(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01R13/52 301Z
H01R13/52 Z
(21)【出願番号】P 2021085271
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】田丸 宏樹
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208987(WO,A1)
【文献】特開2009-021146(JP,A)
【文献】特開2010-192309(JP,A)
【文献】特開2007-250404(JP,A)
【文献】特開2003-308742(JP,A)
【文献】特開2016-119821(JP,A)
【文献】特開2019-075882(JP,A)
【文献】特開2019-075883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、前記芯線の外周を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外周を覆う編組部材とを有するシールド電線と、
前記編組部材の外周を覆うハウジングと、
前記編組部材の網目を埋めつつ、前記ハウジングと前記絶縁被覆との間に設けられる止水部材と
を備えるワイヤハーネスであって、
前記止水部材は、弾性部を有し、前記ハウジングと前記絶縁被覆との間に挟持されるワイヤハーネス。
【請求項2】
前記止水部材は、樹脂部と、前記弾性部とを有し、
前記樹脂部は、前記編組部材の網目を埋めつつ前記絶縁被覆に到達する範囲に設けられ、
前記弾性部は、前記ハウジングと前記樹脂部との間に挟持される請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記弾性部は、前記樹脂部よりも低い硬度を有する請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記樹脂部は、前記絶縁被覆に接着される請求項2または請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記絶縁被覆と前記樹脂部とは、共にポリオレフィン系の樹脂製である請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記止水部材は、全体が前記弾性部である請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記止水部材は、径方向の内側が前記絶縁被覆に接着されているとともに、径方向の外側が圧潰されて前記ハウジングに密着されている請求項6に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスとしては、電線と電線の外周を覆う編組部材とを有するシールド電線と、編組部材の外周を覆うグロメットと、編組部材の網目を埋めつつ電線とグロメットとの間に設けられる止水部とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。止水部は、樹脂製であり、編組部材の網目に入り込むようにモールド成形される。このように構成されたワイヤハーネスでは、金属製の編組部材による電磁シールド効果を途切れさせることなく、止水部によって、例えば、水等の液体が電線に沿って移動することが阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなワイヤハーネスでは、止水部の外周がグロメットに押さえ付けられているものの、グロメットの弾性によってのみ押さえ付けられているため、例えば、グロメットが劣化すると、止水部の止水性を保てない虞がある。すなわち、グロメットが劣化すると、止水部とグロメットとの間や、止水部と電線との間を液体が通過可能となる虞がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、止水性及びその耐久性を向上可能としたワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、芯線と、前記芯線の外周を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外周を覆う編組部材とを有するシールド電線と、前記編組部材の外周を覆うハウジングと、前記編組部材の網目を埋めつつ、前記ハウジングと前記絶縁被覆との間に設けられる止水部材とを備えるワイヤハーネスであって、前記止水部材は、弾性部を有し、前記ハウジングと前記絶縁被覆との間に挟持される。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワイヤハーネスによれば、止水性及びその耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態におけるワイヤハーネスの一部断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態におけるワイヤハーネスの製造過程を説明するための断面図である。
【
図3】
図3は、別例におけるワイヤハーネスの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のワイヤハーネスは、
[1]芯線と、前記芯線の外周を覆う絶縁被覆と、前記絶縁被覆の外周を覆う編組部材とを有するシールド電線と、前記編組部材の外周を覆うハウジングと、前記編組部材の網目を埋めつつ、前記ハウジングと前記絶縁被覆との間に設けられる止水部材とを備えるワイヤハーネスであって、前記止水部材は、弾性部を有し、前記ハウジングと前記絶縁被覆との間に挟持される。
【0010】
同構成によれば、止水部材は、自らが弾性部を有するため、例えば、グロメットの弾性によってのみ絶縁被覆に押さえ付けられている構成に比べて、止水性及びその耐久性を高くすることができる。
【0011】
[2]前記止水部材は、樹脂部と、前記弾性部とを有し、前記樹脂部は、前記編組部材の網目を埋めつつ前記絶縁被覆に到達する範囲に設けられ、前記弾性部は、前記ハウジングと前記樹脂部との間に挟持されることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、樹脂部が弾性部によって絶縁被覆に押さえ付けられるため、止水性及びその耐久性を高くすることができる。
[3]前記弾性部は、前記樹脂部よりも低い硬度を有することが好ましい。
【0013】
同構成によれば、弾性部が圧潰されつつ樹脂部が絶縁被覆に押さえ付けられる。
[4]前記樹脂部は、前記絶縁被覆に接着されることが好ましい。
同構成によれば、接着により樹脂部と絶縁被覆との間の隙間がなくなるため、止水性及びその耐久性を高くすることができる。
【0014】
[5]前記絶縁被覆と前記樹脂部とは、共にポリオレフィン系の樹脂製であることが好ましい。
同構成によれば、絶縁被覆と樹脂部との接着性が良好となる。
【0015】
[6]前記止水部材は、全体が前記弾性部であることが好ましい。
同構成によれば、止水部材の弾性によって、ハウジングと止水部材とが密着するとともに止水部材と絶縁被覆とが密着するため、簡素な構成で止水性及びその耐久性を高くすることができる。
【0016】
[7]前記止水部材は、径方向の内側が前記絶縁被覆に接着されているとともに、径方向の外側が圧潰されて前記ハウジングに密着されていることが好ましい。
同構成によれば、止水部材は、径方向の内側で接着により絶縁被覆との隙間を埋めるとともに、径方向の外側で圧潰によりハウジングとの隙間を埋める。よって、径方向の内外で止水性及びその耐久性を高くすることができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
[ワイヤハーネス10の構成]
図1に示すように、ワイヤハーネス10は、シールド電線20と、コネクタ30と、止水部材40とを備えている。
【0019】
[シールド電線20]
シールド電線20は、電線21と、編組部材22とを有している。電線21は、導体よりなる芯線23と、芯線23の外周を覆う絶縁被覆24とを有している。本実施形態の絶縁被覆24は、ポリオレフィン系の樹脂製である。編組部材22は、絶縁被覆24の外周を覆う。編組部材22は、複数の金属素線が編まれてなる。金属素線の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0020】
[コネクタ30の構成]
コネクタ30は、ハウジング31を有している。ハウジング31は、筒状に形成されている。ハウジング31は、編組部材22の外周を覆う。また、コネクタ30は、芯線23と電気的に接続される図示しない端子等を有している。
【0021】
[止水部材40]
止水部材40は、編組部材22の網目を埋めつつ、ハウジング31の内面と絶縁被覆24の外面との間に挟持されている。止水部材40は、ハウジング31の開口端部に設けられている。
【0022】
詳述すると、止水部材40は、樹脂部41と、弾性部42とを有している。樹脂部41は、編組部材22の網目を埋めつつ絶縁被覆24に到達する範囲に設けられている。樹脂部41の外周面は、編組部材22の外周面よりも外側に設けられている。樹脂部41の外周面は、凹凸の無い平坦面とされている。樹脂部41は、絶縁被覆24に接着されている。樹脂部41は、ポリオレフィン系の樹脂製である。
【0023】
図2に示すように、樹脂部41は、編組部材22の外周に配置される成形型50によって囲われた範囲に溶融状態の樹脂材が充填されてモールド成型される。このとき、溶融状態の樹脂材は、径方向外側から編組部材22の網目、詳しくは編組部材22を構成する金属素線同士の隙間に入り込み、絶縁被覆24に到達した後に硬化しつつ絶縁被覆24と接着される。
【0024】
図1に示すように、弾性部42は、筒状に形成されている。弾性部42は、ゴム製である。弾性部42は、樹脂部41よりも低い硬度を有する。弾性部42は、ハウジング31と樹脂部41との間に挟持されている。言い換えると、弾性部42は、ハウジング31と樹脂部41との間で圧縮された状態で保持されている。
【0025】
上記のように構成されたワイヤハーネス10の作用について説明する。
編組部材22の網目を埋めるように設けられる止水部材40によって、編組部材22の電磁シールド効果が途切れることがなく、例えば、コネクタ30の外部から水等の液体が電線21に沿ってコネクタ30の内部に浸入することが阻止される。
【0026】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)止水部材40は、自らが弾性部42を有し、ハウジング31と絶縁被覆24との間に挟持されるため、例えば、グロメットの弾性によってのみ絶縁被覆に押さえ付けられている従来の構成に比べて、止水性及びその耐久性を高くすることができる。また、例えば、編組部材22の外周全体をシース等で覆うことで止水性を確保する場合に比べて、シース等が不要になるとともに、シース等によって柔軟性が阻害されないのでワイヤハーネス10の柔軟性を確保することができる。
【0027】
(2)止水部材40は、樹脂部41と弾性部42とを有している。そして、止水部材40は、弾性部42がハウジング31と樹脂部41との間に挟持されることで、樹脂部41が弾性部42によって絶縁被覆24に押さえ付けられるため、止水性及びその耐久性を高くすることができる。弾性部42は、樹脂部41よりも低い硬度を有することで、弾性部42が圧潰されつつ樹脂部41が絶縁被覆24に押さえ付けられる。
【0028】
(3)樹脂部41は、絶縁被覆24に接着され、接着により樹脂部41と絶縁被覆24との間の隙間がなくなるため、止水性及びその耐久性を高くすることができる。
(4)絶縁被覆24と樹脂部41とは、共にポリオレフィン系の樹脂製であるため、絶縁被覆24と樹脂部41との接着性が良好となる。
【0029】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、止水部材40は、樹脂部41と弾性部42とを有するとしたが、編組部材22の網目を埋めつつ、弾性部を有してハウジング31と絶縁被覆24との間に挟持されれば他の構成に変更してもよい。
【0030】
例えば、
図3に示すように、止水部材60は、全体が弾性部であってもよい。すなわち、この例の止水部材60は、全体が、例えばゴム製である。そして、止水部材60は、編組部材22の網目を埋めるように設けられ、ハウジング31と絶縁被覆24との間に挟持されている。なお、この例の止水部材60は、絶縁被覆24に接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。詳しくは、止水部材60は、径方向の内側が絶縁被覆24に接着されているとともに、径方向の外側が圧潰されてハウジング31に密着されている構成としてもよい。
【0031】
このようにしても、止水部材60の弾性によって、ハウジング31と止水部材60とが密着するとともに止水部材60と絶縁被覆24とが密着するため、簡素な構成で止水性及びその耐久性を高くすることができる。また、上記実施形態のように樹脂部41と弾性部42とを有した止水部材40と比べて、成形部品の点数を少なくすることができ、容易に得ることができる。また、止水部材60が絶縁被覆24に接着された構成とすると、接着により止水部材60と絶縁被覆24との間の隙間がなくなるため、止水性及びその耐久性をより高くすることができる。詳しくは、止水部材60は、径方向の内側で接着により絶縁被覆24との隙間を埋めるとともに、径方向の外側で圧潰によりハウジング31との隙間を埋めることによって、径方向の内外で止水性及びその耐久性を高くすることができる。
【0032】
・上記実施形態では、樹脂部41は、絶縁被覆24に接着されるとしたが、これに限定されず、接着されていなくてもよい。
・上記実施形態では、絶縁被覆24と樹脂部41とは、共にポリオレフィン系の樹脂製であるとしたが、絶縁被覆24及び樹脂部41の材料はそれぞれ変更してもよい。なお、絶縁被覆24及び樹脂部41の材料を変更する場合は、絶縁被覆24と樹脂部41との接着性が良好な材料とすることが好ましい。
【0033】
・上記実施形態では、シールド電線20が有する電線21の数を1本としたが、これに限定されず、2本以上の電線21を1つの編組部材22で覆っている構成のシールド電線に変更して実施してもよい。
【0034】
・上記実施形態では、コネクタ30のハウジング31としたが、これに限定されず、他の部材におけるハウジングとしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 ワイヤハーネス
20 シールド電線
21 電線
22 編組部材
23 芯線
24 絶縁被覆
30 コネクタ
31 ハウジング
40 止水部材
41 樹脂部
42 弾性部
50 成形型
60 止水部材(弾性部)