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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240326BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240326BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240326BHJP
   B65H 23/16 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G03G21/16 161
G03G15/20 510
G03G15/00 303
B65H23/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020122814
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019150
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨野 俊彰
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-210059(JP,A)
【文献】特開2002-039296(JP,A)
【文献】特開2002-123130(JP,A)
【文献】特開2015-057634(JP,A)
【文献】特開2005-338884(JP,A)
【文献】特開2004-264636(JP,A)
【文献】特開2019-207318(JP,A)
【文献】特開2007-033895(JP,A)
【文献】特開2016-057510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/20
G03G 15/00
B65H 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写ローラーと定着ローラーとの間の振動吸収部と、
前記振動吸収部の有する弾性機構の共振周波数が、前記定着ローラーより生ずる定着駆動振動の周波数の1/√2以下になるように、前記弾性機構のバネ定数を算出する制御部と、を有する画像形成装置。
【請求項2】
連続紙を搬送する搬送部を備える請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記振動吸収部は更に、弾性部材を有するローラーを備える請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記弾性機構は、バネ定数が調整可能なエアシリンダ機構を備える請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置で形成した画像を取得し、当該画像の画像ムラの周波数を算出する画像解析部を有し、
前記制御部は更に、前記画像ムラの周波数から前記弾性機構の適正なバネ定数を算出し、前記弾性機構のバネ定数を調整する、請求項1~4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は更に、前記弾性機構の共振周波数が、前記定着ローラーより生ずる定着駆動振動の周波数の1/2以下になるように、前記弾性機構のバネ定数を算出する請求項2~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、用紙等の記録媒体の搬送時に所定のテンションを与えることで、記録媒体の蛇行等を抑制する。電子写真方式の画像形成装置においては、所定のテンションをかけながら記録媒体を搬送し、当該記録媒体に画像を転写ローラーで転写した後、転写した画像(転写画像)を定着ローラーで定着させる。
【0003】
転写ローラーと定着ローラーとの間で、記録媒体に所定のテンションをかけるためには、定着速度を転写速度以上にする必要があり、定着速度と転写速度を同一にできれば理想的である。一方、定着速度が転写速度よりも速すぎると、記録媒体のテンションが高くなりすぎるため、定着ローラーの振動(定着駆動振動)が記録媒体を介して転写ローラーに伝わりやすくなり、定着駆動振動によって転写画像にブレが生じてしまう。この問題に対応するため、例えば特許文献1には、転写ローラーによる記録媒体の搬送速度と、転写ローラーによる記録媒体の搬送速度との速度比が可変である画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-101925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように搬送速度の速度比を調整すれば、転写画像のブレを軽減することができる。しかしながら、転写画像のブレの抑制を搬送速度の調整によって実現する場合、許容できる定着速度と転写速度の速度差が極めて小さいため、精細な調整が要求され、調整の失敗は画質の劣化に繋がる。
【0006】
本発明は、以上に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、転写画像のブレの軽減が容易であり、画質に優れた画像を形成することができる画像形成装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)転写ローラーと定着ローラーとの間の振動吸収部と、前記振動吸収部の有する弾性機構の共振周波数が、前記定着ローラーより生ずる定着駆動振動の周波数の1/√2以下になるように、前記弾性機構のバネ定数を算出する制御部と、を有する画像形成装置。
【0008】
(2)連続紙を搬送する搬送部を備える前記(1)の画像形成装置。
【0009】
(3)前記振動吸収部は更に、弾性部材を有するローラーを備える前記(1)または前記(2)の画像形成装置。
【0010】
(4)前記弾性機構は、バネ定数が調整可能なエアシリンダ機構を備える前記(1)~(3)のいずれかの画像形成装置。
【0011】
(5)前記画像形成装置で形成した画像を取得し、当該画像の画像ムラの周波数を算出する画像解析部を有し、前記制御部は更に、前記画像ムラの周波数から前記弾性機構の適正なバネ定数を算出し、前記弾性機構のバネ定数を調整する、前記(1)~(4)のいずれかの画像形成装置。
【0012】
(6)前記制御部は更に、前記弾性機構の共振周波数が、前記定着ローラーより生ずる定着駆動振動の周波数の1/2以下になるように、前記弾性機構のバネ定数を算出する前記(2)~(5)のいずれかの画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の画像形成装置によれば、転写画像のブレの軽減が容易であり、画質に優れた画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示すシステム図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置を模式的に示す構成図である。
図3A】比較例に係る弾性機構を示す概略図である。
図3B】本発明の実施形態に係る振動吸収部を示す概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る弾性機構の一例を示す概略図である。
図5】弾性機構の共振周波数と、定着駆動周波数との関係が振動伝達率に及ぼす影響を示したグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る弾性機構の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、下記の実施形態のみに限定されるものではない。また、各実施形態における構成要素は、一部又は全部を適宜組み合わせることができる。
【0016】
本発明の実施形態に係る画像形成装置について説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、いわゆるタンデム型カラー画像形成装置であり、記録媒体上にフルカラーの画像を形成する。本実施形態における記録媒体は紙である。なお、本発明は、本実施形態の画像形成装置に限らず、定着ローラーおよび転写ローラーを備える電子写真方式の画像形成装置に適用可能である。また、紙以外の記録媒体を用いてもよい。
【0017】
図1は、本実施形態の画像形成装置Xの全体構成を示すシステム図である。画像形成装置Xは、制御部1,記憶部400,データ取得部500,表示操作部600,画像形成部100,用紙搬送部200,画像解析部300を備える。制御部1は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、画像形成装置Xの動作を制御する。
【0018】
記憶部400は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性記憶媒体およびRAM(Random Access Memory)等を備える。記憶部400は、データ取得部500で取得したデータ等を保存し、制御部1がプログラムを実行する際の作業領域としても機能する。また、記憶部400は、定着ローラー19A,19B(図2で後述)から生じる振動の周波数(定着駆動周波数)を記憶している。定着ローラーが複数存在する場合には、定着ローラー毎に定着駆動周波数を記憶している。
【0019】
データ取得部500は、形成対象の画像のデータを取得する。本実施形態では、データ取得部500は原稿読取装置SC(図2で後述)を備えるが、データ取得部500の態様はこれに限られない。データ取得部500は、ネットワーク(非図示)を介してデータを受信しても、外部記憶装置(非図示)と接続してデータを取得しても、その他の方法で取得してもよい。
【0020】
表示操作部600は、タッチパネルディスプレイ等から構成され、操作画面を表示すると同時に、ユーザによる各種入力を受け付ける。なお、表示操作部600の代わりに表示部と操作部とを個別に設けてもよい。
【0021】
画像形成部100は、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、一次転写ローラー、転写ローラー(二次転写ローラー)16,17、定着ローラー19A,19Bを備え(図2で後述)、データ取得部500の取得したデータに基づいて、用紙に画像を形成する。
【0022】
用紙搬送部200は、用紙搬送ローラー20(図2で後述)、振動吸収部201を備え、テンションをかけながら用紙を搬送する搬送部である。振動吸収部201は、振動吸収ローラー211,弾性機構212(図3参照)を備え、転写ローラー16,17と定着ローラー19A,19Bとの間に設置されて、記録媒体に伝わる振動を吸収する。
【0023】
画像解析部300は、画像形成部100が用紙に形成した画像を光学的に読み取り、当該画像を解析して、当該画像のブレから定着ローラー19A,19Bの駆動振動(定着駆動振動)を算出する。画像解析部300の画像読み取り機構は特に限定されず、例えばデータ取得部500の原稿読取装置SCと同様の装置であってもよい。
【0024】
図2は、本実施形態に係る画像形成装置Xを模式的に示す構成図である。図2に示すように、画像形成装置Xは、主に、給紙装置210、巻取り装置220、用紙搬送ローラー20、画像解析部300,原稿読取装置SC、画像イエロー(Y)・マゼンタ(M)・シアン(C)・ブラック(K)の各画像を形成する画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、転写ローラー(二次転写ローラー)16,17、定着ローラー19A,19B、振動吸収部201を備える。
【0025】
給紙装置210は、画像形成装置Xの通紙方向の上流側に配置され、ロール状の連続紙(以降、用紙と称する)を画像形成装置Xに給紙する。巻取り装置220は、画像形成装置Xの通紙方向の下流側に配置され、画像形成装置Xによって画像の形成された用紙を巻き取る。図1でも解説した画像解析部300は、画像形成装置Xと巻取り装置220との間に設置され、画像形成装置Xによって形成された画像を解析する。
【0026】
複数の用紙搬送ローラー20は給紙装置210と巻取り装置220との間の搬送経路上で用紙を搬送する。個々の用紙搬送ローラー20は、互いに圧接された一対のローラーによって構成されており、駆動手段である電動モータ(非図示)を通じて少なくとも一方のローラーが回転駆動する。そして、用紙搬送ローラー20は、用紙を挟持して回転することにより、用紙を搬送する。これら電動モータ(非図示)や用紙搬送ローラー20は、連続紙を搬送する搬送部として機能する。
【0027】
なお、搬送手段は、一対のローラーで構成する以外にも、ベルト同士の組み合わせや、ベルトおよびローラーの組み合わせといったように、一対の回転部材からなる構成を広く採用することができる。また、画像形成装置Xは枚葉の用紙を格納した給紙トレイを備えて、ロール状の連続紙と枚葉の用紙とを併用するものであってもよいし、給紙装置210および巻取り装置220を備えずに給紙トレイを備えて枚葉の用紙に画像を形成するものであってもよい。
【0028】
原稿読取装置SCは、走査露光装置の光学系により原稿の画像を走査露光し、その反射光をラインイメージセンサにより読み取ることにより、画像信号を得る。この画像信号は、A/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理が施された後、画像データとして制御部1(図1参照)に入力される。
【0029】
イエロー(Y)の画像を形成する画像形成ユニット1Yは、感光体ドラム14Yおよびその周辺に配置された帯電部10Y、光書込部11Y、現像装置12Yおよびドラムクリーナ13Yで構成されている。同様に、画像形成ユニット1M,1C,1Kは、感光体ドラム14M,14C,14Kおよびその周辺に配置された帯電部10M,10C,10K、光書込部11M,11C,11K、現像装置12M,12C,12Kおよびドラムクリーナ13M,13C,13Kで構成されている。なお、図2では、説明の便宜上、感光体ドラム14Yと画像形成ユニット1Yとを別々に図示しているが、感光体ドラム14Yは画像形成ユニット1Yの一構成要素である。
【0030】
感光体ドラム14Y,14M,14C,14Kは、帯電部10Y,10M,10C,10Kによりその表面が一様に帯電させられる。光書込部11Y,11M,11C,11Kによる走査露光により、感光体ドラム14Y,14M,14C,14Kには潜像が形成される。さらに、現像装置12Y,12M,12C、12Kは、トナーで現像することによって感光体ドラム14Y,14M,14C,14K上の潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラム14Y,14M,14C,14K上には、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのいずれかに対応する所定色の画像(トナー画像)が形成される。
【0031】
感光体ドラム14Y,14M,14C,14K上に形成された画像は、一次転写ローラーにより、中間転写ベルト18上の所定位置へと逐次転写される。中間転写ベルト18は、無端状のベルトであり、転写ローラー16、ベルト従動ローラー15を含む複数のローラーに掛け渡されている。これらのローラーは、用紙搬送方向と交差(略直交)する用紙幅方向に沿って配置されており、ローラー軸方向と用紙幅方向とが互いに対応している。
【0032】
転写ローラー16は、中間転写ベルト18の内周面と圧接されており、中間転写ベルト18を介して転写ローラー17に対向配置されている。ベルト従動ローラー15は、中間転写ベルト18の内周面と圧接されて中間転写ベルト18を内方から支持するローラーである。ベルト従動ローラー15は、中間転写ベルト18の回転方向において、黒に対応する一次転写ローラーよりも上流に位置付けられている。
【0033】
中間転写ベルト18上に転写された各色よりなる画像は、用紙搬送ローラー20により所定のタイミングで搬送される用紙に対して、転写ローラー17によって転写される。この転写ローラー17は、ローラー状の回転部材であり、中間転写ベルト18の外周面に圧接されて、中間転写ベルト18に転写された画像を用紙に転写する。
【0034】
定着ローラー19A,19Bは、回転可能に構成された歯車であり、駆動手段である駆動モータ(図示せず)を通じて回転駆動することにより、用紙に転写された画像(転写画像)に圧力を加える。定着ローラー19Aは加熱部としてヒーター191を備えている。ヒーター191は転写画像に熱を加える。このように、定着ローラー19A,19B,ヒーター191は、転写画像に圧力と熱を加えることにより、用紙に画像を定着させる。図2には定着ローラー19A,19Bの一組しか図示していないが、歯数の異なる複数の定着ローラーの組が画像の定着を行っていてもよい。
【0035】
振動吸収部201は、搬送経路上において、転写ローラー16,17と定着ローラー19A,19Bとの間に設けられ、用紙に伝わる振動を吸収する。この振動吸収の機構を、図3A図3Bを用いて説明する。
【0036】
図3Aに、比較例の振動吸収部201Aを示す。振動吸収部201Aは、弾性部材を備えた振動吸収ローラー211と、弾性機構212Aとを備える。弾性機構212Aは、例えばバネである。定着ローラー19A,19Bの回転速度が転写ローラー16,17よりも速く、用紙にテンションがかかると、定着ローラー19A、19Bの振動(定着駆動振動)が用紙を介して転写ローラー16,17に伝達されやすくなる。そこで、振動吸収部201Aは、図3Aのように弾性機構212Aを備え、定着駆動振動を吸収している。
【0037】
しかしながら、定着駆動振動は一定ではなく、例えば印字線速によって変化する。また、定着ローラー19A,19Bが歯車状の場合は、歯車の一歯が用紙を圧着するごとに周期的に大きな振動が生じ、画像形成装置Xに歯数の異なる複数の定着ローラーが設けられているとき、定着駆動振動の周波数はどの定着ローラーから生じるかによって変化する。よって、共振周波数が一定の弾性機構は、定着駆動振動が変化したときに、定着駆動振動の周波数と共振周波数とが一致してしまい、振動を吸収できないばかりか逆に振動を増大させ、転写画像にブレを生じさせ、画質の劣化を招く恐れがある。
【0038】
そこで本実施形態では、図3Bのような振動吸収部201を設ける。振動吸収部201は、弾性部材を備えた振動吸収ローラー211と、弾性機構212とを備える。弾性機構212は、バネ定数を変更することにより共振周波数を制御することが可能な弾性機構であり、例えば図4に示すようなエアシリンダ機構が該当する。図4のようなエアシリンダ機構は、内部のエア圧を調整することにより、稼働部の弾性を調整することができる。振動吸収部201は、弾性機構212のバネ定数を変化させることで、定着駆動周波数と弾性機構の共振周波数とが一致してしまうことを抑制し、転写画像のブレを軽減して画質を向上させることができる。
【0039】
図5を用いて、弾性機構の共振周波数の調整について説明する。図5は、定着駆動周波数が20Hzであるときに、共振周波数の異なる弾性機構それぞれについて、振動伝達率(db)と弾性機構の周波数(Hz)との関係を示したグラフである。振動伝達率0dbのラインより振動伝達率が高ければ、振動伝達率が増加しており、低ければ、振動伝達率が減少している。
【0040】
一点鎖線は、弾性機構の共振周波数を定着駆動周波数の1/2である10Hzに設定したサンプルを示す。実線は、弾性機構の共振周波数を定着駆動周波数の1/√2である14.1Hzに設定したサンプルを示す。点線は、弾性機構の共振周波数を定着駆動周波数と一致する20Hzに設定したサンプルを示す。
【0041】
点線の示すとおり、弾性機構の共振周波数が定着駆動周波数と一致してしまったとき、振動伝達率は15db増加してしまった。実線の示す通り、弾性機構の共振周波数が定着駆動周波数の1/√2であったとき、振動伝達率は増減しなかった。一点鎖線の示す通り、弾性機構の共振周波数が定着駆動周波数の1/2であったとき、振動伝達率は10db減少した。
【0042】
以上のことから、弾性機構212のバネ定数は、弾性機構の共振周波数が定着駆動周波数の1/√2以下になるように調整し、1/2以下になるように調整することが好ましい。このように弾性機構の共振周波数を調整することで、定着ローラー19A,19Bの振動が転写ローラー16,17に伝達されることを有意に軽減することができる。このような調整は、定着ローラーと転写ローラーを有する画像形成装置全般において、画質向上の効果を奏するが、定着ローラーの振動の影響が大きくなりやすい連続紙への印刷において特に大きな効果を奏する。
【0043】
共振周波数を所定の値に設定する方法について説明する。共振周波数の一般式を式(1)に示す。Foが共振周波数(Hz)、Kがバネ定数(N/m)、Mが質量(kg)を示す。
【0044】
【数1】
【0045】
共振周波数とバネ定数は式(1)のような関係を備えるので、意図する弾性機構の共振周波数を実現するバネ定数は、当該共振周波数に基づいて、式(2)のように算出することができる。
【0046】
【数2】
【0047】
図6に、画像形成装置Xの画質を向上させるために弾性機構212を制御する際の流れを示す。ステップS101において、ユーザは表示操作部600を操作し、画像形成装置Xのモードを選択する。通常印刷モードが選択された場合(ステップS101:通常印刷モード)、制御部1はステップS102に移行する。
【0048】
ステップS102において、制御部1は、印刷速度、および、定着ローラー19A,19Bの歯車数に基づいて、記憶部400に記憶された定着駆動周波数の中から、現在の印刷における定着振動周波数を決定する。定着ローラーが複数ある場合は、最大の振動を生むと予想される定着ローラーの歯車数に基づいて定着振動周波数を決定する。このように処理することで、通常印刷モードにおいても大きな振動が転写ローラー16,17に伝達されることを抑制し、画質を向上させることができる。
【0049】
ステップS103において、制御部1は、決定された定着駆動周波数に基づいて、弾性機構212の共振周波数が定着駆動周波数の1/√2以下になるように、バネ定数を算出して、このバネ定数を実現するように弾性機構212のエア圧を調整する。ステップS104において制御部1は印刷を実行し、処理を終了する。
【0050】
ステップS101において、ユーザは、印刷画質の向上を望む場合等は評価フィードバックモードを選択する(ステップS101:評価フィードバック)。評価フィードバックモードが選択された場合、制御部1はステップS105に移行する。ステップ105において、制御部1は印刷を実行する。ステップS106において、画像解析部300は、印刷された画像を取得する。
【0051】
ステップS107において、画像解析部300は、取得した画像を解析して画像ムラを検出する。ステップS108において、検出された画像ムラに現れたブレの周波数(画像ムラ周波数)を算出する。
【0052】
ステップS109において、画像解析部300は、画像ムラ周波数が記憶部400の定着駆動周波数のいずれかと一致するか否かを確認する。一致した場合は(ステップS109:Yes)、画像解析部300は一致した画像ムラ周波数が定着駆動周波数であると判定し、ステップS110に移行する。ステップS110において、画像ムラ周波数を定着振動周波数に設定し、ステップS103に移行する。このように処理することで、振動の原因になっている定着ローラーの定着駆動周波数に合わせて弾性機構のバネ定数を調整できるようになり、より確実に画質を向上させることができる。
【0053】
画像ムラ周波数が記憶部400に記憶された定着駆動周波数のいずれとも一致しなかった場合は(ステップS109:No)、画像ムラは定着駆動振動に由来せず、ドラム等の別の装置の振動に由来すると考えられる。そこで制御部1はステップS102に移行し、以降、通常印刷モードと同様に印刷を行う。
【0054】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
画像形成装置 X
制御部 1
記憶部 400
データ取得部 500
表示操作部 600
画像形成部 100
転写ローラー(二次転写ローラー) 16,17
定着ローラー 19A,19B
用紙搬送部(搬送部) 200
搬送ローラー 20
振動吸収部 201
振動吸収ローラー 211
弾性機構 212
画像解析部 300
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6