(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】自己位置推定システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240326BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240326BHJP
G05D 1/242 20240101ALI20240326BHJP
G05D 1/246 20240101ALI20240326BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240326BHJP
G05D 105/28 20240101ALN20240326BHJP
G05D 109/10 20240101ALN20240326BHJP
G05D 111/10 20240101ALN20240326BHJP
G05D 111/63 20240101ALN20240326BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01S17/931
G05D1/242
G05D1/246
G05D1/43
G05D105:28
G05D109:10
G05D111:10
G05D111:63
(21)【出願番号】P 2020150451
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】服部 晋悟
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537078(JP,A)
【文献】特開2016-57066(JP,A)
【文献】国際公開第2020/085062(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0025575(US,A1)
【文献】特開2022-45003(JP,A)
【文献】特開2020-119214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G01B 11/00
G01S 17/931
G05D 1/242
G05D 1/246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲にレーザを照射し、前記移動体の周囲に位置する物体で反射されたレーザを受光することにより、前記物体でのレーザの反射強度と前記移動体から前記物体までの距離とを検出するレーザセンサと、
前記レーザセンサにより検出された前記移動体から前記物体までの距離データと前記移動体の周囲環境の地図情報とに基づいて、前記移動体の自己位置を推定する自己位置推定部と、
前記移動体が走行する走行路に設置され、前記レーザセンサから照射されたレーザを前記地図情報として登録された前記物体よりも高い強度で反射させる反射部材と、
前記地図情報と前記反射部材の位置情報とを記憶する記憶部と、
前記自己位置推定部による前記移動体の自己位置推定の信頼度を判定する信頼度判定部とを備え、
前記レーザセンサは、前記反射部材で反射されたレーザを受光することにより、前記反射部材でのレーザの反射強度と前記移動体から前記反射部材までの距離とを更に検出し、
前記信頼度判定部は、前記レーザセンサにより検出された
前記レーザの反射強度データ及び前記
移動体からの距離データに基づいて、前記記憶部に記憶された位置情報に相当する反射部材で反射されたレーザが存在するかどうかを判断し、前記記憶部に記憶された位置情報に相当する反射部材で反射されたレーザが存在するときは、前記自己位置推定部による前記移動体の自己位置推定の信頼度が高いと判定する自己位置推定システム。
【請求項2】
前記信頼度判定部は、前記
レーザの反射強度データに基づいて、前記反射部材で反射されたレーザを抽出し、前記
移動体からの距離データに基づいて、前記反射部材におけるレーザの反射位置が前記記憶部に記憶された反射部材の位置情報と合致するかどうかを判断し、前記反射部材におけるレーザの反射位置が前記記憶部に記憶された反射部材の位置情報と合致するときは、前記自己位置推定部による前記移動体の自己位置推定の信頼度が高いと判定する請求項1記載の自己位置推定システム。
【請求項3】
前記反射部材は、前記走行路の所定エリアに複数設置されている請求項2記載の自己位置推定システム。
【請求項4】
前記信頼度判定部は、前記
レーザの反射強度データに基づいて、前記複数の反射部材で反射されたレーザを抽出し、前記複数の反射部材におけるレーザの反射位置が前記記憶部に記憶された反射部材の位置情報と合致するときは、前記自己位置推定部による前記移動体の自己位置推定の信頼度が高いと判定する請求項3記載の自己位置推定システム。
【請求項5】
前記信頼度判定部は、前記
移動体からの距離データに基づいて、前記複数の反射部材のうち前記移動体からの距離が規定値以下である反射部材を選択し、前記
レーザの反射強度データに基づいて、前記移動体からの距離が前記規定値以下である反射部材で反射されたレーザを抽出する請求項3または4記載の自己位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自己位置推定システムとしては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の自己位置推定システムは、自律移動ロボットに設けられ、自律移動ロボットと障害物との距離を計測するレーザ距離センサと、このレーザ距離センサからの計測データと地図記憶部に記憶された地図データとを照合することで、自律移動ロボットの位置及び姿勢を推定する位置姿勢推定部と、パーティクルの分散を計算して、位置姿勢推定部の位置姿勢推定結果の信頼度の評価値を算出する位置姿勢推定評価値算出部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、周囲環境が変化しやすい状況では、位置姿勢推定結果の信頼度の評価(判定)が難しい。このため、自律移動ロボットの位置が正確に推定されているにも関わらず、位置姿勢推定結果の信頼度が低下していると判定されることがある。この場合には、自律移動ロボットが停止し、作業遅れが発生してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、移動体の周囲環境が変化しやすい状況でも、移動体の自己位置推定の信頼度を高精度に判定することができる自己位置推定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る自己位置推定システムは、移動体の周囲にレーザを照射し、移動体の周囲に位置する物体で反射されたレーザを受光することにより、物体でのレーザの反射強度と移動体から物体までの距離とを検出するレーザセンサと、レーザセンサにより検出された移動体から物体までの距離データと移動体の周囲環境の地図情報とに基づいて、移動体の自己位置を推定する自己位置推定部と、移動体が走行する走行路に設置され、レーザセンサから照射されたレーザを地図情報として登録された物体よりも高い強度で反射させる反射部材と、地図情報と反射部材の位置情報とを記憶する記憶部と、自己位置推定部による移動体の自己位置推定の信頼度を判定する信頼度判定部とを備え、信頼度判定部は、レーザセンサにより検出されたレーザの反射強度データ及び距離データに基づいて、記憶部に記憶された位置情報に相当する反射部材で反射されたレーザが存在するかどうかを判断し、記憶部に記憶された位置情報に相当する反射部材で反射されたレーザが存在するときは、自己位置推定部による移動体の自己位置推定の信頼度が高いと判定する。
【0007】
このような自己位置推定システムにおいては、レーザセンサによって移動体の周囲に照射されて物体で反射されたレーザが受光されることにより、物体でのレーザの反射強度と移動体から物体までの距離とが検出される。そして、移動体から物体までの距離データと移動体の周囲環境の地図情報とに基づいて、移動体の自己位置が推定される。ここで、移動体が走行する走行路には、レーザセンサから照射されたレーザを地図情報として登録された物体よりも高い強度で反射させる反射部材が設置されている。そして、レーザセンサにより検出された反射強度データ及び距離データに基づいて、記憶部に記憶された位置情報に相当する反射部材で反射されたレーザが存在するかどうかが判断される。そして、記憶部に記憶された位置情報に相当する反射部材で反射されたレーザが存在するときは、自己位置推定部による移動体の自己位置推定の信頼度が高いと判定される。このように移動体の走行路に設置された反射部材を利用することにより、移動体の周囲環境が変化しやすい状況でも、移動体の自己位置推定の信頼度が高精度に判定される。また、反射部材は、移動体の自己位置の推定ではなく、自己位置推定の信頼度の判定に利用される。従って、反射部材としては、自己位置推定の信頼度の判定が行われるエリアに少なくとも1つあれば足りる。
【0008】
信頼度判定部は、反射強度データに基づいて、反射部材で反射されたレーザを抽出し、距離データに基づいて、反射部材におけるレーザの反射位置が記憶部に記憶された反射部材の位置情報と合致するかどうかを判断し、反射部材におけるレーザの反射位置が記憶部に記憶された反射部材の位置情報と合致するときは、自己位置推定部による移動体の自己位置推定の信頼度が高いと判定してもよい。このような構成では、反射部材以外の物体で反射されたレーザは除去され、反射部材で反射されたレーザのみが抽出される。従って、記憶部に記憶された位置情報に相当する反射部材で反射されたレーザが存在するかどうかが正確に判断される。
【0009】
反射部材は、走行路の所定エリアに複数設置されていてもよい。このような構成では、移動体の周囲環境が変化しやすい状況が長く続くエリアでも、移動体の自己位置推定の信頼度が高精度に判定される。
【0010】
信頼度判定部は、反射強度データに基づいて、複数の反射部材で反射されたレーザを抽出し、複数の反射部材におけるレーザの反射位置が記憶部に記憶された反射部材の位置情報と合致するときは、自己位置推定部による移動体の自己位置推定の信頼度が高いと判定してもよい。このような構成では、反射部材の数が複数である場合は、複数の反射部材におけるレーザの反射位置が記憶部に記憶された反射部材の位置情報と合致しないと、自己位置推定の信頼度が高いと判定されない。従って、移動体の自己位置推定の信頼度がより高精度に判定される。
【0011】
信頼度判定部は、距離データに基づいて、複数の反射部材のうち移動体からの距離が規定値以下である反射部材を選択し、反射強度データに基づいて、移動体からの距離が規定値以下である反射部材で反射されたレーザを抽出してもよい。このような構成では、複数の反射部材のうち移動体からの距離が規定値以下である反射部材を選択することにより、検知しやすい反射部材のみが自己位置推定の信頼度の判定に使用されることになる。従って、自己位置推定の信頼度の判定処理が簡略化される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の周囲環境が変化しやすい状況でも、移動体の自己位置推定の信頼度を高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自己位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】フォークリフトの走行路の一例を示す概念図である。
【
図3】
図1に示された信頼度判定部の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示された反射板選択部により実行される反射板選択処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】レーザセンサにより受光された全てのレーザのうち、反射板で反射されたレーザのみが抽出される様子を示す概念図である。
【
図6】
図3に示された反射板探索部により実行される反射板探索処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図3に示された信頼度決定部により実行される信頼度決定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る自己位置推定システムを備えた走行制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、走行制御システム1は、
図2に示されるように、移動体であるフォークリフト2を目的地に向けて自動的に走行させるように制御するシステムである。
【0016】
フォークリフト2は、産業車両の一つである。フォークリフト2は、図示しない駆動輪及び操舵輪を有する走行装置3と、この走行装置3の前側に配置された荷役装置4とを備えている。荷役装置4は、図示しないパレットを保持して昇降させる1対のフォーク5を有している。
【0017】
走行制御システム1は、レーザセンサ6と、反射板7と、コントローラ8と、駆動部9とを備えている。レーザセンサ6、コントローラ8及び駆動部9は、フォークリフト2に搭載されている。
【0018】
レーザセンサ6は、
図2に示されるように、フォークリフト2の周囲にレーザLを照射し、フォークリフト2の周囲に位置する静止物体10で反射するレーザLを受光することにより、静止物体10でのレーザLの反射強度とフォークリフト2から静止物体10までの距離とを検出する。静止物体10は、例えばフォークリフト2が走行する走行路Sの左右両側に設置された柱または壁等であり、地図情報(後述)として登録されている。
【0019】
レーザセンサ6は、例えばフォークリフト2の前方直進を中心とした所定の角度範囲(例えば270度)でレーザLを照射する。レーザセンサ6としては、例えば3次元にレーザLを照射する3Dのレーザレンジファインダが使用される。
【0020】
反射板7は、
図2に示されるように、フォークリフト2の走行路Sに設置されている。反射板7は、フォークリフト2の走行路Sにおけるフォークリフト2の自己位置の推定精度が低下しやすい所定エリアに複数設置されている。フォークリフト2の自己位置の推定精度が低下しやすい所定エリアとしては、例えばトラックの往来が激しい場所等といった周囲環境が変化しやすいエリアが挙げられる。
【0021】
反射板7は、レーザセンサ6から照射されたレーザLを反射させる反射部材である。反射板7は、レーザセンサ6から照射されたレーザLを静止物体10よりも高い強度で反射させる。反射板7は、静止物体10に貼り付けられている。反射板7は、走行路Sの左右両側に配置されている。
【0022】
コントローラ8は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ8は、レーザセンサ6の検出データに基づいて、フォークリフト2の自己位置を推定し、フォークリフト2を目的地まで走行させるように駆動部9を制御する。
【0023】
駆動部9は、特に図示はしないが、フォークリフト2の駆動輪(前述)を回転させる走行モータと、フォークリフト2の操舵輪(前述)を転舵させる操舵モータとを有している。
【0024】
コントローラ8は、自己位置推定部11と、記憶部12と、信頼度判定部13と、駆動制御部14とを有している。
【0025】
自己位置推定部11は、例えばSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、フォークリフト2の現在の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを用いて自己位置推定を行う自己位置推定技術である。
【0026】
自己位置推定部11は、レーザセンサ6により検出されたフォークリフト2から静止物体10までの距離データとフォークリフト2の周囲環境の地図情報とに基づいて、フォークリフト2の自己位置を推定する。具体的には、自己位置推定部11は、フォークリフト2から静止物体10までの距離とフォークリフト2の周囲環境の地図とをマッチングさせて、フォークリフト2の自己位置の推定演算を行う。
【0027】
記憶部12は、フォークリフト2の周囲環境の地図情報と各反射板7の位置情報とを記憶する。各反射板7の位置情報は、地図座標系での位置座標として登録されている。
【0028】
信頼度判定部13は、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度を判定する。信頼度判定部13は、レーザセンサ6により検出されたレーザLの反射強度データ及びフォークリフト2からの距離データに基づいて、記憶部12に記憶された位置情報に相当する反射板7で反射されたレーザLが存在するかどうかを判断し、記憶部12に記憶された位置情報に相当する反射板7で反射されたレーザLが存在するときは、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度が高いと判定する。信頼度判定部13については、後で詳述する。
【0029】
駆動制御部14は、基本的には、自己位置推定部11により推定されたフォークリフト2の自己位置に基づいて、フォークリフト2を目的地まで走行させるように駆動部9を制御する。
【0030】
ここで、レーザセンサ6、反射板7、コントローラ8の自己位置推定部11、記憶部12及び信頼度判定部13は、本実施形態の自己位置推定システム15を構成している。
【0031】
信頼度判定部13は、
図3に示されるように、反射板選択部21と、フィルタ部22と、クラスタリング部23と、反射板探索部24と、信頼度決定部25とを有している。
【0032】
反射板選択部21は、レーザセンサ6により検出されたフォークリフト2からの距離データに基づいて、複数の反射板7のうち自己位置推定の信頼度の判定に使用する反射板7を選択する。
【0033】
図4は、反射板選択部21により実行される反射板選択処理の手順を示すフローチャートである。
図4において、反射板選択部21は、まずレーザセンサ6により検出された距離データを取得する(手順S101)。続いて、反射板選択部21は、フォークリフト2から反射板7までの距離が予め決められた規定値以下であるかどうかを判断する(手順S102)。
【0034】
反射板選択部21は、フォークリフト2から反射板7までの距離が規定値以下であると判断したときは、当該反射板7を自己位置推定の信頼度の判定に使用する反射板7として選択する(手順S103)。反射板選択部21は、フォークリフト2から反射板7までの距離が規定値以下でないと判断したときは、当該反射板7を自己位置推定の信頼度の判定に使用しない(手順S104)。
【0035】
フィルタ部22は、レーザセンサ6により検出されたレーザLの反射強度データに基づいて、レーザセンサ6で受光されたレーザLのうち反射板7で反射されたレーザLを抽出するフィルタリングを行う。
【0036】
このとき、フィルタ部22は、
図5に示されるように、レーザLの反射強度から、レーザセンサ6で受光された全てのレーザLのうち(
図5(a)参照)、反射板7で反射されたレーザLのみを取り出し、反射板7以外の物体(静止物体10を含む)で反射されたレーザLを除去する(
図5(b)参照)。
【0037】
また、反射板7の位置は、予め分かっている。このため、フィルタ部22は、レーザLの反射強度データに加え、自己位置推定部11により推定されたフォークリフト2の自己位置データとレーザセンサ6により検出された距離データも用いて、フィルタリングを行ってもよい。この場合には、反射板7で反射されたレーザLの抽出精度が高くなる。
【0038】
クラスタリング部23は、
図5(b)の領域R1,R2で示されるように、フィルタ部22により抽出されたレーザLのデータ群を反射板7毎にグルーピングする。つまり、クラスタリング部23は、同じ反射板7で反射された全てのレーザLのデータを同一グループとする。
【0039】
このとき、クラスタリング部23は、同じ反射板7で反射された各レーザLの反射位置の平均値を当該反射板7におけるレーザLの反射位置とする。レーザLの反射位置は、フォークリフト2の所定位置(例えば中心位置)を原点とした車両座標系での位置座標として表される。
【0040】
反射板探索部24は、クラスタリング部23によりグルーピングされた各反射板7におけるレーザLの反射位置が記憶部12に記憶された反射板7の位置情報と合致するかどうかを探索する。
【0041】
図6は、反射板探索部24により実行される反射板探索処理の手順を示すフローチャートである。
図6において、反射板探索部24は、まず自己位置推定部11により推定されたフォークリフト2の現在の自己位置データを取得する(手順S111)。
【0042】
続いて、反射板探索部24は、フォークリフト2の現在の自己位置データと記憶部12に記憶された反射板7の位置情報とに基づいて、地図座標系での反射板7の相対位置を車両座標系での反射板7の相対位置に座標変換する(手順S112)。反射板7の相対位置は、例えば反射板7の中心位置である。
【0043】
続いて、反射板探索部24は、クラスタリング部23により得られた反射板7におけるレーザLの反射位置(以下、反射板7のレーザ反射位置)と手順S112で座標変換された反射板7の相対位置とのユークリッド距離を算出する(手順S113)。続いて、反射板探索部24は、反射板7のレーザ反射位置と反射板7の相対位置とのユークリッド距離が予め決められた閾値以下であるかどうかを判断する(手順S114)。
【0044】
反射板探索部24は、反射板7のレーザ反射位置と反射板7の相対位置とのユークリッド距離が閾値以下であると判断したときは、反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された登録済の反射板7の位置情報と合致していると判定する(手順S115)。反射板探索部24は、反射板7のレーザ反射位置と反射板7の相対位置とのユークリッド距離が閾値以下でないと判断したときは、反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された登録済の反射板7の位置情報と合致していないと判定する(手順S116)。
【0045】
信頼度決定部25は、反射板探索部24の探索結果に基づいて、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度を決定する。
【0046】
図7は、信頼度決定部25により実行される信頼度決定処理の手順を示すフローチャートである。
図7において、信頼度決定部25は、反射板探索部24の探索結果に基づいて、クラスタリング部23によりグルーピングされた全ての反射板7について、反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された登録済の反射板7の位置情報と合致しているかどうかを判断する(手順S121)。
【0047】
信頼度決定部25は、全ての反射板7について、反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された登録済の反射板7の位置情報と合致していると判断されたときは、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度が高いと決定する(手順S122)。
【0048】
信頼度決定部25は、全ての反射板7のうちの1つでも、反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された登録済の反射板7の位置情報と合致していないと判断されたときは、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度が低いと決定する(手順S123)。
【0049】
駆動制御部14は、信頼度決定部25により自己位置推定の信頼度が高いと決定されたときは、自己位置推定部11により推定されたフォークリフト2の現在の自己位置に基づいて、フォークリフト2を目的地まで走行させるように駆動部9を制御する。駆動制御部14は、信頼度決定部25により自己位置推定の信頼度が低いと決定されたときは、フォークリフト2を停止させるように駆動部9を制御する。
【0050】
ところで、トラックの往来が多いエリアでは、周囲環境が変化しやすいため、フォークリフト2の自己位置推定の信頼度の判定が難しくなる。また、特に3Dのレーザセンサ6を使用して、フォークリフト2の自己位置の推定を行う場合には、自己位置の推定精度は高くなるが、自己位置推定の信頼度の計算処理が複雑になるため、フォークリフト2の自己位置推定の信頼度の判定が更に難しくなる。このため、実際にはフォークリフト2の自己位置が正確に推定されているにも関わらず、自己位置推定の信頼度が低下していると判定されることがある。この場合には、フォークリフト2が停止し、作業遅れが発生してしまう。
【0051】
そのような課題に対し、本実施形態では、レーザセンサ6によってフォークリフト2の周囲に照射されて静止物体10で反射されたレーザLが受光されることにより、静止物体10でのレーザLの反射強度とフォークリフト2から静止物体10までの距離とが検出される。そして、フォークリフト2から静止物体10までの距離データとフォークリフト2の周囲環境の地図情報とに基づいて、フォークリフト2の自己位置が推定される。ここで、フォークリフト2が走行する走行路Sには、レーザセンサ6から照射されたレーザLを地図情報として登録された静止物体10よりも高い強度で反射させる反射板7が設置されている。そして、レーザセンサ6により検出された反射強度データ及び距離データに基づいて、記憶部12に記憶された位置情報に相当する反射板7で反射されたレーザLが存在するかどうかが判断される。そして、記憶部12に記憶された位置情報に相当する反射板7で反射されたレーザLが存在するときは、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度が高いと判定される。このようにフォークリフト2の走行路Sに設置された反射板7を利用することにより、フォークリフト2の周囲環境が変化しやすい状況でも、フォークリフト2の自己位置推定の信頼度が高精度に判定される。
【0052】
また、本実施形態では、レーザLの反射強度データに基づいて、反射板7で反射されたレーザLが抽出され、フォークリフト2からの距離データに基づいて、反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された反射板7の位置情報と合致するかどうかが判断される。そして、反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された反射板7の位置情報と合致するときは、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度が高いと判定される。このため、反射板7以外の物体で反射されたレーザLは除去され、反射板7で反射されたレーザLのみが抽出される。従って、記憶部12に記憶された位置情報に相当する反射板7で反射されたレーザLが存在するかどうかが正確に判断される。
【0053】
また、本実施形態では、反射板7は、フォークリフト2の走行路Sの所定エリアに複数設置されている。このため、フォークリフト2の周囲環境が変化しやすい状況が長く続くエリアでも、フォークリフト2の自己位置推定の信頼度が高精度に判定される。
【0054】
また、本実施形態では、レーザLの反射強度データに基づいて、複数の反射板7で反射されたレーザLが抽出され、複数の反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された反射板7の位置情報と合致するときは、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置推定の信頼度が高いと判定される。このため、反射板7の数が複数である場合は、複数の反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された反射板7の位置情報と合致しないと、自己位置推定の信頼度が高いと判定されない。従って、フォークリフト2の自己位置推定の信頼度がより高精度に判定される。
【0055】
また、本実施形態では、フォークリフト2からの距離データに基づいて、複数の反射板7のうちフォークリフト2からの距離が規定値以下である反射板7が選択され、レーザLの反射強度データに基づいて、フォークリフト2からの距離が規定値以下である反射板7で反射されたレーザLが抽出される。このように複数の反射板7のうちフォークリフト2からの距離が規定値以下である反射板7を選択することにより、検知しやすい反射板7のみが自己位置推定の信頼度の判定に使用されることになる。従って、自己位置推定の信頼度の判定処理が簡略化される。
【0056】
また、本実施形態では、フォークリフト2の自己位置を推定するためのレーザセンサ6を使用して反射板7を検知するため、反射板7用のセンサを別途フォークリフト2に取り付ける必要がない。従って、コスト及び工数が少なくて済む。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、反射板7は、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置の推定精度が低下しやすいエリアに複数設置されているが、特にそのような形態には限られない。
【0058】
例えば反射板7を使用してフォークリフト2の自己位置を推定する場合は、三角測量によって自己位置の推定を行うため、2つ以上の反射板7が必要となる。しかし、ここでは、反射板7は、フォークリフト2の自己位置の推定ではなく、自己位置推定の信頼度の判定に利用される。従って、反射板7としては、自己位置推定部11によるフォークリフト2の自己位置の推定精度が低下しやすいエリアに1つだけ設置されていてもよい。この場合には、コスト削減を図ることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、反射板選択部21により選択された全ての反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された反射板7の位置情報と合致するときに、自己位置推定部11による自己位置推定の信頼度が高いと判定されているが、特にそのような形態には限られない。反射板選択部21により選択された全ての反射板7のうちの規定比率(例えば80%)以上の反射板7のレーザ反射位置が記憶部12に記憶された反射板7の位置情報と合致するときに、自己位置推定部11による自己位置推定の信頼度が高いと判定してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、自己位置推定部11による自己位置の推定精度が低下しやすいエリアに設置された複数の反射板7のうちフォークリフト2からの距離が規定値以下である反射板7が選択され、その反射板7が自己位置推定の信頼度の判定に使用されているが、特にそのような形態には限られない。フォークリフト2から反射板7までの距離に加え、フォークリフト2に対する反射板7の向き(角度)を考慮して、自己位置推定の信頼度の判定に使用される反射板7を選択してもよい。また、自己位置推定部11による自己位置の推定精度が低下しやすいエリアに設置された全ての反射板7を、自己位置推定の信頼度の判定に使用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、3次元にレーザLを照射する3Dのレーザセンサ6が使用レーザされているが、特にその形態には限られず、2次元にレーザLを照射する2Dのレーザセンサ6を使用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態の自己位置推定システム15は、フォークリフト2の自己位置を推定するシステムであるが、本発明は、特にフォークリフト2には限られず、他の車両や移動ロボット等といった移動体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
2…フォークリフト(移動体)、6…レーザセンサ、7…反射板(反射部材)、10…静止物体(物体)、11…自己位置推定部、12…記憶部、13…信頼度判定部、15…自己位置推定システム、L…レーザ、S…走行路。