(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240326BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240326BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240326BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M10/48 P
H01M50/103
H01M50/557
H01M50/545
H01M50/548 101
H01M50/463 B
H01M50/342 101
H01M50/204
H01M50/569
(21)【出願番号】P 2020188021
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】栗田 幹也
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101586(JP,A)
【文献】特開2020-024827(JP,A)
【文献】特開2012-151034(JP,A)
【文献】特開2009-231153(JP,A)
【文献】特開2013-033632(JP,A)
【文献】特開2010-287451(JP,A)
【文献】特開平09-232003(JP,A)
【文献】米国特許第10896786(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01M 10/48
H01M 50/103-50/112
H01M 50/204-50/209
H01M 50/342
H01M 50/543-50/557
H01M 50/569
H01G 11/12
H01G 11/74
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、及び前記正極集電体の一面に設けられた正極活物質層を有する正極と、
負極集電体、及び前記負極集電体の一面に設けられ、前記正極活物質層に対向配置された負極活物質層を有する負極と、
対向配置された前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に挟まれたセパレータと、
前記正極集電体の外周縁部と前記負極集電体の外周縁部との間に配置され、前記正極活物質層及び前記負極活物質層を囲む枠状をなすスペーサと、
前記正極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第1接合部と、
前記負極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第2接合部と、を備える蓄電セルであって、
前記セパレータは、少なくとも一部から突出した形状の突出部を有し、
前記突出部の少なくとも先端部は、前記正極集電体と前記スペーサとの間、及び前記負極集電体と前記スペーサとの間の少なくとも一方に挟まれ、
前記第1接合部及び前記第2接合部において、前記蓄電セルの内部から外部に向かう方向の幅を、溶着幅とすると、
前記第1接合部及び前記第2接合部において、前記先端部に隣り合う部分の前記溶着幅は、最小であることを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
正極集電体、及び前記正極集電体の一面に設けられた正極活物質層を有する正極と、
負極集電体、及び前記負極集電体の一面に設けられ、前記正極活物質層に対向配置された負極活物質層を有する負極と、
対向配置された前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に挟まれたセパレータと、
前記正極集電体の外周縁部と前記負極集電体の外周縁部との間に配置され、前記正極活物質層及び前記負極活物質層を囲む枠状をなすスペーサと、
前記正極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第1接合部と、
前記負極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第2接合部と、を備える蓄電セルであって、
前記セパレータは、少なくとも一部から突出した形状の突出部を有し、
前記スペーサは、複数の枠状の構成体により構成され、前記正極集電体と前記第1接合部を形成する前記構成体としての第1構成体と、前記負極集電体と前記第2接合部を形成する前記構成体としての第2構成体と、を少なくとも含み、
前記複数の構成体は、互いに溶着されることにより第3接合部を形成し、
前記突出部は、隣り合う前記構成体の間に挟まれ、
前記第1接合部、前記第2接合部、及び前記第3接合部において、前記蓄電セルの内部から外部に向かう方向の幅を、溶着幅とすると、
前記第3接合部において、前記先端部に隣り合う部分の前記溶着幅は、最小であることを特徴とする蓄電セル。
【請求項3】
前記セパレータは、前記正極活物質層及び前記負極活物質層に対向していない非対向部を有し、
前記突出部は、前記非対向部から突出しており、
前記非対向部は、前記正極集電体と前記スペーサとの間、及び前記負極集電体と前記スペーサとの間の少なくとも一方に挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記セパレータは、前記正極活物質層及び前記負極活物質層に対向していない非対向部を有し、
前記突出部は、前記非対向部から突出しており、
前記非対向部は、隣り合う前記構成体の間に挟まれていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記突出部の基端は、円弧状をなしていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記蓄電セルの状態を検出する電気部品が電気的に接続され、
前記突出部は、前記先端部が前記電気部品に対向しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項7】
積層された複数の蓄電セルを備え、
前記複数の蓄電セルは、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の前記蓄電セルを含む蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セル及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電装置として、例えば、特許文献1に記載されるような、複数の蓄電セルが積層されたリチウムイオン二次電池が知られている。
上記の二次電池においては、各蓄電セルが、正極と、負極と、正極と負極とに挟まれたセパレータと、セパレータに保持された電解液と、を備えている。正極は、正極集電体、及び正極集電体に設けられた正極活物質を有している。負極は、負極集電体、及び負極集電体に設けられた負極活物質を有している。セパレータは、正極活物質と負極活物質との間に挟まれている。隣り合う蓄電セルの電解液を液絡させないように、各蓄電セルの正極集電体の外周縁部と負極集電体の外周縁部との間には、フッ素樹脂ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴムなどの絶縁部が配置され、それによって各蓄電セルを密閉化している。
【0003】
また、特許文献2に記載される蓄電セルには、蓄電セルを封止するシール部を貫通して、蓄電セルの内部から外部に延びるチューブが設けられている。当該チューブは、蓄電セルのガス抜き安全弁の機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-232003号公報
【文献】特開2010-287451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池が使用されると、蓄電セルの内部にガスが発生するため、蓄電セルの内圧が上昇する。蓄電セルの内圧が上昇し過ぎると、ガスを排出するための構成が必要になる。しかし、特許文献1の蓄電セルは、ガス抜きを意図する構成を有していない。
【0006】
一方で、特許文献2に記載される蓄電セルでは、蓄電セルの内圧が上昇し過ぎると、チューブを介して蓄電セルの内部に発生したガスを蓄電セルの外部に排出することができるが、蓄電セルに別部材を取り付ける構成のため、蓄電セルの体格が大型化し、ひいては二次電池の体格が大型化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する蓄電セルは、正極集電体、及び前記正極集電体の一面に設けられた正極活物質層を有する正極と、負極集電体、及び前記負極集電体の一面に設けられ、前記正極活物質層に対向配置された負極活物質層を有する負極と、対向配置された前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に挟まれたセパレータと、前記正極集電体の外周縁部と前記負極集電体の外周縁部との間に配置され、前記正極活物質層及び前記負極活物質層を囲む枠状をなすスペーサと、前記正極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第1接合部と、前記負極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第2接合部と、を備える蓄電セルであって、前記セパレータは、少なくとも一部から突出した形状の突出部を有し、前記突出部の少なくとも先端部は、前記正極集電体と前記スペーサとの間、及び前記負極集電体と前記スペーサとの間の少なくとも一方に挟まれ、前記第1接合部及び前記第2接合部において、前記蓄電セルの内部から外部に向かう方向の幅を、溶着幅とすると、前記第1接合部及び前記第2接合部において、前記先端部に隣り合う部分の前記溶着幅は、最小である。
【0008】
これによれば、過充電や高温などで蓄電セルの内圧が上昇した場合に、第1接合部及び第2接合部における突出部の先端部に隣り合う部分を最初に開裂させて、その開裂箇所から蓄電セルの内部のガスを蓄電セルの外部に排出可能となる。すなわち、蓄電セルの内圧上昇時に、セパレータの突出部が設けられた特定箇所からガス排出できる。
【0009】
また、ガス排出のためにガス抜き安全弁を別途設ける必要がない上、突出部が蓄電セルの外部に突出しないため、蓄電セルの体格を大型化させることもない。したがって、蓄電セルの体格を大型化することなく、内圧上昇時のガス排出が可能である。
【0010】
上記課題を解決する蓄電セルは、正極集電体、及び前記正極集電体の一面に設けられた正極活物質層を有する正極と、負極集電体、及び前記負極集電体の一面に設けられ、前記正極活物質層に対向配置された負極活物質層を有する負極と、対向配置された前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に挟まれたセパレータと、前記正極集電体の外周縁部と前記負極集電体の外周縁部との間に配置され、前記正極活物質層及び前記負極活物質層を囲む枠状をなすスペーサと、前記正極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第1接合部と、前記負極集電体の外周縁部の全周と前記スペーサとが溶着された第2接合部と、を備える蓄電セルであって、前記セパレータは、少なくとも一部から突出した形状の突出部を有し、前記スペーサは、複数の枠状の構成体により構成され、前記正極集電体と前記第1接合部を形成する前記構成体としての第1構成体と、前記負極集電体と前記第2接合部を形成する前記構成体としての第2構成体と、を少なくとも含み、前記複数の構成体は、互いに溶着されることにより第3接合部を形成し、前記突出部は、隣り合う前記構成体の間に挟まれ、前記第1接合部、前記第2接合部、及び前記第3接合部において、前記蓄電セルの内部から外部に向かう方向の幅を、溶着幅とすると、前記第3接合部において、前記先端部に隣り合う部分の前記溶着幅は、最小である。
【0011】
これによれば、過充電や高温などで蓄電セルの内圧が上昇した場合に、第1接合部、第2接合部、及び第3接合部における突出部の先端部に隣り合う部分を最初に開裂させて、その開裂箇所から蓄電セルの内部のガスを蓄電セルの外部に排出可能となる。すなわち、蓄電セルの内圧上昇時に、セパレータの突出部が設けられた特定箇所からガス排出できる。
【0012】
また、ガス排出のためにガス抜き安全弁を別途設ける必要がない上、突出部が蓄電セルの外部に突出しないため、蓄電セルの体格を大型化させることもない。したがって、蓄電セルの体格を大型化することなく、内圧上昇時のガス排出が可能である。
【0013】
上記の蓄電セルにおいて、前記セパレータは、前記正極活物質層及び前記負極活物質層に対向していない非対向部を有し、前記突出部は、前記非対向部から突出しており、前記非対向部は、前記正極集電体と前記スペーサとの間、及び前記負極集電体と前記スペーサとの間の少なくとも一方に挟まれているとよい。
【0014】
これによれば、セパレータの非対向部が、正極集電体とスペーサとの間、及び負極集電体とスペーサとの間の少なくとも一方に挟まれているため、セパレータが蓄電セルの内部において固定される。蓄電セルが外部から衝撃を受けたとしても、蓄電セルの内部においてセパレータの固定状態を維持できる。
【0015】
上記の蓄電セルにおいて、前記セパレータは、前記正極活物質層及び前記負極活物質層に対向していない非対向部を有し、前記突出部は、前記非対向部から突出しており、前記非対向部は、隣り合う前記構成体の間に挟まれているとよい。
【0016】
これによれば、セパレータの非対向部が隣り合う構成体の間に挟まれるため、セパレータが蓄電セルの内部において固定される。蓄電セルが外部から衝撃を受けたとしても、蓄電セルの内部においてセパレータの固定状態を維持できる。
【0017】
上記の蓄電セルにおいて、前記突出部の基端は、円弧状をなしているとよい。
これによれば、蓄電セルの内圧が上昇すると、突出部の基端に応力が集中し易くなるが、突出部の基端が円弧状をなしている。そのため、突出部の基端に作用する応力が分散される。セパレータが破れにくくなるため、蓄電セルの内圧上昇に伴い、第1接合部及び第2接合部における突出部の先端部と隣り合う部分から蓄電セルの外部にガスを排出し易くなる。
【0018】
上記の蓄電セルにおいて、前記蓄電セルの状態を検出する電気部品が電気的に接続され、前記突出部は、前記先端部が前記電気部品に対向しない位置に設けられているとよい。
これによれば、電気部品が、蓄電セルの開排出される高圧ガスにさらされ難くなる。
【0019】
上記課題を解決する蓄電装置は、積層された複数の蓄電セルを備え、前記複数の蓄電セルは、上記の蓄電セルを含む。
これによれば、蓄電装置においても、体格を大型化することなく、内圧上昇時のガス排出が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、体格を大型化することなく、内圧上昇時のガス排出を可能とした蓄電セル及び蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】第1実施形態における蓄電セルを示す断面図。
【
図3】第1実施形態における蓄電セルを示す断面図。
【
図6】第2実施形態における蓄電セルを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、蓄電セル及び蓄電装置を具体化した第1実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。
【0023】
図1に示すように、蓄電装置1は、積層された複数の蓄電セル10により構成されるセルスタック2を含んでいる。複数の蓄電セル10が積層される方向を積層方向Aとする。
図2及び
図3に示すように、蓄電セル10は、正極20と、負極30と、セパレータ40と、スペーサ50と、検出線60とを備えている。積層方向Aにおいて蓄電セル10を外側から見ることを平面視と呼ぶ。なお、検出線60は、電気的に導通可能な導線である。
【0024】
正極20は、例えば矩形状の電極である。正極20は、平面視で矩形状の正極集電体21、及び正極活物質層22を有している。正極集電体21は、正極集電体21の一面としての第1面21aと、第1面21aとは反対側に位置する第2面21bとを有している。正極活物質層22は、正極集電体21の第1面21aに設けられている。正極集電体21の第2面21bには、正極活物質層22は設けられていない。
【0025】
負極30は、例えば矩形状の電極である。負極30は、平面視で矩形状の負極集電体31、及び負極活物質層32を有している。負極集電体31は、負極集電体31の一面としての第1面31aと、第1面31aとは反対側に位置する第2面31bとを有している。負極活物質層32は、負極集電体31の第1面31aに設けられている。負極集電体31の第2面31bには、負極活物質層32は設けられていない。
【0026】
正極集電体21の第1面21aと負極集電体31の第1面31aとは対向している。正極活物質層22と負極活物質層32とは対向配置されている。セパレータ40は、対向配置された正極活物質層22と負極活物質層32との間に挟まれている。つまり、正極20と負極30とは、セパレータ40を介して重なり合っている。正極活物質層22及び負極活物質層32は、それぞれ矩形状に形成されている。負極活物質層32は、正極活物質層22よりも一回り大きく形成されている。正極20と負極30とが重なり合う方向から見ることは、平面視と同義である。平面視において、正極活物質層22の形成領域の全体が、負極活物質層32の形成領域の内側に位置している。
【0027】
図2、
図3、及び
図4に示すように、セパレータ40は、平面視において、負極活物質層32の形成領域よりも大きい矩形状をなしている。セパレータ40は、平面視において、正極集電体21及び負極集電体31よりも小さい矩形状をなしている。セパレータ40は、正極20と負極30とが重なり合う方向において、正極活物質層22及び負極活物質層32に対向していない非対向部41を有している。
【0028】
スペーサ50は、正極集電体21と負極集電体31との間に位置する。スペーサ50は、絶縁材料を含み、正極集電体21と負極集電体31とを絶縁することにより正極集電体21と負極集電体31との短絡を防止する。本実施形態では、スペーサ50の材料は、酸変性ポリエチレンである。なお、スペーサ50の材料は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリプロピレン(変性PP)、ABS樹脂、及びAS樹脂等の種々の樹脂材料が挙げられる。
【0029】
スペーサ50は、正極集電体21の第1面21aにおける正極集電体21の外周縁21c寄りに位置する外周縁部21dと、負極集電体31の第1面31aにおける負極集電体31の外周縁31c寄りに位置する外周縁部31dとの間に配置されている。スペーサ50は、正極活物質層22及び負極活物質層32を囲む枠状をなしている。平面視において、スペーサ50は、四角枠状をなしている。スペーサ50は、正極集電体21と負極集電体31との間に挟まれている部分と、正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cよりも外側に位置する部分とを有している。
【0030】
スペーサ50は、積層方向Aの両端面のうち、正極集電体21寄りの端面に四角枠状の第1端面50bを有し、負極集電体31寄りの端面に四角枠状の第2端面50cを有する。
【0031】
図2及び
図3に示すように、スペーサ50において、正極集電体21の外周縁部21dと負極集電体31の外周縁部31dとの間に挟まれている部分を介在部50aとする。介在部50aと正極集電体21との間には、非対向部41の外縁が挟まれる部分と、介在部50aと正極集電体21とが互いに溶着された第1接合部W1とが形成されている。平面視において、蓄電セル10の内部から外部に向かう方向において、非対向部41が挟まれる部分と第1接合部W1とはこの順に並ぶように配置されている。蓄電セル10は、正極集電体21の外周縁部21dとスペーサ50とが溶着された第1接合部W1を備えている。なお、介在部50aと正極集電体21との間に挟まれたセパレータ40は、介在部50aに若干溶着されている。
【0032】
第1接合部W1は、スペーサ50の第1端面50bにおける正極集電体21の外周縁部21dが重なり合う部分と、正極集電体21の外周縁部21dとが溶着されて形成されている。第1接合部W1において、第1端面50bと、正極集電体21の外周縁部21dとは全周に亘って溶着されている。そのため、
図4に示すように、平面視において、第1接合部W1は、四角枠状をなしている。なお、
図4には、本来であれば第1接合部W1の断面は現れないが、説明の便宜上、第1接合部W1が配置されている位置を
図3のドットハッチングで示す。
【0033】
図2及び
図3に示すように、介在部50aと負極集電体31とは互いに溶着されている。介在部50aと負極集電体31とが溶着された部分を第2接合部W2とする。蓄電セル10は、負極集電体31の外周縁部31dとスペーサ50とが溶着された第2接合部W2を備えている。第2接合部W2は、スペーサ50の第2端面50cにおける負極集電体31の外周縁部31dが重なり合う部分と、負極集電体31の外周縁部31dとが溶着されて形成されている。第2接合部W2において、第2端面50cと、負極集電体31の外周縁部31dとは全周に亘って溶着されている。そのため、平面視において、第2接合部W2は、四角枠状をなしている。なお、第2接合部W2は、第1接合部W1よりも溶着面積が大きい。第1接合部W1及び第2接合部W2により蓄電セル10の正極20、負極30、及びスペーサ50により区画される空間Sのシール性が保たれる。
【0034】
図4に示すように、平面視において、検出線60は、スペーサ50に埋設されている部分と、蓄電セル10の外部に位置する部分とを有している。検出線60において、スペーサ50に埋設されている部分は、正極集電体21に電気的に接続される。検出線60におけるスペーサ50に埋設されている部分は、スペーサ50を貫通していない。検出線60におけるスペーサ50に埋設されている部分は、正極集電体21に溶着されているが、第1接合部W1とは異なる溶着部である。検出線60には、蓄電セル10の状態である蓄電セル10の電圧を検出する監視基板65が電気的に接続されている。監視基板65は、検出線60を介して蓄電セル10に電気的に接続される電気部品である。
【0035】
図1に示すように、正極集電体21の第2面21bと負極集電体31の第2面31bとを互いに接するように複数の蓄電セル10がスタックされることによりセルスタック2が構成される。蓄電セル10における正極20と負極30とが重なり合う方向は、積層方向Aに一致している。これにより、複数の蓄電セル10が電気的に直列に接続される。セルスタック2では、隣り合う蓄電セル10により互いに接する正極集電体21及び負極集電体31を電極体とする疑似的なバイポーラ電極13が形成される。1つのバイポーラ電極13は、正極集電体21、負極集電体31、正極活物質層22、及び負極活物質層32を含む。なお、複数の蓄電セル10が備えるスペーサ50において、正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cよりも外側に位置する部分は、互いに接合されて一体化している。これにより、蓄電装置1として、バイポーラ電極13を構成している正極集電体21と負極集電体31との間のシール性が確保される。
【0036】
セルスタック2における積層方向Aの第1端部11には、終端電極として正極集電体21と正極活物質層22が配置される。蓄電装置1における積層方向Aの第2端部12には、終端電極として負極集電体31と負極活物質層32が配置される。
【0037】
蓄電装置1は、積層方向Aにおいてセルスタック2を挟むように配置された、正極通電板70及び負極通電板80からなる一対の通電体を備えている。正極通電板70及び負極通電板80は、それぞれ良導電性材料で構成される。正極通電板70は、第1端部11において最も外側に配置された正極集電体21に電気的に接続されている。負極通電板80は、第2端部12において最も外側に配置された負極集電体31に電気的に接続されている。正極通電板70及び負極通電板80それぞれに設けられた図示しない端子を通じて蓄電装置1の充放電が行われる。正極通電板70及び負極通電板80それぞれを構成する材料としては、正極集電体21及び負極集電体31を構成する材料と同じ材料を用いることができる。正極通電板70及び負極通電板80それぞれは、蓄電セル10に用いられた正極集電体21及び負極集電体31よりも厚い金属板で構成してもよい。
【0038】
正極集電体21及び負極集電体31は、化学的に不活性な電気伝導体である。正極集電体21及び負極集電体31を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。正極集電体21及び負極集電体31は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。正極集電体21及び負極集電体31の表面には、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。正極集電体21及び負極集電体31は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。正極集電体21及び負極集電体31を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、又はステンレス鋼箔等を用いることができる。正極集電体21及び負極集電体31として、アルミニウム箔、銅箔、又はステンレス鋼箔を用いた場合、正極集電体21及び負極集電体31の機械的強度を確保することができる。正極集電体21及び負極集電体31は、上記金属の合金からなる箔又は異種金属を接合したクラッド材からなる箔であってもよい。本実施形態において、正極集電体21はアルミニウム箔であり、負極集電体31は銅箔である。正極集電体21及び負極集電体31は、箔状である場合、厚みを例えば、1μm~100μmとすればよい。
【0039】
正極活物質層22は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、層状岩塩構造を有するリチウムイオン複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層22は、複合活物質としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含む。
【0040】
負極活物質層32は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金、又は、化合物であれば、特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としては、炭素、金属化合物、及びリチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)、及びソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)等が挙げられる。人造黒鉛としては、例えば、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素としては、例えば、シリコン(ケイ素)やスズ等が挙げられる。本実施形態において、負極活物質層32は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0041】
正極活物質層22及び負極活物質層32のそれぞれは、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2μm~150μmである。正極集電体21及び負極集電体31の表面に活物質層を形成させるために、ロールコート法等の公知の方法を用いてもよい。正極20又は負極30の熱安定性を向上させるために、正極集電体21及び負極集電体31の表面(片面又は両面)又は正極活物質層22及び負極活物質層32の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0042】
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、及びデンプン-アクリル酸グラフト重合体等が挙げられる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒としては、例えば、水、N-メチル-2-ピロドリン(NMP)等が用いられる。
【0043】
セパレータ40は、正極20と負極30とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる。セパレータ40は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。セパレータ40を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレンといったポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。セパレータ40は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータ40には、電解質が含浸されてもよく、セパレータ40自体を高分子ゲル電解質又は電解質等の電解質で構成してもよい。
【0044】
セパレータ40に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質等が挙げられる。
【0045】
セパレータ40に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
ここで、蓄電セル10が使用されると蓄電セル10の内部にガスが発生するため、蓄電セル10の内圧が上昇する。蓄電セル10の内圧が上昇し過ぎると、第1接合部W1又は第2接合部W2のどこか一部が開裂する。蓄電セル10では、開裂箇所から蓄電セル10に溜まったガスが放出されることで、内圧上昇が抑制される。本実施形態の蓄電セル10は、蓄電セル10の内圧上昇に伴い、蓄電セル10の内圧を開放するための開裂箇所を特定するための構成が採用されている。以下に詳しく説明する。
【0047】
図4に示すように、セパレータ40は、突出部42を有している。非対向部41は、4つの外縁のうちの1つである第1外縁41aと、第1外縁41aと平行に延びるとともに第1外縁41aと対向する位置に配置される第2外縁41bとを備えている。突出部42は、第1外縁41aから突出している。そのため、突出部42は、セパレータ40の一部から突出した形状をなしている。平面視において、突出部42は、略矩形状をなしている。検出線60は、平面視において、非対向部41の第2外縁41bと対向する位置に設けられている。
【0048】
第1外縁41aから突出部42が突出する方向を突出方向Bとする。平面視において、第1外縁41aが延びる方向と突出方向Bは直交している。突出部42は、突出方向Bにおいて突出部42の先端部42aが監視基板65に対向しない位置に設けられている。平面視において、突出部42の先端部42aは、正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cよりも内側に位置している。
【0049】
非対向部41が正極集電体21とスペーサ50との間に挟まれていることから、突出部42も正極集電体21とスペーサ50との間に挟まれている。平面視において、突出部42の全体は、第1接合部W1に囲まれている。平面視において、突出部42における第1外縁41aの延びる方向における一対の側縁と、突出方向Bの先端に位置する外縁は、第1接合部W1に隣り合っている。すなわち、平面視において、第1接合部W1は、突出部42が設けられている位置において、突出部42を避けるように凹状をなす部分を有している。なお、
図2は蓄電セル10を第1外縁41a及び第2外縁41bを通過し、且つ突出部42を通過しないように切断した断面図であり、
図3は蓄電セル10を第1外縁41a、第2外縁41b、及び突出部42を通過するように切断した断面図である。
【0050】
図4及び
図5に示すように、突出部42の先端部42aの2つの角部42cは、円弧状をなしている。突出部42における非対向部41との境界に位置する部分、すなわち突出部42の基端42bは、滑らかに非対向部41と連続している。突出部42の基端42bは、円弧状をなしている。
【0051】
平面視において、蓄電セル10の内部から外部に向かう方向を放射方向Cとする。放射方向Cとは、平面視において、蓄電セル10の中央部から蓄電セル10の外部に放射状に向かう方向である。第1接合部W1及び第2接合部W2において、放射方向Cの幅を溶着幅とする。
【0052】
平面視において、第1接合部W1における非対向部41の外縁から正極集電体21の外周縁21cまでの溶着幅を第1溶着幅H1とする。平面視において、第1接合部W1における突出部42の先端部42aから正極集電体21の外周縁21cまでの溶着幅を第2溶着幅H2とする。第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分の第2溶着幅H2は、第1接合部W1における第1外縁41aが延びる方向で突出部42の一対の側縁に隣り合う部分の第1溶着幅H1よりも小さい。すなわち、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分のシール幅が、第1接合部W1における第1外縁41aが延びる方向で突出部42の一対の側縁に隣り合う部分のシール幅よりも小さい。
【0053】
また、四角枠状に形成された第1接合部W1及び第2接合部W2の中で、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分のみ、その溶着幅が第2溶着幅H2となり、その他の部分の溶着幅は第1溶着幅H1となっている。すなわち、第1接合部W1における突出部42近傍において、溶着幅が第1溶着幅H1から第2溶着幅H2に変化している。また、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分の溶着幅が、第1接合部W1及び第2接合部W2の中で局所的に小さくなっている。よって、第1接合部W1及び第2接合部W2における放射方向Cの溶着幅の中でも、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分の第2溶着幅H2は最小である。
【0054】
本実施形態の作用を説明する。
蓄電装置1に充放電されることにより蓄電装置1が使用されると、各蓄電セル10の内部にガスが発生するため、各蓄電セル10の内圧が上昇する。各蓄電セル10の内圧が上昇し過ぎると、第1接合部W1及び第2接合部W2に応力が作用する。ここで、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分の溶着幅は、最小の溶着幅である第2溶着幅H2となる。そのため、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分は、第1接合部W1及び第2接合部W2の中でも最も応力に対して脆弱な箇所となる。よって、蓄電セル10の内圧上昇に伴い、第1接合部W1における突出方向Bで突出部42の先端部42aが隣り合う部分が開裂する。すなわち、蓄電セル10の特定箇所から蓄電セル10の内部で発生したガスが噴出する。
【0055】
本実施形態の効果を説明する。
(1-1)過充電や高温などで蓄電セル10の内圧が上昇した場合に、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分を最初に開裂させて、その開裂箇所から蓄電セル10の内部のガスを蓄電セル10の外部に排出可能となる。すなわち、蓄電セル10の内圧上昇時に、セパレータ40の突出部42が設けられた特定箇所からガス排出できる。
【0056】
また、ガス排出のためにガス抜き安全弁を別途設ける必要がない上、突出部42が蓄電セル10の外部に突出しないため、蓄電セル10の体格を大型化させることもない。したがって、蓄電セル10の体格を大型化することなく、内圧上昇時のガス排出が可能である。
【0057】
(1-2)第1接合部W1及び第2接合部W2の中で、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分は、第1接合部W1における突出方向Bで先端部42aに隣り合わないその他の部分よりも蓄電セル10の内圧上昇時に開裂し易くなる。よって、蓄電セル10の内圧を開放させるときの開裂箇所を特定できる。
【0058】
(1-3)蓄電セル10の体格を大型化することがないため、蓄電セル10の搭載先の搭載スペースを考慮して、蓄電セル10を必要以上に小型化する必要がない。そのため、蓄電セル10のエネルギー密度の低下を抑制できる。したがって、エネルギー密度の低下を抑制しつつ開裂箇所を特定できる。
【0059】
(1-4)もともと蓄電セル10が有するセパレータ40に突出部42を形成する工夫を施すことにより、ガス抜き時に新規部品を必要としない蓄電セル10を実現できる。そのため、蓄電セル10の部品点数を削減できる。
【0060】
(1-5)セパレータ40の非対向部41が、正極集電体21とスペーサ50との間に挟まれているため、セパレータ40が蓄電セル10の内部において固定される。蓄電セル10が外部から衝撃を受けたとしても、蓄電セル10の内部においてセパレータ40の固定状態を維持できる。また、セパレータ40は、スペーサ50にも若干溶着されているため、セパレータ40の固定強度を向上させることができる。
【0061】
(1-6)蓄電セル10の内圧が上昇すると、突出部42の基端42bに応力が集中し易くなるが、突出部42の基端42bが円弧状をなしている。そのため、突出部42の基端42bに作用する応力が分散される。セパレータ40が破れにくくなるため、蓄電セル10の内圧上昇に伴い、第1接合部W1における突出方向Bで突出部42の先端部42aと隣り合う部分から蓄電セル10の外部にガスを排出し易くなる。
【0062】
(1-7)突出部42は、突出方向Bにおいて突出部42の先端部42aが監視基板65に対向しない位置に設けられている。そのため、監視基板65が、蓄電セル10の開裂箇所から排出される高圧ガスにさらされ難くなる。
【0063】
(1-8)蓄電装置1においても、体格を大型化することなく、内圧上昇時のガス排出が可能となる。
<第2実施形態>
以下、蓄電セルを具体化した第2実施形態を
図6~
図9にしたがって説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して詳細な説明は割愛する。
【0064】
図6に示すように、スペーサ50は、複数の枠状の構成体により構成されている。本実施形態において、スペーサ50は、2つの構成体により構成されている。2つの構成体は、第1構成体51及び第2構成体52である。本実施形態のスペーサ50は、第1実施形態と同様に、四角枠状をなしている。そのため、第1構成体51及び第2構成体52は、四角枠状をなしている。
【0065】
第1接合部W1は、第1構成体51における正極集電体21の外周縁部21dが重なり合う部分と、正極集電体21の外周縁部21dとが溶着されて形成されている。第1構成体51は、第2構成体52に対向する四角枠状の第1端面51aを有している。第2接合部W2は、第2構成体52における負極集電体31の外周縁部31dが重なり合う部分と、負極集電体31の外周縁部31dとが溶着されて形成されている。第2構成体52は、第1構成体51に対向する四角枠状の第1端面52aを有している。
【0066】
非対向部41は、隣り合う第1構成体51と第2構成体52とに挟まれている。第1構成体51と第2構成体52との間には、非対向部41が挟まれる部分と、第1構成体51と第2構成体52とが互いに溶着された第3接合部W3とが形成されている。非対向部41が挟まれる部分において、セパレータ40は、第1構成体51及び第2構成体52に若干溶着されている。
【0067】
第3接合部W3は、第1構成体51と第2構成体52との間において、正極集電体21の外周縁部21dと負極集電体31の外周縁部31dとに挟まれた領域に設けられている。第3接合部W3は、第1端面51aにおける正極集電体21の外周縁部21dと負極集電体31の外周縁部31dに挟まれた領域と、第1端面52aにおける正極集電体21の外周縁部21dと負極集電体31の外周縁部31dに挟まれた領域とを全周に亘って溶着することで形成される。
【0068】
なお、蓄電セル10を単一で見たとき、第1構成体51の第1端面51aと第2構成体52の第1端面52aとの間には、第1構成体51と第2構成体52とが溶着されない非溶着部が設けられている。非溶着部は、第1構成体51と第2構成体52の間において、正極集電体21の外周縁部21dと負極集電体31の外周縁部31dとの間に挟まれていない領域に設けられている。非溶着部は、複数の蓄電セル10が備えるスペーサ50における正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cよりも外側に位置する部分が互いに接合されて一体化したときに無くなる。
【0069】
図7に示すように、放射方向Cにおいて、非対向部41が挟まれる部分と第3接合部W3とはこの順に並ぶように配置されている。平面視において、第3接合部W3は、四角枠状をなしている。なお、
図6には、隣り合う第1構成体51と第2構成体52との間に非対向部41が挟まれた状況を示しており、突出部42は図示されていない。突出部42は、
図7に図示する。
【0070】
非対向部41が隣り合う第1構成体51と第2構成体52との間に挟まれていることから、突出部42も第1構成体51と第2構成体52との間に挟まれている。平面視において、突出部42は、第3接合部W3に囲まれている。平面視において、突出部42における第1外縁41aの延びる方向における一対の側縁、及び突出方向Bの先端に位置する外縁は、第3接合部W3に隣り合っている。すなわち、平面視において、第3接合部W3は、突出部42が設けられている位置において、突出部42を避けるように凹状をなす部分を有している。
【0071】
図8及び
図9に示すように、平面視において、第1接合部W1及び第2接合部W2は、四角枠状をなしている。平面視において、第1接合部W1及び第2接合部W2は、同じ形状及び同じ溶着面積を有している。平面視において、第1接合部W1及び第2接合部W2の溶着幅は同じである。なお、第1接合部W1及び第2接合部W2の溶着幅は、第3接合部W3の溶着幅よりも大きい。
【0072】
図6及び
図7に示すように、平面視において、第3接合部W3における非対向部41の外縁から、第3接合部W3における正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cと重なる位置までの溶着幅を第3溶着幅H3とする。第3接合部W3における突出部42の先端部42aから、第3接合部W3における正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cと重なる位置までの溶着幅を第4溶着幅H4とする。第3接合部W3における突出方向Bで先端部42aと隣り合う部分の第4溶着幅H4は、第3接合部W3における第1外縁41aが延びる方向で突出部42の一対の側縁に隣り合う部分の第3溶着幅H3よりも小さい。すなわち、第3接合部W3における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分のシール幅が、第3接合部W3における第1外縁41aが延びる方向で突出部42の一対の側縁に隣り合う部分のシール幅よりも小さい。
【0073】
また、四角枠状に形成された第3接合部W3の中で、第3接合部W3における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分のみ、その溶着幅が第4溶着幅H4となり、その他の部分の溶着幅が第3溶着幅H3となっている。すなわち、第3接合部W3における突出部42近傍において、溶着幅が第3溶着幅H3から第4溶着幅H4に変化している。また、第3接合部W3における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分の溶着幅が、第1接合部W1、第2接合部W2、及び第3接合部W3の中で局所的に小さくなっている。よって、第1接合部W1、第2接合部W2、及び第3接合部W3における放射方向Cの溶着幅の中でも、第3接合部W3における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分の第4溶着幅H4は最小である。
【0074】
本実施形態の作用を説明する。
蓄電装置1に充放電されることにより蓄電装置1が使用されると、各蓄電セル10の内部にガスが発生するため、各蓄電セル10の内圧が上昇する。各蓄電セル10の内圧が上昇し過ぎると、第1接合部W1、第2接合部W2、及び第3接合部W3に応力が作用する。ここで、第3接合部W3における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分の溶着幅は、最小の溶着幅である第4溶着幅H4となる。そのため、第3接合部W3における突出方向Bで先端部42aに隣り合う部分は、第1接合部W1、第2接合部W2、及び第3接合部W3の中でも最も応力に対して脆弱な箇所となる。よって、蓄電セル10の内圧上昇に伴い、第3接合部W3における突出方向Bで突出部42の先端部42aが隣り合う部分が開裂する。すなわち、蓄電セル10の特定箇所から蓄電セル10の内部で発生したガスが噴出する。
【0075】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態は基本的には第1実施形態の(1-3)、(1-4)、及び(1-6)~(1-8)と同様の効果を得ることができ、且つ以下の効果を得ることができる。
【0076】
(2-1)過充電や高温などで蓄電セル10の内圧が上昇した場合に、第1接合部W1、第2接合部W2、及び第3接合部W3における突出部42の先端部42aと隣り合う部分を最初に開裂させて、その開裂箇所から蓄電セル10の内部のガスを蓄電セル10の外部に排出可能となる。すなわち、蓄電セル10の内圧上昇時に、セパレータ40の突出部42が設けられた特定箇所からガス排出できる。
【0077】
また、ガス排出のためにガス抜き安全弁を別途設ける必要がない上、突出部42が蓄電セル10の外部に突出しないため、蓄電セル10の体格を大型化させることもない。したがって、蓄電セル10の体格を大型化することなく、内圧上昇時のガス排出が可能である。
【0078】
(2-2)第1接合部W1、第2接合部W2、及び第3接合部W3において、突出方向Bで突出部42の先端部42aに隣り合う部分は、突出部42の先端部42aと隣り合わないその他の部分よりも蓄電セル10の内圧上昇時に開裂し易くなる。よって、蓄電セル10の内圧を開放させるときの開裂箇所を特定できる。
【0079】
(2-3)セパレータ40の非対向部41が隣り合う第1構成体51及び第2構成体52の間に挟まれるため、セパレータ40が蓄電セル10の内部において固定される。蓄電セル10が外部から衝撃を受けたとしても、蓄電セル10の内部においてセパレータ40の固定状態を維持できる。また、セパレータ40は、第1構成体51及び第2構成体52にも若干溶着されているため、セパレータ40の固定強度を向上させることができる。
【0080】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 上記各実施形態において、電気部品として監視基板65が採用されていたが、これに限らない。例えば、温度検出装置が検出線60を介して蓄電セル10に電気的に接続されてもよい。温度検出装置は、蓄電セル10の状態である蓄電セル10の温度を検出する電気部品である。なお、監視基板65及び温度検出装置の両者を蓄電セル10に電気的に接続してもよい。
【0081】
○ 突出部42の基端42bは、円弧状をなしていなくてもよい。突出部42の基端42bは、非対向部41と直角をなすように構成されていてもよい。
○ 平面視において、突出部42は、略矩形状をなしていたが、例えば、円形をなしていてもよい。突出部42の形状は、適宜変更してもよい。
【0082】
○ 第1実施形態において、突出部42は、正極集電体21とスペーサ50との間に挟まれていたが、これに限らない。例えば、突出部42は、負極集電体31とスペーサ50との間に挟ませてもよい。このように変更するのであれば、非対向部41の外縁を、負極集電体31と介在部50aとの間に挟ませるとよい。そして、平面視において、突出部42が第2接合部W2に囲まれるように変更する。平面視において突出部42が第2接合部W2に囲まれるように変更するのであれば、第2接合部W2における突出方向Bで突出部42の先端部42aに隣り合う部分の溶着幅が、第1接合部W1及び第2接合部W2の溶着幅の中で最小となるように変更する。また、突出部42は、2つ以上設けられていてもよい。突出部42が2つ採用される場合、2つの突出部42の一方を正極集電体21とスペーサ50との間に挟ませ、2つの突出部42のうち他方を負極集電体31とスペーサ50との間に挟ませてもよい。すなわち、第1実施形態と本変更例によれば、突出部42は、正極集電体21とスペーサ50との間、及び負極集電体31とスペーサ50との間の少なくとも一方に挟まれ、平面視において第1接合部W1及び第2接合部W2の少なくとも一方に囲まれていればよい。
【0083】
○ 第1実施形態及び上記変更例において、セパレータ40の非対向部41は、正極集電体21とスペーサ50との間、及び負極集電体31とスペーサ50との間の少なくとも一方に挟まれていなくてもよい。例えば、突出部42の先端部42aのみが正極集電体21とスペーサ50との間、及び負極集電体31とスペーサ50との間の少なくとも一方に挟まれていればよい。この場合、平面視において、突出部42の先端部42aが第1接合部W1及び第2接合部W2の少なくとも一方に囲まれていればよい。第1実施形態、上記変更例、及び本変更例によれば、平面視において突出部42の先端部42aが少なくとも第1接合部W1及び第2接合部W2の少なくとも一方に囲まれていればよい。
【0084】
○ 第2実施形態において、スペーサ50を、第1構成体51と、第2構成体52と、第3構成体とにより構成されるように変更してもよい。また、スペーサ50を、4つ以上の構成体で構成してもよい。
【0085】
突出部42は、隣り合う構成体の間に挟まれていればよい。このように変更するのであれば、非対向部41の外縁を、隣り合う構成体の間に挟ませるとよい。そして、平面視において、突出部42が隣り合う構成体が溶着される第3接合部に囲まれるように変更することが好ましい。また、突出部42は、2つ以上設けられていてもよい。
【0086】
○ 第2実施形態及び上記変更例において、セパレータ40の非対向部41は、第1構成体51と第2構成体52との間に挟まれていなくてもよい。例えば、突出部42の先端部42aのみが第1構成体51と第2構成体52との間に挟まれていればよい。
【0087】
○ 突出部42は、セパレータ40の非対向部41の第1外縁41aから突出していたが、非対向部41の4つの外縁それぞれから突出部42を突出させてもよい。また、突出部42を非対向部41の4つの外縁のうち2つの外縁の全長から突出させる、もしくは4つの外縁のうち3つの外縁の全長から突出させるように変更してもよい。すなわち、突出部42は、セパレータ40の外縁の全周のうち少なくとも一部から突出した形状であればよい。
【0088】
○ 第2実施形態において、第1構成体51と第2構成体52との間に設けられた非溶着部は、蓄電セル10を単一で見たときに割愛されていてもよい。すなわち、蓄電セル10を単一で見たとき、第1構成体51と第2構成体52との間における正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cよりも外側に位置する部分を溶着させてもよい。
【0089】
○ 第1実施形態において、蓄電装置1は、複数の蓄電セル10を積層して構成されていたが、第2実施形態に記載の蓄電セル10を積層して構成してもよい。なお、蓄電装置1は、複数の蓄電セルを積層して構成され、複数の蓄電セルのうち1つ以上が第1実施形態における蓄電セル10であればよい。同様に、蓄電装置1を構成する複数の蓄電セルのうち1つ以上が第2実施形態における蓄電セル10であればよい。
【0090】
○ 上記各実施形態において、バイポーラ電極13を構成する上で、正極集電体21の第2面21bと負極集電体31の第2面31bとを重ね合させていたが、例えば、正極集電体21と負極集電体31とを一体的に構成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…蓄電装置、10…蓄電セル、20…正極、21…正極集電体、21a…第1面、21c…外周縁、21d…外周縁部、22…正極活物質層、30…負極、31…負極集電体、31a…第1面、31c…外周縁、31d…外周縁部、32…負極活物質層、40…セパレータ、41…非対向部、42…突出部、42a…先端部、42b…基端、50…スペーサ、51…第1構成体、52…第2構成体、60…検出線、W1…第1接合部、W2…第2接合部、W3…第3接合部、H1…第1溶着幅、H2…第2溶着幅、H3…第3溶着幅、H4…第4溶着幅、B…突出方向、C…放射方向。