(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F04D19/04 D
(21)【出願番号】P 2021009872
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕章
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229949(JP,A)
【文献】国際公開第2010/007975(WO,A1)
【文献】特開2015-229935(JP,A)
【文献】特開2020-148142(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114862(WO,A1)
【文献】特開2015-229968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータと、
複数の断熱ピンと、
前記ロータの外周側に所定ギャップを介して配置される円筒部と、複数の前記断熱ピンを介してポンプベースに固定される固定部とを有するステータとを備え、
前記断熱ピンは、前記ステータおよび前記ポンプベースよりも熱伝導率が小さく、かつ、前記固定部を支持
し、
前記断熱ピンは、前記ポンプベースに形成されたピン穴に係合する大径部と、前記ステータの前記固定部に形成されたピン穴に係合する小径部とが設けられた段付きピンであって、
前記ステータは、前記固定部が、前記段付きピンの前記小径部と前記大径部との境界に形成された段部で支持される、真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記ステータの前記円筒部の所定領域を加熱する加熱部をさらに備える、真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
前記断熱ピンは、さらに、前記ステータのポンプ軸方向の位置決めを行う、真空ポンプ。
【請求項4】
円筒状のロータと、
複数の断熱ピンと、
前記ロータの外周側に所定ギャップを介して配置される円筒部と、複数の前記断熱ピンを介してポンプベースに固定される固定部とを有するステータとを備え、
前記断熱ピンは、前記ステータおよび前記ポンプベースよりも熱伝導率が小さく、かつ、前記固定部を支持し、
前記断熱ピンは、前記ポンプベースに形成されたピン穴に係合する大径部と、前記ステータの前記固定部に形成されたピン穴に係合する小径部とが設けられた段付きピンであって、
前記ステータは、前記固定部が、前記段付きピンの前記小径部と前記大径部との境界に形成された段部で支持され、前記段付きピンによりポンプ軸方向、ステータ径方向およびステータ周方向の位置決めが行われる、真空ポンプ。
【請求項5】
円筒状のロータと、
複数の断熱ピンと、
前記ロータの外周側に所定ギャップを介して配置される円筒部と、複数の前記断熱ピンを介してポンプベースに固定される固定部とを有するステータとを備え、
前記断熱ピンは、前記ステータおよび前記ポンプベースよりも熱伝導率が小さく、かつ、前記固定部を支持し、
前記ポンプベースに形成され、前記断熱ピンが係合するピン穴は、
前記断熱ピンが係合する穴奥側の小径穴部と、前記断熱ピンとの間に隙間が形成される穴入口側の大径穴部とを含む、真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記ポンプベースと前記ステータとの隙間に配置され、前記隙間を介した前記ステータの下流側から上流側へのガスの逆流を防止するシール部材をさらに備える、真空ポンプ。
【請求項7】
円筒状のロータと、
複数の断熱ピンと、
前記ロータの外周側に所定ギャップを介して配置される円筒部と、複数の前記断熱ピンを介してポンプベースに固定される固定部とを有するステータとを備え、
前記断熱ピンは、前記ステータおよび前記ポンプベースよりも熱伝導率が小さく、かつ、前記固定部を支持し、
前記断熱ピンは平行ピンであって、
前記ステータは、前記固定部が、前記平行ピンの上面上に支持される、真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプは種々の半導体製造装置の排気ポンプとして使用されるが、エッチングプロセス等において排気を行うと、反応生成物がポンプ内部に堆積する。ターボ分子ポンプでは、ロータがステータとギャップを有して高速回転するが、エッチング時の反応生成物がポンプ内部で堆積して、ついにはロータとステータ間のスキマを埋めてしまい固着することで回転運転ができなくなることがある。このようなポンプ内部の生成物堆積を抑制するため、例えば、特許文献1に記載の真空ポンプでは、特許文献1の
図1~3を参照すると、ステータ22を円筒状の断熱部材24で支持し、加熱ヒータ280によりステータ22を直接加熱するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、断熱部材24を介したステータ22からベース30への熱移動の影響で、加熱ヒータ280が接触している領域の温度と、そこから円周方向に離れた領域における温度との間の温度差が大きくなりやすく、温度の低い離れた領域において生成物堆積が顕著になりやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様による真空ポンプは、円筒状のロータと、複数の断熱ピンと、前記ロータの外周側に所定ギャップを介して配置される円筒部と、複数の前記断熱ピンを介してポンプベースに固定される固定部とを有するステータとを備え、前記断熱ピンは、前記ステータおよび前記ポンプベースよりも熱伝導率が小さく、かつ、前記固定部を支持する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱部により加熱されるステータの、円筒部における温度のバラつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明に係る真空ポンプの一実施の形態を示す図であり、ターボ分子ポンプの断面を示す。
【
図2】
図2は、ベースに設置されたステータおよび加熱部の半断面を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、ステータおよび加熱部をベース底面側から見た図である。
【
図5】
図5は、段付きピンの効果を説明する図である。
【
図9】
図9は、変形例2における位置決め手順を説明する図である。
【
図10】
図10は、シール部材として板状のパッキンを用いる場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係る真空ポンプの一実施の形態を示す図であり、ターボ分子ポンプの断面を示す。ターボ分子ポンプ1は、複数段の回転翼12およびロータ円筒部13が形成されたロータ10を備える。ポンプケーシング23の内側には、複数段の回転翼12に対応して複数段の固定翼21が積層されるように配置されている。ポンプ軸方向に積層された複数段の固定翼21は、それぞれスペーサ24を介してベース30上に配置されている。回転翼12および固定翼21の各々は、周方向に配置された複数のタービン翼から成る。
【0009】
ロータ10のロータ円筒部13を取り囲むように、円筒状のステータ22が設けられている。ステータ22は、ロータ円筒部13の外周側に所定ギャップを介して配置されるステータ円筒部22bと、ステータ22をポンプ筐体としてのベース30に固定するためのフランジ部22aが形成されている。ロータ円筒部13の外周面またはステータ22の内周面のいずれか一方にはネジ溝が形成されており、ロータ円筒部13とステータ22とでネジ溝ポンプを構成している。ステータ円筒部22bはベース30内に配置され、フランジ部22aがボルト41によりベース30の上端に固定されている。ステータ円筒部22bは加熱部28により加熱される。
【0010】
ロータ10にはロータシャフト11が固定され、そのロータシャフト11はラジアル磁気軸受MB1、MB2およびアキシャル磁気軸受MB3により磁気浮上支持され、モータMによって回転駆動される。磁気軸受MB1~MB3が非動作時には、ロータシャフト11はメカニカルベアリング35a,35bによって支持される。
【0011】
図2は、ベース30に設置されたステータ22および加熱部28の半断面を拡大して示す図である。また、
図3は、ステータ22および加熱部28をベース底面側から見た図である。
図2に示すように、ステータ22を加熱する加熱部28は、ベース30を外周側から内周側に貫通するように設けられている。ベース30の内部空間に挿入された加熱部28の先端は、ステータ22に設けられたステータ円筒部22bの下部の外周面220の所定領域に熱的に接触している。加熱部28の後端はベース30の外部に露出しており、加熱部28とベース30との隙間はOリング29により封止されている。図示は省略しているが、加熱部28にはヒータと温度センサとが設けられており、加熱部28は所定の温度でステータ22を加熱する。実施形態では、加熱部28は周方向に180°位相で2つ設けられているが、3つ以上設けても良い。
【0012】
なお、実施形態では、加熱部28の先端接触部の断面形状は円形であるが、円形に限定されない。加熱部28の先端接触部はステータ22と隙間なく接触するように、ステータ外周面の形状に即した形状に加工するのが望ましい。加熱部28の先端接触部を、別部材(例えば、接触面の凹凸に倣って変形しやすい熱伝導率の高い部材)を介してステータ22に熱接触させるようにしてもよい。また、加熱部28全体をポンプ内に配置する構成としても良い。
【0013】
ステータ22が固定されるベース30の上端側の面(以後、便宜上、ステータ固定面と呼ぶ)には、Oリング42が配置されるOリング溝31が形成されている。ベース30とステータ22の隙間にOリング42を設けることで、破線矢印Gで示すような隙間を介したステータ22の下流側から上流側へのガスの逆流を、確実に防止することができる。もちろん、逆流の影響が許容できる場合には、Oリング42を省略しても構わない。Oリング溝31よりも外周側のステータ固定面には、複数のピン穴32が形成され、各ピン穴32には段付きピン40が挿入されている。ピン穴32は穴奥側の小径穴部321と穴入口側の大径穴部322とで構成されている。
【0014】
段付きピン40の大径部401はピン穴32の小径穴部321に係合しており、大径部401と大径穴部322との間には隙間が形成されている。ステータ22は、段付きピン40の段部403によって支持されることで、ポンプ軸方向の位置決めが行われる。段付きピン40の小径部402は、ステータ22のフランジ部22aに形成されたピン穴221に係合し、ステータ22の径方向および周方向位相に関する位置決めを行う。なお、
図2ではピン穴221はフランジ部22aを貫通しているが、貫通していなくても良い。また、段付きピン40はベース側に固定されていても良いし、フランジ部側に固定されていても良い。
【0015】
図3に示すように、フランジ部22aには、固定用のボルト41(
図1参照)が挿通されるボルト穴222が90°位相で4つ形成されている。段付きピン40は、ボルト穴222に対して45°位相シフトした位置に、90°位相で4つ配置される。加熱部28は、周方向に180°位相で2つ設けられている。そのため、加熱部28からステータ22へ熱が流入し、ステータ22がベース30と熱接触している部分から熱が逃げて行くと考えると、加熱部28が接触している符号R1で示す接触領域で温度が高く、接触領域R1から遠い領域R2で温度が低くなるような温度分布が生じる。
【0016】
段付きピン40は、ステータ22をベース30に対して断熱的に位置決めする部材であり、ステータ22およびベース30よりも熱伝導率が小さな材料で形成されている。一般的に、ステータ22やベース30はアルミ材により形成されるので、段付きピン40には、それらよりも熱伝導率の小さなステンレス材やセラミックス材等が用いられる。段付きピン40は、段部403によってステータ22のフランジ部22aを支持している。大径部401の長さ寸法L1は、ピン穴32の深さ寸法h1よりも大きく設定されているので、ベース30とフランジ部22aとの間には隙間が形成されている。また、ステータ22の外周面とベース30の内周面との間にも隙間が形成されている。すなわち、ステータ22はベース30と接触していない。
【0017】
図4は比較例1を示す図であり、特許文献1に記載されている従来のステータ固定構造と同様の構成を示したものである。比較例1では、ステータ122は円筒状の断熱部材150により支持されている。断熱部材150は、接触部R11においてステータ122と接触しており、接触部R12,R13においてベース130と接触している。
図4に示すようなステータ支持構造の場合、接触部R11,R12,R13が断熱部材150の360°全周に亘っているので、
図2,3に示すような段付きピン40で局所的に支持する場合と比べて、加熱されているステータ122からベース130への熱移動が多くなりやすい。熱移動は温度差によって生じるので、
図3に示すように180°位相で配置された加熱部28によりステータ122を加熱した場合、ステータ122の周方向温度分布のバラつきが大きくなりやすい。
【0018】
一方、本実施の形態では、複数の断熱性の段付きピン40によりステータ22のフランジ部22aを局所的に支持しているので、加熱部28で加熱されるステータ22からベース30への熱移動を十分小さくすることができる。その結果、
図3の接触領域R1と領域R2との温度差を従来よりも低減することができる。
【0019】
さらに、
図2に示すように、ピン穴32には小径穴部321と大径穴部322とが形成されていて、大径穴部322と段付きピン40の大径部401との間には隙間が形成されている。
図2において、h1はピン穴32全体の深さ寸法であり、h2は大径穴部322の深さ寸法である。また、L1は段付きピン40の大径部401の長さ寸法である。フランジ部22aとベース30との隙間寸法は(L1-h1)である。また、フランジ部22aが接触する段部403から大径部401と小径穴部321との接触部までの距離、すなわち、断熱経路の長さ寸法は(L1-(h1-h2))であり、隙間寸法(L1-h1)よりもh2だけ長い。そのため、フランジ部22aとベース30との隙間(L1-h1)を小さな値に設定した場合であっても、寸法h2を大きく設定することで十分な断熱効果を得ることができる。もちろん、h2=0の場合であっても、段付きピン40をベース30やステータ22よりも熱伝導率の小さな材料で構成しているので、その断熱効果により、ステータ円周方向の温度ばらつきの低減効果は得られる。
【0020】
図5は、段付きピン40を用いたことによる効果の一例を示したものである。同一加熱条件におけるシミュレーション結果であり、比較例1のように断熱部材150で支持する従来の構成Aと、本実施形態のように段付きピン40を用いて90°位相で4か所を支持する構成Bとにおける、領域R1,R2の温度を示す。従来の構成Aでは接触領域R1と領域R2との温度差は16℃であるが、構成Bの場合には5℃と低減される。このように温度差が低減されることで、ステータ円筒部22bの生成物堆積量は、周方向位置によるばらつきが抑制されて均一化されるので、堆積物除去のためのメンテナンスタイミングをより先に延ばすことができる。
【0021】
図6は比較例2を示す図であり、フランジ部22aが対向するベース面上に、高さh10の凸部34が複数形成されている。複数の凸部34の配置は
図3の段付きピン40と同様の配置になっている。比較例2の場合も、ステータ22を複数個所で局所的に支持する構成であるが、凸部34の熱伝導率がベース30と同一である点、凸部34の高さ寸法h10、すなわち断熱経路の長さが
図2の構成の(L1-(h1-h2))に比べて非常に小さい点が、
図2の構成と異なっている。そのため、十分な断熱効果が得られず、ステータ22の円周方向の温度ばらつきが大きくなりやすい。
【0022】
(変形例1)
図7は、本実施の形態の変形例1を示す図である。変形例1では、Oリング42を、軸シールのようにステータ22の外周面とベース30の内周面との間に配置した。Oリング42をこのように配置しても、矢印破線Gで示すようなガスの逆流を防止することができる。
図7では、Oリング溝31をベース30に設けたが、ステータ22に設けても良い。同様に、
図2に示した構成においても、Oリング溝31をフランジ部22aの側に設けても良い。
【0023】
(変形例2)
図8は、本実施の形態の変形例2を示す図である。変形例2では、段付きピン40に代えて、平行ピン44を用いる構成とした。段付きピン40と同様に、平行ピン44は、ステータ22およびベース30よりも熱伝導率が小さな材料で形成されている。平行ピン44が挿入されるピン穴32の構成は、
図2に示したピン穴32と同様の構成となっている。すなわち、ピン穴32は、平行ピン44が係合する小径穴部321と、平行ピン44との間に隙間が形成される大径穴部322とを有する。この構成の場合、ステータ22のフランジ部22aは複数の平行ピン44によって支持されることで、ステータ22のポンプ軸方向の位置決めが行われる。
【0024】
なお、変形例2においては、ステータ22の径方向および周方向位相に関する位置決めは、例えば、
図9に示すように行われる。
図9に示す断面図は、
図3のボルト穴222に対して22.5°位相シフトした位置における縦断面図(
図2の場合と同様の断面図)である。平行ピン44は、ボルト穴222に対して45°位相シフトした位置に配置される。
図9に示すように、ステータ22のフランジ部22aには、位置決め用の貫通孔225が形成されている。ベース30には、貫通孔225に対向する位置に、位置決め用の穴305が形成されている。貫通孔225および穴305は、これらと180°位相シフトした位置にもそれぞれ形成されている。
【0025】
ステータ22を
図1に示すボルト41によりベース30に固定する際には、位置決めピン60を貫通孔225および穴305に挿通して、ステータ22の径方向および周方向位相に関する位置決めを行う。位置決め状態において、ボルト41によりステータ22をベース30に固定し、その後、位置決めピン60を貫通孔225および穴305から抜き去る。以上のような手順で、ステータ22がベース30に位置決めおよび固定される。
【0026】
上述した例示的な実施の形態および変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0027】
なお、上述した実施の形態および変形例では、ステータ22を加熱部28で加熱する構成としたが、加熱部28を設けない構成であっても、ガス排気に伴う発熱でステータ22の温度がベース30より高い温度となる。そのため、上述した実施の形態のように断熱ピンでステータ22を支持する構成とすることで、ステータ22の温度分布の均一性を向上させることができる。
【0028】
[1]一態様に係る真空ポンプは、円筒状のロータと、複数の断熱ピンと、前記ロータの外周側に所定ギャップを介して配置される円筒部と、複数の前記断熱ピンを介してポンプベースに固定される固定部とを有するステータとを備え、前記断熱ピンは、前記ステータおよび前記ポンプベースよりも熱伝導率が小さく、かつ、前記固定部を支持する。
例えば、ガス排気に伴う発熱でステータ22の温度がベース30より高い温度となった場合でも、断熱ピンである段付きピン40によってステータ22のフランジ部22aを支持することで、ステータ22からベース30への熱移動を十分小さくすることができるので、ステータ22の周方向の温度分布均一性を向上させることができる。
【0029】
[2]上記[1]に記載の真空ポンプにおいて、前記ステータの前記円筒部の所定領域を加熱する加熱部をさらに備える。
例えば、
図2に示すように、断熱ピンである段付きピン40によってステータ22のフランジ部22aを支持することで、加熱部28で加熱されるステータ22からベース30への熱移動を十分小さくすることができる。その結果、
図3の接触領域R1と領域R2との温度差を従来よりも低減することができる。変形例1及び2でも同様の作用効果が得られる。
【0030】
[3]上記[2]に記載の真空ポンプにおいて、前記断熱ピンは、さらに、前記ステータのポンプ軸方向の位置決めを行う。
【0031】
[4]上記[1]から[3]までのいずれかに記載の真空ポンプにおいて、前記断熱ピンは、前記ポンプベースに形成されたピン穴に係合する大径部と、前記ステータの前記固定部に形成されたピン穴に係合する小径部とが設けられた段付きピンであって、前記ステータは、前記固定部が、前記段付きピンの前記小径部と前記大径部との境界に形成された段部で支持され、前記段付きピンによりポンプ軸方向、ステータ径方向およびステータ周方向の位置決めが行われる
例えば、
図2に示すような段付きピン40を用いることにより、段部403によって支持されることでステータ22のポンプ軸方向の位置決めが行われ、かつ、小径部402がピン穴221に係合することによりステータ22の径方向および周方向位相に関する位置決めが行われる。
【0032】
[5]上記[1]から[4]までのいずれかに記載の真空ポンプにおいて、前記ポンプベースに形成され、前記前記断熱ピンが係合するピン穴は、前記断熱ピンが係合する穴奥側の小径穴部と、前記断熱ピンとの間に隙間が形成される穴入口側の大径穴部とを含む。
例えば、
図2に示すように、段付きピン40の大径部401は、ピン穴32の穴奥側に形成された小径穴部321にだけ係合し、大径穴部322においては隙間が形成されている。そのため、段付きピン40に関する断熱経路の長さh2を、フランジ部22aとベース30との隙間寸法(L1-h1)よりも大きくすることができ、段付きピン40による断熱効果をより向上させることができる。
【0033】
[6]上記[1]から[5]までのいずれかに記載の真空ポンプにおいて、前記ポンプベースと前記ステータとの隙間に配置され、前記隙間を介した前記ステータの下流側から上流側へのガスの逆流を防止するシール部材をさらに備える。
例えば、
図2に示すように、ステータ22を段付きピン40で支持することでベース30とステータ22との間に隙間が生じても、シール部材としてOリング42を設けることで、ステータ22の下流側から上流側へのガスの逆流Gを防止することができ、ポンプ性能悪化への影響を防止できる。なお、上述した実施の形態では、シール部材としてOリング42を用いているが、ステータ22およびベース30よりも熱伝導率の小さな材料(例えば、樹脂やゴム等)で形成された板状のパッキンなどを用いても良い。例えば、
図10に示すような形状のパッキン420を用いることでガスの逆流を防止できる。
【0034】
なお、
図1に示すように、段付きピン40で支持されたステータ22は、金属製のボルト41によりベース30に固定される。そのため、ボルト41を介した熱移動の影響を低減するために、ボルト41をアルミ材より熱伝導率の小さなステンレス等で形成したり、ボルト41とフランジ部22aとの間にステンレス材やセラミックス等の座金を装着したりしても良い。
【0035】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、ターボ分子ポンプを例に説明したが、ステータとロータ円筒部とで構成されるネジ溝ポンプのみを有する真空ポンプにも、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1…ターボ分子ポンプ、10…ロータ、13…ロータ円筒部、22,122…ステータ、22a…フランジ部、22b…ステータ円筒部、28…加熱部、29,42…Oリング、30,130…ベース、31…Oリング溝、32,221…ピン穴、40…段付きピン、44…平行ピン、321…小径穴部、322…大径穴部、401…大径部、402…小径部、403…段部、420…パッキン