(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240326BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240326BHJP
H01M 10/0585 20100101ALN20240326BHJP
H01M 50/645 20210101ALN20240326BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01M50/342 101
H01M50/121
H01M50/545
H01M50/557
H01M50/548 101
H01M50/204 101
H01M10/0585
H01M50/645
(21)【出願番号】P 2020198231
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】前原 有貴
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125124(JP,A)
【文献】特開2018-101586(JP,A)
【文献】特表2020-532835(JP,A)
【文献】特開2005-222872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01M 50/342
H01M 50/103-50/112
H01M 50/121
H01M 50/202-50/207
H01M 50/545-50/548
H01M 50/557
H01G 11/12
H01G 11/74
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する活物質層をそれぞれ有し、互いに重なり合う一対の電極と、
前記一対の電極の間に介在し、前記活物質層を囲む矩形枠状をなし、且つ前記一対の電極とともに区画する空間を封止する樹脂枠と、を備える蓄電セルであって、
前記樹脂枠に設けられ、前記空間と前記蓄電セルの外部とに延びる貫通部と、
前記貫通部を閉塞する閉塞部とを備え、
前記樹脂枠は、
前記貫通部が設けられる第1壁部と、
前記第1壁部に直交する方向に延びる第2壁部と、
前記第1壁部と前記第2壁部とを接続する接続部と、を有し、
前記第1壁部は、前記空間に臨む第1端面を有し、
前記第2壁部は、前記空間に臨む第2端面を有し、
前記接続部は、前記空間に臨み、且つ前記第1端面と前記第2端面とを接続する変化面を有し、
前記変化面は、前記第1端面及び前記第2端面それぞれとなす角度が鈍角となるように前記第1端面及び前記第2端面の間に延びていることを特徴とする蓄電セル。
【請求項2】
前記第2壁部は、前記第1壁部が延びる方向である第1延設方向における前記第1壁部の第1端部寄り、及び前記第1延設方向における前記第1壁部の第2端部寄りにそれぞれ設けられ、
前記第1端面と、前記第1端部寄りに設けられる前記第2壁部の前記第2端面とは、前記変化面により接続され、
前記第1端面と、前記第2端部寄りに設けられる前記第2壁部の前記第2端面とは、前記変化面により接続されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記樹脂枠は、前記第2壁部の前記第1壁部とは反対側に連続し、前記一対の電極が重なり合う方向である積層方向で見た平面視において前記第1壁部が延びる第1延設方向に延びる第3壁部を有し、
前記第1延設方向及び前記積層方向に直交する第1厚さ方向における前記第1壁部の厚さは、前記第2壁部が延びる第2延設方向及び前記積層方向に直交する第2厚さ方向における前記第2壁部の厚さ及び前記第1厚さ方向における前記第3壁部の厚さ以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記第1壁部は、前記第1壁部が延びる第1延設方向及び前記一対の電極が重なり合う方向である積層方向に直交する第1厚さ方向における厚さが変化しない板状をなし、
前記第1延設方向において、前記接続部と前記貫通部とは前記貫通部の前記第1延設方向における幅以上の間隔を隔てて配置されていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記変化面は、前記一対の電極が重なり合う方向である積層方向で見た平面視において、前記第1端面と前記第2端面との間で延びる傾斜面であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項6】
前記傾斜面は、前記貫通部に至るまで延びていることを特徴とする請求項5に記載の蓄電セル。
【請求項7】
複数の蓄電セルを備え、
前記複数の蓄電セルは、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の蓄電セルを少なくとも含むことを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電セル及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される蓄電装置としての蓄電モジュールが知られている。
上記の蓄電モジュールは、電極ユニットが複数積層されることにより構成されている。電極ユニットは、バイポーラ電極と、隣り合うバイポーラ電極とともに空間を区画する樹脂枠とを備えている。空間には、電解液が収容されている。一対の電極が積層される第1方向で樹脂枠を平面視したとき、樹脂枠は、矩形環状をなしている。樹脂枠の1つの辺部には、空間に電解液を注入するための注入口が形成されている。樹脂枠を構成する4つの辺部のうち互いに隣り合う辺部は直交している。注入口は、空間にガスが発生したとき、ガスを蓄電セルの外部に排出する機能も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電セルの空間に発生したガスを注入口から排出するとき、ガスは、注入口が設けられている樹脂枠の1つの辺部に向けて流動する。このとき、注入口が設けられた辺部と連続している各辺部と、注入口が設けられる辺部との境界にガスが溜まり易くなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する蓄電セルは、互いに対向する活物質層をそれぞれ有し、互いに重なり合う一対の電極と、前記一対の電極の間に介在し、前記活物質層を囲む矩形枠状をなし、且つ前記一対の電極とともに区画する空間を封止する樹脂枠と、を備える蓄電セルであって、前記樹脂枠に設けられ、前記空間と前記蓄電セルの外部とに延びる貫通部と、前記貫通部を閉塞する閉塞部とを備え、前記樹脂枠は、前記貫通部が設けられる第1壁部と、前記第1壁部に直交する方向に延びる第2壁部と、前記第1壁部と前記第2壁部とを接続する接続部と、を有し、前記第1壁部は、前記空間に臨む第1端面を有し、前記第2壁部は、前記空間に臨む第2端面を有し、前記接続部は、前記空間に臨み、且つ前記第1端面と前記第2端面とを接続する変化面を有し、前記変化面は、前記第1端面及び前記第2端面それぞれとなす角度が鈍角となるように前記第1端面及び前記第2端面の間に延びている。
【0006】
これによれば、貫通部が閉塞部で閉塞されていない状態において、蓄電セルの空間に発生したガスを蓄電セルの外部に排出するとき、ガスは貫通部に向けて流動する。このとき、第2端面、変化面、及び第1端面に沿って流動するガスがある。第1端面と第2端面とが変化面で接続されていることから、ガスは、変化面により第2端面から第1端面に円滑に流動し易くなる。そのため、貫通部からガスを排出し易くなり、第1壁部と第2壁部との境界にガスが溜まることを抑制できる。
【0007】
上記の蓄電セルにおいて、前記第2壁部は、前記第1壁部が延びる方向である第1延設方向における前記第1壁部の第1端部寄り、及び前記第1延設方向における前記第1壁部の第2端部寄りにそれぞれ設けられ、前記第1端面と、前記第1端部寄りに設けられる前記第2壁部の前記第2端面とは、前記変化面により接続され、前記第1端面と、前記第2端部寄りに設けられる前記第2壁部の前記第2端面とは、前記変化面により接続されているとよい。
【0008】
これによれば、貫通部が閉塞部で閉塞されていない状態において、蓄電セルの空間で発生したガスは、2つの第2壁部にそれぞれ対応して設けられた2つの変化面により第1端面に円滑に流動し易くなる。そのため、貫通部からガスを排出し易くなり、第1壁部と第2壁部との境界にガスが溜まることをより抑制できる。
【0009】
上記の蓄電セルにおいて、前記樹脂枠は、前記第2壁部の前記第1壁部とは反対側に連続し、前記一対の電極が重なり合う方向である積層方向で見た平面視において前記第1壁部が延びる第1延設方向に延びる第3壁部を有し、前記第1延設方向及び前記積層方向に直交する第1厚さ方向における前記第1壁部の厚さは、前記第2壁部が延びる第2延設方向及び前記積層方向に直交する第2厚さ方向における前記第2壁部の厚さ及び前記第1厚さ方向における前記第3壁部の厚さ以上であるとよい。
【0010】
これによれば、第1壁部の第1厚さ方向における厚さは、第2壁部の第2厚さ方向における厚さ及び第3壁部の第3厚さ方向における厚さ以上であり、蓄電セルの内圧に対する剛性が確保されている。そのため、貫通部からガスを排出する際、変化面により第1端面に向けてガスが流動し、貫通部にガスが集中しても、第1壁部の位置における封止性を、第2壁部及び第3壁部と同様に保持できる。
【0011】
上記の蓄電セルにおいて、前記第1壁部は、前記第1壁部が延びる第1延設方向及び前記一対の電極が重なり合う方向である積層方向に直交する第1厚さ方向における厚さが変化しない板状をなし、前記第1延設方向において、前記接続部と前記貫通部とは前記貫通部の前記第1延設方向における幅以上の間隔を隔てて配置されているとよい。
【0012】
これによれば、貫通部を設ける位置を第1延設方向においてずらし易くなる。よって、貫通部の配置の自由度が向上する。
上記の蓄電セルにおいて、前記変化面は、前記一対の電極が重なり合う方向である積層方向で見た平面視において、前記第1端面と前記第2端面との間で延びる傾斜面であるとよい。
【0013】
これによれば、変化面を曲面とする場合と比較して、変化面を傾斜面とする場合の方が樹脂枠を製造し易い。そのため、蓄電セルの生産性を向上させることができる。よって、ガスを貫通部に誘導し易くしつつ蓄電セルの生産性が向上する。
【0014】
上記の蓄電セルにおいて、前記傾斜面は、前記貫通部に至るまで延びているとよい。
これによれば、傾斜面を伝って貫通部に直接的にガスを誘導することができるため、ガス抜きの効率を向上できる。
【0015】
上記課題を解決する蓄電装置は、複数の蓄電セルを備え、前記複数の蓄電セルは、上記のいずれかの蓄電セルを少なくとも含む。
これによれば、蓄電装置においても、貫通部からガスを排出し易くなり、第1壁部と第2壁部との境界にガスが溜まることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、貫通部からガスを排出し易くなり、第1壁部と第2壁部との境界にガスが溜まることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、蓄電セル及び蓄電装置を具体化した一実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置1は、積層された複数の蓄電セル10により構成されるセルスタック2を含んでいる。複数の蓄電セル10が積層される方向を積層方向Cとする。
【0019】
図2に示すように、蓄電セル10は、正極20と、負極30と、セパレータ40と、樹脂枠50とを備えている。積層方向Cにおいて蓄電セル10を外側から見ることを平面視と呼ぶ。
【0020】
正極20は、例えば矩形状の電極である。正極20は、平面視で矩形状の正極集電体21、及び活物質層としての正極活物質層22を有している。正極集電体21は、第1面21aと、第1面21aとは反対側に位置する第2面21bとを有している。正極活物質層22は、正極集電体21の第1面21aに設けられている。正極集電体21の第2面21bには、正極活物質層22は設けられていない。正極集電体21は、第1面21aにおける正極集電体21の外周縁21c寄りに位置し、正極活物質層22が設けられていない外周縁部21dを有する。
【0021】
負極30は、例えば矩形状の電極である。負極30は、平面視で矩形状の負極集電体31、及び活物質層としての負極活物質層32を有している。負極集電体31は、第1面31aと、第1面31aとは反対側に位置する第2面31bとを有している。負極活物質層32は、負極集電体31の第1面31aに設けられている。負極集電体31の第2面31bには、負極活物質層32は設けられていない。負極集電体31は、第1面31aにおける負極集電体31の外周縁31c寄りに位置し、負極活物質層32が設けられていない外周縁部31dを有する。なお、正極20及び負極30は、活物質層を有する一対の電極の一例である。
【0022】
正極集電体21の第1面21aと負極集電体31の第1面31aとは対向している。すなわち、正極活物質層22と負極活物質層32とは互いに対向している。セパレータ40は、正極活物質層22と負極活物質層32との間に挟まれている。つまり、正極20と負極30とは、セパレータ40を介して重なり合っている。正極20と負極30とが重なり合う方向を積層方向Aとし、積層方向Aに直交し、正極集電体21(負極集電体31)の平面視中央から外周縁21c(外周縁31c)に向かう方向を放射方向Bとする。複数の蓄電セル10の積層方向Cと、正極20と負極30とが重なり合う積層方向Aとは一致している。このため、積層方向Aにおいて蓄電セル10を見ることも平面視と記載する。
【0023】
正極活物質層22及び負極活物質層32は、それぞれ矩形状に形成されている。負極活物質層32は、正極活物質層22よりも一回り大きく形成されている。平面視において、正極活物質層22の形成領域の全体が、負極活物質層32の形成領域の内側に位置している。
【0024】
セパレータ40は、平面視において、負極活物質層32の形成領域よりも大きい矩形状をなしている。セパレータ40は、平面視において、正極集電体21及び負極集電体31よりも小さい矩形状をなしている。セパレータ40は、積層方向Aにおいて、正極活物質層22及び負極活物質層32に対向していない非対向部41を有している。
【0025】
図2及び
図3に示すように、樹脂枠50は、正極集電体21と負極集電体31との間に位置する。樹脂枠50は、絶縁材料を含み、正極集電体21と負極集電体31とを絶縁することにより正極集電体21と負極集電体31との短絡を防止する。本実施形態では、樹脂枠50の材料は、酸変性ポリエチレンである。なお、樹脂枠50の材料は、酸変性ポリプロピレンであってもよい。
【0026】
図2に示すように、樹脂枠50は、正極集電体21の外周縁部21dと、負極集電体31の外周縁部31dとの間に配置されている。樹脂枠50は、正極20と負極30との間に介在されるように設けられている。樹脂枠50は、正極活物質層22及び負極活物質層32を囲む矩形枠状をなしている。平面視において、樹脂枠50は、四角枠状をなしている。樹脂枠50は、正極集電体21の外周縁部21dと負極集電体31の外周縁部31dとの間に挟まれている部分と、正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cよりも外側に位置する部分とを有している。
【0027】
樹脂枠50は、積層方向Aの両端面のうち、正極集電体21寄りの端面に四角枠状の正極側端面50bを有し、負極集電体31寄りの端面に四角枠状の負極側端面50cを有する。
【0028】
樹脂枠50において、正極集電体21の外周縁部21dと負極集電体31の外周縁部31dとの間に挟まれている部分を介在部50aとする。樹脂枠50には、介在部50aと正極集電体21との間に非対向部41を挟む部分と、介在部50aと正極集電体21とが互いに溶着された第1接合部W1とが形成されている。非対向部41は、介在部50aに溶着されてもよい。
【0029】
第1接合部W1は、樹脂枠50の正極側端面50bにおける正極集電体21の外周縁部21dが重なり合う部分と、正極集電体21の外周縁部21dとが溶着されて形成されている。第1接合部W1において、正極側端面50bと、正極集電体21の外周縁部21dとは全周に亘って溶着されている。そのため、平面視において、第1接合部W1は、四角枠状をなしている。
【0030】
樹脂枠50には、介在部50aと負極集電体31とが互いに溶着された第2接合部W2が形成されている。第2接合部W2は、樹脂枠50の負極側端面50cにおける負極集電体31の外周縁部31dが重なり合う部分と、負極集電体31の外周縁部31dとが溶着されて形成されている。第2接合部W2において、負極側端面50cと、負極集電体31の外周縁部31dとは全周に亘って溶着されている。そのため、平面視において、第2接合部W2は、四角枠状をなしている。介在部50aと正極集電体21との間に非対向部41を挟む場合、第2接合部W2は、第1接合部W1よりも溶着面積が大きく形成され得る。第1接合部W1及び第2接合部W2により蓄電セル10の正極20、負極30、及び樹脂枠50により区画される空間Sのシール性が保たれる。すなわち、樹脂枠50は、正極20及び負極30とともに区画する空間Sを封止している。具体的には、空間Sは正極集電体21、負極集電体31及び樹脂枠50により区画ならびに封止され、当該空間S内に正極活物質層22及び負極活物質層32が配置されている。
【0031】
図1に示すように、セルスタック2において、複数の蓄電セル10は、積層方向Cに隣り合う一方の蓄電セル10の正極集電体21の第2面21bと負極集電体31の第2面31bとが互いに接するようにスタックされている。複数の蓄電セル10は電気的に直列に接続される。セルスタック2では、積層方向Cに隣り合う蓄電セル10により互いに接する正極集電体21及び負極集電体31を電極体とする疑似的なバイポーラ電極13が形成される。1つのバイポーラ電極13は、正極集電体21、負極集電体31、正極活物質層22、及び負極活物質層32を含む。なお、複数の蓄電セル10が備える樹脂枠50において、正極集電体21の外周縁21c及び負極集電体31の外周縁31cよりも外側に位置する部分は、互いに接合されて一体化している。これにより、蓄電装置1として、バイポーラ電極13を構成している正極集電体21と負極集電体31との間のシール性が確保される。セルスタック2における積層方向Cの第1端部11には、終端電極として正極集電体21と正極活物質層22が配置される。蓄電装置1における積層方向Cの第2端部12には、終端電極として負極集電体31と負極活物質層32が配置される。
【0032】
蓄電装置1は、積層方向Cにおいてセルスタック2を挟むように配置された、正極通電板71及び負極通電板81からなる一対の通電体を備えている。正極通電板71及び負極通電板81は、それぞれ良導電性材料で構成される。正極通電板71は、第1端部11において最も外側に配置された正極集電体21に電気的に接続されている。負極通電板81は、第2端部12において最も外側に配置された負極集電体31に電気的に接続されている。正極通電板71及び負極通電板81に設けられた図示しない端子を通じて蓄電装置1の充放電が行われる。正極通電板71及び負極通電板81を構成する材料としては、正極集電体21及び負極集電体31を構成する材料と同じ材料を用いることができる。正極通電板71及び負極通電板81は、蓄電セル10に用いられた正極集電体21及び負極集電体31よりも厚い金属板で構成してもよい。
【0033】
正極集電体21及び負極集電体31は、化学的に不活性な電気伝導体である。正極集電体21及び負極集電体31を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。正極集電体21及び負極集電体31は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。正極集電体21及び負極集電体31の表面には、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。正極集電体21及び負極集電体31は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。正極集電体21及び負極集電体31を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、又はステンレス鋼箔等を用いることができる。正極集電体21及び負極集電体31としてステンレス鋼箔を用いる場合、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301等を用いると、正極集電体21及び負極集電体31の機械的強度を確保できる。正極集電体21及び負極集電体31は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。本実施形態において、正極集電体21はアルミニウム箔であり、負極集電体31は銅箔である。正極集電体21及び負極集電体31は、箔状である場合、厚みを例えば、1μm~100μmとすればよい。
【0034】
正極活物質層22は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む、正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウムイオン複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層22は、複合活物質としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含む。
【0035】
負極活物質層32は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)が挙げられる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層32は炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0036】
正極活物質層22及び負極活物質層32それぞれは、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、電解液等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚みは、例えば2μm~150μmである。正極集電体21及び負極集電体31の表面に活物質層を形成させるために、ロールコート法等の公知の方法を用いてもよい。正極20又は負極30の熱安定性を向上させるために、正極集電体21及び負極集電体31の表面(片面又は両面)又は正極活物質層22及び負極活物質層32の表面に耐熱層を設けてもよい。耐熱層は、例えば、無機粒子と結着剤とを含み、その他に増粘剤等の添加剤を含んでもよい。
【0037】
導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、結着剤としては、ポリイミド、ポリアミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、アクリル酸やメタクリル酸などのモノマー単位を含むアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。さらに、結着剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体が挙げられる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒としては、例えば、水、N-メチル-2-ピロドリン(NMP)等が用いられる。
【0038】
セパレータ40は、正極20と負極30とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる。セパレータ40は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。セパレータ40を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。セパレータ40は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。セパレータ40自体を高分子ゲル電解質又は電解質等の電解質で構成してもよい。
【0039】
セパレータ40に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質等が挙げられる。
【0040】
セパレータ40に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
図3に示すように、樹脂枠50は、4つの壁部と、2つの接続部54とを有している。樹脂枠50が有する4つの壁部は、第1壁部51と、2つの第2壁部52と、第3壁部53とである。第1壁部51には、2つの接続部54が連続している。2つの接続部54それぞれには、第2壁部52が連続している。2つの第2壁部52の第1壁部51とは反対側には、第3壁部53が連続している。平面視において、第1壁部51と第3壁部53とは平行に延びている。平面視において、2つの第2壁部52は、平行に延びている。
【0042】
平面視において、2つの第2壁部52の間で、第1壁部51が延びる方向を第1延設方向D1とし、第3壁部53が延びる方向を第3延設方向D3とする。平面視において、第1壁部51と第3壁部53との間で、2つの第2壁部52が延びる方向を第2延設方向D2とする。第1延設方向D1と第2延設方向D2とは直交している。すなわち、2つの第2壁部52は、第1壁部51に直交する方向に延びている。第1延設方向D1と第3延設方向D3とは平行をなしている。すなわち、第1延設方向D1と第3延設方向D3は同じ方向であり、第3壁部53は、第1延設方向D1に延びている。第2延設方向D2と第3延設方向D3とは直交している。2つの第2壁部52の一方は、第1延設方向D1における第1壁部51の第1端部寄りに設けられている。2つの第2壁部52の他方は、第1延設方向D1における第1壁部51の第2端部寄りに設けられている。
【0043】
第1壁部51と、2つの第2壁部52と、第3壁部53と、2つの接続部54との積層方向Aにおける厚さは全て同じである。そのため、第1壁部51と、2つの第2壁部52と、第3壁部53と、2つの接続部54との積層方向Aにおける両端面のうちの一端面により正極側端面50bが形成され、他端面により負極側端面50cが形成されている。
【0044】
図3及び
図4に示すように、第1延設方向D1及び積層方向Aに直交する方向を第1厚さ方向Dt1とし、第1厚さ方向Dt1への第1壁部51の寸法を厚さT1とする。第1壁部51は、厚さT1が変化しない板状をなしている。第1壁部51は、蓄電セル10の空間Sに臨む第1内面51aを有している。第1内面51aは、第1厚さ方向Dt1に直交する面であり、平面視において第1延設方向D1に延びる面である。第1壁部51は、第1厚さ方向Dt1において、第1内面51aとは反対側に位置する第1外面51bを有している。第1内面51a及び第1外面51bは平行である。第1内面51aは、第1壁部51の第1端面の一例である。
【0045】
第2延設方向D2及び積層方向Aに直交する方向を第2厚さ方向Dt2とし、第2厚さ方向Dt2への第2壁部52の寸法を厚さT2とする。第2壁部52は、厚さT2が変化しない板状をなしている。第2壁部52は、蓄電セル10の空間Sに臨む第2内面52aを有している。第2内面52aは、第2厚さ方向Dt2に直交する面であり、平面視において第2延設方向D2に延びる面である。第2壁部52は、第2厚さ方向Dt2において、第2内面52aとは反対側に位置する第2外面52bを有している。第2内面52a及び第2外面52bは平行である。第2内面52aは、第2壁部52の第2端面の一例である。
【0046】
第3延設方向D3及び積層方向Aに直交する方向を第3厚さ方向Dt3とし、第3厚さ方向Dt3における第3壁部53の寸法を厚さT3とする。第1厚さ方向Dt1と第3厚さ方向Dt3とは平行をなしている。すなわち、第1厚さ方向Dt1と第3厚さ方向Dt3は同じ方向であり、厚さT3は、第1厚さ方向Dt1における第3壁部53の寸法である。第3壁部53は、厚さT3が変化しない板状をなしている。第3壁部53は、蓄電セル10の空間Sに臨む第3内面53aを有している。第3内面53aは、第3厚さ方向Dt3に直交する面であり、平面視において第3延設方向D3に延びる面である。第3壁部53は、第3厚さ方向Dt3において、第3内面53aとは反対側に位置する第3外面53bを有している。第3内面53a及び第3外面53bは平行である。第3内面53aは、2つの第2壁部52の第2内面52aと直交している。第3外面53bは、2つの第2壁部52の第2外面52bと直交している。
【0047】
2つの接続部54の各々は、蓄電セル10の空間Sに臨み、且つ第1内面51aと第2内面52aとを接続する傾斜面55を有している。第1内面51aと、第1壁部51の第1延設方向D1における第1端部寄りに設けられる第2内面52aとは傾斜面55により接続されている。第1内面51aと、第1壁部51の第1延設方向D1における第2端部寄りに設けられる第2内面52aとは傾斜面55により接続されている。
【0048】
平面視において、傾斜面55は、第1内面51aと第2内面52aとの間で直線状に延びている。傾斜面55は、第1内面51aとなす角度θ1が鈍角となっている。傾斜面55は、第2内面52aとなす角度θ2が鈍角となっている。傾斜面55は、第1内面51a及び第2内面52aとなす角度が鈍角となる変化面の一例である。
【0049】
2つの接続部54の各々は、第1延設方向D1及び積層方向Aに延び、且つ第1壁部51の第1外面51bと滑らかに連続する第1接続面54aを有している。2つの接続部54の各々は、第2延設方向D2及び積層方向Aに延び、且つ第2壁部52の第2外面52bと滑らかに連続する第2接続面54bを有している。第1接続面54aと第2接続面54bとは直交している。
【0050】
樹脂枠50は、第1壁部51の第1外面51bと2つの接続部54の第1接続面54aとにより構成される第1側面51sを有する。第1側面51sは、第1延設方向D1に長辺が延び、且つ積層方向Aに短辺が延びる矩形状の面である。
【0051】
樹脂枠50は、第2壁部52の第2外面52bと1つの接続部54の第2接続面54bとにより構成される2つの第2側面52sを有する。第2側面52sは、第2延設方向D2に長辺が延び、かつ積層方向Aに短辺が延びる矩形状の面である。
【0052】
第3外面53bは、第3延設方向D3に長辺が延び、かつ積層方向Aに短辺が延びる矩形状の面である。
第1壁部51の厚さT1は、第2壁部52の厚さT2と同じである。第1壁部51の厚さT1は、第3壁部53の厚さT3と同じである。第2壁部52の厚さT2は、第3壁部53の厚さT3と同じである。第1壁部51の厚さT1は、第2壁部52の厚さT2よりも厚くても良い。第1壁部51の厚さT1は、第3壁部53の厚さT3よりも厚くても良い。
【0053】
図4に示すように、平面視において、2つの接続部54の第1厚さ方向Dt1への厚さは、第1壁部51の厚さT1以上である。平面視において、2つの接続部54は、第1延設方向D1で第2壁部52から第1壁部51に向かうほど、第1厚さ方向Dt1における厚さが第1壁部51の厚さT1と一致するように薄くなる。
【0054】
平面視において、2つの接続部54の第2厚さ方向Dt2への厚さは、第2壁部52の厚さT2以上である。平面視において、2つの接続部54は、第2延設方向D2で第1壁部51から第2壁部52に向かうほど、第2厚さ方向Dt2における厚さが第2壁部52の厚さT2と一致するように薄くなる。
【0055】
すなわち、2つの傾斜面55の各々は、平面視において、第1延設方向D1で第2壁部52から第1壁部51に向かうほど第1厚さ方向Dt1における接続部54の厚さが薄くなるように設けられている。また、2つの傾斜面55の各々は、平面視において、第2延設方向D2で第1壁部51から第2壁部52に向かうほど第2厚さ方向Dt2における接続部54の厚さが薄くなるように設けられている。蓄電セル10を第1厚さ方向Dt1で見たとき、2つの傾斜面55の各々と第1内面51aとの境界と、負極活物質層32の第1延設方向D1における両端縁とは一致する。
【0056】
図2及び
図3に示すように、樹脂枠50は、貫通部60と、閉塞部70とを備えている。貫通部60は、第1壁部51に設けられている。貫通部60は、第1壁部51を貫通する貫通孔である。貫通部60は、第1壁部51を第1厚さ方向Dt1に貫通している。本実施形態では、第1壁部51における貫通部60の貫通方向Dpは、第1厚さ方向Dt1と一致する。なお、第1延設方向D1は、貫通方向Dpに直交する。第2延設方向D2は、貫通方向Dpと一致している。そのため、一対の第2壁部52は、貫通方向Dpに延びている。第3延設方向D3は、貫通方向Dpに直交する。貫通部60は、積層方向Aにおいて、セパレータ40よりも負極30側に設けられる。したがって、貫通部60は、貫通方向Dpにおいて負極活物質層32と対向している。なお、貫通部60は、積層方向Aにおいて、セパレータ40よりも正極20側に設けられても良い。
【0057】
貫通部60は、第1延設方向D1及び積層方向Aに延びる仮想面で切断したときの断面は、矩形状をなしている。貫通部60は、第1厚さ方向Dt1において、蓄電セル10の空間Sと蓄電セル10の外部との間で放射方向Bに延びている。貫通部60は、蓄電セル10の空間Sに電解質を注入した後、蓄電セル10の内部に発生するガスを蓄電セル10の外部に排出するガス排出口としての機能を有している。なお、貫通部60は、蓄電セル10の空間Sに電解質を注入するために設けられた注入口としての機能も有してもよい。蓄電セル10の内部に発生するガスとしては、蓄電セル10の内部に電解質を注入する前に残存していた空気や、蓄電装置1の初期充放電時に発生するガスを示している。なお、貫通部60を第1延設方向D1及び積層方向Aに延びる仮想面で切断したときの断面は、矩形状に限らず、円形状をなしていてもよい。貫通部60の形状は、適宜変更してもよい。
【0058】
閉塞部70は、樹脂部材である。閉塞部70は、貫通部60を閉塞している。閉塞部70は、蓄電セル10の内部に注入された電解質が蓄電セル10の外部に漏れ出すことを防止する封止部材である。そのため、電解質は、閉塞部70により貫通部60を閉塞する前の状態において蓄電セル10の空間Sに注入される。また、蓄電セル10の内部に発生したガスは、閉塞部70により貫通部60を閉塞する前の状態において蓄電セル10の外部に排出される。
【0059】
図3及び
図4に示すように、平面視において、貫通部60の第1延設方向D1における幅は、第1壁部51における2つの接続部54間の長さよりも小さい。平面視において、2つの接続部54の各々と、貫通部60とは、第1延設方向D1で貫通部60の第1延設方向D1における幅以上の間隔を隔てて配置されている。具体的には、第1延設方向D1において、貫通部60から2つの接続部54の各々までの第1壁部51の長さは、貫通部60の第1延設方向D1における幅以上である。なお、本実施形態の作用の説明の便宜上、
図3及び
図4には、閉塞部70をあえて記載していない。
【0060】
図4に示すように、本実施形態において、蓄電装置1を構成するための蓄電セル10は、3種類採用されている。3種類の蓄電セル10の違いは、
図4の破線で示すように第1延設方向D1における貫通部60の位置の違いである。
図4の破線で示される貫通部60のうち、第1壁部51の第1端部寄りに位置する貫通部を貫通部60aとし、第1壁部51の第2端部寄りに位置する貫通部を貫通部60bとする。平面視において、貫通部60,60a,60bは互いに重なっていない。蓄電装置1は、貫通部60を有する蓄電セル10と、貫通部60aを有する蓄電セル10と、貫通部60bを有する蓄電セル10との3種類の蓄電セル10が積層されることにより構成されている。
【0061】
貫通部60aを有する蓄電セル10では、第1延設方向D1において、第1壁部51の第2端部寄りの接続部54と、貫通部60aとは、貫通部60の第1延設方向D1における幅以上の間隔を隔てて配置されている。貫通部60bを有する蓄電セル10では、第1延設方向D1において、第1壁部51の第1端部寄りの接続部54と、貫通部60bとは、貫通部60の第1延設方向D1における幅以上の間隔を隔てて配置されている。具体的には、貫通部60aを有する蓄電セル10では、第1延設方向D1において、貫通部60aから第1壁部51の第2端部寄りの接続部54までの第1壁部51の長さは、貫通部60の第1延設方向D1における幅と、貫通部60bの第1延設方向D1における幅との和以上である。貫通部60bを有する蓄電セル10では、第1延設方向D1において、貫通部60bから第1壁部51の第1端部寄りの接続部54までの第1壁部51の長さは、貫通部60の第1延設方向D1における幅と、貫通部60aの第1延設方向D1における幅との和以上である。
【0062】
第1延設方向D1において、第1壁部51の第1端部寄りの接続部54と、貫通部60aとは、貫通部60の第1延設方向D1における幅以上の間隔を隔てて配置されていなくてもよい。貫通部60bを有する蓄電セル10では、第1延設方向D1において、第1壁部51の第2端部寄りの接続部54と、貫通部60bとは、貫通部60の第1延設方向D1における幅以上の間隔を隔てて配置されていなくてもよい。なお、貫通部60,60a,60bの第1延設方向D1における幅は同じである。
【0063】
図6に示すように、蓄電装置1において、隣り合う蓄電セル10が有する貫通部60,60a,60bは、積層方向Cで重ならないように配置されている。
本実施形態の作用を説明する。
【0064】
図4に示すように、貫通部60が閉塞部70で閉塞されていない状態において、蓄電セル10の空間Sには、貫通部60を介して電解質が注入される。注入された電解質は、
図4中の矢印で示すように、空間Sを第3壁部53に向けて流動し、電解質の一部は、第1壁部51の第1内面51aと、2つの傾斜面55と、2つの第2内面52aとを伝う。空間Sに充填された電解質は、負極活物質層32に含侵しつつ
図2に示すセパレータ40にも含侵される。セパレータ40に含侵された電解質は、正極活物質層22にも含侵される。
【0065】
図5に示すように、蓄電セル10の内部にガスが発生した場合、貫通部60が閉塞部70によって閉塞されていない状態において、ガス抜き装置を用いて貫通部60から蓄電セル10の外部にガスを吸引する。蓄電セル10の内部のガスは、
図5の矢印で示すように、空間Sを第1壁部51に向けて流動し、ガスの一部は2つの第2内面52a、及び2つの傾斜面55を伝って第1壁部51に向けて吸引される。第1壁部51に向けて吸引されたガスは、貫通部60を介して蓄電セル10の外部に排出される。第1壁部51と、2つの第2壁部52との間には、傾斜面55を有する接続部54が設けられているため、ガスが第1壁部51と第2壁部52との境界に溜まり難い。
【0066】
本実施形態の効果を説明する。
(1)貫通部60が閉塞部70で閉塞されていない状態において、蓄電セル10の空間Sに発生したガスを蓄電セル10の外部に排出するとき、ガスは貫通部60に向けて流動する。このとき、第2内面52a、傾斜面55、及び第1内面51aに沿って流動するガスがある。第1内面51aと第2内面52aとが傾斜面55で接続されていることから、ガスは、傾斜面55により第2内面52aから第1内面51aに円滑に流動し易くなる。そのため、貫通部60からガスを排出し易くなり、第1壁部51と第2壁部52との境界にガスが溜まることを抑制できる。
【0067】
(2)蓄電セル10の内部で発生したガスは、2つの第2壁部52にそれぞれ対応して設けられた2つの傾斜面55により第1内面51aに向けて円滑に流動し易くなる。そのため、貫通部60からガスを排出し易くなり、第1壁部51と第2壁部52との境界にガスが溜まることをより抑制できる。
【0068】
(3)第1壁部51の厚さT1は、第2壁部52の厚さT2及び第3壁部53の厚さT3以上であり、蓄電セル10の内圧に対する剛性が確保されている。そのため、貫通部60からガスを排出する際、傾斜面55により第1内面51aに向けてガスが流動し、貫通部60にガスが集中しても、第1壁部51の位置における封止性を、第2壁部52及び第3壁部53と同様に保持できる。
【0069】
(4)平面視において、第1壁部51は、厚さT1が変化しない板状をなしている。そして、平面視において、2つの接続部54と、貫通部60とは、第1延設方向D1で貫通部60の第1延設方向D1における幅以上の間隔を隔てて配置されている。そのため、貫通部60を設ける位置を第1延設方向D1においてずらし易くなる。よって、貫通部60の配置の自由度が向上する。
【0070】
(5)変化面を曲面とする場合と比較して、変化面を傾斜面55とする場合の方が樹脂枠50を製造し易い。そのため、蓄電セルの生産性を向上させることができる。よって、ガスを貫通部に誘導し易くしつつ蓄電セルの生産性が向上する。
【0071】
(6)本実施形態では、第1壁部51と第2壁部52との境界にガスが溜まることが抑制されることで、例えば蓄電装置1の製造時において、ガスの排出にかかる時間を短縮し、生産性を向上できる。また、蓄電セル10の内部にガスが残った状態であると、電池反応が阻害されて電池性能が低下するおそれがある一方、本実施形態の蓄電装置1及び蓄電セル10によればガスが溜まることを抑制できる。そのため、電池性能の低下を抑制できる。特に、ガスの排出を促すために貫通部60が設けられた第1壁部51周辺を除いて蓄電セル10を積層方向Aに拘束しながらガスの排出を行う場合、第1壁部51と第2壁部52との境界にガスが溜まって内圧が上昇し、正極集電体21、負極集電体31、及び樹脂枠50に応力がかかることを抑制できる。
【0072】
(7)蓄電装置1において、積層方向Cで隣り合う蓄電セル10の有する貫通部60は、第1壁部51に配置されているが、積層方向Cで重なり合っていない。そのため、蓄電装置1において、貫通部60を介してガスを排出するときや電解液を注入するときに、それぞれの貫通部60に接続されるノズル等が互いに干渉し難くなる。したがって、蓄電装置1の生産性を向上できる。
【0073】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 蓄電セル10の樹脂枠50は、
図7及び
図8のように変更してもよい。
【0074】
図7及び
図8に示すように、傾斜面55を貫通部60に至るまで延ばしてもよい。この場合、第1壁部51の第1延設方向D1における幅は、貫通部60の第1延設方向D1における幅とほぼ等しくなる。蓄電セル10を第1厚さ方向Dt1で見たとき、第1延設方向D1において、2つの傾斜面55の各々と第1内面51aとの境界は、負極活物質層32の第1延設方向D1における両端縁よりも内側に位置している。
【0075】
このように変更することにより、傾斜面55を伝って貫通部60に直接的にガスを誘導することができるため、ガス抜きの効率を向上できる。
○ 平面視において、2つの接続部54の空間Sに臨む面の形状を
図9のように変更してもよい。
【0076】
図9に示すように、平面視において、2つの接続部54の空間Sに臨む面は、曲面56を含んでいる。曲面56は、平面視において、第1延設方向D1で第2壁部52から第1壁部51に向かうほど第1厚さ方向Dt1における接続部54の厚さが第1壁部51の厚さT1と一致するように薄くなるように設けられている。また、曲面56は、平面視において、第2延設方向D2で第1壁部51から第2壁部52に向かうほど第2厚さ方向Dt2における接続部54の厚さが第2壁部52の厚さT2と一致するように薄くなるように設けられている。
【0077】
曲面56は、接続部54の空間Sに臨む面のうち、平面視において、第1壁部51の第1内面51aと、曲面56上の任意の位置Pを通過しつつ曲面56に接する仮想面Lとのなす角度θ1が鈍角をなす部位である。また、曲面56は、接続部54の空間Sに臨む面のうち、平面視において、第2壁部52の第2内面52aと、曲面56上の任意の位置Pを通過しつつ曲面56に接する仮想面Lとのなす角度θ2が鈍角をなす部位である。
【0078】
○ 貫通部60は、第1壁部51を第1厚さ方向Dt1に貫通している貫通孔であったが、これに限らない。例えば、
図10のように変更してもよい。
図10に示すように、貫通部60は、負極側端面50cから凹む凹状の溝であってもよい。貫通部60は、放射方向Bにおいて、蓄電セル10の空間Sから蓄電セル10の外部に延びている。貫通部60の積層方向Aにおける開口の一部は、負極集電体31の第1面31aにより閉塞されている。すなわち、貫通部60と負極集電体31の第1面31aとにより放射方向Bに延びる貫通孔が形成されている。貫通部60には、筒部材90が設けられている。筒部材90の第1端は、蓄電セル10の空間Sに位置し、筒部材90の第2端は、蓄電セル10の外部に延びている。筒部材90の内部は、封止樹脂91により閉塞されている。すなわち、筒部材90及び封止樹脂91は、閉塞部の一例である。なお、本変更例において、蓄電セル10の空間Sに電解質を注入する場合、封止樹脂91が筒部材90を閉塞していない状態で、筒部材90の内部に注入ノズルを挿入する。そして、注入ノズル及び筒部材90を介して蓄電セル10の空間Sに電解質が注入される。また、蓄電セル10の内部に発生したガスを、蓄電セル10の外部に排出する場合、筒部材90を介して蓄電セル10の外部にガスを排出する。
【0079】
○ 本実施形態において、平面視において、2つの接続部54の厚さを常に一定にしてもよい。2つの接続部54の空間Sに臨む面が傾斜面55もしくは曲面56であればよい。この場合、第1接続面54a及び第2接続面54bが傾斜面55もしくは曲面56に沿う傾斜面もしくは曲面として形成される。
【0080】
○ 樹脂枠50は、2つの接続部54を有していたが、いずれか一方を割愛してもよい。
○ 貫通部60は、第1厚さ方向Dt1において第1壁部51を貫通していたが、これに限らない。例えば、第1厚さ方向Dt1と貫通部60の貫通方向Dpが一致しなくてもよい。また、第1延設方向D1と貫通方向Dpとが直交しなくてもよい。すなわち、貫通部60が延びる方向は、貫通部60が空間Sと蓄電セル10の外部とに延びていれば、第1厚さ方向Dt1に交差する方向に延びていてもよい。
【0081】
○ 本実施形態において、蓄電装置1は、上記変更例に記載した蓄電セル10を含むように構成してもよい。
○ 本実施形態において、バイポーラ電極13を構成する上で、正極集電体21の第2面21bと負極集電体31の第2面31bとを重ね合わせていたが、例えば、正極集電体21と負極集電体31とを一体的に構成してもよい。
【0082】
○ 正極集電体21と負極集電体31とは異なる材質で構成されていたが、これに限らない。正極集電体21と負極集電体31とが同じ材質で構成されていてもよい。
○ 上記の実施形態は、本発明の一態様を説明したものである。したがって、本発明は、上記態様に限定されることなく、任意に変形され得る。
【符号の説明】
【0083】
1…蓄電装置、10…蓄電セル、20…正極、21…正極集電体、21a…第1面、21d…外周縁部、22…正極活物質層、30…負極、31…負極集電体、31a…第1面、31d…外周縁部、32…負極活物質層、40…セパレータ、41…非対向部、50…樹脂枠、51…第1壁部、51a…第1面、52…第2壁部、52a…第1面、53…第3壁部、54…接続部、55…傾斜面、56…曲面、60,60a,60b…貫通部、70…閉塞部、90…フィルム、91…封止樹脂、θ1,θ2…角度、S…空間、T1…第1壁部の厚さ、T2…第2壁部の厚さ、T3…第3壁部の厚さ、A…積層方向、B…放射方向、D1…第1延設方向、D2…第2延設方向、D3…第3延設方向、Dt1…第1厚さ方向、Dt2…第2厚さ方向、Dt3…第3厚さ方向、Dp…貫通方向。