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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】紙製トレー
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/20 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B65D5/20 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020119065
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015906
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】古▲瀬▼ 清人
(72)【発明者】
【氏名】猪又 暢之
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172339(JP,A)
【文献】特開2004-067229(JP,A)
【文献】実開昭58-167016(JP,U)
【文献】実開平06-072824(JP,U)
【文献】米国特許第05253801(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製のブランクからなる紙製トレーであって、
紙製のブランクは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなり、
紙製トレーは、底面、側面板、およびフランジによって構成され、
側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレー側面を形成しており、
フランジは、側面板の上端に連続して、トレーの周囲を囲んでフランジを形成しており、
前記ブランクを構成する台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間が、側面板を立ち上げた際にトレーの側面の形成が可能に楔形に切除してあり、
また、トレーの外周を囲むフランジとフランジとの間も、互いに重ならないよう切除されており、
この切除は、フランジの外周部分では台紙が突合せられて接続可能に切除され、フンジの内周部分では、台紙が突合せられて接続しないように互いに凹んだ形状に切除されており、
前記熱可塑性樹脂層は、台紙が切除された部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、
底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板とが接するようシールされ、
同様に、トレーの外周を囲むフランジとフランジとの間は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、フランジの外周部分では台紙が突合せられて接続されており、フランジの内周部分では、凹んだ形状に台紙が切除された部分の、熱可塑性樹脂層を介して接続されて、
トレーが形成されていることを特徴とする、紙製トレー。
【請求項2】
前記フランジの内周部分で、台紙が凹んだ形状に切除されている部分は、その一部分がフランジの内周部分から側面板にはみ出して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の紙製トレー。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、のうちのいずれか、または複数からなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の紙製トレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製トレーに関するものである。特に板紙を基材としたブランクを用いて形成され、例えば、アイスクリームなどの冷凍食品や、粉末物を収納することが可能な、紙製トレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙製トレーは、スーパーマーケットや、コンビニエンスストアなどの小売りの場面で、例えば食品の包装材料として使用されている。その形態はさまざまであるが、紙を基材としていることから、価格面でのメリットのほか、環境適合型の包装材料として、広く使われている。
【0003】
また、内容物によってさまざまな形態が可能であり、ブランクとして紙基材の表面に熱可塑性樹脂層を設けて、耐水性を付与し、また紙製トレーの立体の形成に熱可塑性樹脂層のシールを行うこともでき、さらに蓋材をシールしてトレー全体を密封することも行われている。
【0004】
しかしながら、紙を基材とした平面のブランクから組み立てて作る紙製トレーにおいては、プラスチックを基材としたトレーとは異なり、組み立て時にブランク同士が重なる部分がある。
【0005】
この部分は厚さが厚くなるために、シールして紙製トレーを密封しようとする際には、この段差部分がシールの欠陥になるおそれがあり、密封性には問題があるのが実情であった。特に液体の内容物などにおいては、包装材料において重大欠陥とされる、漏れの問題を引き起こす恐れがあるとして改善が求められてきた。
【0006】
例えば特許文献1には、トレー専用ブランクとして、方形のトレーにおいてフランジを設けてあり、方形の4隅において舌片を設けて2方向のフランジを接合する方式の紙製トレーを形成することのできるトレー専用ブランクが提案されているが、この場合には舌片の接合部分には、重なりによる段差ができることは避けられず、この段差による隙間部分によって密封性の欠如が内容物の漏れを引き起こす恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-255546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、紙製トレーにおいて、フランジから形成されるフランジ同士の接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
紙製のブランクからなる紙製トレーであって、
紙製のブランクは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなり、
紙製トレーは、底面、側面板、およびフランジによって構成され、
側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレー側面を形成しており、
フランジは、側面板の上端に連続して、トレーの周囲を囲んでフランジを形成しており、
前記ブランクを構成する台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間が、側面板を立ち上げた際にトレーの側面の形成が可能に楔形に切除してあり、
また、トレーの外周を囲むフランジとフランジとの間も、互いに重ならないよう切除されており、
この切除は、フランジの外周部分では台紙が突合せられて接続可能に切除され、フランジの内周部分では、台紙が突合せられて接続しないように互いに凹んだ形状に切除されており、
前記熱可塑性樹脂層は、台紙が切除された部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、
底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板とが接するようシールされ、
同様に、トレーの外周を囲むフランジとフランジとの間は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、フランジの外周部分では台紙が突合せられて接続されており、フランジの内周部分では、凹んだ形状に台紙が切除された部分の、熱可塑性樹脂層を介して接続されて、
トレーが形成されていることを特徴とする、紙製トレーである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、
前記フランジの内周部分で、台紙が凹んだ形状に切除されている部分は、その一部分がフランジの内周部分から側面板にはみ出して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の紙製トレーである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、のうちのいずれか、または複数からなることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の紙製トレーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、紙製トレーにおいて、フランジから形成されるフランジの接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することが可能である。
【0013】
紙製トレーは、底面、側面板、およびフランジによって構成されることによって、また側面板は、底面を囲んで立ち上がり、トレー側面を形成しておりフランジは、側面板の上端に連続して、トレーの周囲を囲んでフランジを形成していることによって、容器として内容物を収納することが可能ある。また、フランジを有することによって、蓋材を用いて、紙製トレーの密封が可能である。
【0014】
また、紙製のブランクは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とからなることによって、前述の密封をヒートシールなどの方法で密封することが可能になり、熱可塑性樹脂層の存在によって、内容物として液体の内容物の収納も可能である。
【0015】
ブランクを構成する台紙は、トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間が、側面板を立ち上げた際にトレーの側面の形成が可能に楔形に切除してあることによって、トレーの組み立てをより容易なものとすることが可能である。すなわち、台紙部分を重ねて折り畳んで立体を形成することなく、側面板同士の切除された部分を合わせることによって、より容易に立体の紙製トレーを組み立てることができる。加えて、折り畳みによるトレー側面の厚薄の差をなくすことが可能である。
【0016】
またこの切除は、トレーの外周を囲むフランジとフランジとの間は、互いに重ならないよう切除されており、フランジの外周部分では台紙が突合せられて接続可能に切除され、フランジの内周部分では、台紙が突合せられるより互いに凹んだ形状に切除されている。
【0017】
この形状は、本発明による紙製トレーにおいてその特徴のひとつであって、この形状によってフランジの重なりがなく、すなわち段差を形成することなく、例えば蓋材とのシールなどする際には段差によるシールの阻害を回避することが可能である。
【0018】
また凹んだ形状同士が接続する部分では、熱可塑性樹脂層が折り返されて二重の層となっているために、例えば蓋材をシールする場合には、この二重の熱可塑性樹脂層の溶融によって、シール性、密封性において優れたものとすることが可能である。
【0019】
また特に請求項2に記載の発明によれば、フランジの内周部分で、台紙が凹んだ形状に切除されている部分は、その一部分がフランジの内周部分から側面板にはみ出して形成されていることによって、蓋材などによる密封をする際に、側面板とフランジの境の部分を折り曲げた角によるによる、密封阻害を起こす恐れがなく、特にフランジの内周側および側面板の、凹んだ形状に台紙が切除された部分の熱可塑性樹脂層によって、より安定したシール、密封が可能である。
【0020】
また特に請求項3に記載に発明によれば、紙製トレーの用途や要求される品質によって熱可塑性樹脂の使い分けが可能である。たとえば、電子レンジによる加熱がされる用途に対応するために、高温耐性を有する、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂のうちから、適宜選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を説明するための、斜視模式図である。
図2図2は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を説明するための、ブランクの部分平面模式図である。
図3図3は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を説明するための、ブランクを組み立てた状態を上方から見た部分模式図である。
図4図4は、本発明に係る紙製トレーの他の実施態様を説明するための、ブランクを組み立てた状態を上方から見た部分模式図である。
図5図5は、本発明に係る紙製トレーの、実施例1を説明するための、ブランクの部分平面模式図である。
図6図6は、本発明に係る紙製トレーの、比較例1を説明するための、ブランクの部分平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0023】
図1は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を説明するための、斜視模式図である。
【0024】
本発明による紙製トレー(100)は、底面(1)、側面板(2)、およびフランジ(3)によって構成されている。図1に示す例は、角形の紙製トレー(100)の例であって、4か所の角部は面取りが施してあって、底面(1)およびフランジ(3)が8角形の形状を有している紙製トレー(100)の例である。
【0025】
また本発明による紙製トレー(100)は、紙製のブランクからなるトレーであって、紙製のブランクは、台紙と、その表裏両面またはトレーの内側となる面に形成された熱可塑性樹脂層とから構成される。
【0026】
側面板(2)は、底面(1)を囲んで立ち上がり、紙製トレー(100)の側面を形成しており、フランジ(3)は、側面板(2)の上端に連続して、紙製トレー(100)の周囲を囲んでフランジ(3)を形成している。
【0027】
本発明による紙製トレー(100)は、内容物を収納したのち、必要に応じて蓋材(4)を用いて内容物の包装容器として密封することが可能であって、その場合には紙製トレー(100)の周囲を囲むフランジ(3)に、蓋材(4)をシールして密封することができる。
【0028】
図1に示す例においては、本発明による紙製トレー(100)のほか、蓋材(4)も併せて示してある。この図に示す通り、蓋材(4)と紙製トレー(100)は、蓋材(4)の周縁部とフランジ(3)でシールされ、トレー内部に内容物を収容して、紙製トレー(100)を密封することができる。
【0029】
図2は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を説明するための、ブランクの部分平面模式図である。
【0030】
図2に示す紙製トレー(100)のブランクの部分平面模式図は、図1に示す例の、紙製トレー(100)の4か所の角部のうちの一つを示したものである。前述のように本発明による紙製トレー(100)は、底面(1)、側面板(2)、およびフランジ(3)によって構成され、側面板(2)は、底面(1)を囲んで立ち上がり、トレー側面を形成しており、フランジ(3)は、側面板(2)の上端に連続して、紙製トレー(100)の周囲を囲んでフランジ(3)全体を形成している。
【0031】
紙製のブランク(10)は、台紙と、熱可塑性樹脂層(5)とからなる。ブランク(10)を構成する台紙は、紙製トレー(100)の角部において、側面板(2)と、隣接する側面板(2)とが、側面板(2)を立ち上げた際にトレーの側面の形成が可能に楔形に切除してあり、またトレーの外周を囲むフランジ(3)とフランジ(3)との間は、フランジ(8)上において互いに重ならないよう切除されている。
【0032】
図2に示すブランク(10)の例において、熱可塑性樹脂層(5)は、これら切除された部分に示されており、可視である。そのほか熱可塑性樹脂層(5)は、台紙の全面にわたって設けられている。すなわち熱可塑性樹脂層(5)は、切除された部分において熱可塑性樹脂層(5)のみで構成され、その他の部分では、台紙と熱可塑性樹脂層(5)との積層体である。
【0033】
この時、熱可塑性樹脂層(5)は、台紙の表裏両面、またはトレーの内側となる面に形成することができる。すなわち、少なくともトレーの内側となる面に形成されていることによって、熱可塑性樹脂層(5)は、紙製トレー(100)の組み立てにおいて、シーラントとして側面板(2)、フランジ(3)の接着に寄与するとともに、紙製トレー(100)に耐水性、耐油性を付与することにも効果的である。
【0034】
台紙の切除された部分は、側面板(2)と、隣接する側面板(2)との間の楔形の部分と、それに連続するトレーの外周を囲むフランジ(3)とフランジ(3)との間の部分である。また、台紙はフランジ(3)の外周部分では、紙製トレー(100)を組み立てた
際に、フランジ(3)同士が突合せられて接続可能な形状に切除されたフランジ突合せ部(7)を形成している。さらにフランジ(3)の内周部分では、台紙は凹んだ形状(6)に切除されている。
【0035】
図3は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を説明するための、ブランクを組み立てた状態を上方から見た部分模式図である。
【0036】
したがって、図3に示す部分模式図は、紙製トレー(100)のコーナー部(11)のひとつを示しており、図の底面(1)から、側面板(2)が手前に立ち上がっている、トレーの立体形状を示すものである。
【0037】
紙製トレー(100)の組み立てのうち、トレー側面の形成は、楔形の部分の熱可塑性樹脂層(5)によって、隣接する側面板(2)同士がシールされて形成される。図3に示す例においては、この熱可塑性樹脂層(5)によるシール部分は、コーナー部(11)の側面板(2)同士の重なりの楔形の部分になっており不可視である。
【0038】
また紙製トレー(100)の組み立てのうち、コーナー部(11)において、フランジ(3)は、前述のフランジ突合せ部(7)、および凹んだ形状(6)が、図2に示したフランジ(8)の上で突合せて、フランジ(3)全体の形成、紙製トレー(100)の組み立てが行われる。なお、紙製トレー(100)を組み立てた状態を示す図3においては、図2で示すコーナー部(11)のフランジ(8)は、フランジ(3)の下にシールされており、不可視である。
【0039】
すなわち、フランジ(3)の外周部分では、フランジ突合せ部(7)の台紙が突合せられて熱可塑性樹脂層(5)を介して接続されている。また、フランジ(3)の内周側では、凹んだ形状(6)に台紙が切除された部分の、熱可塑性樹脂層(5)を介して接続される。
【0040】
凹んだ形状(6)の部分では、熱可塑性樹脂層(5)は、折り返されて重なり、二重になっており、図3に示す例において、横方向に伸びるフランジ(3)と、縦方向に伸びるフランジ(3)の両方の、それぞれ半円形に凹んだ形状(6)が接続して、略円形の二重の熱可塑性樹脂領域(9)を形成している。
【0041】
このようにして、フランジ(3)同士が接続して、紙製トレー(100)の周縁を囲む形状となり、フランジ(3)全体が形成される。
【0042】
紙製トレーの周縁に形成されたフランジ(3)は、フランジ突合せ部(7)では、フランジ(3)同士が重なり合うことがないために段差がなく、フラットである。例えばフランジ(3)に蓋材(4)をシールする場合などにおいては、段差による密封性の阻害を避けることが可能である。
【0043】
また前述のように、凹んだ形状(6)同士が接続する部分では、二重の熱可塑性樹脂領域(9)が形成されているために、例えば蓋材をシールする場合などには、この二重の熱可塑性樹脂領域(9)の溶融によって、蓋材(4)とのシール性、包装容器としての密封性において、優れたものとすることが可能である。
【0044】
図4は、本発明に係る紙製トレーの他の実施態様を説明するための、ブランクを組み立てた状態を上方から見た部分模式図である。
【0045】
図4に示す例は、二重の熱可塑性樹脂領域(12)が、図3に示す例とは別の実施態様
の例である。フランジ(3)の内周部分で、台紙が凹んだ形状(6)に切除されている部分は、その一部分がフランジ(3)の内周部分から側面板(2)にはみ出して形成することができる。
【0046】
この場合も、図3に示す例と同様に、凹んだ部分(6)では熱可塑性樹脂層(5)は折り返されて、かつフランジ(3)同士の突合せによって連続して、二重の熱可塑性樹脂領域(12)を形成している。すなわち、二重の熱可塑性樹脂領域(12)は、フランジの面からトレーの側面に張り出して形成することができる。
【0047】
例えば蓋材(4)などをシールする場合には、この二重の熱可塑性樹脂領域(12)の溶融によって、蓋材(4)とのシール性、包装容器としての密封性において優れたものとすることが可能である。
【0048】
この場合には、二重の熱可塑性樹脂領域(12)は、フランジの面からトレーの側面に張り出して形成されているために、側面板(2)とフランジ(3)との境の部分を折り曲げた角による密封阻害を起こす恐れがない。
【0049】
特にフランジ(3)の内周側および側面板(2)の、凹んだ形状(6)に一部が台紙を含んで切除された部分の二重の熱可塑性樹脂領域(12)の溶融によって、例えば蓋材とのシール性、包装容器としての密封性において、より優れたものとすることが可能である。
【0050】
前述のように、本発明による紙製トレー(100)は、紙製のブランク(10)からなる紙製トレー(100)であって、紙製のブランク(10)は、台紙と、その表裏両面または紙製トレー(100)の内側となる面に形成された、熱可塑性樹脂層(5)とから構成される。
【0051】
図3および図4に示すように、熱可塑性樹脂層(5)は、熱可塑性樹脂層(5)同士が対向するように重ねて、シールすることができる。例えば、重ねた部分を加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、紙製トレー(100)を組み立てることを可能にする。
【0052】
熱可塑性樹脂層(5)の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0053】
熱可塑性樹脂層(5)は、上記のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、のほか、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂も使用することができ、これらのうちのいずれか、または複数から、紙製トレー(100)の用途や要求される品質などを考慮して選択することができる。特にポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、例えば電子レンジによる加熱などに対しての耐熱性において優れる。
【0054】
熱可塑性樹脂層(5)の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、台紙の表面または表裏両面に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態
に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、台紙の表面、または表裏両面に熱可塑性樹脂層(5)を形成することも可能である。
【0055】
また、必要に応じて、商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報表示や意匠性の向上を目的として、紙製トレー(100)の外側から見える層に印刷層を設けることができる。印刷層は紙製トレー(100)の最外層に設けるのでも構わない。
【0056】
また印刷層は、紙製トレー(100)の一部に設けるのでもよく、また紙製トレー(100)の全面に渡って設けるのでもよい。
【0057】
ここで、印刷方法、および印刷インキには、とくに制約を設けるものではないが、既知の印刷方法の中からプラスチック材料への印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮して適宜選択することができる。
【0058】
たとえば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性、プラスチック材料への印刷適性、および絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0059】
このようにして、本は発明によれば紙製トレー(100)において、フランジから形成されるフランジ同士の接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレー(100)を供給することが可能である。
【実施例
【0060】
以下本発明を、実施例、および比較例によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0061】
評価用に紙製トレー(100)を試作して、紙製トレーを組み立てた後に段差コーナー部のフランジ(3)の段差を観察した。紙製トレー(100)は図1に示す形状の角形の紙製トレー(100)であって、4か所の角部は面取りが施してあって、底面(1)およびフランジ(3)が8角形の形状を有する紙製トレー(100)である。
【0062】
<実施例1>
図5は、本発明に係る紙製トレーの、実施例1を説明するための、ブランクの部分平面模式図である。
【0063】
ブランクの層構成は下記のとおりである。
ブランクのトレー内側となる面から、
ポリプロピレン樹脂(厚さ40μm)/台紙(カップ原紙 坪量260g/m)/ポリプロピレン樹脂(厚さ30μm)
とした。
【0064】
ブランクは、本発明によるところの図5に示す形状とした。
【0065】
<比較例1>
図6は、本発明に係る紙製トレーの、比較例1を説明するための、ブランクの部分平面模式図である。
【0066】
ブランクの層構成は下記のとおりである。
ブランクのトレー内側となる面から、
ポリプロピレン樹脂(厚さ40μm)/台紙(カップ原紙 坪量260g/m)/ポリプロピレン樹脂(厚さ30μm)
とした。
【0067】
比較例1においては、ブランクの層構成は実施例と同様であるが、ブランクの形状は、トレーのコーナー部においての切除の形状が従来行われてきた形状であって、実施例1とはこの部分が異なっている。
【0068】
評価結果は下記のとおりである。
実施例1については、紙製トレーを組み立てた後にフランジを確認した結果、コーナー部において段差は確認されなかった。
比較例1については、紙製トレーを組み立てた後にフランジを確認した結果、コーナー部において段差が確認された。
【0069】
すなわち、この結果から、本発明によって、紙製トレー(100)のブランクを構成する台紙は、下記の1~5を特徴とする形状であることがフランジの段差の解消に効果的であると考えられる。
【0070】
1.トレーの角部において、側面板と、隣接する側面板との間が、側面板を立ち上げた際にトレーの側面の形成が可能に楔形に切除してある。
2.トレーの外周を囲むフランジとフランジとの間も、互いに重ならないよう切除されており、この切除は、フランジの外周部分では台紙が突合せられて接続可能に切除され、フランジの内周部分では、台紙が突合せられて接続しないように互いに凹んだ形状に切除されている。
3.熱可塑性樹脂層は、台紙が切除された部分を含んで、台紙の表裏両面またはトレーの内側となる面から積層してあり、底面を囲んで立ち上がる側面板は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、側面板と、隣接する側面板とが接するようシールされている。
4.同様に、トレーの外周を囲むフランジとフランジとの間は、台紙を切除した部分の熱可塑性樹脂層によって、フランジの外周部分では台紙が突合せられて接続されている。
5.フランジの内周部分では、凹んだ形状に台紙が切除された部分の、熱可塑性樹脂層を介して接続されている。
【0071】
すなわち、本発明によれば、紙製トレーにおいて、フランジから形成されるフランジ同士の接合部分の段差がなく、密封性のよい紙製トレーを供給することが可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0072】
1・・・底面
2・・・側面板
3・・・フランジ
4・・・蓋材
5・・・熱可塑性樹脂層
6・・・凹んだ形状
7・・・フランジ突合せ部
8・・・フランジ
9・・・二重の熱可塑性樹脂領域
10・・・ブランク
11・・・コーナー部
12・・・二重の熱可塑性樹脂領域
100・・・紙製トレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6