を複数形成し、第2の貫通孔3bとして第1の貫通孔3aと同等程度の孔径を有する孔を、第1の貫通孔3aよりもより多く且つ密に形成することで、第2の貫通孔3bが形成された部位の単位面積当たりの開口面積を第1の貫通孔3aが形成された部位よりも大きくするようにしてもよい。また、第1の貫通孔3aはそれぞれ同一形状でなくともよく、同様に第2の貫通孔3bはそれぞれ同一形状でなくともよい。呼気及び吸気が接する銅板3の領域が大きいほど、滅菌効果を得ることができるため、第1及び第2の貫通孔3a、3bは、呼吸のし易さと、呼気及び吸気が銅板3に接することにより得られる滅菌効果とを考慮して設定すればよい。
【0022】
また、上記実施形態では、フィルタ部11は、二枚のシート状部材11Aを備える場合について説明したが、三枚以上のシート状部材11Aを重ねて設けるようにしてもよく、このときシート状部材の間それぞれに銅板3を挟み込むようにしてもよい。
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 衛生マスク
2 マスク本体
3 銅板
3a 第1の貫通孔
3b 第2の貫通孔
11 フィルタ部
11A シート状部材
12 ゴム紐