(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】非接触給電システムの異常検知装置及び異常検知方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20240326BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240326BHJP
B60L 53/66 20190101ALI20240326BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240326BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240326BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20240326BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
H02J50/40
B60L53/12
B60L53/66
H02J50/10
H02J50/80
H02J50/90
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2021059970
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和行
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249403(JP,A)
【文献】特開2016-63590(JP,A)
【文献】特開2020-178471(JP,A)
【文献】特開2021-16207(JP,A)
【文献】特表2018-508011(JP,A)
【文献】国際公開第2011/071344(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/12
B60L 53/66
H02J 7/00
H02J 50/10
H02J 50/40
H02J 50/80
H02J 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数の送電コイル(112)を有する複数の送電ユニット(100)と、前記複数の送電ユニットから電力を受電する受電コイル(212)を有する車両(200)とを備える非接触給電システムの異常を検知する異常検知装置(300)であって、
前記複数の送電ユニットのそれぞれから送信される送電ユニット情報、及び、前記車両から送信される車両受電情報を受信する情報受信部(310)と、
受信した複数の前記車両受電情報のそれぞれに含まれる前記車両の現在位置情報及び現在位置取得時刻情報から前記車両に対して送電を行なった前記複数の送電ユニットを特定し、特定した前記複数の送電ユニットのそれぞれの前記送電ユニット情報に含まれる送電量情報を比較することで、前記複数の送電ユニットのそれぞれについて、送電状態の異常を診断する診断実行部(350)と、
を備える、異常検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の異常検知装置であって、
前記診断実行部は、送電状態が異常と診断された前記送電ユニットと前記車両の間において、前記送電ユニット情報に含まれる前記送電ユニットの送電量情報と前記車両受電情報に含まれる前記車両の受電量情報とを比較することで、前記送電ユニットの異常が前記送電状態の異常の原因であるか否か特定する、
異常検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の異常検知装置であって、
前記診断実行部は、前記送電ユニットの送電量が無い場合に、前記送電ユニットの異常は故障と診断し、前記送電ユニットの送電量が機能低下判定値以下の場合に、前記送電ユニットの異常は機能低下と診断する、
異常検知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の異常検知装置であって、
前記診断実行部は、前記複数の送電ユニットの上を通過した前記車両における受電が無かった時に、前記車両の通過した期間の前後の一定期間の間に、同じ前記複数の送電ユニットの上を通過した他車両における受電の状態に従って、前記車両が異常か否か診断する、
異常検知装置。
【請求項5】
それぞれが複数の送電コイル(112)を有する複数の送電ユニット(100)と、前記複数の送電ユニットから電力を受電する受電コイル(212)を有する車両(200)とを備える非接触給電システムの異常を検知する異常検知方法であって、
前記複数の送電ユニットのそれぞれから送信される送電ユニット情報、及び、前記車両から送信される車両受電情報を受信する工程(S320)と、
受信した複数の前記車両受電情報のそれぞれに含まれる前記車両の現在位置情報及び現在位置取得時刻情報から前記車両に対して送電を行なった前記複数の送電ユニットを特定し、特定した前記複数の送電ユニットのそれぞれの前記送電ユニット情報に含まれる送電量情報を比較することで、前記複数の送電ユニットのそれぞれについて、送電状態の異常を診断する工程(S350,S360)と、
を備える、異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電システムの異常を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電電力の測定データを用いて故障を診断する電力を送電するシステムが知られている。例えば、特許文献1には、AMIから得られる測定データを用いて統計的外れ値を検出することにより配電網の故障予兆を診断するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が走行する路面に沿って設置される複数の送電ユニットから、車両に搭載される受電ユニットに、非接触で電力を供給する非接触給電システムにおいても、非接触給電システムの異常発生時に速やかに異常箇所を特定して、修理やパーツ交換によって非接触給電システムの機能を維持することが望まれる。
【0005】
各送電ユニットは、通常、路面幅方向の車両の通過位置に関わらず受電装置への送電を可能とするために、路面幅方向及び路面進行方向に沿って複数の送電コイルを設置している。従って、従来技術の診断システムを利用して非接触給電システムの異常を検知するためには、複数の送電コイルのそれぞれに対して、電圧や電流等を計測するための種々のセンサを設ける要求され、装置の大型化、コストの増大等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、それぞれが複数の送電コイル(112)を有する複数の送電ユニット(100)と、前記複数の送電ユニットから電力を受電する受電コイル(212)を有する車両(200)とを備える非接触給電システムの異常を検知する異常検知装置(300)が提供される。この異常検知装置は、前記複数の送電ユニットのそれぞれから送信される送電ユニット情報、及び、前記車両から送信される車両受電情報を受信する情報受信部(310)と、受信した複数の前記車両受電情報のそれぞれに含まれる前記車両の現在位置情報及び現在位置取得時刻情報から前記車両に対して送電を行なった前記複数の送電ユニットを特定し、特定した前記複数の送電ユニットのそれぞれの前記送電ユニット情報に含まれる送電量情報を比較することで、前記複数の送電ユニットのそれぞれについて、送電状態の異常を診断する診断実行部(350)と、を備える。
この形態の非接触給電システムの異常検知装置によれば、各送電コイルに個別のセンサを設けずに、送電ユニット単位で送電の異常を検知することができる。これにより、装置の大型化、コストの増大等を抑制して、非接触給電システムの異常検知装置を設けることができる。
また、本開示の他の一形態によれば、それぞれが複数の送電コイル(112)を有する複数の送電ユニット(100)と、前記複数の送電ユニットから電力を受電する受電コイル(212)を有する車両(200)とを備える非接触給電システムの異常を検知する異常検知方法が提供される。この異常検知方法は、前記複数の送電ユニットのそれぞれから送信される送電ユニット情報、及び、前記車両から送信される車両受電情報を受信する工程(S320)と、受信した複数の前記車両受電情報のそれぞれに含まれる前記車両の現在位置情報及び現在位置取得時刻情報から前記車両に対して送電を行なった前記複数の送電ユニットを特定し、特定した前記複数の送電ユニットのそれぞれの前記送電ユニット情報に含まれる送電量情報を比較することで、前記複数の送電ユニットのそれぞれについて、送電状態の異常を診断する工程(S350,S360)と、を備える。
この形態の非接触給電システムの異常検知方法によれば、各送電コイルに個別のセンサを設けずに、送電ユニット単位で送電の異常を検知することができる。これにより、装置の大型化、コストの増大等を抑制して、非接触給電システムの異常検知を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】非接触給電システムの異常検知装置の概略構成図。
【
図2】送電ユニットにおける異常検知のための処理手順を示す説明図。
【
図3】車両における異常検知のための処理手順を示す説明図。
【
図4】異常検知装置における異常検知のための処理手順を示す説明図。
【
図5】異常検知の説明用に設定した送電ユニットの配置の一例を示す説明図。
【
図7】送電ユニットの送電故障と診断される場合の一例を示す説明図。
【
図8】送電ユニットの送電機能の低下と診断される場合の一例を示す説明図。
【
図9】送電ユニットの情報の送信異常と診断される場合の一例を示す説明図。
【
図10】車両の異常と診断される場合の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
A1.非接触給電システムの異常検知装置の構成:
図1に示すように、複数の送電ユニット100と、車両200とを備える非接触システテムには、一実施形態としての異常検知装置300が設けられている。複数の送電ユニット100は、走行路RSの路面の設置区間に、走行路RSの進行方向に沿って順に配列して設置されている。車両200は、設置区間の路面上を通過する際に、通過する送電ユニット100の順に、後述する受電ユニット210によって非接触で電力の供給を受ける。異常検知装置300は、後述するように、各送電ユニット100から送信される送電ユニット情報、及び、車両200から送信される車両受電情報を受信して、各送電ユニット100と車両200との間の送電状態の異常を検知する。
【0009】
送電ユニット100は、送電部110と、交流電源120と、送電量検出部130と、送電情報送信部140と、を有している。
【0010】
送電部110は、走行路RSの路面に設置されており、走行路RSの路面の進行方向及び幅方向に沿って配列された複数の送電コイル112を有している。複数の送電ユニット100のそれぞれの送電部110は、走行路RSの路面の設置区間に、走行路RSの進行方向に沿って順に配設されている。
【0011】
交流電源120は、複数の送電コイル112、具体的には、実際に車両200に送電を行なう少なくとも1つの送電コイル112に送電用の周波数の交流の電力を印加する。交流電源120としては、系統電源からの交流電力を直流電力に変換する装置(例えば、整流装置)や、直流電力を送電用の周波数の交流電力に変換する装置(例えば、インバータ)等、を含む装置によって構成される。
【0012】
車両200の受電コイル212と結合状態となる送電コイル112を含む送電回路には、その送電回路のインピーダンスが低インピーダンスとなって、送電用の交流電力が供給される。これに対して、受電コイル212と結合状態とならない送電コイル112を含む送電回路には、その送電回路のインピーダンスが高インピーダンスとなって、送電用の交流電力に比べて小さな交流電力が供給される。従って、交流電源120は、車両200が送電部110の上を通過している際には、送電用の大きな交流電力を出力する状態となり、車両200が送電部110の上を通過していない際には、送電用の交流電力に比べて小さな待機用の交流電力を出力する構成とすることができる。なお、交流電源120は、車両200の位置と送電ユニット100の位置との関係により、送電用の交流電力を出力する状態と、交流電力を出力しない状態と、が切り替えられる構成としてもよい。
【0013】
送電量検出部130は、交流電源120から送電部110へ出力する送電量を計測し、計測した送電量を示す送電量情報、及び、送電時刻を示す送電時刻情報を取得する。送電量検出部130としては、例えば、電流計、電圧計、電力計等のセンサ、及び、これらのセンサを制御して送電量情報及び送電時刻情報を取得する装置によって構成される。
【0014】
送電情報送信部140は、異常検知装置300との間で通信を行ない、前記送電量情報及び前記送電時刻情報を含む送電ユニット情報を異常検知装置300に送信する通信部である。送電情報送信部140と異常検知装置300との間の通信は、無線であっても有線であってもよい。
【0015】
送電ユニット100では、例えば、
図2に示す処理が実行されることで、送電ユニット情報が異常検知装置300に送信される。
図2に示す処理は、送電ユニット100の起動に従って処理が開始されてから処理の終了が指示される(ステップS160:YES)までの間、繰り返し実行される。
【0016】
まず、ステップS110では、送電開始となるまで、送電量検出部130が待機状態となる。なお、送電開始は、交流電源120の出力が待機電力から送電用の電力に変化するタイミングが検出されることで判定される。待機電力から送電用の電力への変化は、例えば、予め定めた大きさ以上の電力の発生を検出することで検出することができる。なお、車両200の位置と送電ユニット100の位置との関係により、交流電源120の動作を切り替える構成の場合、送電開始は、その切り替えのタイミングによって判定されるようにすることも可能である。
【0017】
送電開始となった場合(ステップS110:YES)、ステップS120では、送電終了となるまでの間(ステップS130:NO)、送電量検出部130が送電電力を計測して送電量を計測する。なお、送電量は、送電開始から送電終了までの送電電力の積算値、である。また、送電量は、積算値を送電開始から送電終了までの時間(以下、「送電時間」)で割った単位時間当たりの電力量としてもよい。送電終了は、交流電源120の出力が送電用の電力から待機電力に戻るタイミングを検出することで判定することができる。なお、車両200の位置を検出して、交流電源120の動作を切り替える構成の場合、送電終了は、送電開始と同様に、その切り替えのタイミングによって判定することも可能である。
【0018】
送電終了となった場合(ステップS130:YES)、ステップS140では、送電量検出部130が、送電が実行された送電時刻を示す送電時刻情報及び送電量を示す送電量情報を取得する。そして、ステップS150では、送電情報送信部140が、取得された送電時刻情報及び送電量情報と、送電ユニットの識別情報と、を送電ユニット情報として、異常検知装置300に送信する。なお、送電時刻情報としては、例えば、送電終了時刻の情報が適用される。但し、これに限定されるものではなく、送電開始時刻の情報や、送電開始時刻及び送電終了時刻の情報、送電開始時刻及び送電時間の情報等が適用されてもよい。
【0019】
以上の処理により、送電ユニット100では、起動から終了までの間、送電実行の度に送電量の計測及び送電ユニット情報の送信が実行される。
【0020】
車両200は、
図1に示すように、受電ユニット210と、受電量検出部220と、位置情報取得部230と、受電情報送信部240と、を有している。
【0021】
受電ユニット210は、受電コイル212を有しており、送電コイル112と受電コイル212との間が磁気的に結合された状態において、受電コイル212に誘導された交流電力を得る。受電コイル212で受電された交流電力は、不図示の受電回路によって直流電力に変換され、不図示のバッテリに充電される。バッテリに充電された電力は、車両200に搭載された種々の電力を利用する装置、例えば、駆動モータや、各種計器、各種電装部品等の駆動に利用される。
【0022】
受電量検出部220は、受電ユニット210による電力の受電量を計測し、計測した受電量を示す受電量情報を取得する。受電量検出部220としては、例えば、電流計、電圧計、電力計等のセンサ、及び、これらのセンサを制御して受電量情報を取得する装置によって構成される。なお、計測する受電量は、受電コイル212で受電された交流電力の受電量であっても、変換された直流電力の受電量であってもよい。
【0023】
位置情報取得部230は、現在の位置を示す現在位置情報を取得するとともに、現在位置情報を取得した時刻を示す現在位置取得時刻情報を取得する。位置情報取得部230としては、例えば、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System、GNSS)によって構成される。なお、現在位置情報及び現在位置取得時刻情報の取得は、常時であっても、受電量検出部220による受電量が検出されるタイミングに限定されていてもよい。
【0024】
受電情報送信部240は、異常検知装置300との間で通信を行ない、現在位置情報及び現在位置取得時刻情報と、受電量情報と、を含む車両受電情報を異常検知装置300に送信する通信部である。受電情報送信部240と異常検知装置300との間の通信は、主に無線通信が利用される。但し、無線通信のアクセスポイントまでを無線通信とし、アクセスポイントと異常検知装置300との間を有線通信とすることも可能である。
【0025】
車両200では、例えば、
図3に示す処理が実行されることで、車両受電情報が異常検知装置300に送信される。
図3に示す処理は、車両200の起動に従って処理が開始されてから処理の終了が指示される(ステップS250:YES)までの間、繰り返し実行される。
【0026】
まず、ステップS210では、位置情報取得部230が、現在の位置を示す現在位置情報を取得するとともに、現在位置情報を取得した時刻を示す現在位置取得時刻情報を取得する。そして、ステップS220では、受電量検出部220が、受電ユニット210による電力の受電量を計測し、計測した受電量を示す受電量情報を取得する。なお、ステップS210とステップS220の処理は、ステップS220、ステップS210の順に行なわれてもよく、また、ステップS210とステップS220の処理が並列に行なわれてもよい。なお、受電量は、1つの処理ステップの期間で取得される単位時間当たりの電力量である。
【0027】
そして、ステップS230では、受電情報送信部240が、車両受電情報を送信する状況であるか否か判定する。この判定は、例えば、位置情報取得部230に予め格納されている地図情報から、取得した現在位置情報の示す現在位置が、送電ユニットの設置区間の範囲内にあるか否かにより判定することができる。そして、現在位置が設置区間の範囲外にある場合には、送信する状況に無いと判定し(ステップS230:NO)、現在位置が設置区間の範囲内にある場合には、送信する状況にあると判定する(ステップS230:YES)。
【0028】
送信する状況に無い場合(ステップS230:NO)、位置情報取得部230によるステップS210の処理、及び、受電量検出部220によるステップS220の処理が繰り返し実行される。一方、送信する状況にある場合(ステップS230:YES)、受電情報送信部240は、ステップS240において、現在位置情報及び現在位置取得時刻情報と、受電量情報と、を車両受電情報として、異常検知装置300に送信する。
【0029】
異常の処理により、車両200では、起動から終了までの間、位置情報の取得、並びに、受電量の計測が実行され、車両受電情報を送信すべき状況において車両受電情報の送信
が実行される。
【0030】
異常検知装置300は、
図1の設置区間の複数の送電ユニット100の他、種々の設置区間の複数の送電ユニットから送信される送電ユニット情報、及び、
図1の車両200の他、種々の設置区間を通過した種々の車両から送信される車両受電情報を受信して、車両が通過した送電ユニットとその車両との間の送電状態の異常を診断する。異常検知装置300は、コンピュータ、例えば、サーバーを用いて構成される。
【0031】
異常検知装置300は、
図1に示すように、情報受信部310と、登録情報記憶部320と、車両受電情報記憶部330と、送電ユニット情報記憶部340と、診断実行部350と、を有している。
【0032】
情報受信部310は、
図1の設置区間の複数の送電ユニット100の他、種々の設置区間の複数の送電ユニットとの間で通信を行ない、それぞれから送信される送電ユニット情報を受信する通信部である。また、情報受信部310は、
図1の車両200の他、種々の設置区間を通過した種々の車両との間で通信を行ない、それぞれから送信される車両受電受電情報を受信する通信部である。各送電ユニットとの間の通信手段、各車両との間の通信手段は、上記の送電ユニット100の送電情報送信部140及び車両200の受電情報送信部240の説明で述べた通りである。
【0033】
受信した送電ユニット情報は送電ユニット情報記憶部340に順次蓄積され、受信した車両受電情報は車両受電情報記憶部330に順次蓄積される。登録情報記憶部320には、診断対象となる送電ユニットの識別情報と、その送電ユニットの設置場所を示す設置場所情報とが、予め登録されて格納されている。
【0034】
診断実行部350は、受信した車両受電情報に対応する車両に対して送電を行なった複数の送電ユニットを特定して、特定した複数の送電ユニットの送電ユニット情報と、対応する複数の車両受電情報とを、比較することで、複数の送電ユニットのそれぞれと車両との間の送電状態の異常診断を実行し、異常を検知する。
【0035】
異常検知装置300は、例えば、
図4に示す処理が実行することで、送電ユニット情報や車両受電情報を受信し、受信した車両受電情報に対応する車両に対して送電を行なった複数の送電ユニットを特定する。そして、特定した複数の送電ユニットの送電ユニット情報と、対応する複数の車両受電情報と、を比較することで、特定した複数の送電ユニットのそれぞれと車両との間の送電状態の診断を実行し、異常を検知する。
図4に示す処理は、異常検知装置300の起動に従って処理の開始が指示されてから処理の終了が指示される(ステップS380:YES)までの間、繰り返し実行される。
【0036】
まず、ステップS310では、情報受信部310は、いずれかの送電ユニット100あるいは車両200からの情報送信があるまで待機状態となる。情報送信があった場合(ステップS310:YES)、ステップS320において、情報受信部310は、送信されてきた情報を受信し、対応する記憶部に順次蓄積する。具体的には、送電ユニット情報は送電ユニット情報記憶部340に蓄積され、車両受電情報は車両受電情報記憶部330に蓄積される。
【0037】
次に、ステップS330では、診断実行部350が、診断要か否か判定しする。具体的には、例えば、ある設置区間内を通過中の車両から車両受電情報を受信し、それに含まれる受電量情報の示す受電量があらかじめ設定した値よりも低い値であった場合に、診断要と判定する。あらかじめ設定した値は、例えば、正常ではないと推定される程度に、定格値よりも低い値に設定される。
【0038】
診断不要の場合(ステップS330:NO)、ステップS310,S320の処理が繰り返し実行される。一方、診断要の場合(ステップS330:YES)、さらに、ステップS340において、診断実行部350が、診断開始か否か判定する。具体的には、診断要が発生した後、同じ設置区間内を通過することでその車両から送信されてくる車両受電情報として、一定期間の範囲内の間に受信される車両受電情報を取得した場合に、診断開始と判定する。なお、この判定は、車両受電情報に含まれる現在位置情報の示す現在位置と、登録情報記憶部320に登録されている送電ユニットの設置位置と、を比較することで、判定することができる。一定期間は、例えば、送電ユニット情報の比較のために少なくとも必要と考えられる数の送電ユニット情報を取得可能とするように設定される。
【0039】
診断開始でない場合(ステップS340:NO)、ステップS310~ステップS330の処理が繰り返し実行される。一方、診断開始の場合(ステップS340:YES)、診断実行部350は、ステップS350において、診断実行部350は、診断要と判定された車両受電情報を送信した車両が通過した診断の対象となる送電ユニットを特定する。そして、診断実行部350は、ステップS360において、特定した対象送電ユニットが送信した対象送電ユニット情報と、対象車両受電情報との比較により、異常診断を実行し、ステップS370において、異常診断の結果を通知する。異常診断の結果の通知は、例えば、異常検知装置300の不図示の表示画面に異常診断の結果を表示することで実行される。また、異常検知装置300の管理者の端末に異常診断の結果を不図示のネットワークを介して送信することで、異常診断の結果の通知が実行されるようにしてもよい。また、送電ユニットに異常があった場合には、その送電ユニットを管理する管理者の端末に異常診断の結果を不図示のネットワークを介して送信することで、異常診断の結果の通知が実行されるようにしてもよい。また、受電側である車両の異常があった場合には、その車両に対して不図示のネットワークを介して異常診断の結果が送信されることで、異常診断の結果の通知が実行されるようにしてもよい。
【0040】
以上説明した非接触給電システムの異常検知装置300は、車両から送信された車両受電情報に含まれる現在位置情報及び現在位置取得時刻情報から、その車両に対して送電を行なった複数の送電ユニットを特定する。そして、特定した複数の送電ユニットの送電ユニット情報に含まれる送電量情報と、対応する車両の複数の車両受電情報に含まれる受電量情報と、が比較されることで、複数の送電ユニットのそれぞれと車両との間の送電状態の異常診断を実行することにより、異常を検知することができる。従って、課題で説明したように、各送電コイルに個別の個別のセンサを設けずに、送電ユニット単位で送電の異常を検知することができる。これにより、装置の大型化、コストの増大等を抑制して、非接触給電システムに異常検知装置を設けることができる。
【0041】
A2.異常診断:
以下では、診断実行部350によって実行される異常診断の例について説明する。なお、異常診断の説明を容易にするため、
図5に示すように、走行路RSのA地点~M地点の位置にある設置区間において、C地点からL地点の10地点に送電ユニット100が設置されており、これらの上を、1台の車両200がその通行経路に沿って通過した場合を前提として説明する。なお、設置された各送電ユニット100を区別するため、C地点からL地点のそれぞれの送電ユニット100に番号を付けて、送電ユニット1、送電ユニット2、・・・送電ユニット10と呼ぶこととする。また、通過する車両200も、同様に、番号を付けて、例えば、通過する順に車両1,車両2、・・・と呼ぶこととする。
【0042】
(正常な状態の例)
図4に示した異常診断の処理によれば、
図5に示した送電ユニット1から送電ユニット10までの各送電ユニットと車両1との間の送電状態が全て正常な状態の場合、処理不可の軽減のため、診断は実行されない。但し、後述する送電状態が異常な状態を明確にする上で、送電ユニット1から送電ユニット10までの各送電ユニットと車両1との間の送電状態が正常な状態の場合について説明しておく。
【0043】
図6には、車両1が通過した設置区間の各送電ユニットと車両1との間の送電状態が正常な状態の場合における、車両1の車両受電情報と、車両1の車両受電情報から特定される対象送電ユニットの送電ユニット情報と、が比較されて示されている。
図6の右側には、車両1の車両受電情報である対象車両受電情報として、受電の時刻と、その時刻における車両の位置と、その時刻における受電量の情報が示されている。また、
図6の左側には、各受電の時刻及びその時刻における車両の位置から特定される対象送電ユニットの送電ユニット情報として、太実線枠で示すように、送電の時刻における送電量の情報が示されている。なお、正常な状態での送電量及び受電量は、定格の大きさに等しい大きさを10として、定格の大きさに対する相対値として示されている。これに対して、実際の送電量及び受電量は、正常な状態であっても、環境や条件に応じて変動するものである。但し、正常な状態での変動は、診断の例の説明を容易にする上で、変動を無視して説明しても差し支えないと言える。そこで、以下では、説明を容易にするため、正常な状態での送電量及び受電量を10として説明する。また、各送電ユニットにおいて、太実線枠以外の時刻における送電量は0となっている。これは、上記したように、送電が行なわれない場合は、送電ユニット情報が送信されないことから、送電量は0としているものである。
【0044】
図6に示すように、車両1は、時刻8時00分02秒から時刻8時00分11秒までの間に、送電ユニット1から送電ユニット10までの各送電ユニットの上を1秒間隔で順に通過しており、各送電ユニットは順に送電量10の電力を車両1に送電し、これに応じて、車両1は受電量10の電力を受電している。従って、
図6に示された情報は、各送電ユニットと車両1との間の送電状態が正常な状態を示している。
【0045】
(異常な送電状態の例:送電ユニットの送電故障)
次に、異常な送電状態の例として送電ユニットに送電故障が発生している場合について説明する。
図7には、車両1が通過した設置区間の各送電ユニットのうち送電ユニット5と車両1との間の送電状態が送電故障により異常な状態となっている場合における、車両1の車両受電情報と、車両1の車両受電情報から特定される対象送電ユニットの送電ユニット情報と、が比較されて示されている。
【0046】
図7に示すように、車両1は、時刻8時00分02秒から時刻8時00分11秒までの間に、送電ユニット1から送電ユニット10までの各送電ユニットの上を1秒間隔で順に通過している。そして、時刻8時00分06秒において、送電ユニット5の送電量と、車両1の受電量の両方が0(太破線枠で示す)となっている。この場合、その時刻の前後の一定期間の時刻の範囲内において特定される複数の対象送電ユニットの送電量の情報(太一点鎖線枠中の太実線枠で示す情報)を用いることで、診断に用いる情報量を削減する。本例では、送電ユニット5の前側に配置された送電ユニット3,4、及び、後側に配置された送電ユニット6,7の情報と、送電ユニット5の情報と、を比較する。送電ユニット3,4,6,7の送電量はいずれも10となっており、それぞれの対応する送電の時刻における車両1の受電量も10となっている。これに対して、送電ユニット5の送電量は0となっており、対応する車両1の受電量も0となっている。この場合、診断実行部350は、送電ユニット5と車両1との間の送電状態の異常、具体的には、送電ユニット5の送電する機構が故障であると診断ことができる。なお、上記説明では、送電量に異常が発生した時刻の前後の一定期間の時刻の範囲内の情報を用いて診断することで、情報量を削減しているが、診断に用いる情報量の多さを考慮しないで診断を行なうようにしてもよい。この情報量の削減の点については、以下の説明でも同様である。なお、送電する機構の故障には、交流電源120の故障、及び、送電部110の故障の少なくとも一方が含まれる。
【0047】
(異常な送電状態の例:送電ユニットの送電機能低下)
次に、異常な送電状態の例として、送電ユニットに送電機能の低下が発生している場合について説明する。
図8には、車両1が通過した設置区間の各送電ユニットのうち送電ユニット5と車両1との間の送電状態が機能低下により異常な状態となっている場合における、車両1の車両受電情報と、車両1の車両受電情報から特定される対象送電ユニットの送電ユニット情報と、が比較されて示されている。
【0048】
図8に示すように、車両1は、時刻8時00分02秒から時刻8時00分11秒までの間に、送電ユニット1から送電ユニット10までの各送電ユニットの上を1秒間隔で順に通過している。そして、時刻8時00分06秒において、送電ユニット5の送電量と、車両1の受電量の両方が5(太破線枠で示す)となっている。この場合も、この時刻の前後の一定期間の時刻の範囲内において特定される複数の対象送電ユニットの送電量の情報(太一点鎖線枠で示す)を用いる。送電ユニット5の前側に配置された送電ユニット3,4、及び、後側に配置された送電ユニット6,7における送電量はいずれも10となっており、それぞれの対応する時刻における車両1の受電量も10となっている。これに対して、送電ユニット5の送電量は5となっており、対応する車両1の受電量も5となっている。この場合、上記した範囲内での送電量の平均値、本例では、9に対して、送電ユニット5の送電量が5と大きく異なっている。送電ユニット5の送電量は、例えば、平均値から機能低下により発生する低下量Δ(例えば2)を差し引いた機能低下判定値(平均値―Δ)=7よりも小さいくなっている。そこで、診断実行部350は、送電ユニット5と車両1との間の送電状態の異常、具体的には、送電ユニット5の送電する機構に機能低下が発生しており、故障の予兆が発生していると診断することができる。なお、この機能低下としては、送電部110に含まれる複数の送電コイル112のうち、あらかじめ定めた数の送電コイル112が断線や短絡により送電不可となっている状態や、経年劣化により送電コイル112の特性が変化した場合、交流電源120の機能低下等が考えられる。
【0049】
(異常な送電状態の例:送電ユニット情報の送信異常)
次に、異常な送電状態の例として、送電ユニット情報の送信異常が発生している場合について説明する。
図9には、車両1が通過した設置区間の各送電ユニットのうち送電ユニット5と車両1との間の送電状態が情報の送信異常により異常な状態となっている場合における、車両1の車両受電情報と、車両1の車両受電情報から特定される対象送電ユニットの送電ユニット情報と、が比較されて示されている。
【0050】
図9に示すように、車両1は、時刻8時00分02秒から時刻8時00分11秒までの間に、送電ユニット1から送電ユニット10までの各送電ユニットの上を1秒間隔で順に通過している。そして、時刻8時00分06秒において、送電ユニット5の送電量は0(太破線枠で示す)となっている。この場合も、その時刻の前後の一定期間の時刻の範囲内において特定される複数の対象送電ユニットの送電量の情報(太一点鎖線枠中の太実線枠で示す情報)を用いる。送電ユニット5の前側に配置された送電ユニット3,4、及び、後側に配置された送電ユニット6,7における送電量はいずれも10となっており、それぞれの対応する送電の時刻における車両1の受電量も10となっている。このことから、送電ユニット5の送電状態が異常と考えられる。但し、送電ユニット5が送電するはずの時刻8時00分06秒において、車両1の受電量は10(破線枠で示す)となって、正常な受電がなされている。このことから、送電ユニット5は実際には正常に送電を行なっていると考えられる。この結果から、診断実行部350は、送電ユニット5の送電状態の異常は、情報の送信する機構に異常が発生していると診断することができる。
【0051】
(異常な送電状態の例:受電側の異常)
次に、異常な送電状態の例として、受電側である車両に異常が発生している場合について説明する。
図10には、車両1が通過した設置区間の各送電ユニットと車両1との間での送電状態がいずれも異常な状態の場合における、車両1の車両受電情報と、車両1の車両受電情報から特定される対象送電ユニットの送電ユニット情報と、が比較されて示されている。
【0052】
図10に示すように、車両1は、時刻8時00分02秒から時刻8時00分11秒までの間に、送電ユニット1から送電ユニット10までの各送電ユニットの上を1秒間隔で順に通過している。しかしながら、車両1の受電量はいずれの位置においても0であり、車両1の位置情報から特定されるいずれの送電ユニットの送電量も0(太実線枠で示す)となっている。この場合、診断実行部350は、送電状態に異常があることは検知することができる。しかしながら、送電側と受電側のいずれに異常が発生しているかを特定することはできない。
【0053】
そこで、このような場合には、診断実行部350は、車両1に後続して通過する他の車両2の受電状態を確認することで、受電側である車両1に異常があるのか、送電側である各送電ユニットに異常があるのか診断することができる。
【0054】
例えば、後続して通過する他の車両2の受電状態が正常な状態(
図6参照)であった場合には、受電ができなかった車両1において、電力を受電する機構、あるいは、車両受電情報を送信する機構に異常があると診断することができる。なお、他の車両2の受電状態も車両1と同様(
図10参照)であった場合には、各送電ユニットの送電する機構に故障があると診断することができる。
【0055】
以上説明した診断の例は、1つの設置区間の複数の送電ユニット100の上を通過する1台の車両200との間の送電状態の異常の診断を例に説明したが、この設置区間を通過する他の車両についても同様に送電状態の異常の診断が可能である。また、他の設置区間についても同様である。
【0056】
B.他の実施形態:
上記実施形態において、車両200から異常検知装置300への車両受電情報の送信は、送電ユニットが設置されている設置区間の範囲内に車両の現在位置がある場合に、実行されるものとして説明した(
図3のステップS230の説明参照)。しかしながら、これに限定されるものではなく、車両の現在位置に関わらず、常時実行されるようにしてもよい。この場合、車両受電情報には、例えば、車両の現在位置が設置区間の範囲内にあって、受電可能な状態となっているか否かを示す受電許可状態情報が含まれるようにしてもよい。このようにすれば、異常検知装置300は、受電許可状態にある場合に受信した車両受電情報に含まれる受電量から、診断要否の判定を行ない(
図4のステップS330の説明参照)、異常の診断を実行することができる。
【0057】
また、上記実施形態において、異常検知装置300の診断実行部350による診断は、診断要となった後、一定期間の範囲内の間に受信される車両受電情報を取得した場合に、開始されるものとして説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、設置区間を通過する間に、各送電ユニットの設置位置における車両受電情報の全てを取得した場合に、開始されるようにしてもよい。
【0058】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
100…送電ユニット、110…送電部、112…送電コイル、120…交流電源、130…送電量検出部、140…送電情報送信部、200…車両、210…受電ユニット、212…受電コイル、220…受電量検出部、230…位置情報取得部、240…受電情報送信部、300…異常検知装置、310…情報受信部、320…登録情報記憶部、330…車両受電情報記憶部、340…送電ユニット情報記憶部、350…診断実行部