(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240326BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240326BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240326BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240326BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M4/70 A
H01M10/04 Z
H01M10/0566
H01M50/103
H01M50/184 A
H01M50/627
(21)【出願番号】P 2020177978
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】磯村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真也
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031688(WO,A1)
【文献】特開2004-327374(JP,A)
【文献】特開2010-250978(JP,A)
【文献】特開2019-192425(JP,A)
【文献】特開2020-061221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0566
H01M 10/04
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 4/70
H01M 50/10
H01M 50/183
H01M 50/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔によって構成された集電体の一方面に活物質層を有し、前記活物質層同士が互いに対向するように配置された正極及び負極と、
前記正極と前記負極との間に配置され、前記活物質層間に介在するセパレータと、
前記正極と前記負極との間に配置され、前記活物質層を囲むように前記集電体の縁部間を封止して電解液が収容される収容空間を形成するスペーサと、
前記集電体において前記活物質層が位置しない未塗工部分を補強する補強部材と、を備え、
前記集電体は、前記正極及び前記負極における前記活物質層の対向方向から見た場合に、前記スペーサと前記活物質層との間に前記未塗工部分を
矩形枠状に有しており、
前記補強部材は、前記対向方向から見た場合に、前記活物質層と前記未塗工部分との境界と、前記スペーサと前記未塗工部分との境界とに跨るように、前記未塗工部分に沿って
矩形枠状に配置されている蓄電セル。
【請求項2】
金属箔によって構成された集電体の一方面に活物質層を有し、前記活物質層同士が互いに対向するように配置された正極及び負極と、
前記正極と前記負極との間に配置され、前記活物質層間に介在するセパレータと、
前記正極と前記負極との間に配置され、前記活物質層を囲むように前記集電体の縁部間を封止して電解液が収容される収容空間を形成するスペーサと、
前記集電体において前記活物質層が位置しない未塗工部分を補強する補強部材と、を備え、
前記集電体は、前記正極及び前記負極における前記活物質層の対向方向から見た場合に、前記スペーサと前記活物質層との間に前記未塗工部分を有しており、
前記補強部材は、前記対向方向から見た場合に、前記活物質層と前記未塗工部分との境界と、前記スペーサと前記未塗工部分との境界とに跨るように、前記未塗工部分に沿って配置され、
前記対向方向から見た場合に、
前記正極における前記活物質層の形成領域は、前記負極における前記活物質層の形成領域内に位置しており、
前記負極の集電体における前記補強部材は、前記正極における前記活物質層と重なっていない蓄電セル。
【請求項3】
金属箔によって構成された集電体の一方面に活物質層を有し、前記活物質層同士が互いに対向するように配置された正極及び負極と、
前記正極と前記負極との間に配置され、前記活物質層間に介在するセパレータと、
前記正極と前記負極との間に配置され、前記活物質層を囲むように前記集電体の縁部間を封止して電解液が収容される収容空間を形成するスペーサと、
前記集電体において前記活物質層が位置しない未塗工部分を補強する補強部材と、を備え、
前記集電体は、前記正極及び前記負極における前記活物質層の対向方向から見た場合に、前記スペーサと前記活物質層との間に前記未塗工部分を有しており、
前記補強部材は、前記対向方向から見た場合に、前記活物質層と前記未塗工部分との境界と、前記スペーサと前記未塗工部分との境界とに跨るように、前記未塗工部分に沿って配置され、
前記正極の集電体における前記補強部材では、前記対向方向から見て前記正極における前記活物質層に重なる部分の前記対向方向の厚さが、他の部分の前記対向方向の厚さよりも小さくなっている蓄電セル。
【請求項4】
前記活物質層の形成領域は、矩形状をなしており、
前記スペーサは、矩形枠状をなしており、
前記スペーサの一の辺部には、前記収容空間の内部から前記収容空間の外部に貫通する貫通口と、前記貫通口を閉塞する閉塞部と、が設けられており、
前記補強部材は、少なくとも前記スペーサの前記一の辺部と前記活物質層との間の未塗工部分に対応して配置されている請求項1~3のいずれか一項記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記補強部材は、前記スペーサの全ての辺部と前記活物質層との間の未塗工部分に対応して配置されている請求項1~4のいずれか一項記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記正極及び前記負極の少なくとも一方の活物質層は、前記集電体の面内方向において第1の部分と第2の部分とに分割されており、
当該集電体において、前記第1の部分と前記第2の部分との間には、中間未塗工部分が位置しており、
前記対向方向から見た場合に、前記第1の部分と前記中間未塗工部分との境界と、前記第2の部分と前記中間未塗工部分との境界とに跨るように、前記中間未塗工部分に沿って配置された中間補強部材を更に備える請求項1~5のいずれか一項記載の蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電セルとして、例えば特許文献1に記載の双極性バッテリに用いられるセルがある。この従来の双極性バッテリは、第1のセル及び第2のセルの積層体を含んで構成されている。第1のセル及び第2のセルは、正極、負極、及びこれらの間に介在するセパレータを有している。第1のセル及び第2のセルにおいて、正極側の金属層の縁部と負極側の金属層の縁部とは、例えば樹脂製の封止材によって接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極及び負極の集電体が金属箔で構成される場合、集電体の表面に皺や歪みが生じることがある。集電体の皺や歪みは、集電体の未塗工部分(活物質層が形成されない部分)において生じ易く、蓄電セルのハンドリングや積層の際に皺や歪みに応力が集中すると、集電体に傷や破れが生じるおそれがある。集電体に傷や破れが生じた場合、蓄電セルの封止性が低下してしまうことが考えられる。特に、複数の蓄電セルを積層して構成される蓄電装置の高出力化及び低背化の両立を目的として蓄電セルを大面積化した場合には、上記の課題が顕著になり易く、集電体の皺や歪みを抑えるための工夫が必要になると考えられる。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、集電体の皺や歪みを抑えることができる蓄電セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電セルは、金属箔によって構成された集電体の一方面に活物質層を有し、活物質層同士が互いに対向するように配置された正極及び負極と、正極と前記負極との間に配置され、活物質層間に介在するセパレータと、正極と負極との間に配置され、活物質層を囲むように集電体の縁部間を封止して電解液が収容される収容空間を形成するスペーサと、集電体において活物質層が位置しない未塗工部分を補強する補強部材と、を備え、集電体は、正極及び負極における活物質層の対向方向から見た場合に、スペーサと活物質層との間に前記未塗工部分を有しており、補強部材は、対向方向から見た場合に、活物質層と未塗工部分との境界と、スペーサと未塗工部分との境界とに跨るように、未塗工部分に沿って配置されている。
【0007】
この蓄電セルでは、集電体の未塗工部分に沿って補強部材が設けられている。補強部材は、正極及び負極における活物質層の対向方向から見た場合に、活物質層と未塗工部分との境界と、スペーサと未塗工部分との境界とに跨って配置されている。集電体において、活物質層が位置する部分及びスペーサが位置する部分は、一定の剛性が保たれる部分である。このため、活物質層と未塗工部分との境界と、スペーサと未塗工部分との境界とに跨って補強部材が配置されることで、未塗工部分の効果的な補強が可能となる。したがって、この蓄電セルでは、金属箔である集電体の皺や歪みを抑えることができ、皺や歪みに起因する集電体の傷や破れの発生を抑制できる。
【0008】
対向方向から見た場合に、正極における活物質層の形成領域は、負極における活物質層の形成領域内に位置しており、負極の集電体における補強部材は、正極における活物質層と重なっていなくてもよい。
【0009】
この場合、蓄電セルを積層したセルスタックにおいて、積層方向から見た場合の正極における補強部材と活物質層とが重なる部分の厚さの増大を抑制できる。正極における補強部材と活物質層とが重なる部分の厚さが増大すると、セルスタックにおいて積層方向に拘束荷重が付加される場合に、当該部分に荷重が集中することが考えられる。荷重の集中部分では、蓄電セル内の正極と負極との間の距離が縮まり、抵抗が減少して電流が集中し易くなるため、反応ムラが生じてしまうおそれがある。したがって、積層方向から見た場合の正極における補強部材と活物質層とが重なる部分の厚さの増大を抑制することで、セルスタックにおける蓄電セルの反応ムラの発生を抑えることができる。
【0010】
正極の集電体における補強部材では、対向方向から見て正極における活物質層の縁に重なる部分の対向方向の厚さが、他の部分の対向方向の厚さよりも小さくなっていてもよい。このような構成によっても、積層方向から見た場合の正極における活物質層の厚さの増大を抑制でき、セルスタックにおける蓄電セルの反応ムラの発生を抑えることができる。
【0011】
活物質層の形成領域は、矩形状をなしており、スペーサは、矩形枠状をなしており、スペーサの一の辺部には、収容空間の内部から収容空間の外部に貫通する貫通口と、貫通口を閉塞する閉塞部と、が設けられており、補強部材は、少なくともスペーサの一の辺部と活物質層との間の未塗工部分に対応して配置されていてもよい。貫通口が配置される部分は、注液管の挿抜などで集電体に応力が付与され易い。したがって、当該部分に対応して補強部材を配置することで、集電体の皺や歪みを一層好適に抑えることができる。
【0012】
補強部材は、スペーサの全ての辺部と活物質層との間の未塗工部分に対応して配置されていてもよい。この場合、活物質層の周囲の全ての未塗工部分に対応して補強部材が配置されるので、集電体の皺や歪みをより確実に抑えることができる。
【0013】
正極及び負極の少なくとも一方の活物質層は、集電体の面内方向において第1の部分と第2の部分とに分割されており、当該集電体において、第1の部分と第2の部分との間には、中間未塗工部分が位置しており、対向方向から見た場合に、第1の部分と中間未塗工部分との境界と、第2の部分と中間未塗工部分との境界とに跨るように、中間未塗工部分に沿って配置された中間補強部材を更に備えていてもよい。活物質層を分割構成とすることにより、蓄電セルを大面積化した場合であっても、活物質層の割れや集電体からの剥離を抑制できる。また、分割された活物質層間の中間未塗工部分に対応して補強部材を配置することで、集電体の皺や歪みを一層確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、集電体の皺や歪みを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一側面に係る蓄電セルを用いて構成した蓄電装置の構成を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図1に示した蓄電セルを単セルの状態で正極側から示す概略的な平面図である。
【
図3】
図1に示した蓄電セルを単セルの状態で負極側から示す概略的な平面図である。
【
図4】未塗工部分を補強する補強部材の構成を示す概略的な要部拡大断面図である。
【
図5】中間未塗工部分を補強する補強部材の構成を示す概略的な要部拡大断面図である。
【
図6】変形例に係る蓄電セルの内部構成を示す概略的な要部拡大断面図である。
【
図7】別の変形例に係る蓄電セルの内部構成を示す概略的な要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る蓄電セルの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本開示の一側面に係る蓄電セルを用いて構成した蓄電装置の構成を示す概略的な断面図である。
図1に示す蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる装置である。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0018】
蓄電装置1は、複数の蓄電セル2が積層方向に積層されてなるセルスタック5を含んで構成されている。蓄電装置1は、車両の床下などへの配置を考慮し、全体として扁平な直方体形状をなしている。蓄電装置1は、高容量化及び低背化の両立のため、積層方向から見た場合に、蓄電セル2の一辺の長さが1mを超えるような大面積の装置となっている。各蓄電セル2は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、スペーサ14とを備えている。正極11は、集電体21と、集電体21の一方面21aに設けられた正極活物質層22とを有している。負極12は、集電体21と、集電体21の一方面21aに設けられた負極活物質層23とを有している。同一の蓄電セル2においては、正極11及び負極12は、正極活物質層22と負極活物質層23とが互いに対向するように配置されている。
【0019】
集電体21は、一方面21aとは反対側の他方面21bを有している。正極11及び負極12のいずれにおいても、集電体21の他方面21bは、活物質層が形成されない面となっている。セルスタック5では、一の蓄電セル2の正極11における集電体21の他方面21bと、一の蓄電セル2と積層方向に隣り合う蓄電セル2の負極12における集電体21の他方面21bとが互いに接するように蓄電セル2が積層されている。これにより、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続されている。
【0020】
セルスタック5では、積層方向に隣り合う蓄電セル2,2により、互いに接する正極11の集電体21及び負極12の集電体21を一つの電極体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成されている。バイポーラ電極10は、互いに隣接する2つの集電体21,21、正極活物質層22、及び負極活物質層23を含んで構成されている。セルスタック5において、積層方向の一端には、終端電極としての正極11の集電体21が配置されている。積層方向の他端には、終端電極としての負極12の集電体21が配置されている。
【0021】
集電体21は、蓄電装置1の放電又は充電の間、正極活物質層22及び負極活物質層23に電流を供給するための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体21を構成する材料としては、例えば金属材料が挙げられる。
【0022】
集電体21は、前述した金属材料を含む1以上の層を含む複数層を備えていてもよい。集電体21の表面には、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層が形成されていてもよい。集電体21は、例えば板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態であってもよい。ここでは、集電体21は、金属箔である。集電体21を金属箔とする場合、例えばアルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、ステンレス鋼箔等を用いることができる。
【0023】
集電体21として、銅箔、アルミ箔、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)を用いた場合、集電体21の機械的強度を容易に確保できる。集電体21は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。本実施形態では、正極11の集電体21は、アルミニウム箔であり、負極12の集電体21は、銅箔である。箔状の集電体21を用いる場合、集電体21の厚みは、例えば1μm~100μmとすることができる。
【0024】
正極活物質層22は、電荷担体を吸蔵及び放出可能である正極活物質を含んで構成されている。正極活物質としては、例えば層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物などが挙げられる。2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態では、正極活物質層22は、複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含んで構成されている。
【0025】
負極活物質層23は、電荷担体を吸蔵及び放出可能である負極活物質を含んで構成されている。負極活物質は、単体、合金、化合物のいずれであってもよい。負極活物質としては、例えば炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素、若しくはその化合物などが挙げられる。炭素としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態では、負極活物質層23は、炭素系材料としての黒鉛を含んで構成されている。
【0026】
正極活物質層22及び負極活物質層23のそれぞれには、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等が含まれていてもよい。活物質層に含まれる成分、当該成分の配合比、及び活物質層の厚さに特に限定はなく、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。
【0027】
正極活物質層22及び負極活物質層23の厚さは、例えば2μm~500μmである。集電体21の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いることができる。正極11又は負極12の熱安定性を向上させるために、集電体21の片面又は両面、或いは活物質層の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば無機粒子と結着剤とを含んで構成され、その他に増粘剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0028】
導電助剤は、正極11又は負極12の導電性を高めるために添加され得る。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体などが挙げられる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒には、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0029】
セパレータ13は、正極11と負極12とを隔離することで、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ13は、正極11の正極活物質層22と負極12の負極活物質層23との間に配置されている。これにより、セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合うバイポーラ電極10,10間の短絡を防止する。セパレータ13の縁部13aは、負極12側の集電体21に接した状態でスペーサ14の内壁部分に埋設されている。これにより、セパレータ13は、スペーサ14によって保持された状態となっている。
【0030】
セパレータ13の基材層は、例えば電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布によって構成されている。基材層を構成する材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。基材層は、単層構造或いは多層構造のいずれであってもよい。基材層が多層構造をなす場合、例えば接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。本実施形態では、このセパレータ13の基材層に電解質が含浸されている。
【0031】
電解質としては、例えば非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)などが挙げられる。電解塩としては、例えばLiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
スペーサ14は、正極11の集電体21と負極12の集電体21との間に配置され、正極11の集電体21及び負極12の集電体21に接合されている。スペーサ14は、絶縁材料を含み、正極11の集電体21と負極12の集電体21との間を絶縁することによって、集電体21間の短絡を防止する。スペーサ14を構成する材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ABS樹脂、変性ポリプロピレン(変性PP)、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂といった種々の樹脂材料が挙げられる。
【0033】
本実施形態では、各蓄電セル2に配置されるスペーサ14は、一対の集電体21間に位置する部分と、集電体21の縁部21eよりも外側に位置する部分とを有している。セルスタック5の積層方向に隣り合うスペーサ14,14において、集電体21の縁部21eよりも外側に位置する部分同士は、互いに接合されて一体化している。これにより、複数のスペーサ14が一体化されて封止体Bが形成されている。封止体Bは、セルスタック5の積層方向の一端に配置された集電体21から積層方向の他端に配置された集電体21まで積層方向に延在する筒状部分を構成している。隣り合うスペーサ14,14同士を接合する方法としては、例えば、熱溶着、超音波溶着又は赤外線溶着など、公知の溶着方法が用いられる。
【0034】
スペーサ14は、当該スペーサ14、正極11の集電体21、及び負極12の集電体21によって囲まれた収容空間Sを形成する。収容空間Sには、セパレータ13、正極活物質層22、及び負極活物質層23が、電解液に含浸された状態で収容されている。本実施形態において、スペーサ14は、収容空間Sを封止する封止部としても機能し、収容空間Sに収容された電解液が外部に漏出することを防止する。スペーサ14は、蓄電装置1の外部から収容空間S内への水分の侵入を防止し得る。また、スペーサ14は、例えば充放電反応等によって正極11又は負極12から発生したガスが蓄電装置1の外部に漏出することを防止する。
【0035】
蓄電装置1は、積層方向においてセルスタック5を挟むように配置された一対の通電体(正極通電板40及び負極通電板50)を備えている。正極通電板40及び負極通電板50は、導電性材料によって構成されている。正極通電板40及び負極通電板50の構成材料としては、例えば集電体21の構成材料と同じ材料が用いられる。正極通電板40及び負極通電板50の厚さは、セルスタック5に用いられた集電体21の厚さより大きくてもよい。正極通電板40は、積層方向の一端において最も外側に配置された正極11の集電体21に電気的に接続されている。負極通電板50は、積層方向の他端において最も外側に配置された負極12の集電体21に電気的に接続されている。正極通電板40及び負極通電板50のそれぞれに設けられた端子を通じて蓄電装置1の充放電が行われる。
【0036】
セルスタック5の積層方向において最も外側に配置された集電体21と正極通電板40及び負極通電板50との間には、両部材間の導電接触を良好にする目的で、導電層30が更に配置されている。導電層30は、集電体21の他方面21bに密着していてもよい。導電層30は、例えば集電体21の硬度よりも低い硬度を有している。導電層30は、アセチレンブラック又はグラファイト等のカーボンを含む層であってもよく、Auを含むメッキ層であってもよい。
【0037】
続いて、上述した蓄電セル2の構成について更に詳細に説明する。
【0038】
図2は、
図1に示した蓄電セルを単セルの状態で正極側から示す概略的な平面図であり、
図3は、負極側から示す概略的な平面図である。
図2及び
図3に示すように、蓄電セル2では、正極11及び負極12を構成する集電体21は、蓄電セル2の積層方向から見て矩形状をなしている。ここでは、集電体21の形状は長方形状となっており、集電体21は、一対の長辺21f,21fと、一対の短辺21g,21gとを有している。
【0039】
正極活物質層22及び負極活物質層23は、正極11及び負極12における正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向(セルスタック5における蓄電セル2の積層方向と一致)から見て、いずれも矩形状に形成されている。正極活物質層22の形成領域R1は、
図2に示すように、集電体21の中央において長方形状をなしている。正極11の集電体21において、正極活物質層22が形成されない未塗工部分V1は、正極活物質層22の形成領域R1の周囲を囲うように集電体21の縁部21eに位置している。
【0040】
本実施形態では、正極活物質層22の形成領域R1内において、正極活物質層22は、集電体21の面内方向に第1の部分22Aと第2の部分22Bとに分割されている。第1の部分22A及び第2の部分22Bは、いずれも長方形状をなし、集電体21の長辺21f,21f同士を結ぶ方向に配列されている。第1の部分22Aと第2の部分22Bとの間には、正極活物質層22が形成されない未塗工部分(以下、「中間未塗工部分V2」と称す)が位置している。中間未塗工部分V2は、集電体21の短辺21g,21g同士を結ぶ方向に帯状に延在している。
【0041】
負極活物質層23の形成領域R2は、
図3に示すように、集電体21の中央において長方形状をなしている。負極12の集電体21において、負極活物質層23が形成されない未塗工部分V1は、負極活物質層23の形成領域R2の周囲を囲うように集電体21の縁部21eに位置している。本実施形態では、負極活物質層23の形成領域R2は、正極活物質層22の形成領域R1(第1の部分22A、第2の部分22B、及び中間未塗工部分V2を合わせた領域)よりも一回り大きく形成されている。正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、正極活物質層22の形成領域R1の全体は、負極活物質層23の形成領域R2内に位置している。
【0042】
本実施形態において、スペーサ14は、矩形の枠状に形成されている。ここでは、スペーサ14の形状は、集電体21と相似の長方形の枠状となっており、スペーサ14は、集電体21の長辺21f,21fに対応する一対の長辺14a,14aと、一対の短辺14b,14bとを有している。スペーサ14は、正極活物質層22及び負極活物質層23の周囲を取り囲むように集電体21の縁部21eに沿って延在している。したがって、集電体21を正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、スペーサ14と正極活物質層22及び負極活物質層23との間には、上述した未塗工部分V1が矩形の枠状に位置している。
【0043】
また、
図2及び
図3に示すように、スペーサ14の一の辺部には、収容空間Sへの電解液を注液するための注液口(貫通口)Pと、当該注液口Pを閉塞する閉塞部Pfとが設けられている。注液口Pは、収容空間Sの内部から収容空間Sの外部に貫通する開口である。閉塞部Pfは、注液口Pの外部側を閉塞し、収容空間Sを封止している。収容空間Sへの電解液の注液は、閉塞部Pfを設ける前の製造段階において、スペーサ14に設けられた注液口Pに挿入された注液管Pa(
図4参照)を用いて行われる。ここでは、注液口Pは、スペーサ14の一方の短辺14bの中央部分に設けられている。正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合、注液口Pにおける収容空間S側の開口端は、中間未塗工部分V2と対向している。中間未塗工部分V2は、注液口Pの延長線上に延在している。
【0044】
蓄電セル2には、
図2及び
図3に示すように、集電体21において活物質層が位置しない未塗工部分V1を補強する補強部材31が設けられている。補強部材31としては、例えば電気絶縁性及び電解液に対する耐腐食性を有する接着テープを用いることができる。接着剤としては、例えばアクリル系の接着剤を用いることができる。接着テープの基材には、例えばスペーサ14を構成する材料と同一の材料を用いることができる。この場合、接着テープの基材には、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン、ポリイミド(PI)、ABS樹脂、変性ポリプロピレン(変性PP)、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂などを用いることができる。補強部材31は、スペーサ14と同一の材料を集電体21に溶着することによって構成されていてもよい。
【0045】
補強部材31は、正極11の集電体21の他方面21b側及び負極12の集電体21の他方面21b側にそれぞれ配置され、収容空間Sの外部から集電体21を補強している。正極11の集電体21を補強する補強部材31は、
図2に示すように、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見て、未塗工部分V1に沿う補強部材31Aと、中間未塗工部分V2に沿う中間補強部材31Bとを有している。負極12の集電体21を補強する補強部材31は、
図3に示すように、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見て、未塗工部分V1に沿う補強部材31Cを有している。本実施形態では、補強部材31A,31C及び中間補強部材31Bの厚さは、互いに等しくなっている。
【0046】
補強部材31A,31Cは、少なくとも注液口Pが設けられたスペーサ14の一方の短辺14bと正極活物質層22との間の未塗工部分V1に対応して配置されている。本実施形態では、補強部材31A,31Cは、未塗工部分V1に沿った矩形の枠状をなしており、スペーサ14の全ての辺部(長辺14a,14a及び短辺14b,14b)と正極活物質層22及び負極活物質層23との間の未塗工部分V1に対応して配置されている。
【0047】
未塗工部分V1を補強する補強部材31Aは、
図4に示すように、集電体21を正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、正極活物質層22と未塗工部分V1との境界M1と、スペーサ14と未塗工部分V1との境界M2とに跨るように、未塗工部分V1に沿って連続的に配置されている。具体的には、補強部材31Aの内縁(正極活物質層22側の縁)31aは、正極活物質層22の縁22aよりも集電体21の内側(集電体21の中心側)に位置しており、補強部材31Aの外縁31bは、スペーサ14の内縁(収容空間S側の縁)14cよりも集電体21の外側(集電体21の縁21h側)に位置している。補強部材31Aの外縁31bは、集電体21の縁21hよりも集電体21の内側(集電体21の中心側)に位置している。
【0048】
未塗工部分V1を補強する補強部材31Cは、
図4に示すように、集電体21を正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、負極活物質層23と未塗工部分V1との境界M3と、スペーサ14と未塗工部分V1との境界M2とに跨るように、未塗工部分V1に沿って連続的に配置されている。具体的には、補強部材31Cの内縁(負極活物質層23側の縁)31aは、負極活物質層23の縁23aよりも集電体21の内側(集電体21の中心側)に位置しており、補強部材31Cの外縁31bは、スペーサ14の内縁(収容空間S側の縁)14cよりも集電体21の外側(集電体21の縁21h側)に位置している。補強部材31Cの外縁31bは、集電体21の縁21hよりも集電体21の内側(集電体21の中心側)に位置している。
【0049】
本実施形態では、上述したように、負極活物質層23の形成領域R2は、正極活物質層22の形成領域R1よりも一回り大きく形成されている。このため、補強部材31Cの内縁31aは、補強部材31Aの内縁31a及び正極活物質層22の縁22aよりも集電体21の外側(集電体21の縁21h側)に位置している。したがって、集電体21を正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、補強部材31Cは、正極活物質層22と重なっておらず、正極活物質層22と一定の間隔をもって配置されている。また、補強部材31Cの外縁31bは、集電体21を正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、補強部材31Aの外縁31bと同じ位置に揃えられている。なお、
図4では、注液口Pが設けられたスペーサ14の一方の短辺14b側の断面構成を拡大して示しているが、スペーサ14の他の辺部側の断面構成についても同様の構成となっている。
【0050】
中間未塗工部分V2を補強する中間補強部材31Bは、
図5に示すように、集電体21を正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、正極活物質層22の第1の部分22Aと中間未塗工部分V2との境界M4と、正極活物質層22の第2の部分22Bと中間未塗工部分V2との境界M5とに跨るように、中間未塗工部分V2に沿って連続的に配置されている。中間補強部材31Bの両端は、スペーサ14の短辺14b,14b側で補強部材31Aと連続した状態となっている(
図2参照)。
【0051】
以上説明したように、蓄電セル2では、集電体21の未塗工部分V1に沿って補強部材31が設けられている。正極11の集電体21を補強する補強部材31Aは、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、正極活物質層22と未塗工部分V1との境界M1と、スペーサ14と未塗工部分V1との境界M2とに跨って配置されている。また、負極12の集電体21を補強する補強部材31Cは、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、負極活物質層23と未塗工部分V1との境界M3と、スペーサ14と未塗工部分V1との境界M2とに跨って配置されている。
【0052】
集電体21において、正極活物質層22又は負極活物質層23が位置する部分及びスペーサ14が位置する部分は、一定の剛性が保たれる部分である。このため、正極活物質層22及び負極活物質層23と未塗工部分V1との境界M1,M3と、スペーサ14と未塗工部分V1との境界M2とに跨って補強部材31が配置されることで、未塗工部分V1の効果的な補強が可能となる。したがって、蓄電セル2では、金属箔である集電体21の皺や歪みを抑えることができ、皺や歪みに起因する集電体21の傷や破れの発生を抑制できる。集電体21の傷や破れの発生の抑制により、蓄電セル2の封止性が低下してしまうことも防止できる。
【0053】
蓄電セル2では、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、正極活物質層22の形成領域R1が負極活物質層23の形成領域R2内に位置している。そして、負極12の集電体21における補強部材31は、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見た場合に、正極活物質層22と重ならないように配置されている。
【0054】
この場合、蓄電セル2を積層したセルスタック5において、積層方向から見た場合の正極11における補強部材31と正極活物質層22とが重なる部分の厚さの増大を抑制できる。正極11における補強部材31と正極活物質層22とが重なる部分の厚さが増大すると、セルスタック5において積層方向に拘束荷重が付加される場合に、当該部分に荷重が集中することが考えられる。荷重の集中部分では、蓄電セル2内の正極11と負極12との間の距離が縮まり、抵抗が減少して電流が集中し易くなるため、反応ムラが生じてしまうおそれがある。したがって、積層方向から見た場合の正極11における補強部材31と正極活物質層22とが重なる部分の厚さの増大を抑制することで、セルスタック5における蓄電セル2の反応ムラの発生を抑えることができる。
【0055】
蓄電セル2では、正極活物質層22の形成領域R1及び負極活物質層23の形成領域R2がいずれも矩形状をなしており、これに対応してスペーサ14が矩形枠状をなしている。スペーサ14の短辺14b側には、蓄電セル2の外部と収容空間Sとを連通する注液口Pが設けられており、補強部材31は、少なくともこのスペーサ14の短辺14bと正極活物質層22及び負極活物質層23との間の未塗工部分V1に対応して配置されている。注液口Pが配置される部分は、注液管Paの挿抜などで集電体21に応力が付与され易い。したがって、当該部分に対応して補強部材31を配置することで、集電体21の皺や歪みを一層好適に抑えることができる。
【0056】
本実施形態では、補強部材31がスペーサ14の全ての辺部と正極活物質層22及び負極活物質層23との間の未塗工部分V1に対応して配置されている。正極活物質層22及び負極活物質層23の周囲の全ての未塗工部分V1に対応して補強部材31が配置されることで、集電体21の皺や歪みをより確実に抑えることができる。
【0057】
蓄電セル2では、正極活物質層22は、集電体21の面内方向において第1の部分22Aと第2の部分22Bとに分割されており、当該集電体21において、第1の部分22Aと第2の部分22Bとの間には、中間未塗工部分V2が位置している。そして、補強部材31は、対向方向から見た場合に、第1の部分22Aと中間未塗工部分V2との境界M4と、第2の部分22Bと中間未塗工部分V2との境界M5とに跨るように、中間未塗工部分V2に沿って配置されている。正極活物質層22を分割構成とすることにより、蓄電セル2を大面積化した場合であっても、正極活物質層22の割れや集電体21からの剥離を抑制できる。また、分割された正極活物質層22間の中間未塗工部分V2に対応して補強部材31を配置することで、集電体21の皺や歪みを一層確実に抑えることができる。
【0058】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、正極11の集電体21における補強部材31Aの正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向の厚さが当該補強部材31Aの幅方向に一様となっているが、
図6に示すように、当該補強部材31Aにおいて、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見て正極活物質層22に重なる部分31cの対向方向の厚さが、補強部材31Aの他の部分の対向方向の厚さよりも小さくなっていてもよい。このような構成によっても、積層方向から見た場合の正極11における補強部材31と正極活物質層22とが重なる部分の対向方向の厚さの増大を抑制でき、セルスタック5における蓄電セル2の反応ムラの発生を抑えることができる。
【0059】
同様に、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見て、補強部材31におけるスペーサ14に重なる部分の対向方向の厚さが、補強部材31における他の部分の対向方向の厚さよりも小さくなっていてもよい。また、スペーサ14の対向方向の厚さは、正極活物質層22、負極活物質層23、及びセパレータ13における対向方向の厚さの和よりも小さくなっていてもよい。このような構成によれば、例えばスペーサ14と補強部材31とが重なる部分まで積層方向に拘束荷重が付与される場合においても、スペーサ14と補強部材31とが重なる部分の対向方向の厚さの増大が抑制され、正極活物質層22及び負極活物質層23に拘束荷重を十分に付与できる。
【0060】
図6の例では、補強部材31Aにおいて、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見て正極活物質層22に重なる部分31cのみが薄化されており、負極12側の補強部材31Cに重なる部分の厚さが補強部材31Cと等しい厚さとなっているが、補強部材31Aの全体の厚さが補強部材31Cの厚さに比べて小さくなっていてもよい。厚さの差は、補強部材31を構成する接着テープにおいて基材層の厚さが異なるものを用いて形成してもよく、補強部材31Cにおける接着テープの重ね貼りによって形成してもよい。
【0061】
図7に示すように、正極活物質層22の縁22aの角部Kに丸みが生じている場合には、正極活物質層22と負極活物質層23との対向方向から見て、補強部材31Aの内縁31aを角部Kに重なるように位置させてもよい。このような構成によっても、積層方向から見た場合の正極活物質層22の縁部分の厚さの増大を抑制でき、セルスタック5における蓄電セル2の反応ムラの発生を抑えることができる。正極活物質層22の縁22aの角部Kの丸みは、例えば集電体21にロールプレスなどによって正極活物質層22のペーストを塗工する場合に形成され得る。
【0062】
上記実施形態では、補強部材31A及び補強部材31Cの外縁31bは、集電体21の縁21hよりも集電体21の内側に位置しているが、補強部材31A及び補強部材31Cの外縁31bは、集電体21の縁21hよりも外側に張り出していてもよい。この場合、補強部材31A,31Cの張出部分によって積層方向に隣り合う蓄電セル2,2間の短絡を抑制することが可能となる。
【0063】
上記実施形態では、補強部材31が未塗工部分V1及び中間未塗工部分V2に沿って連続的に配置されているが、補強部材31は、未塗工部分V1及び中間未塗工部分V2に沿って破線状或いは点線状のように非連続に配置されていてもよい。また、補強部材31は、帯状に限られず、波線状、ジグザグ状、湾曲状などの他の形状を有していてもよい。
【0064】
上記実施形態では、正極活物質層22が第1の部分22Aと第2の部分22Bとに分割されているが、活物質層の構成はこれに限られるものではない。負極活物質層23が第1の部分及び第2の部分に分割されていてもよく、正極活物質層22及び負極活物質層23の双方が第1の部分及び第2の部分に分割されていてもよい。正極活物質層22及び負極活物質層23の双方が分割されない態様であってもよい。活物質層は、3つ以上の部分に分割されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2…蓄電セル、11…正極、12…負極、13…セパレータ、14…スペーサ、14b…短辺(一の辺部)、21…集電体、21e…縁部、22…正極活物質層(活物質層)、22A…第1の部分、22B…第2の部分、23…負極活物質層(活物質層)、31(31A,31C)…補強部材、31B…中間補強部材、31a…内縁、31b…外縁、31c…正極活物質層の縁に重なる部分、R1…正極活物質層の形成領域、R2…負極活物質層の形成領域、S…収容空間、P…注液口(貫通口)、Pf…閉塞部、V1…未塗工部分、V2…中間未塗工部分、M1~M5…境界。