(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】化合物、樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、回路パターン形成方法及び樹脂の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 39/15 20060101AFI20240326BHJP
C07C 49/784 20060101ALI20240326BHJP
C07C 49/83 20060101ALI20240326BHJP
C08G 2/18 20060101ALI20240326BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20240326BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20240326BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20240326BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240326BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C07C39/15 CSP
C07C49/784
C07C49/83 Z
C08G2/18
G03F7/023 511
G03F7/039 601
G03F7/11 502
G03F7/11 503
G03F7/20 521
G03F7/40 521
(21)【出願番号】P 2020522176
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020864
(87)【国際公開番号】W WO2019230639
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2018101599
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳矢
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187668(JP,A)
【文献】特開平9-218511(JP,A)
【文献】特開平9-110761(JP,A)
【文献】特開平6-107768(JP,A)
【文献】特表2009-538943(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185335(WO,A1)
【文献】特開2008-216530(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170524(WO,A1)
【文献】特開平9-218512(JP,A)
【文献】特開平6-136091(JP,A)
【文献】特開平8-127552(JP,A)
【文献】特開平3-232836(JP,A)
【文献】米国特許第2625568(US,A)
【文献】東ドイツ国経済特許第46455(DD,A1)
【文献】NEMOTO, T. et al.,Synthesis and properties of a High-Molecular-Weight Organosoluble Bisphenol A Novolac,Polymer Journal,2009年,Vol.41, No.4,p.338-342,EXPERIMENTAL, Scheme 1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
G03F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1a)で表される化合物。
【化2】
(式(1a)中、
Aは、
カルボニル基、チオカルボニル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はヘキサフルオロプロピレン基であり、
R
2~R
5は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
R
4の少なくとも1つ及び/又はR
5の少なくとも1つは、水酸基及び/又はチオール基であり、
nは、1~4の整数であり、
R
1aは、水素原子、又は炭素数1~10の1価の基であり、
R
1bは、
1,1’-ビフェニル-4-イル基であり、
m
2及びm
3は、各々独立して、0~4の整数であり、
m
4及びm
5は、各々独立して、0~5の整数である。)
【請求項2】
前記式(1a)で表される化合物が、下記式(1b)で表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【化3】
(式(1b)中、
A、R
4、R
5、R
1a、R
1b、m
4、m
5及びnは、それぞれ前記式(1a)において定義したとおりであり、
R
6及びR
7は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
m
6及びm
7は、各々独立して、0~3の整数であり、
R
10及びR
11は、水素原子である。)
【請求項3】
前記式(1b)で表される化合物が、下記式(1c)で表される化合物である、請求項2に記載の化合物。
【化4】
(式(1c)中、
A、R
1a、R
1b、R
6、R
7、R
10、R
11、m
6、m
7及びnは、それぞれ、前記式(1b)において定義したとおりであり、
R
8及びR
9は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
m
8及びm
9は、各々独立して、0~4の整数であり、
R
12及びR
13は、水素原子である。)
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の化合物に由来する構成単位を有する樹脂。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物及び請求項4に記載の樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する組成物。
【請求項6】
溶媒をさらに含有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
酸発生剤をさらに含有する、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
架橋剤をさらに含有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
リソグラフィー用膜形成に用いられる、請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
光学部品形成に用いられる、請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
基板上に、請求項9に記載の組成物を用いてフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う現像工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項12】
レジストパターンが絶縁膜パターンである、請求項11記載のレジストパターン形成方法。
【請求項13】
基板上に、請求項9に記載の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項14】
基板上に、請求項9に記載の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、中間層膜を形成する中間層膜形成工程と、
該中間層膜形成工程により形成した中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
該レジストパターン形成工程により形成したレジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして中間層膜パターンを形成する中間層膜パターン形成工程と、
該中間層膜パターン形成工程により形成した中間層膜パターンをマスクとして前記下層膜をエッチングして下層膜パターンを形成する下層膜パターン形成工程と、
該下層膜パターン形成工程により形成した下層膜パターンをマスクとして前記基板をエッチングして基板にパターンを形成する基板パターン形成工程と、
を含む、回路パターン形成方法。
【請求項15】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又は請求項4に記載の樹脂の精製方法であって、
前記化合物又は樹脂、及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液と、酸性の水溶液とを接触させて抽出する抽出工程を含む、化合物又は樹脂の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、回路パターン形成方法及び樹脂の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われているが、近年、LSI(大規模集積回路)の高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。また、レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されており、極端紫外光(EUV、13.5nm)の導入も見込まれている。
【0003】
しかしながら、従来の高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは、その分子量が1万~10万程度と大きく、分子量分布も広いため、パターン表面にラフネスが生じパターン寸法の制御が困難となり、微細化に限界がある。そこで、これまでに、より解像性の高いレジストパターンを与えるために、種々の低分子量レジスト材料が提案されている。低分子量レジスト材料は分子サイズが小さいことから、解像性が高く、ラフネスが小さいレジストパターンを与えることが期待される。
【0004】
現在、このような低分子量レジスト材料として、様々なものが知られている。例えば、低分子量多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が提案されており、高耐熱性を有する低分子量レジスト材料の候補として、低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献3及び非特許文献1参照)も提案されている。また、レジスト材料のベース化合物として、ポリフェノール化合物が、低分子量ながら高耐熱性を付与でき、レジストパターンの解像性やラフネスの改善に有用であることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
また、本発明者らは、エッチング耐性に優れるとともに、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するレジスト組成物(特許文献4を参照。)を提案している。
【0006】
また、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になっている。
【0007】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基を少なくとも有する樹脂成分と溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材料が提案されている(特許文献5参照)。また、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献6参照)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献7参照)。
【0008】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料に用いたChemical Vapour Deposition(CVD)によって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。しかしながら、プロセス上の観点から、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスでレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜材料が求められている。
【0009】
また、本発明者らは、エッチング耐性に優れるとともに、耐熱性が高く、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物(特許文献8を参照。)を提案している。
【0010】
なお、3層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成方法に関しては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(特許文献9参照)や、シリコン窒化膜のCVD形成方法(特許文献10参照)が知られている。また、3層プロセス用の中間層材料としては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料が知られている(特許文献11及び12参照。)。
【0011】
さらに光学部品形成組成物として、様々なものが提案されている。例えば、特許文献13には、イオン性液体と、所定のポリアルキレンオキサイド構造及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、所定の(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを含む光学レンズシート用エネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されている。特許文献14には、特定の構造単位を有する共重合体と、特定の硬化促進触媒と、溶剤とを含有する樹脂組成物は、マイクロレンズ用又は平坦化膜用に好適に用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2005-326838号公報
【文献】特開2008-145539号公報
【文献】特開2009-173623号公報
【文献】国際公開第2013/024778号
【文献】特開2004-177668号公報
【文献】特開2004-271838号公報
【文献】特開2005-250434号公報
【文献】国際公開第2013/024779号
【文献】特開2002-334869号公報
【文献】国際公開第2004/066377号
【文献】特開2007-226170号公報
【文献】特開2007-226204号公報
【文献】特開2010-138393号公報
【文献】特開2015-174877号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【文献】岡崎信次、他22名「フォトレジスト材料開発の新展開」株式会社シーエムシー出版、2009年9月、p.211-259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、リソグラフィー用膜形成材料又は光学部品形成用材料として、有機溶媒に対する溶解性、エッチング耐性、及びレジストパターン形成性を高い次元で同時に満たすことが求められている。
【0015】
そこで、本発明は、リソグラフィー用膜形成材料又は光学部品形成用材料として特に有用な新規化合物及びこの新規化合物に由来する構成単位を有する樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、絶縁膜の形成方法、回路パターン形成方法並びに上記化合物又は樹脂の精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する新規化合物を得ることができることを見出し、得られた新規化合物は、リソグラフィー用膜形成材料又は光学部品形成用材料として特に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、次のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、
Aは、炭素数1~12の基であり、
R
1は、炭素数1~30の2n価の基であり、
R
2~R
5は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
R
4の少なくとも1つ及び/又はR
5の少なくとも1つは、水酸基及び/又はチオール基であり、
m
2及びm
3は、各々独立して0~8の整数であり、
m
4及びm
5は、各々独立して0~9の整数であり、
nは、1~4の整数であり、
p
2~p
5は、各々独立して0~2の整数である。)
[1-1]
Aが、カルボニル基、チオカルボニル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基、フェニルエチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、及びシクロドデシレン基からなる群から選択される、[1]の化合物。
[1-2]
R
1が、炭素数1~30の2n価の炭化水素基である、[1]又は[1-1]の化合物。
[1-3]
前記炭素数1~30の2n価の炭化水素基が、芳香族基を含む、[1-2]の化合物。
[2]
前記式(1)中、R
2の少なくとも1つ及び/又はR
3の少なくとも1つが、水酸基及び/又はチオール基である、[1]~[1-3]のいずれかの化合物。
[3]
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1a)で表される化合物である、[1]~[2]のいずれかの化合物。
【化2】
(式(1a)中、
A、R
2~R
5及びnは、それぞれ前記式(1)において定義したとおりであり、
R
1aは、水素原子、又は炭素数1~10の1価の基であり、
R
1bは、炭素数1~25のn価の基であり、
m
2及びm
3は、各々独立して、0~4の整数であり、
m
4及びm
5は、各々独立して、0~5の整数である。)
[3-1]
R
1bが、炭素数1~25のn価の炭化水素基である、[3]の化合物。
[3-2]
前記炭素数1~25のn価の炭化水素基が、芳香族基を含む、[3-1]の化合物。
[4]
前記式(1a)で表される化合物が、下記式(1b)で表される化合物である、[3]~[3-2]のいずれかの化合物。
【化3】
(式(1b)中、
A、R
4、R
5、R
1a、R
1b、m
4、m
5及びnは、それぞれ前記式(1a)において定義したとおりであり、
R
6及びR
7は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
m
6及びm
7は、各々独立して、0~3の整数であり、
R
10及びR
11は、水素原子である。)
[5]
前記式(1b)で表される化合物が、下記式(1c)で表される化合物である、[4]の化合物。
【化4】
(式(1c)中、
A、R
1a、R
1b、R
6、R
7、R
10、R
11、m
6、m
7及びnは、それぞれ、前記式(1b)において定義したとおりであり、
R
8及びR
9は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
m
8及びm
9は、各々独立して、0~4の整数であり、
R
12及びR
13は、水素原子である。)
[6]
[1]~[5]のいずれかの化合物に由来する構成単位を有する樹脂。
[7]
下記式(2)で表される構造を有する、[6]の樹脂。
【化5】
(式(2)中、
A、R
1~R
5、m
2~m
5、n、及びp
2~p
5は、それぞれ、前記式(1)において定義したとおりであり、
Lは、単結合又は連結基である。)
[8]
[1]~[5]のいずれかの化合物及び[6]又は[7]の樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する組成物。
[9]
溶媒をさらに含有する、[8]の組成物。
[10]
酸発生剤をさらに含有する、[8]又は[9]の組成物。
[11]
架橋剤をさらに含有する、[8]~[10]のいずれかの組成物。
[12]
リソグラフィー用膜形成に用いられる、[8]~[11]のいずれかの組成物。
[13]
光学部品形成に用いられる、[8]~[11]のいずれかの組成物。
[14]
基板上に、[12]の組成物を用いてフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う現像工程とを含む、レジストパターン形成方法。
[15]
レジストパターンが絶縁膜パターンである、[14]のレジストパターン形成方法。
[16]
基板上に、[12]の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程と、
を含む、レジストパターン形成方法。
[17]
基板上に、[12]の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、
該下層膜形成工程により形成した下層膜上に、中間層膜を形成する中間層膜形成工程と、
該中間層膜形成工程により形成した中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、
該フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
該レジストパターン形成工程により形成したレジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして中間層膜パターンを形成する中間層膜パターン形成工程と、
該中間層膜パターン形成工程により形成した中間層膜パターンをマスクとして前記下層膜をエッチングして下層膜パターンを形成する下層膜パターン形成工程と、
該下層膜パターン形成工程により形成した下層膜パターンをマスクとして前記基板をエッチングして基板にパターンを形成する基板パターン形成工程と、
を含む、回路パターン形成方法。
[18]
[1]~[5]のいずれかの化合物又は[6]若しくは[7]の樹脂の精製方法であって、
前記化合物又は樹脂、及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液と、酸性の水溶液とを接触させて抽出する抽出工程を含む、化合物又は樹脂の精製方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リソグラフィー用膜形成材料又は光学部品形成用材料として特に有用な新規化合物及びこの新規化合物に由来する構成単位を有する樹脂、組成物、レジストパターン形成方法、絶縁膜の形成方法、回路パターン形成方法並びに上記化合物又は樹脂の精製方法を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」ともいう。)について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0020】
[化合物]
本実施形態の化合物は、下記式(1)で表される化合物である。本実施形態の化合物は、例えば、下記(1)~(4)の特性を有する。
(1)本実施形態の化合物は、有機溶媒(特に安全溶媒)に対する優れた溶解性を有する。このため、例えば、本実施形態の化合物をリソグラフィー用膜形成材料として用いると、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによりリソグラフィー用膜を形成できる。
(2)本実施形態の化合物では、炭素濃度が比較的高く、酸素濃度が比較的低い。また、本実施形態の化合物は、分子中にフェノール性水酸基及び/又はフェノール性チオール基を有するため、硬化剤との反応による硬化物の形成に有用であるが、単独でも高温ベーク時にフェノール性水酸基及び/又はフェノール性チオール基が架橋反応することにより硬化物を形成できる。これらに起因して、本実施形態の化合物は、高い耐熱性を発現でき、本実施形態の化合物をリソグラフィー用膜形成材料として用いると、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性に優れたリソグラフィー用膜を形成できる。
(3)本実施形態の化合物は、上記のように、高い耐熱性及びエッチング耐性を発現できるとともに、レジスト層やレジスト中間層膜材料との密着性に優れる。このため、本実施形態の化合物をリソグラフィー用膜形成材料として用いると、レジストパターン形成性に優れたリソグラフィー用膜を形成できる。なお、ここでいう「レジストパターン形成性」とは、レジストパターン形状に大きな欠陥が見られず、解像性及び感度ともに優れる性質をいう。
(4)本実施形態の化合物は、芳香環密度が高いため高屈折率であり、加熱処理しても着色が抑制され、透明性に優れる。
【0021】
【0022】
式(1)中、Aは、炭素数1~12の基(例えば、炭化水素基)であり、R1は、炭素数1~30の2n価の基であり、R2~R5は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、R4の少なくとも1つ及び/又はR5の少なくとも1つは、水酸基及び/又はチオール基であり、m2及びm3は、各々独立して0~8の整数であり、m4及びm5は、各々独立して0~9の整数であり、nは、1~4の整数であり、p2~p5は各々独立して0~2の整数である。
【0023】
式(1)中、Aは、炭素数1~12の基であり、二価の基を形成しうる基である。Aは、ヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、カルボニル基、チオカルボニル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基、フェニルエチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、シクロドデシレン基が挙げられるが限定されない。
【0024】
Aは、溶解性の観点から、脂環構造を有することが好ましく、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、シクロドデシレン基を有することがより好ましい。
またAは、溶解性の観点から、ハロゲンを有することが好ましく、ヘキサフルオロプロピレン基がより好ましい。
【0025】
Aは、耐熱性の観点から、炭素数1~3の炭化水素基が好ましく、カルボニル基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基を有することがより好ましい。
【0026】
式(1)中、R1は、炭素数1~30の2n価の基であり、このR1を介して各々の芳香環が結合している。2n価の基の具体例については後述する。
【0027】
式(1)中、R2~R5は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基及び水酸基からなる群より選択される1価の基である。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。上記アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。上記アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基等が挙げられる。但し、R4の少なくとも1つ及び/又はR5の少なくとも1つは水酸基及び/又はチオール基である。
【0028】
式(1)中、m2及びm3は、各々独立して、0~8の整数であり、0~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。m4及びm5は、各々独立して0~9の整数であり、0~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0029】
式(1)中、nは、1~4の整数であり、1~2の整数であることが好ましい。
【0030】
式(1)中、p2~p5は、各々独立して、0~2の整数であり、0又は1の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0031】
2n価の基R1としては、n=1である場合、炭素数1~30の2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられ、n=2である場合、炭素数1~30の4価の炭化水素基(例えば、アルカンテトライル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられ、n=3である場合、炭素数2~30の6価の炭化水素基(例えば、アルカンヘキサイル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられ、n=4である場合、炭素数3~30の8価の炭化水素基(例えば、アルカンオクタイル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられる。ここで、上記環式炭化水素基は、有橋環式炭化水素基及び/又は芳香族基を有してもよい。
【0032】
また、上記の2n価の基R1(例えば、2n価の炭化水素基)は、二重結合を有していてもよく、ヘテロ原子を有していてもよい。
【0033】
上記式(1)で表される化合物は、比較的低分子量ながらも、その構造の剛直さにより高い耐熱性を有するため、高温ベーク条件でも使用可能である。また、分子中に3級炭素又は4級炭素を有しており、結晶化が抑制され、リソグラフィー用膜形成材料として好適に用いられる。
【0034】
また、上記式(1)で表される化合物は、有機溶媒(特に安全溶媒)に対する溶解性が高く、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。このため、上記式(1)で表される化合物を含むリソグラフィー用膜形成材料は、優れたレジストパターン形成性を有する。上記有機溶媒としては、後述する[組成物]の項で例示する[溶媒]に記載の有機溶媒が挙げられる。
【0035】
また、上記式(1)で表される化合物は、比較的低分子量であり、低粘度であるため、段差を有する基板(特に、微細なスペースやホールパターン等)であっても、その段差の隅々まで均一に充填させつつ、膜の平坦性を高めることが容易である。その結果、上記式(1)で表される化合物を含むリソグラフィー用膜形成材料は、埋め込み特性及び平坦化特性に優れる。また、上記式(1)で表される化合物は、比較的高い炭素濃度を有する化合物であることから、高いエッチング耐性も発現できる。
【0036】
さらにまた、上記式(1)で表される化合物は、芳香環密度が高いため屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱処理によっても着色が抑制されることから、各種光学部品形成材料としても有用である。上記式(1)で表される化合物は、化合物の酸化分解を抑制して着色を抑え、耐熱性及び溶媒溶解性を向上させる観点から、4級炭素を有する化合物であることが好ましい。
【0037】
上記光学部品としては、例えば、フィルム状、シート状の形態であってもよく、プラスチックレンズ(例えば、プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、光半導体(LED)素子、固体撮像素子、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機薄膜トランジスタ(TFT)が挙げられる。式(1)で表される化合物は、特に高屈折率が求められている固体撮像素子の部材であるフォトダイオード上の埋め込み膜及び平坦化膜、カラーフィルター前後の平坦化膜、マイクロレンズ、マイクロレンズ上の平坦化膜及びコンフォーマル膜の形成材料として好適に用いられる。
【0038】
上記式(1)で表される化合物は、架橋反応のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、R2の少なくとも1つ及び/又はR3の少なくとも1つが、水酸基及び/又はチオール基であることが好ましい。また、R2の少なくとも1つ、R3の少なくとも1つ、R4の少なくとも1つ、及びR5の少なくとも1つが、水酸基及び/又はチオール基(好ましくは水酸基)であることがより好ましい。
【0039】
上記式(1)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【0040】
【0041】
上記式(1-1)中、A、R4、R5、n、p2~p5、m4及びm5並びにnは、それぞれ、式(1)において定義したとおりであり、R1aは、水素原子、又は炭素数1~10の1価の基であり、R1bは、炭素数1~25のn価の基であり、R6及びR7は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基及び水酸基からなる群より選択される1価の基であり、R10及びR11は、水素原子であり、m6及びm7は、各々独立して0~7の整数である。
炭素数1~10の1価の基R1aとしては、例えば、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、アリール基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。
炭素数1~25のn価の基R1bとしては、例えば、n=1である場合、炭素数1~25の1価の炭化水素基(例えば、アルキル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)、n=2である場合、炭素数1~25の2価の炭化水素基(例えば、アルキレン基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)、n=3である場合、炭素数1~25の3価の炭化水素基(例えば、アルカントリイル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)、n=4である場合、炭素数1~25の4価の炭化水素基(例えば、アルカンテトライル基等の直鎖状若しくは分岐状炭化水素基又は環式炭化水素基)が挙げられる。ここで、上記環式炭化水素基は、有橋環式炭化水素基及び/又は芳香族基を有してもよい。基R1bは、二重結合を有していてもよく、ヘテロ原子を有していてもよい。
【0042】
また、上記式(1-1)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0043】
【0044】
上記式(1-2)中、A、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、n、p2~p5、m6及びm7は、それぞれ、式(1-1)において定義したとおりであり、R8及びR9は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基及び水酸基からなる群より選択される1価の基であり、R12及びR13は、水素原子であり、m8及びm9は、各々独立して、0~8の整数である。
【0045】
また、上記式(1)で表される化合物は、原料の供給性の観点から、下記式(1a)で表される化合物であることが好ましい。
【0046】
【0047】
上記式(1a)中、A、R2~R5及びnは、それぞれ前記式(1)において定義したとおりであり、R1aは、水素原子、又は炭素数1~10の1価の基であり、R1bは、炭素数1~25のn価の基であり、m2及びm3は、各々独立して、0~4の整数であり、m4及びm5は、各々独立して、0~5の整数である。炭素数1~10の1価の基R1aについては、前記式(1-1)において説明したとおりである。炭素数1~25のn価の基R1bについては、前記式(1-1)において説明したとおりである。
【0048】
上記式(1a)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1b)で表される化合物であることがより好ましい。
【0049】
【0050】
上記式(1b)中、A、R4、R5、R1a、R1b、m4、m5及びnは、それぞれ上記式(1a)において定義したとおりであり、R6及びR7は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、m6及びm7は、各々独立して、0~3の整数であり、R10及びR11は、水素原子である。
【0051】
上記式(1b)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1c)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0052】
【0053】
上記式(1c)中、A、R1a、R1b、R6、R7、R10、R11、m6、m7及びnは、それぞれ、上記式(1b)において定義したとおりであり、R8及びR9は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、m8及びm9は、各々独立して、0~4の整数であり、R12及びR13は、水素原子である。
【0054】
上記式(1c)で表される化合物は、さらなる有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(BisF-1)~(BisF-3)、(BiF-1)~(BiF-7)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0055】
【0056】
上記(BisF-1)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0057】
【0058】
上記(BisF-2)中、A、R10及びR11は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0059】
【0060】
上記(BisF-3)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0061】
【0062】
上記(BiF-1)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0063】
【0064】
上記(BiF-2)中、A、R10及びR11は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0065】
【0066】
上記(BiF-3)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0067】
【0068】
上記(BiF-4)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0069】
【0070】
上記(BiF-5)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0071】
【0072】
上記(BiF-6)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0073】
【0074】
上記(BiF-7)中、A及びR10~R13は、それぞれ、上記式(1c)において定義したとおりである。
【0075】
式(1)で表される化合物は、耐熱性、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式で表される群から選ばれる化合物であることが好ましい。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
上記各式中、Aは、上記式(1)において定義したとおりである。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
上記各式中、Aは、上記式(1)中のAと同義である。
【0085】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。但し、上記式(1)で表される化合物は、以下の式で表される化合物に限定されない。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
上記各式中、A、R2~R5、及びm2~m5は、それぞれ、上記式(1)において定義したとおりである。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
上記各式中、A及びR2~R5は、それぞれ、上記式(1)において定義したとおりである。m2'及びm3'は、各々独立して0~4の整数であり、m4'及びm5'は各々独立して0~5の整数である。
【0098】
【0099】
【0100】
上記式中、A、R2~R5、及びm2~m5は、それぞれ、上記式(1)において定義したとおりである。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
上記各式中、A、及びR2~R5は、それぞれ、上記式(1)において定義したとおりである。m2'及びm3'は、各々独立して、0~4の整数であり、m4'及びm5'は各々独立して0~5の整数である。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
上記各式中、Aは、上記式(1)において定義したとおりである。
【0118】
式(1)で表される化合物の合成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、常圧下、下記式(1-x)で表される化合物と、下記式(1-y)で表される化合物と、下記式(z1)又は下記式(z2)で表される化合物とを酸触媒下又は塩基触媒下にて重縮合反応させることによって、上記式(1)で表される化合物が得られる。上記の反応は、必要に応じて、加圧下で行われてもよい。
【0119】
【0120】
上記式(1-x)中、A、R2、R4、m2、m4、p2及びp4は、それぞれ、式(1)において定義したとおりである。上記式(1-y)中、A、R3、R5、m3、m5、p3及びp5は、それぞれ、式(1)において定義したとおりである。上記式(1-x)で表される化合物と上記式(1-y)で表される化合物は同一であってもよい。
【0121】
上記式(z1)中、R1及びnは、それぞれ、上記式(1)において定義したとおりである。上記式(z2)中、R1a、R1b及びnは、それぞれ、上記式(1-1)において定義したとおりである。
【0122】
上記の重縮合反応の具体例としては、ビス(ヒドロキシフェニル)化合物類と、対応するアルデヒド類又はケトン類とを酸触媒下又は塩基触媒下にて重縮合反応させることによって、上記式(1)で表される化合物が得られる。
【0123】
ビス(ヒドロキシフェニル)化合物類としては、特に限定されず、例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(メチルヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(ジメチルヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジクロロエチレン、ビス(ヒドロキシフェニル)、ビス(ヒドロキシフェニル)カルボニル、ビス(ヒドロキシフェニル)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、ビス(ヒドロキシフェニル)カルボニル、ビス(ジヒドロキシフェニル)カルボニル、(ヒドロキシフェニル)(ジヒドロキシフェニル)カルボニル、(ヒドロキシフェニル)(トリヒドロキシフェニル)カルボニル等が挙げられる。これらのビス(ヒドロキシフェニル)化合物類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(メチルヒドロキシフェニル)プロパンを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0124】
アルデヒド類としては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、ペンタベンズアルデヒド、ブチルメチルベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、フロロメチルベンズアルデヒド、シクロプロピルアルデヒド、シクロブチルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、シクロデシルアルデヒド、シクロウンデシルアルデヒド、シクロプロピルベンズアルデヒド、シクロブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、シクロデシルベンズアルデヒド、シクロウンデシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
【0125】
ケトン類としては、特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、アセチルメチルベンゼン、アセチルジメチルベンゼン、アセチルトリメチルベンゼン、アセチルエチルベンゼン、アセチルプロピルベンゼン、アセチルブチルベンゼン、アセチルペンタベンゼン、アセチルブチルメチルベンゼン、アセチルヒドロキシベンゼン、アセチルジヒドロキシベンゼン、アセチルフロロメチルベンゼン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル等が挙げられる。これらのケトン類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
【0126】
アルデヒド類又はケトン類としては、高い耐熱性及び高いエッチング耐性を両立するという観点から、芳香環を有するアルデヒド又は芳香族を有するケトンを用いることが好ましい。
【0127】
上記反応に用いる酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸を用いることが好ましい。酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0128】
上記反応に用いる塩基触媒については、特に限定されず、例えば、金属アルコキサイド(ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムメトキサイド、カリウムエトキサイド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキサイド等)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物等)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類炭酸水素塩、アミン類(例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、1-メチルイミダゾール等の複素環式第3級アミン)等、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)の有機塩基等が挙げられる。これらの塩基触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、金属アルコキサイド、金属水酸化物やアミン類が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。塩基触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0129】
上記反応の際には、反応溶媒を用いても良い。反応溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0130】
溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、上記反応における反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常、10~200℃の範囲である。
【0131】
本実施形態の式(1)で表される化合物を得るためには、反応温度は高い方が好ましく、具体的には60~200℃の範囲が好ましい。なお、反応方法は、特に限定されないが、例えば、原料(反応物)及び触媒を一括で仕込む方法や、原料(反応物)を触媒存在下で逐次滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130~230℃ にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、目的物である化合物を得ることができる。
【0132】
好ましい反応条件としては、上記式(z1)又は(z2)で表されるアルデヒド類又はケトン類1モルに対し、上記式(1-x)で表される化合物及び上記式(1-y)で表される化合物を1.0モル~過剰量使用し、更には酸触媒を0.001~1モル使用し、常圧で、50~150℃で20分~100時間程度反応させる条件が挙げられる。
【0133】
反応終了後、公知の方法により目的物を単離することができる。例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離させ、得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトにより、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って目的物である上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0134】
[樹脂]
本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物に由来する構成単位を有する。すなわち、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物をモノマー成分として含む。本実施形態の樹脂の具体例として、式(2)で表される構造を有する樹脂が挙げられる。
【0135】
【0136】
上記式(2)中、A、R1~R5、m2~m5、n、及びp2~p5は、それぞれ、前記式(1)において定義したとおりであり、Lは、単結合又は連結基である。
【0137】
上記連結基としては、例えば、後述する架橋反応性のある化合物由来の残基等が挙げられる。
【0138】
本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物と、架橋反応性のある化合物とを反応させることにより得られる。
【0139】
架橋反応性のある化合物としては、上記式(1)で表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものであればよく、例えば、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、カルボン酸ハライド類、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イソシアネート化合物、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられる。
【0140】
本実施形態の樹脂の具体例としては、例えば、上記式(1)で表される化合物と架橋反応性のある化合物であるアルデヒド類又はケトン類との縮合反応等により得られるノボラック化した樹脂が挙げられる。
【0141】
ここで、上記式(1)で表される化合物をノボラック化する際に用いるアルデヒド類としては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、及びフルフラールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、ホルムアルデヒドを用いることがより好ましい。アルデヒド類の使用量は、特に限定されないが、上記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.2~5モルが好ましく、より好ましくは0.5~2モルである。
【0142】
上記式(1)で表される化合物をノボラック化する際に用いるケトン類としては、特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル等が挙げられる。これらのケトン類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ノルボルナノン、トリシクロヘキサノン、トリシクロデカノン、アダマンタノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン、アセナフテンキノン、アセナフテノン、アントラキノン、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、アセトフェノン、ジアセチルベンゼン、トリアセチルベンゼン、アセトナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、ジフェニルカルボニルビフェニル、ベンゾフェノン、ジフェニルカルボニルベンゼン、トリフェニルカルボニルベンゼン、ベンゾナフトン、ジフェニルカルボニルナフタレン、フェニルカルボニルビフェニル、及びジフェニルカルボニルビフェニルからなる群より選択される1種以上を用いることがより好ましい。ケトン類の使用量は、特に限定されないが、上記式(1)で表される化合物1モルに対して、0.2~5モルが好ましく、より好ましくは0.5~2モルである。
【0143】
上記式(1)で表される化合物と、アルデヒド又はケトンとの縮合反応において、触媒を用いることもできる。ここで使用する酸触媒又は塩基触媒については、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。このような酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸が好ましい。酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0144】
但し、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等の非共役二重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類又はケトン類は必要ない。
【0145】
上記式(1)で表される化合物とアルデヒド類又はケトン類との縮合反応において、反応溶媒を用いることもできる。この重縮合における反応溶媒としては、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合溶媒等が例示される。なお、溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0146】
溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10~200℃の範囲である。なお、反応方法としては、上記式(1)で表される化合物、アルデヒド類及び/又はケトン類、並びに触媒を一括で仕込む方法や、上記式(1)で表される化合物、アルデヒド類及び/又はケトン類を触媒存在下で逐次的に滴下していく方法が挙げられる。
【0147】
重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130~230℃ にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、目的物(例えば、ノボラック化した樹脂)を得ることができる。
【0148】
なお、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物の合成反応時に得られるものでもある。上記式(1)で表される化合物の合成で用いたものと上記式(1)で表される化合物を重合する際に同じアルデヒド又はケトンを用いた場合に相当する。
【0149】
ここで、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物の単独重合体であってもよいが、他のフェノール類との共重合体であってもよい。ここで共重合可能なフェノール類としては、特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ジフェニルフェノール、ナフチルフェノール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、ブチルカテコール、メトキシフェノール、メトキシフェノール、プロピルフェノール、ピロガロール、チモール等が挙げられる。
【0150】
また、本実施形態の樹脂は、上述した他のフェノール類以外に、重合可能なモノマーと共重合させたものであってもよい。共重合モノマーとしては、特に限定されず、例えば、ナフトール、メチルナフトール、メトキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルナエン、ピネン、リモネン等が挙げられる。なお、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類との2元以上の(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(1)で表される化合物と上述した共重合モノマーとの2元以上(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類と上述した共重合モノマーとの3元以上の(例えば、3~4元系)共重合体であってもよい。
【0151】
なお、本実施形態の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、GPC測定によるポリスチレン換算で、500~30,000であることが好ましく、より好ましくは750~20,000である。また、架橋効率を高めるとともにベーク中の揮発成分を抑制する観点から、本実施形態の樹脂は、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.2~7の範囲内のものが好ましい。
【0152】
上述した式(1)で表される化合物、及び/又は式(1)で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂は、湿式プロセスの適用がより容易になる等の観点から、溶媒に対する溶解性が高いものであることが好ましい。より具体的には、これら化合物及び/又は樹脂は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)及び/又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を溶媒とする場合、当該溶媒に対する溶解度が10質量%以上であることが好ましい。ここで、PGME及び/又はPGMEAに対する溶解度は、「樹脂の質量÷(樹脂の質量+溶媒の質量)×100(質量%)」と定義される。例えば、上記式(1)で表される化合物及び/又は該化合物に由来する構成単位を有する樹脂10gがPGMEA90gに対して溶解すると評価されるのは、式(1)で表される化合物及び/又は該化合物に由来する構成単位を有する樹脂のPGMEAに対する溶解度が「10質量%以上」となる場合であり、溶解しないと評価されるのは、当該溶解度が「10質量%未満」となる場合である。
【0153】
[組成物]
本実施形態の組成物は、式(1)で表される化合物又は式(1)で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂を含有する。
【0154】
本実施形態の組成物は、本実施形態の化合物又は樹脂を含有するため、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及び平坦化特性に優れる。さらに、本実施形態の組成物は、化合物又は樹脂を含有するため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性に優れたリソグラフィー用膜を形成できる。さらに、本実施形態の組成物は、レジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを形成できる。このため、本実施形態の組成物は、リソグラフィー用膜形成に好適に用いられる。
【0155】
本実施形態の組成物は、芳香環密度が高いため屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱処理によっても着色が抑制される。このため、本実施形態の組成物は、光学部品形成にも好適に用いられる。
【0156】
本実施形態において、リソグラフィー用膜とは、フォトレジスト層と比較して大きなドライエッチング速度を有するものをいう。上記のリソグラフィー用膜としては、例えば、被加工層の段差に埋込み平坦化させるための膜、レジスト上層膜、レジスト下層膜等が挙げられる。
【0157】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、本実施形態の化合物又は樹脂以外に、必要に応じて、溶媒、架橋剤、架橋促進剤、酸発生剤、塩基性化合物、その他の成分を含んでいてもよい。以下、これらの任意成分について説明する。
【0158】
[溶媒]
本実施形態におけるリソグラフィー用膜形成組成物は、溶媒を含有してもよい。溶媒としては、本実施形態の化合物又は樹脂を溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。ここで、本実施形態の化合物又は樹脂は、上述した通り、有機溶媒に対する溶解性に優れるため、種々の有機溶媒が好適に用いられる。
【0159】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0160】
上記溶媒の中でも、安全性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、及びアニソールからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0161】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、本実施形態の化合物又は樹脂100質量部に対して、100~10,000質量部であることが好ましく、200~5,000質量部であることがより好ましく、200~1,000質量部であることがさらに好ましい。
【0162】
[架橋剤]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号や国際公開第2018/016614号に記載されたものを用いることができる。
【0163】
架橋剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、アクリレート化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物及びシアネート化合物からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、エッチング耐性向上の観点から、ベンゾオキサジン化合物がより好ましい。
【0164】
本実施形態において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の化合物又は樹脂100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは10~40質量部である。架橋剤の含有量が上記範囲内にあることにより、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0165】
[架橋促進剤]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、必要に応じて架橋反応(硬化反応)を促進させるために架橋促進剤を含有してもよい。架橋促進剤としては、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0166】
ラジカル重合開始剤としては、光によりラジカル重合を開始させる光重合開始剤であってもよく、熱によりラジカル重合を開始させる熱重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ケトン系光重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤及びアゾ系重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0167】
このようなラジカル重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、国際公開第2018/016614号に記載されたものを用いることができる。
【0168】
これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0169】
本実施形態におけるラジカル重合開始剤の含有量としては、化学量論的に必要な量であればよいが、本実施形態の化合物又は樹脂を100質量部とした場合に0.05~25質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量が0.05質量部以上である場合には、硬化が不十分となるのを防ぐことができる傾向にあり、他方、ラジカル重合開始剤の含有量が25質量部以下である場合には、室温での長期保存安定性が損なわれるのを防ぐことができる傾向にある。
【0170】
[酸発生剤]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させる等の観点から、酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれも使用することができる。酸発生剤としては、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものを用いることができる。
【0171】
リソグラフィー用膜形成組成物中の酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の化合物又は樹脂100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~40質量部である。酸発生剤の含有量が上記範囲内にあることにより、架橋反応が高められる傾向にあり、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0172】
[塩基性化合物]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0173】
塩基性化合物は、酸発生剤から微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐ役割、すなわち酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものが挙げられる。
【0174】
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物中の塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の化合物又は樹脂100質量部に対して、0.001~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部である。塩基性化合物の含有量が上記範囲内にあることにより、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0175】
[その他の添加剤]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、熱や光による硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂及び/又は化合物としては、特に限定されず、例えば、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂;ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレン等のナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレン等のビフェニル環、チオフェン、インデン等のヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられる。本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、熱及び/又は光硬化触媒、重合禁止剤、難燃剤、充填剤、カップリング剤、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0176】
[リソグラフィー用下層膜]
本実施形態におけるリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物から形成される。
【0177】
[レジストパターン形成方法]
本実施形態のレジストパターン形成方法は、基板上に、本実施形態の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、下層膜形成工程により形成した下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む。本実施形態のレジストパターン形成方法は、各種パターンの形成に用いることができ、絶縁膜パターンの形成方法であることが好ましい。
【0178】
[回路パターン形成方法]
本実施形態の回路パターン形成方法は、基板上に、本実施形態の組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、下層膜形成工程により形成した下層膜上に、中間層膜を形成する中間層膜形成工程と、中間層膜形成工程により形成した中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターン形成工程により形成したレジストパターンをマスクとして中間層膜をエッチングして中間層膜パターンを形成する中間層膜パターン形成工程と、中間層膜パターン形成工程により形成した中間層膜パターンをマスクとして下層膜をエッチングして下層膜パターンを形成する下層膜パターン形成工程と、下層膜パターン形成工程により形成した下層膜パターンをマスクとして前記基板をエッチングして基板にパターンを形成する基板パターン形成工程とを含む。
【0179】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物から形成される。その形成方法は、特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布方法、印刷法等により基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させる等して除去することで、下層膜を形成することができる。
【0180】
下層膜の形成時には、レジスト上層膜とのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークを施すことが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80~450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200~400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、30~20,000nmであることが好ましく、より好ましくは50~15,000nmである。
【0181】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合は、その下層膜上に珪素含有レジスト層、又は炭化水素からなる単層レジストを作製することが好ましく、3層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有中間層を作製し、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0182】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0183】
3層プロセス用の珪素含有中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果を有する中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としては、フェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基が導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0184】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した、反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによって中間層を形成する方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型、ネガ型のどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0185】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0186】
上記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、上記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~400nmである。
【0187】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0188】
上述した方法により形成されるレジストパターンは、下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0189】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、H2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0190】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上記の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0191】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報(特許文献9)、WO2004/066377(特許文献10)に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0192】
中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好適に用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号(特許文献11)、特開2007-226204号(特許文献12)に記載されたものを用いることができる。
【0193】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0194】
本実施形態における下層膜は、基板のエッチング耐性に優れるという特徴を有する。なお、基板としては、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等、種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50~1,000,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75~50,000nmである。
【0195】
[レジスト永久膜]
本実施形態のレジスト永久膜は、本実施形態の組成物を含む。本実施形態の組成物を塗布してなるレジスト永久膜は、必要に応じてレジストパターンを形成した後、最終製品にも残存する永久膜として好適である。永久膜の具体例としては、半導体デバイス関係では、ソルダーレジスト、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や集積回路素子と回路基板の接着層、薄型ディスプレー関連では、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルター保護膜、ブラックマトリクス、スペーサーなどが挙げられる。特に、本実施形態の組成物を含むレジスト永久膜は、耐熱性や耐湿性に優れている上に昇華成分による汚染性が少ないという非常に優れた利点も有する。特に表示材料において、重要な汚染による画質劣化の少ない高感度、高耐熱、吸湿信頼性を兼ね備えた材料となる。
【0196】
本実施形態の組成物をレジスト永久膜用途に用いる場合には、硬化剤の他、更に必要に応じてその他の樹脂、界面活性剤や染料、充填剤、架橋剤、溶解促進剤などの各種添加剤を加え、有機溶剤に溶解することにより、レジスト永久膜用組成物とすることができる。
【0197】
本実施形態の組成物は前記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調製できる。また、本実施形態の組成物が充填剤や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散又は混合して調製することができる。
【0198】
[化合物又は樹脂の精製方法]
本実施形態の化合物又は樹脂の精製方法は、本実施形態の化合物又は樹脂及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液と、酸性の水溶液とを接触させて抽出する抽出工程を含む。より詳細には、本実施形態の精製方法は、本実施形態の化合物又は樹脂を水と任意に混和しない有機溶媒に溶解させ、その溶液を酸性水溶液と接触させ抽出処理を行うことにより、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液(A)に含まれる金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相を分離して精製する。本実施形態の精製方法により、本実施形態の化合物又は樹脂中の種々の金属の含有量を著しく低減させることができる。
【0199】
本実施形態において、「水と任意に混和しない有機溶媒」とは、20℃において水に対する溶解度が50質量%未満であることをいい、生産性の観点から、25質量%未満であることが好ましい。水と任意に混和しない有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。使用する有機溶媒の量は、本実施形態の化合物又は樹脂に対して、通常1~100重量倍程度使用される。
【0200】
使用される溶媒の具体例としては、例えば、国際公開WO2015/080240号公報に記載されているものが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等が好ましく、特にシクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0201】
使用される酸性の水溶液としては、一般に知られる有機、無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択される。例えば、国際公開WO2015/080240号公報に記載されているものが挙げられる。これらの酸性の水溶液は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液が好ましく、さらに、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液が好ましく、特に蓚酸の水溶液が好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より金属を除去できると考えられる。また、ここで用いる水は、本発明の目的に沿って、金属含有量の少ないもの、例えばイオン交換水等が好適に用いられる。
【0202】
本実施形態で使用する酸性の水溶液のpHは特に制限されないが、水溶液の酸性度があまり大きくなると式(1)で表される化合物又は該化合物に由来する構成単位を有する樹脂に悪影響を及ぼすことがあり好ましくない。通常、pH範囲は0~5程度であり、より好ましくはpH0~3程度である。
【0203】
本実施形態で使用する酸性の水溶液の使用量は特に制限されないが、その量があまりに少ないと、金属除去のための抽出回数多くする必要があり、逆に水溶液の量があまりに多いと全体の液量が多くなり操作上の問題を生ずることがある。水溶液の使用量は、通常、有機溶媒に溶解した本実施形態の化合物又は樹脂の溶液に対して10~200質量%であり、好ましくは20~100質量%である。
【0204】
本実施形態では、例えば、上記のような酸性の水溶液と、本実施形態の化合物又は樹脂及び水と任意に混和しない有機溶媒を含む溶液(A)とを接触させることにより金属分を抽出する。
【0205】
抽出処理を行う際の温度は通常、20~90℃であり、好ましくは30~80℃の範囲である。抽出操作は、例えば、撹拌等により、よく混合させたあと、静置することにより行われる。これにより、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液に含まれていた金属分が水相に移行する。また本操作により、溶液の酸性度が低下し、本実施形態の化合物又は樹脂の変質を抑制することができる。
【0206】
得られる混合物は、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液相と水相に分離するのでデカンテーション等により、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液を回収する。静置する時間は特に制限されないが、静置する時間があまりに短いと有機溶媒を含む溶液相と水相との分離が悪くなり好ましくない。通常、静置する時間は1分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは30分以上である。また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0207】
酸性の水溶液を用いてこのような抽出処理を行った場合は、処理を行ったあとに、該水溶液から抽出し、回収した本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液(A)は、さらに水との抽出処理を行うことが好ましい。抽出操作は、撹拌等により、よく混合させたあと、静置することにより行われる。そして得られる溶液は、本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液相と水相に分離するのでデカンテーション等により本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液相を回収する。また、ここで用いる水は、本発明の目的に沿って、金属含有量の少ないもの、例えばイオン交換水等が好ましい。抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に制限されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0208】
こうして得られた本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液に混入する水分は減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により有機溶媒を加え、本実施形態の化合物又は樹脂の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0209】
得られた本実施形態の化合物又は樹脂と有機溶媒を含む溶液から、本実施形態の化合物又は樹脂のみ得る方法は、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【実施例】
【0210】
以下、本実施形態を合成例及び実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0211】
(炭素濃度及び酸素濃度)
有機元素分析により、ヤナコ分析工業(株)製品の「CHNコーダーMT-6」を用いて化合物又は樹脂の炭素濃度及び酸素濃度(質量%)を測定した。
【0212】
(分子量)
LC-MS分析により、Water社製品の「Acquity UPLC/MALDI-Synapt HDMS」を用いて化合物又は樹脂の分子量を測定した。
【0213】
(溶解性評価)
23℃にて、化合物又は樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に対して5質量%溶液になるよう溶解させた。その後、5℃にて30日間静置したときの溶解性を以下の基準にて評価した。
評価A:目視にて析出物なしを確認
評価C:目視にて析出物ありを確認
【0214】
(合成実施例1)BiP-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積1000mLの容器において2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(シグマ-アルドリッチ社製試薬)100g、硫酸3g、4-ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製品)27g、1-メトキシ-2-プロパノール415gを加えて、内容物を90℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。反応液を冷却・濃縮し、o-キシレン369g、酢酸ブチル123gを加え、炭酸ナトリウム水や純水にて洗浄し、その後、水酸化ナトリウム水を加えて、その水層を回収、酢酸エチル溶媒にて抽出、濃縮し、カラムクロマトによる分離後、下記式(BiP-1)で表される目的化合物(BiP-1)を20.0g得た。
得られた化合物(BiP-1)について、上記の方法により分子量を測定した結果、620であった。また、得られた化合物(BiP-1)の炭素濃度は83.2質量%であり、酸素濃度は10.3質量%であった。
得られた化合物(BiP-1)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-1)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.06~9.12(4H,O-H)、6.59~7.64(23H,Ph-H)、6.08(1H,C-H)、1.37~1.39(12H,-C(CH3)2)
【0215】
【0216】
(合成実施例2)BiP-2の合成
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-2)で表される目的化合物(BiP-2)を15g得た。
得られた化合物(BiP-2)について、上記方法により分子量を測定した結果、836であった。また、得られた化合物(BiP-2)の炭素濃度は61.7質量%であり、酸素濃度は7.7質量%であった。
得られた化合物(BiP-2)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-2)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.20~9.24(4H,O-H)、6.68~7.54(23H,Ph-H)、6.02(1H,C-H)
【0217】
【0218】
(合成実施例3)BiP-3の合成
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-3)で表される目的化合物(BiP-3)を15g得た。
得られた化合物(BiP-3)について、上記方法により分子量を測定した結果、676であった。また、得られた化合物(BiP-3)の炭素濃度は83.4質量%であり、酸素濃度は95.0質量%であった。
得られた化合物(BiP-3)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-3)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.00~9.05(4H,O-H)、6.44~7.55(19H,Ph-H)、6.12(1H,C-H)、1.96~2.02(12H,-CH3)1.29~1.37(12H,-C(CH3)2)
【0219】
【0220】
(合成実施例4)BiP-4の合成
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-4)で表される目的化合物(BiP-4)を18g得た。
得られた化合物(BiP-4)について、上記方法により分子量を測定した結果、656であった。また、得られた化合物(BiP-4)の炭素濃度は71.3質量%であり、酸素濃度は24.4質量%であった。
得られた化合物(BiP-4)について、1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-4)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.07,9.80,10.18,12.47(8H,O-H)、6.54~7.59(19H,Ph-H)、5.89(1H,C-H)
【0221】
【0222】
(合成実施例5)RBiP-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積1000mLの容器において2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(シグマ-アルドリッチ社製試薬)100g、硫酸3g、4-ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製品)27g、1-メトキシ-2-プロパノール415gを加えて、内容物を90℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。反応液を冷却・濃縮し、o-キシレン369g、酢酸ブチル123gを加え、炭酸ナトリウム水や純水にて洗浄し、その後、水酸化ナトリウム水を加えて、その水層を回収、酢酸エチル溶媒にて抽出、濃縮し、ヘプタン1000gを追加して固形物を析出、分離後、下記式(RBiP-1)で表される目的樹脂(RBiP-1)を98.0g得た。
【0223】
【化59】
(式(RBiP-1)中、Lは4-ビフェニルアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0224】
(合成実施例6)RBiP-2の合成
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いた以外は合成実施例5と同様に反応させ、下記式(RBiP-2)で表される目的樹脂(RBiP-2)を8.0g得た。
【0225】
【化60】
(式(RBiP-2)中、Lは4-ビフェニルアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0226】
(合成実施例7)RBiP-3の合成
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンを用いた以外は合成実施例5と同様に反応させ、下記式(RBiP-3)で表される目的樹脂(RBiP-3)を8.9g得た。
【0227】
【化61】
(式(RBiP-3)中、Lは4-ビフェニルアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0228】
(合成実施例8)RBiP-4の合成
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンを用いた以外は合成実施例5と同様に反応させ、下記式(RBiP-4)で表される目的樹脂(RBiP-4)を7.0g得た。
【0229】
【化62】
(式(RBiP-4)中、Lはベンズアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0230】
(合成実施例9)BiP-5の合成
4-ビフェニルアルデヒドに代えて、2-ナフトアルデヒドを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-5)で表される目的化合物(BiP-5)を1.6g得た。
得られた化合物(BiP-5)について、上記方法により分子量を測定した結果、542であった。また、得られた化合物(BiP-5)の炭素濃度は77.5質量%であり、酸素濃度は17.7質量%であった。
得られた化合物(BiP-5)について、
1H-NMR(500MHz、DMSO-d
6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-5)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.18(4H,O-H)、6.45~7.69(21H,Ph-H)、6.08(1H,C-H)、1.30~1.36(12H,-C(CH3)2)
【化63】
【0231】
(合成実施例10)RBiP-5の合成
4-ビフェニルアルデヒドに代えて、2-ナフトアルデヒドを用いた以外は合成実施例5と同様に反応させ、下記式(RBiP-5)で表される目的樹脂(RBiP-5)を11.0g得た。
【0232】
【化64】
(式(RBiP-5)中、Lは2-ナフトアルデヒド由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0233】
(合成実施例11)BiP-6の合成
4-ビフェニルアルデヒドに代えて、2,2’-ジメチルプロパナールを用いた以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(BiP-6)で表される目的化合物(BiP-6)を0.5g得た。
得られた化合物(BiP-6)について、上記方法により分子量を測定した結果、472であった。また、得られた化合物(BiP-6)の炭素濃度は73.7質量%であり、酸素濃度は20.3質量%であった。
得られた化合物(BiP-6)について、
1H-NMR(500MHz、DMSO-d
6)測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiP-6)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm):9.04(4H,O-H)、6.45~7.69(21H,Ph-H)、5.98(1H,C-H)、1.73~1.88(9H,-C(CH3))、1.32~1.38(12H,-C(CH3)2)
【化65】
【0234】
(合成実施例12)RBiP-6の合成
4-ビフェニルアルデヒドに代えて、2,2’-ジメチルプロパナールを用いた以外は合成実施例5と同様に反応させ、下記式(RBiP-6)で表される目的樹脂(RBiP-6)を5.5g得た。
【0235】
【化66】
(式(RBiP-6)中、Lは2,2’-ジメチルプロパナール由来の残基を表し、qは繰り返し単位数を表す。)
【0236】
(合成例1)
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備え、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の分子量は、数平均分子量(Mn):562、重量平均分子量(Mw):1168、分散度(Mw/Mn):2.08であった。
【0237】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、前記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。
得られた樹脂(CR-1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:2.51であった。また、得られた樹脂(CR-1)の炭素濃度は89.1質量%、酸素濃度は4.5質量%であった。なお、ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂及び樹脂(CR-1)のMn、Mw及びMw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、以下の測定条件にてポリスチレン換算にて求めた。
装置:Shodex GPC-101型(昭和電工株式会社製品)
カラム:KF-80M×3
溶離液:THF 1mL/min
温度:40℃
【0238】
[実施例1~14、比較例1]
上記のBiP-1~BiP-6、RBiP-1~RBiP-6及びCR-1につき、溶解度試験を行った。結果を表1に示す。また、表1に示す組成のリソグラフィー用下層膜形成材料(リソグラフィー用下層膜形成組成物)を各々調製した。次に、これらのリソグラフィー用下層膜形成材料をシリコン基板上に回転塗布し、その後、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークして、膜厚200nmの下層膜を各々作製した。酸発生剤、架橋剤及び有機溶媒については以下のものを用いた。
酸発生剤:みどり化学株式会社製品「ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート」(表中、「DTDPI」と記載。)
架橋剤:三和ケミカル株式会社製品「ニカラックMX270」(表中、「ニカラック」と記載。)
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(表中、「PGMEA」と記載。)
【0239】
得られた各下層膜について、下記に示す条件でエッチング試験を行い、エッチング耐性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0240】
[エッチング試験]
エッチング装置:サムコインターナショナル社製品「RIE-10NR」
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
[エッチング耐性の評価]
エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。
まず、実施例1において用いる化合物(BiP-1)に代えてフェノールノボラック樹脂(群栄化学社製 PSM4357)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、フェノールノボラック樹脂を含む下層膜を作製した。そして、このフェノールノボラック樹脂を含む下層膜について上記エッチング試験を行い、そのときのエッチングレート(エッチング速度)を測定した。次に、各実施例及び比較例の下層膜について上記エッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。そして、フェノールノボラック樹脂を含む下層膜のエッチングレートを基準として、以下の評価基準で各実施例及び比較例のエッチング耐性を評価した。
[評価基準]
A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%未満
B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%~+5%
C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、+5%超
【0241】
【0242】
[実施例15~28]
上記の各実施例1~14で調製したリソグラフィー用下層膜形成材料の各溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚70nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(11)で表される化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。下記式(11)で表される化合物は、2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて得た。
【0243】
【0244】
前記式(11)中の数字は、各構成単位の比率を示している。
【0245】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0246】
得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの欠陥を観察した結果を、表2に示す。表中、「良好」とは、形成されたレジストパターンに大きな欠陥が見られなかったことを示し、「不良」とは、形成されたレジストパターンに大きな欠陥が見られたことを示す。
【0247】
[比較例2]
下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例15と同様にして、フォトレジスト層をSiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。結果を表2に示す。
【0248】
【0249】
表1から明らかなように、本実施形態の化合物又は樹脂であるBiP-1~BiP-6、RBiP-1~RBiP-6のいずれかを用いた実施例1~14は、溶解度及びエッチング耐性のいずれの点も良好であることが確認された。一方、CR-1(フェノール変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂)を用いた比較例1では、エッチング耐性が不良であった。
【0250】
また、表2から明らかなように、本実施形態の化合物又は樹脂であるBiP-1~BiP-6、RBiP-1~RBiP-6のいずれかを用いた実施例15~28では、現像後のレジストパターン形状が良好であり、大きな欠陥が見られないことが確認された。更に、各実施例15~28は、下層膜を形成していない比較例2と比較して、解像性及び感度のいずれにおいても有意に優れていることが確認された。ここで、現像後のレジストパターン形状が良好であることは、実施例15~28において用いたリソグラフィー用下層膜形成材料が、レジスト材料(フォトレジスト材料等)との密着性がよいことを示している。
【0251】
[実施例29~42]
各実施例1~14のリソグラフィー用下層膜形成材料の溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚80nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに、この中間層膜上に、上記のArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材料としては、特開2007-226170号公報の<合成例1>に記載の珪素原子含有ポリマーを用いた。次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、55nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。その後、サムコインターナショナル社製 RIE-10NRを用いて、得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO2膜のドライエッチング加工とを順次行った。
【0252】
各々のエッチング条件は、下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:1min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:8:2(sccm)
レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
レジスト下層膜パターンのSiO2膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:C5F12ガス流量:C2F6ガス流量:O2ガス流量
=50:4:3:1(sccm)
【0253】
[評価]
上記のようにして得られたパターン断面(すなわち、エッチング後のSiO2膜の形状)を、日立製作所株式会社製品の「電子顕微鏡(S-4800)」を用いて観察した。観察結果を表3に示す。表中、「良好」とは、形成されたパターン断面に大きな欠陥が見られなかったことを示し、「不良」とは、形成されたパターン断面に大きな欠陥が見られたことを示す。
【0254】
【0255】
[実施例43~48]
上記の各実施例1~6で調製したリソグラフィー用下層膜形成材料の溶液と同組成の光学部品形成組成物溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、260℃で300秒間ベークすることにより、膜厚100nmの光学部品形成膜を形成した。次いで、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製 真空紫外域多入射角分光エリプソメーター(VUV-VASE)を用いて、633nmの波長における屈折率及び透明性試験を行い、以下の基準に従って屈折率及び透明性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0256】
[屈折率の評価基準]
A:屈折率が1.60以上
C:屈折率が1.60未満
【0257】
[透明性の評価基準]
A:吸光定数が0.03未満
C:吸光定数が0.03以上
【0258】
【0259】
[実施例49~52、比較例3]
(耐熱性及びレジスト性能)
BiP-1、BiP-2、RBiP-1、RBiP-2、CR-1を用いて、耐熱性試験及びレジスト性能評価を行った結果を表5に示す。
【0260】
(レジスト組成物の調製)
上記で合成した各化合物あるいは樹脂を用いて、表5に示す配合でレジスト組成物を調製した。なお、表5中のレジスト組成物の各成分のうち、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)及び溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤(C)
P-1:トリフェニルベンゼンスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株))
酸拡散制御剤(E)
Q-1:トリオクチルアミン(東京化成工業(株))
溶媒
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【0261】
(レジスト組成物のレジスト性能の評価方法)
均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(ELS-7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S-4800)により観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性を評価した。
表中、「良好」とは、レジストパターン形状が矩形を形成し、欠陥が見られないことを示し、「不良」とは、パターンが矩形を形成しないか、欠陥が見られたことを示す。
【0262】
【0263】
表5から明らかなように、実施例49~実施例52で用いた化合物あるいは樹脂は、耐熱性が良好であるが、比較例3で用いた化合物は、耐熱性に劣ることが確認できた。
【0264】
また、レジストパターン評価については、実施例49~実施例52では50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、良好なレジストパターンを得た。一方、比較例3では良好なレジストパターンを得ることはできなかった。
【0265】
このように本発明の要件を満たす樹脂は比較化合物(CR-1)に比べて、耐熱性が高く、また良好なレジストパターン形状を付与できる。前記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した樹脂以外についても同様の効果を示す。
【0266】
[実施例53~56、比較例4]
(感放射線性組成物の調製)
表6記載の成分を調合し、均一溶液としたのち、得られた均一溶液を、孔径0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターで濾過して、感放射線性組成物を調製した。調製した各々の感放射線性組成物について以下の評価を行った。
【0267】
なお、比較例4におけるレジスト基材としては、以下のものを用いた。
PHS-1:ポリヒドロキシスチレン Mw=8000(シグマ-アルドリッチ社)
光活性化合物(B)としては、以下のものを用いた。
B-1:下記化学構造式(G)のナフトキノンジアジド系感光剤(4NT-300、東洋合成工業(株))
【化68】
溶媒としては、以下のものを用いた。
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【0268】
【0269】
(感放射線性組成物のレジスト性能の評価)
上記で得られた感放射線性組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ200nmのレジスト膜を形成した。該レジスト膜に対して、紫外線露光装置(ミカサ製マスクアライナMA-10)を用いて紫外線を露光した。紫外線ランプは超高圧水銀ランプ(相対強度比はg線:h線:i線:j線=100:80:90:60)を使用した。照射後に、レジスト膜を、110℃で90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄し、乾燥して、5μmのポジ型のレジストパターンを形成した。
【0270】
形成されたレジストパターンにおいて、得られたラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S-4800)により観察した。ラインエッジラフネスはパターンの凹凸が50nm未満を良好とした。
【0271】
実施例53~実施例56における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。また、そのパターンのラフネスも小さく良好であった。
【0272】
一方、比較例4における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。しかしながら、そのパターンのラフネスは大きく不良であった。
【0273】
上記のように、実施例53~実施例56における感放射線性組成物は、比較例4における感放射線性組成物に比べて、ラフネスが小さく、かつ良好な形状のレジストパターンを形成することができることがわかった。上記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した以外の感放射線性組成物も同様の効果を示す。
【0274】
合成実施例1~合成実施例4で得られた化合物あるいは樹脂は、比較的に低分子量で低粘度であることから、これを用いたリソグラフィー用下層膜形成材料は埋め込み特性や膜表面の平坦性が比較的に有利に高められ得る。また、熱分解温度はいずれも150℃以上(評価A)であり、高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用することができる。
【0275】
(実施例57) BiP-1の酸による精製
1000mL容量の四つ口フラスコ(底抜き型)に、合成実施例1で得られたBiP‐1をPGMEAに溶解させた溶液(10質量%)を150g仕込み、攪拌しながら80℃まで加熱した。次いで、蓚酸水溶液(pH1.3)37.5gを加え、5分間攪拌後、30分静置した。これにより油相と水相に分離したので、水相を除去した。この操作を1回繰り返した後、得られた油相に、超純水37.5gを仕込み、5分間攪拌後、30分静置し、水相を除去した。この操作を3回繰り返した後、80℃に加熱しながらフラスコ内を200hPa以下に減圧することで、残留水分及びPGMEAを濃縮留去した。その後、ELグレードのPGMEA(関東化学社製試薬)で希釈し、10質量%に濃度調整を行うことにより、金属含有量の低減されたBiP‐1のPGMEA溶液を得た。
【0276】
(比較例5) BiP-1の超純水による精製
蓚酸水溶液の代わりに、超純水を用いる以外は実施例57と同様に実施し、10質量%に濃度調整を行うことにより、BiP‐1のPGMEA溶液を得た。
【0277】
処理前のBiP-1の10質量%PGMEA溶液、実施例57及び比較例5において得られた溶液について、各種金属含有量をICP-MSによって測定した。測定結果を表7に示す。
【0278】
【産業上の利用可能性】
【0279】
本発明の化合物及び樹脂は、耐熱性が高く、溶媒溶解性も高く、湿式プロセスが適用可能である。そのため、本発明の化合物又は樹脂を用いるリソグラフィー用膜形成材料及びそのリソグラフィー用膜はこれらの性能が要求される各種用途において、広く且つ有効に利用可能である。したがって、本発明は、例えば、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載されるプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤、半導体用のレジスト用樹脂、下層膜形成用樹脂等において、広く且つ有効に利用可能である。特に、本発明は、リソグラフィー用膜の分野において、特に有効に利用可能である。