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特許7459786農作物収穫装置、及び農作物収穫システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】農作物収穫装置、及び農作物収穫システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 46/00 20060101AFI20240326BHJP
   A01D 46/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A01D46/00 A
A01D46/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020216833
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102223
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】稲田 誠生
(72)【発明者】
【氏名】半田 郷
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-511142(JP,A)
【文献】特開2017-051104(JP,A)
【文献】特開平11-056070(JP,A)
【文献】特開2011-092135(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03539735(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 46/28
A01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
房(90)の状態で結実している実(91)を果柄(93)から分離して前記実を個別に収穫するために用いられる農作物収穫装置(1)であって、
前記房全体の外径よりも大きい状態に開いて内側に前記房全体が挿入可能となっている開状態と、前記房全体の外径よりも小さくかつ前記果柄の外径よりも小さい状態に閉じる閉状態と、に切り替え可能に構成され、前記閉状態において前記果柄を挟んで保持可能な保持機構(20)と、
前記保持機構に対して前記果柄の先端側に設けられ、前記房全体の外径よりも大きい状態に開いて内側に前記房全体が挿入可能となっている開状態と、前記房全体の外径よりも小さくかつ前記果柄の外径よりも大きい状態に閉じて内側に所定の隙間が形成される閉状態と、に切り替え可能に構成され、前記果柄を内側に配置し前記閉状態で前記果柄の先端側へ移動することで前記実を前記果柄から分離させる分離機構(30)と、を備え、
前記分離機構は、前記閉状態において相互に対向する位置でかつ前記果柄に接触する位置に設けられた回転可能な回転部材(38)を有している、
農作物収穫装置。
【請求項2】
前記分離機構は、対向する前記回転部材の間の寸法を調整可能に構成されている、
請求項1に記載の農作物収穫装置。
【請求項3】
前記回転部材は、前記回転部材の自重によって対向する前記回転部材の間の隙間が大きくなる方向へ回動可能に構成されている、
請求項1又は2に記載の農作物収穫装置。
【請求項4】
前記保持機構の開閉と、前記分離機構の開閉と、前記分離機構の回動と、を1つの駆動源で行うことが可能な駆動機構(40)を更に備えている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の農作物収穫装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載した農作物収穫装置(1)が取り付けられたロボットアーム(52)と、
穫対象物(91)の位置情報を含む視覚情報を取得可能な視覚装置(51)と、
前記視覚装置で取得した前記視覚情報に含まれている前記収穫対象物を検出する収穫対象物検出処理を実行可能な収穫対象物検出処理部(61)と、
前記収穫対象物検出処理で検出した前記収穫対象物の先端位置(Pb)と基端位置(Pt)とを含む位置を特定する位置特定処理を実行可能な位置情報特定処理部(62)と、
前記収穫対象物の前記先端位置の外方から前記基端位置に至るまでの前記農作物収穫装置の移動経路(R)を生成する移動経路生成処理を実行可能な移動経路生成処理部(63)と、
前記ロボットアームを駆動制御して前記移動経路生成処理で生成した前記移動経路に沿って前記農作物収穫装置を移動させて、前記開状態の前記保持機構及び前記分離機構の内側に前記収穫対象物を通す移動処理を実行可能な移動処理部(64)と、
前記移動処理の後に実行されて、前記保持機構を閉状態にして前記果柄の基端側部分を保持する保持処理を実行可能な保持処理部(65)と、
前記分離機構を前記果柄の先端側へ移動させることで前記果柄から前記実を分離する分離処理を実行可能な分離処理部(67)と、
を備える農作物収穫システム(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、主茎や枝に結実した農作物を収穫するための農作物収穫装置、及び農作物収穫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農作業の効率化を図るために、様々な装置が開発されている。例えばミニトマト等のように房の状態で結実する収穫対象物を個別に収穫する装置などがある。しかしながら、従来の構成では、1回の動作で1つの実を収穫する構成であったため、収穫に要する時間が長く効率が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-51104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、房の状態で結実する収穫対象物を効率良く短時間で個別に収穫することができる農作物収穫装置、及び農作物収穫システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の農作物収穫装置(1)は、房(90)の状態で結実している実(91)を果柄(93)から分離して前記実を個別に収穫するために用いられる。農作物収穫装置は、前記房全体の外径よりも大きい状態に開いて内側に前記房全体が挿入可能となっている開状態と、前記房全体の外径よりも小さくかつ前記果柄の外径よりも小さい状態に閉じる閉状態と、に切り替え可能に構成され、前記閉状態において前記果柄を挟んで保持可能な保持機構(20)と、前記保持機構に対して前記果柄の先端側に設けられ、前記房全体の外径よりも大きい状態に開いて内側に前記房全体が挿入可能となっている開状態と、前記房全体の外径よりも小さくかつ前記果柄の外径よりも大きい状態に閉じて内側に所定の隙間が形成される閉状態と、に切り替え可能に構成され、前記果柄を内側に配置し前記閉状態で前記果柄の先端側へ移動することで前記実を前記果柄から分離させる分離機構(30)と、を備える。前記分離機構は、前記閉状態において相互に対向する位置でかつ前記果柄に接触する位置に設けられた回転可能な回転部材(38)を有している。
【0006】
これによれば、1回の動作で房に付いている複数の実を個別に分離して収穫することができるため、房の状態で結実する収穫対象物を効率良く短時間で個別に収穫することができる。
【0007】
また、本構成によれば、例えば視覚装置を用いて自動で収穫する農作物収穫システムを構築する際、視覚装置は、房全体や主茎を認識すれば良く、全ての実を個々に認識する必要はない。このため、個々の実を認識して実を個別に収穫する場合に比べて、視覚装置の認識精度を低いものにすることができ、その結果、個々の実を認識して収穫するための高度な制御が不要となるため、簡単な制御構成とすることができ、その結果、制御の負荷を低減することができる。
【0008】
ここで、例えばハサミ形状のエンドエフェクタによって果柄を切断して収穫する構成の場合、ハサミ形状のエンドエフェクタを移動させる際に刃先部分が主茎や枝に接触して、主茎や枝を傷つけてしまったり、さらには切断してしまったりするおそれがある。そして、主茎や枝の損傷や切断は、植物の様々な病気を引き起こす原因となり、ひどい場合には枯れてしまい、その結果、その後の収穫量の減少に繋がる。
【0009】
これに対し、本構成によれば、刃物を用いることなく実を果柄から分離して収穫することができるため、主茎や枝の損傷や切断を抑制することができる。その結果、植物の病気を抑制できて実の減少を防ぎ、収穫効率を大幅に向上させることができる。
【0010】
ここで、回転部材は、分離機構を果柄の先端側へ移動させる再に、実に接触し力を作用させて実を果柄から分離させる。この場合、果柄から実を適切に分離させるためには、回転部材は、果柄には力を作用させずに実のみに力を作用せることが重要である。そのため、例えば回転部材を回転しない単なる棒状の部材で構成したとすると、分離処理において分離機構を果柄の先端側へ回動させる際に、その棒状の部材が、果柄等に引っかかって房全体を引っ張ってしまい、その結果、果柄から実を適切に分離し難くなる。
【0011】
これに対し、本構成において、分離機構は、回転部材を有している。回転部材は、閉状態において相互に対向する位置でかつ果柄に接触する位置に設けられた回転可能に構成されている。このため、例えば分離処理等において分離機構を果柄の先端側へ回動させる際に、回転部材は、回転しながら果柄に沿って移動することができる。このため、回転部材が果柄等に引っかかって房全体を引っ張ることを抑制でき、その結果、果柄から実を効率良く分離することができる。
【0012】
また、回転部材は、モータ等で能動的に駆動するものではなく、果柄等からの摩擦力等により従動する。このため、実や実に付いているヘタ等を巻き込むことが抑制される。その結果、実が傷つくことを抑制でき、農作物の商品価値を高い状態に維持したまま収穫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による農作物収穫装置の一例について、保持機構及び分離機構が開いた状態を示す平面図
図2】一実施形態による農作物収穫装置の一例について、保持機構及び分離機構が開いた状態を上方から示す斜視図
図3】一実施形態による農作物収穫装置の一例について、保持機構及び分離機構が閉じた状態を示す平面図
図4】一実施形態による農作物収穫装置の一例について、保持機構及び分離機構が閉じた状態を上方から示す斜視図
図5】一実施形態による農作物収穫装置の一例について、保持機構及び分離機構が閉じてかつ分離機構が保持機構から離れる方向へ移動した状態を上方から示す斜視図
図6】一実施形態による農作物収穫装置について、回転部材の一例を周辺の構成とともに示す平面図
図7】一実施形態による農作物収穫装置の一例について、回転部材を周辺の構成ととみに示す断面図であって、(a)は回転部材が開いた状態、(b)は回転部材が閉じた状態を示す図
図8】一実施形態による農作物収穫装置について、回転部材の他の例を周辺の構成とともに示す平面図
図9】一実施形態による農作物収穫装置について、回転部材の他の例を周辺の構成とともに示す平面図
図10】一実施形態による農作物収穫装置について、駆動機構の構成の一例を示す平面図
図11】一実施形態による農作物収穫装置について、図10のX11-X11線に沿って示す断面図であって、モータが正回転した場合の動作を(a)~(c)の順で示す図
図12】一実施形態による農作物収穫装置について、図10のX12-X12線に沿って示す断面図であって、モータが正回転した場合の動作を(a)~(c)の順で示す図
図13】一実施形態による農作物収穫装置について、図10のX13-X13線に沿って示す断面図であって、モータが正回転した場合の動作を(a)~(c)の順で示す図
図14】一実施形態による農作物収穫装置について、図10の矢印X14方向から示す図であって、モータが正回転した場合の動作を(a)~(c)の順で示す図
図15】一実施形態による農作物収穫システムの構成を概略的に示す図
図16】一実施形態による農作物収穫システムにおいて、視覚装置により取得した視覚情報の一例を示す図
図17】一実施形態による農作物収穫システムにおいて、位置特定処理部により各位置を特定した場合の一例を概念的に示す図
図18】一実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫装置の移動態様及び動作態様の一例を示す側面図(その1)
図19】一実施形態による農作物収穫システムについて、図18における農作物収穫装置を示す平面図
図20】一実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫装置の移動態様及び動作態様の一例を示す側面図(その2)
図21】一実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫装置の移動態様及び動作態様の一例を示す側面図(その3)
図22】一実施形態について、図21における農作物収穫装置を示す平面図
図23】一実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫装置の移動態様及び動作態様の一例を示す側面図(その4)
図24】一実施形態による農作物収穫システムについて回転部材周辺の構成を示す断面図であって(a)は回転部材が実に接触していない場合を示す図、(b)は回転部材が実に接触した場合を示す図
図25】一実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫装置の移動態様及び動作態様の一例を示す側面図(その5)
図26】一実施形態による農作物収穫システムについて回転部材周辺の構成を示す断面図であって、回転部材が果柄等に接触していない状態を示す図
図27】一実施形態による農作物収穫システムにおいて収穫動作が実行された際の各時点における農作物収穫装置の移動態様及び動作態様の一例を示す側面図(その6)
図28】一実施形態による農作物収穫システムにおいて実行される収穫動作の制御内容の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。
<農作物収穫装置>
【0015】
まず、農作物収穫装置1の構成について、主に図1から図14を参照して説明する。本実施形態の農作物収穫装置1(以下、収穫装置1と称する)は、例えばミニトマトやブドウのように複数の実が房の状態で生育する果菜類や果樹類を収穫対象物としている。本実施形態の収穫装置1を用いることで、房の状態で結実している実を果柄から分離して実を個別に収穫することができる。
【0016】
収穫装置1は、例えばロボットアーム等の先端に装着されて使用される。収穫装置1は、図1図5に示すように、ベース部材10、保持機構20、分離機構30、及び駆動機構40を備えている。以下の説明では、収穫装置1においてベース部材10側を基端側とし、ベース部材10とは反対側と先端側とする。また、本実施形態では、基端側と先端側を結ぶ方向に対して直角方向を、収穫装置1の幅方向と称することがある。
【0017】
ベース部材10は、保持機構20、分離機構30、駆動機構40の取付けの土台となる構成である。本実施形態の場合、駆動機構40は、ベース部材10に取り付けられている。保持機構20及び分離機構30は、駆動機構40を介してベース部材10に取り付けられている。そして、ベース部材10は、図15に示すロボットアーム52等の先端に着脱可能に構成されている。
【0018】
保持機構20及び分離機構30は、いずれも図1及び図2に示す開状態と図3及び図4に示す閉状態とに切り替え可能に構成されている。開状態において保持機構20及び分離機構30は、収穫の対象とする農作物の1房の全体の外径よりも大きい状態に開いて内側にその房全体が挿入可能となっている。また、閉状態において保持機構20及び分離機構30は、収穫の対象とする農作物の房全体の外径よりも小さくかつ果柄の外径よりも小さい状態に閉じた状態となっている。
【0019】
そして、保持機構20は、閉状態では保持機構20の内側で果柄を挟んで保持することができる。また、分離機構30は、閉状態では分離機構30の内側に果柄を保持しない態様で配置することができる。そして、分離機構30は、分離機構30の内側に果柄を配置した閉状態のまま、保持機構20から離れる方向へ移動可能に構成されている。本実施形態の場合、保持機構20は、閉状態において保持機構20の先端部分で果柄を挟んで保持する。そして、分離機構30は、閉状態のまま、図5に示すように、駆動機構40を支点にして少なくとも分離機構30の先端側が保持機構20に対して接近及び離れる方向へ移動可能に構成されている。
【0020】
保持機構20は、複数のリンク部材を組み合わせ構成することにより、開閉可能に構成されている。保持機構20は、2つの第1保持リンク部材21と、2つの第2保持リンク部材22と、2つの第3保持リンク部材23と、1つの保持駆動部材24と、を有して構成されている。2つの第1保持リンク部材21と、2つの第2保持リンク部材22と、2つの第3保持リンク部材23と、1つの保持駆動部材24とは、保持機構20の幅方向の中心Oに対してそれぞれ対称に配置されている。
【0021】
第1保持リンク部材21は、各保持リンク部材21、22、23のうち最も先端側に配置されている。2つの第1保持リンク部材21は、先端側が相互に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。2つの第1保持リンク部材21は、開状態において図1に示すように先端側から基端側へ向かって広がる形状となり、閉状態において図4に示すように相互に平行となる。各第1保持リンク部材21の基端側は、それぞれ第2保持リンク部材22の先端側に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。本明細書では、2つの第1保持リンク部材21同士の回転の支点つまり回転軸を第1保持関節201と称することがある。また、第1保持リンク部材21と第2保持リンク部材22との回転の支点つまり回転軸を第2保持関節202と称することがある。
【0022】
第2保持リンク部材22は、第1保持リンク部材21よりも基端側に配置されている。第2保持リンク部材22は、開状態において図1に示すように相互に平行となり、閉状態において図4に示すよう先端側から基端側へ向かって広がる形状となる。2つの第2保持リンク部材22の基端側は、収穫装置1の幅方向の中央側へ向かって直角に折れ曲がっており、図示しないベアリング等を介してベース部材10に直接的又は関節的に回動可能に連結されている。本実施形態の場合、第2保持リンク部材22の基端側は、取付け部材11を介してベース部材10に取り付けられている。本明細書では、第2保持リンク部材22とベース部材10との回転の支点つまり回転軸を第3保持関節203と称することがある。この場合、第2保持関節202は、ベース部材10に対して相対的に移動不可に構成されている。
【0023】
第3保持リンク部材23の両端側のうち、一方は第2保持リンク部材22の長手方向の途中部分、この場合、第2保持リンク部材22の長手方向の中心よりも基端側部に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。また、第3保持リンク部材23の両端側のうちもう一方は、保持駆動部材24の端部に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。明細書では、第2保持リンク部材22と第3保持リンク部材23との回動の支点つまり回転軸を第4保持関節204と称することがある。また、第3保持リンク部材23と保持駆動部材24との回動の支点つまり回転軸を第5保持関節205と称することがある。第3保持リンク部材23は、第4保持関節204側から第5保持関節205側へ向かうほど保持駆動部材24に近づくように傾斜している。
【0024】
保持駆動部材24は、例えば収穫装置1の幅方向へ延びる棒状に形成されており、長手方向の両端部にそれぞれ第2保持リンク部材22を回動可能に連結している。保持駆動部材24は、駆動機構40に接続されており、駆動機構40によって収穫装置1の先端側と後端側とを結ぶ方向この場合、中心線Oに沿った方向へ押し引きされる。
【0025】
保持駆動部材24が基端側へ引かれると、保持機構20が閉じ、図1及び図2に示す開状態から図3及び図4に示す閉状態になる。保持機構20は、閉状態において、対向する第1保持リンク部材21の間に果柄を挟んで保持することができる。また、保持駆動部材24が先端側へ押し出されると、保持機構20が開き、図3及び図4に示す閉状態から、図1及び図2に示す開状態になる。これにより、保持機構20の内側、具体的には、2つの第1保持リンク部材21と、2つの第2保持リンク部材22と、2つの第3保持リンク部材23と、保持駆動部材24と、に囲まれた領域内、この場合、7角形若しくは8角形の領域内に房90全体を通すことが可能となる。
【0026】
保持機構20は、接触部材25を有している。接触部材25は、2つの第1保持リンク部材21のそれぞれに取り付けられており、果柄を保持する際に果柄に直接接触する部分である。各第1保持リンク部材21に取り付けられた接触部材25は、保持機構20の閉状態において相互に対向する位置に配置される。この場合、保持機構20の閉状態において、対向する接触部材25の間には所定の隙間が形成されている。この場合、所定の隙間とは、果柄の外形よりも若干小さい程度であり、保持機構20が閉じて接触部材25が果柄を挟んで保持した場合に果柄を切断しない程度の隙間である。
【0027】
接触部材25は、例えば金属や樹脂等の剛性を有する部材、若しくはゴム等の弾性を有する部材で構成することができる。本実施形態の場合、接触部材25は、1又は複数の凹部251を有している。凹部251は、接触部材25の一部を切り欠いて又は窪ませて形成されている。接触部材25で果柄を挟んで保持する際に凹部251が果柄に食い込むことで、保持機構20の保持力を向上させることができる。
【0028】
分離機構30は、保持機構20に対して平面視で重なる位置に配置されている。分離機構30は、収穫装置1の使用時に保持機構20に対して果柄の先端側となる位置に設けられている。分離機構30は、保持機構20と同様に、図1及び図2に示す開状態と、に切り替え可能に構成されている。開状態において分離機構30は、収穫の対象とする房全体の外径よりも大きい状態に開いて内側にその房全体が挿入可能となっている。また、閉状態において分離機構30は、収穫の対象とする房全体の外径よりも小さくかつ果柄の外径よりも大きい状態に閉じて内側に所定の隙間が形成された状態となる。
【0029】
分離機構30が開閉する原理は、分離機構30と同様である。分離機構30は、複数のリンク部材を組み合わせ構成することにより、開閉可能に構成されている。分離機構30は、2つの第1分離リンク部材31と、2つの第2分離リンク部材32と、2つの第3分離リンク部材33と、1つの分離駆動部材34と、を有して構成されている。2つの第1分離リンク部材31と、2つの第2分離リンク部材32と、2つの第3分離リンク部材33と、1つの分離駆動部材34とは、分離機構30の幅方向の中心Oに対してそれぞれ対称に配置されている。本実施形態において、第2分離リンク部材32、第3分離リンク部材33、及び分離駆動部材34は、それ保持機構20の第2保持リンク部材22、第3保持リンク部材23、及び保持駆動部材24と平面視において重なる位置に配置されている。
【0030】
第1分離リンク部材31は、各分離リンク部材31、32、33のうち最も先端側に配置されている。2つの第1分離リンク部材31は、先端側が相互に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。2つの第1分離リンク部材31は、開状態において図1に示すように先端側から基端側へ向かって広がる形状となり、閉状態において図4に示すように相互に平行となる。各第1分離リンク部材31の基端側は、それぞれ第2分離リンク部材32の先端側に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。本明細書では、2つの第1分離リンク部材31同士の回転の支点つまり回転軸を第1分離関節301と称することがある。また、第1分離リンク部材31と第2分離リンク部材32との回転の支点つまり回転軸を第2分離関節302と称することがある。
【0031】
第2分離リンク部材32は、第1分離リンク部材31よりも基端側に配置されている。第2分離リンク部材32は、開状態において図1に示すように相互に平行となり、閉状態において図4に示すよう先端側から基端側へ向かって広がる形状となる。2つの第2保持リンク部材22の基端側は、収穫装置1の幅方向の中央側へ向かって直角に折れ曲がっており、図示しないベアリング等を介してベース部材10に直接的又は関節的に回動可能に連結されている。本実施形態の場合、第2分離リンク部材32の基端側は、駆動機構40に取付けられており、基端側を支点に保持機構20から離れる方向及び接近する方向へ回動可能となっている。本明細書では、第2分離リンク部材32と駆動機構40この場合後述する受け部材47との回転の支点つまり回転軸を第3分離関節303と称することがある。この場合、第2分離関節302は、受け部材47に対して相対的に移動不可に構成されている。
【0032】
第3分離リンク部材33の両端側のうち、一方は第2分離リンク部材32の長手方向の途中部分、この場合、第2分離リンク部材32の長手方向の中心よりも基端側部に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。また、第3分離リンク部材33の両端側のうちもう一方は、分離駆動部材34の端部に図示しないベアリング等を介して回動可能に連結されている。明細書では、第2分離リンク部材32と第3分離リンク部材33との回動の支点つまり回転軸を第4分離関節304と称することがある。また、図示はしないが、第3分離リンク部材33と分離駆動部材34との回動の支点つまり回転軸を第5分離関節と称することがある。第3分離リンク部材33は、第4分離関節304側から第5分離関節側へ向かうほど分離駆動部材34に近づくように傾斜している。
【0033】
分離駆動部材34は、例えば収穫装置1の幅方向へ延びる棒状に形成されており、長手方向の両端部にそれぞれ第2分離リンク部材32を回動可能に連結している。分離駆動部材34は、駆動機構40に接続されており、駆動機構40によって収穫装置1の先端側と後端側とを結ぶ方向この場合、中心線Oに沿った方向へ押し引きされる。本実施形態の場合、分離駆動部材34は、保持機構20の保持駆動部材24と同一方向へ移動可能に構成されている。
【0034】
分離駆動部材34が基端側へ引かれると、分離機構30が閉じ、図1及び図2に示す開状態から図3及び図4に示す閉状態になる。分離機構30は、閉状態において、対向する第1分離リンク部材31の間に果柄を保持しない状態で配置することができる。また、分離駆動部材34が先端側へ押し出されると、分離機構30が開き、図3及び図4に示す閉状態から図1及び図2に示す開状態になる。これにより、分離機構30の内側、具体的には、2つの第1分離リンク部材31と、2つの第2分離リンク部材32と、2つの第3分離リンク部材33と、分離駆動部材34と、に囲まれた領域内、この場合7角形若しくは8角形の領域内に房90全体を通すことが可能となる。
【0035】
分離機構30は、図6及び図7に示すように、回動軸35、第1支持部材36、第2支持部材37、及び回転部材38を有している。回動軸35、第1支持部材36、及び第2支持部材37は、第1分離リンク部材31に対して回転部材38を回動させるためのヒンジとして機能する。回動軸35は、例えば第1分離リンク部材31の長手方向に沿って延びた長尺の円柱状に形成された軸部材であり、第1分離リンク部材31に取り付けられている。この場合、第1分離リンク部材31は、軸受け部311を有している。軸受け部311は、第1分離リンク部材31の長手方向の両端部に設けられており、例えば回動軸35の外形と同程度の内径の穴が形成されている。この軸受け部311に回動軸35が挿入されることで回動軸35を支持する。
【0036】
第1支持部材36は、回動軸35を介して第1分離リンク部材31に回動可能に取り付けられている。第1支持部材36は、全体として第1分離リンク部材31の長手方向に沿った長尺状に形成されており、軸挿入部361を有している。軸挿入部361は、第1支持部材36の長手方向の両端部に設けられており、例えば回動軸35を通すことが可能な回動軸35の外形よりもやや大きい内径の穴を有している。第1支持部材36は、軸挿入部361に回動軸35が通されることで、回動軸35に対して回動可能に取り付けられている。
【0037】
第2支持部材37は、全体として第1分離リンク部材31の長手方向に沿った長尺状に形成されている。第2支持部材37は、第1支持部材36に着脱可能に取り付けられているとともに、回転部材38を回転可能に支持している。第2支持部材37は、回転部材支持部371を有している。回転部材支持部371は、第2支持部材37の長手方向の両端部に設けられており、例えば回動軸35の両端部を通すことが可能な穴を有している。回転部材38は、回転部材支持部371に回転部材38の両端部が通されることで、回転部材38を回転可能に支持する。この回転部材38は、駆動源を有しておらず、外力を受けることで回転する。
【0038】
回転部材38は、分離機構30の閉状態において相互に対向する位置でかつ果柄に接触する位置に設けられている。この場合、回転部材38は、分離機構30の閉状態において対向する回転部材38間で所定の隙間S1を形成する。所定の隙間S1は、分離機構30が閉じて回転部材38が果柄に接触した場合に、回転部材38の回転が妨げられない程度の隙間に設定されている。
【0039】
分離機構30は、所定の隙間S1を調整可能に構成されている。本実施形態の場合、第1支持部材36及び第2支持部材37には、図6に示すように、例えば相互に重なる位置に丸穴362と長穴372とが設けられている。丸穴362は円形の穴であり、長穴372は収穫装置1の幅方向に長くかつ丸穴362の径と同じ幅を有する長穴である。第1支持部材36と第2支持部材37とは、丸穴362と長穴372とに図示しないボルトを通し図示しないナット挟み込むことで相互に固定されている。そして、第1支持部材36と第2支持部材37とは、長穴372と丸穴362との位置を調整することで、例えば収穫対象となる植物の種類に応じて所定の隙間S1の寸法を調整することができる。この場合、長穴372と丸穴362とは、対向する回転部材38の間の寸法を調整するための調整部として機能する。なお、長穴372及び丸穴362は、組み合わせて適用されれば良く、第1支持部材36と第2支持部材37とのいずれに設けても良い。
【0040】
回転部材38は、第1分離リンク部材31の長手方向に沿って長尺状に形成されており、全体として円柱又は円筒形状に形成されている。回転部材38は、両端部に突出部381を有しており、この突出部381が第2支持部材37の回転部材支持部371に嵌め込まれることで、外力を受けた場合に第2支持部材37に回転可能に取り付けられている。回転部材38は、金属製や樹脂製であって剛性を有するものであっても良いし、表面が柔軟性を有するものであっても良い。図6の回転部材38aは、回転部材38の一例であり、例えば長細い円柱又は円筒形状に形成されたローラーで構成されている。図6の回転部材38aは、突出部381以外の部分において、長手方向の全体に亘って外径が等しい単純な円柱又は円筒形状に形成されている。
【0041】
第1支持部材36、第2支持部材37、及び回転部材38は、図7(a)及び(b)の間で回動軸35を中心軸に回動することができる。この場合、第1支持部材36、第2支持部材37、及び回転部材38の回動は、モータ等の動力を必要とせず、自重によって行われる。回動の範囲は、図7(b)に示す状態を基準に下方へ40°程度に設定されている。この場合、図7(a)よりも下方への回動、及び図7(b)よりも上方への回動は、例えば第1支持部材36又は第2支持部材37に接触する図示しないストッパーによって規制されている。
【0042】
この構成において、分離機構30の面方向が例えば水平方向となっている場合でかつ回転部材38に外力が作用していない場合、第1支持部材36、第2支持部材37、及び回転部材38は、図7(a)に示すように、自重によって回動軸35を支点に下方へ回動した状態となる。これにより、対向する2つの回転部材38が大きく開くつまり相互の隙間が大きくなり、最終的には距離S2となるまで開く。このときの隙間S2は、上述した所定寸法S1よりも大きい。
【0043】
これに対し、分離機構30の面方向が水平方向となっている場合に、回転部材38が果柄や実に接触して、回転部材38に対して下方から持ち上げる方向への外力が作用すると、第1支持部材36、第2支持部材37、及び回転部材38は、図7(b)に示すように、回動軸35を支点に上側に回動した状態になる。これにより、対向する2つの回転部材38が閉じるつまり相互間の隙間が小さくなる。そして、本実施形態の場合、対向する回転部材38が最接近する位置つまり所定寸法S1となるまで閉じ、以降は上方への回動が規制される。
【0044】
回転部材38は、例えば図8に示す回転部材38b、又は図9に示す回転部材38cを適用することができる。図8に示す回転部材38b及び図9に示す回転部材38cは、いずれも例えば全体として長細い円柱又は円筒形状に形成されたローラーで構成されている。この場合、図8の回転部材38bは、突出部381以外の部分において、長手方向の全体に亘って大きい円柱又は円筒形状と外径が小さい円柱又は円筒形状を交互に配置した形状に形成されている。また、図9の回転部材38cは、突出部381以外の部分において、長手方向の全体に亘って外径が連続的に大小に変化する形状に形成されている。
【0045】
駆動機構40は、保持機構20の開閉と、分離機構30の開閉と、及び分離機構30の保持機構20から離れる及び接近する方向への移動この場合回動と、を行う機能を有する。本実施形態の駆動機構40は、保持機構20の開閉と、分離機構30の開閉と、分離機構30の回動と、を1つの駆動源つまり1つのモータ401で行うことができる。
【0046】
駆動機構40は、モータ401、ガイド部材402、駆動軸41、カム部材42、第1従節部材43、第2従節部材44、駆動クラッチ部材45、従動クラッチ部材46、受け部材47、規制部材48、及び解除部材49を有している。モータ401は、正方向及び逆方向へ回転可能な例えばステッピングモータやサーボモータ等を利用することができ、回転速度や回転位置を任意に制御することができる。なお、本明細書において、保持機構20及び分離機構30が閉じる方向、及び分離機構30が保持機構20から離れる方向へ移動する際のモータ401の回転方向を正回転と称することがある。また、分離機構30が保持機構20から近づく方向、及び保持機構20及び分離機構30が閉じる方向へ移動する際のモータ401の回転方向を逆回転と称することがある。
【0047】
第1従節部材43は、保持駆動部材24に固定されており、モータ401の回転を受けて保持駆動部材24を押し引きする機能を有する。第1従節部材43は、円筒又は円柱状に形成された接続部431を有しており、接続部431を第1カム溝421に挿入することで、カム部材42に相対的に移動可能に接続されている。この場合、第1カム溝421は、直線形状に形成されてカム部材42の回転を接続部431に伝達することが可能な伝達領域421aと、円弧形状に形成されてカム部材42の回転を接続部431に伝達しないようにした非伝達領域421bと、を有している。
【0048】
この構成において、図11(a)に示す保持駆動部材24が押し出された状態からカム部材42が図11の時計回り方向へ回転すると、接続部431が直線形状の領域421aに位置している期間は、第1従節部材43がカム部材42側へ引き込まれる方向へ直線的に移動する。その後、接続部431が円弧形状の領域421bに達した状態でカム部材42が更に時計回り方向へ回転すると、接続部431に対してカム部材42が空転し、これによりカム部材42の回転が接続部431に伝達されなくなる。
【0049】
図12に示すように、第2従節部材44は、分離駆動部材34に固定されており、モータ401の回転を受けて分離駆動部材34を押し引きする機能を有する。本実施形態の場合、第2従節部材44は、第2カム溝441を有している。第2カム溝441には第1従節部材43の接続部431が通されて第1従節部材43に連結されている。第2カム溝441は、第2従節部材44を厚み方向に円弧状にくり抜いて形成されている。
【0050】
この構成において、図12(a)に示す分離駆動部材34が押し出された状態で、図11(a)から図11(b)に示すように第1従節部材43がカム部材42側へ直線的に移動すると、第1従節部材43の移動に伴い接続部431もカム部材42側へ直線的に移動する。このとき、図12(a)及び図12(b)に示すように、接続部431は、第2カム溝441の端に位置している。このため、接続部431の移動によって第2従節部材44もカム部材42側へ引き込まれる方向へ直線的に移動する。その後、分離機構30が駆動機構40を支点に下方へ回動すると、図13に示すように、分離駆動部材34の回動とともに第2従節部材44も回動する。
【0051】
駆動クラッチ部材45と従動クラッチ部材46とは、クラッチ機構を構成している。駆動クラッチ部材45と従動クラッチ部材46は、駆動軸41の回転角度に応じて駆動クラッチ部材45側の回転を従動クラッチ部材46に伝達する状態と伝達しない状態とに切り替える機能を有する。この場合、駆動クラッチ部材45は、例えば円板状に形成されており、滑り溝451と深溝452とを有している。
【0052】
滑り溝451は、駆動クラッチ部材45の回転中心この場合駆動軸41を中心とした同心円に沿って配置された円弧状の溝に形成されている。この場合、滑り溝451は、駆動クラッチ部材45の回転中心に対して点対称形に2つ配置されている。また、深溝452は、滑り溝451の円弧状の一方の端部に設けられている。この場合、滑り溝451及び深溝452は、例えば駆動クラッチ部材45を掘り下げた形状つまり貫通しない形状に形成されている。そして、深溝452の深さ寸法は、滑り溝451の深さ寸法よりも大きい。つまり、深溝452は、滑り溝451よりも深く形成されている。
【0053】
従動クラッチ部材46は、全体として円形又は円形の一部を切り取った形状のブロック状に形成されている。従動クラッチ部材46は、図10に示すベアリング部461と、図13に示すピン部材462と、を有している。ベアリング部461は、従動クラッチ部材46の中心部の周囲に設けられており、内側に駆動軸41を通している。これにより、従動クラッチ部材46は、駆動軸41を回転中心にして回転することができる。
【0054】
ピン部材462は、従動クラッチ部材46において駆動クラッチ部材45と対向する面から突出し、かつ滑り溝451に対応するつまり嵌まり込むことが可能な位置に設けられている。ピン部材462は、例えば棒状で先端が細く又は半球状に形成されたピンで構成されており、例えばばね等の弾性部材によって弾性的に押し込み及び押し出し可能に構成されている。
【0055】
この構成において、駆動クラッチ部材45が回転すると、滑り溝451がピン部材462を摺動している間は駆動クラッチ部材45の回転が従動クラッチ部材46に伝達されない。そして、深溝452がピン部材462の位置まで到達すると、ピン部材462が深溝452に嵌まり込んで駆動クラッチ部材45の回転が従動クラッチ部材46に伝達される。モータ401の回転が、駆動クラッチ部材45を介して従動クラッチ部材46に伝達され、更に解除部材49に伝達される。
【0056】
受け部材47は、従動クラッチ部材46に接続されて従動クラッチ部材46と一体的に回転可能に構成されている。また、受け部材47は、分離機構30に固定されている。本実施形態の場合、受け部材47は、第3分離リンク部材33の基端部分にボルト等で固定されている。すなわち、受け部材47は、従動クラッチ部材46と分離機構30この場合第3分離リンク部材33とを接続し、従動クラッチ部材46の回転を分離機構30に伝達する機能を有する。
【0057】
規制部材48は、駆動クラッチ部材45と従動クラッチ部材46とが噛み合ってない状態、つまり従動クラッチ部材46のピン部材462が駆動クラッチ部材45の深溝452に嵌まり込んでいない状態において、受け部材47に接触し受け部材47の回動を規制つまり分離機構30の回動を規制する。規制部材48は、駆動軸41には接続されていない。
【0058】
規制部材48は、被係止部481及び解除受け部482を有する。被係止部481は、規制部材48の一部を切り欠いた形状に形成されている。これに対し、受け部材47は、係止部471を有する。係止部471は、所定の回転角度で被係止部481に係止可能に構成されている。そして、規制部材48は、図示しないばね等の弾性部材によって、被係止部481を係止部471側へ押し付けるよう方向へ弾性力が付与されている。これにより、係止部471が被係止部481に嵌まり込むことで、受け部材47の回動すなわち分離機構30の回動が規制される。
【0059】
解除受け部482は、解除部材49が回転した際に解除部材49に接触し、解除部材49の回転力を受けて規制部材48は、係止部471から被係止部481を離す方向つまり解除する方向へ移動させる機能を有する。これにより、規制部材48による受け部材47に対する回動の規制が解除されて、分離機構30の下方への回動が可能となる。
【0060】
次に、収穫装置1における保持機構20及び分離機構30の一連の動作について説明する。図1及び図2に示すように、保持機構20及び分離機構30が開状態で、かつ分離機構30が保持機構20に接近している状態つまり分離機構30が上下方向において閉じている状態を、収穫装置1の初期状態とする。この状態でモータ401を駆動して駆動軸41を図11から図14における時計回り方向へ回転させると、図11の(a)、(b)に示すように、カム部材42が第1従節部材43をカム部材42側へ引き寄せるとともに、図12の(a)、(b)に示すように、第1従節部材43の移動に伴い第2従節部材44もカム部材42側へ引き込まれる。これにより、保持機構20及び分離機構30は、図3及び図4に示すように閉状態となる。
【0061】
保持機構20及び分離機構30が開状態から閉状態に切り替わる間、若しくは閉状態から開状態に切り替わる間は、従動クラッチ部材46のピン部材462が駆動クラッチ部材45の滑り溝451を滑っており、駆動クラッチ部材45と従動クラッチ部材46とは噛み合っていない。このため、モータ401の回転は従動クラッチ部材46及び受け部材47を介して分離機構30に伝達されない。この状態では、従動クラッチ部材46は、駆動クラッチ部材45に対して相対的に回転可能となっているが、規制部材48によって受け部材47の回転が規制されているため、分離機構30は、保持機構20から離れる方向へ回動しない。
【0062】
更にモータ401を回転させると、図13の(a)、(b)に示すように、従動クラッチ部材46のピン部材462が駆動クラッチ部材45の深溝452に嵌まり込み、モータ401の回転が従動クラッチ部材46を介して受け部材47に伝達可能となる。また、これとほぼ同時期に、図14の(a)、(b)に示すように、駆動軸41に接続された解除部材49が規制部材48に接触し、規制部材48による受け部材47の回転の規制を解除する。これにより、モータ401の回転によって図13(c)及び図14(c)に示すように、受け部材47に接続された分離機構30は、受け部材47を支点に分離機構30の先端部側が保持機構20から離れる方向へ回動する。
【0063】
また、分離機構30が回動している期間、第1従節部材43の接続部431は、図11(c)に示すように非伝達領域421bに位置しているため、モータ401の回転はカム部材42を介して第1従節部材43には伝達されない。このため、分離機構30が回動している期間は、保持機構20は開閉しない。
【0064】
また、分離機構30が回動している期間、第1従節部材43の接続部431は、図12(c)に示すように、第2従節部材44の第2カム溝441を移動している。このため、第2カム溝441は、第2従節部材44が分離機構30の回動を阻害することを抑制する機能を有する。
【0065】
その後、モータ401を逆回転つまり図11から図14において半時計方向へ回転させると、上述したものとは逆の順序で保持機構20及び分離機構30が動作し、初期状態に戻る。すなわち、収穫装置1は、保持機構20及び分離機構30が開状態でかつ分離機構30が保持機構20から離れる方向へ回動している状態で、モータ401を逆回転させると、まず、分離機構30が保持機構20に近づく方向へ回動し、その後、保持機構20及び分離機構30が開く。
<農作物収穫システム>
【0066】
次に、収穫装置1を用いた農作物収穫システムの一例について、図15図28も参照して説明する。図15に示す農作物収穫システム50は、収穫対象物の農作物にミニトマトを設定した例である。本実施形態の農作物収穫システム50は、房90に結実した個々の実91を収穫対象物とし、この実91を主茎92及び果柄93から分離して個別に収穫することができる。
【0067】
ミニトマトのような収穫対象物91は、図16等にも示すように、主茎92から果柄93及び小果柄94を介して垂れ下がった状態で結実している。この場合、小果柄94は、実91と果柄93とを繋いでいる柄部分である。また、果柄93は、主茎92からの伸びた柄部分である。市場での販売を目的とした商品用のミニトマトは、ビニールハウスで育てられることが多い。この場合、主茎92の先端部は、ビニールハウスの天井付近に配置されたレールに吊り下げられている。これにより、主茎92は、地面から天井付近へ向かって斜め上方に傾斜するように伸びている。
【0068】
なお、本実施形態の農作物収穫システム50の収穫対象物は、その実が主茎又は結実母枝から垂れ下がった状態で房として結実するものであれば、ミニトマトに限定されない。また、収穫対象物は、必ずしも主茎又は結実母枝から垂直下方へ垂れ下がっている必要はない。更には、収穫対象物は、主茎又は結実母枝から上方へ向かって実っているものでも良い。なお、本実施形態では、主茎及び枝とは、いずれも収穫作業によって生じる損傷等から保護する対象であり、技術的には同義のものとして扱う。
【0069】
本実施形態の農作物収穫システム50は、収穫装置1に加えて、視覚装置51、ロボットアーム52、運搬装置53、及び回収箱54を更に備えている。視覚装置51は、収穫対象物91の位置情報を含む視覚情報を取得可能な装置である。視覚装置51は、例えばステレオカメラ、ToF(Time of Flight)カメラ、ストラクチャードライトスキャナ等の3次元の空間及び物体を計測することができる装置である。
【0070】
本実施形態の場合、視覚装置51が取得する視覚情報には、収穫対象物91の位置情報及び外形形状情報の他、色情報も含まれる。また、視覚装置51が取得する視覚情報には、主茎92の位置情報、外形形状情報、及び色情報も含まれるが、果柄93の位置情報、外形形状情報、及び色情報は含んでいても含んでいなくても良い。すなわち、本実施形態の場合、視覚装置51は、収穫対象物91及び主茎92の位置情報、外形形状情報、及び色情報については取得するが、果柄93の位置情報、外形形状情報、及び色情報については必ずしも取得する必要はない。
【0071】
本実施形態の場合、視覚装置51は、図示しない取り付け用のステーを介して収穫装置1のベース部材10に取り付けることができる。すなわち、収穫装置1は、視覚装置51を含んで構成することができる。この場合、収穫装置1の移動に伴って視覚装置51も移動する。なお、視覚装置51は、必ずしも収穫装置1に取り付けられている必要はない。視覚装置51は、例えばロボットアーム52に取り付けても良いし、運搬装置53に取り付けても良い。また、視覚装置51は、例えば図示しないビニールハウスの構造物に取り付けて、常に定位置を維持する構成としても良い。
【0072】
ロボットアーム52は、例えば複数の駆動軸、この場合6つの駆動軸を有する6軸垂直多関節ロボットである。収穫装置1は、ロボットアーム52の手先に取り付けられている。ロボットアーム52は、収穫装置1を任意の位置に移動させるとともに任意の姿勢に回転させることができる。
【0073】
運搬装置53は、収穫装置1を取り付けたロボットアーム52と、回収箱54とを、収穫対象物91まで運搬するための構成である。運搬装置53は、例えばタイヤ531を駆動するための図示しないモータを有しており、外部からの制御等によって任意の位置に移動することができる。回収箱54は、例えば収穫装置1で果柄93から分離した実91を収容し回収するための箱である。回収箱54は、例えば上側が開口した容器状に形成されており、運搬装置53に設置されている。なお、例えばビニールハウス等の設備が、ベルトコンベヤー等のような収穫対象物91を搬送する装置を備えている場合は、回収箱54を削減することができる。また、回収箱54に代えて、収穫装置1の下方に袋又は容器を設けても良い。
【0074】
また、農作物収穫システム50は、収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58を備えている。収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58は、それぞれ収穫装置1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53に付随する例えば専用の装置であり、例えば運搬装置53に設けられている。
【0075】
収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58は、それぞれ例えば図示しないCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータと、収穫装置1のモータ401、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53に駆動力となる電力を供給するための電力回路等を主体に構成されている。収穫装置1のモータ401、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53は、それぞれ収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58からの指令に基づいて駆動制御される。
【0076】
制御装置60は、収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58を介して、それぞれ収穫装置1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53を制御するためのものである。制御装置60は、収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58のそれぞれに有線又は無線によって通信可能に接続されている。この場合、制御装置60は、例えばLANやWAN、若しくはインターネットや携帯電話回線等の電気通信回線Nを介して収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58に接続されていても良い。
【0077】
制御装置60は、図15に示すように、例えばCPU601や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域602を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御装置60は、収穫装置1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53に対して駆動指令を出すとともに、収穫装置1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53からフィードバックを受ける。制御装置60は、収穫装置1、視覚装置51、ロボットアーム52、及び運搬装置53のいずれにも付随しない汎用の制御装置である。すなわち、制御装置60は、収穫装置制御部55、視覚装置制御部56、ロボットアーム制御部57、及び運搬装置制御部58に対して指令を出す上位の装置である。制御装置60は、例えばパーソナルコンピュータやサーバ等で構成することができる。
【0078】
記憶領域602は、農作物収穫システム用のプログラムを記憶している。制御装置60は、CPU601において農作物収穫システム用のプログラムを実行することにより、収穫対象物検出処理部61、位置情報特定処理部62、移動経路生成処理部63、移動処理部64、保持処理部65、配置処理部66、分離処理部67、及び復帰処理部68等を、ソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、これら収穫対象物検出処理部61、位置情報特定処理部62、移動経路生成処理部63、移動処理部64、保持処理部65、配置処理部66、分離処理部67、及び復帰処理部68は、例えば制御装置60と一体の集積回路としてハードウェア的に実現してもよい。
【0079】
収穫対象物検出処理部61は、収穫対象物検出処理を実行可能である。収穫対象物検出処理は、視覚装置51で取得した視覚情報から、視覚装置51の視野内に収穫対象物91が存在しているか否かを検出する処理を含む。この場合、視覚装置51で取得する視覚情報は、図16に示すように、ポイントクラウドと称される点群データで構成されている。この視覚情報は、例えばX-Y-Z直交座標系上に配置された点群で構成されており、各点についてのRGB(R:Red、G:Green、B:Blue)の色情報と、視覚装置51を基準とした深度情報(D:Depth)つまりX-Y-Z直交座標系における位置情報と、を含んでいる。図16の例の場合、収穫対象物であるミニトマト91については赤色が検出され、主茎92については緑色が検出されている。なお、視覚装置51は、視覚情報として例えば赤外線カメラによりモノクロ値を取得しても良い。
【0080】
収穫対象物検出処理部61は、点群の外形を認識することで、収穫対象物91や主茎92の外形形状を認識することができる。この場合、果柄93は、収穫対象物91や主茎92に比べて細い。そのため、視覚装置51によって果柄93の視覚情報を取得しようとすると、視覚装置51の性能や分解能を上げる必要があり、ハードウェアコストが増大する。また、視覚装置51の処理負荷及び、取得した視覚情報を用いた制御装置60による処理負荷も増大する。そこで、本実施形態においては、視覚装置51は、果柄93の視覚情報を積極的には取得しないように構成している。これにより、視覚装置51や制御装置60の処理負荷を低減することができる。
【0081】
収穫対象物検出処理部61は、まず、視覚装置51で取得した視覚情報から、収穫対象物91の色値が高い点群データを抽出する。本実施形態の場合、収穫対象物検出処理部61は、ミニトマト91の色である赤色値が高い点群データを抽出する。そして、収穫対象物検出処理部61は、例えば取得した視覚情報の中に赤色値の高い点群が所定範囲以上存在している場合には、取得した視覚情報に収穫対象物91が含まれている、つまり視覚装置51の視野内に収穫対象物であるミニトマト91が存在していると判断する。
【0082】
一方、収穫対象物検出処理部61は、取得した視覚情報の中に存在する赤色値の高い点群が所定範囲未満である場合には、取得した視覚情報に収穫対象物91が含まれていない、つまり視覚装置51の視野内に収穫対象物であるミニトマト91が存在していないと判断する。このように、収穫対象物検出処理部61は、取得した視覚情報のうち赤色値の高い点群を収穫対象物であるミニトマト91であると認識する。なお、収穫対象物検出処理部61は、視覚情報に含まれるX-Y-Z直交座標系上に配置された点群の情報すなわち3次元点群情報や、赤外線カメラによるモノクロ値から、収穫対象物91や主茎92を認識する構成としても良い。
【0083】
位置情報特定処理部62は、位置特定処理を実行可能である。位置特定処理は、図17に示すように、視覚装置51で取得した視覚情報から収穫対象物91の先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とを含む収穫対象物91の位置を特定する処理を含む。本実施形態において、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)は、主茎92を基準にして収穫対象物91全体の先端側の位置を意味し、収穫対象物91全体において主茎92から最も離れた端部である。また、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)は、主茎92を基準にして収穫対象物91全体の基端側の位置を意味し、収穫対象物91全体において主茎92に最も近い端部である。
【0084】
この場合、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方とは、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)に対して収穫対象物91全体の外方つまり先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)に対して主茎92から離れる方向を意味する。また、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方とは、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)に対して収穫対象物91全体の外方つまり基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)に対して主茎92に近づく方向を意味する。
【0085】
ミニトマトのような収穫対象物91は主茎92から垂れ下がっている。そのため、この場合、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)は収穫対象物91の下端位置となり、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)は、収穫対象物91の上端位置となる。以下では、収穫対象物91の先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)を下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)とし、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)として説明する。この場合、先端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の外方は、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の下方となり、基端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の外方は、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の上方となる。
【0086】
位置情報特定処理部62は、収穫対象物検出処理部61で検出した収穫対象物91の点群データつまり赤色値の高い点群データの中から、Z値が最小となる点を抽出して収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)を特定するとともに、Z値が最大となる点を抽出して収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を特定する。
【0087】
ここで、実際にZ値が最小となっている最下点及びZ値が最大となる最上点のデータのみを用いて下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を特定すると、視覚装置51で取得した視覚情報にノイズ等が混ざっていた場合に、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の座標にブレが生じ易くなる。そこで、本実施形態の場合、位置情報特定処理部62は、収穫対象物検出処理部61で検出した収穫対象物91の点群データつまり赤色値の高い点群データの中のうち、Z値が最小となる最下点、及びその最下点からZ値がプラス方向に所定範囲内例えば上方に20mmの範囲内の点群データの平均値を算出し、その平均値を下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)とする。
【0088】
同様に、位置情報特定処理部62は、収穫対象物検出処理部61で検出した収穫対象物91の点群データつまり赤色値の高い点群データのうち、Z値が最大となる最大点、及びその最大点からZ値がマイナス方向に所定範囲内例えば下方に20mmの範囲内の点群データの平均値を算出し、その平均値を上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とする。
【0089】
また、位置情報特定処理部62は、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)から上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)までの途中の位置である中間位置Ph(X、Y、Z)を特定する処理を更に実行可能である。位置情報特定処理部62は、例えば下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)とのZ方向の中間位置の座標を、中間位置Ph(X、Y、Z)として取得する。
【0090】
この場合、中間位置Ph(X、Y、Z)のZ値は、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)のZ値と上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)のZ値と平均値、すなわち、Ph(Z)=(下端位置Pb(Z)+上端位置Pt(Z))/2となる。また、中間位置Ph(X、Y、Z)のX値及びY値は、Ph(Z)における平均値となる。なお、中間位置Ph(X、Y、Z)を複数設定することもできる。この場合、中間位置Phの数をN個とすると、Ph(Z)=(下端位置Pb(Z)+上端位置Pt(Z))/(N+1)となる。
【0091】
また、位置情報特定処理部62は、上述した位置特定処理において、収穫対象物91と繋がっている果柄93の位置情報を用いることなく収穫対象物91の位置情報、この場合、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)、及び中間位置Ph(X、Y、Z)を特定することができる。
【0092】
また、図16等に示すように、収穫対象物検出処理部61は、視覚装置51で取得した視覚情報から、主茎92についての視覚情報、この場合、主茎92の位置情報を含む形状、及び色情報を取得することができる。収穫対象物検出処理部61は、収穫対象物91の場合と同様に、視覚装置51で取得した視覚情報から、主茎92の色である緑色値が高い点群データを抽出する。そして、収穫対象物検出処理部61は、例えば取得した視覚情報の中に緑色値の高い点群が所定範囲以上存在している場合には、その緑色値の高い点群を主茎92であると認識する。
【0093】
移動経路生成処理部63は、移動経路生成処理を実行可能である。移動経路生成処理は、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)から、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を通り終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)に至るまでの収穫装置1の移動経路Rを生成する処理を含む。この場合、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)は、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)から所定距離直下の位置、例えば数十mm下方の位置に設定することができる。また、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)は、収穫対象物91の上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)から所定距離直上の位置、例えば数十mm上方の位置に設定することができる。
【0094】
また、移動経路生成処理部63は、図17に示すように、中間位置Ph(X、Y、Z)を通過するように収穫装置1の移動経路Rを生成する。この場合、収穫装置1の移動経路Rは、Z方向に隣接する各位置、すなわち、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)と、下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と、中間位置Ph(X、Y、Z)と、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)と、終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)と、を順に直線で繋いだ経路となる。
【0095】
移動処理部64は、移動処理を実行可能である。移動処理は、収穫装置制御部55を介して駆動機構40のモータ401を駆動制御して図19に示すように保持機構20及び分離機構30を開いた状態にする処理を含む。また、移動処理は、ロボットアーム制御部57を介してロボットアーム52を駆動制御し、図18及び図20に示すように、移動経路Rに沿って収穫装置1を移動させ、これにより開状態となった保持機構20及び分離機構30の内側の領域に房90全体を通しながら収穫装置1を果柄93の基端側へ移動させる処理を含む。すなわち、移動処理部64は、房90全体を下方から上方へすくい上げるようにして、保持機構20及び分離機構30の内側の領域に房90全体を通す処理を含む。
【0096】
この場合、収穫装置1側の基準は、例えば図1に示す基準点Pcに設定されている。基準点Pcは、保持機構20及び分離機構30が開いた状態における内側領域の任意の位置に設定することができる。本実施形態では、基準点Pcは、例えば保持機構20及び分離機構30が開いた状態における内側領域の中心位置若しくは重心位置に仮想的に設定されている。移動処理部64は、基準点Pcが移動経路R上に沿うように、ロボットアーム制御部57を介してロボットアーム52を駆動制御する。
【0097】
保持処理部65は、保持処理を実行可能である。保持処理は、収穫装置制御部55を介してモータ401を駆動させて保持機構20を閉じることにより、保持機構20の接触部材25で果柄93を挟み込んで保持する処理を含む。ここで、本実施形態の収穫装置1は、図1及び図3に示すように、保持機構20及び分離機構30が開いた状態における内側領域の中心位置若しくは重心位置この場合基準点Pcと、保持機構20及び分離機構30が閉じた状態において果柄93を挟む位置とは、前後方向において大きく異なっている。この場合、保持機構20及び分離機構30が閉じた状態において果柄93を挟む位置とは、保持機構20においては対向する第1保持リンク部材21で挟まれる位置であり、分離機構30においては対向する第1分離リンク部材31で挟まれる位置である。
【0098】
そのため、本実施形態の場合、保持処理は、図21に示すように、ロボットアーム制御部57を介してロボットアーム52を駆動させて、収穫装置1をロボットアーム52側へ引き寄せる処理を含む。これにより、保持機構20を閉状態に切り替えた場合に、果柄93が接触部材25の内側に位置するようにする。
【0099】
保持処理の実行により、保持機構20は、図22及び図23に示すように、果柄93の基端部分つまり果柄93のうち全ての実91よりも主茎92側の部分を保持する。保持処理は、後述する分離処理の実行により分離機構30を移動させている最中に果柄93のうち分離機構30よりも基端側部分つまり主茎92側部分を保持する処理を含む。
【0100】
配置処理部66は、配置処理を実行可能である。配置処理は、収穫装置制御部55を介してモータ401を駆動させて分離機構30を閉状態に切り替えることにより図24(a)に示すように、対向する回転部材38の間に寸法S2の隙間を形成するとともに、その隙間内に果柄93の基端側部分つまり主茎92側部分が位置するように果柄93に対して収穫装置1を配置する処理を含む。なお、本実施形態の場合、保持機構20と分離機構30とは、1つのモータ401によって駆動されており、開状態と閉状態との切り替えは同期している。このため、本実施形態の場合、保持処理と配置処理は同時に実行される。
【0101】
なお、保持機構20と分離機構30とを別のモータで駆動させる場合、上述した保持処理及び配置処置は、同時またはほぼ同時に開始されても良い。また、この場合、保持処理の開始後に配置処理が開始されても良いし、逆に配置処理の開始後に保持処理が開始されても良い。しかし、分離処理が実行されている間は、保持処理が維持されて保持機構20に果柄93が保持されている。
【0102】
分離処理部67は、分離処理を実行可能である。分離処理は、保持処理及び配置処理の後に実行される。分離処理は、図23及び図25に示すように、収穫装置制御部55を介してモータ401を駆動させて、分離機構30を保持機構20から離間する方向つまり果柄93の先端側へ移動させることで、果柄93と実91とを繋ぐ小果柄94から実91を分離する、又は小果柄94とともに実91を果柄93から分離する処理を含む。分離処理によって果柄93から分離した実91は、例えば回収箱54内に落下して回収される。
【0103】
この分離処理において、分離機構30が回動を始める初期の段階つまり実91にまだ接触していない段階では、図24の(a)に示すように、回転部材38は、自重によって下方へ垂れている。この状態では、対向する回転部材38の間は大きく開いており、寸法S2の隙間が形成されている。その後、分離処理が進行して分離機構30が下方へ回動すると、図24の(b)に示すように、回転部材38は実91や果柄93等に接触し上方への力を受ける。これより、対向する回転部材38が隙間を閉じる方向へ回動し、最終的に隙間は寸法S1となる。これにより、回転部材38は、実91に対して適切に力を作用させることができる。
【0104】
復帰処理部68は、復帰処理を実行可能である。復帰処理は、分離処理の後に実行される。復帰処理は、図25に示すように、収穫装置制御部55を介してモータ401を駆動、分離機構30を保持機構20側へ戻すとともに、保持機構20及び分離機構30を閉状態から開状態に切り替えて初期状態に復帰させる処理を含む。この場合、復帰処理部68は、保持処理、配置処理、及び分離処理とは逆方向へモータ401を回転させることで、復帰処理を実行する。この場合、果柄93から実91が分離されると、回転部材38に対して抵抗する存在が無くなるため、図26に示すように、自重によって下方へ回動して開く。そのため、対向する回転部材38の間の隙間を大きく確保することができるため、分離機構30を保持機構20側へ戻す際に、回転部材38が果柄93に接触することを抑制でき、その結果、復帰処理を円滑に行うことができる。
【0105】
次に、図28のフローチャートに沿って、農作物収穫システム50において実行される、収穫対象物91を収穫するための収穫動作の一連の制御内容について説明する。なお、以下の説明において、各処理部61~67で実行される処理の主体は制御装置60とする。本実施形態では、主茎92に沿って収穫区間が設定されている。運搬装置53は、主茎92に沿って移動し、主茎92に実っている収穫対象物91を主茎92に沿って順次収穫していく。
【0106】
図27のフローチャートにおいて、ステップS13、S14における処理は、収穫対象物検出処理の一例である。ステップS15における処理は、位置特定処理の一例である。ステップS16、S17における処理は、移動経路生成処理の一例である。ステップS18、S19における処理は、移動処理の一例である。ステップS20における処理は、保持処理の一例である。ステップS21における処理は、配置処理の一例である。ステップS22における処理は、分離処理の一例である。そして、ステップS23における処理は、復帰処理の一例である。
【0107】
制御装置60は、まずステップS11において、運搬装置制御部58から受信した情報等に基づき、運搬装置53の現在の位置を特定し、運搬装置53の現在位置が収穫区間の終点であるか否かを判断する。制御装置60は、運搬装置53の現在位置が収穫区間の終点である場合(ステップS11でYES)、次の収穫対象物91は存在しないと判断し、一連の制御を終了する。一方、制御装置60は、運搬装置53の現在位置が収穫区間の終点でない場合(ステップS11でNO)、収穫対象物91が未だ存在すると判断する。そして、制御装置60は、ステップS12に処理を移行し、運搬装置制御部58を介して運搬装置53を駆動させ、次の収穫地点へ運搬装置53を移動させる。
【0108】
次に、制御装置60は、ステップS13、S14において、収穫対象物検出処理を実行する。制御装置60は、ステップS13において、制御装置60は、視覚装置制御部56を介して視覚装置51を駆動させ、収穫対象物91側を撮像する。そして、制御装置60は、ステップS14において、視覚装置51で撮像した視覚情報、この場合、画像情報に収穫対象物91が含まれているか否かを判断する。
【0109】
ステップS14において収穫対象物91が検出されなかった場合(ステップS14でNO)、制御装置60は、運搬装置53を駆動させて、運搬装置53を次の収穫地点へ移動させる。一方、ステップS14において収穫対象物91が検出された場合(ステップS14でYES)、制御装置60は、ステップS15へ処理を移行させる。制御装置60は、ステップS15において位置特定処理を実行し、視覚装置51で取得した視覚情報に基づき、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)、及び中間位置Ph(X、Y、Z)を特定する。
【0110】
次に、制御装置60は、ステップS16、S17において移動経路生成処理を実行する。まず制御装置60は、ステップS16において、ステップS15で特定した下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)に基づき、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)及び終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)を算出する。次に、制御装置60は、ステップS17へ処理を移行し、始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)から収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)及び上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)を通り終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)に至るまでの収穫装置1の移動経路Rを生成する。
【0111】
次に、制御装置60は、ステップS18、S19において移動処理を実行し、ロボットアーム制御部57を介してロボットアーム52を駆動させる。この場合、制御装置60は、まずステップS18において、収穫装置1の基準点Pcが始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)と一致するように、つまり図19に示すように、平面視において開状態となった保持機構20及び分離機構30の内側の領域に房90全体が入るように収穫装置1を移動させる。そして、制御装置60は、ステップS19において、図18及び図20に示すように、移動経路Rに収穫装置1の基準点Pcを沿わせながら収穫装置1を終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)まで移動させる。
【0112】
これにより、収穫装置1は、開状態となった保持機構20及び分離機構30の内側の領域に房90全体を下方からすくい上げるように移動した後、全ての実91を上側に超えた位置に移動する。このとき、開状態となった保持機構20及び分離機構30の内側の領域には、実91と主茎92とを繋ぐ果柄93が存在している。そして、実91と主茎92とは、それぞれ保持機構20及び分離機構30に対して下方外側及び上方外側に位置している。
【0113】
次に、制御装置60は、図28のステップS20において保持処理を実行し、保持機構20を閉状態に切り替えて果柄93を保持する。制御装置60は、ステップS20の保持処理の開始と同時に、ステップS21における配置処理を実行する。配置処理により、図21に示すように、果柄93の基端部分つまり果柄93のうち全ての実91よりも主茎92側の部分は、回転部材38の内側つまり隙間内に配置される。
【0114】
その後、制御装置60は、図28のステップS22において分離処理を実行する。制御装置60は、分離処理が実行されている間、保持処理を維持する。制御装置60は、分離処理を実行により、図23及び図25に示すように、分離機構30を保持機構20から離間する方向つまり果柄93の先端側へ移動させる。これにより、回転部材38が実91又は小果柄94に接触しながら分離機構30が果柄93の先端側へ回動することで、果柄93と実91とを繋ぐ小果柄94から実91を分離したり、小果柄94とともに実91を果柄93から分離したりする。その結果、実91を果柄93から分離した状態で個別に収穫することができる。
【0115】
その後、制御装置60は、ステップS23において復帰処理を実行し、モータ401を
逆回転させて、図27に示すように分離機構30を保持機構20側へ回動させる。このとき、回転部材38、図26に示すように自重で下方へ回動しており、回転部材38間の隙間は大きく開いている。このため、分離機構30が保持機構20側へ戻る際に、回転部材38が果柄93や小果柄94に接触することを抑制でき、その結果、分離機構30は円滑に回動することができる。
【0116】
その後、制御装置60は、ステップS24おいて、収穫装置制御部55を介してモータ401の駆動を継続させる。これにより、ステップS24において分離機構30が復帰することに続いて保持機構20及び分離機構30が開状態となり、保持機構20による果柄93の保持が解放される。そして、制御装置60は、ロボットアーム制御部57を介してロボットアーム52を駆動させて、収穫装置1を果柄93の先端側へ移動させて果柄93から離脱させる。その後、制御装置60は、ロボットアーム制御部57を介してロボットアーム52を駆動させ、収穫装置1を運搬装置53が駆動する際の位置に戻し、ステップS11へ処理を戻して次の収穫対象物91の収穫を行う。
【0117】
以上説明した実施形態による農作物収穫装置1は、房90の状態で結実している実91を果柄93から分離して実91を個別に収穫するために用いられるものである。農作物収穫装置1は、保持機構20と、分離機構30と、を備えている。保持機構20は、房全体の外径よりも大きい状態に開いて内側に房全体が挿入可能となっている開状態と、房全体の外径よりも小さくかつ果柄の外径よりも小さい状態に閉じる閉状態と、に切り替え可能に構成されている。また、保持機構20は、閉状態において果柄93を挟んで保持可能に構成されている。
【0118】
分離機構30は、保持機構20に対して果柄93の先端側に設けられている。分離機構30は、房全体の外径よりも大きい状態に開いて内側に房全体が挿入可能となっている開状態と、房全体の外径よりも小さくかつ果柄の外径よりも大きい状態に閉じて内側に所定の隙間が形成される閉状態と、に切り替え可能に構成されている。そして、分離機構30は、果柄93を内側に配置し閉状態で果柄の先端側へ移動することで実91を果柄93から分離させる機能を有する。
【0119】
これによれば、1回の動作で房90に付いている複数の実91を個別に分離して収穫することができるため、房90の状態で結実する収穫対象物91を効率良く短時間で個別に収穫することができる。
【0120】
また、本実施形態によれば、例えば視覚装置51を用いて自動で収穫する農作物収穫システム50を構築する際、視覚装置51は、房90全体や主茎92を認識すれば良く、全ての実91を個々に認識する必要はない。このため、個々の実91を認識して実91を個別に収穫する場合に比べて、視覚装置51の認識精度を低いものにすることができ、その結果、個々の実91を認識して収穫するための高度な制御が不要となるため、簡単な制御構成とすることができ、その結果、制御の負荷を低減することができる。
【0121】
ここで、例えばハサミ形状のエンドエフェクタによって果柄93を切断して収穫する構成の場合、ハサミ形状のエンドエフェクタを移動させる際に刃先部分が主茎92や枝に接触して、主茎92や枝を傷つけてしまったり、さらには切断してしまったりするおそれがある。そして、主茎や枝の損傷や切断は、植物の様々な病気を引き起こす原因となり、ひどい場合には枯れてしまい、その結果、その後の収穫量の減少に繋がる。
【0122】
これに対し、実施形態によれば、刃物を用いることなく実91を果柄93から分離して収穫することができるため、主茎92や枝の損傷や切断を抑制することができる。その結果、植物の病気を抑制できて実の減少を防ぎ、収穫効率を大幅に向上させることができる。
【0123】
ここで、分離処理を行い分離機構30を実91又は小果柄94に接触させながら移動させることにより、小果柄94から実91を引き千切る力、又は果柄93から小果柄94を引き千切る力が作用し、これにより、果柄93から実91が分離する。しかし、分離処理を実行した際に分離機構30から実91に加えられた力が果柄93を介して主茎92に伝わってしまうと、分離機構30の移動に伴って主茎92が撓む。すると、果柄93を含めた房90ごと分離機構30とともに移動してしまい、実91を小果柄94から引き千切る力、又は小果柄94を果柄93から引き千切る力が作用し難くなり、その結果、実91が果柄93から分離し難くなる。
【0124】
そこで、本実施形態の農作物収穫装置1は、保持機構20を更に備えている。保持機構20は、分離機構30に対して果柄93の基端側つまり主茎92側に設けられており、果柄93を保持可能に構成されている。そして、本実施形態の農作物収穫システム50は、保持処理を実行可能な保持処理部65を更に備えている。保持処理は、分離機構30を移動させている最中に果柄93のうち分離機構30よりも基端側部分つまり主茎92側部分を保持する処理である。
【0125】
これによれば、分離処理を実行した際に分離機構30から実91や小果柄94に加えられた力が果柄93を介して主茎92に伝わってしまい、分離機構30の移動に伴って主茎92が撓むことを防ぐことができる。これにより、分離処理による実91を小果柄94から引き千切る力、又は小果柄94を果柄93から引き千切る力を、実91や小果柄94に確実に作用させることができる。その結果、実91を果柄93から確実に分離することができるようになり、作業効率を更に向上させることができる。
【0126】
また、本実施形態の農作物収穫装置1は、分離機構30を備えている。分離機構30は、開状態と閉状態とを切り替え可能に構成されている。開状態は、分離機構30が房90全体の外径よりも大きく開いて分離機構30の内側に房90全体が挿入可能となっている状態である。閉状態は、分離機構30が閉じて分離機構30の内側に隙間が形成された状態である。
【0127】
そして、本実施形態の農作物収穫システム50は、移動処理を実行可能な移動処理部を更に備えている。移動処理は、配置処理の前に実行され、分離機構30を開状態にして果柄93の先端側から分離機構30の内側に房90全体を通しながら果柄93の基端側へ移動させる処理である。そして、配置処理は、分離機構30を閉状態に切り替える処理を含んでいる。
【0128】
これによれば、移動処理の実行の際に分離機構30を開状態することで、房90全体を分離機構30の内側に容易に配置することができる。そのため、移動処理の実行に際し、細かく高度な制御が不要となるため、簡単な制御構成とすることができ、その結果、制御の負荷を低減することができる。
【0129】
ここで、回転部材38は、実91に力を作用させて実91を果柄93から分離させる機能を有する。この場合、果柄93から実91を適切に分離させるためには、回転部材38は、果柄93には力を作用させずに実91のみに力を作用せることが重要である。そのため、例えば回転部材38を回転しない単なる棒状の部材で構成したとすると、分離処理において分離機構30を果柄93の先端側へ回動させる際に、その棒状の部材が、果柄93等に引っかかって房全体を引っ張ってしまい、その結果、果柄93から実91を適切に分離し難くなる。
【0130】
これに対し、本実施形態において、分離機構30は、回転部材38を有している。回転部材38は、閉状態において相互に対向する位置でかつ果柄93に接触する位置に設けられた回転可能に構成されている。このため、例えば分離処理等において分離機構30を果柄93の先端側へ回動させる際に、回転部材38は、回転しながら果柄93に沿って移動することができる。このため、回転部材38が果柄93等に引っかかって房全体を引っ張ることを抑制でき、その結果、果柄93から実91を効率良く分離することができる。
【0131】
また、回転部材38は、モータ等で能動的に駆動するものではなく、果柄93等からの摩擦力等により従動する。このため、実91や実91に付いているヘタ等を巻き込むことが抑制される。その結果、実91が傷つくことを抑制でき、農作物の商品価値を高い状態に維持したまま収穫することができる。
【0132】
また、果柄93の太さに対して対向する回転部材38の間の寸法が大きすぎると、回転部材38で実91を適切に押さえることができず、効率良く収穫することができない。一方、果柄93の太さに対して対向する回転部材38の間の寸法が大きすぎると、果柄93に対して回転部材38が引っ掛かってしまい、こちらも効率良く収穫することができない。そのため、収穫対象物の種類に応じて対向する回転部材38の間の寸法を調整できることが重要である。
【0133】
そこで、本実施形態において、分離機構30は、対向する回転部材38の間の隙間を調整可能に構成されている。このため、本実施形態によれば、収穫対象物の種類に応じて対向する回転部材38の間の寸法を調整でき、その結果、収穫の効率を向上させることができる。
【0134】
また、保持機構20から離れる方向へ分離機構30を回動させて果柄93から実91を分離させた後、再び分離機構30を初期状態へ戻すつまり分離機構30に近づく方向へ回動させる際に、対向する回転部材38の間の隙間が小さいと、回転部材38に果柄93が引っ掛かってしまい、円滑に戻すことができない。
【0135】
そこで、本実施形態において、回転部材38は、回転部材38の自重によって対向する回転部材38の間の隙間が大きくなる方向つまり下方へ回動可能に構成されている。これによれば、分離機構30を初期状態に戻す際に、対向する回転部材38の間の隙間を大きく確保することができるため、分離機構30を保持機構20側へ戻す際に、回転部材38が果柄93に接触することを抑制でき、その結果、分離機構30を円滑に初期状態に戻すことができる。
【0136】
また、収穫装置1は、駆動機構40を備えている。駆動機構40は、保持機構20の開閉と、分離機構30の開閉と、分離機構30の回動と、を1つの駆動源この場合1つのモータ401で行うことが可能に構成されている。これによれば、3種類の動作を1つのアクチュエータで実行することができるため、部品点数の削減でき、更には収穫装置1の小型化を図ることができる。
【0137】
また、本実施形態の農作物収穫システム50は、視覚装置51と、ロボットアーム52と、を備える。視覚装置51は、収穫対象物91の位置情報を含む視覚情報を取得可能に構成されている。ロボットアーム52は、収穫装置1が取り付けられている。また、農作物収穫システム50は、収穫対象物検出処理部61と、位置情報特定処理部62と、移動経路生成処理部63と、移動処理部64と、保持処理部65と、分離処理部67と、を備えている。
【0138】
収穫対象物検出処理部61は、収穫対象物検出処理を実行可能である。収穫物検出処理は、視覚装置51で取得した視覚情報に含まれている収穫対象物を検出する処理を含む。位置情報特定処理部62は、位置特定処理を実行可能である。位置特定処理は、収穫対象物検出処理で検出した収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)と上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)位置とを含む収穫対象物91の位置を特定する処理を含む。移動経路生成処理部63は、移動経路生成処理を実行可能である。移動経路生成処理は、収穫対象物91の下端位置Pb(Xb、Yb、Zb)の下方に位置する始点位置Ps(Xs、Ys、Zs)から、上端位置Pt(Xt、Yt、Zt)の上方に位置する終点位置Pe(Xe、Ye、Ze)に至るまでの収穫装置1の移動経路Rを生成する処理を含む。
【0139】
移動処理部64は、移動処理を実行可能である。移動処理は、ロボットアーム52を駆動制御して、移動経路生成処理で生成した移動経路Rに沿って収穫装置1を移動させて、開状態の分離機構30の内側に収穫対象物91を房90ごと通す処理を含む。保持処理部65は、保持処理を実行可能である。保持処理は、移動処理の後に実行されて、保持機構20を閉状態にして果柄93の基端側部分を保持する処理を含む。分離処理部67は、分離処理を実行可能である。分離処理は、配置処理の後に実行されて、ロボットアーム52を駆動制御させて収穫装置1を果柄93の先端側へ移動させることで果柄93と実91とを繋ぐ小果柄94から実91を分離し、又は小果柄94とともに実91を果柄93から分離する処理である。
【0140】
これによれば、収穫装置1を用いて、主茎92や枝から果柄93を介して垂れ下がった収穫対象物91を、さらには主茎92や収穫対象物91を傷つけることを極力防ぎつつ自動で個別に収穫することができるため、収穫作業の効率を大幅に向上させることができる。
【0141】
また、位置情報特定処理部62は、位置特定処理において、収穫対象物91と繋がっている果柄93の位置情報を用いることなく収穫対象物91の位置を特定する。すなわち、制御装置60は、視覚装置51からの視覚情報に基づいてロボットアーム52を動作させる際に、果柄93を認識する処理は行わない。すなわち、収穫装置1を用いることで、果柄93を視覚的に認識する処理を行うことなく、収穫対象物である実91を個別に収穫することができる。
(その他の実施形態)
【0142】
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0143】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0144】
1…農作物収穫装置、20…保持機構、30…分離機構、38、38a、38b、38c…回転部材、40…駆動機構、50…農作物収穫システム、51…視覚装置、52…ロボットアーム、61…収穫対象物検出処理部、62…位置情報特定処理部、63…移動経路生成処理部、64…移動処理部、65…保持処理部、67…分離処理部、90…房、91…実(収穫対象物)、93…果柄
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