(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240326BHJP
H05G 1/36 20060101ALI20240326BHJP
H05G 1/32 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H05G1/36 K
H05G1/32 J
(21)【出願番号】P 2020207250
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】林 拓実
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-252094(JP,A)
【文献】特開平07-263175(JP,A)
【文献】特開昭59-078499(JP,A)
【文献】特開2014-059746(JP,A)
【文献】特開2017-199073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H05G 1/36
H05G 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサバンクと、
前記コンデンサバンクに接続された直流電圧可変回路と、
前記コンデンサバンクの直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータの交流側に接続され、または、前記インバータの交流側に他の機器を介して接続され、非線形なI-V特性を有する負荷と、を備えた電力変換装置であって、
前記直流電圧可変回路は、
抵抗値の可変調整機能を有する第4抵抗と、
前記第4抵抗の一端に一端が接続され、前記第4抵抗に対して直列接続された第2抵抗と、
前記第4抵抗の他端に一端が接続され、前記第2抵抗の他端に他端が接続され、前記第2抵抗,前記第4抵抗の直列回路に並列接続された第3抵抗と、
前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路に一端が接続された第1抵抗と、
を備え、前記第1抵抗の他端が直流電源の正極に接続され、前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路と前記第1抵抗との接続点が
出力電圧として前記コンデンサバンクの一端に接続され、
前記第2抵抗の他端と、前記第3抵抗の他端と、前記コンデンサバンクの他端と、が前記直流電源の負極に接続され、
前記第4抵抗の抵抗値を調整することで、前記直流電圧可変回路の
前記出力電圧を調整することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
コンデンサバンクと、
前記コンデンサバンクに接続された
直流電圧生成装置と、
前記コンデンサバンクの直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記直流電圧生成装置の出力電圧もしくは前記インバータの出力電圧を制御する出力電圧制御回路と、
前記インバータの交流側に接続され、または、前記インバータの交流側に他の機器を介して接続され、非線形なI-V特性を有する負荷と、を備えた電力変換装置であって、
前記出力電圧制御回路は、
抵抗値の可変調整機能を有する第4抵抗と、
前記第4抵抗の一端に一端が接続され、前記第4抵抗に
対して直列接続された第2抵抗と、
前記第4抵抗の他端に一端が接続され、前記第2抵抗の他端に他端が接続され、前記第2抵抗,前記第4抵抗の直列回路に並列接続された第3抵抗と、
前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路に一端が接続された第1抵抗と、
を備え、前記第1抵抗の他端が
直流電源の正極に接続され、前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路と前記第1抵抗との接続点を出力電圧指令とし、
前記第2抵抗の他端と、前記第3抵抗の他端と、が前記直流電源の負極に接続され、
前記第4抵抗の抵抗値を調整することで前記出力電圧指令を調整し、調整した前記出力電圧指令に基づいて、
前記直流電圧生成装置の出力電圧もしくは前記インバータの出力電圧を制御することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記第3抵抗は、抵抗値の可変調整機能を有することを特徴とする請求項1または2記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定抵抗、可変抵抗を組み合わせることで非線形出力を模擬する回路技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エミッタ(電子源)には、電界電子放出を利用するものがあり、応用例として冷陰極X線管が挙げられる。
図8に冷陰極X線管のI-V特性(出力特性)を示す。
【0003】
また、
図1に負荷である冷陰極X線管に所望の高電圧を印加する冷陰極X線発生装置の代表構成図を示す。この構成の先行技術として、特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エミッタのI-V特性は非線形であり、制御性を高めるためには工夫が必要となる。冷陰極X線発生装置内のポテンショメータ等の手動操作で出力電流を制御しようとすると、線形素子で非線形出力を調整することになるため、全区間で均一な変化量を持たせることが困難である。
【0006】
具体的には、
図8に示すように、冷陰極X線管に印加する電圧が高電圧になればなるほど、ポテンショメータ等の操作量に対して出力電流の変化量が大きくなる。プログラムを製作することで制御性を高めることができるが、製作にはコストがかかる。
【0007】
以上示したようなことから、非線形なI-V特性を有する負荷に対して、全区間を均一な電流変化量で出力調整することを可能とし、かつ、設計の簡素化、低コスト化を実現した電力変換装置を提供することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、コンデンサバンクと、前記コンデンサバンクに接続された直流電圧可変回路と、前記コンデンサバンクの直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータの交流側に接続され、または、前記インバータの交流側に他の機器を介して接続され、非線形なI-V特性を有する負荷と、を備えた電力変換装置であって、前記直流電圧可変回路は、抵抗値の可変調整機能を有する第4抵抗と、前記第4抵抗の一端に一端が接続され、前記第4抵抗に対して直列接続された第2抵抗と、前記第4抵抗の他端に一端が接続され、前記第2抵抗の他端に他端が接続され、前記第2抵抗,前記第4抵抗の直列回路に並列接続された第3抵抗と、前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路に一端が接続された第1抵抗と、を備え、前記第1抵抗の他端が直流電源の正極に接続され、前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路と前記第1抵抗との接続点が出力電圧指令として前記コンデンサバンクの一端に接続され、前記第2抵抗の他端と、前記第3抵抗の他端と、前記コンデンサバンクの他端と、が前記直流電源の負極に接続され、前記第4抵抗の抵抗値を調整することで、前記直流電圧可変回路の出力電圧を調整することを特徴とする。
【0009】
また、他の態様として、コンデンサバンクと、前記コンデンサバンクに接続された直流電圧生成回路と、前記コンデンサバンクの直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記直流電圧生成回路の出力電圧もしくは前記インバータの出力電圧を制御する出力電圧制御回路と、前記インバータの交流側に接続され、または、前記インバータの交流側に他の機器を介して接続され、非線形なI-V特性を有する負荷と、を備えた電力変換装置であって、前記出力電圧制御回路は、抵抗値の可変調整機能を有する第4抵抗と、前記第4抵抗に直列接続された第2抵抗と、前記第2抵抗,前記第4抵抗の直列回路に並列接続された第3抵抗と、前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路に一端が接続された第1抵抗と、を備え、前記第1抵抗の他端が電源電圧に接続され、前記第2抵抗,前記第3抵抗,前記第4抵抗の直並列回路と前記第1抵抗との接続点を出力電圧指令とし、前記第4抵抗の抵抗値を調整することで前記出力電圧指令を調整し、調整した前記出力電圧指令に基づいて、前記直流電圧生成回路の出力電圧もしくは前記インバータの出力電圧を制御することを特徴とする。
【0010】
また、その一態様として、前記第3抵抗は、抵抗値の可変調整機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非線形なI-V特性を有する負荷に対して、全区間を均一な電流変化量で出力調整することを可能とし、かつ、設計の簡素化、低コスト化を実現した電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態1の直流電圧可変回路を示す回路構成図。
【
図3】第4抵抗R4と出力電圧指令Vrefの関係を示す図。
【
図4】第1抵抗R1を調整したR4-V特性を示す図。
【
図5】第2抵抗R2を調整したR4-V特性を示す図。
【
図6】第3抵抗R3を調整したR4-V特性を示す図。
【
図7】実施形態2の直流電圧可変回路を示す回路構成図。
【
図8】冷陰極X線管のI-V特性(出力特性)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明における電力変換装置の実施形態1~3を
図1~
図7に基づいて詳述する。
【0014】
[実施形態1]
図1に冷陰極X線発生装置(電力変換装置)の全体概要を示す。冷陰極X線発生装置は、コンデンサバンク1と、インバータ(例えば、高周波インバータ)2と、昇圧トランス3と、コッククロフト回路4と、冷陰極X線管5と、分圧抵抗R5,R6と、を備える。
【0015】
なお、
図1には示していないが、コンデンサバンク1の左側には直流電圧可変回路が接続されており、コンデンサバンク1の一端(正極)と他端(負極)に接続されている。
【0016】
インバータ2は、コンデンサバンク1の直流電力を交流電力に変換する。昇圧トランス3は、インバータ2の交流出力を昇圧する。コッククロフト回路4は、昇圧トランス3から出力された交流電圧から直流電圧を生成し、冷陰極X線管5に出力する。また、コンデンサバンク1には分圧抵抗R5,R6の直列回路が並列接続される。この分圧抵抗R5,R6の接続点が検出電圧Vcとなる。
【0017】
コンデンサバンク1に充電される電圧を調整することで、コッククロフト回路4の出力電圧を変化させることができ、それにより冷陰極X線管5の出力を調整する。コンデンサバンク1の充電電圧とコッククロフト回路4の出力電圧は、昇圧トランス3の巻数比とコッククロフト回路4の段数によって決まり、比例関係にある。
【0018】
図2に本実施形態1の直流電圧可変回路の構成を示す。
図2は、直流電圧可変回路の出力電圧指令Vrefを生成する回路である。直流電圧可変回路の他例として、チョッパ、PWMコンバータ、サイリスタ整流器などがある。
【0019】
図2に示すように、端子VCCに直並列で第1~第4抵抗R1~4が接続される。第2抵抗R2の一端は第4抵抗の一端に接続され、第2抵抗R2は第4抵抗R4に対して直列接続される。第3抵抗R3の一端は第4抵抗R4の他端に接続され、第3抵抗R3の他端は第2抵抗R2の他端に接続され、第2抵抗R2,第4抵抗R4の直列回路に対して並列に第3抵抗R3が接続される。第2抵抗R2,第3抵抗R3,第4抵抗R4の直並列回路に対して第1抵抗R1の一端が接続される。また端子VCCは外部の直流電源(図示せず)の正極に接続される。
【0020】
第1抵抗R1の他端に端子VCCが接続される。第2抵抗R2,第3抵抗R3,第4抵抗R4の直並列回路と第1抵抗R1との接続点が出力電圧指令Vrefとしてコンデンサバンク1の一端に接続される。また、コンデンサバンク1の他端(負極)と第2抵抗R2の他端と、第3抵抗R3の他端は外部の直流電源(図示せず)の負極に接続される。
【0021】
本実施形態1において、第1~第3抵抗R1~R3は固定抵抗とし、第4抵抗R4は抵抗値の可変調整機能を有する。第4抵抗R4は、デジタルポテンショメータが望ましいが、アナログの可変抵抗でも適用可能である。本実施形態1では、直流電圧可変回路を
図2のような回路構成にすることで、ポテンショメータ等で第4抵抗R4を手動操作した場合、冷陰極X線管のI-V特性に対して全区間均一な電流変化量で出力調整が可能となる。
【0022】
冷陰極X線管5のI-V特性は
図8に示した通り、非線形である。よって、コンデンサバンク1の充電電圧を線形に変化させると、高電圧になるにつれて電流の変化量が多くなってしまい制御性が悪くなる。
【0023】
本実施形態1のような回路構成にし、ポテンショメータ等(第4抵抗R4)を操作すると
図3のような分圧電圧(出力電圧指令)Vrefが得られる。この分圧電圧(出力電圧指令)Vrefは、
図3に示すように第4抵抗R4の抵抗値に対して非線形に変化する。
【0024】
インバータ2の交流出力は分圧電圧(出力電圧指令)Vrefに比例した交流電圧を出力するので、全区間均一な電流変化量で冷陰極X線管5の電流を調整することが可能となる。分圧抵抗(出力電圧指令)Vrefは以下の(1)式となる。
【0025】
【0026】
第1抵抗R1を調整することで、
図4に示すようにR4-V特性を調整できるので、I-V特性をシフトすることが可能となる。
【0027】
また、第2抵抗R2を調整することで、
図5に示すようにR4-V特性を調整できるので、I-V特性のエミッション開始箇所を選択することが可能となる。さらに、第3抵抗R3を調整することで、
図6のようにR4-V特性を調整できるので、I-V特性の傾きを選択することが可能となる。
【0028】
エミッタのI-V特性は非線形であり、ポテンショメータ等で調整した場合、区間によって電流変化量が異なる。本実施形態1のような構成とすることで、全区間を均一な電流変化量で出力調整することができる。また、設計の簡素化、低コスト化を実現できる。
【0029】
実施形態1では線形の可変抵抗を変化させることで、非線形出力を模擬することができる。また、それぞれの抵抗を変化させることで様々なI-V特性を網羅することが可能となる。
【0030】
[実施形態2]
図7に本実施形態2の直流電圧可変回路を示す。直流電圧可変回路は、実施形態1と同様な回路構成とするが、第3抵抗R3は抵抗値の可変調整機能を有する。第3抵抗R3は、例えばアナログの可変抵抗またはデジタルポテンショメータとする。
【0031】
本実施形態2のような構成にすることで、冷陰極X線管5の寿命特性に対応することができる。
【0032】
エミッタは寿命特性があり、印加電圧に対して徐々に出力電流が低下することが知られている。そこで、コッククロフト回路4の出力電圧、電流をフィードバックして設定値と比較し、第3抵抗R3のデジタルポテンショメータ(つまり第3抵抗R3の抵抗値)を制御することで、寿命特性をとらえることができる。これにより、設定値と出力値を対比させて動作させることができる。
【0033】
第3抵抗R3にアナログの可変抵抗を用いる場合は、定期的な点検の際、寿命特性が変化していた場合に手動で第3抵抗R3の抵抗値を変化させることによって、設定値と出力値の乖離を取り除くことができる。
【0034】
本実施形態2によれば、実施形態1と同様に、全区間を均一な電流変化量で出力調整することができる。
【0035】
また、実施形態2では寿命特性を考慮して動作させることができるため、常に正確な出力を得ることが可能となる。
[実施形態3]
実施形態1,2では、
図2と
図7の回路が生成する分圧電圧(出力電圧指令)Vrefを
直流電圧可変回路の出力電圧とする構成として説明した。この構成の
直流電圧可変回路の代わりにチョッパ、PWMコンバータ、サイリスタ整流器などの直流電圧生成装置に置き換えて、
図2と
図7の回路(出力電圧制御回路)が生成する分圧電圧(出力電圧指令)Vrefを直流電圧生成装置の出力電圧指令とする構成としてもよい。この場合、分圧電圧(出力電圧指令)Vrefとコンデンサバンク電圧を分圧した検出電圧Vcを比較制御し、直流電圧生成装置内のスイッチング素子のオンオフ動作によって、直流電圧生成装置の出力電圧を制御する。
【0036】
さらに、直流電圧生成装置をダイオード整流器のような一定の直流電圧を生成する装置(直流電圧生成装置)に置き換えて、
図2と
図7の回路(出力電圧制御回路)が生成する出力電圧指令Vrefをインバータ2の出力電圧指令とする構成としてもよい。この場合、インバータ2内のスイッチング素子のオンオフ動作によって、インバータ2の出力電圧が制御される。
【0037】
さらに本発明の負荷は、冷陰極X線管に限らない。
図8のような非線形なI-V特性を持つ負荷であれば、適用できる発明である。
【0038】
さらに、
図1に示す昇圧トランス3やコッククロフト回路4を備えない装置にも適用できる技術である。すなわち、非線形なI-V特性を有する負荷(例えば、冷陰極X線管5)は、インバータ2の交流側、または、インバータ2の交流側に他の機器(例えば、昇圧トランス3やコッククロフト回路4)を介して接続される。
【0039】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0040】
1…コンデンサバンク
2…インバータ
3…昇圧トランス
4…コッククロフト回路
5…冷陰極X線管
R1…第1抵抗
R2…第2抵抗
R3…第3抵抗
R4…第4抵抗
R5,R6…分圧抵抗
Vref…出力電圧指令(分圧電圧)
VCC…電源電圧
Vc…検出電圧