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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240326BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021105096
(22)【出願日】2021-06-24
(65)【公開番号】P2023003806
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】木暮 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】山浦 慧
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-69188(JP,A)
【文献】特開2018-42424(JP,A)
【文献】特開2013-192335(JP,A)
【文献】特開2019-221048(JP,A)
【文献】特開2015-12743(JP,A)
【文献】特開2017-208958(JP,A)
【文献】特開2014-42377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01L 27/473
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子(20)を内蔵する半導体モジュール(2)と、
冷却用流体が内部通路を流通して前記半導体モジュールを冷却する冷却器(6)と、
前記半導体モジュールに接続されたバスバ(141)を支持するとともに電気部品(5)を含むバスバユニット(14)と、
を備え、
前記バスバは、第1板状部(141a)と、板厚方向が前記第1板状部の板厚方向に対して交差する姿勢で設けられた第2板状部(141b,141c,141d)とを含み、前記半導体素子の出力電流をモータジェネレータ(310)に出力するための出力側バスバであり、
前記第1板状部は、前記冷却器の前記内部通路に対して板厚方向に対向する姿勢で前記冷却器に隣接しており、
前記第2板状部は、外面のうち板厚に相当する幅狭の側面(141sw)が前記半導体モジュールに対向する姿勢で設けられている電力変換装置。
【請求項2】
前記第1板状部は、前記冷却器の前記内部通路に対して板厚方向に対向している幅広面(141mw)が前記半導体素子に対向しない位置となるように、設けられている請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2板状部は、前記側面が前記半導体素子に対向する位置となるように、設けられている請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記バスバユニットは、絶縁材料によって形成されて、前記第1板状部を支持している絶縁支持部(142)を含み、
前記第2板状部は、前記絶縁支持部から突出している前記第1板状部よりも前記半導体モジュール寄りに位置している請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
厚さ方向に積層して配置されている前記半導体モジュールを複数個備え、
前記バスバユニットは、複数個の前記半導体モジュールのうち、所定の前記半導体モジュールに対してそれぞれ個別に接続されておりかつ前記半導体モジュールの前記厚さ方向に並んでいる複数個の前記バスバを備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2板状部は、枝分かれして、それぞれ前記半導体モジュールの出力端子(221)に接続されている複数の端子部を有しており、
前記端子部は、板厚に相当する幅狭の側面が前記半導体モジュールに対向する姿勢で設けられている請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項7】
厚さ方向に積層して配置されている前記半導体モジュールを複数個備え、
複数の前記端子部は、複数個の前記半導体モジュールのうち、所定の前記半導体モジュールに対して一対一の対応で個別に接続されておりかつ前記半導体モジュールの前記厚さ方向に並んでいる請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電気部品は、前記絶縁支持部によって前記バスバと一体に被覆されており、前記バスバを流れる電流を検出する電流センサである請求項4に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体モジュールが有する複数の出力端子にそれぞれ接続された複数の出力バスバが記載されている。複数の出力バスバは、それぞれ平板状であり、厚さ方向に並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-12743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の出力バスバは、平板状の厚さを形成する側面が冷媒排出管に対向するように設けられている。この出力バスバは、冷媒排出管に対する投影面積が小さい。このため、特許文献1の装置は放熱性能の点に関して改良の余地がある。
【0005】
この明細書に開示する目的の一つは、半導体素子から受ける受熱量の抑制とバスバの放熱性能確保とが図れる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された電力変換装置の一つは、半導体素子(20)を内蔵する半導体モジュール(2)と、冷却用流体が内部通路を流通して半導体モジュールを冷却する冷却器(6)と、半導体モジュールに接続されたバスバ(141)を支持するとともに電気部品(5)を含むバスバユニット(14)と、を備え、
バスバは、第1板状部(141a)と、板厚方向が第1板状部の板厚方向に対して交差する姿勢で設けられた第2板状部(141b,141c,141d)とを含み、半導体素子の出力電流をモータジェネレータ(310)に出力するための出力側バスバであり、
第1板状部は、冷却器の内部通路に対して板厚方向に対向する姿勢で冷却器に隣接しており、
第2板状部は、外面のうち板厚に相当する幅狭の側面(141sw)が半導体モジュールに対向する姿勢で設けられている。
【0008】
この電力変換装置によれば、バスバのうち第1板状部が板厚方向に内部通路に対向するため、第1板状部の幅広面を冷却器に隣接させることができる。これにより、第1板状部の幅広面を冷却器によって冷却できるため、バスバを効率的に吸熱することができる。さらに第2板状部は外面のうち板厚方向に延びている側面が半導体モジュールに対向するため、バスバのうち板厚に相当する幅狭の側面が半導体モジュールに向くようになる。これにより、半導体モジュールからの熱を第2板状部における幅狭の側面で受熱するため、バスバの受熱量を抑えることができる。このように開示する技術によれば、半導体素子から受ける受熱量の抑制とバスバの放熱性能確保とが図れる電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の電力変換装置に係る回路図である。
図2】電力変換装置の構成を示す平面図である。
図3】バスバの構成を示す拡大図である。
図4】バスバと半導体モジュールに関する構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
<第1実施形態>
車両の駆動システムおよび電力変換装置の一例を開示する第1実施形態について図1図4を参照しながら説明する。電力変換装置は、電気自動車、燃料電池車等の車両に搭載された車載用電力変換装置に適用することができる。車両には、乗用車、バス、建設作業車、農業機械車両等が含まれる。明細書に明示の目的を達成可能な電力変換装置は、例えば、インバータ装置、コンバータ装置等に適用することができる。このコンバータ装置は、交流入力直流出力の電源装置、直流入力直流出力の電源装置、交流入力交流出力の電源装置を含む。この実施形態では、電力変換装置の一例としてインバータ装置に適用した装置を以下に説明する。
【0012】
図1に示すように、車両の駆動システム10は、車両に搭載され、直流電源300、モータジェネレータ310および電力変換装置1を備えている。
【0013】
電力変換装置1は、インバータ回路200、制御回路210、平滑コンデンサ3を少なくとも備えている。図1に示すように、インバータ回路200は、複数の半導体モジュール2を備えて電力変換部を構成している。平滑コンデンサ3は、半導体モジュール2に並列に接続されている。電力変換部は、半導体モジュール2が備える半導体素子20をオンオフさせることにより、直流電源300から供給される直流電力を交流電力に変換する。直流電源300は、例えば複数の二次電池である。二次電池には、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、および有機ラジカル電池などを採用することができる。
【0014】
モータジェネレータ310は、三相交流方式の回転電機、つまり三相交流モータを含む。モータジェネレータ310は、車両の走行駆動源である電動機として機能する。モータジェネレータ310は回生時に発電機として機能する。電力変換装置1は、直流電源300とモータジェネレータ310との間において電力変換を行う。
【0015】
電力変換装置1は、制御回路210によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換してモータジェネレータ310へ出力する。これにより、車両100は、電力変換部によって直流電力から電力変換された交流電力を用いてモータジェネレータ310を駆動して走行する。電力変換装置1は、モータジェネレータ310の発電によって生成された交流電力を直流電力に変換し、回路における高電位側の電力ラインに出力する。電力変換装置1は、直流電源300とモータジェネレータ310との間で双方向の電力変換を行う。
【0016】
モータジェネレータ310は、電気自動車の車軸に連結されている。モータジェネレータ310の回転エネルギは、車軸を介して電気自動車の走行輪に伝達される。走行輪の回転エネルギは、車軸を介してモータジェネレータ310に伝達される。モータジェネレータ310は電力変換装置1から供給される交流電力によって力行する。これにより推進力が走行輪に付与される。モータジェネレータ310は走行輪から伝達される回転エネルギによって回生する。この回生で発生した交流電力は、電力変換装置1によって直流電力に変換される。この直流電力が直流電源300に供給される。この直流電力は、車両100に搭載された各種の電気負荷にも供給される。
【0017】
インバータ回路200には、電力変換部に対して、入力側に平滑コンデンサ3が接続され、出力側に負荷の一例であるモータジェネレータ310が接続されている。平滑コンデンサ3は、主として、直流電源300から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ3は、高電位側の電力ラインと低電位側の電力ラインとの間に接続されている。高電位側の電力ラインは直流電源300の正極に接続されている。低電位側の電力ラインは直流電源300の負極に接続されている。平滑コンデンサ3の正極は、直流電源300と半導体モジュール2との間において高電位側の電力ラインに接続されている。平滑コンデンサ3の負極は、直流電源300と半導体モジュール2との間において低電位側の電力ラインに接続されている。
【0018】
高電位側の電力ラインにはPバスバが設けられている。低電位側の電力ラインにはNバスバが設けられている。PバスバとNバスバは、電力変換部に対して入力側の電力ラインに設けられている。Pバスバの端部、Nバスバの端部には、電力変換部に対して入力側の電力ラインに設けられた接続端子が設けられている。この接続端子には、直流電源300からの電力を供給する電力供給線の端部に設けられた出力端子が、接続される。
【0019】
電力変換装置1は、直流電源300の正極に接続されたPバスバと直流電源300の負極に接続されたNバスバとの間で並列に接続された3相のレグを備える。各相のレグは、PバスバとNバスバとの間で直列接続された複数の半導体素子20を備える。インバータ回路200は、一例として、直列に接続された2つのアームを含む上下アーム回路を3個備えている。3個の上下アーム回路は、例えば、平滑コンデンサ3側からU相、V相、W相とする。各上下アーム回路の高電位側のアームは、上アームともいえる。低電位側のアームは、下アームともいえる。
【0020】
各アームは、スイッチング素子であるIGBTとダイオードとを有している。IGBTは、トランジスタの一種である絶縁ゲートバイポーラトランジスタである。IGBTおよびダイオードは、半導体基板に設けられている。IGBTおよびダイオードが設けられた半導体チップは、半導体素子20に相当する。上アームにおいて、コレクタは高電位側の電力ラインに接続されている。下アームにおいて、エミッタは低電位側の電力ラインに接続されている。上アーム側のエミッタと、下アーム側のコレクタは、互いに接続されている。ダイオードのアノードは対応するIGBTのエミッタに接続され、カソードは対応するIGBTのコレクタに接続されている。
【0021】
制御回路210は、IGBTを動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。制御回路210は、例えば上位のECUから入力されるトルク要求、各種センサによって検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。各種センサの例としては、電流センサ5、回転角センサ、電圧センサが含まれている。制御回路210は、例えば、駆動指令としてPWM信号を出力する。制御回路210は、マイクロコンピュータを備えている。回転角センサは、モータジェネレータ310の回転子の回転角を検出し制御回路210に出力する。電圧センサは、平滑コンデンサ3の両端電圧を検出し制御回路210に出力する。
【0022】
駆動回路は、制御回路210の駆動指令に基づいて、対応するアームのIGBTのゲートに駆動電圧を供給するドライバである。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するIGBTを駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。電力変換装置1は、一例として一つのアームに対して一つの駆動回路を備えている。
【0023】
電流センサ5は、アームの出力電流、つまり各相の巻線に流れる相電流を検出する。電流センサ5は、アームの出力電流に対応する電気信号を制御回路210に出力する。この電気信号はフィードバック信号である。フィードバック信号は、出力電流に相当する信号である。
【0024】
電力変換装置1は、入力側バスバ151と出力側バスバ141を含むバスバを備えている。電力変換装置1は、電力入出用のバスバを備えている。このバスバは、電力変換装置1において、入力側の端子部に接続される導電性部材、出力側の端子部に接続される導電性部材を含む。このバスバは、導電性を有する板材を曲げ加工、切断加工、またはプレス加工によって形状を形作ることにより製造可能である。このバスバは全体として板状をなしている。
【0025】
このバスバは、半導体モジュール2と平滑コンデンサ3の少なくとも一つに対して、入力側または出力側に接続されている導電性部材である。このようなバスバは、電力経路の一つをなし発熱するため、周囲の部品に対して放熱する。入力側バスバ151は、直流電源300から電力が給電される導電性部材である。入力側バスバ151は、例えば前述のPバスバとNバスバである。
【0026】
出力側バスバ141は、例えばアームの出力電流がモータジェネレータ310へ流れる電力経路に設けられたバスバである。出力側バスバ141は、半導体モジュール2が有する複数のパワー端子22にそれぞれ接続された複数の端子部を備えている。
【0027】
電流センサ5は、出力側バスバ141を流れる出力電流を検出する。出力側バスバ141は、U相における上アームと下アームとの接続部とモータジェネレータ310の巻線とを連絡する電力経路に設けられている。出力側バスバ141は、V相における上アームと下アームとの接続部とモータジェネレータ310の巻線とを連絡する電力経路に設けられている。出力側バスバ141は、W相における上アームと下アームとの接続部とモータジェネレータ310の巻線とを連絡する電力経路に設けられている。U相バスバ、V相バスバ、W相バスバは、出力側バスバ141をなしている。
【0028】
図2に示すように、電力変換装置1は、バスバユニット14を備えている。U相バスバ、V相バスバ、W相バスバは、バスバユニット14において一体に設けられている。この複数個のバスバは、バスバユニット14に設けられた出力側バスバ141として機能する。
【0029】
U相バスバ、V相バスバ、W相バスバは、電力変換部に対して出力側の電力ラインに設けられている。U相バスバ、V相バスバおよびW相バスバの各端部には、電力変換部に対して出力側の電力ラインに設けられた接続端子が設けられている。この接続端子には、モータジェネレータ310の各相の巻線に電力を供給する電力供給線の端部に設けられた入力端子が、接続される。
【0030】
電力変換装置1は、例えば、車両において、モータジェネレータ310が設置されているモータルームに設置されている。モータルームは、車両の前部と車室内の前方に設けられた仕切り壁との間に形成された室である。この仕切り壁は、モータルームと車室内とを仕切る車両側部材の一つである。また、電力変換装置1は、車両におけるトランクルームの下方空間、座席下の空間などに設置されている構成でもよい。
【0031】
電力変換装置1は、このようなルームや空間に位置する設置台に固定されている。設置台は、車両のシャーシ、ボディの一部、その他車両に搭載されている部材などの車両側部材の一つである。設置台は、モータジェネレータ310であってもよい。電力変換装置1は、設置台に固定されて、複数の電気部品を収容しているケース11を備える。
【0032】
図2に示すように、ケース11は、平滑コンデンサ3と、パワーモジュールユニット4と、電流センサ5と、制御回路210を搭載した基板とを収容している。電流センサ5は、バスバユニット14に内蔵されている。つまり、電流センサ5は、出力側バスバ141であるU相バスバ、V相バスバおよびW相バスバと、バスバユニット14において一体に設けられている。バスバユニット14は、例えば、ボルト、ねじ、リベット等の固定具、溶接結合、ろう付け結合等の結合手段により、ケース11に一体に設けられた支持台に固定されている。
【0033】
図2図3に示すように、バスバユニット14は、複数の出力側バスバ141と、電流センサ5と、絶縁支持部142とを備える。絶縁支持部142は、出力側バスバ141の所定の部分と電流センサ5とを被覆し、これらを一体に支持している。絶縁支持部142は、電流センサ5を被覆して内蔵している。絶縁支持部142は、出力側バスバ141における所定の部分を被覆して絶縁し支持している。絶縁支持部142は、複数個の出力側バスバ141を互いに絶縁するとともに、隣り合う出力側バスバ141間の距離を維持するように複数個のバスバを支持している。
【0034】
絶縁支持部142は、例えば絶縁性を有する樹脂を主材料として含んで形成されている。出力側バスバ141、電流センサ5は、バスバユニット14を形成する金型内にインサートされて、周囲の樹脂部分の固化により絶縁支持部142と一体に成形されることでバスバユニット14に設けられている。
【0035】
バスバユニット14は、絶縁支持部142に一体に設けられている被固定部を備える。被固定部は、絶縁支持部142と同じ材質で形成されている。被固定部は、ボルト、ねじ等の固定具による締結力によってケース11に固定されている。
【0036】
半導体モジュール2は、半導体素子20を内蔵した本体部21と、本体部21から突出したパワー端子22および制御端子23とを備える。半導体モジュール2は、パワーモジュールとも呼ばれる。パワー端子22は、直流電圧が加わる入力端子と、出力側バスバ141に接続されている出力端子221とを含む。入力端子は、平滑コンデンサ3の端子に電気的に接続されている正極端子222および負極端子223である。入力端子は、入力側バスバ151を介して直流電源300の出力部に電気的に接続されている。出力端子221は、複数のスイッチング素子によって形成されたブリッジ回路において、U相、V相、W相のいずれかを出力するように構成している。制御端子23は、基板に搭載された制御回路210に接続されている。制御回路210は、半導体素子20の動作を制御する演算素子等の電子部品が実装されている回路を構成する。
【0037】
図2図3に示すように、出力側バスバ141は、第1板状部141aと、複数の第2板状部141b,141c,141dと、複数の曲がり部とを少なくとも含む部材である。第1板状部141aは、第2板状部よりも絶縁支持部142寄りに位置している。第1板状部141aは、絶縁支持部142が所定の部分を被覆することにより、絶縁され支持されている。第2板状部は、絶縁支持部142から突出している第1板状部141aよりも半導体モジュール2に近い箇所に位置している。曲がり部は、複数の第2板状部のそれぞれと第1板状部141aとをつなぐ部分である。第1板状部141aは、半導体モジュール2の積層方向であるX方向とY方向とに平行な平面に沿って延びる幅広面141mwをなしている。第1板状部141aは、冷却器6の内部通路に対して板厚方向に対向する姿勢で、冷却器6における連絡管621および通路管部60の端部に隣接している。
【0038】
第2板状部141bは、第1板状部141aにおけるX方向の一端側において曲がり部を介して第1板状部141aに対して直角状に立ち上がっている。第2板状部141bは、板厚方向が第1板状部141aの板厚方向に対して交差する姿勢で設けられている。第2板状部141bは、外面のうち、板厚に相当する幅狭の側面141swが半導体モジュール2に対向する姿勢で設けられている。第2板状部141bは、板厚方向がX方向に向いた姿勢で設けられている。側面141swは、X方向の辺長が短くY方向の辺長が長い、X方向とY方向とに平行な面である。
【0039】
第2板状部141dは、第1板状部141aにおけるX方向の他端側において曲がり部を介して第1板状部141aに対して直角状に立ち上がっている。第2板状部141dは、板厚方向が第1板状部141aの板厚方向に対して交差する姿勢で設けられている。第2板状部141dは、外面のうち、板厚に相当する幅狭の側面141swが半導体モジュール2に対向する姿勢で設けられている。第2板状部141dは、板厚方向がX方向に向いた姿勢で設けられている。
【0040】
第2板状部141cは、第2板状部141bと第2板状部141dとの間で曲がり部を介して第1板状部141aに対して直角状に立ち上がっている。第2板状部141cは、板厚方向が第1板状部141aの板厚方向に対して交差する姿勢で設けられている。第2板状部141cは、外面のうち、板厚に相当する幅狭の側面141swが半導体モジュール2に対向する姿勢で設けられている。第2板状部141cは、板厚方向がX方向に向いた姿勢で設けられている。
【0041】
図3に示すように、第1板状部141aは、幅広面141mwが冷却器6の内部通路に対して板厚方向に対向するように、設けられている。第1板状部141aは、幅広面141mwが、X方向の位置およびY方向の位置について冷却器6の内部通路と一致する部分を有するように設けられている。第1板状部141aは、幅広面141mwが半導体素子20に対向しない位置となるように、設けられている。第1板状部141aは、少なくともY方向の位置について、幅広面141mwが半導体素子20と一致しない位置となるように、設けられている。
【0042】
図3図4に示すように、第2板状部は、幅狭の側面141swが半導体素子20に対向する位置となるように、設けられている。幅狭の側面141swは、X方向の位置およびY方向の位置について半導体素子20と一致する部分を有するように設けられている。
【0043】
図2図4に示すように、バスバユニット14は、半導体モジュール2の厚さ方向に並んでいる複数個のバスバを備えている。各出力側バスバ141は、複数個の半導体モジュール2のうち、所定の半導体モジュール2に対してそれぞれ個別に接続されている。
【0044】
出力側バスバ141は、絶縁支持部142とは反対側に位置する先端側において枝分かれした複数の端子部を有している。複数の端子部は、複数の半導体モジュール2と同様に、半導体モジュール2の厚さ方向またはX方向に並んでいる。複数の端子部は、それぞれ半導体モジュール2の出力端子221に対して一対一の対応で接続されている。この端子部は、第2板状部に相当する部分である。この端子部は、幅狭の側面141swが半導体モジュール2または半導体素子20に対向する位置となるように、設けられている。
【0045】
図3に示すように、第1板状部141aは、高さ方向またはZ方向の距離について幅広面141mwが第2板状部の側面141swよりも冷却器6に近い位置となるように設けられている。Z方向は、X方向とY方向との両方に垂直な方向である。第2板状部は、高さ方向またはZ方向の距離について側面141swが幅広面141mwよりも半導体素子20に遠い位置となるように設けられている。この構成によれば、幅広面141mwからの放熱性を高め、側面141swにおける受熱を抑制することに寄与し、バスバを効果的に冷却できる。
【0046】
平滑コンデンサ3は、他の電気部品と接続される端子を露出させた状態で樹脂封止されたコンデンサ素子を内蔵している。封止する樹脂は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる。封止樹脂は、コンデンサ素子および端子と、各コンデンサの収容部との間の隙間に充填されている。この構成により、封止樹脂は、コンデンサ素子および端子等を封止している。端子等の一部は、封止樹脂から突出している。平滑コンデンサ3は、例えば、ボルト、ねじ、リベット等の固定具、溶接結合、ろう付け結合等の結合手段により、ケース11に設けられた支持台に固定されている。
【0047】
電力変換装置1は、半導体モジュール2を冷却する冷却器6を備えている。冷却器6は、例えば、ボルト、ねじ、リベット等の固定具、溶接結合、ろう付け結合等の結合手段により、ケース11に一体に設けられた支持台に固定されている。パワーモジュールユニット4は、一体に形成された複数の半導体モジュール2と冷却器6とを含んでいる。冷却器6は、半導体モジュール2と交互に積層設置された複数の通路管部60と、連絡管611と、流入管61と、連絡管621と、流出管62とを備えている。
【0048】
加圧部材7は、パワーモジュールユニット4を積層方向であるX方向に加圧している。これにより、半導体モジュール2と通路管部60との接触圧を確保しつつ、パワーモジュールユニット4をケース11内に固定している。加圧部材7の一例は、板ばねである。
【0049】
流入管61は、冷却器6における流体導入部である。流出管62は、冷却器6における流体排出部である。連絡管611は、流入管61よりも下流側において複数の通路管部60を連結している。連絡管611は、冷却器6において一端側において半導体モジュール2の積層方向に延びる通路を形成する。連絡管621は、流出管62よりも上流側において複数の通路管部60を連結している。連絡管621は、冷却器6において他端側において半導体モジュール2の積層方向に延びる通路を形成する。
【0050】
冷却用流体は、外部導入配管内から流入管61内に流入して複数の通路管部60内に分流し、流出管62内に合流後、冷却器6から外部排出配管内に流出する。各通路管部60は、隣接する半導体モジュール2に接触している。各通路管部60を流れる冷却用流体は、隣接する半導体モジュール2から吸熱してこれを冷却する。各通路管部60の内部通路は、上流側において流入管61の内部通路に連通し、下流側において流出管62の内部通路に連通している。冷却器6の内部を流れる冷却用流体は、例えば、LLCなどの熱容量の大きな不凍液であることが好ましい。また冷却用流体には、空気などの気体を採用してもよい。冷却器6は、半導体モジュール2だけでなく、冷却器6の内部通路に隣接する各部から吸熱して冷却する機能を果たしている。
【0051】
外部導入配管は、ケース11の外部において、流入管61に接続されている外部配管である。外部排出配管は、ケース11の外部において、流出管62に接続されている外部配管である。流入管61、流出管62は、ケース11の外部において外部配管が接続される流路接続部である。外部導入配管、外部排出配管は、容易に変形しない硬さを有した管や、容易に変形し得る可撓性を有したホースによって構成できる。
【0052】
第1実施形態の電力変換装置1がもたらす作用効果について説明する。電力変換装置1は、半導体素子20を内蔵する半導体モジュール2と、半導体モジュールを冷却する冷却器6とバスバユニット14とを備える。バスバユニット14は、半導体モジュール2に接続されたバスバを支持するとともに電気部品を含む。バスバは、第1板状部141aと、板厚方向が第1板状部141aの板厚方向に対して交差する姿勢で設けられた第2板状部141b,141c,141dとを含む。第1板状部141aは、冷却器6の内部通路に対して板厚方向に対向する姿勢で冷却器6に隣接している。第2板状部は、外面のうち板厚に相当する幅狭の側面141swが半導体モジュール2に対向する姿勢で設けられている。
【0053】
この構成によれば、バスバのうち第1板状部141aが板厚方向に内部通路に対向するため、第1板状部141aの幅広面141mwが冷却器6に隣接している。これにより、表面積の大きい第1板状部141aの幅広面141mwを冷却器6によって冷却できる。このため、冷却器6を活用してバスバを効率的に吸熱することができる。
【0054】
さらに第2板状部は外面のうち板厚に相当する幅の狭い側面141swが半導体モジュール2に対向するように設けられている。このため、第1板状部141aの幅広面141mwよりも表面積の小さい第2板状部の側面141swが発熱体である半導体モジュール2に向くようになる。この位置関係により、半導体モジュール2からの熱を第2板状部における幅狭の側面141swで受熱することにより、バスバの受熱量を抑制できる。このように電力変換装置1によれば、半導体素子20から受ける受熱量の抑制とバスバの放熱性能確保とを図ることができる。
【0055】
さらに電力変換装置1は、第1板状部141aが冷却器6の内部通路に対して板厚方向に対向しているため、第1板状部141aは板厚方向に振動に対してたわみやすい。これにより、板厚方向の振動に対して振動ストレスの低減が図れるバスバユニット14を提供できる。
【0056】
さらに第1板状部141aは、冷却器6の内部通路に対して板厚方向に対向している幅広面141mwが半導体素子20に対向しない位置となるように、設けられている。この構成によれば、バスバのうち第1板状部141aの幅広面141mwが発熱量の大きい半導体素子20に対向せずかつ冷却器6の内部通路に向くようになる。これにより、バスバの受熱量を抑制でき、かつ冷却器6によって幅広面141mwを冷却できるのでバスバの放熱性を効率的に向上することができる。
【0057】
第2板状部は、側面141swが半導体素子20に対向する位置となるように、設けられている。この構成によれば、幅広面141mwよりも表面積の小さい第2板状部の側面141swが発熱量の大きい半導体素子20に向くようになる。これにより、半導体素子20からの熱を第2板状部における幅狭の側面141swで受熱することにより、バスバの受熱量を抑制できる。
【0058】
バスバユニット14は、絶縁材料によって形成されて、第1板状部141aを支持している絶縁支持部142を含む。第2板状部は、絶縁支持部142から突出している第1板状部141aよりも半導体モジュール2寄りに位置している。この構成によれば、第1板状部141aは絶縁支持部142寄りに位置して、半導体モジュール2から離間した位置に設けられている。これにより、半導体モジュール2からの受熱量を抑えて、バスバの放熱性を効率的に向上できる。
【0059】
電力変換装置1は厚さ方向に積層して配置されている半導体モジュール2を複数個備える。これにより、半導体モジュール2の許容電力を向上させることができる。バスバユニット14は、複数個の半導体モジュール2のうち、所定の半導体モジュール2に対してそれぞれ個別に接続されている複数個のバスバを備える。複数個のバスバは、半導体モジュール2の厚さ方向に並んでいる。これによれば、半導体モジュール2の厚さ方向に並ぶ複数個のバスバについて、第1板状部141aの幅広面141mwを冷却器6によって冷却でき、半導体モジュール2からの熱を第2板状部の幅狭の側面141swで受熱できる。
【0060】
第2板状部は、枝分かれして、それぞれ半導体モジュール2の出力端子221に接続されている複数の端子部を有している。この端子部は、板厚に相当する幅狭の側面141swが半導体モジュール2に対向する姿勢で設けられている。この構成によれば、各端子部は幅狭の側面141swが半導体モジュール2に向くようになる。これにより、半導体モジュール2からの熱を複数の端子部における幅狭の側面141swで受熱することにより、バスバの受熱量を抑制できる。また、第2板状部に振動が伝達した場合でも、振動は複数の端子部によって分散して伝搬するため、半導体モジュール2との接続部の振動を抑えることに寄与する。
【0061】
複数の端子部は、厚さ方向に積層して配置されている複数個の半導体モジュール2のうち、所定の半導体モジュール2に対してそれぞれ個別に接続されている。複数の端子部は、半導体モジュール2の厚さ方向に並んでいる。この構成によれば、バスバユニット14が備えるすべての端子部は厚さ方向に順に並ぶ半導体モジュール2に対して一対一の対応でそれぞれ個別に接続されている。これにより、すべての端子部は半導体モジュール2からの熱を幅狭の側面141swで受熱することができる。したがって、バスバユニット14は、半導体モジュール2からの受熱量を抑制できる。
【0062】
バスバユニット14が含む電気部品は、絶縁支持部142によってバスバと一体に被覆されており、バスバを流れる電流を検出する電流センサ5である。この構成によれば、電流センサ5の電流検出に関わるバスバについて受熱量の低減、放熱性向上、および振動ストレス低減が図れるバスバユニット14を提供できる。
【0063】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0064】
前述の実施形態におけるバスバユニット14は、出力側バスバ141の代わりに入力側バスバ151を備える構成でもよい。この構成である場合、バスバユニット14に含まれる電気部品は、電力接続線の端子部を有する部品、コンデンサなどに置き換えられる。
【0065】
明細書に開示の目的を達成可能な電力変換装置は、制御回路210を備えない構成でもよい。例えば、上位のECU等に制御回路210と同様の機能を持たせるようにしてもよい。また前述の実施形態では、アームごとに駆動回路を設ける例を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、一つの上下アームに対して、一つの駆動回路を設ける構成でもよい。
【0066】
明細書に開示の目的を達成可能な電力変換装置は、電力変換回路としてコンバータをさらに備える構成でもよい。例えば、コンバータは、直流電源300と平滑コンデンサ3との間に設けられている。コンバータは、リアクトルと上下アーム回路を備えて構成できる。さらに電力変換装置は、直流電源300からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備える構成でもよい。例えば、フィルタコンデンサは、直流電源300とコンバータとの間に設けられている。
【符号の説明】
【0067】
2…半導体モジュール、 5…電流センサ(電気部品)、 6…冷却器
14…バスバユニット、20…半導体素子、 141…バスバ(出力側バスバ)
141a…第1板状部、 141b,141c,141d…第2板状部
141sw…側面
図1
図2
図3
図4