(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】取付金具および電源装置
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20240326BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20240326BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
F16B5/06 A
(21)【出願番号】P 2020162765
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】小山 博康
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和也
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-8171(JP,A)
【文献】特開2014-135165(JP,A)
【文献】登録実用新案第3078038(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/54477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00
H02G 1/02
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置取付金具と、支柱取付金具とを備え、
前記電源装置取付金具は、電源装置を上から支持する複数のフランジ部と、それらフランジ部の間に設けられて支柱と交差する第一方向に延びる接続部とを有し、
前記接続部は、前記フランジ部から立ち上がるとともに前記第一方向に延びる縦壁部を有し、
前記支柱取付金具は、前記支柱に当接する当接壁と、前記当接壁から前記第一方向に延びて前記縦壁部に重ねられ固定される固定壁とを有する、取付金具。
【請求項2】
前記縦壁部は、互いに対向する一対の縦壁部であり、
前記固定壁は、互いに対向し、前記縦壁部の内面または外面に重ねられる一対の固定壁である、請求項1に記載の取付金具。
【請求項3】
前記接続部は、前記一対の縦壁部をつなぐ天壁部を有し、
前記一対の固定壁は前記天壁部の下面に当接する、請求項2に記載の取付金具。
【請求項4】
前記接続部は、前記支柱に近接する基端と、前記支柱から離れる先端とを有し、
前記固定壁は前記接続部の前記基端に近い位置に固定される、請求項1~請求項3のいずれかに記載の取付金具。
【請求項5】
前記複数のフランジ部に前記電源装置を支持させた状態で、前記接続部の前記先端から、前記縦壁部と前記固定壁との固定箇所にアクセスできるようになっている請求項4に記載の取付金具。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の取付金具によって支柱に取り付けられる電源装置であって、
上面に、前記フランジ部により支持される被支持部が設けられた電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等の支柱に重量の大きい無停電電源装置(UPS)等の電源装置を取り付けるための取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、締付バンドが当接するバンド受け部材の曲がり及び重量物のズリ下がりを防止する、重量物を支柱に取り付けるための重量物取付金具を開示している(特許文献1、要約書参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UPS等の重量物を、横からではなく、上から支持して支柱に取り付ける場合には、特許文献1の取付金具は適用できない。
【0005】
本発明は、電源装置を上から支持して支柱に取り付けるための取付金具およびその取付金具によって支柱に取り付けられる電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る取付金具は、
電源装置取付金具と、支柱取付金具とを備え、
前記電源装置取付金具は、電源装置を上から支持する複数のフランジ部と、それらフランジ部の間に設けられて支柱と交差する第一方向に延びる接続部とを有し、
前記接続部は、前記フランジ部から立ち上がるとともに前記第一方向に延びる縦壁部を有し、
前記支柱取付金具は、前記支柱に当接する当接壁と、前記当接壁から前記第一方向に延びて前記縦壁部に重ねられ固定される固定壁とを有する。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、電源装置取付金具が有する縦壁部により、フランジ部に作用する下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が向上し、電源装置を上から安定的に支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】取付金具により支柱に取り付けられた電源装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
取付金具は、電源装置取付金具と、支柱取付金具とを備え、前記電源装置取付金具は、電源装置を上から支持する複数のフランジ部と、それらフランジ部の間に設けられて支柱と交差する第一方向に延びる接続部とを有し、前記接続部は、前記フランジ部から立ち上がるとともに前記第一方向に延びる縦壁部を有し、前記支柱取付金具は、前記支柱に当接する当接壁と、前記当接壁から前記第一方向に延びて前記縦壁部に重ねられ固定される固定壁とを有する。
【0010】
ここで、電源装置は、UPSであってもよいし、蓄電池箱(蓄電装置)、パワーコンディショナ、または整流器であってもよい。電源装置は、屋外設置されるものであってもよいが、それに限定はされない。
【0011】
上記構成においては、電源装置取付金具が有する縦壁部により、フランジ部に作用する下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が向上し、電源装置を上から安定的に支持できる。
屋外設置される電源装置は、その下側に水抜き孔を有することがある。上記構成によれば、電源装置を上から支持するため、電源装置からの水抜きを取付金具が阻害することがない。
【0012】
前記縦壁部は、互いに対向する一対の縦壁部であってもよく、前記固定壁は、互いに対向し、前記縦壁部の内面または外面に重ねられる一対の固定壁であってもよい。
【0013】
上記構成では、下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が高い、複数の縦壁部およびそれらに重ねられ固定された複数の固定壁によって、電源装置を安定的に支持できる。また、複数の縦壁部および固定壁によって、電源装置取付金具と支柱取付金具とを強固に固定できる。
縦壁部と固定壁との固定は、それらとは別体の固定具(例えば、ボルトおよびナット)により行われてもよいが、それに限定はされず、溶接により行われてもよい。
【0014】
前記接続部は、前記一対の縦壁部をつなぐ天壁部を有し、前記一対の固定壁は前記天壁部の下面に当接してもよい。
【0015】
上記構成では、一対の固定壁に天壁部の下面を支持させることで、下方向への荷重を分散して受けて、縦壁部と固定壁との固定箇所(例えば、縦壁部と固定壁とを貫通するボルト)への荷重の集中を抑制できる。
【0016】
前記接続部は、前記支柱に近接する基端と、前記支柱から離れる先端とを有し、前記固定壁は前記接続部の前記基端に近い位置に固定されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、固定壁の第一方向の寸法を小さくし、支柱取付金具を小型・軽量化できる。固定壁の第一方向の寸法が小さくても、電源装置取付金具は縦壁部の存在により下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が高いため、電源装置を安定的に支持できる。
【0018】
取付金具は、前記複数のフランジ部に前記電源装置を支持させた状態で、前記接続部の前記先端から、前記縦壁部と前記固定壁との固定箇所にアクセスできるようになっていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、電源装置取付金具を電源装置に取り付けた後に、電源装置取付金具を支柱取付金具に固定でき、電源装置の支柱への取付作業が行いやすい。
【0020】
上述の取付金具によって支柱に取り付けられる電源装置は、上面に、前記フランジ部により支持される被支持部が設けられている。
被支持部は、板の厚みを増すなどして、その周囲の箇所より剛性(機械的強度)が高められていることが好ましい。
電源装置は、その筐体の下側に水抜き孔を有してもよいが、その形態に限定はされない。
【0021】
上記構成により、電源装置はその被支持部が取付金具のフランジ部に支持されて、支柱に安定的に取り付けられる。
【0022】
以下、図面を参照しながら取付金具の実施形態を説明する。
【0023】
図1に示すように、取付金具10は、電柱等の支柱110に、小型UPS等の電源装置100を取り付けるためのものである。取付金具10は、電源装置取付金具20と、電源装置取付金具20の内部に配置された、支柱取付金具30(
図2参照)とを有する。
【0024】
本実施形態では、支柱取付金具30が、
図1に示す締付バンド50により支柱110に固定されている。締付バンド50は、支柱110を外周側から締め付けている。締付バンド50の形態は、図示されるものに限定はされない。
【0025】
図1に示すように、電源装置取付金具20は、電源装置100を上から支持する複数のフランジ部28を有する。それらフランジ部28の間に、支柱110が延びる方向(
図1におけるZ軸方向)に直交する第一方向(
図1におけるY軸方向)に、支柱110から離れるように延びた接続部22が設けられている。
【0026】
本実施形態では、一対のフランジ部28,28が
図1におけるX軸方向に離間して配置されている。それらフランジ部28,28の間に、接続部22が一体的に設けられている。接続部22は、必ずしもY軸方向と平行でなくてもよく、Y軸方向に対してやや傾いた方向に延びていてもよいし、やや湾曲しながらY軸方向に延びていてもよい。言い換えれば、接続部22は、支柱110と交差する方向に延びている。
【0027】
各フランジ部28は、取付ボルトを挿入するための取付け孔を有している。電源装置100の筐体の上面には、フランジ部28により上から支持される被支持部(本実施形態では、レール状の被支持部)が設けられている。取付ボルトを、フランジ部28の取付け孔に挿入し、電源装置100の被支持部に締結することで、電源装置取付金具20と電源装置100とが固定される。
【0028】
本実施形態では、各フランジ28におけるY軸方向の一端(支柱110に近い基端)と他端(支柱110から離れた先端)の2箇所が、電源装置100の被支持部に固定されている。固定箇所の数はこれに限定はされず、3以上であってもよいが、少ないほうが電源装置100の支柱110への取付作業が簡略化される。
【0029】
電源装置100は、その筐体の、支柱110に対向する面(背面)が、支柱110に近接しており、支柱110に部分的または全面的に、直接的または間接的に接していてもよい。こうすることで、風等によって電源装置100がY軸方向に、支柱110に向かって揺れ動くことを抑制できる。
【0030】
本実施形態における電源装置100は、支柱110に対向する面(背面)とは反対側の面(前面)が、前側に開いて、作業員が電源装置100の内部にアクセスできるようになっている。電源装置100の筐体の側面には、前面が意図せず開くことのないよう、留め具104が設けられている。また、筐体の側面には、作業員が電源装置100を持ち運ぶための持ち手102が設けられている。
【0031】
筐体の前面を開閉する際、筐体の上面に取り付けられている電源装置取付金具20は、その開閉動作の妨げとならない。
筐体の側面に設けられた留め具104および持ち手102は、筐体の上面に取り付けられている電源装置取付金具20と干渉しない。
【0032】
図2に示すように、電源装置取付金具20の接続部22は、各フランジ部28のX軸方向における端部からZ軸方向に立ち上がるとともにY軸方向に延びた、一対の縦壁部22a,22aを有する。互いに対向する一対の縦壁部22a,22aの上端は、天壁部22bによってつながれている。各縦壁部22aにおける、他の縦壁部22aと対向する面を「内面」と称し、他の縦壁部22aと対向する面とは反対側の面を「外面」と称する。
【0033】
電源装置取付金具20は(フランジ部28、縦壁部22a、および天壁部22bは)、プレス加工や曲げ加工などの成形手法によって一枚の金属板から形成されることが好ましい。フランジ部28と縦壁部22aの間のコーナー部(微視的に見れば湾曲部)の剛性は、加工硬化により高くなる。これにより、電源装置取付金具20における、フランジ部28に作用する下方向への荷重や曲げモーメントに対する耐久性が向上する。
【0034】
本実施形態では、縦壁部22aと天壁部22bの間のコーナー部(微視的に見れば湾曲部)の剛性も、加工硬化により高くなっている。
【0035】
図1に示すように、電源装置取付金具20の接続部22は、支柱110に近接する基端と、基端と反対側の(支柱110から離れた)先端とを有し、その基端に近い位置で、支柱取付金具30に固定される。取付部20は、片持ち梁のような形態で支柱110に固定されており、その先端に向かうほど、曲げモーメントの影響を受ける。
【0036】
Z軸方向に立ち上げられて、Z軸方向の寸法が大きい縦壁部22aは、元来、下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が高い。それに加え、加工硬化により剛性が高くなったコーナー部がY軸方向に沿って延びているため、電源装置取付金具20は下方向への荷重や曲げモーメントに対する耐久性が高い。
【0037】
図2に示すように、接続部20の基端付近において、それぞれの縦壁部22aに固定孔23が設けられている。本実施形態では、Z軸方向に間隔を隔てて、2つの固定孔23,23がそれぞれの縦壁部22aに設けられている。
【0038】
支柱取付金具30は、支柱110に当接する当接壁35と、当接壁35の両端に設けられた一対の固定壁31,31とを有する。固定壁31は、縦壁部22aと同等の高さ(Z軸方向寸法)を有してもよいし、縦壁部22aより高さが低くてもよい。本実施形態では、Z軸方向に間隔を隔てて、2つの固定孔33,33がそれぞれの固定壁31に設けられている。
【0039】
支柱取付金具30は、一対の固定壁31,31が、取付部22の中に挿入される。それぞれの固定壁31は、縦壁部22aの内面に重ねられ、固定壁31の固定孔33,33と縦壁部22aの固定孔23,23とを貫通する固定ボルト(合計4本の固定ボルト)により固定される。
荷重がそれら固定ボルトに集中することを避けるために(荷重を分散させるために)、一対の固定壁31,31はその上端が、天壁部22bの下面に当接することが好ましい。
角穴形状の固定孔23,33を示しているが、代替的に、丸穴形状であってもよい。固定孔23,33が角穴形状を有していれば、角根丸頭ボルトを用いることで、縦壁部22aと固定壁31との固定作業が行いやすい。
【0040】
当接壁35は、支柱110に対向する面が、鈍角を形成する2つの傾斜面であり、支柱110に対して2点で接するようになっている。このような当接壁35と、一対の固定壁31,31とを有する支柱取付金具30は、平面視においてM字形状を呈している。
【0041】
当接壁35と固定壁31,31の間には、鋭角のコーナー部が形成されている。それらコーナー部に、締付バンド50(
図1参照)を挿入する挿入孔37,37が設けられている。当接壁35には更に、その中央に中央孔39が設けられている。締付バンド50は、一方の挿入孔37から支柱取付金具30の内側(
図2における手前側)に挿入され、中央孔39をX軸方向に橋渡しするように延び、他方の挿入孔37から支柱取付金具30の外側(
図2における奥側)へと延びる。締付バンド50は、支柱取付金具30の当接壁35を、支柱110とともに締め付ける。
【0042】
取付金具10は、複数のフランジ部28,28に電源装置100を支持させた状態で、接続部22の先端から、縦壁部22aと固定壁31との固定箇所(固定ボルト)にアクセスできるようになっている。すなわち、一対の縦壁部22a,22aと、天壁部22bと、電源装置100の上面とにより区画された開口を通じて、縦壁部22aと固定壁31との固定箇所に作業員がアクセスできるようになっている。このため、電源装置取付金具20を電源装置100に取り付けた後に、電源装置取付金具20を支柱取付金具30に固定でき、電源装置100の支柱110への取付作業が行いやすい。
【0043】
上記実施形態によれば、電源装置取付金具20が有する縦壁部22a,22aの存在により、フランジ部28,28に作用する下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が向上し、電源装置100を上から安定的に支持できる。
【0044】
上記実施形態によれば、下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が高い、複数の縦壁部22a,22aおよびそれらに重ねられ固定された複数の固定壁31,31によって、電源装置100を安定的に支持できる。また、複数の縦壁部22a,22aおよび固定壁31,31によって、電源装置取付金具20と支柱取付金具30とを強固に固定できる。
【0045】
上記実施形態によれば、固定壁31,31の第一方向(Y軸方向)の寸法を小さくし、支柱取付金具30を小型・軽量化できる。支柱取付金具30が大型で重量物であると、支柱取付金具30自体が、ズリ下がりの要因となるが、本実施形態ではそのようなことが回避される。固定壁31,31の第一方向の寸法が小さくても、電源装置取付金具20は縦壁部22a,22aの存在により、また加工硬化により剛性が高まったコーナー部の存在により、下方向への荷重や曲げモーメントに対する剛性が高いため、電源装置100を安定的に支持できる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定はされず、適宜な変形が可能である。実施形態では、電源装置取付金具20が一対のフランジ部28,28を有していた。代替的に、フランジ部28の数は3個以上であってもよい。フランジ部28と縦壁部22aの板厚は、異なっていてもよい。
【0047】
実施形態では、電源装置取付金具20の縦壁部22aは、Z軸方向に平行に延びていた。代替的に、縦壁部22aは、Z軸方向に対してやや傾いた方向に延びていてもよいし、湾曲しながらZ軸方向に立ち上がっていてもよい。支柱取付金具30の固定壁31も、縦壁部22aにならう同様の形状であってもよい。
【0048】
実施形態では、一対の縦壁部22a,22aの内面に、一対の固定壁31,31を重ねて固定した。代替的に、一対の縦壁部22a,22aの外面に、一対の固定壁31,31を重ねて固定してもよいし、一方の縦壁部22aの内面に一方の固定壁31を重ね、他方の縦壁部22aの外面に他方の固定壁31を重ねて、それぞれ固定してもよい。
【0049】
実施形態では、接続部22が、一定の断面形状(コ字形状)のまま第一方向に延びていた。代替的に、接続部22は、異なる断面形状をつないだ形で第一方向に延びていてもよい。天壁部22bが、当接壁35と同様な2つの傾斜面を、第一方向において部分的に有してもよい。
【符号の説明】
【0050】
取付金具 10
電源装置取付金具 20
取付部 22
縦壁部 22a
フランジ部 28
支柱取付金具 30
固定壁 31
当接壁 35