(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】熱輸送装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240326BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F28D15/02 102G
F28D15/04 E
(21)【出願番号】P 2020158952
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】釘本 恒
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-010106(JP,A)
【文献】特開2007-155246(JP,A)
【文献】特開昭63-148093(JP,A)
【文献】特開平04-268193(JP,A)
【文献】実開平05-090170(JP,U)
【文献】特開2005-114179(JP,A)
【文献】特開昭54-037958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
H01L 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、
前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、
前記周壁部は、
複数のパネルと、前記複数のパネルを連結する複数のヒンジ部とを有することにより、柔軟性を有し、
前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張する、
熱輸送装置。
【請求項2】
発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、
前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、
前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有し、
前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張し、
前記熱輸送装置は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備え、
前記膨張手段は、
前記作動液を貯留するタンクと、
前記タンクと前記配管との間で前記作動液を出し入れする搬送装置と、
を含む、
熱輸送装置。
【請求項3】
発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、
前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、
前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有し、
前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張し、
前記熱輸送装置は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備え、
前記膨張手段は、前記配管が膨張する方向に前記周壁部を付勢する第一付勢部材を含む、
熱輸送装置。
【請求項4】
発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、
前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、
前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有し、
前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張し、
前記熱輸送装置は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備え、
前記膨張手段は、前記配管が収縮する方向に前記周壁部を付勢する第二付勢部材を含む、
熱輸送装置。
【請求項5】
前記周壁部は、
軟質性、柔軟性又は伸縮性を有することにより径方向に変形可能である、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項6】
前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、膨張した状態から収縮する、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項7】
前記受熱部が前記放熱部に対して鉛直方向下側に位置する、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項8】
前記周壁部は、少なくとも一部が軟質性材料で形成されることにより、軟質性を有する、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項9】
前記周壁部は、複数のパネルと、前記複数のパネルを連結する複数のヒンジ部とを有することにより、柔軟性を有する、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項10】
前記周壁部は、少なくとも一部が伸縮性材料で形成されることにより、伸縮性を有する、
請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項11】
前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備える、
請求項1に記載の熱輸送装置。
【請求項12】
前記膨張手段は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を膨張した状態から収縮させる機能を有する、
請求項11に記載の熱輸送装置。
【請求項13】
前記膨張手段は、密閉された前記配管に前記作動液が封入された構造を含む、
請求項11又は請求項12に記載の熱輸送装置。
【請求項14】
前記膨張手段は、
前記作動液を貯留するタンクと、
前記タンクと前記配管との間で前記作動液を出し入れする搬送装置と、
を含む、
請求項11~請求項13のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項15】
前記膨張手段は、前記配管が膨張する方向に前記周壁部を付勢する第一付勢部材を含む、
請求項11~請求項14のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項16】
前記膨張手段は、前記配管が収縮する方向に前記周壁部を付勢する第二付勢部材を含む、
請求項11~請求項15のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項17】
前記周壁部の内周面には、前記周壁部の軸方向に延びる毛細管力発生部が設けられている、
請求項1~請求項16のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
【請求項18】
複数の前記毛細管力発生部を備え、
複数の前記毛細管力発生部は、前記周壁部の周方向に互いに間隔を空けて並んでいる、
請求項17に記載の熱輸送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、熱輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヒートパイプと称される熱輸送装置が利用されている。例えば、特許文献1に記載のヒートパイプは、封止された内部空間を有するコンテナと、コンテナの内面に設けられたウィック構造体と、コンテナの内部空間に封入された作動流体とを備える。
【0003】
また、例えば、特許文献2に記載のループ型ヒートパイプは、蒸発器と、蒸発器で気化された作動流体を放熱して液化する凝縮器と、蒸発器で気化された作動流体を凝縮器まで送る蒸気管と、凝縮器で液化された作動流体を蒸発器まで送る液管とを備える。
【0004】
なお、熱輸送装置ではないが、特許文献3には、可変浮揚力を有する操縦可能な軽気球に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-79699号公報
【文献】特開2012-37097号公報
【文献】国際公開第2001/042082号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1、2に記載の技術では、以下の課題がある。すなわち、特許文献1に記載のヒートパイプにおいて、コンテナと称される配管は例えば金属等の硬質体で構成されている。このため、配管の設計の自由度が低く、かつ、ヒートパイプの設置作業の難易度が高い。
【0007】
また、特許文献2に記載のループ型ヒートパイプは、蒸発器及び凝縮器がそれぞれ独立しており、かつ、蒸発器及び凝縮器が蒸気管と液管によって接続されているので、運搬が困難である。
【0008】
なお、特許文献3に記載された、可変浮揚力を有する操縦可能な軽気球に関する技術は、作動液を用いた熱輸送装置としての機能を有していない。
【0009】
本願の開示する技術は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一つの側面として、配管の設計の自由度を高めつつ、設置作業時の作業及び運搬が容易である熱輸送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する技術の第1態様は、発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、前記周壁部は、複数のパネルと、前記複数のパネルを連結する複数のヒンジ部とを有することにより、柔軟性を有し、前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張する、熱輸送装置である。
本願の開示する技術の第2態様は、発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有し、前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張し、前記熱輸送装置は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備え、前記膨張手段は、前記作動液を貯留するタンクと、前記タンクと前記配管との間で前記作動液を出し入れする搬送装置と、を含む、熱輸送装置である。
本願の開示する技術の第3態様は、発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有し、前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張し、前記熱輸送装置は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備え、前記膨張手段は、前記配管が膨張する方向に前記周壁部を付勢する第一付勢部材を含む、熱輸送装置である。
本願の開示する技術の第4態様は、発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有し、前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張し、前記熱輸送装置は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備え、前記膨張手段は、前記配管が収縮する方向に前記周壁部を付勢する第二付勢部材を含む、熱輸送装置である。
【発明の効果】
【0011】
本願の開示する技術の一観点に係る熱輸送装置によれば、配管の設計の自由度を高めつつ、設置作業時の作業及び運搬を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の開示する技術の第一実施形態に係る熱輸送装置を示す図である。
【
図3】本願の開示する技術の第二実施形態に係る熱輸送装置を示す図である。
【
図4】本願の開示する技術の第三実施形態に係る配管を示す図である。
【
図5】
図4に示される配管の変形例を示す図である。
【
図6】本願の開示する技術の第四実施形態に係る配管を示す図である。
【
図7】本願の開示する技術の第五実施形態に係る熱輸送装置を示す図である。
【
図8】本願の開示する技術の第六実施形態に係る熱輸送装置を示す図である。
【
図9】本願の開示する技術の第七実施形態に係る熱輸送装置を示す図である。
【
図10】本願の開示する技術の第八実施形態に係る熱輸送装置を示す図である。
【
図11】本願の開示する技術の第九実施形態に係る配管を示す図である。
【
図12】本願の開示する技術の第十実施形態に係る配管を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
はじめに、本願の開示する技術の第一実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本願の開示する技術の第一実施形態に係る熱輸送装置10を示す図である。
図1では、熱輸送装置10が正面断面図で示されている。熱輸送装置10は、所謂、ヒートパイプとしての機能を有するものである。第一実施形態では、熱輸送装置10が発熱体12の熱を冷却体14に輸送して発熱体12を冷却する例について説明する。
【0015】
発熱体12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の発熱するものであれば、どのようなものでもよい。冷却体14は、例えばヒートシンクであるが、液体や気体等の冷媒によって冷却されるものであれば、どのようなものでもよい。この熱輸送装置10は、発熱体12の熱を冷却体14に輸送するために、配管16と、作動液18とを備える。
【0016】
配管16は、発熱体12に接続される受熱部20と、冷却体14に接続される放熱部22と、受熱部20及び放熱部22を繋ぐ周壁部24とを有する。受熱部20は、配管16の軸方向一方側の端部を形成しており、放熱部22は、配管16の軸方向他方側の端部を形成している。この配管16は、受熱部20、放熱部22及び周壁部24によって密閉された構成である。つまり、配管16は、密閉された筒状の袋体である。
【0017】
周壁部24を含む配管16の全体は、例えばビニール等の軟質性材料で形成されており、これにより、周壁部24は、その全部が軟質性を有する。周壁部24は、軟質性を有することにより熱膨張とは異なる変形態様で径方向に変形可能である。つまり、周壁部24は、軟質性を有することによる変形を伴って径方向に変形可能である。
【0018】
配管16は、収縮した状態から周壁部24の径方向への膨張変形を伴って膨張し、また、膨張した状態から周壁部24の径方向への収縮変形を伴って収縮する構成である。
図1(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図1(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。また、
図2は、
図1に示される配管16の横断面図であり、
図2(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図2(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0019】
第一実施形態において、周壁部24の径方向への膨張変形は、具体的には、周壁部24が径方向に萎んだ状態から径方向に膨張する変形のことである。また、周壁部24の径方向への収縮変形は、具体的には、周壁部24が上述の膨張変形した状態から径方向に萎んだ状態に変形することである。
【0020】
図1、
図2に示されるように、配管16の容積は、周壁部24の膨張変形及び収縮変形を伴って増減する。配管16は、収縮時に対して容積が2倍以上に膨張することが望ましい。配管16が膨張した状態での周壁部24の形状は、一例として、円筒状である。
【0021】
図1に示されるように、第一実施形態では、一例として、発熱体12が冷却体14に対して鉛直方向下側に位置しており、これに対応して、受熱部20は、放熱部22に対して鉛直方向下側に位置する。発熱体12及び冷却体14の位置は、例えば固定される。受熱部20が発熱体12に接続され、放熱部22が冷却体14に接続された状態において、配管16は、鉛直方向を軸方向として延びるように配置される。
【0022】
図1(A)には、発熱体12の発熱が停止した状態(発熱体12の温度が低下した状態)が示されており、
図1(B)には、発熱体12が発熱している状態が示されている。作動液18は、配管16の内部に封入されている。
図1(A)に示されるように、発熱体12の発熱が停止した状態では、配管16の内部に封入された作動液18が自重により配管16の下部に溜まって受熱部20と接する。作動液18は、例えば、水又は代替フロン等である。ただし、作動液18の種類はこれらに限定されない。
【0023】
図1(B)に示されるように、発熱体12が発熱すると、発熱体12の熱13によって作動液18が加熱される。そして、作動液18の温度上昇に伴って配管16の内部の圧力が上昇し、これにより、周壁部24の径方向への膨張変形を伴って配管16が収縮した状態から膨張する。このように、第一実施形態では、密閉された配管16に作動液18が封入された構造が採用されることにより、配管16が膨張する。この密閉された配管16に作動液18が封入された構造は、周壁部24の径方向への膨張変形を伴って配管16を収縮した状態から膨張させる膨張手段26に相当する。
【0024】
一方、
図1(A)に示されるように、発熱体12の発熱が停止し、発熱体12の温度が低下すると、作動液18の温度低下に伴って配管16の内部の圧力が低下し、これにより、周壁部24の径方向への収縮変形を伴って配管16が膨張した状態から収縮する。つまり、膨張手段26は、周壁部24の径方向への収縮変形を伴って配管16を収縮した状態から膨張させる機能に加えて、周壁部24の径方向への収縮変形を伴って配管16を膨張した状態から収縮させる機能を有する。
【0025】
次に、第一実施形態に係る熱輸送方法について説明する。
【0026】
第一実施形態に係る熱輸送方法は、上述の熱輸送装置10を用いて実行される。第一実施形態に係る熱輸送方法では、先ず、
図1(A)に示されるように、発熱が停止した状態にある発熱体12及び冷却体14の元へ熱輸送装置10が搬送される。このとき、熱輸送装置10は、配管16が収縮した状態とされる。
【0027】
続いて、発熱体12の発熱が停止した状態で、受熱部20が発熱体12に接続されると共に、放熱部22が冷却体14に接続される。発熱体12の発熱が停止した状態では、配管16の内部に封入された作動液18が自重により配管16の下部に溜まって受熱部20と接する。
【0028】
そして、
図1(B)に示されるように、発熱体12が発熱すると、発熱体12の熱13が受熱部20に伝わり、受熱部20に接する作動液18が加熱される。このように作動液18が加熱されると、作動液18が液相から気相に変化し、蒸気28が発生する。また、このときには、作動液18の温度上昇に伴って配管16の内部の圧力が上昇し、これにより、周壁部24の径方向への膨張変形を伴って配管16が収縮した状態から膨張する。
【0029】
配管16の内部で発生した蒸気28が放熱部22に到達すると、蒸気28の熱29が放熱部22を介して冷却体14に伝達される。これにより、蒸気28の熱29が放熱部22に放出される。また、蒸気28の熱29が放熱部22に放出されると、蒸気28が気相から液相に変化し、蒸気28が液滴30に凝縮される。この液滴30は自重により落下する。
【0030】
そして、以上の動作が繰り返されることにより、所謂、サーモサイフォン方式により、作動液18の相変化を伴って、熱が受熱部20から放熱部22へ輸送される。これにより、熱輸送装置10によって発熱体12の熱が冷却体14に輸送され、発熱体12が冷却される。
【0031】
なお、
図1(A)に示されるように、発熱体12の発熱が停止し、発熱体12の温度が低下すると、作動液18の温度低下に伴って配管16の内部の圧力が低下し、これにより、周壁部24の径方向への収縮変形を伴って配管16が膨張した状態から収縮する。
【0032】
次に、第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0033】
以上詳述したように、第一実施形態に係る熱輸送装置10では、配管16が硬質性ではなく軟質性を有する。したがって、例えば配管16が硬質体で形成される場合に比して、配管16の設計の自由度が高い。すなわち、配管16が硬質体である場合には、配管16の収縮形態や膨張形態及び配管16の材料等を自由に設計することが困難であるが、第一実施形態に係る熱輸送装置10では、配管16が軟質体であるので、配管16の収縮形態や膨張形態及び配管16の材料等を自由に設計することができる。
【0034】
また、第一実施形態に係る熱輸送装置10では、配管16が軟質性を有するので、熱輸送装置10の搬送時には、この熱輸送装置10を配管16の軸方向及び径方向に小さくすることができる。これにより、例えば、発熱が停止した状態にある発熱体12及び冷却体14の元へ熱輸送装置10を搬送する際の作業を容易にすることができる。また、配管16が軟質性を有することにより、例えば配管16を曲げることができるので、受熱部20を発熱体12に接続すると共に放熱部22を冷却体14に接続する際の作業も容易にすることができる。
【0035】
また、第一実施形態に係る熱輸送装置10では、周壁部24が、軟質性を有することにより径方向に変形可能である。したがって、周壁部24が径方向に膨張変形した状態では、蒸気28が通過する流路が拡大するので、低い流体抵抗で蒸気28を受熱部20から放熱部22に移動させることができる。これにより、熱輸送効率を向上させることができるので、発熱体12に対する冷却性を向上させることができる。
【0036】
また、第一実施形態に係る熱輸送装置10では、配管16が、膨張した状態から周壁部24の収縮変形を伴って収縮する。したがって、熱輸送装置10を使用しないときには、熱輸送装置10の体格を小さくすることができる。
【0037】
また、第一実施形態に係る熱輸送装置10では、受熱部20が放熱部22に対して鉛直方向下側に位置する。したがって、蒸気28が気相から液相に変化して蒸気28が液滴30に凝縮されたときには、この液滴30が自重により落下するので、液滴30を受熱部20に搬送するためにウィックや細溝等の毛細管力発生部を周壁部24の内周面に設けなくて済む。これにより、周壁部24の収縮が阻害されることを防いで周壁部24の収縮性を確保できると共に、部材点数の増加を防いでコストアップを防止できる。
【0038】
また、第一実施形態に係る熱輸送装置10では、周壁部24を含む配管16の全体が、軟質性材料で形成されることにより、軟質性を有しており、これにより、配管16が膨張及び収縮可能な構成となっている。したがって、配管16が簡素な構成であるので、コストアップを防止できる。
【0039】
また、第一実施形態に係る熱輸送装置10は、周壁部24の径方向への膨張変形を伴って配管16を収縮した状態から膨張させる膨張手段26を備えている。この膨張手段26は、密閉された配管16に作動液18が封入された構造によって実現されている。したがって、膨張手段26として例えばアクチュエータ等を用いなくて済むので、部材点数の増加を防いでコストアップを防止できる。
【0040】
また、密閉された配管16に作動液18が封入された構造により、発熱体12の発熱が停止し、発熱体12の温度が低下した場合には、配管16の内部の圧力が低下することにより、配管16が膨張した状態から収縮する。したがって、上述の膨張手段26が、配管16を収縮した状態から膨張させる機能に加えて、配管16を膨張した状態から収縮させる機能を有するので、部材点数の増加を防いでコストアップを防止できる。
【0041】
なお、上述の第一実施形態において、周壁部24は、その全部が軟質性材料で形成されることにより軟質性を有するが、その一部のみが軟質性材料で形成されることにより軟質性を有していてもよい。
【0042】
また、受熱部20及び放熱部22は、周壁部24とは異なる材料で形成されていてもよい。
【0043】
[第二実施形態]
次に、本願の開示する技術の第二実施形態を説明する。
【0044】
図3は、本願の開示する技術の第二実施形態に係る熱輸送装置10を示す図である。
図3では、熱輸送装置10のうち受熱部20側の半分の構成が正面断面図で示されている。
図3(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図3(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0045】
第二実施形態では、第一実施形態(
図1、
図2参照)に対し、熱輸送装置10の構成が次のように変更されている。すなわち、配管16の下部に形成された受熱部20は、容器状に形成されている。この容器状に形成された受熱部20は、周壁部24と異なる材料、すなわち例えば硬質性材料で形成されている。配管16のうち周壁部24は、軟質性材料で形成されている。
【0046】
そして、この第二実施形態においても、周壁部24の膨張変形を伴って配管16が収縮した状態から膨張する。また、周壁部24の収縮変形を伴って配管16が膨張した状態から収縮する。第二実施形態において、熱輸送装置10のその他の構成は、第一実施形態と同様である。
【0047】
この第二実施形態では、配管16の下部に形成された受熱部20が容器状に形成されている。したがって、
図3(A)に示されるように、周壁部24が収縮した状態でも、受熱部20の容積が確保される。これにより、受熱部20に貯留された作動液18と発熱体12とが熱的に接続された領域の面積を確保できる。
【0048】
そして、
図3(B)に示されるように、発熱体12が発熱した場合には、発熱体12の熱13を作動液18に効率よく伝えることができるので、蒸気28を効率よく発生できる。これにより、熱輸送効率を向上させることができる。
【0049】
なお、上述の第二実施形態において、周壁部24は、その全部が軟質性材料で形成されることにより軟質性を有するが、その一部のみが軟質性材料で形成されることにより軟質性を有していてもよい。
【0050】
また、上述の第二実施形態において、受熱部20が周壁部24と異なる材料で形成されることに加えて、放熱部22(
図1参照)も、周壁部24とは異なる材料で形成されていてもよい。
【0051】
[第三実施形態]
次に、本願の開示する技術の第三実施形態を説明する。
【0052】
図4は、本願の開示する技術の第三実施形態に係る配管16を示す図である。
図4では、配管16が横断面図で示されている。
図4(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図4(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0053】
第三実施形態では、第一実施形態(
図1、
図2参照)に対し、配管16の構成が次のように変更されている。すなわち、配管16の周壁部24は、複数のパネル32と、複数のパネル32を連結する複数のヒンジ部34とを有する。周壁部24は、複数のパネル32と複数のヒンジ部34とを有することにより環状(筒状)に形成されている。
【0054】
パネル32は、硬質体で構成されていてもよく、軟質体で構成されていてもよい。また、パネル32は、伸縮性を有していてもよい。ヒンジ部34は、隣り合うパネル32を屈曲可能に連結している。複数のヒンジ部34は、複数のパネル32とは別の部材で構成されていてもよく、また、複数のパネル32と一体に形成されていてもよい。複数のヒンジ部34は、例えば、複数のパネル32の板厚よりも薄い薄肉部で形成される。
【0055】
周壁部24は、複数のパネル32と、複数のパネル32を連結する複数のヒンジ部34とを有することにより、柔軟性を有する。この周壁部24は、柔軟性を有することにより熱膨張とは異なる変形態様で径方向に変形可能である。つまり、周壁部24は、柔軟性を有することによる変形を伴って径方向に変形可能である。配管16は、収縮した状態から周壁部24の径方向への膨張変形を伴って膨張し、膨張した状態から周壁部24の径方向への収縮変形を伴って収縮する。
【0056】
この第三実施形態において、周壁部24の径方向への変形を確保するために、例えば、周壁部24と受熱部20及び放熱部22(
図1参照)との接続部、又は、周壁部24に接続される受熱部20及び放熱部22(
図1参照)は、軟質性又は伸縮性を有していてもよい。
【0057】
この第三実施形態では、周壁部24が、柔軟性を有することにより径方向に変形可能である。したがって、周壁部24が径方向に膨張変形した状態では、第一実施形態(
図1参照)と同様に、蒸気28が通過する流路が拡大するので、低い流体抵抗で蒸気28を受熱部20から放熱部22に移動させることができる。これにより、熱輸送効率を向上させることができるので、発熱体12に対する冷却性を向上させることができる。
【0058】
また、第三実施形態では、周壁部24が、複数のパネル32と、複数のパネル32を連結する複数のヒンジ部34とを有することにより、柔軟性を有しており、これにより、配管16が膨張及び収縮可能な構成となっている。したがって、配管16が簡素な構成であるので、コストアップを防止できる。
【0059】
なお、
図5は、
図4に示される配管16の変形例を示す図である。
図5(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図5(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
図5(A)に示されるように、配管16は、ロール状に巻かれるようにして収縮してもよい。また、
図5に示されるように、複数のパネル32の数及び複数のヒンジ部34の数は、配管16が所望の形態で収縮するように適宜変更されてもよい。
【0060】
また、上述の第三実施形態において、周壁部24は、その全部が複数のパネル32及び複数のヒンジ部34で形成されることにより柔軟性を有するが、その一部のみが複数のパネル32及び複数のヒンジ部34で形成されることにより柔軟性を有していてもよい。
【0061】
また、上述の第三実施形態では、複数のパネル32が平板状に形成されることにより、配管16が膨張した状態では周壁部24の形状が多角筒状になるが、配管16が膨張した状態での周壁部24の形状が円筒状になるように、複数のパネル32が湾曲して形成されていてもよい。
【0062】
[第四実施形態]
次に、本願の開示する技術の第四実施形態を説明する。
【0063】
図6は、本願の開示する技術の第四実施形態に係る配管16を示す図である。
図6では、配管16が横断面図で示されている。
図6(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図6(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0064】
第四実施形態では、第一実施形態(
図1、
図2参照)に対し、配管16の構成が次のように変更されている。すなわち、配管16の周壁部24は、伸縮性材料で形成されることにより、伸縮性を有する。周壁部24は、伸縮性材料として、例えば、合成ゴムで形成される。周壁部24は、伸縮性を有することにより熱膨張とは異なる変形態様で径方向に変形可能である。つまり、周壁部24は、伸縮性を有することによる変形(伸縮変形)を伴って径方向に変形可能である。配管16は、収縮した状態から周壁部24の径方向への膨張変形を伴って膨張し、膨張した状態から周壁部24の径方向への収縮変形を伴って収縮する。
【0065】
この第四実施形態において、受熱部20及び放熱部22(
図1参照)は、伸縮性材料により周壁部24と一体に形成されていてもよく、また、周壁部24とは異なる材料で形成されていてもよい。
【0066】
この第四実施形態では、周壁部24が、伸縮性を有することにより径方向に変形可能である。したがって、周壁部24が径方向に膨張変形した状態では、第一実施形態(
図1参照)と同様に、蒸気28が通過する流路が拡大するので、低い流体抵抗で蒸気28を受熱部20から放熱部22に移動させることができる。これにより、熱輸送効率を向上させることができるので、発熱体12に対する冷却性を向上させることができる。
【0067】
また、第四実施形態では、周壁部24が、伸縮性材料で形成されることにより、伸縮性を有しており、これにより、配管16が膨張及び収縮可能な構成となっている。したがって、配管16が簡素な構成であるので、コストアップを防止できる。
【0068】
なお、上述の第四実施形態において、周壁部24は、その全部が伸縮性材料で形成されることにより伸縮性を有するが、その一部のみが伸縮性材料で形成されることにより伸縮性を有していてもよい。
【0069】
[第五実施形態]
次に、本願の開示する技術の第五実施形態を説明する。
【0070】
図7は、本願の開示する技術の第五実施形態に係る熱輸送装置10を示す図である。
図7では、熱輸送装置10のうち受熱部20側の半分の構成が正面断面図で示されている。
図7(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図7(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0071】
第五実施形態では、第二実施形態(
図3参照)に対し、熱輸送装置10の構成が次のように変更されている。すなわち、膨張手段26は、作動液18を貯留するタンク36と、タンク36と配管16とを連結するパイプ38と、タンク36と配管16との間で作動液18を出し入れする搬送装置40と、搬送装置40を制御する制御部42とを備える。
【0072】
搬送装置40は、タンク36から配管16に作動液18を搬送可能であることに加えて、配管16からタンク36に作動液18を搬送可能な構成である。これにより、膨張手段26は、配管16を収縮した状態から膨張させる機能に加えて、配管16を膨張した状態から収縮させる機能を有する。
【0073】
搬送装置40は、具体的には、パイプ38に設けられている。この搬送装置40は、一例として、ポンプ44とバルブ46を有する。ポンプ44は、双方向ポンプであり、作動液18をタンク36から配管16に搬送するように作動する状態と、作動液18を配管16からタンク36に搬送するように作動する状態に切り替えることが可能である。バルブ46は、パイプ38を流れる作動液18の流量を調整したり、パイプ38の内部流路を開閉したりするように作動する。
【0074】
制御部42は、プロセッサ及びメモリ等を有するコンピュータによって構成されており、搬送装置40と電気的に接続されている。この制御部42は、搬送装置40を制御する機能を有する。
【0075】
そして、この第五実施形態に係る熱輸送装置10では、
図7(A)に示されるように、発熱体12の発熱が停止した状態では、タンク36に作動液18が貯留される。この状態では、配管16の内部の圧力が低下した状態になるので、配管16が収縮した状態となる。
【0076】
一方、
図7(B)に示されるように、発熱体12が発熱する場合には、搬送装置40によって作動液18がタンク36から配管16に搬送される。そして、配管16に作動液18が搬送された状態で発熱体12が発熱すると、作動液18が加熱されて蒸気28が発生し、配管16の内部の圧力が上昇する。これにより、周壁部24の径方向への膨張変形を伴って配管16が収縮した状態から膨張する。
【0077】
また、
図7(A)に示されるように、発熱体12の発熱が停止し、発熱体12の温度が低下すると、作動液18の温度低下に伴って配管16の内部の圧力が低下し、これにより、周壁部24の径方向への収縮変形を伴って配管16が膨張した状態から収縮する。このとき、搬送装置40によって作動液18が配管16からタンク36に搬送されると、タンク36に作動液18が貯留される。
【0078】
このように、第五実施形態に係る熱輸送装置10では、搬送装置40により、タンク36と配管16との間で作動液18を出し入れすることができる。
【0079】
なお、上述の第五実施形態において、制御部42は、発熱体12が発熱しているときに、配管16に供給される作動液18の量が発熱体12の温度に応じて適量に調整されるように搬送装置40を制御してもよい。これにより、例えば、作動液18の量が多過ぎることにより作動液18の温度が上がらずに蒸気28が発生しにくくなることを抑制できるので、発熱体12の冷却効率が低下することを防止できる。
【0080】
また、制御部42は、発熱体12が発熱しているときに、配管16の内部の作動液18の量が調整されるように、種々の条件に応じて搬送装置40を制御してもよい。そして、これにより、配管16の径を変化させて配管16の内部の流体抵抗を可変させ、熱輸送装置10の熱輸送能力を制御してもよい。
【0081】
[第六実施形態]
次に、本願の開示する技術の第六実施形態を説明する。
【0082】
図8は、本願の開示する技術の第六実施形態に係る熱輸送装置10を示す図である。
図8では、熱輸送装置10が正面断面図で示されている。
図8(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図8(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0083】
第六実施形態では、第一実施形態(
図1、
図2参照)に対し、熱輸送装置10の構成が次のように変更されている。すなわち、膨張手段26は、複数の付勢部材48、50、52を備える。複数の付勢部材48、50、52は、配管16が膨張する方向に周壁部24を付勢する構成であり、例えば、形状記憶合金又は弾性部材で形成される。複数の付勢部材48、50、52が形状記憶合金で形成される場合、形状記憶合金は、例えば、温度や磁場の変化で変形する構成とされる。
【0084】
このように、第六実施形態に係る熱輸送装置10では、複数の付勢部材48、50、52によって周壁部24を膨張変形させることができる。これにより、蒸気28が通過する流路を強制的に拡大することができる。
【0085】
なお、上述の第六実施形態において、複数の付勢部材48、50、52は、周壁部24に取り付けられてもよく、また、周壁部24の一部を構成していてもよい。また、
図8に示される例では、一例として、複数の付勢部材48、50、52が周壁部24の軸方向に並んで配置されているが、複数の付勢部材48、50、52は、どのように配置されてもよい。複数の付勢部材48、50、52の数は、いくつでもよいし、膨張手段26は、一つの付勢部材のみを有していてもよい。
【0086】
また、例えば、複数の付勢部材48、50、52が互いに異なる温度や磁場の変化で変形する形状記憶合金で形成される場合に、複数の付勢部材48、50、52のうち一部の付勢部材は、配管16が膨張する方向に周壁部24を付勢する構成であり、残りの付勢部材は、配管16が収縮する方向に周壁部24を付勢する構成でもよい。このように、膨張手段26に、配管16が収縮する方向に周壁部24を付勢する付勢部材が含まれると、この膨張手段26に配管16を膨張した状態から収縮させる機能を付加することができる。
【0087】
上述のように、配管16が膨張する方向に周壁部24を付勢する付勢部材と、配管16が収縮する方向に周壁部24を付勢する付勢部材が、複数の付勢部材48、50、52に含まれる場合、配管16が膨張する方向に周壁部24を付勢する付勢部材は、「第一付勢部材」の一例に相当し、配管16が収縮する方向に周壁部24を付勢する付勢部材は、「第二付勢部材」の一例に相当する。
【0088】
また、上述の第六実施形態では、複数の付勢部材48、50、52によって配管16の径を変化させて配管16の内部の流体抵抗を可変させ、熱輸送装置10の熱輸送能力を制御してもよい。
【0089】
[第七実施形態]
次に、本願の開示する技術の第七実施形態を説明する。
【0090】
図9は、本願の開示する技術の第七実施形態に係る熱輸送装置10を示す図である。
図9では、熱輸送装置10が正面図で示されている。
図9(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図9(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0091】
第七実施形態では、第一実施形態(
図1、
図2参照)に対し、熱輸送装置10の構成が次のように変更されている。すなわち、膨張手段26は、周壁部24の外周面に設けられた複数の滑車54と、複数の滑車54に掛け回されることにより周壁部24の外周面に張り巡らされたワイヤ56と、ワイヤ56を巻き取る巻取装置58と、巻取装置58を制御する制御部60とを備える。
【0092】
制御部60は、プロセッサ及びメモリ等を有するコンピュータによって構成されており、巻取装置58と電気的に接続されている。この制御部60は、巻取装置58を制御する機能を有する。
【0093】
この第七実施形態では、ワイヤ56を緩めた状態で発熱体12が発熱すると、配管16の内部の圧力が上昇することにより、配管16が収縮した状態から膨張する。一方、巻取装置58によってワイヤ56が巻き取られると、配管16が収縮する。このように、膨張手段26は、配管16を収縮した状態から膨張させる機能に加えて、配管16を収縮させる機能を有する。
【0094】
この第七実施形態では、巻取装置58によってワイヤ56を巻き取ることにより、配管16を収縮させることができる。これにより、配管16をより小さく収縮することができる。
【0095】
なお、制御部60は、発熱体12が発熱しているときに、配管16の径が調整されるように、種々の条件に応じて巻取装置58を制御してもよい。そして、これにより、配管16の径を変化させて配管16の内部の流体抵抗を可変させ、熱輸送装置10の熱輸送能力を制御してもよい。
【0096】
[第八実施形態]
次に、本願の開示する技術の第八実施形態を説明する。
【0097】
図10は、本願の開示する技術の第八実施形態に係る熱輸送装置10を示す図である。
図10では、熱輸送装置10が正面断面図で示されている。
図10(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図10(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0098】
第八実施形態では、第一実施形態(
図1、
図2参照)に対し、熱輸送装置10の構成が次のように変更されている。すなわち、膨張手段26は、アクチュエータ62と、制御部64とを備える。
【0099】
アクチュエータ62は、例えば、モータアクチュエータ等であり、可動部66を有する。可動部66は、周壁部24に接続されている。このアクチュエータ62は、可動部66を移動させることにより、配管16を収縮した状態から膨張させると共に、配管16を膨張した状態から収縮させることができる構成である。
【0100】
制御部64は、プロセッサ及びメモリ等を有するコンピュータによって構成されており、アクチュエータ62と電気的に接続されている。この制御部64は、アクチュエータ62を制御する機能を有する。
【0101】
このように、膨張手段26は、アクチュエータ62及び制御部64を有することにより、配管16を収縮した状態から膨張させる機能に加えて、周壁部24の変形を伴って配管16を膨張した状態から収縮させる機能を有する。
【0102】
この第六実施形態では、アクチュエータ62の駆動により、任意のタイミングで、配管16を収縮した状態から膨張させることができると共に、配管16を膨張した状態から収縮させることができる。
【0103】
なお、制御部64は、発熱体12が発熱しているときに、配管16の径が調整されるように、種々の条件に応じてアクチュエータ62を制御してもよい。そして、これにより、配管16の径を変化させて配管16の内部の流体抵抗を可変させ、熱輸送装置10の熱輸送能力を制御してもよい。
【0104】
また、上述の第一実施形態から第八実施形態における膨張手段26の構成のうち組み合わせ可能な構成は、適宜組み合わされて実施されてもよい。
【0105】
[第九実施形態]
次に、本願の開示する技術の第九実施形態を説明する。
【0106】
図11は、本願の開示する技術の第九実施形態に係る配管16を示す図である。
図11では、配管16が横断面図で示されている。
図11(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図11(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0107】
第九実施形態では、第一実施形態(
図1、
図2参照)に対し、配管16の構成が次のように変更されている。すなわち、配管16の周壁部24の内周面には、「複数の毛細管力発生部」の一例として、複数のウィック68が設けられている。この複数のウィック68は、周壁部24の軸方向に延びている。複数のウィック68は、好ましくは、受熱部20から放熱部22(
図1参照)に亘って設けられる。
【0108】
この複数のウィック68には、例えば、親水性多孔質ポリマーが用いられる。この複数のウィック68は、周壁部24の周方向に互いに間隔を空けて並んでいる。複数のウィック68は、同一の形状でも、異なる形状でもどちらでもよい。
【0109】
この第九実施形態では、周壁部24の内周面に、周壁部24の軸方向に延びる複数のウィック68が設けられているので、この複数のウィック68が発生する毛細管力により、放熱部22で凝縮された液滴30(
図1参照)を受熱部20に搬送することができる。これにより、熱輸送効率を高めることができる。
【0110】
また、複数のウィック68は、周壁部24の周方向に互いに間隔を空けて並んでいるので、この複数のウィック68の間の隙間において周壁部24を屈曲させることができる。これにより、周壁部24の収縮が阻害されることを抑制できる。
【0111】
なお、複数のウィック68は、周壁部24の変形を阻害しないように、軟質性材料で形成されてもよい。
【0112】
また、周壁部24の内周面には、周壁部24の周方向に互いに間隔を空けて複数のウィック68が設けられるが、周壁部24の内周面に環状のウィック68が設けられてもよい。この場合には、環状のウィック68が、周壁部24の変形を阻害しないように、軟質性材料で形成されることが望ましい。
【0113】
[第十実施形態]
次に、本願の開示する技術の第十実施形態を説明する。
【0114】
図12は、本願の開示する技術の第十実施形態に係る配管16を示す図である。
図12では、配管16が横断面図で示されている。
図12(A)には、配管16が収縮した状態が示されており、
図12(B)には、配管16が膨張した状態が示されている。
【0115】
第十実施形態では、第九実施形態(
図11参照)に対し、配管16の構成が次のように変更されている。すなわち、配管16の周壁部24の内周面には、「複数の毛細管力発生部」の一例として、複数の細溝70が設けられている。この複数の細溝70は、周壁部24の軸方向に延びている。複数の細溝70は、好ましくは、受熱部20から放熱部22(
図1参照)に亘って設けられる。
【0116】
この複数の細溝70は、周壁部24の周方向に互いに間隔を空けて並んでいる。複数の細溝70は、同一の形状でも、異なる形状でもどちらでもよい。また、複数の細溝70は、等間隔で並んでいてもよく、不等間隔で並んでいてもよい。
【0117】
この第十実施形態では、周壁部24の内周面に、周壁部24の軸方向に延びる複数の細溝70が設けられているので、この複数の細溝70が発生する毛細管力により、放熱部22で凝縮された液滴30(
図1参照)を受熱部20に搬送することができる。これにより、熱輸送効率を高めることができる。
【0118】
また、複数の細溝70は、周壁部24の周方向に互いに間隔を空けて並んでいるので、この複数の細溝70の間の隙間において周壁部24を屈曲させることができる。これにより、周壁部24の収縮が阻害されることを抑制できる。
【0119】
なお、上述の第九実施形態(
図11参照)と第十実施形態とが組み合わされることにより、配管16の周壁部24の内周面には、複数のウィック68及び複数の細溝70が設けられていてもよい。
【0120】
また、上記第一乃至第十実施形態のうち、組み合わせ可能な実施形態は、適宜組み合わされてもよい。
【0121】
また、上記第一乃至第十実施形態において、配管16の膨張又は収縮は、一度しか行われなくてもよく、また、配管16の膨張及び収縮は、繰り返し行われてもよい。
【0122】
また、上記第一乃至第十実施形態において、周壁部24は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有することにより、径方向に変形するが、例えば冷却体14が周壁部24の軸方向に移動可能である場合には、周壁部24が軸方向に変形してもよく、また、周壁部24が径方向及び軸方向の両方に変形してもよい。
【0123】
以上、本願の開示する技術の第一乃至第十実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0124】
なお、上述の本願の開示する技術の第一乃至第十実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0125】
(付記1)
発熱体に接続される受熱部と、冷却体に接続される放熱部と、前記受熱部及び前記放熱部を繋ぐ周壁部とを有する配管と、
前記配管の内部に封入され、相変化を伴って前記受熱部から前記放熱部へ熱を輸送する作動液とを備え、
前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有し、
前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、収縮した状態から膨張する、
熱輸送装置。
(付記2)
前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有することにより熱膨張とは異なる変形態様で径方向に変形可能である、
付記1に記載の熱輸送装置。
(付記3)
前記周壁部は、軟質性、柔軟性又は伸縮性を有することにより径方向に変形可能である、
付記1又は付記2に記載の熱輸送装置。
(付記4)
前記配管は、前記周壁部の変形を伴って、膨張した状態から収縮する、
付記1~付記3のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記5)
前記配管が膨張した状態での前記周壁部の形状は、円筒状である、
付記1~付記4のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記6)
前記周壁部の全部が軟質性、柔軟性又は伸縮性を有する、
付記1~付記5のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記7)
前記周壁部の一部のみが軟質性、柔軟性又は伸縮性を有する、
付記1~付記5のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記8)
前記配管は、収縮時に対して容積が2倍以上に膨張する、
付記1~付記7のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記9)
前記受熱部が前記放熱部に対して鉛直方向下側に位置する、
付記1~付記8のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記10)
前記受熱部は、容器状に形成されている、
付記1~付記9のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記11)
前記周壁部は、少なくとも一部が軟質性材料で形成されることにより、軟質性を有する、
付記1~付記10のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記12)
前記周壁部は、複数のパネルと、前記複数のパネルを連結する複数のヒンジ部とを有することにより、柔軟性を有する、
付記1~付記10のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記13)
前記周壁部は、少なくとも一部が伸縮性材料で形成されることにより、伸縮性を有する、
付記1~付記10のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記14)
前記周壁部の変形を伴って前記配管を収縮した状態から膨張させる膨張手段を備える、
付記1~付記13のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記15)
前記膨張手段は、前記周壁部の変形を伴って前記配管を膨張した状態から収縮させる機能を有する、
付記14に記載の熱輸送装置。
(付記16)
前記膨張手段は、密閉された前記配管に前記作動液が封入された構造を含む、
付記14又は付記15に記載の熱輸送装置。
(付記17)
前記膨張手段は、
前記作動液を貯留するタンクと、
前記タンクと前記配管との間で前記作動液を出し入れする搬送装置と、
を含む、
付記14~付記16のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記18)
前記膨張手段は、前記搬送装置を制御する制御部を含む、
付記17に記載の熱輸送装置。
(付記19)
前記膨張手段は、前記配管が膨張する方向に前記周壁部を付勢する第一付勢部材を含む、
付記14~付記18のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記20)
前記第一付勢部材は、形状記憶合金である、
付記19に記載の熱輸送装置。
(付記21)
前記第一付勢部材は、弾性部材である、
付記19に記載の熱輸送装置。
(付記22)
前記膨張手段は、前記配管が収縮する方向に前記周壁部を付勢する第二付勢部材を含む、
付記14~付記21のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記23)
前記第二付勢部材は、形状記憶合金である、
付記22に記載の熱輸送装置。
(付記24)
前記第二付勢部材は、弾性部材である、
付記22に記載の熱輸送装置。
(付記25)
前記膨張手段は、
前記周壁部に張り巡らされたワイヤと、
前記ワイヤを巻き取る巻取装置と、
を含む
付記14~付記24のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記26)
前記膨張手段は、前記巻取装置を制御する制御部を含む、
付記25に記載の熱輸送装置。
(付記27)
前記膨張手段は、
前記配管を膨張させるアクチュエータを含む
付記14~付記26のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記28)
前記膨張手段は、前記アクチュエータを制御する制御部を含む、
付記27に記載の熱輸送装置。
(付記29)
前記周壁部の内周面には、前記周壁部の軸方向に延びる毛細管力発生部が設けられている、
付記14~付記28のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記30)
複数の前記毛細管力発生部を備え、
複数の前記毛細管力発生部は、前記周壁部の周方向に互いに間隔を空けて並んでいる、
付記29に記載の熱輸送装置。
(付記31)
前記毛細管力発生部は、ウィックを含む、
付記29又は付記30に記載の熱輸送装置。
(付記32)
前記毛細管力発生部は、細溝を含む、
付記29~付記31のいずれか一項に記載の熱輸送装置。
(付記33)
付記1~付記32のいずれか一項に記載の熱輸送装置により、前記発熱体から前記冷却体へ熱を輸送することを含む熱輸送方法。
【符号の説明】
【0126】
10…熱輸送装置、12…発熱体、14…冷却体、16…配管、18…作動液、20…受熱部、22…放熱部、24…周壁部、26…膨張手段、28…蒸気、30…液滴、32…パネル、34…ヒンジ部、36…タンク、38…パイプ、40…搬送装置、42…制御部、44…ポンプ、46…バルブ、48…付勢部材、54…滑車、56…ワイヤ、58…巻取装置、60…制御部、62…アクチュエータ、64…制御部、66…可動部、68…ウィック、70…細溝