IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイ・エム・エスの特許一覧

<>
  • 特許-拭き取りチップ 図1
  • 特許-拭き取りチップ 図2
  • 特許-拭き取りチップ 図3
  • 特許-拭き取りチップ 図4
  • 特許-拭き取りチップ 図5
  • 特許-拭き取りチップ 図6
  • 特許-拭き取りチップ 図7
  • 特許-拭き取りチップ 図8
  • 特許-拭き取りチップ 図9
  • 特許-拭き取りチップ 図10
  • 特許-拭き取りチップ 図11
  • 特許-拭き取りチップ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】拭き取りチップ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/16 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61M39/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020524428
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009511
(87)【国際公開番号】W WO2020195689
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019054556
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】浮田 純次
(72)【発明者】
【氏名】上原 康賢
(72)【発明者】
【氏名】和田 諒平
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-100893(JP,A)
【文献】米国特許第06641551(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第108743996(CN,A)
【文献】特開平10-108832(JP,A)
【文献】特開2017-099738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322075(US,A1)
【文献】特表2012-522593(JP,A)
【文献】実開昭53-091288(JP,U)
【文献】特開平10-113328(JP,A)
【文献】特開2006-320430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃するために使用される拭き取りチップであって、
前記拭き取りチップは、中空の筒状体と、前記筒状体に設けられた拭き取り綿とを備え、
前記拭き取り綿は、前記筒状体の先端の開口を覆う薄膜部と、前記薄膜部から延び、前記先端から所定長さにわたって前記筒状体の外周面を覆う外周部とを構成しており、
前記薄膜部は前記オス部材によって貫通可能であり、且つ、前記筒状体は前記オス部材と前記外筒との間の隙間に挿入可能であることを特徴とする拭き取りチップ。
【請求項2】
前記薄膜部は、前記オス部材によって貫通され且つ前記筒状体内へ折り曲げられるように構成されている請求項に記載の拭き取りチップ。
【請求項3】
筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃するために使用される拭き取りチップであって、
前記拭き取りチップは、中空の筒状体と、前記筒状体に設けられた拭き取り綿とを備え、
前記拭き取り綿は、前記筒状体の先端の開口を覆う薄膜部と、前記薄膜部から延び、前記先端から所定長さにわたって前記筒状体の外周面を覆う外周部とを構成しており、
前記薄膜部は、前記オス部材によって貫通され且つ前記筒状体内へ折り曲げられるように構成されていることを特徴とする拭き取りチップ。
【請求項4】
前記拭き取り綿が前記筒状体の両端に設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項5】
前記拭き取り綿が前記筒状体の一端のみに設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項6】
前記拭き取り綿に洗浄液が含浸されている請求項1~のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項7】
前記薄膜部を貫通するスリットが設けられている請求項1~のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項8】
前記筒状体内に詰め綿が詰められている請求項1~のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項9】
棒状のロッドを備え、
前記ロッドの端面から、前記ロッドの長手方向に沿って所定長さの孔が設けられており、
前記ロッドのうち前記孔が設けられた部分が前記筒状体である請求項1~3及びのいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項10】
一端に前記拭き取り綿が設けられた前記筒状体を備え、他端にハンドルを備える請求項1~3及びのいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項11】
前記外周部の外径は、前記雌ネジの内径より大きい請求項10のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項12】
前記筒状体の外径は、前記雌ネジの内径と同じかこれより小さい請求項11のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【請求項13】
前記筒状体の内径は、前記オス部材の外周面の最大外径と同じかこれより大きい請求項12のいずれか一項に記載の拭き取りチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経腸栄養法に好ましく用いられるオスコネクタを清掃するための拭き取りチップに関する。
【背景技術】
【0002】
食事を口から摂れなくなった患者に栄養剤や薬剤等を含む液状物を投与する方法として経腸栄養法が知られている。経腸栄養法では、カテーテルを体外から消化管(例えば胃)内に挿入した状態で患者に留置する。カテーテルとしては、患者の鼻から挿入する経鼻カテーテルや、患者の腹に形成された胃ろうに挿入するPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)カテーテル等が知られている。カテーテルを介して栄養剤、流動食(一般に「経腸栄養剤」と呼ばれる)、又は薬剤などの液状物が患者に投与される。液状物を貯留した容器と、患者に留置されたカテーテル(経鼻カテーテル、PEGカテーテルなど)とが接続される。異なる部材を接続するために、オスコネクタとメスコネクタとからなる接続具が用いられる。
【0003】
この接続具として、図11A及び図11Bに示すオスコネクタ910及び図12A及び図12Bに示すメスコネクタ920が使用される。
【0004】
図11A及び図11Bのオスコネクタ910は、筒形状のオス部材911と、オス部材911を取り囲む外筒913とを有する。オス部材911と外筒913とは、オス部材911の基端部から半径方向に沿ってフランジ状に突出した底板914を介して連結されている。オス部材911の外周面912は、先端に近づくにしたがって外径が小さくなるテーパ面(いわゆるオステーパ面)である。オス部材911には、その長手方向に沿ってオス部材911を貫通する流路917が設けられている。外筒913のオス部材911に対向する内周面には雌ネジ915が設けられている。雌ネジ915は、右ネジである。
【0005】
図12A及び図12Bのメスコネクタ920は、中空円筒形状の管状部(メス部材)921を有する。管状部921の内周面922は、先端に近づくにしたがって内径が大きくなるテーパ面(いわゆるメステーパ面)である。管状部921の外周面には螺状突起(雄ネジ)925が設けられている。
【0006】
オスコネクタ910とメスコネクタ920とは、オス部材911を管状部921に挿入し、且つ、雌ネジ915と螺状突起925とを螺合させることにより接続される。オス部材911の外周面912と管状部921の内周面922とは、径及びテーパ角度が一致するテーパ面であるから、両者は液密な面接触をする。
【0007】
経腸栄養法では、液状物の流れ方向に関して上流側(容器側)のコネクタとしてメスコネクタ920が、下流側(患者側)のコネクタとしてオスコネクタ90が、それぞれ使用される。
【0008】
オスコネクタ910では、外筒913がオス部材911を取り囲み、外筒913の内周面には雌ネジ915が設けられている。従って、経腸栄養法を行った後、オス部材911と外筒913との間の隙間916内(例えば雌ネジ915の谷内)に液状物(経腸栄養剤)が残留しやすい。
【0009】
オスコネクタ910が患者に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられている場合には、オスコネクタ910は当該カテーテルとともに患者に長期にわたって留置される。オスコネクタ910が、液状物が残留したままで患者に留置され続けると、オスコネクタ910は不衛生状態に至りうる。また、オスコネクタ910上で液状物が乾燥して固化した固化物は、オスコネクタ910とメスコネクタ920との再接続を妨げる。従って、オスコネクタ910を清浄に清掃することが望まれる。
【0010】
特許文献1には、オスコネクタ910を清掃するための拭き取りチップが記載されている。拭き取りチップは、吸水性を有する筒状部を備える。筒状部を、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入する。隙間内に残留した液状物は、筒状部に吸収され拭き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2017-099738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には、筒状部は、ウレタンやポリビニルアルコールなどの発泡体や不織布からなり、プレス成型やトランスファー成型などにより製造しうると記載されている。しかしながら、上記材料の発泡体又は不織布を所望する強度の筒状部に成型することは困難である。筒状部が柔らかすぎると、筒状部は、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入すると容易に変形してしまう。このため、筒状部を底板914に達するほどに深く挿入することができず、底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去することが困難である。一方、筒状部が硬すぎると、筒状部はオスコネクタ910に応じて変形できない。このため、例えば雌ネジ915の溝内や底板914近傍の隅に付着した液状物を拭き取り除去することが困難である。このように、従来の拭き取りチップは、オスコネクタ910に付着する液状物を残らず拭き取り除去することができないという課題を有している。
【0013】
本発明は、オス部材を取り囲むように雌ネジが設けられたオスコネクタを、清浄に清掃することが可能な拭き取りチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の拭き取りチップは、中空の筒状体と、前記筒状体に設けられた拭き取り綿とを備える。前記拭き取り綿は、前記筒状体の先端の開口を覆う薄膜部と、前記薄膜部から延び、前記先端から所定長さにわたって前記筒状体の外周面を覆う外周部とを構成している。
【発明の効果】
【0015】
筒状体は、拭き取り綿をオス部材と外筒との間の隙間に深く挿入することを可能にする。筒状体とオスコネクタとの間には拭き取り綿が介在する。このため、本発明によれば、オス部材を取り囲むように雌ネジが設けられたオスコネクタを清浄に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップの斜視図である。図1Bは、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップの断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する一工程を示した断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する次の一工程を示した断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する次の一工程を示した断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップを用いてオスコネクタを清掃する次の一工程を示した断面図である。
図6図6Aは、本発明の実施形態1にかかる別の拭き取りチップの斜視図である。図6Bは、図6Aの拭き取りチップの断面図である。
図7図7Aは、本発明の実施形態2にかかる拭き取りチップの部分拡大斜視図である。図7Bは、本発明の実施形態2にかかる拭き取りチップの部分拡大断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態3にかかる拭き取りチップの断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態4にかかる拭き取りチップの断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態5にかかる拭き取りチップの断面図である。
図11図11Aは、経腸栄養法で患者側コネクタとして使用されるオスコネクタの斜視図である。図11Bは、当該オスコネクタの中心軸を含む面に沿った断面図である。
図12図12Aは、経腸栄養法で容器側コネクタとして使用されるメスコネクタの斜視図である。図12Bは、当該メスコネクタの中心軸を含む面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記の本発明の拭き取りチップにおいて、前記拭き取り綿が前記筒状体の両端に設けられていてもよい。かかる態様によれば、例えば両端の拭き取り綿を順次使用することによりオスコネクタを清浄に清掃することができる。
【0018】
あるいは、前記拭き取り綿が前記筒状体の一端のみに設けられていてもよい。かかる態様は、使用者に本発明の拭き取りチップを使い捨てするように仕向けるのに有利である。
【0019】
前記拭き取り綿に洗浄液が含浸されていてもよい。かかる態様は、オスコネクタを清浄に清掃するのに有利である。
【0020】
前記薄膜部を貫通するスリットが設けられていてもよい。かかる態様は、第1に、オス部材が薄膜部を突き破るのを容易にし、第2に、オス部材の外周面をむらなく拭き取り清掃するのに有利である。
【0021】
前記筒状体内に詰め綿が詰められていてもよい。かかる態様は、オス部材の先端に付着した液状物を拭き取り除去するのに有利である。
【0022】
本発明の拭き取りチップは、棒状のロッドを備えていてもよい。前記ロッドの端面から、前記ロッドの長手方向に沿って所定長さの孔が設けられていてもよい。前記ロッドのうち前記孔が設けられた部分が前記筒状体であってもよい。ロッドの筒状体を除く部分は、中実であり、比較的高強度である。このロッドを備えた拭き取りチップは、清掃作業を効率よく行うのに有利である。
【0023】
本発明の拭き取りチップは、一端に前記拭き取り綿が設けられた前記筒状体を備え、他端にハンドルを備えていてもよい。かかる態様は、清掃作業効率の向上と、拭き取り綿の清潔性の確保とに有利である。
【0024】
本発明の拭き取りチップは、筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内周面に設けられた雌ネジとを備えたオスコネクタを拭き取り清掃するために使用されてもよい。かかる態様によれば、本発明の拭き取りチップを用いて、経腸栄養法で患者側コネクタとして使用されるオスコネクタを清掃することができる。
【0025】
前記薄膜部は前記オス部材によって貫通可能であってもよい。前記筒状体は前記オス部材と前記外筒との間の隙間に挿入可能であってもよい。かかる態様によれば、オス部材の先端や、隙間を規定するオス部材及び筒状体の面を拭き取り清掃することができる。
【0026】
本発明の拭き取りチップは、前記薄膜部が、前記オス部材によって貫通され且つ前記筒状体内へ折り曲げられるように構成されていてもよい。かかる態様によれば、折り曲げられた薄膜部が、オス部材の外周面に付着した液状物を拭き取り除去する。
【0027】
前記外周部の外径は、前記雌ネジの内径より大きくてもよい。かかる態様は、雌ネジの溝内に付着した液状物を拭き取り除去するのに有利である。
【0028】
前記筒状体の外径は、前記雌ネジの内径と同じかこれより小さくてもよい。かかる態様によれば、拭き取りチップを、オス部材と外筒との間の隙間に深く挿入することができる。これは、オスコネクタを清浄に清掃するのに有利である。
【0029】
前記筒状体の内径は、前記オス部材の外周面の最大外径と同じかこれより大きくてもよい。かかる態様は、以下の点で有利である。第1に、拭き取りチップを、オス部材と外筒との間の隙間に深く挿入することができる。これは、オスコネクタを清浄に清掃するのに有利である。第2に、オス部材によって破られた薄膜部をオス部材と筒状体との間に確実に介在させることができる。これは、筒状体がオス部材の外周面を傷付けるのを防止するのに有利である。
【0030】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0031】
(実施形態1)
図1Aは、本発明の実施形態1にかかる拭き取りチップ1の斜視図である。図1Bは、拭き取りチップ1の断面図である。拭き取りチップ1は、まっすぐに延びた細長い棒状の筒状体(ロッド)10と、筒状体10の両端に設けられた拭き取り綿(わた)20とを備える。
【0032】
筒状体10は、筒状体10の長手方向に沿って延びた孔11が筒状体10を貫通した、中空の筒形状を有する。孔11は、筒状体10の両端をつなぐ貫通孔であり、筒状体1の両端の開口を介して外界と連通している。筒状体10の外周面及び内周面はいずれも円形の断面形状を有する。筒状体10の内径及び外径は、筒状体10の長手方向において一定である。筒状体10は、使用者が指でつまんだり、曲げ力やねじり力を加えたりした程度では実質的に変形しない程度の強度を有する。筒状体10の材料は、制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、スチレンエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンスチレンブロック共重合体、ポリアセタール、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができ、これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。筒状体10は、上記樹脂材料を射出成形することにより全体を一部品として一体的に製造されることが好ましい。
【0033】
拭き取り綿20は、繊維が絡まり合った綿(わた)状物である。拭き取り綿20の材料は、制限はないが、例えば木綿、レーヨン等の吸水性を有する材料を用いることができ、特に脱脂綿を好ましく用いることができる。拭き取り綿20は、筒状体10の先端の開口を覆う薄膜状の薄膜部21と、薄膜部21から延びた外周部23とを構成する。外周部23は、筒状体10の先端から所定長さにわたって筒状体10の外周面を覆う。拭き取り綿20は、薄膜部21と外周部23とが連続的に形成されるように、筒状体10の端部に設けられている。
【0034】
拭き取り綿20を筒状体10に取り付ける方法は制限はなく、例えば綿棒の製造方法と概略同じであってもよい。即ち、所定の大きさの綿状物を筒状体10の先端に、筒状体10の開口を塞ぐように押し当て、筒状体10を回転させて綿状物を筒状体10の外周面に巻き付ける。PVA(ポリビニルアルコール)等の接着剤を用いて、拭き取り綿20を筒状体10にしっかりと固定してもよい。接着剤は、外周部23の一部(例えば、外周部23のうち、筒状体10の先端から最も遠い部分)のみに付与することが好ましい。接着剤が付与された箇所を除いて、拭き取り綿20は柔らかで弾力性を有している。
【0035】
拭き取りチップ1の使用方法を説明する。
【0036】
拭き取りチップ1は、図2に示すオスコネクタ90を清掃するために使用することができる。オスコネクタ90は、図11A及び図11Bのオスコネクタ910と同様に、経腸栄養法における患者側コネクタである。オスコネクタ90を構成する要素のうち、図11A及び図11Bのオスコネクタ910を構成する要素と同じ要素には、図11A及び図11Bと同じ符号が付してあり、それらについての説明を省略する。オスコネクタ90は、オス部材911の流路917と連通する中空の基端部98を備える。基端部98に、柔軟なチューブ99が挿入され接続される。チューブ99は、患者に留置されたカテーテル(経鼻カテーテル、PEGカテーテルなど)であってもよい。あるいは、チューブ99は、当該カテーテルに接続されたチューブであってもよい。カテーテルは、患者の消化管(例えば胃)内に挿入されている。
【0037】
経腸栄養法を行う場合、オスコネクタ90に、メスコネクタ(図12A及び図12B参照)を接続して、これらを介して患者に液状物(例えば経腸栄養剤)を投与する。その後、メスコネクタをオスコネクタ90から分離する。上述したように、分離後のオスコネクタ90には液状物(図示せず)が付着している。図2のオスコネクタ90は、この状態にある。
【0038】
最初に、図2に示すように、オスコネクタ90に、拭き取りチップ1の先端の薄膜部21を対向させる。作業者は、筒状体10の露出した外周面を把持することができる。
【0039】
次に、図3に示すように、オスコネクタ90のオス部材911の先端に、拭き取りチップ1の先端の薄膜部21を接触させる。拭き取りチップ1を、オス部材911と略同軸に位置合わせする。そして、拭き取りチップ1をオスコネクタ90に押し付ける。
【0040】
図4に示すように、筒状体10を、オス部材911と外筒913との間の隙間916に挿入する。薄膜部21はオス部材911の先端に押し付けられる。薄膜部21は、拭き取り綿20からなる薄膜であるから、オス部材911によって比較的容易に突き破られる。オス部材911は、薄膜部21を貫通し、筒状体10の開口を通って孔11内に進入する。破られた薄膜部21は、オス部材911と筒状体10との間に挟まれるように筒状体10の孔11内へ折り曲げられる。
【0041】
オスコネクタ90に対して拭き取りチップ1を、拭き取りチップ1側から見て時計回り方向に回転させる。拭き取り綿20の外周部23が、オスコネクタ90の雌ネジ915に沿って移動する。拭き取りチップ1に回転力を加えても、筒状体10は実質的に変形しない。拭き取りチップ1が回転するのにしたがって、拭き取りチップ1はオスコネクタ90の隙間916に更に深く進入(前進)していく。そして、ついに図5に示すように、拭き取りチップ1の先端がオスコネクタ90の底板914に接触する。作業者は、拭き取りチップ1を回転させるのに必要な回転力が大きくなることによって、拭き取りチップ1の先端が底板914に接触したことを認識することができる。
【0042】
その後、オスコネクタ90に対して拭き取りチップ1を、上記とは逆方向(反時計回り方向)に回転させる。拭き取り綿20の外周部23が、オスコネクタ90の雌ネジ915に沿って移動する。拭き取りチップ1が回転するのにしたがって、筒状体10はオスコネクタ90の隙間916から徐々に後退する。そして、拭き取りチップ1をオスコネクタ90から分離する。使用済みの拭き取りチップ1は廃棄される。
【0043】
上記のように拭き取りチップ1をオスコネクタ90に挿入し、その後、オスコネクタ90から抜き取ることによって、オスコネクタ90に付着していた液状物を拭き取り綿20で拭き取り清掃することができる。液状物は、拭き取り綿20に吸い込まれ、拭き取り綿20に保持された状態で、オスコネクタ90から除去される。液状物に含まれる固形物も、液状物とともに拭き取り綿20によって拭き取られ除去される。
【0044】
上述した従来の拭き取りチップは、オスコネクタの隙間916に挿入される筒状部の全体が吸水性を有する材料で構成される。したがって、所望する強度を有する筒状部を製造することは困難である。筒状部が柔らかすぎても硬すぎても、液状物を残らず拭き取り除去することはできない。
【0045】
これに対して、本実施形態1の拭き取りチップ1は、中空の筒状体10に拭き取り綿20が設けられている。
【0046】
芯としての筒状体10を、所望する強度を有する材料で構成することができる。これにより、拭き取りチップ1をオスコネクタ90に対して回転させながら前進及び後退させても、筒状体10は実質的に変形しない。筒状体10に設けられた拭き取り綿20を、隙間916内に、底板914に当接するまで挿入することは容易である。
【0047】
拭き取り綿20は、拭き取り綿20が接触するオスコネクタ90の表面形状に応じて容易に変形できる。この拭き取り綿20が、筒状体10の開口を覆う薄膜部21から、筒状体10の外周面を覆う外周部23へ連続的に延びている。オスコネクタ90に対して拭き取りチップ1を回転させながら前進及び後退させる過程で、拭き取り綿20の外周部23が、外筒913の内周面に設けられた雌ネジ915を拭き取り清掃する。外周部23は、雌ネジ915のネジ山に応じて変形し、雌ネジ915の溝に入り込んで、溝に付着した液状物を拭き取る。筒状体10の円形の先端を覆う拭き取り綿20は、底板914や、底板914と外筒913との境界の隅、底板914とオス部材911との境界の隅に付着した液状物を拭き取る。
【0048】
拭き取り綿20の薄膜部21は、初期状態では筒状体10の開口を覆っている。オス部材911が薄膜部21を貫通する過程で(図4参照)、薄膜部21が、オス部材911の先端に付着した液状物を拭き取る。従来の拭き取りチップでオス部材911の先端を清掃するためには、筒状部を隙間916に挿入する前に吸水性を有する筒状部の先端をオス部材911の先端に意識して接触させる必要がある。これを忘れると、オス部材911の先端の液状物を拭き取ることができない。これに対して、本実施形態1では、単に拭き取りチップ1をオスコネクタ90に向かって押し込むだけで、薄膜部21がオス部材911の先端を拭き取り清掃する。
【0049】
オス部材911によって貫通された薄膜部21は、筒状体10の孔11内へ折り曲げられ、オス部材911と筒状体10との間に挟まれる。拭き取りチップ1がオスコネクタ90に対して挿抜されるとき、薄膜部21はオス部材911の外周面912上を移動して外周面912に付着した液状物を拭き取る。
【0050】
このように、本実施形態1では、拭き取りチップ1に必要な強度は、筒状体10によって確保されている。拭き取りチップ1を用いたオスコネクタ90の清掃過程では、筒状体10とオスコネクタ90との間に拭き取り綿20が常に介在している。拭き取りチップ1をオスコネクタ90に対して挿抜すると、拭き取り綿20はオスコネクタ90に接触しながら移動する。これにより、オスコネクタ90に付着する液状物を残らず拭き取り除去することができる。拭き取りチップ1は、オスコネクタ90を清浄に清掃するのに有利である。
【0051】
使用済みの拭き取りチップ1では薄膜部21が破られている。薄膜部21を見ることで、未使用か使用済みかを容易に判別できる。使用済みの拭き取りチップ1を誤って再使用してしまう可能性は低い。この点でも、拭き取りチップ1は、オスコネクタ90を清浄に清掃するのに有利である。
【0052】
筒状体10は、単純な中空の円筒形状を有する。拭き取り綿20は、綿棒と概略同じ要領で筒状体10の端部に巻き付けることができる。このため、拭き取りチップ1は、構造が簡単で、製造が容易である。拭き取りチップ1は、低コストで大量に製造することが可能である。
【0053】
オスコネクタ90を清掃する前(未使用状態)の拭き取りチップ1の外周部23の外径D20図1B参照)は、オスコネクタ90の雌ネジ915の内径より大きいことが好ましい。外周部23を、雌ネジ915の溝内に入り込ませることができるからである。外周部23の外径D20が雌ネジ915の内径以下であると、雌ネジ915の溝内の液状物を拭き取り除去する能力が低下する。具体的には、外径D20は、D20≧8.55mmを満足することが好ましい。外周部23の外径D20の上限は、限定されないが、D20≦12mmを満足することが好ましい。外径D20が大きすぎると、拭き取りチップ1を、その先端が底板914に当接するまで隙間916に挿入することが困難になるので、特に底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。
【0054】
筒状体10の長手方向に沿った外周部23の長さL20図1B参照)は、オスコネクタ90の隙間916の深さ(底板914から外筒913先端までの距離)と同じかこれより大きいことが好ましい。外周部23の長さL20がこれより短いと、雌ネジ915の溝内及び底板914に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。具体的には、長さL20は、L20≧6.82mmを満足することが好ましい。
【0055】
筒状体10の外径D10図1B参照)は、オスコネクタ90の雌ネジ915の内径と同じかこれより小さいことが好ましく、雌ネジ915の内径より小さいことがより好ましい。筒状体10の外径D10が雌ネジ915の内径より大きいと、拭き取りチップ1をオスコネクタ90の隙間916に挿入することができないので、拭き取りチップ1でオスコネクタ90を清掃することができない。但し、筒状体10の外径D10が、雌ネジ915の内径に比べて小さすぎると、外周部23を構成する拭き取り綿20を雌ネジ915の溝内に入り込ませにくくなるので、雌ネジ915の溝内の液状物を拭き取り除去する能力が低下する。
【0056】
筒状体10の内径D11図1B参照)は、オスコネクタ90のオス部材911の外周面912の最大外径と同じかこれより大きいことが好ましく、外周面912の最大外径より大きいことがより好ましい。筒状体10の内径D11が外周面912の最大外径より小さいと、以下の2つの問題が生じうる。第1に、拭き取りチップ1を、その先端が底板914に当接するまで隙間916に挿入することが困難になる。これにより、特に底板914近傍に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。第2に、オス部材911と筒状体10との間に挟まれる薄膜部21(図5参照)が薄くなり、遂には筒状体10がオス部材911に直接接触する。これにより、オス部材911の外周面912が筒状体10によって傷付けられる可能性が生じる。具体的は、内径D11は、内径D11≧5.59mmを満足することが好ましい。但し、筒状体10の内径D11が、外周面912の最大外径に比べて大きすぎると、破られた薄膜部21が外周面912に付着した液状物を拭き取り除去する能力が低下する。このため、筒状体10の内径D11と外周面912の最大外径との差(筒状体10の内径-外周面912の最大外径)は、未使用の薄膜部21の厚さの2倍以下であることが好ましく、未使用の薄膜部21の厚さ以下であることがより好ましい。
【0057】
拭き取り綿20に洗浄液が含浸されていてもよい。洗浄液としては、制限はないが、例えば、アルコールや滅菌精製水などを用いることができる。液状物が乾燥してオスコネクタ90に固着した固化物等も、洗浄液により綺麗に除去することができる。
【0058】
拭き取りチップ1では、筒状体10の両端に拭き取り綿20が設けられている。従って、最初に、一方の拭き取り綿20でオスコネクタ90に付着した液状物の大部分を拭き取り、その後、他方の拭き取り綿20で依然として残留するわずかな液状物をきれいに拭き取ることができる。少ない数の拭き取りチップ1でオスコネクタ90を清浄に清掃することができる。
【0059】
拭き取りチップ1の両端は、対称であってもよいが、非対称であってもよい。例えば、一方の拭き取り綿20が、他方の拭き取り綿20より肉厚に設けられていてもよい。これは、例えば、寸法が異なる複数種類のオスコネクタ90を、共通する拭き取りチップで拭き取り清掃するのに有利である。
【0060】
なお、本発明の拭き取りチップは、筒状体(ロッド)10の両端に拭き取り綿20を備えている必要はなく、図6A及び図6Bの拭き取りチップ1'のように、筒状体10の一端のみに拭き取り綿20を備えていてもよい。図1A及び図1Bの拭き取りチップ1のように筒状体10の両端に拭き取り綿20を備える場合、使用者が、一回のオスコネクタ90の清掃時に一方の拭き取り綿(第1拭き取り綿)20のみを使用し、次回のオスコネクタ90の清掃時に他方の拭き取り綿(第2拭き取り綿)20を使用するために次回の清掃時までその拭き取りチップ1を捨てずに保管してしまう可能性がある。この場合、保管状態によっては第2拭き取り綿20の衛生状態が悪化するかも知れない。拭き取り綿20を一端のみに備えた拭き取りチップ1'は、使用者に、拭き取りチップ1'を使い捨てするように仕向けることができ、これは、常に清潔な拭き取り綿20でオスコネクタ90の清掃をすることを確実にするのに有利である。
【0061】
(実施形態2)
図7Aは、本発明の実施形態2にかかる拭き取りチップ2の部分拡大斜視図、図7Bは拭き取りチップ2の部分拡大断面図である。本実施形態2では、薄膜部21に、スリット22が形成されている。スリット22は、「-」(マイナス)字状の平面視形状を有する直線状の切り込みであり、円形の薄膜部21の中心を通る。スリット22は、薄膜部21を貫通している。スリット22は、実施形態1と同様に拭き取り綿20を筒状体10の端部に設けた後に、鋭利なナイフ等で容易に形成することができる。
【0062】
本実施形態2の拭き取りチップ2は、本実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0063】
本実施形態2では、オスコネクタ90のオス部材911の先端を薄膜部21に押し付けると、薄膜部21はスリット22(特にその両端)を起点として破れる。これは、以下の効果を有する。第1に、薄膜部21が容易に破れる。このため、比較的小さな力を加えるだけで、オス部材911は薄膜部21を貫通する。不慣れな作業者であっても、拭き取りチップ2をオスコネクタ90の隙間916に容易に挿入することができる。第2に、薄膜部21は、例えば薄膜部21が略二等分割される等、常に安定した破れ方をする。オス部材911が薄膜部21の中心からわずかに外れた位置に押し当てられても、破れ方のばらつきが少ない。オス部材911が筒状体10内に挿入されると、破られた薄膜部21は、オス部材911の外周面912を周方向に略均等に取り囲む。これは、外周面912に付着した液状物をむらなく拭き取り除去するのに有利である。
【0064】
スリット22は、拭き取りチップ2の両端の薄膜部21の両方に形成してもよいし、一方のみに形成してもよい。スリット22の形状は、本実施形態に限定されず、任意に変更しうる。
【0065】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも適用される。
【0066】
(実施形態3)
図8は、本発明の実施形態3にかかる拭き取りチップ3の断面図である。本実施形態3では、筒状体10の孔11内に詰め綿(わた)25が詰め込まれている。詰め綿25は、繊維が絡まり合った綿(わた)状物であり、制限はないが、拭き取り綿20と同じ材料を用いることができる。詰め綿25は、筒状体10の開口の近傍に設けられている。筒状体10の先端から詰め綿25までの距離は、オスコネクタ90のオス部材911の長さ(底板914からのオス部材911の突出長)より短い。詰め綿25が薄膜部21と接触していてもよい。
【0067】
本実施形態3の拭き取りチップ3は、本実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0068】
本実施形態3では、オスコネクタ90のオス部材911が薄膜部21を貫通して孔11内に進入すると、オス部材911の先端に詰め綿25が当接する。拭き取りチップ3を回転させながらオスコネクタ90に向かって前進させると、オス部材911は詰め綿25に対して回転しながら詰め綿25を徐々に圧縮しまたは移動させる。オス部材911の先端に付着していた液状物が、オス部材911が薄膜部21を突き破るときに薄膜部21によって完全に拭き取り除去されなかったとしても、その後、詰め綿25によって拭き取り除去することが可能である。
【0069】
詰め綿25は、筒状体10の孔11の両端近傍のみではなく、孔11のほぼ全長にわたって連続して詰められていてもよい。
【0070】
実施形態1で説明した洗浄液が、詰め綿25にも含浸されていてもよい。
【0071】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態3にも適用される。実施形態2の拭き取りチップ2に、本実施形態3を適用してもよい。
【0072】
(実施形態4)
図9は、本発明の実施形態4にかかる拭き取りチップ4の断面図である。実施形態1~3では、拭き取りチップ1~3の芯に相当する棒状のロッドの全体が中空の筒状体10で構成された。これに対して、本実施形態4の拭き取りチップ4では、棒状のロッドの一部(端部)のみが中空の筒状体で構成される。即ち、まっすぐに延びた細長い棒状のロッド15の両端面から、ロッド15の長手方向に沿って孔16が延びている。孔16は、ロッド15を貫通していない非貫通孔である。実施形態1と同様に、孔16の開口を覆うように拭き取り綿20が設けられている。本実施形態では、ロッド15のうち孔16が設けられた部分10'が、本発明の「筒状体」に相当する。ロッド15のうち、両端の筒状体10'を除く部分は、中実の柱状体である。ロッド15は、制限はないが、実施形態1で筒状体10の材料として例示した材料を用いて、射出成形法により全体を一部品として一体的に製造されることが好ましい。
【0073】
本実施形態4の拭き取りチップ4は、本実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。オス部材911は、薄膜部21を突き破って孔16内に挿入される。孔16の深さは、オスコネクタ90のオス部材911の長さ(底板914からのオス部材911の突出長)より深い。
【0074】
ロッド15は、孔16が形成された部分を除いて中実の柱状体であるので、比較的高強度である。このため、拭き取り清掃作業時に加えられる力によって、ロッド15が直径方向に押しつぶされたり、曲がったりすることがない。清掃作業を効率よく行うことができる。
【0075】
孔16及び拭き取り綿20は、ロッド15の一端のみに設けられていてもよい。
【0076】
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態4にも適用される。実施形態2,3の拭き取りチップ2,3に、本実施形態4を適用してもよい。
【0077】
(実施形態5)
図10は、本発明の実施形態5にかかる拭き取りチップ5の断面図である。本実施形態5では、筒状体10が比較的短い。筒状体10の一端に拭き取り綿20が設けられ、筒状体10の他端(基端)には、ハンドル30が設けられている。ハンドル30は、筒状体10より大きな外径を有する塊状物である。ハンドル30は、作業者が加える力によって容易に変形しない程度の強度を有することが好ましい。ハンドル30の材料は、制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、スチレンエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンスチレンブロック共重合体、ポリアセタール、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができる。
【0078】
本実施形態5の拭き取りチップ5は、本実施形態1の拭き取りチップ1と同様に、オスコネクタ90を清掃するために使用することができる。
【0079】
作業者は、ハンドル30を掴んで拭き取り清掃作業をすることができる。ハンドル30は、比較的大きく、変形しにくいので、作業者はハンドル30をしっかりと掴むことができる。拭き取りチップ5に回転力を加えるのも容易である。従って、清掃作業効率が向上する。更に、作業者が拭き取り綿20に触れる可能性が低くなるので、拭き取り綿20の清潔性が保たれる。
【0080】
筒状体10は、ハンドル30に対して、分離できないように一体化されていてもよい。筒状体10とハンドル30とを一体化させる方法としては、制限はないが、筒状体10とハンドル30とをそれぞれ別個に製造し、その後、両者を接着剤や溶着などの方法により一体的に接続する方法、または、筒状体10及びハンドル30のうちの一方を製造し、その後、二色成形法により他方を一方に一体化させる方法などであってもよい。あるいは、筒状体10とハンドル30とを同一材料を用いて一度に一部品として一体的に成型してもよい。
【0081】
筒状体10は、ハンドル30に対して、着脱可能であってもよい。この場合、拭き取り綿20が設けられた筒状体10は使い捨てされるのに対して、ハンドル30は繰り返し使用できる。ハンドル30に加えた回転力が筒状体10に確実に伝達されるように、ハンドル30及び筒状体10のそれぞれの相手方との接続部分に、互いに嵌合し合う嵌合形状(例えば凸と凹)が設けられていてもよい。
【0082】
図10では、ハンドル30の一部が筒状体10の孔11に嵌入しているが、筒状体10とハンドル30との接続構造はこれに限定されない。例えば、筒状体10がハンドル30に設けられた孔に嵌入していてもよい。
【0083】
図10では、筒状体10がハンドル30に接続されているが、本発明はこれに限定されない。実施形態4のロッド15のように筒状体に一体的に設けられた中実の柱状体が、ハンドルに接続されていてもよい。
【0084】
本実施形態5は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態5にも適用される。実施形態2~4の拭き取りチップ2~4に、本実施形態5を適用してもよい。
【0085】
実施形態1~5は例示に過ぎない。本発明は、実施形態1~5に限定されず、適宜変更することができる。
【0086】
上記の実施形態では、筒状体の外周面及び内周面はいずれも円形の断面形状を有していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、外周面及び内周面のうちの一方又は両方が、正多角形(例えば正八角形等)の断面形状を有していてもよい。外周面がこのような断面形状を有することは、拭き取りチップに回転力を加えるのに有利である。
【0087】
上記の実施形態では、筒状体の内周面は、その内径が長手方向において一定である円筒面であったが、本発明はこれに限定されない。オス部材911が挿入される部分において、筒状体の内周面が、開口に向かって内径が大きくなるようなメステーパ面(例えば、オス部材911の外周面912と同じテーパ角度のメステーパ面)であってもよい。
【0088】
本発明の拭き取りチップは、オスコネクタを清掃するたびに捨てられる使い捨てタイプであってもよいし、オスコネクタを清掃した後、水などで洗浄し乾燥させることでオスコネクタの清掃に繰り返し使用される繰り返し使用タイプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の利用分野は、制限はないが、オス部材と、雌ネジが設けられた外筒とを備えたオスコネクタの清掃具として好ましく利用することができる。特に、経腸栄養法を行うために患者の体内に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられたオスコネクタの清掃具として好適である。
【符号の説明】
【0090】
1,1',2,3,4,5 拭き取りチップ
10,10' 筒状体
15 ロッド
16 孔
20 拭き取り綿
21 薄膜部
22 スリット
23 外周部
25 詰め綿
90 オスコネクタ
911 オス部材
912 オス部材の外周面
913 外筒
915 雌ネジ
916 オス部材と外筒との間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12