(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】遠隔支援システム、遠隔支援方法、及び遠隔支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240326BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G08G1/16 A
(21)【出願番号】P 2021028951
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】室井 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】武藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕理
(72)【発明者】
【氏名】川島 宏之
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111226(JP,A)
【文献】特開2021-018744(JP,A)
【文献】特開2020-183670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からセンタへ送信される映像の遅延量を計算する計算部と、
ドアを開く速度及びドアを開くタイミングの少なくとも一つに関するドアの開き方について、計算した前記遅延量が大きいほど遅らせるように制御する制御部と、
を含む遠隔支援システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ドアの開き方を前記速度とする場合は、前記遅延量が大きくなるほど、前記速度を基準から遅くするように計算し、
前記ドアの開き方を前記タイミングとする場合は、前記遅延量が大きくなるほど、前記タイミングを基準から遅くするように計算する請求項1に記載の遠隔支援システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記遅延量に加えて、前記ドアへ向かう乗客の体格に基づいて、前記ドアの開き方を制御する請求項1又は請求項2に記載の遠隔支援システム。
【請求項4】
前記制御に前記体格を用いる場合に、
オペレータによる乗客の選択、又は乗客の移動の計算による自動選択によって前記体格を選択し、前記制御を行う請求項3に記載の遠隔支援システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記遅延量に加えて、前記車両の降車場所のリスクに基づいて、前記リスクが大きいほど前記ドアの開き方を遅らせるように制御する請求項1~請求項4の何れか1項に記載の遠隔支援システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記遅延量に加えて、前記車両の降車部付近に存在する移動体の速度、加速度、及び距離の少なくとも一つを含む移動体パラメータに基づいて、前記ドアの開き方を遅らせるように制御する請求項1~請求項5の何れか1項に記載の遠隔支援システム。
【請求項7】
車両からセンタへ送信される映像の遅延量を計算し、
ドアを開く速度及びドアを開くタイミングの少なくとも一つに関するドアの開き方について、計算した前記遅延量が大きいほど遅らせるように制御する、
処理をコンピュータに実行させる遠隔支援方法。
【請求項8】
車両からセンタへ送信される映像の遅延量を計算し、
ドアを開く速度及びドアを開くタイミングの少なくとも一つに関するドアの開き方について、計算した前記遅延量が大きいほど遅らせるように制御する、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔支援システム、遠隔支援方法、及び遠隔支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に示されているように、自動運転車両にはドアの自動開閉技術が用いられている。自動開閉は、基本的には、自律的にドア開閉を実施し、常時中央指令上でその様子を監視している。また、有事の際には中央指令所からドア開閉に介入し、オペレータが遠隔で直接操作する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“設備・しくみ・システム-株式会社ゆりかもめ”,URL:https://www.yurikamome.co.jp/feature/comfortable/system.html(2021年2月9日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運行するバスにドアの自動開閉技術を適用する場合、バス停の場所によっては降車の際に衝突等のリスクがある。またドアの開閉はオペレータの判断によって、中断する場合があるが、この判断は遠隔支援システムへ送信される映像をもとにオペレータの判断で行われる。しかし、送信される映像の遅延時間が大きくなる場合があり、映像が遅延している場合、オペレータの中断判断が遅れてしまうので、降車客が危険な状況に陥る可能性がある。
【0005】
また、LV4の無人自動運転車両をサービスとして運行させる場合、周辺の安全を確認したうえでドア開を自律的に実施する必要があるが、認識機構の誤認識などにより、ドアの自律開が不可能となる場合が想定される。その際、遠隔からオペレータが映像を視認し、ドア付近の安全を確認しつつ、直接操作してドアを開く必要が生じると考えられる。しかし、提供される映像が遅延している場合、安全を確保しつつ操作を迅速に行うことが困難となる。
【0006】
本開示は上記事情を鑑みてなされたものであり、映像の遅延が生じてもオペレータの操作を支援するようにドアを制御できる遠隔支援システム、遠隔支援方法、及び遠隔支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る遠隔支援システムは、車両からセンタへ送信される映像の遅延量を計算する計算部と、ドアを開く速度及びドアを開くタイミングの少なくとも一つに関するドアの開き方について、計算した前記遅延量が大きいほど遅らせるように制御する制御部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の遠隔支援システム、遠隔支援方法、及び遠隔支援プログラムによれば、映像の遅延が生じてもオペレータの操作を支援するようにドアを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】映像の遅延量に応じたドア開の変更例の一例を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】遅延量に対するドア開速度の変化のグラフの一例を示す図である。
【
図4】遠隔支援システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態の遠隔支援システムによる遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】車内の映像を鳥瞰した場合の乗客の体格を模式的に示した図である。
【
図7】本開示の第2実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】乗客の体格に対する減衰速度の変化のグラフの一例を示す図である。
【
図9】第2実施形態の遠隔支援システムによる遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第3実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図11】リスクに対する減衰速度の変化のグラフの一例を示す図である。
【
図12】第3実施形態の遠隔支援システムによる遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】本開示の第4実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図14】降車部付近に移動体が存在している場合の一例を示す図である。
【
図15】降車部付近に移動体が存在していない場合の一例を示す図である。
【
図16】移動体の各パラメータに対する減衰速度の変化のグラフの一例を示す図である。
【
図17】第4実施形態の遠隔支援システムによる遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の各実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
本開示の技術では、ドア開閉のドアを開く(以下、ドア開)制御に関して、映像の遅延量に応じてドアを開く速度(以下、ドア開速度)を変更する。例えば映像の遅延量が大きくなるほど、ドア開速度を遅くすることにより降車部付近を走行している自転車等の移動体への衝突、又は、巻き込みなど、事故やけがが発生する前に中断操作をする余裕が生まれる。また、実施形態のバリエーションとして、乗客の体格、降車場所のリスク、及び降車部付近に存在する移動体パラメータのそれぞれに基づいて、ドア開速度を変更することもできる。なお、ドアの開き方に関してドア開速度でなく、ドアを開くタイミング(以下、ドア開タイミング)を変更してもよい。これにより、通信遅延に応じて、オペレータが中断操作できる範囲でドアが開くように、ドアの開き方を制御できる。また、映像の通信遅延がある場合でも、安全を確保しつつ迅速にオペレータによる操作を行うことができる。
【0012】
ここで、基本的な流れを説明する。
図1は、映像の遅延量に応じたドア開の変更例の一例を示す図である。
図1では、ドア開にあたって(1)~(3)の流れがあったとする。(1)で、自動開困難により、オペレータへ支援要請がされる。ここで、遠隔支援システムに送信される映像に遅延量dが生じたとする。(2)で、映像をもとにオペレータがドア周囲の安全を確認しドア開閉を遠隔から指示がされたとする。(3)で、指示に応じて車両でドア開する場合に、遅延量dに応じてドア開速度sを変更し、変更したドア開速度sによってドア開を制御する。ドア開速度はs=f(d)の関数で定められる。ドア開速度の変更は人又は人の挙動を学習したシステムのどちらでもよい。また、ドア開速度でなく、ドア開タイミングで制御するのであれば、ドア開速度同様に、ドア開タイミングはt=f(d)の関数で定められる。
【0013】
(第1実施形態)
図2を参照して、本開示の第1実施形態に係る遠隔支援システムの構成について説明する。
図2は、本開示の第1実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、遠隔支援システム100は、記憶部102と、送受信部110と、遅延計算部112と、制御部120とを含んで構成されている。また、遠隔支援システム100はネットワークNを介して車両90と通信する。車両90は、例えば自動運転バスとする。
【0014】
記憶部102には、固定の基準となるドア開速度(以下、基準速度)が格納されている。なお、車種ごと、場所ごとにドア開速度を設けていてもよい。オペレータは遠隔支援において、記憶部102に格納されている基準速度を選択する。なお、ここでのドア開速度が、後述するドア開の初期速度sinitの一例である。タイミングを用いる場合には、ドア開の基準タイミングを格納しておく。
【0015】
送受信部110は、車両90から支援要請、及び車内の映像を適宜、必要なタイミングで受信する。また、送受信部110は、オペレータから操作指示を受信する。送受信部110は、操作指示、及びドア開速度を含むドア開指令を車両90に対して送信する。なお、遠隔支援システム100では、支援要請があった場合はオペレータに必要な通知を行うが、ここでは主たる制御ではないため説明を省略する。
【0016】
遅延計算部112は、映像の受信時の通信状況を取得し、車両90からセンタへ送信される映像の遅延量dを計算する。なお、遅延量は通信状況における通信量、及び映像のノイズ等から適宜、遅延時間として計算すればよい。なお、遅延量は、遅延度合いであってもよい。
【0017】
制御部120は、遅延量dに基づいてドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。
図3は、遅延量に対するドア開速度の変化のグラフの一例を示す図である。ドア開速度sを求めるための関数f(d)は、
図3に示すように、ドア開の初期速度s
initから遅延量dに比例してドア開速度sが遅くなるよう、つまり遅延量dに比例して速度が低下するように定義すればよい。なお、遅延量dの増加に伴う速度の低下の度合いは一例であり、ある閾値ごとに段階的に低下させる適宜、定義するようにしてもよい。このように、制御部120は、遅延量dが大きいほどドアの開き方を遅らせるように制御する。
【0018】
車両90では、受信したドア開指令に基づいてドア開速度sによりドアを開くように制御する。
【0019】
遠隔支援システム100は、例えばサーバにより実現でき、サーバの種別はクラウド等適宜、成し得る構成を利用する。
図4は、遠隔支援システム100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4に示すように、遠隔支援システム100は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0020】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14から遠隔支援プログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されている遠隔支援プログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、遠隔支援プログラムが格納されている。
【0021】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0022】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0023】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能してもよい。
【0024】
通信インタフェース17は、端末等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0025】
以上が遠隔支援システム100のハードウェア構成の一例の説明である。
【0026】
次に、遠隔支援システム100の作用について説明する。
図5は、第1実施形態の遠隔支援システム100による遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から遠隔支援プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、遠隔支援処理が行なわれる。CPU11が、遠隔支援システム100の各部として機能する。
【0027】
ステップS100では、CPU11は、車両90から支援要請を受信する。
【0028】
ステップS102では、CPU11は、支援要請に応じて、車両90から映像を受信する。
【0029】
ステップS104では、CPU11は、映像の受信時の通信状況を取得し、車両90からセンタへ送信された映像の遅延量dを計算する。
【0030】
ステップS106では、CPU11は、オペレータが選択したドア開の基準速度を取得する。
【0031】
ステップS108では、CPU11は、基準となるドア開速度と、遅延量dとに基づいてドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。
【0032】
ステップS110では、CPU11は、車両90にドア開指令を送信する。
【0033】
以上説明したように、本開示の第1実施形態に係る遠隔支援システム100によれば、映像の遅延が生じてもオペレータの操作を支援するようにドアを制御できる。
【0034】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を説明する。第2実施形態は乗客の体格に応じて、ドア開を制御する場合である。体格は、子供、性別といった属性に限らず個人によって異なる。体格が大きい場合にはドアが開き切る程度まで開かないと降車できないし、体格が小さければドアが開き切らなくても降車できてしまう。そのため、体格が大きい場合は速く開くようにし、体格が小さい場合は遅く開くように制御する。なお、第1実施形態と同様となる箇所については同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
図6は、車内の映像を鳥瞰した場合の乗客の体格を模式的に示した図である。
図6上に示すように、乗客によって体格が大、中、及び小と異なるグループにグルーピングし、オペレータに提示して、最初に到達すると予想される乗客を選択させる。また、映像から、乗客の移動方向、及び移動速度を計算し、最初に到達すると予測される乗客を計算してシステムで自動選択するようにしてもよい。そして、選択された乗客の体格に応じて、s=f(d)+s
bと、体格の減衰速度s
bを考慮して、ドア開速度を計算する。s
bは、例えば、体格の大、中、及び小ごとに、s
fast、s
mid、及びs
slow等と定めておく。なお、
図6下に示すように、体格がすべて同じ中でグルーピングされる場合には、オペレータに体格の選択をさせることなく、自動選択してよい。このようにグルーピング結果に応じて、オペレータによる選択と、自動選択を使い分けるようにしてもよい。また、オペレータの稼働状況に応じて、オペレータの稼働がひっ迫している等、オペレータが対応できない場合には計算により自動選択する等、適宜、体格を選択することができる。また、常時、自動選択をするようにしてもよい。
【0036】
図7は、本開示の第2実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
図7に示すように、遠隔支援システム200は、記憶部102と、送受信部110と、遅延計算部112と、体格計算部214と、制御部220とを含んで構成されている。
【0037】
体格計算部214は、映像から乗客ごとの体格をグルーピングする。そして、体格計算部214は、降車する乗客の体格を選択する。ここでは、グルーピングした乗客ごとの体格をオペレータに提示し、ドアへ向かう乗客から最初に降車すると予想される乗客を選択させる。なお、体格計算部214は、映像から、乗客の移動方向、及び移動速度を計算し、最初に到達すると予測される乗客を計算して自動選択してもよい。このように、オペレータによる乗客の選択、又は乗客の移動の計算による自動選択によって体格を選択し、制御を行う。
【0038】
制御部220は、遅延量に加えて、選択された体格に基づいて、ドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。ここでは、ドア開速度sをs=f(d)+s
bと体格の減衰速度s
bを考慮して計算する。加算の場合は減衰速度s
bはマイナスの値とすればよく、重み付けした上で計算してよい。
図8は、乗客の体格に対する減衰速度の変化のグラフの一例を示す図である。この場合、体格が大きくなるに従って減衰速度を低下させる。なお、減衰速度の低下の度合いは一例であり、
図3に示した速度と同様に適宜、定義することができる。
【0039】
図9は、第2実施形態の遠隔支援システム200による遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
ステップS104のあと、ステップS200では、CPU11は、映像から乗客ごとの体格をグルーピングする。
【0041】
ステップS202では、CPU11は、降車する乗客の体格を選択する。オペレータによる降車する乗客の選択(又は乗客の移動の計算による自動選択)によって、乗客の体格を選択する。その後、ステップS108において、遅延量に加えて、選択された体格に基づく減衰速度bを考慮して、ドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。
【0042】
以上説明したように、本開示の第2実施形態に係る遠隔支援システム200によれば、映像の遅延、及び乗客の体格を考慮して、オペレータの操作を支援するようにドアを制御できる。
【0043】
(第3実施形態)
次に第3実施形態を説明する。第3実施形態は降車場所のリスクに応じて、ドア開を制御する場合である。自動運転バスであれば停車するバス停の形式によっては、降車後の安全確保に注意しなくてよい場合があると考えられる。よってバス停それぞれにリスクrを付与しておき、ドア開速度sの計算時に考慮することで、安全に降車可能であることが予めわかっている場合にはドア開速度をあまり落とさずスムーズな運行が可能となる。なお、第1及び第2実施形態と同様となる箇所については同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
図10は、本開示の第3実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
図10に示すように、遠隔支援システム300は、記憶部102と、送受信部110と、遅延計算部112と、体格計算部214と、制御部320とを含んで構成されている。記憶部102にリスク記憶部304を有する。なお、体格の減衰速度s
bを組み合わせて速度を計算してもよいし、しなくてもよい。
【0045】
リスク記憶部304には、降車場所ごとのリスクが格納されている。リスクをr、リスクrの減衰速度をsrとする。なお、バスターミナルなど、安全に降車可能なバス停でドアを開く場合のリスクをrとし、交通量の多いバス停でドアを開く場合のリスクをr’とした場合、s=f(d)+sr>s=f(d)+sr’となるように定義する。
【0046】
なお、送受信部110では、支援要請に降車場所を含めて受信する。
【0047】
制御部320は、遅延量に加えて、降車場所のリスクに基づいて、ドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。ここでは、ドア開速度sをs=f(d)+srとリスクrを考慮して計算する。又は、選択された体格も考慮して、s=f(d)+sb/g+sr/g(g=sb+sr)と計算してもよい。この場合に、体格の減衰速度sb、及びリスクの減衰速度srにそれぞれに重みづけしてもよい。
【0048】
なお、降車場所のリスクは、リスク記憶部304から降車場所のリスクを取得したものを用いてもよいし、取得したリスクに降車場所の映像等から現況を考慮して再計算してもよい。
図11は、リスクに対する減衰速度の変化のグラフの一例を示す図である。この場合、リスクの一例である安全度が大きくなるに従って減衰速度を低下させる。なお、減衰速度の低下の度合いは一例であり、
図3に示した速度と同様に適宜、定義することができる。
【0049】
図12は、第3実施形態の遠隔支援システム300による遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。
【0050】
ステップS202のあと、ステップS300では、CPU11は、リスク記憶部304から降車場所のリスクを取得する。その後、ステップS108において、遅延量に加えて、リスクに基づく減衰速度srを考慮して、ドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。
【0051】
以上説明したように、本開示の第3実施形態に係る遠隔支援システム300によれば、映像の遅延、及び降車場所のリスクを考慮して、オペレータの操作を支援するようにドアを制御できる。
(第4実施形態)
次に第4実施形態を説明する。第4実施形態は降車部付近に存在する移動体に応じて、ドア開を制御する場合である。降車部付近に通行人、及び自転車等の移動体がある場合、接触事故を起こす危険性がある。そこで、移動体の速度、加速度、及び距離の移動体パラメータを計算して、ドア開速度sの計算時に考慮することで、降車部の状況を考慮した運行が可能となる。なお、第1~第3実施形態と同様となる箇所については同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
図13は、本開示の第4実施形態に係る遠隔支援システムの構成を示すブロック図である。
図13に示すように、遠隔支援システム400は、記憶部102と、送受信部110と、遅延計算部112と、体格計算部214と、移動体パラメータ計算部416と、制御部320とを含んで構成されている。なお、体格の減衰速度s
b及びリスクの減衰速度s
rを組み合わせて速度を計算してもよいし、しなくてもよい。
【0053】
移動体パラメータ計算部416は、降車部付近の調整範囲内に移動体が存在する場合に、移動体パラメータの減衰速度spを計算する。移動体パラメータpは、移動体の速度sobs、移動体の加速度aobs、距離dobsのパラメータそれぞれに定義された減衰速度を統合して求める。
【0054】
図14は、降車部付近に移動体が存在している場合の一例を示す図である。遠隔支援システム400は、降車部付近の映像又はセンタ等のセンサ情報を取得する。移動体パラメータ計算部416は、センサ情報から移動体との距離d
obsを計算する。そして、移動体パラメータ計算部416は、移動体の距離d
obsが、車両90の降車部の調整範囲jの範囲内か否かを判定する。範囲内である場合には、移動体パラメータの減衰速度s
pを計算し、範囲内でない場合には計算をしない。
図15は、降車部付近に移動体が存在していない場合の一例を示す図である。このように調整範囲jの外である場合は移動体パラメータの減衰速度s
pの計算を行わない。なお、移動体が複数ある場合には、最も近い移動体について計算を行ってもよい。
【0055】
図16は、移動体の各パラメータに対する減衰速度の変化のグラフの一例を示す図である。この場合、i)速度が大きいほど、ii)加速度が大きいほど、iii)ドアとの距離が小さいほど、ドア開速度sを小さくするように減衰速度を定義する。なお、減衰速度の低下の度合いは一例であり、
図3に示した速度と同様に適宜、定義することができる。なお、移動体の各パラメータを全て用いなくとも、組み合わせて減衰速度s
pを計算してもよい。
【0056】
制御部420は、遅延量に加えて、移動体パラメータの減衰速度spに基づいて、ドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。ここでは、ドア開速度sをs=f(d)+spと移動体パラメータpの減衰速度spを考慮して計算する。なお、選択された体格、及びリスクも考慮して、s=f(d)+sb/g+sr/g+sp/g(g=sb+sr+sp)と計算してもよい。この場合に、体格の減衰速度sb、リスクの減衰速度sr、及び移動体パラメータの減衰速度spにそれぞれに重みづけしてもよい。
【0057】
図17は、第4実施形態の遠隔支援システム400による遠隔支援処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
ステップS300のあと、ステップS400では、CPU11は、センサ情報を取得し、センサ情報から移動体との距離dobsを計算する。
【0059】
ステップS402では、CPU11は、移動体の距離dobsが、車両90の降車部の調整範囲jの範囲内か否かを判定する。範囲内である場合には、ステップS404へ移行し、範囲内でない場合にはステップS106へ移行する。
【0060】
ステップS404では、CPU11は、移動体パラメータの減衰速度spを計算する。
【0061】
その後、ステップS108において、移動体パラメータの減衰速度spが計算されている場合に、遅延量に加えて、移動体パラメータの減衰速度spを考慮して、ドア開速度sを計算し、ドア開指令を生成する。移動体パラメータの減衰速度spが計算されていない場合には、考慮せずにドア開速度sを計算する。
【0062】
以上説明したように、本開示の第4実施形態に係る遠隔支援システム400によれば、映像の遅延、及び移動体パラメータを考慮して、オペレータの操作を支援するようにドアを制御できる。
【0063】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0064】
また、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
100、200、300、400 遠隔支援システム
102 記憶部
110 送受信部
112 遅延計算部
120、220、320、420 制御部
214 体格計算部
304 リスク記憶部
416 移動体パラメータ計算部