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<図1>
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図1
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図2
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図3
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図4A
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図4B
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図5
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図6
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  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図8
  • 特許-投影装置、投影方法及びプログラム 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】投影装置、投影方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H04N5/74 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020188049
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077270
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直也
(72)【発明者】
【氏名】中越 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】菊間 慎二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 繁
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181668(JP,A)
【文献】特開2017-198733(JP,A)
【文献】特開2019-184629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
H04N 9/31
G03B 21/00
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶対輝度の情報を含む入力データに基づいてスクリーンに画像を投影する投影装置であって、
前記投影装置が所定の状態に設定され、かつ、前記投影装置が前記スクリーンに最大の出力階調値で画像を投影した場合における、前記スクリーン上の輝度値であるピーク輝度値を取得するピーク輝度値取得部と、
前記ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定する参照輝度値設定部と、
前記参照輝度値と前記ピーク輝度値とに基づき、出力階調値と、前記投影装置からの出力画像を表示する光の強さである光出力値との関係を示す関係情報を設定する関係情報設定部と、
前記入力データと前記関係情報とに基づき、出力階調値を設定する出力階調値設定部と、
前記出力階調値設定部が生成した前記出力階調値に基づき画像を出力する出力制御部と、
を含む、
投影装置。
【請求項2】
前記光出力値の上限値が前記参照輝度値となるように、前記出力階調値と前記光出力値との関係を示す参照関係情報を設定する参照関係情報設定部をさらに含み、
前記関係情報設定部は、前記参照関係情報を用いて、かつ、前記光出力値の上限値が前記ピーク輝度値となるように、前記関係情報を設定する、請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記参照輝度値設定部は、前記ピーク輝度値が低くなるほど前記参照輝度値が低くなるように設定された、前記ピーク輝度値と前記参照輝度値との関係に基づき、前記参照輝度値を設定するものであり、
前記ピーク輝度値と前記参照輝度値との関係は、前記ピーク輝度値が閾値未満の場合における、前記ピーク輝度値が単位量低い際の前記参照輝度値の減少量が、前記ピーク輝度値が前記閾値以上の場合における前記減少量よりも少なくなるように設定されている、請求項1又は請求項2に記載の投影装置。
【請求項4】
前記ピーク輝度値取得部は、前記投影装置が出力する画像のアスペクト比と、前記スクリーン上で有効な画像が投影される有効投影領域のアスペクト比とが異なる場合には、前記画像のアスペクト比と前記有効投影領域のアスペクト比に基づき、前記ピーク輝度値を算出する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の投影装置。
【請求項5】
前記参照輝度値設定部は、前記投影装置が有する表示素子の温度情報を取得し、前記温度情報に基づき、前記参照輝度値を設定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の投影装置。
【請求項6】
絶対輝度の情報を含む入力データに基づいてスクリーンに画像を投影する投影方法であって、
投影装置が所定の状態に設定され、かつ、前記投影装置が前記スクリーンに最大の出力階調値で画像を投影した場合における、前記スクリーン上の輝度値であるピーク輝度値を取得するステップと、
前記ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定するステップと、
前記参照輝度値と前記ピーク輝度値とに基づき、出力階調値と、前記投影装置からの出力画像を表示する光の強さである光出力値との関係を示す関係情報を設定するステップと、
前記入力データと前記関係情報とに基づき、出力階調値を設定するステップと、
前記出力階調値に基づき画像を出力するステップと、
を含む、
投影方法。
【請求項7】
絶対輝度の情報を含む入力データに基づいてスクリーンに画像を投影する投影方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
投影装置が所定の状態に設定され、かつ、前記投影装置が前記スクリーンに最大の出力階調値で画像を投影した場合における、前記スクリーン上の輝度値であるピーク輝度値を取得するステップと、
前記ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定するステップと、
前記参照輝度値と前記ピーク輝度値とに基づき、出力階調値と、前記投影装置からの出力画像を表示する光の強さである光出力値との関係を示す関係情報を設定するステップと、
前記入力データと前記関係情報とに基づき、出力階調値を設定するステップと、
前記出力階調値に基づき画像を出力するステップと、
を、コンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影装置、投影方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像を表示するための入力データとして、例えば、PQ(Perceptual Quantization)方式のHDR(High Dynamic Range)信号など、絶対輝度値の情報を含む入力データが入力される投影装置がある。この投影装置は、投影される画像が入力データで規定された絶対輝度値となるように、出力データを生成して画像を投影する。しかし、HDR画像をスクリーン上に投影する場合には、スクリーンの大きさによってスクリーン上での実際の輝度が変化して、映像の見え方が変化してしまうことがある。そのため、スクリーン上での輝度を算出し、それに基づき、EOTF(Electro-Optical Transfer Function)を、すなわち階調と出力輝度との関係を、設定する場合がある。例えば特許文献1には、算出された輝度に基づいて、画像データに対する階調変換処理を変更する方法が開示されている。また、特許文献2には、複数台の投影装置を重ねて配置した場合に、HDR画像データのEDIDを書き換えることによりEOTFの変化させる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-198733号公報
【文献】特開2017-200104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば特許文献1、2では、入力データの要求する輝度に従ってEOTFを決定するため、例えばスクリーン上の輝度が低い場合などに、PQカーブに従って表示できる領域が少なくなることで、表現できる階調の範囲が少なくなり、画像が潰れて見えるおそれがある。また、投影装置の設置状態や本体の状態により、投影装置が投影できる輝度が異なった場合にも、映像の見え方が大きく変化する場合もある。従って、表現できる階調の範囲が少なくなることを抑制しつつ、投影装置が投影できる輝度が異なった場合にも映像の見え方の変化を小さくすることが求められている。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑み、表現できる階調の範囲が少なくなることを抑制しつつ、投影装置が投影できる輝度が異なった場合にも映像の見え方の変化を小さくすることが可能な投影装置、投影方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる投影装置は、絶対輝度の情報を含む入力データに基づいてスクリーンに画像を投影する投影装置であって、前記投影装置が所定の状態に設定され、かつ、前記投影装置が前記スクリーンに最大の出力階調値で画像を投影した場合における、前記スクリーン上の輝度値であるピーク輝度値を取得するピーク輝度値取得部と、前記ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定する参照輝度値設定部と、前記参照輝度値と前記ピーク輝度値とに基づき、出力階調値と、前記投影装置からの出力画像を表示する光の強さである光出力値との関係を示す関係情報を設定する関係情報設定部と、前記入力データと前記関係情報とに基づき、出力階調値を設定する出力階調値設定部と、前記出力階調値設定部が生成した前記出力階調値に基づき画像を出力する出力制御部と、を含む。
【0007】
本発明の一態様にかかる投影方法は、絶対輝度の情報を含む入力データに基づいてスクリーンに画像を投影する投影方法であって、投影装置が所定の状態に設定され、かつ、前記投影装置が前記スクリーンに最大の出力階調値で画像を投影した場合における、前記スクリーン上の輝度値であるピーク輝度値を取得するステップと、前記ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定するステップと、前記参照輝度値と前記ピーク輝度値とに基づき、出力階調値と、前記投影装置からの出力画像を表示する光の強さである光出力値との関係を示す関係情報を設定するステップと、前記入力データと前記関係情報とに基づき、出力階調値を設定するステップと、前記出力階調値に基づき画像を出力するステップと、を含む。
【0008】
本発明の一態様にかかるプログラムは、絶対輝度の情報を含む入力データに基づいてスクリーンに画像を投影する投影方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、投影装置が所定の状態に設定され、かつ、前記投影装置が前記スクリーンに最大の出力階調値で画像を投影した場合における、前記スクリーン上の輝度値であるピーク輝度値を取得するステップと、前記ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定するステップと、前記参照輝度値と前記ピーク輝度値とに基づき、出力階調値と、前記投影装置からの出力画像を表示する光の強さである光出力値との関係を示す関係情報を設定するステップと、前記入力データと前記関係情報とに基づき、出力階調値を設定するステップと、前記出力階調値に基づき画像を出力するステップと、を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表現できる階調の範囲が少なくなることを抑制しつつ、投影装置が投影できる輝度が異なった場合にも映像の見え方の変化を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る投影システムの模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る投影装置の制御装置の模式的なブロック図である。
図3図3は、参照輝度値とピーク輝度値との関係の一例を示すグラフである。
図4A図4Aは、参照関係情報の一例を示すグラフである。
図4B図4Bは、参照関係情報の一例を示すグラフである。
図5図5は、関係情報の一例を示すグラフである。
図6図6は、関係情報の他の例を示すグラフである。
図7図7は、関係情報の設定フローを説明するフローチャートである。
図8図8は、画像のアスペクト比と有効投影領域のアスペクト比とが異なる場合の例を示す模式図である。
図9図9は、画像のアスペクト比と有効投影領域のアスペクト比とが異なる場合の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る投影システムの模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る投影システム1は、投影装置10と、スクリーン12とを有する。
【0013】
投影装置10は、画像を表示する装置であり、スクリーン12に向けて光を照射してスクリーン12上に光を投影することで、スクリーン12上に画像を表示させる。すなわち、本実施形態では、投影装置10は、画像を投影するプロジェクタである。投影装置10は、絶対輝度値の情報を含む入力データを取得して、入力データで示された絶対輝度値に対応する絶対輝度値の画像を出力可能な出力階調値を設定して、光(画像)を出力する。すなわち、投影装置10は、HDR(High Dynamic Range)方式で画像を表示する。さらに言えば、投影装置10は、PQ(Perceptual Quantization)方式の投影装置であることが好ましい。
【0014】
投影装置10は、光源20と、光学系22と、制御装置24とを有する。光源20は、投影装置10から照射する光を生成する光源であり、任意の構造であってよい。光学系22は、光源20から出力された光を受光して外部に出光させる光学素子である。光学系22は、例えば、投射レンズと、光源20からの光を投射レンズに導く照明光学系と、表示素子とを含む。照明光学系は、任意の構成であってよいが、例えば、フライアイレンズやプリズムなどを含むものであってよい。表示素子は、例えば液晶表示素子であってよい。制御装置24は、投影装置10からの光の照射を制御する装置である。制御装置24の説明は後述する。
【0015】
スクリーン12は、投影装置10からの画像(光)が投影されて、投影された画像を表示するスクリーン(画像表示面)である。図1の例では、スクリーン12は、投影装置10からの光(画像)が、前面側である投影面12aに照射され、投影面12aでその光を反射することで、投影面12a上に画像が表示される。ただし、スクリーン12は、例えば背面側に光が照射され、背面側から投影面12a側に光を透過して、投影面12aで画像を表示する透過型のスクリーンであってもよい。また、図1の例では、スクリーン12は、平面状であるが、平面状であることに限られず任意の形状であってよい。例えば、スクリーン12は、背面及び前面のうちの一方側が凹形状となり、他方側が凸形状となっているシリンドリカル型のスクリーンであってもよい。
【0016】
(制御装置)
図2は、本実施形態に係る投影装置の制御装置の模式的なブロック図である。図2に示すように、制御装置24は、本実施形態ではコンピュータであり、記憶部30と制御部32とを含む。制御装置24は、例えばタッチパネルなどユーザの操作を受け付ける装置である入力部や、情報を出力するディスプレイなどの出力部や、アンテナなどの通信モジュールである通信部を、有していてもよい。記憶部30は、制御部32の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。記憶部30が保存する制御部32用のプログラムは、制御装置24が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0017】
制御部32は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。制御部32は、投影装置10に画像を表示させるための入力データを取得して、入力データに基づき、投影装置10が画像を投影(出力)するための出力階調値を生成して、その出力階調値で光(画像)を出力させる。入力データは、投影装置10にどのように画像を表示させるかを示す画像データであり、入力階調値であるともいえる。入力データは、投影装置10に表示させたい画像の絶対輝度値である入力輝度値の情報も含む。入力データは、例えばHDR信号であるが、任意の形式の画像データであってよい。出力階調値は、投影装置10が実際に画像を出力するための出力データである。言い換えれば、投影装置10は、出力階調値で、光を投影させる。制御部32は、出力階調値と光出力値との関係を示す関係情報を設定し、入力輝度値と関係情報とに基づいて、出力階調値を設定して、その出力階調値で光(画像)を出力させる。なお、光出力値とは、投影装置10から出力される光の強さ(出力画像を表示する光の強さ)を指し、関係情報は、EOTF(Electro-Optical Transfer Function)であるともいえる。なお、光出力値は、例えば投影装置ではなくディスプレイである場合には、出力画像の絶対輝度値に相当する。以下、制御部32の具体的な構成及び処理内容について説明する。
【0018】
制御部32は、ピーク輝度値取得部40と、参照輝度値設定部42と、参照関係情報設定部44と、関係情報設定部46と、出力階調値設定部48と、出力制御部50とを含む。制御部32は、記憶部30からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、ピーク輝度値取得部40と参照輝度値設定部42と参照関係情報設定部44と関係情報設定部46と出力階調値設定部48と出力制御部50とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部32は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、ピーク輝度値取得部40と参照輝度値設定部42と参照関係情報設定部44と関係情報設定部46と出力階調値設定部48と出力制御部50との少なくとも一部を、ハードウェアで実現してもよい。
【0019】
(ピーク輝度値取得部)
ピーク輝度値取得部40は、スクリーン12の投影面12aにおけるピーク輝度値を取得する。ピーク輝度値とは、投影装置10が所定の状態に設定され、かつ、投影装置10がスクリーン12に最大の出力階調値で画像を投影した場合における、スクリーン上に投影された画像の輝度値である。すなわち、ピーク輝度値とは、所定の状態に設定された投影装置10がスクリーン12上に投影可能な光の絶対輝度値の最大値であり、最大の出力階調値でスクリーン12上に光を投影した場合の、その光の絶対輝度値であるといえる。所定の状態とは、投影装置10の照射条件が所定の条件に設定された状態を指す。照射条件は、例えば、投影装置10が出力可能な最大光束量と、光源出力情報(光源20の明るさや光源の使用時間など)と、可動光学フィルタの状態(光学フィルタが透過する光の波長に関する情報など)と、照明光学系に設置されるアパーチャーの絞り位置と、投射レンズに設置されるアパーチャーの絞り位置と、投射レンズのズーム位置と、映像処理に関する設定と、各光学部品の透過率とのうちの、少なくとも1つであってよい。
【0020】
本実施形態では、ピーク輝度値取得部40は、投影装置10の投影条件が現在の条件になっている際の、ピーク輝度値を取得する。すなわち、ピーク輝度値取得部40は、投影装置10が現在の状態に設定されている際に、スクリーン12に最大の出力階調値で画像を投影した場合における、スクリーン上に投影される画像の輝度値を、ピーク輝度値として取得する。ただしそれに限られず、ピーク輝度値取得部40は、投影装置10が現在の状態とは異なる状態に設定されている際の、スクリーン12に最大の出力階調値で画像を投影した場合における、スクリーン上に投影される画像の輝度値を、ピーク輝度値として取得してもよい。
【0021】
本実施形態においては、ピーク輝度値取得部40は、スクリーン情報と投影装置10からの光束量とに基づいて、ピーク輝度値を算出する。スクリーン情報とは、スクリーン12に関する情報である。スクリーン情報としては、スクリーン12上に投影される投影画像のサイズと、スクリーンゲインとが含まれる。投影画像のサイズとは、投影画像の大きさを示す情報であり、本実施形態では、投影画像の対角長さである。スクリーンゲインとは、同じ条件で標準白板(完全拡散板)とスクリーン12とに画像を投影した場合の、標準白板に投影された画像の輝度に対する、スクリーン12に投影された画像の輝度の比率を指す。スクリーンゲインは、スクリーン12の生地が固有にもっている反射特性を示す数値ともいえる。本実施形態では、ピーク輝度値取得部40は、ユーザの入力によりスクリーン情報を取得する。すなわち、ユーザは、投影装置10の入力部にスクリーン情報を入力し、ピーク輝度値取得部40は、入力されたスクリーン情報を取得する。この場合、投影装置10は、メニュー画面を表示させて、ユーザがメニュー画面からスクリーン情報を入力してもよいし、外部から通信コマンド等で入力してもよい。ただし、ピーク輝度値取得部40は、ユーザの入力によりスクリーン情報を取得することに限られない。例えば、ピーク輝度値取得部40は、測距センサやカメラ等により認識した値から、投影画像のサイズを取得してもよいし、入力映像のフォーマットから投影画像のアスペクト比を認識して、投影画像のサイズを取得してもよい。同様に、ピーク輝度値取得部40は、測光センサ等により検出した投影画像の輝度から、スクリーンゲインを取得してもよい。ただし、測距センサやカメラ、測光センサ等を使用せずにスクリーン情報を認識すると、より簡単な構成とすることができる。
【0022】
ピーク輝度値取得部40は、投影装置10の投影条件に基づき、投影装置10からの光束量を算出する。すなわち、ピーク輝度値取得部40は、内部的に認識可能な明るさに紐づく情報から投射される光束量を見積る。本実施形態では、ピーク輝度値取得部40は、投影装置10が出力可能な最大光束量と、投影装置10の投影条件とに基づき、投影装置10からの光束量を算出する。例えば、光束量に用いる投影条件の数がN個の場合には、ピーク輝度値取得部40は、次の式(1)に基づき、投影装置10からの光束量を算出する。
【0023】
LM=LMMAX×(1-D)×(1-D)×・・・×(1-D) ・・・(1)
【0024】
ここで、LMは、投影装置10からの光束量であり、LMMAXは、投影装置10が出力可能な最大光束量であり、D~Dは、投影条件毎の、投影装置10が出力可能な最大光束量に対する明るさ低下率を指す。
【0025】
LMMAXは、予め設定された値である。例えば、ピーク輝度値取得部40は、カタログ等に記載されるスペック値や、製品設計値、もしくは工場での実測値などを、LMMAXとして取得してもよい。この場合、LMMAXの値は、記憶部30に予め保存される。また、D~Dも、予め設定された値であってよいが、ピーク輝度値取得部40が算出してもよい。例えば、投影条件としての光源出力情報には、例えばユーザがメニュー画面から選択する光源20の明るさ設定(一例として高/中/低)や、その光源20の使用時間を含んでもよい。一般的に光源は使用時間に従って光量が低下するので、ピーク輝度値取得部40は、例えば、使用時間を変数とする数式で、光源出力情報に関する明るさ低下率を計算してもよいし、使用時間ごとの透過率のテーブルを持っておき、それを参照することで、光源出力情報に関する明るさ低下率を算出してもよい。また例えば、ピーク輝度値取得部40は、映像処理に関する明るさ低下率を、ユーザがメニュー画面から選択する色温度設定(一例として6500K)や、適用される画質モードやカラープロファイル、またメニュー画面上に表示されない内部処理値や工場調整値などから算出してもよい。工場調整値には、投影光の色の個体ばらつきを補正するための補正値(RGBゲイン値等)を含んでもよい。また例えば、各光学部品の透過率は一般的に使用時間に従って低下するため、ピーク輝度値取得部40は、例えば使用時間を変数とする数式で、各光学部品の透過率に関する明るさ低下率を算出してもよいし、使用時間ごとの透過率のテーブルを持っておき、それを参照することで、各光学部品の透過率に関する明るさ低下率を算出してもよい。
【0026】
ピーク輝度値取得部40は、スクリーン情報と、投影装置10からの光束量とから、ピーク輝度値を算出する。本実施形態では、ピーク輝度値取得部40は、次の式(2)を用いて、ピーク輝度値を算出する。
【0027】
LP=LM/AR/π×SG ・・・(2)
【0028】
LP(cd/m)は、ピーク輝度値であり、LM(lm)は、上述のように投影装置10からの光束量である。AR(m)は、スクリーン12上の投影画像の面積であり、投影画像のサイズから算出できる。スクリーン12上の投影映像のサイズは、一般的に対角線の長さ(インチ数)で表現されるため、対角線の長さから投影領域の面積が算出可能である。なお、投影領域の面積の単位をmとして計算する場合、必要に応じて、インチからメートルへの単位変換を行う。また、πは円周率であり、SGはスクリーンゲインである。
【0029】
ピーク輝度値取得部40は、以上のように、スクリーン情報と投影装置10からの光束量とから、ピーク輝度値を算出するが、ピーク輝度値の算出方法は上記に限られず任意であってよい。また、ピーク輝度値取得部40は、ピーク輝度値を算出せずに、例えばピーク輝度値の測定値を取得してもよい。この場合には、例えば、所定の状態に設定された投影装置10から、最大の出力階調値で、スクリーン12に画像を投影しておき、スクリーン12上の輝度値を、例えば輝度センサなどで測定する。ピーク輝度値取得部40は、輝度センサが測定した輝度値を、ピーク輝度値として取得する。
【0030】
(参照輝度値設定部)
参照輝度値設定部42は、ピーク輝度値に基づき、参照輝度値を設定する。参照輝度値とは、出力階調値と光出力値との関係を示す関係情報を設定する際に参照される輝度値を指す。参照輝度値設定部42は、ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定する。
【0031】
本実施形態では、参照輝度値設定部42は、参照輝度値とピーク輝度値との関係を示す参照輝度情報を用いて、参照輝度値を設定する。すなわち、参照輝度値設定部42は、参照輝度情報においてピーク輝度値取得部40が取得したピーク輝度値に対応している参照輝度値を抽出し、参照輝度値として設定する。参照輝度情報においては、ピーク輝度値が低いほど、参照輝度値が低くなるように設定されている。すなわち例えば、ピーク輝度値が100(cd/m)である場合の参照輝度値は、ピーク輝度値が300(cd/m)である場合の参照輝度値よりも低くなる。
【0032】
図3は、参照輝度値とピーク輝度値との関係の一例を示すグラフである。図3に示すように、参照輝度情報を示すカーブAを用いて、参照輝度情報をより具体的に説明する。図3においては、横軸がピーク輝度値であり、縦軸が参照輝度値である。参照輝度情報を示すカーブAは、ピーク輝度値が閾値LTH未満の区間である第1区間A1と、ピーク輝度値が閾値LTH以上の区間である第2区間A2とを含む。参照輝度情報を示すカーブAは、第1区間A1における傾きが、第2区間A2における傾きよりもなだらかになっている。言い換えれば、参照輝度情報を示すカーブAは、第1区間A1における、ピーク輝度値が単位量低い際の参照輝度値の減少量が、第2区間A2における、ピーク輝度値が単位量低い際の参照輝度値の減少量よりも、少なくなっている。すなわち、参照輝度情報は、ピーク輝度値が閾値LTH未満となりスクリーン12上で高い輝度が実現できない場合には、参照輝度値が低くなり過ぎないように、第1区間A1における傾きを小さくしている。これにより、スクリーン12上で高い輝度が実現できない場合に、表現できる階調範囲が狭くなることを、適切に抑制できる。
【0033】
より具体的には、参照輝度情報を示すカーブAは、第2区間A2においては、傾きが直線状である。言い換えれば、第2区間A2においては、ピーク輝度値と参照輝度値とが比例しており、ピーク輝度値が単位量低い際の参照輝度値の減少量は、第2区間A2の全域において一定となっている。このように第2区間A2を直線状とすることで、投影装置10の光出力が高い場合、参照輝度値をピーク輝度値に比例して増加させて、表現できる階調範囲と表示される映像の明るさを両立できる。一方、参照輝度情報を示すカーブAは、第1区間A1においては、傾きが曲線状であり、さらに言えば、下に凸となる曲線の形状となっている。言い換えれば、第1区間A1においては、ピーク輝度値が単位量低い際の参照輝度値の減少量が一定になっておらず、ピーク輝度値が単位量低い際の参照輝度値の減少量は、ピーク輝度値が低いほど、小さくなっている。このように第1区間A1を曲線状とすることで、投影装置10の光出力が小さい場合などに、表現できる階調範囲が狭くなることを、適切に抑制できる。
【0034】
なお、参照輝度情報における参照輝度値とピーク輝度値との関係は、以上で説明した内容に限られない。例えば、参照輝度値設定部42は、スクリーン輝度を変数とする数式を用いて、参照輝度値を算出してもよい。
【0035】
本実施形態では、参照輝度情報は予め設定されており、参照輝度値設定部42は、記憶部30に記憶された参照輝度情報を読み出して、参照輝度値を設定する。ただし、参照輝度情報は複数設定されていてもよい。この場合、参照輝度値設定部42は、複数の参照輝度情報のうちから、使用する参照輝度情報を選択してよい。使用する参照輝度情報の選択方法は任意であるが、例えば、ユーザが使用する参照輝度情報を選択して入力部に入力し、参照輝度値設定部42は、ユーザによって入力された参照輝度情報を、使用する参照輝度情報として選択してもよい。図3の例では、参照輝度値とピーク輝度値との関係が異なる2つの参照輝度情報(閾値LTHであるカーブAと閾値LTH’であるカーブA’)が設定されているが、参照輝度情報を示すカーブA、A’の形状や、参照輝度情報の数は、図3で挙げたものに限られない。
【0036】
また、以上の説明では、閾値LTHの値は、予め設定された固定値であったが、閾値LTHを可変値としてもよい。この場合、参照輝度値設定部42が、閾値LTHを設定することで、参照輝度情報を設定してもよい。例えば、参照輝度値設定部42は、入力データに基づき、すなわち画像の特性に基づき、閾値LTHを設定する。参照輝度値設定部42は、入力データに含まれる入力輝度値が高いほど閾値LTHを高くし、入力輝度値が低いほど閾値LTHを低くすることが好ましい。これにより、明るい映像を表示する際には、参照輝度値(クリップポイント)を高くして、映像に含まれる高い階調レベルまで、階調性よく映像を表示できる。また、暗い映像を表示する際には、映像に高い階調が含まれないため、参照輝度値(クリップポイント)を低くしてもよく、その分、入力輝度値に近い明るい映像を実現することができる。また、このように入力輝度値を用いて参照輝度情報を設定することで、ユーザが意図して閾値LTHを設定しなくとも、コンテンツにあわせた適切な関係情報(EOTF)で映像を投影することができる。
【0037】
参照輝度値設定部42は、閾値LTHを設定する場合には、入力輝度値として、入力データに含まれるMaxCLL(Maximum Content Light Level)を用いて、すなわちコンテンツ全体の輝度の最大値を用いて、閾値LTHを設定してもよい。MaxCLLを用いることで、コンテンツに含まれる最大の明るさまで対応することができる。なお、コンテンツとは、例えば1つの映画の最初から終わりまでなど、一群の画像データ(入力データ)を指す。また、参照輝度値設定部42は、閾値LTHを設定する場合には、入力輝度値として、入力データに含まれるMaxFALL(Maximum Frame Average Light Level)を用いて、すなわちコンテンツに含まれるフレーム毎の平均輝度値のうちの最大値を用いて、閾値LTHを設定してもよい。MaxFALLを用いることで、フレームごとの平均最大輝度に対応して、コンテンツ全体にわたって好ましい値に設定することができる。また、参照輝度値設定部42は、MaxCLLやMaxFALLを用いることに限られず、ヒストグラム等の映像解析を行った結果に従って、閾値LTHを設定してもよい。MaxCLLやMaxFALLはコンテンツ毎に単一の値だが、映像解析を行えば、フレームやシーンごとに動的に接続点を変更することができ、より適切な関係情報を設定することができる。
【0038】
また、参照輝度値設定部42は、参照輝度情報を設定する場合には、閾値LTH以外の要素を設定してもよい。例えば、参照輝度値設定部42は、参照輝度情報を示すカーブAの傾きや切片を設定してもよいし、これらすべてを設定してもよい。
【0039】
(参照関係情報設定部)
図4A及び図4Bは、参照関係情報の一例を示すグラフである。参照関係情報設定部44は、参照輝度値に基づき、出力階調値と光出力値との関係を示す参照関係情報を設定する。参照関係情報とは、投影装置10に実際に用いられる関係情報(EOTF)を設定する際に、参照として用いられるEOTFを指す。図4Aでは、横軸が出力階調値であり、縦軸が光出力値である。図4Aに示すように、参照輝度関係情報を示すカーブをカーブCRとし、参照輝度値をLRとすると、参照関係情報設定部44は、光出力値の上限値が参照輝度値LRとなるように、参照関係情報を示すカーブCRを設定する。すなわち、参照関係情報設定部44は、参照輝度値LRをクリップポイント(飽和点)とするEOTFを、参照関係情報を示すカーブCRとして設定する。本実施形態では、参照関係情報設定部44は、予め設定されたカーブC0に対して、参照輝度値をクリップポイントとしたカーブを、参照関係情報を示すカーブCRとして設定する。本実施形態では、カーブC0は、いわゆるPQカーブであり、例えば光出力値が10000cd/m2を最大とするガンマカーブである。カーブC0において光出力値がLRの場合の出力階調値をORとすると、参照関係情報を示すカーブCRは、出力階調値がOR以下の区間では、カーブC0(PQカーブ)に沿い、出力階調値がOR以上の区間では、カーブC0(PQカーブ)に沿わず光出力値がLRのまま保たれる。
【0040】
図4Bは、ピーク輝度値が互いに異なるカーブCR1、CR2の一例を示している。すなわち、カーブCR2は、カーブCR1よりも、ピーク輝度が小さい場合の、参照関係情報を示すカーブCRといえる。ここで、ピーク輝度値は、投影装置の設置状態や本体の状態により異なる場合があり、映像の見え方が大きく変化するおそれがある。それに対し、本実形態では、カーブCR1、CR2に示すように、低階調から中階調の領域では、出力階調値と光出力値との関係が等しくなるため、投影装置の設置状態や本体の状態に応じて映像の見え方が変化することを、適切に抑制できる。なお、カーブCR1、CR2は、ピーク輝度値が閾値LTH以上の第2区間A2(直線区間)の場合のカーブCRであるが、ピーク輝度値が閾値LTH未満の第1区間A1においても、低階調から中階調の領域での、出力階調値と光出力値との関係の差が大きくなることを適切に抑制できる。
【0041】
(関係情報設定部)
図5は、関係情報の一例を示すグラフである。関係情報設定部46は、参照輝度値とピーク輝度値とに基づき、出力階調値と光出力値との関係を示す関係情報(EOTF)を設定する。本実施形態では、関係情報設定部46は、参照関係情報を用いて、かつ、光出力値の上限値(クリップポイント)がピーク輝度値となるように、関係情報を設定する。図5に示すように、関係情報を示すカーブをカーブCとし、ピーク輝度値をLPとすると、関係情報設定部46は、参照関係情報を示すカーブCRを、光出力値の上限値がピーク輝度値LPとなるように圧縮して、関係情報を示すカーブCを設定する。さらに言えば、関係情報設定部46は、参照関係情報を示すカーブCRを、光出力値の上限値がピーク輝度値LPとなり、かつ、全ての点で同じ割合だけ光出力値が小さくなるように圧縮して、関係情報を示すカーブCを設定する。関係情報を示すカーブCにおいて光出力値がLPの場合の出力階調値をO1とすると、関係情報を示すカーブCは、出力階調値がO1以下の区間においては、出力階調値の増加に伴い光出力値が増加し、出力階調値がO1より大きい区間においては、光出力値がLPのまま保たれる。すなわち、関係情報を示すカーブCは、出力階調値がO1以下の区間では、出力階調値に応じて光出力値が変化するため、階調変化を表現できる。また、関係情報を示すカーブCの、出力階調値がO1以下の区間における傾きは、カーブCRの傾きよりも緩やかになる。言い換えれば、出力階調値がO1以下の区間においては、関係情報において出力階調値が単位量増加した際の光出力値の増加量は、参照関係情報において出力階調値が単位量増加した際の光出力値の増加量よりも少なくなる。なお、出力階調値O1は、PQカーブにおいて光出力値がLPとなる場合の出力階調値O0よりも大きく、本実施形態では、カーブCRのクリップポイントである出力階調値ORと同じ値である。
【0042】
図6は、関係情報の他の例を示すグラフである。図5のカーブCは、参照関係情報を示すカーブCRを、クリップポイントがピーク輝度値LPとなるようにハードクリップしたものであるが、図6に示すように、カーブCは、ハードクリップされずにソフトクリップされたものであってもよい。ソフトクリップされたカーブCは、出力階調値がO1より小さいO2までの区間においては、ハードクリップされた場合と同様のカーブとなる。一方、ソフトクリップされたカーブCは、出力階調値がO2から、O1より大きいO3までの区間においては、出力階調値がO2までの区間よりも傾きが小さくなる。そして、ソフトクリップされたカーブCは、出力階調値O3で光出力値がLPとなり、以降は光出力値がLPのまま保たれる。ソフトクリップされたカーブCは、出力階調値がO2からO3までの区間においては、直線状であってもよいし、下に凸の曲線状であってもよいし、上に凸の曲線状であってもよい。
【0043】
(出力階調値設定部)
出力階調値設定部48は、入力データと、関係情報とに基づき、出力階調値を設定する。出力階調値設定部48は、入力データを取得して、入力データに含まれる入力輝度値を読み出す。そして、出力階調値設定部48は、入力輝度値に基づいて、出力すべき輝度値である光出力値を設定する。例えば、出力階調値設定部48は、入力輝度値がピーク輝度値LP以下である場合には、その入力輝度値を実現可能であるとして、入力輝度値と同じ値を光出力値として設定し、入力輝度値がピーク輝度値LPより高い場合には、その入力輝度値を実現不可能であるとして、ピーク輝度値LPを光出力値として設定してよい。出力階調値設定部48は、関係情報設定部46が設定した関係情報に、光出力値を入力して、出力階調値を設定する。すなわち、出力階調値設定部48は、関係情報において、設定した光出力値に対応する出力階調値を抽出して、出力階調値として設定する。
【0044】
(出力制御部)
出力制御部50は、投影装置10の各部を制御して、投影装置10からスクリーン12へ光(画像)を出力させる。出力制御部50は、出力階調値設定部48が設定した出力階調値で、投影装置10に光を投影させる。
【0045】
(効果)
ここで、例えばPQカーブは、入力データが要求する輝度に従って設定されたものである。しかし、PQカーブに従って出力階調値を決めた場合、例えばスクリーン上のピーク輝度値が低い場合などに、PQカーブに従って表示できる領域が少なくなることで、表現できる階調の範囲が少なくなり、画像が潰れて見えるおそれがある。それに対して、本実施形態に係る制御装置24は、ピーク輝度値よりも高くなるように参照輝度値を設定し、参照輝度値をクリップポイントとする参照関係情報を設定し、参照関係情報を圧縮して関係情報を設定し、関係情報を用いて出力階調値を設定する。すなわち、本実施形態に係る制御装置24は、ピーク輝度値よりも高い参照輝度値に基づいて、ピーク輝度値をクリップポイントとする関係情報を設定する。そのため、関係情報を用いた場合には、例えばPQカーブをピーク輝度値でクリップするよりも、表現できる階調の範囲を広くできる。例えば図5では、PQカーブをピーク輝度値LPでクリップした場合の出力階調値O0よりも、関係情報を示すカーブCをピーク輝度値LPでクリップした場合の出力階調値O1の方が、値が高くなり、関係情報を示すカーブCの方が、表現できる階調の範囲を広くなる。このように、本実施形態に係る制御装置24によると、表現できる階調の範囲が少なくなることを抑制できる。さらに言えば、本実施形態に係る制御装置24は、投影装置の設置状態や本体の状態を反映して、最適な参照輝度値を設定することで、表現できる階調の範囲が狭くなることを抑制しながら、明るさも両立できる。また、本実施形態に係る制御装置24によると、投影装置の設置状態や本体の状態によって投影できる輝度が異なる場合でも、映像の見え方が変化することを、適切に抑制できる。
【0046】
(関係情報の設定フロー)
次に、制御装置24による関係情報の設定フローを、フローチャートに基づいて説明する。図7は、関係情報の設定フローを説明するフローチャートである。図7に示すように、制御装置24は、ピーク輝度値取得部40により、スクリーン情報を取得し(ステップS10)、光束量を算出して(ステップS12)、スクリーン情報と光束量とに基づき、ピーク輝度値を算出する(ステップS14)。本実施形態では、制御装置24は、上述の式(2)を用いて、ピーク輝度値を算出する。次に、制御装置24は、参照輝度値設定部42により、ピーク輝度値に基づき、参照輝度値を設定し(ステップS16)、参照関係情報設定部44により、参照輝度値に基づき、参照関係情報を設定する(ステップS18)。本実施形態では、制御装置24は、ピーク輝度値より高くなるように参照輝度値を設定し、PQカーブを参照輝度値でクリップして、参照関係情報を設定する。次に、制御装置24は、関係情報設定部46により、ピーク輝度値と参照関係情報とに基づき、関係情報を設定する(ステップS20)。本実施形態では、制御装置24は、参照関係情報を示すカーブCRを、光出力値の上限値がピーク輝度値LPとなるように圧縮して、関係情報を設定する。制御装置24は、ステップS20で設定した関係情報を用いて、すなわち関係情報をEOTFとして、出力階調値を設定して画像を投影させる。
【0047】
なお、制御装置24は、一度関係情報を設定したら、その関係情報を全ての入力データに対して適用して、画像を出力させてもよい。ただし、制御装置24は、関係情報を更新してもよい。以下、関係情報を更新する場合の処理例について説明する。
【0048】
制御装置24は、例えば投影装置10の投影条件が変更された場合に、関係情報を更新してよい。この場合例えば、制御装置24は、変更された投影条件に基づいて、ピーク輝度値を算出しなおす。制御装置24は、投影条件が変更される前の参照輝度情報を示すカーブA(図3に示したピーク輝度値と参照輝度値との関係)に、算出しなおしたピーク輝度値を入力して、参照輝度値を算出しなおす。制御装置24は、算出しなおした参照輝度値を用いて、ステップS18以降の処理を実行して、関係情報を更新する。なお、制御装置24は、投影条件が変更される前の参照輝度情報を用いて、参照輝度値を算出しなおすことに限られず、参照輝度情報自体も設定しなおして、参照輝度値を算出してもよい。
【0049】
制御装置24は、コンテンツが更新された場合に、関係情報を更新してもよい。この場合、制御装置24は、異なるコンテンツを取得したら、そのコンテンツの情報に基づいて、参照輝度情報(図3に示したピーク輝度値と参照輝度値との関係)を設定しなおす。例えば、制御装置24は、そのコンテンツのMaxCLLやMaxFALLを取得し、MaxCLLやMaxFALLに基づいて閾値LTHを設定しなおして、参照輝度情報を更新する。そして、制御装置24は、更新した参照輝度情報にピーク輝度値を入力して、参照輝度値を算出しなおす。制御装置24は、算出しなおした参照輝度値を用いて、ステップS18以降の処理を実行して、関係情報を更新する。
【0050】
制御装置24は、入力データ毎に、すなわちフレームやシーン毎に、関係情報を更新してもよい。この場合、制御装置24は、フレーム毎に、参照輝度情報(図3に示したピーク輝度値と参照輝度値との関係)を設定する。例えば、制御装置24は、フレーム毎の入力輝度値の最大値を取得して、入力輝度値の最大値に基づいて閾値LTHを設定して、フレーム毎の参照輝度情報を設定する。そして、制御装置24は、参照輝度情報にピーク輝度値を入力して、フレーム毎に参照輝度値を算出する。制御装置24は、参照輝度値を用いて、ステップS18以降の処理を実行して、フレーム毎に関係情報を設定する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る投影装置10は、絶対輝度の情報を含む入力データに基づいてスクリーン12に画像を投影するものであって、ピーク輝度値取得部40と、参照輝度値設定部42と、関係情報設定部46と、出力階調値設定部48と、出力制御部50とを含む。ピーク輝度値取得部40は、投影装置10が所定の状態に設定され、かつ、投影装置10がスクリーン12に最大の出力階調値で画像を投影した場合における、スクリーン上の輝度値であるピーク輝度値を取得する。参照輝度値設定部42は、ピーク輝度値よりも高くなるように、参照輝度値を設定する。関係情報設定部46は、参照輝度値とピーク輝度値とに基づき、出力階調値と、投影装置10からの出力画像の絶対輝度である光出力値との関係を示す関係情報を設定する。出力階調値設定部48は、入力データと関係情報とに基づき、出力階調値を設定する。本実施形態に係る投影装置10は、ピーク輝度値よりも高い参照輝度値に基づいて、関係情報を設定する。そのため、本実施形態に係る投影装置10は、関係情報は、表現できる階調の範囲が少なくなることを抑制できる。さらに言えば、本実施形態に係る制御装置24は、投影装置の設置状態や本体の状態を反映して、最適な参照輝度値を設定することで、表現できる階調の範囲が狭くなることを抑制しながら、明るさも両立できる。また、本実施形態に係る制御装置24によると、投影装置の設置状態や本体の状態によって投影できる輝度が異なる場合でも、映像の見え方が変化することを、適切に抑制できる。
【0052】
また、投影装置10は、光出力値の上限値が参照輝度値となるように、出力階調値と光出力値との関係を示す参照関係情報を設定する参照関係情報設定部44をさらに含む。関係情報設定部46は、参照関係情報を用いて、かつ、光出力値の上限値がピーク輝度値となるように、関係情報を設定する。本実施形態に係る投影装置10は、ピーク輝度値よりも高い参照輝度値をクリップポイントとする参照関係情報を用いて、関係情報を設定する。そのため、本実施形態に係る投影装置10は、関係情報は、表現できる階調の範囲が少なくなることを抑制できる。
【0053】
また、参照輝度値設定部42は、ピーク輝度値が低くなるほど参照輝度値が低くなるように設定された、ピーク輝度値と参照輝度値との関係(参照輝度情報)に基づき、参照輝度値を設定する。参照輝度情報は、ピーク輝度値が閾値LTH未満の場合における、ピーク輝度値が単位量低い際の参照輝度値の減少量が、ピーク輝度値が閾値LTH以上の場合における、ピーク輝度値が単位量低い際の参照輝度値の減少量よりも、少なくなるように設定されている。本実施形態に係る投影装置10は、このように参照輝度情報を設定することで、例えばスクリーン12上で高い輝度が実現できない場合に、表現できる階調範囲が狭くなることを、適切に抑制できる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、投影装置10が出力する画像のアスペクト比と、スクリーン12上で有効な画像が投影される有効投影領域のアスペクト比とが異なる場合には、画像のアスペクト比と有効投影領域のアスペクト比に基づき、ピーク輝度値を算出する点で、第1実施形態と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0055】
図8は、画像のアスペクト比と有効投影領域のアスペクト比とが異なる場合の例を示す模式図である。投影装置10からスクリーン12に画像を投影する場合には、投影装置10から出力される画像Pのアスペクト比と、スクリーン12で有効な画像が投影される有効投影領域AR0のアスペクト比とが異なる場合がある。言い換えれば、投影装置10は、設計されたアスペクト比と異なるアスペクト比の画像を投影する場合がある。例えば、横縦のアスペクト比が16:9の画像を出力するように設計された投影装置10が、横縦のアスペクト比が2.35:1(シネマスコープサイズ)の画像を投影する場合がある。このような場合には、投影装置10は、図8に示すように、有効画像領域Paと、無効画像領域Pbとを含む画像Pを出力する。有効画像領域Paは、表示させたい画像が出力されるように設定された領域であり、有効投影領域AR0とは、スクリーン12上の有効画像領域Paが投影される領域といえる。無効画像領域Pbは、有効画像領域Paの上下に設定された領域であり、例えば黒色の画像が出力される。このような画像Pは、レターボックスと呼ばれる場合がある。
【0056】
このようにレターボックスと呼ばれる画像Pを出力する場合、スクリーン12上の有効投影領域AR0は、有効画像領域Paが投影されるアスペクト比が2.35:1の領域となる。一方、入力データにおいては、有効画像領域Paと無効画像領域Pbを含む16:9のアスペクト比のデータとなり、光源20からの光は、無効画像領域Pbにおいても、有効な画像としては反映されない光(表示素子に遮断される光)として、出力される。このような場合に、有効投影領域AR0のアスペクト比を用いてピーク輝度値を算出すると、無効画像領域Pbを除外した分、実際よりもピーク輝度値が高く算出されてしまうおそれがある。そのため、本実施形態に係る制御装置24は、投影装置10から出力される画像Pのアスペクト比と、スクリーン12上の有効投影領域AR0のアスペクト比とが異なる場合には、画像Pのアスペクト比と有効投影領域AR0のアスペクト比に基づき、ピーク輝度値を算出する。以下、具体的に説明する。
【0057】
制御装置24は、画像Pのアスペクト比と有効投影領域AR0のアスペクト比に基づき、スクリーン情報に含まれる、投影画像の対角長さ(投影画像のサイズ)を算出する。例えば、制御装置24は、次の式(3)を用いて、投影画像の対角長さであるLdeviceを算出する。制御装置24は、算出したLdeviceを用いて、上述の式(2)で示したスクリーン12上の投影画像の面積ARを算出する。制御装置24は、このようにして投影画像の面積ARを算出して、ピーク輝度値を算出することで、より正確にピーク輝度値を算出できる。
【0058】
device=(ARscreen/ARdevice)×(ARdevice +1)0.5/(ARscreen +1)0.5×Lscreen ・・・(3)
【0059】
ここで、Lscreenは、スクリーン12の有効投影領域AR0の対角長さであり、ARscreenは、スクリーン12の有効投影領域AR0のアスペクト比であり、ARdeviceは、投影装置10から出力される画像Pのアスペクト比である。このLdeviceを算出するための情報(Lscreen、ARscreen、ARdeviceなど)は、各種センサにより測定してもよいし、ユーザ等によって入力されてもよい。また、制御装置24は、映像解析により、無効画像領域Pbの有無およびサイズを認識してLdeviceを算出し、Ldeviceを用いて、上述の式(2)で示した投影画像の面積ARを算出してもよい。
【0060】
なお、以上の説明では、投影装置10から出力される画像Pのアスペクト比が16:9であり、有効投影領域AR0のアスペクト比が2.35:1である場合を例にして説明したが、投影装置10から出力される画像Pと、有効投影領域AR0のアスペクト比とが16:9、2.35:1とは異なる場合にも、同様に、画像Pのアスペクト比と有効投影領域AR0のアスペクト比に基づき、ピーク輝度値を算出する。
【0061】
また例えば、投影装置10は、映像を横方向(長手方向)に光学的に拡大するアナモフィックレンズが搭載される場合がある。例えば、アスペクト比が16:9の画像を出力するように設計された投影装置10を用いて、アスペクト比が2.35:1の有効画像をスクリーン12に投影するために、横方向に1.33倍に拡大するアナモフィックレンズが搭載される場合がある。この場合には、縦方向(映像の短手方向)に、電気的に映像を1.33倍に拡大するVストレッチ機能が用いられる。映像を縦方向に拡大することで、無効画像領域Pbが消失される。このように、アナモフィックレンズの光学的な横方向の拡大と、Vストレッチ機能による電気的な縦方向の拡大により、スクリーン12上で正しいアスペクト比で映像が表示されるとともに、無効画像領域Pbがなくなり明るさのロスを防止することができる。このような場合には、画像Pのアスペクト比と有効投影領域AR0のアスペクト比とが同じとなるため、Ldeviceの算出は不要となる。ただし、投影装置10がアスペクト比16:9の画像を出力するように設計されたものでない場合など、スクリーン12上で正しいアスペクトで映像を表示したとしても無効画像領域Pbが存在する場合には、無効画像領域Pbのサイズに従って、Ldeviceを算出してよい。
【0062】
図9は、画像のアスペクト比と有効投影領域のアスペクト比とが異なる場合の例を示す模式図である。さらに言えば、アナモフィックレンズが搭載された投影装置10を用いて、アスペクト比が16:9の有効画像をスクリーン12に投影する場合には、図9に示すように、有効画像領域Paの左右に無効画像領域Pbを設ける必要がある。例えば横方向に1.33倍に拡大するアナモフィックレンズを使用している場合は、横方向に電気的に1.33倍縮小する。その場合、縮小により映像がなくなる左右の領域が、無効画像領域Pbとなる。このような場合にも、制御装置24は、画像Pのアスペクト比と有効投影領域AR0のアスペクト比に基づき、Ldeviceを算出する。例えば、制御装置24は、次の式(4)を用いて、投影画像の対角長さを算出する。
【0063】
device=(Manamorphic×ARscreen/ARdevice)×(ARdevice +1)0.5/{(Manamorphic×ARscreen+1}0.5×Lscreen ・・・(4)
【0064】
ここで、Manamorphicは、アナモフィックレンズの伸長率である。Manamorphicは、ユーザ等がアナモフィックレンズの使用の有無を入力してもよいし、アナモフィックレンズの着脱を投影装置10が自動で認識してもよい。このように、制御装置24は、アナモフィックレンズが使用されている場合には、アナモフィックレンズによる光学的な伸長率と、Vストレッチ機能による電気的な伸長率とに基づいて、Ldeviceを算出し、Ldeviceを用いて、上述の式(2)で示した投影画像の面積ARを算出してもよい。
【0065】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、参照輝度値設定部42が、投影装置が有する表示素子の温度情報を取得し、温度情報にも基づき、参照輝度値を設定する点で、第1実施形態とは異なる。第3実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。なお、第3実施形態は、第2実施形態にも適用可能である。
【0066】
表示素子が液晶など温度特性をもつ場合、階調の応答特性を示すガンマ特性が、温度により変化する場合がある。第3実施形態に係る制御装置24は、表示装置の温度変化に起因するガンマ特性の変化を考慮して、表示素子の温度情報を取得し、温度情報にも基づき、参照輝度値を設定する。すなわち、第3実施形態においては、第1実施形態と同様の方法でピーク輝度値から参照輝度値を算出し、算出したピーク輝度値を、表示素子の温度情報で補正して、実際に用いる参照輝度値とする。
【0067】
表示素子の温度情報の取得方法は任意であるが、制御装置24は、例えば次の式(5)に基づき、表示素子の温度である温度Tdeviceを算出して、表示素子の温度情報として取得する。
【0068】
device=Tambient+Q×QDA ・・・(5)
【0069】
ここで、Tambientは投影装置10の周囲温度であり、Qは投影装置10の発熱量であり、QDAは、表示素子と周囲温度との間の熱抵抗である。Tambientは、例えば温度センサなどによって検出されてもよいし、予め設定された値であってもよい。また、発熱量Qは、表示素子に照射される光の強度から算出され、表示素子に照射される光の強さは、投射される光束量を見積った際に使用したパラメータ(投影条件)から求めることができる。例えば、表示素子に照射される光の強度は、光源明るさ設定、光学フィルタ、照明光学系アパーチャー、照明光学系の光学部品の透過率等を用いて算出できる。発熱量Qには、表示素子の駆動に関わる発熱量を加算してもよい。また、熱抵抗QDAは、予め設定されていてよい。
【0070】
表示素子が液晶の場合、表示素子の温度が上昇した場合には、一般的には中間階調レベルの映像の表示明るさが増加する。そのため、制御装置24は、温度Tdeviceが高いほど、参照輝度値を高くするように補正する。これにより、温度による中間階調レベルの映像の明るさの変化を打ち消し、温度変化がない場合の映像の明るさに近づけることができる。
【0071】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態においては、制御装置24は、照明光学系のF値が投射レンズのF値を超えないように、投影装置の照明光学系のアパーチャーを調整する。また、第4実施形態の制御装置24は、投射レンズのF値が現在値を超えないように、投射レンズのアパーチャーを調整する。第4実施形態において第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。なお、第4実施形態は、第2実施形態及び第3実施形態にも適用可能である。
【0072】
ここで、投射レンズのズーム位置、照明光学系のアパーチャー、投射レンズのアパーチャーを動かすと、F値が変化し、映像の明るさやコントラストが変化する。映像の明るさ変化は、投影装置10の各部のうちでF値が最大となるものが支配的となる。例えば、投射レンズのズーム位置により、投射レンズのF値が最大になっている場合には、照明光学系アパーチャーや投射レンズアパーチャーの変化による映像の明るさへの影響は限定的だが、仮に照明光学系アパーチャーが絞られて、照明光学系アパーチャーのF値が投射レンズのF値よりも大きくなった場合には、明るさの低下が大きくなってしまう。ここで、投射レンズのズーム位置は、設置条件で決まる。そのため、明るさ変化を抑制するためには、照明光学系のアパーチャーを、照明光学系のF値が投射レンズのF値を超えない範囲で調整することが好ましい。この場合例えば、制御装置24は、照明光学系のアパーチャーの調整可能範囲を、照明光学系のF値が投射レンズのF値を超えない範囲となるように設定する。そして、ユーザが照明光学系のアパーチャーを調整する際には、制御装置24は、照明光学系のアパーチャーの調整可能範囲を通知して、ユーザによるアパーチャーの調整を、調整可能範囲となるよう促す。同様に、制御装置24は、投射レンズのアパーチャーを、投射レンズのF値が投射レンズの現在のF値を超えない範囲で調整することが好ましい。この場合例えば、制御装置24は、投射レンズのアパーチャーの調整可能範囲を、投射レンズのF値が、投射レンズの現在のF値を超えない範囲となるように設定する。そして、ユーザが投射レンズのアパーチャーを調整する際には、制御装置24は、投射レンズのアパーチャーの調整可能範囲を通知して、ユーザによるアパーチャーの調整を、調整可能範囲となるよう促す。これにより、照明光学系のアパーチャーや投射レンズのアパーチャー動作によりコントラストの向上が期待できる一方、光量低下を限定して明るい映像を実現することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、各実施形態の構成を組み合わせることも可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
10 投影装置
12 スクリーン
24 制御装置
40 ピーク輝度値取得部
42 参照輝度値設定部
44 参照関係情報設定部
46 関係情報設定部
48 出力階調値設定部
50 出力制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9