(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】分散装置及び分散処理システム並びに分散処理方法
(51)【国際特許分類】
B01F 23/50 20220101AFI20240326BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20240326BHJP
B01F 25/50 20220101ALI20240326BHJP
B01F 27/808 20220101ALI20240326BHJP
B01F 33/82 20220101ALI20240326BHJP
B01F 35/00 20220101ALI20240326BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20240326BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20240326BHJP
【FI】
B01F23/50
B01F23/40
B01F25/50
B01F27/808
B01F33/82
B01F35/00
B01F35/71
B01F35/90
(21)【出願番号】P 2020149514
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羽片 豊
(72)【発明者】
【氏名】浅野 晴光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】小田木 克明
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020276(JP,A)
【文献】特表2019-505374(JP,A)
【文献】特開2012-035186(JP,A)
【文献】国際公開第2020/136781(WO,A1)
【文献】特開2014-195778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00 - 25/90
B01F 29/00 - 33/87
B01F 35/00 - 35/95
B01F 27/00 - 27/96
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー状又は液体状の混合物を供給して、これを分散させ、分散処理後の前記混合物を流動させて排出する剪断式の分散装置であって、
上下方向の軸線を中心として回転自在に支持された回転軸と
、
前記回転軸に固定されて該回転軸により回転駆動されるローターと、
前記回転軸を貫通させる孔を有し、前記ローターとの間に前記混合物を分散させる間隙が形成されるように、前記ローターの上面に対向して配置されたステータと、
該ローターの外周面との間に、分散処理後の前記混合物を下方へ流動させる排出空間を形成し、該外周面を囲むように配置された環状壁と、
を備え
、
前記ローターの外周面は、前記ローターの回転により前記混合物が下方に向かう推進力を受けるように設けられた溝を有している、分散装置。
【請求項2】
前記溝は、前記外周面を周回する螺旋溝である、請求項
1記載の分散装置。
【請求項3】
前記ローターの下方に前記環状壁と対向するように設けられ、前記排出空間を下方へ延長するガイド部材と、を備える請求項1
又は2記載の分散装置。
【請求項4】
一部を前記環状壁で構成され、分散処理後の前記混合物を受ける容器と、を備え、
前記排出空間の下方に設けられ、前記分散処理後の前記混合物を送り出す排出管と、該排出管内の前記混合物を負圧吸引して前記容器の外部へ送り出す吸引機構とを備えている、請求項1から
3のいずれか1項記載の分散装置。
【請求項5】
前記環状壁の外周面側には、前記排出空間内の前記混合物を冷却する冷却ジャケットが設けられている、請求項1から
4のいずれか1項記載の分散装置。
【請求項6】
前記ステータには、前記ローター上面に開口端を臨ませて混合物供給口が設けられ、前記間隙内における前記開口端と前記回転軸との間には、前記ローターと前記ステータとのいずれか一方に基部が固定され、他方に先端部が弾性的に当接するシール部材が設けられている、請求項1から
5のいずれか1項記載の分散装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項記載の分散装置からなる第1分散装置と、
混合物内の固体粒子をナノレベルのサイズに微細化する第2分散装置と、
分散処理前又は中間分散処理された前記混合物を一時貯留する循環タンクと、
分散処理後の前記混合物を貯留する貯蔵タンクと、
前記混合物を前記循環タンクから前記第1分散装置へ移送し、更に第1分散装置から前記循環タンクへ移送する第1循環管路と、
前記混合物を前記循環タンクから前記第2分散装置へ移送し、更に第2分散装置から前記循環タンクへ移送する第2循環管路と、
前記第1循環管路及び前記第2循環管路と前記貯蔵タンクとの間に設けられた出力管路と、
前記第1循環管路及び前記第2循環管路内の前記混合物を圧送するポンプと、
前記第1循環管路、前記第2循環管路、及び前記出力管路の前記混合物の流動を制御するシステム制御装置と、
を備えた分散処理システム。
【請求項8】
前記第2分散装置は、超音波分散機、ビーズミル、ジェットミル、及び高圧ホモジナイザーのうちのいずれかの分散装置である、
請求項
7記載の分散処理システム。
【請求項9】
前記循環タンクと並列に設けられ、前記システム制御装置によって前記第1循環管路、又は前記第2循環管路との前記混合物の循環を制御される供給タンクと、
を備える請求項
7又は
8記載の分散処理システム。
【請求項10】
スラリー状又は液体状の混合物を分散する分散処理方法であって、
前記混合物を、
請求項1から6のいずれか1項記載の分散装置からなる第1分散装置のローターと、該ローターに対向して配置されるステータとの間に供給し、前記混合物を遠心力により前記ローターと前記ステータとの間を通過させることによって、前記ローターとステータとの間で剪断式に分散させること、
この第1分散装置で分散させることを1回行う、又は複数回繰り返すこと、
前記混合物を第2分散装置に供給し、第2分散装置に供給された前記混合物内の固体粒子を該第2分散装置でナノレベルのサイズに微細化すること、
この第2分散装置で微細化することを1回行う、又は複数回繰り返すこと、
第1の分散装置での分散処理と第2の分散装置での分散処理を、組み合わせて行うこと、
を含む分散処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー状又は液体状の混合物内の物質を分散させる分散装置及び分散処理システム並びに分散処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速回転するローターと回転しないステータとの間の狭い間隙に、複数の液体又はスラリーを通過させ、高速回転により発生する高い剪断力で複数の液体又はスラリー中の粉末状の物質を連続的に分散する装置が知られている。ここで、「分散」とは、スラリー中の粉末状の物質を微細化して均一に存在させること、若しくはスラリー中の粉末状の物質を均一に存在させること、又は複数の液体を均一に混合することを意味する。
【0003】
下記特許文献1には、上記構成の装置が具体的に開示されている。ここに開示された装置は、ローターの外周面を囲むように容器の側壁部が設けられており、ローターとステータとの間の間隙で分散化された混合物は、前記間隙から前記外周面と前記側壁部との間に形成された排出空間を通って下方へ流動落下するように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の装置では、分散処理された混合物がローターとステータとの間の間隙から容器の側壁部へ向けて放出されるが、この混合物の粘度が高い場合には、該混合物が下方へ流動落下することなく、側壁部内面に付着してその場に留まることがあり、分散後の混合物を所定の貯留タンク等にスムーズに移送できないという問題があった。また、特に混合物の流動性が低い場合は、処理後の混合物が排出空間で留まるため、ローターとステータ間に供給される混合物がローターの回転軸側に逆流し、
ローターの軸受を損傷させてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、分散処理後の混合物をスムーズに排出させ、混合物の逆流等の生じない分散装置及び分散処理システム並びに分散処理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明は、スラリー状又は液体状の混合物を供給して、これを分散させ、分散処理後の前記混合物を流動させて排出する剪断式の分散装置であって、上下方向の軸線を中心として回転自在に支持された回転軸と、固定されたステータと、該ステータの下面に対向するように配置され、前記回転軸に固定されて該回転軸により回転駆動されるローターと、該ローターの外周面との間に、分散処理後の前記混合物を下方へ流動させる排出空間を形成し、該外周面を囲むように配置された環状壁と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ローターの外周面を囲むように環状壁が配置されているので、ローターの回転により混合物に加わる遠心力と排出空間の重力とにより、混合物には、ローターの中心から外側の排出空間に向けて連続的に流動する力が働く。従って、分散処理された混合物を滞留することなく流動させることができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記ローターの外周面には、溝が設けられている。
この一態様によれば、ローターの外周面に混合物の流動を促進する溝が設けられているので、ローターとステータとの間隙から放出される混合物が溝に案内されて排出空間内をスムーズに移動する。この結果、間隙内に供給される混合物が回転軸方向へ逆流することがない。
【0010】
本発明の一態様においては、前記溝は、前記外周面を周回する螺旋溝である。
この一態様によれば、混合物が螺旋溝に案内されて排出空間内をスムーズに移動する。
【0011】
本発明の一態様においては、前記ローターの下方に前記環状壁と対向するように設けられ、前記排出空間を下方へ延長するガイド部材と、を備えている。
この一態様によれば、排出空間を下方へ延長するガイド部材を備えているので、分散処理後の混合物を確実に下方へ導くことができる。
【0012】
本発明の一態様においては、一部を前記環状壁で構成され、分散処理後の前記混合物を受ける容器と、を備え、前記排出空間の下方に設けられ、前記分散処理後の前記混合物を送り出す排出管と、該排出管内の前記混合物を負圧吸引して前記容器の外部へ送り出す吸引機構とを備えている。
この一態様によれば、排出空間から排出管内に導入された混合物が、吸引機構により次のステージへ送り出される。
【0013】
本発明の一態様においては、前記環状壁の外周面側には、前記排出空間内の前記混合物を冷却する冷却ジャケットが設けられている。
この一態様によれば、排出空間内を移動する混合物は、環状壁を介して冷却ジャケットにより冷却される。
【0014】
本発明の一態様においては、前記ステータには、前記ローター上面に開口端を臨ませて混合物供給口が設けられ、前記間隙内における前記開口端と前記回転軸との間には、前記ローターと前記ステータとのいずれか一方に基部が固定され、他方に先端部が弾性的に当接するシール部材が設けられている。
この一態様によれば、間隙内で混合物が回転軸方向へ逆流しようとしても、シール部材が物理的に逆流を阻止する。
【0015】
本発明は、上述の分散装置からなる第1分散装置を備えた分散処理システムであって、前記第1分散装置と、混合物内の固体粒子をナノレベルのサイズに微細化する第2分散装置と、分散処理前又は中間分散処理された前記混合物を一時貯留する循環タンクと、分散処理後の前記混合物を貯留する貯蔵タンクと、前記混合物を前記循環タンクから前記第1分散装置へ移送し、更に第1分散装置から前記循環タンクへ移送する第1循環管路と、前記混合物を前記循環タンクから前記第2分散装置へ移送し、更に第2分散装置から前記循環タンクへ移送する第2循環管路と、前記第1循環管路及び前記第2循環管路と前記貯蔵タンクとの間に設けられた出力管路と、前記第1循環管路及び前記第2循環管路内の前記混合物を圧送するポンプと、前記第1循環管路、前記第2循環管路、及び前記出力管路の前記混合物の流動を制御するシステム制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、混合物を第1分散装置と循環タンクとの間で循環させる第1循環管路と、第2分散装置と循環タンクとの間で循環させる第2循環管路とを備えているので混合物を効率よく分散処理することができる。
【0017】
本発明の一態様においては、前記第2分散装置は、超音波分散機、ビーズミル、ジェットミル、及び高圧ホモジナイザーのうちのいずれかの分散装置である。
この一態様によれば、第2分散装置として適したものを選択できる。
【0018】
本発明の一態様においては、前記循環タンクと並列に設けられ、前記システム制御装置によって前記第1循環管路、又は前記第2循環管路との前記混合物の循環を制御される供給タンクと、を備える。
この一態様によれば、前記循環タンクと並列に、前記第1循環管路、又は前記第2循環管路との前記混合物の循環を行う供給タンクを備えているので、混合物を逐次供給して連続的に分散処理を行うことができる。
【0019】
本発明は、スラリー状又は液体状の混合物を分散する分散処理方法であって、前記混合物を、第1分散装置のローターと、該ローターに対向して配置されるステータとの間に供給し、前記混合物を遠心力により前記ローターと前記ステータとの間を通過させることによって、前記ローターとステータとの間で剪断式に分散させること、この第1分散装置で分散させることを1回行う、又は複数回繰り返すこと、前記混合物を第2分散装置に供給し、第2分散装置に供給された前記混合物内の固体粒子を該第2分散装置でナノレベルのサイズに微細化すること、この第2分散装置で微細化することを1回行う、又は複数回繰り返すこと、第1の分散装置での分散処理と第2の分散装置での分散処理を、組み合わせて行うこと、を含む。
【0020】
本発明によれば、混合物を第1分散装置と第2分散装置とで組み合わせて分散処理を行うので混合物を効率よく分散処理することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、分散処理後の混合物をスムーズに排出させることができ、混合物の逆流等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態として示した分散装置の要部縦断面図である。
【
図2】本発明による分散装置のシール部材の拡大断面図である。
【
図3】本発明の別の実施形態として示した分散装置の要部縦断面図である。
【
図4】本発明による分散装置のローターの一例を示す側面図である。
【
図5】本発明による分散装置のローターの別の例を示す側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態として示した分散処理システムの概略構成図である。
【
図7】本発明の変形例として示した分散処理システムの概略構成図である。
【
図8】本発明による分散処理システムで実験を行った際のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である分散装置の要部を示す図である。
図に示す分散装置1は、回転駆動されるローター2と、該ローター2の上面に対向して配置されるステータ3とを備えており、ローター2とステータ3との間の間隙4にスラリー状又は液体状の混合物5を供給し、該混合物5を遠心力によりローター2の外周方向へ通過させることによって分散させる剪断式の分散装置である。
【0024】
図において符号6は、分散後の混合物5を受ける容器である。容器6は、容器本体7と、容器本体7の上部外方に張り出すように設けられた張り出し壁部8とを備えている。容器6の上方には、カバーユニット9が配設されている。カバーユニット9は、軸受保持部材10とステータ保持部材11とを備えている。軸受保持部材10は、筒状に形成されたものであって、その下部に外方に張り出す環状凸部12を有し、その中心孔13内には軸受14が固定されている。
軸受14は、下端に外方へ張り出すフランジ部14aを有し、フランジ部14aがボルト15により軸受保持部10に固定されている。軸受14には、ローター2を回転駆動するための回転軸16が、上下方向の軸線を中心として回転自在に支承されている。回転軸16は、図示しないモータ及び減速機構によって回転駆動される。
【0025】
ステータ保持部材11は、その中心部に回転軸配置孔21を有するとともに回転軸配置孔21の上部に係合凹所22を有し、その下端部外周に外方へ突出する環状凸部23を有する。また、このステータ保持部材11には、混合物5を間隙4に供給するための供給通路24が形成されている。このステータ保持部材11には、軸受保持部材10が固定されている。すなわち、軸受保持部材10の下端部が係合凹所22内に嵌入され、軸受保持部材10の環状凸部12がボルト25によりステータ保持部材11に固定されている。
この場合、軸受保持部材10の下端面と係合凹所22の底面との間にはエアー導入空間26が形成されている。また、ステータ保持部材11には、供給通路24に連通するように混合物供給管27が固定されている。混合物供給管27には、図示しない混合部供給源から混合物5が供給される。
【0026】
ステータ保持部材11の下面側にはステータ3が配置されている。ステータ3は、円盤状に形成されたものであって、その中心部に回転軸挿通孔31を有し、回転軸挿通孔31から一定寸法半径方向外方へ離間した位置に上下方向に貫通する混合物供給口32を有し、さらにステータ3の下面に回転軸挿通孔31を囲む環状溝33を有する。
混合物供給口32の開口端32aは、間隙4及びローター2の上面2aに臨んで位置している。環状溝33は、開口端32aと回転軸挿通孔31との間に位置している。また、混合物供給口32の内面には第1の凹所34が形成され、回転軸挿通孔31の内面には第2の凹所35が形成されている。
【0027】
このステータ3は、回転軸挿通孔31内に回転軸16を挿通した状態で、かつ、その上面をステータ保持部材11の下面に当接させた状態で該ステータ保持部材11に保持されている。この場合、ステータ3は、容器6の張り出し壁部8上に配置された第1の拘束部材36と、該拘束部材36をステータ保持部材11の環状凸部23に固定するボルト37と、第1の拘束部材36と張り出し壁部8とを拘束する第2の拘束部材38とによってステータ保持部材11に保持される。
上記のようにステータ保持部材11に保持されたステータ3は、回転軸16の周りの定位置に固定された状態となっている。また、ステータ3の混合物供給口32は、ステータ保持部材11の供給通路24と連通するように位置している。
【0028】
上記の構成において、エアー導入空間26には、図示しないエアー供給源から加圧されたエアーが供給されるようになっている。エアー導入空間26に導入されたエアーは、回転軸16の外周面と回転軸配置孔21の内面との間、及び回転軸16の外周面と回転軸挿通孔31の内面との間に形成されている微小な空間39を通って、回転軸16側からローター2とステータ3との間の間隙4に導かれる。このように回転軸16側から間隙4内へ加圧されたエアーを供給する構成はエアパージシール機構40を構成している。
また、混合物供給管27には、図示しない混合物供給源から混合物5が供給されるようになっている。混合物供給管27に供給された混合物5は、供給通路24を通って混合物供給口32に到り、混合物供給口32からローター2とステータ3との間の間隙4内に供給される。
【0029】
ステータ3の下面に設けられた環状溝33内には、ローター2との間の間隙4をシールするシール部材41が設けられている。シール部材41は、エラストマー等の弾性材料から形成されたものであって、環状溝33内に固定されるように環状に形成されている。シール部材41の環状に延在する一部の形状が
図2に示されている。
図2に示すようにシール部材41は、環状溝33内に固定される断面略矩形の基部42と、該基部42から拡径しつつ斜め下方に延出するリップ43とを備えている。リップ43は、適度に弾性変形できるように薄厚であり、基部42から先端部に行くに従い厚みが小となるように形成され、先端部がローター2の上面2aに弾性的に当接する。
シール部材41が間隙4内に設けられている位置は、環状溝33の位置からして、混合物供給口32の開口端32aと回転軸16との間である。かくしてシール部材41は、間隙4内をローター2の半径方向外方と半径方向内方とに仕切る。
【0030】
ステータ3の第1の凹所34内には第1の圧力センサー45が設けられており、第2の凹所35内には第2の圧力センサー46が設けられている。
第1の圧力センサー45は、シール部材41を基準として、ローター2の半径方向外方側に供給される間隙4内の混合物5の供給圧力P1を検出するものである。第2の圧力センサー46は、シール部材41を基準として、ローター2の半径方向内方側に供給される間隙4内のエアーの圧力を検出するものである。これら第1、第2の圧力センサー45,46の出力は制御装置48に送られるようになっている。
制御装置48は、混合物5の供給量の制御、その他装置各部の制御を行うほか、第1、第2の圧力センサー45,46の出力に基づいて、間隙4内に供給されるエアーの圧力を制御する。
【0031】
ローター2は、円盤状に形成されたものであって、その中心部に貫通孔51を有し、貫通孔51の上部には係合凹所52が形成されている。係合凹所52の底面には、複数の係合穴53が形成されている。
また、ローター2の外周面100には、
図4(又は
図5)に示すように溝101(102)が設けられている。溝101(102)は、詳細は後述するが、分散処理後の混合物の流動を促進するために設けられたものである。
図4、
図5は、溝の形態例を示す図である。
図4に示す溝101は、ローター2の外周面100を周回するように設けられた螺旋溝である。
図5に示す溝102は、外周面100に、ローター2の中心軸線に対して傾斜する溝102aを複数等間隔環状配置して設けたものである。溝101、溝102は共に、ローター2の回転により混合物5が下方に向かう推進力を受けるように設けられる。
【0032】
また、ローター2の底面には、その外周部に環状の溝54が形成されている。
このローター2は、係合凹所52内に回転軸16の下端部を嵌入し、その上面2aをステータ3の下面に対向させて回転軸16に固定されている。固定は、係合穴53と回転軸16の下面に形成された係合穴55との間に係合ピン56を挿入し、ローター2の下面側から貫通孔51内にボルト57を挿入し、このボルト57を回転軸16の下面に形成された雌ねじ穴58にねじ込んで締め付けることによりなされている。
上記の構成において、ローター2、ステータ3間の間隙の寸法は、図示しない調整機構により調整できるようなっており、分散後の混合物に含まれる粒子の径に応じて調整できるようになっている。
【0033】
容器6は、ローター2の外周面を囲むように設けられた環状壁61と、環状壁61の下面を閉塞する底壁部62とを備えている。ローター2の外周面と環状壁61との間は、分散処理後の混合物5が流動落下する排出空間103とされており、流動落下に適切な間隔が開けられている。この場合、排出空間103の環状壁61とローター2の外周面との間の寸法は、混合物5が各所に付着するのを防止してスムーズに流動するように、1mmから5mm程度とされている。
環状壁61の下端部と底壁部62の外周縁との交差部には上方から落下する分散後の混合物5を排出する排出機構63が設けられている。排出機構63は、混合物5を排出する排出管64と、排出管64内の混合物5を負圧吸引する吸引機構65とを備えている。
図1には1つの排出管64と吸引機構65の一部のみが示されているが、分散装置1はこれらの構成体が底壁部62の外周部に複数設けられていて、混合物5が複数の上記構成体から容器6の外部へ排出されるように構成されていても良い。
【0034】
容器6の内部には、ローター2の下方に環状壁61と対向するように設けられ、排出空間103を下方へ延長するガイド部材66が設けられている。このガイド部材66は、間隙4から流動落下する混合物5を排出管64に導くように設けられている。ガイド部材66は、環状に形成された部材であって、環状壁61に対する間隔がローター2と同じようにとれるよう形成されたものである。
ガイド部材66の上面には環状凸部67が形成されており、この環状凸部67はローター2の下面に形成された溝54内に位置している。この構成により、間隙4から流動落下する混合物5は、容器6の中央部側に流動することなく、スムーズに排出管64に導かれる。
【0035】
また、
図1において符号68は冷却装置である。冷却装置68は、冷却装置本体105と、環状壁61の外周面側に、該環状壁61を囲むように設けれた冷却ジャケット106を備えておいる。この冷却装置68は、冷却装置本体105と冷却ジャケット106との間で、冷却装置本体105で冷却した冷却水が循環し、環状壁61を介して排出空間103を流動落下する混合物5を冷却する。
なお、ステータ3の上面に形成された溝107にも冷却水が供給されるようになっており、ローター2の外周部側の間隙4内を移動する混合物も冷却されるようになっている。
【0036】
次に、上記のように構成された分散装置1について、混合物5を分散処理する場合の動作について説明する。
分散装置1の起動に際しては、予めローター2とステータ3との間の間隙4の寸法、ローター2の回転数、エアパージシール機構40により供給するエアー圧力の大きさ、混合物4の時間当たりの供給量等を設定しておく。
そして、制御装置48を操作して分散装置1を起動すると、図示しないモータが回転して回転軸16が回転し、ローター2が回転駆動される。ローター2が回転すると、ステータ3に設けたシール部材41のリップ43がローター2の上面2aに当接しつつ同上面を相対的に摺動する。したがって、シール部材41は、ローター2が回転した状態において、間隙4を、このシール部材41を基準としてローター2の半径方向外方と半径方向内方、すなわち回転軸16方向とに仕切ることになる。
【0037】
一方、エアパージシール機構40が起動してエアー導入空間26内に加圧されたエアーが導入され、このエアーが回転軸16の外周面と、軸受保持部材10の回転軸配置孔21の内面及びステータ3の回転軸挿通孔31の内面との間の空間39を通り、回転軸16側からローター2とステータ3との間の間隙4に供給される。
また、制御装置48は、図示しない混合物供給源から混合物5を混合物供給管27に供給する。混合物5は、供給通路24を通って混合物供給口32に供給され、この混合物供給口32からローター2とステータ3との間の間隙4に供給される。
【0038】
間隙4に供給された混合物5は、ローター2の回転により遠心力によってローター2の半径方向外方に移動し、この移動の際狭い間隙4内で分散される。分散処理された混合物5は、間隙4の外周端から放出されて容器6の環状壁61に衝突し、その後ローター2の外周面100と環状壁61との間の排出空間103を通り、更にガイド部材66と環状壁61との間の排出空間103を通って排出管64内に導入される。
上記のように混合物5が間隙4から排出空間103内に移動した際には、混合物5の容器6の底壁部62に向かう移動がローター2の外周面100に設けられた溝101(
図4)又は102(
図5)によって促進される。したがって、混合物5は排出空間103内に留まることがなく、スムーズに下方へ流動する。この場合、溝の形態としては、例として
図4、
図5に示す形態を挙げたが、この形態は混合物5の粘度等の性状によって選択される。
また、間隙4内を移動する混合物5は、摩擦熱によって高温となるが、間隙4内においてはステータ3の溝107内を通る冷却水により冷却される。さらに、排出空間103内を流動する混合物5は、冷却ジャケット106内を流通する冷却水によって冷却される。そして、排出管64内に導入された混合物5は、吸引機構65により容器6の外部へ送りだされ、次のステージへ送られる。
【0039】
また、混合物5は、間隙4の外周端から放出される際、あるいは容器6の環状壁61に衝突した際に、細かなミスト状になるものも存在する。排出空間103が広い場合は、この空間を浮遊している間にミストが混合物5が流れている壁面以外に付着し、液分が乾燥して固形分のみが残り、それが成長して異物となることがあるが、排出空間103が狭いことにより、容器6の環状壁61に沿って流れている液状の膜と接触し、液状の膜に取り込まれて素早く元のスラリーに戻るため、この問題が防止される。
【0040】
上記の動作において、間隙4内に供給される混合物5の供給圧力P1によっては、混合物供給口32から間隙4内に供給された混合物5がローター2の半径方向内方、すなわち回転軸16方向へ移動することがある。この分散装置1においては、間隙4内にシール部材41が設けられているので、間隙4内の混合物5が回転軸16方向に逆流しても、混合物5はシール部材41に移動を阻止されて回転軸16側に到ることはない。
したがって、混合物5が回転軸16側に逆流し、空間39を経て軸受14に侵入することがなく、常に軸受14の機能を確保してローター2の正常回転を維持することができる。
【0041】
一方、この分散装置1においては、装置の運転時に回転軸16側からエアーが間隙4内に供給されている。この際間隙4内のエアーは、シール部材41で遮断されるので、混合物5が供給されている領域に侵入することがない。
したがって、エアーが混合物5に触れて混合物5が乾燥することがない。また、エアーが混合物5に混入するのを防止することができる。
【0042】
ここで、間隙4内の混合物5の供給圧力P1とエアー圧力P2とに一定の値以上の差が生じると、シール部材41のリップ43が変形してシール部材41の両側間に隙間が生じ、混合物5の逆流等が生じる惧れがある。しかし、この分散装置1においては、制御装置48が第1、第2の圧力センサー45、46の出力に基づいて圧力P1、P2が均衡するように制御する。したがって、リップ43の変形が防止され上記逆流等の問題が生じない。
また、間隙4がシール部材41によって物理的に遮断されているので、混合物5の乾燥、混合物5へのエアーの混入を考慮することなくエアーの圧力を従来より高めることができ、したがってシール効果が高い状態で混合物5の供給量を増やすことが可能となり、装置の生産性を高めることができる。
【0043】
上述したように、この分散装置1においては、ローター2の外周面100を囲むように環状壁61が配置され、排出空間103が形成されている。混合物5には、ローター2の回転による遠心力と、排出空間103の重力とが加わっており、混合物5には、ローター2の中心から外側の排出空間103に向けて連続的に流動する力が働く。従って、分散処理された混合物5を滞留することなく流動させることができる。すなわち、混合物5の排出は重力とロータ2の回転による遠心力により促進されている。
【0044】
また、混合物5がローター2とステータ3との間隙4からローター2の外周面100側の排出空間103に移動した際に、ローター2の外周面100に設けた溝101(又は102)によって、混合物5の容器6の底壁部62に向かう流動が促進されるので、排出空間103内で留まることがなく、混合物5の流動がスムーズになされる。したがって、混合物が排出空間103内で詰まることがないので、混合物供給口32から間隙4内に供給された混合物5の分散がスムーズに行われ、混合物5が回転軸16側へ逆流することがない。
【0045】
また、仮に混合物供給口32から供給した混合物5が間隙4内で逆流し、回転軸16側へ向かおうとしても、シール部材41によって回転軸16側への移動が阻止され、回転軸16側へ移動することがない。
したがって、この分散装置1においては、混合物5の間隙4内での逆流を確実に防止することができる。
また、排出空間103から排出管64内に導入した混合物5を吸引機構65で吸引するようにしたから、排出管64内に導入した混合物5を次のステージへスムーズに送ることができる。
また、間隙4内及び排出空間103の分散中及び分散後の混合物5を冷却するようにしたので、混合物5の高温による劣化を防ぐことができる。
【0046】
上記の実施の形態では、シール部材として、弾性材料から形成され、基部41とリップ43とを備えたものを用いているが、このシール部材は他の材料、構成からなるものでもよい。
例えば、各種のグランドパッキンの構成を採用することができ、繊維糸を編み込んだブレードパッキンとすることもできる。
【0047】
図3は、本発明の別の実施形態を示す図である。この実施形態が上記の実施形態と異なる点は、シール部材41を上記の実施形態のようにステータ3側に設けるのではなく、ローター2側に設けたことであり、その他の構成は上記の実施形態と同一である。
すなわち、この実施形態では、ローター2の上面2aに、貫通孔51の軸線を中心とする環状溝33Aが形成されており、この環状溝33Aにはシール部材41Aの基部42Aが固定されている。シール部材41Aは、上記の実施形態のシール部材41と同一構成であり、そのリップ43Aの先端部はステータ3の下面に当接している。この実施形態においては、装置を起動させてローター2が回転すると、シール部材41Aがステータ3の下面を摺動する。
この実施形態においても、シール部材41Aが間隙4内を仕切るので、上記の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0048】
次に、本発明による分散処理システムについて説明する。
図6は、本発明の一実施形態として示した分散処理システムの概略構成図である。
図6に示す分散処理システム200は、前述した分散装置1を第1分散装置1として構成要素とする。
すなわち、分散処理システム200は、第1分散装置1と、混合物5内の固体粒子をナノレベルのサイズに微細化する第2分散装置201と、分散処理前又は中間分散処理された前記混合物5を一時貯留する循環タンク203と、分散処理後の前記混合物5を貯留する貯蔵タンク205と、前記混合物を前記循環タンク203から前記第1分散装置1へ移送し、更に第1分散装置1から前記循環タンク203へ移送する第1循環管路uと、前記混合物5を前記循環タンク203から前記第2分散装置201へ移送し、更に第2分散装置201から前記循環タンク203へ移送する第2循環管路vと、前記第1循環管路u及び前記第2循環管路vと前記貯蔵タンク205との間に設けられた出力管路wと、前記循環タンク203と並列に設けられる供給タンク221と、前記第1循環管路u及び前記第2循環管路v内の前記混合物5を圧送するポンプ207、209と、前記第1循環管路u、前記第2循環管路v、及び前記出力管路wの前記混合物5の流動を制御するシステム制御装置210と、を備えている。
【0049】
ここで、中間分散処理された混合物とは、少なくとも1回は、第1分散処理装置1又は第2分散処理装置201によって分散処理された混合物5のことであり、後述する複数回の分散処理における中途の処理状態にある混合物5のことである。
【0050】
前記第1循環管路uにおいて、循環タンク203から第1分散装置1へ至る管路の間には、弁211、ポンプ207、弁213がこの順に介装されている。第1分散装置1から循環タンク203に至る管路の間には、弁215、ポンプ209、弁217、弁219がこの順に介装されている。前記第2循環管路vにおいて、循環タンク203から第2分散装置201へ至る管路の間には、弁211、ポンプ207、弁213がこの順に介装されている。第2分散装置201から循環タンク203に至る管路の間には、弁215、ポンプ209、弁217、弁219がこの順に設けられている。すなわち、第1循環管路uと第2循環管路vは、システム制御装置210の制御によて、弁213と弁215の流動経路を切り替えることによって実装されている。
【0051】
前記第1循環管路u及び前記第2循環管路vから前記貯蔵タンク205に至る管路の間には、弁217が設けられており、前記第1循環管路u及び前記第2循環管路vと出力管路wの間の流動経路を、システム循環装置210に制御される弁217によって切り替えるように実装されている。
【0052】
供給タンク221は、前記第1循環管路u及び前記第2循環管路vに対して、循環タンク203と並列に設けられている。循環タンク203、又は供給タンク221への混合物5の流入は、弁219の流動経路を切り替えることによって行われる。循環タンク203、又は供給タンク221からの混合物5の流出は、弁211の流動経路を切り替えることによって行われる。弁211、219は、システム制御装置210によってその流動経路を切り替えるように制御されている。
【0053】
前記第2分散装置は、超音波分散機、ビーズミル、ジェットミル、及び高圧ホモジナイザーのうちのいずれかの分散装置を選択できる。これらの分散装置によれば、混合物5内の個体粒子のサイズを1nmから1,000nm程度まで微細化することが可能である。本実施形態においては、第2分散装置として超音波分散機を採用する。また、システム制御装置は、上述したように弁211、213、215、217、219の流動経路の切り替えに加えて、第1分散装置、第2分散装置、ポンプ207、209の駆動を制御し、分散処理システム200において混合物5の分散処理を制御する。
【0054】
次に、このように構成された分散処理システム200の動作について説明する。
(1)混合物の供給
分散処理システム200が稼働すると、まず供給タンク221から1バッチ分の処理に供される混合物5が弁211を経て第1循環管路uに供給される。
【0055】
(2)第1循環管路uにおける処理
供給タンク221から第1循環管路uに供給された混合物5は、第1分散装置1によって分散処理が行われ、第1循環管路uの経路を経て循環タンク203に貯留される。ここで、第1分散装置において複数回の分散処理を行う場合は、混合物5は、循環タンク203から弁211を経て第1循環管路uに流入され、再び第1分散装置1によって分散処理される。複数回の処理は、このように、混合物5を、循環タンク203と第1循環管路uとの間で還流させることによって行われる。
【0056】
(3)第2循環管路vにおける処理
第1循環管路における分散処理が終了すると、システム制御装置210は、弁213、弁215の流動経路を切り替えて第2循環管路vを設定する。混合物5は、今度は循環タンク203から、第2循環管路vに供給され、第2分散装置201によって分散処理が行われる。第2分散装置201による分散処理の済んだ混合物5は、第2循環管路vの経路を経て循環タンク203に貯留される。ここで、第2分散装置により複数回の分散処理を行う場合は、混合物5は、循環タンク203から弁211を経て第2循環管路vに流入され、再び第2分散装置201によって分散処理される。複数回の処理は、このように、混合物5を、循環タンク203と第2循環管路vとの間で還流させることによって行われる。
【0057】
(4)分散処理済混合物の回収
第1循環管路u、及び第2循環管路vの分散処理が終了すると、システム制御装置210は、混合物5が、第1循環管路u、及び第2循環管路vから出力管路wへ流動するように弁217の流動経路を切り替える。分散処理が終了した混合物5は、第1循環管路u、及び第2循環管路vから弁217、出力管路wを経て貯留タンク205に回収される。
分散処理された混合物5が、貯留タンク205に回収されたのち、分散処理システム200は、(1)の動作に戻り、(1)から(4)の分散処理の工程を繰り返し、分散処理が継続的に行われる。
【0058】
本実施形態における分散処理システム200は、第1循環管路uと第2循環管路vを備えて、混合物5をそれぞれの循環管路u、vに還流させる。混合物5は、それぞれの循環管路u、vに設けられた第1分散装置1と第2分散装置201において、分散処理を複数回繰り返して混合物5を処理するので、混合物5の分散処理を効率よく行い分散処理の処理時間を短縮し、且つ所望の性状の混合物を得ることができる。
また、循環タンク203と並列に設けられる供給タンク221を備えているので、所望の量の混合物5を供給タンク221から逐次循環タンク203と循環管路u、vとに供給、循環させて混合物5を分散処理するので、連続的に混合物5を分散処理でき、混合物5の分散処理のスループットを向上することができる。
【0059】
次に、
図7を参照して、本実施形態における分散処理システム200の変形例を説明する。本変形例における分散処理システム300が、実施形態における分散処理システム200と異なる点は、第1分散装置1と第2分散装置201とが、循環タンク203と供給タンク221の上方に設けられる点と、貯留タンク205に至る出力管路wがポンプ207から弁213の間に弁303を介して接続される点、及び弁215から弁219に至る管路において、ポンプ209と弁217が除かれた点である。その他の同じ作用効果を有する構成要素については、同じ符号を付しその説明を省略する。
【0060】
本変形例においては、第1分散装置1と第2分散装置201とが、循環タンク203と供給タンク221の上方に設けられるので、混合物5は、重力の作用により第1分散装置1、及び第2分散装置201から循環タンク203、供給タンク221へ管路を通過して自然に流動するので、
図6における分散処理システム200のポンプ209が必要なくなる。したがって、実施形態における分散処理システム200の作用効果に加えて、装置構成の要素を減じた分散処理システム300を構成することができる。
【0061】
図8は、本発明による分散処理システムで実験を行った際のグラフである。このグラフを参照して本発明の効果について説明する。
図8のグラフは、縦軸が粒子サイズ、横軸が処理時間を表しており、それぞれ記号a~eの点のプロットは、分散処理の回数に対して粒子サイズがどれくらい小さくなるかを表している。記号a~eの条件を以下にまとめる。
a:第2分散装置のみ複数回の分散処理
b:第1分散装置1回処理後、第2分散装置複数回の分散処理
c:第1分散装置3回処理後、第2分散装置複数回の分散処理
d:第1分散装置7回処理後、第2分散装置複数回の分散処理
e:第1分散装置のみ複数回の分散処理
【0062】
図8における破線Lは、所望の粒子サイズLを表している。aのプロットに示すように第2分散装置のみ複数回の処理では所望のサイズLに至るまで時間がかかってしまうことがわかる。また、プロットeに示すように、第1分散装置のみ複数回の処理では、粒子サイズが急激に小さくなるが、所望の粒子サイズLには至らないことがわかる。また、プロットb、c、dは、第1分散装置の処理がそれぞれ1回、3回、7回と第2分散装置複数回の処理の組み合わせであるが、図からわかるようにプロットdの分散処理が所望の粒子サイズに至る時間が一番短く効率が良いことがわかる。
したがって、第1の分散装置と第2の分散装置の処理を適宜組み合わせて処理対象の混合物に対して最適な処理の組み合わせを設定することによって分散処理の効率を向上させることができる。
【0063】
上述の実施形態、実験例では、第1分散装置の処理の後に第2分散装置の処理を組み合わせることについて記載したが、これに限定されない。例えば、第2分散装置の処理を先行させてもよいし、第1分散装置の後に第2分散装置、そのあとに第1分散装置というように順番に繰り返してもよい。すなわち、処理対象の混合物の性状と所望の性状を考慮して、1回又は複数回の第1分散装置と第1分散装置の処理を任意に組み合わせて設定してよい。また、上述の実施形態における、第1循環管路u、及び第2循環管路vにおける分散処理は、循環タンク203との間で行われているが、これに限定されず、弁219、211の流動経路を制御することによって、供給タンク221と循環管路u、vとの間で混合物5を還流させて分散処理を行ってもよい。この循環管路u、vに対する貯留、循環対象タンクである、循環タンク203と供給タンク221との切り替えは、処理状況に応じて交互に切り替えるなど任意の順序、組み合わせで適宜制御するようにしてよい。
【0064】
1 分散装置(第1分散装置)
2 ローター
2a ローターの上面
3 ステータ
4 間隙
5 混合物
16 回転軸
32 混合物供給口
32a 開口端
41 シール部材
42 基部
43 リップ(先端部)
61 環状壁
64 排出管
65 吸引機構
100 ローターの外周面
101、102、102a ローターの溝
103 排出空間
106 冷却ジャケット
201 第2分散装置
203 循環タンク
205 貯蔵タンク
207、209 ポンプ
210 システム制御装置
221 供給タンク
u 第1循環管路
v 第2循環管路
w 出力管路