(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20240326BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20240326BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01R13/533 D
H01R13/52 301H
H01R13/639 Z
(21)【出願番号】P 2020177725
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅和
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-221785(JP,A)
【文献】特開2017-135068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に接続される端子金具と、
前記端子金具を収容するハウジングと、
前記電線が液密に貫通するシール孔を有するシール部材と、
前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟んで保持する取付部材と、を備え、
前記ハウジングは、前記取付部材と係合する係合受部を有しており、
前記取付部材は、前記係合受部に係合される係合部を有しており、
前記係合部は、前記係合受部の前方への変位を規制する係合爪部を有しており、
前記取付部材は、前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟む後壁を有しており、
前記後壁は、前面に、前記シール部材の後方への変位を規制するシール規制面と、前記ハウジングの後方への変位を規制するハウジング規制面と、を有しており、
前記ハウジング規制面と前記ハウジングとの間には、第1隙間が形成され、
前記係合爪部と前記係合受部との間には、第2隙間が形成され、
前記取付部材は、
前記係合部が前記係合受部に係合された状態において、前記シール部材に接するとともに、前記ハウジングに対して移動可能に取り付けられ
た状態となる、コネクタ。
【請求項2】
電線に接続される端子金具と、
前記端子金具を収容するハウジングと、
前記電線が液密に貫通するシール孔を有するシール部材と、
前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟んで保持する取付部材と、を備え、
前記取付部材は、前記シール部材に接するとともに、前記ハウジングに対して移動可能に取り付けられ、
前記ハウジングは、係止部を有し、前記シール部材は、前記係止部に係止され、前記ハウジングからの前記シール部材の離脱を規制する係止受部を有している、コネクタ。
【請求項3】
電線に接続される端子金具と、
前記端子金具を収容するハウジングと、
前記電線が液密に貫通するシール孔を有するシール部材と、
前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟んで保持する取付部材と、を備え、
前記取付部材は、前記シール部材に接するとともに、前記ハウジングに対して移動可能に取り付けられ、
前記ハウジングは係合部を有し、前記取付部材は係合受部を有し、前記係合部と前記係合受部の少なくとも一方は、前記電線の振動時に撓み変形可能になっている、コネクタ。
【請求項4】
電線に接続される端子金具と、
前記端子金具を収容するハウジングと、
前記電線が液密に貫通するシール孔を有するシール部材と、
前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟んで保持する取付部材と、を備え、
前記取付部材は、前記シール部材に接するとともに、前記ハウジングに対して移動可能に取り付けられ、
前記取付部材は、前記ハウジングとの間に、前記シール部材を挟む後壁を有しており、
前記後壁は、前面に、前記シール部材の後方への変位を規制するシール規制面と、前記ハウジングの後方への変位を規制するハウジング規制面と、を有しており、
前記ハウジング規制面は、前記シール規制面よりも後方に配置されている、コネクタ。
【請求項5】
前記シール部材は、筒部を有し、前記シール孔は、前記筒部内に形成されており、前記取付部材は、前記筒部の外周面に接する貫通孔を有している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、外周の側面に、相手側コネクタを嵌合状態に係止するロックアームを有し、前記取付部材は、前記ハウジングの前記側面を覆う外壁を有し、前記外壁は、前記ロックアームを露出させる開口部と、前記開口部を挟んだ両側に配置されて前記ロックアームを両側から覆う保護壁と、を有している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、電線が貫通されるシール部材を備えたコネクタが開示されている。特許文献1のコネクタは、ハウジング(インナハウジング)、アウタハウジング、スペーサ、およびシール部材(防水ゴム栓)を備えている。ハウジングは、アウタハウジングの内部に配置され、アウタハウジングに係止される。スペーサは、ハウジングとアウタハウジングとの間に配置され、アウタハウジングに係止される。シール部材は、スペーサとアウタハウジングに挟まれて保持される。
【0003】
特許文献2のコネクタは、ハウジング、フード、およびシール部材(ゴム栓)を備える。シール部材は、ハウジングの後面に形成されたゴム栓収容室に嵌め込まれ、ハウジングに係止されるフードによって抜けが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-133367号公報
【文献】特開2002-305052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のコネクタでは、電線の振動がハウジングに伝達されないことが好ましい。しかし、特許文献1のコネクタでは、ハウジング(インナハウジング)およびスペーサがそれぞれアウタハウジングに対して相対変位しないように係止されている。このため、電線の振動が、シール部材を保持するスペーサおよびアウタハウジングを介して弱まることなくハウジングに伝達されてしまう。また、特許文献2のコネクタにおいても、ハウジングがフードに対して相対変位しないように係止されている。このため、電線の振動が、シール部材を介して弱まることなくハウジングに伝達されてしまう。
【0006】
そこで、本開示は、ハウジングに伝達される電線の振動を抑えることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、電線に接続される端子金具と、前記端子金具を収容するハウジングと、前記電線が液密に貫通するシール孔を有するシール部材と、前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟んで保持する取付部材と、を備え、前記取付部材は、前記シール部材に接するとともに、前記ハウジングに対して移動可能に取り付けられる、コネクタである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ハウジングに伝達される電線の振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1のコネクタおよび相手側コネクタの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の相手側コネクタに嵌合されたコネクタの斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の相手側コネクタに嵌合されたコネクタの側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の相手側コネクタに嵌合されたコネクタの底面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の相手側コネクタに嵌合されたコネクタの背面図である。
【
図8】
図8は、実施形態1のハウジングの背面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1のシール部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)電線に接続される端子金具と、前記端子金具を収容するハウジングと、前記電線が液密に貫通するシール孔を有するシール部材と、前記ハウジングとの間に前記シール部材を挟んで保持する取付部材と、を備え、前記取付部材は、前記シール部材に接するとともに、前記ハウジングに対して移動可能に取り付けられる。
【0011】
このコネクタでは、取付部材が、シール部材に接するため、シール部材を貫通する電線の振動がシール部材を介して取付部材に伝達される。しかし、取付部材はハウジングに対して移動可能であるため、取付部材に伝達された振動はハウジングに伝達されにくい。従って、電線の振動を取付部材に逃がすことができ、その結果、ハウジングに伝達される電線の振動を抑えることができる。
【0012】
(2)前記シール部材は、筒部を有し、前記シール孔は、前記筒部内に形成されており、前記取付部材は、前記筒部の外周面に接する貫通孔を有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、電線の振動力を、筒部を介して、取付部材に効率良く伝達することができる。このため、シール部材を介してハウジングに伝達される電線の振動が小さくなる。また、筒部を介して取付部材に伝達された振動は、上述したようにハウジングに伝達されにくい。よって、ハウジングに伝達される電線の振動を一層抑えることができる。
【0014】
(3)前記ハウジングは、外周の側面に、相手側コネクタを嵌合状態に係止するロックアームを有し、前記取付部材は、前記ハウジングの前記側面を覆う外壁を有し、前記外壁は、前記ロックアームを露出させる開口部と、前記開口部を挟んだ両側に配置されて前記ロックアームを両側から覆う保護壁と、を有していることが好ましい。
【0015】
このコネクタによれば、取付部材の保護壁によって、ロックアームが外部の異物と干渉しにくくなる。このため、例えば、ロックアームが不用意に解除されることを防止することができる。
【0016】
(4)前記ハウジングは、係止部を有し、前記シール部材は、前記係止部に係止され、前記ハウジングからの前記シール部材の離脱を規制する係止受部を有していることが好ましい。
【0017】
このコネクタによれば、取付部材がハウジングに対して移動するときに、シール部材とハウジングとの相対的な位置が変化するのを防止することができる。
【0018】
(5)前記ハウジングは係合部を有し、前記取付部材は係合受部を有し、前記係合部と前記係合受部の少なくとも一方は、前記電線の振動時に撓み変形可能になっていることが好ましい。
【0019】
このコネクタによれば、電線の振動時に、係合部と係合受部の少なくとも一方が撓み変形するため、係合部と係合受部との間で振動が伝達されにくくなる。従って、シール部材を介して取付部材に伝達された振動が、ハウジングに一層伝達されにくくなり、その結果、ハウジングに伝達される電線の振動を一層抑えることができる。
【0020】
(6)前記取付部材は、前記ハウジングとの間に、前記シール部材を挟む後壁を有しており、前記後壁は、前面に、前記シール部材の後方への変位を規制するシール規制面と、前記ハウジングの後方への変位を規制するハウジング規制面と、を有しており、前記ハウジング規制面は、前記シール規制面よりも後方に配置されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、例えば、電線の振動によって取付部材がハウジングに対して傾いた姿勢をとる場合に、ハウジング規制面がハウジングの後方への変位を規制することができるから、取付部材とハウジングがそれ以上に接近するのを抑えることができる。その結果、シール部材が過剰に圧縮されるのを抑えることができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<実施形態1>
実施形態1は、相手側コネクタ90に嵌合するコネクタ10を例示する(
図6参照)。相手側コネクタ90は、例えばエンジン等の機器に設けられる。なお、以下の説明では、コネクタ10が相手側コネクタ90と向き合う側を前側とし、その反対側を後側とする。上下方向については、
図3、
図5、
図6および
図8にあらわれる上下方向をそのまま上下方向とする。左右方向については、コネクタ10を前方から見たときの左右方向を左右方向とする。
【0024】
コネクタ10は、防水コネクタである。コネクタ10は、
図1に示すように、端子金具11、ハウジング12、シール部材13、取付部材14、シールリング15、およびフロント部材16を備えている。
【0025】
端子金具11は、導電性の金属板を曲げ加工等して形成される。端子金具11は、
図1および
図6に示すように、雌型であり、本体部20と、ワイヤバレル21と、インシュレーションバレル22と、を有している。本体部20は、前後方向に開放された筒状(詳細には角筒状)をなしている。本体部20は、コネクタ10が相手側コネクタ90と嵌合されると、相手側コネクタ90のタブ91に接続される。ワイヤバレル21は、本体部20の後方に配置される。ワイヤバレル21には、電線80から被覆81を除去した導体82が圧着される。インシュレーションバレル22は、ワイヤバレル21の後方に配置される。インシュレーションバレル22には、電線80が圧着される。これにより、端子金具11の後端側に、電線80が接続される。
【0026】
ハウジング12は、合成樹脂製である。ハウジング12は、
図1に示すように、ハウジング本体30と、ハウジング本体30の外周の側面(本実施形態1では上面)に設けられるロックアーム31と、を有している。ロックアーム31は、ハウジング本体30の上面から立ち上がる支持部32を有している。ロックアーム31は、支持部32の上端の左右両側に連なり前方および後方に延びる左右一対のアーム部33を有している。ロックアーム31は、支持部32の前方において、一対のアーム部33の下端側を互いに連結させるコネクタロック部34を有している。ロックアーム31は、支持部32の後方において、一対のアーム部33の上端側を互いに連結させる解除操作部35を有している。解除操作部35の上面は、後方に向けて高さ位置が高くなる段差状に形成されている。
【0027】
ハウジング本体30は、
図1に示すように、上下方向よりも左右方向に長い形状をなしている。ハウジング本体30は、
図6に示すように、前後方向に延びるキャビティ40を有している。キャビティ40は、
図8に示すように、左右方向に複数(本実施形態では5つ)並んで設けられている。
【0028】
ハウジング本体30は、
図6に示すように、キャビティ40の下側からキャビティ40内に突出するランス41を有している。ランス41は、先端側が撓み変形し得る。端子金具11は、ハウジング本体30の後方から挿入され、ランス41を撓ませながらキャビティ40内に配置され、弾性復帰したランス41によって後方への変位が規制される。
【0029】
ハウジング本体30は、
図6に示すように、キャビティ40の前側に、タブ挿入孔42を有している。タブ挿入孔42は、前後方向に開放されており、キャビティ40に連通する。相手側コネクタ90のタブ91は、タブ挿入孔42を介してキャビティ40内に挿入され、キャビティ40内に配置された端子金具11に接続される。
【0030】
ハウジング本体30は、
図6に示すように、ハウジング本体30の後面に開口する収容凹部43を有している。収容凹部43は、ハウジング本体30の後面を凹ませた形状をなしている。収容凹部43の内部空間は、各キャビティ40の後端部に連通している。収容凹部43内には、シール部材13が配置される。
【0031】
ハウジング本体30は、
図6および
図8に示すように、シール部材13に係止される係止部44を有している。係止部44は、収容凹部43の奥面から後方に突出した後方突出部45と、後方突出部45の後端側から下方に突出した係止爪部46と、を有している。後方突出部45の後端は、収容凹部43の後側の開口端よりも前方に配置されている。後方突出部45は、左右方向に延びている。係止爪部46の幅寸法は、後方突出部45の幅寸法よりも小さい。係止爪部46は、左右方向に間隔をあけて2つ設けられている。
【0032】
ハウジング12は、
図6及び
図7に示すように、取付部材14と係合する第1係合受部47および第2係合受部48を有している。第1係合受部47は、収容凹部43の下面から下方に突出した形態をなしている。第2係合受部48は、収容凹部43の左右両側面から左右方向外方に突出した形態をなしている。第1係合受部47および第2係合受部48の後面は、それぞれ後端に向けて突出寸法が小さくなるように傾斜している。第1係合受部47および第2係合受部48の前面は、それぞれ上下方向に沿って配置されている。
【0033】
ハウジング12は、
図1及び
図6に示すように、がた詰めリブ49を有している。がた詰めリブ49は、ハウジング本体30の上下に設けられている。上側のがた詰めリブ49は、ハウジング本体30の上端側において、上方に突出している。下側のがた詰めリブ49は、ハウジング本体30の下端側において、下方に突出している。
【0034】
シール部材13は、ゴム製であり、複数の電線80をシールする一括ゴム栓として構成されている。シール部材13は、
図6、
図7および
図9に示すように、複数の電線80が貫通されるシール本体50と、シール本体50の上部の後面から後方に突出して各電線80を個別に包囲する筒部51と、を有している。シール本体50は、正面視において左右方向に長い形状をなしている。
シール本体50は、各電線80を液密に貫通させるシール孔52を有している。シール孔52は、各電線80に個別に対応して設けられており、シール本体50および筒部51を貫通する形態をなしている。シール孔52の内周面には、周方向に1周する内周リップ53が形成されている。内周リップ53は、シール本体50側にのみ配置されており、筒部51側には配置されていない。シール本体50の外周面には、周方向に1周する外周リップ54が形成されている。
【0035】
シール本体50は、
図6および
図9に示すように、ハウジング12の係止部44に係止される係止受部55を有している。係止受部55は、シール孔52の下方に配置されている。係止受部55は、シール本体50の前面に開口した溝部56と、溝部56の奥側の側面に形成された係止凹部57と、を有している。
【0036】
筒部51は、
図5に示すように、シール本体50の後面に幅方向に一列に並んで配置されている。筒部51は、内側にシール孔52の後部が形成された筒状をなしており、背面視において4つの丸みを帯びた角部を有している。筒部51の内周面および外周面には、リップが形成されていない。
【0037】
取付部材14は、
図6に示すように、ハウジング12との間にシール部材13を挟んで保持する部材である。取付部材14は、上下方向および左右方向に沿って配置される後壁60と、後壁60の外周端部から前方に突出する筒状の外壁61と、を有している。
【0038】
後壁60は、
図6および
図7に示すように、前後に貫通した複数の貫通孔62を有している。貫通孔62は、シール部材13の各筒部51に個別に対応して設けられており、内部に筒部51が嵌合状態に配置される。後壁60は、前面に、シール規制面60Aと、ハウジング規制面60Bと、を有している。シール規制面60Aは、シール部材13の後方への変位を規制する。ハウジング規制面60Bは、シール規制面60Aよりも後方に配置され、ハウジング12における収容凹部43の後方への変位を規制する。
【0039】
外壁61は、
図2に示すように、ロックアーム31の上面を露出させる開口部64と、開口部64を挟んだ両側に配置されてロックアーム31を両側から覆う保護壁65と、開口部64の前側に配置され両側の保護壁65の前端側同士を連結させる架設部66と、を有している。保護壁65は、後端側の上面に、前方に向けて高さ位置が段々高くなる上側段差部67を有している。上側段差部67の前端は、取付部材14がハウジング12に組付けられた状態において、ロックアーム31の解除操作部35の前端よりも前方に配置される。外壁61は、
図6に示すように、後端側の下面に、後方に向けて下方への突出量が大きくなる下側段差部68を有している。
【0040】
取付部材14は、
図3および
図4に示すように、ハウジング12に係合する第1係合部71および第2係合部72を有している。第1係合部71および第2係合部72は、外壁61を切り欠いた部位に撓み変形可能に配置されている。
【0041】
第1係合部71は、
図6に示すように、後壁60の下端側の前面から前方に突出した第1板部73と、第1板部73の前端側から上方に突出した第1係合爪部74と、を有している。第1板部73は、
図4に示すように、底面視において、左右方向に長い矩形状をなしている。第1係合部71の左右両側および前側と外壁61との間には第1スリットS1が形成されている。このため、第1係合部71が撓み変形しても、外壁61と干渉しない。
【0042】
第2係合部72は、
図7に示すように、後壁60の左右両側の前面から前方に突出した第2板部75と、第2板部75の前端側から左右方向内方に突出した第2係合爪部76と、を有している。第2板部75は、
図3に示すように、側面視において、前後方向に長い矩形状をなしている。第2係合部72の上下両側および前側と外壁61との間には、第2スリットS2が形成されている。このため、第2係合部72が撓み変形しても、外壁61と干渉しない。
【0043】
シールリング15は、ゴム製であり、
図1に示すように、環状をなしている。シールリング15の外周面には、周方向に1周するリップが形成されている。シールリング15は、ハウジング本体30の外周面に取り付けられる。
【0044】
フロント部材16は、合成樹脂製であり、フロントリテーナとして機能する。フロント部材16は、
図6に示すように、ハウジング本体30の前側に取り付けられ、ランス41の撓み変形を規制する。これにより、端子金具11の後方への抜けがより確実に防止される。
【0045】
次に、コネクタ10の作用および効果について説明する。
図6に示すように、シール部材13のシール本体50がハウジング12の収容凹部43内に収容される。ハウジング12の係止部44が、シール部材13の係止受部55に係止されることにより、ハウジング12からのシール部材13の離脱が規制される。また、筒部51は、収容凹部43の後方に突出して配置される。
【0046】
続いて、取付部材14がハウジング12に対し後方から取り付けられる。取付部材14をハウジング12に取り付ける際、取付部材14の第1係合部71は、ハウジング12の第1係合受部47から下方に押圧されて撓み変形し、さらに前方へ進むと、弾性復帰して第1係合受部47に係合される。第1係合受部47の前方への変位は、第1係合部71の第1係合爪部74によって規制される。
【0047】
また、取付部材14の第2係合部72は、
図7に示すように、前端側がハウジング12の第2係合受部48から左右方向外方に押圧されて撓み変形し、さらに前方へ進むと、弾性復帰して第2係合受部48に係合される。第2係合受部48の前方への変位は、第2係合部72の第2係合爪部76によって規制される。
【0048】
続いて、端子金具11がキャビティ40内に挿入される。
図6に示すように、シール部材13の各シール孔52には、各電線80が液密に貫通される。
【0049】
第1係合部71が第1係合受部47に係合され、第2係合部72が第2係合受部48に係合されることによって、取付部材14がハウジング12に取り付けられる。取付部材14がハウジング12に取り付けられた状態においては、
図6に示すように、シール本体50が収容凹部43内に配置され、シール本体50の下部が、収容凹部43の奥面と取付部材14の後壁60の前面とに前後に挟まれて保持される。つまり、シール本体50の下部の前面と収容凹部43の奥面が接触するとともに、シール本体50の下部の後面とシール規制面60Aが接触する。シール本体50の下部の後方への変位は、シール規制面60Aによって規制され、シール本体50を収容する収容凹部43の後方への変位は、シール規制面60Aよりも後方に配置されたハウジング規制面60Bによって規制される。
【0050】
ハウジング規制面60Bは、
図6および
図7に示すように、ハウジング12との間に隙間G1を有しつつシール規制面60Aよりも後方に配置される。また、シール部材13が自然状態にあるときには、第1係合部71の第1係合爪部74と第1係合受部47との間、および第2係合部72の第2係合爪部76と第2係合受部48との間にも隙間G2が形成される。このため、取付部材14がハウジング12に対して傾くことが許容されている。
また、シール本体50の上部から後方に突出した筒部51は、取付部材14の貫通孔62内に配置される。以上のようにして、コネクタ10が製造される。
【0051】
コネクタ10は、相手側コネクタ90に対して相対変位しないように嵌合される。コネクタ10は、ロックアーム31のコネクタロック部34が相手側コネクタ90のコネクタロック受部92に係止されることで、相手側コネクタ90に対して抜け止めされる。コネクタ10が相手側コネクタ90に嵌合されると、端子金具11が相手側コネクタ90のタブ91に接続される。相手側コネクタ90のフード部93は、コネクタ10のハウジング12と外壁61との間に配置される。コネクタ10におけるハウジング12のがた詰めリブ49の突出端は、相手側コネクタ90のフード部93の内周面と上下方向に対向する。このため、ハウジング12の相手側コネクタ90に対する上下方向へのがたつきを抑制することができる。また、コネクタ10の外壁61の内周面と、相手側コネクタ90のフード部93の外周面との間には、隙間G3が形成される。このため、取付部材14が相手側コネクタ90に対して上下に傾くことが許容されている。
【0052】
また、コネクタ10が相手側コネクタ90に嵌合された状態においては、ハウジング12のロックアーム31の上面が、取付部材14の開口部64を介して露出され、ロックアーム31の左右両側が、取付部材14の保護壁65によって覆われる。このため、ロックアーム31が保護壁65に保護され、外部の異物と干渉しにくくなる。よって、ロックアーム31が不用意に解除されることを防止することができる。
【0053】
コネクタ10には、使用時において、電線80の振動が伝達されることがある。取付部材14は、シール部材13を介して電線80に接している。このため、電線80の振動がシール部材13を介して取付部材14に伝達される。しかし、取付部材14は、ハウジング12に対して移動可能であるため、取付部材14に伝達された振動はハウジング12に伝達されにくい。具体的には、取付部材14とハウジング12との間には、隙間G1,G2が形成されている。また、取付部材14とハウジング12に嵌合される相手側コネクタ90との間にも隙間G3が形成されている。このため、電線80が上下左右に振動すると、取付部材14は隙間G1,G2,G3内に入り込み、ハウジング12に対して取付部材14の後端側が上下左右に傾く。よって、取付部材14に伝達された振動はハウジング12に伝達されにくい。従って、ハウジング12に伝達される電線80の振動を抑えることができる。
【0054】
特に、シール部材13は、各電線80に個別に対応する筒部51を有しており、各筒部51内のシール孔52には、各電線80が液密に貫通されている。そして、電線80が振動した場合、電線80を個別に保持する筒部51の外周面は、揺動して貫通孔62の内周面に接触する。また、シール本体50の下部の後面もシール規制面60Aと接触している。このため、電線80の振動が、筒部51を介して取付部材14に効率良く伝達される。これにより、シール部材13を介してハウジング12に伝達される電線80の振動が小さくなる。また、筒部51を介して取付部材14に伝達された振動は、上述したようにハウジング12に伝達されにくい。よって、ハウジング12に伝達される電線80の振動を一層抑えることができる。なお、電線80は、本実施形態1では、電線80が振動していない状態においては、筒部51の外周面が取付部材14の貫通孔62の内周面に接していないが、振動前の時点で接している構成としてもよい。
【0055】
さらに、第1係合部71および第2係合部72は、電線80の振動時に撓み変形可能になっている。よって、電線80の振動時に、第1係合部71および第2係合部72が撓み変形することで、第1係合部71と第1係合受部47との間、もしくは第2係合部72と第2係合受部48との間で振動が伝達されにくくなる。従って、シール部材13を介して取付部材14に伝達された振動は、ハウジング12に一層伝達されにくくなり、その結果、ハウジング12に伝達される電線80の振動を一層抑えることができる。
【0056】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記実施形態1では、シール部材が筒部を有する構成としたが、筒部を有しない構成としてもよい。
(2)上記実施形態1では、保護壁を有する構成としたが、保護壁を有しない構成としてもよい。
(3)上記実施形態1では、互いに係止される係止部および係止受部を有する構成としたが、係止部および係止受部を有しない構成としてもよい。
(4)上記実施形態1では、係合部と係合受部のうち係合部のみが電線の振動時に撓み変形可能としたが、係合受部のみが撓み変形可能としてもよいし、両方が撓み変形可能としてもよいし、両方が撓み変形しない構成としてもよい。
(5)上記実施形態1では、筒部の内周面にリップを設けない構成としたが、筒部の内周面にリップを設けてもよい。
(6)上記実施形態1では、ハウジング規制面を有する構成としたが、ハウジング規制面を有しない構成としてもよい。
(7)上記実施形態1では、シール部材を、複数の電線を一括してシールする一括ゴム栓としたが、1本の電線のみをシールするゴム栓としてもよい。
(8)前後方向は、コネクタの使用時において、水平方向に対して傾斜していてもよいし、垂直方向であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…コネクタ
11…端子金具
12…ハウジング
13…シール部材
14…取付部材
15…シールリング
16…フロント部材
20…本体部
21…ワイヤバレル
22…インシュレーションバレル
30…ハウジング本体
31…ロックアーム
32…支持部
33…アーム部
34…コネクタロック部
35…解除操作部
40…キャビティ
41…ランス
42…タブ挿入孔
43…収容凹部
44…係止部
45…後方突出部
46…係止爪部
47…第1係合受部(係合受部)
48…第2係合受部(係合受部)
49…がた詰めリブ
50…シール本体
51…筒部
52…シール孔
53…内周リップ
54…外周リップ
55…係止受部
56…溝部
57…係止凹部
60…後壁
60A…シール規制面
60B…ハウジング規制面
61…外壁
62…貫通孔
64…開口部
65…保護壁
66…架設部
67…上側段差部
68…下側段差部
71…第1係合部(係合部)
72…第2係合部(係合部)
73…第1板部
74…第1係合爪部
75…第2板部
76…第2係合爪部
80…電線
81…被覆
82…導体
90…相手側コネクタ
91…タブ
92…コネクタロック受部
93…フード部
G1、G2、G3…隙間
S1…第1スリット
S2…第2スリット