(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】位置検出装置およびブレーキペダル装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240326BHJP
G01B 7/30 20060101ALI20240326BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20240326BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240326BHJP
G05G 1/38 20080401ALI20240326BHJP
【FI】
G01D5/20 K
G01B7/30 M
B60T7/02 D
G05G1/30 E
G05G1/38
(21)【出願番号】P 2021118217
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 貴光
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-25851(JP,A)
【文献】特開2019-124680(JP,A)
【文献】特開2020-159993(JP,A)
【文献】特開2008-224574(JP,A)
【文献】特開2012-251809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00- 5/38
G01B 7/30
B60T 1/00-17/22
G05G 1/30
G05G 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体(2)に対して所定の軸心(CL)周りに回転可能または揺動可能に設けられた回転体(3)の位置を検出する位置検出装置において、
導電体から形成されて前記回転体に固定されるターゲット(30)と、
前記ターゲットに対して軸心方向に対向する位置で前記固定体に固定されるインダクティブコイル(40)と、
前記インダクティブコイルに交流電流を印加した際に前記ターゲットに流れる渦電流により変化する前記インダクティブコイルのインダクタンスの変化により前記ターゲットの位置を検出する受発信回路(41)と、
軸心周りに筒状に形成されて前記回転体に固定され、軸心に交差する方向に磁束が飛ぶ磁界を形成する磁気回路部(10)と、
前記固定体に固定されて前記磁気回路部の内周面(101)より径方向内側の領域に設けられ、前記磁気回路部が形成する磁界に応じた信号を出力する磁気検出部(20)と、
前記インダクティブコイルと前記受発信回路とが実装される回路基板(42)を備え、
前記ターゲットと前記インダクティブコイルと前記受発信回路とによりインダクティブセンサが構成され、前記磁気回路部と前記磁気検出部により磁石型回転角センサが構成されて
おり、
前記磁気検出部は、樹脂インサート成形により前記固定体と一体に形成され、前記固定体の基部(2a)から前記磁気回路部の径方向内側の領域に延出するように設けられており、
前記回路基板は、前記固定体のうち前記磁気回路部側を向く面に設けられ、前記磁気検出部が挿通する孔(45)を有している位置検出装置。
【請求項2】
固定体(2)に対して所定の軸心(CL)周りに回転可能または揺動可能に設けられた回転体(3)の位置を検出する位置検出装置において、
導電体から形成されて前記回転体に固定されるターゲット(30)と、
前記ターゲットに対して軸心方向に対向する位置で前記固定体に固定されるインダクティブコイル(40)と、
前記インダクティブコイルに交流電流を印加した際に前記ターゲットに流れる渦電流により変化する前記インダクティブコイルのインダクタンスの変化により前記ターゲットの位置を検出する受発信回路(41)と、
軸心周りに筒状に形成されて前記回転体に固定され、軸心に交差する方向に磁束が飛ぶ磁界を形成する磁気回路部(10)と、
前記固定体に固定されて前記磁気回路部の内周面(101)より径方向内側の領域に設けられ、前記磁気回路部が形成する磁界に応じた信号を出力する磁気検出部(20)と、
前記磁気検出部と前記インダクティブコイルと前記受発信回路とが実装される回路基板を備え、
前記ターゲットと前記インダクティブコイルと前記受発信回路とによりインダクティブセンサが構成され、前記磁気回路部と前記磁気検出部により磁石型回転角センサが構成されており、
前記回路基板は、前記固定体のうち前記磁気回路部側を向く面に設けられており、
前記磁気検出部は、前記回路基板から前記磁気回路部の径方向内側の領域に延出するように設けられている位置検出装置。
【請求項3】
前記回路基板のうち前記インダクティブコイルの軸心方向の厚み(T1)は、前記ターゲットにおける軸心方向の厚み(T2)よりも小さい、請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
固定体(2)に対して所定の軸心(CL)周りに回転可能または揺動可能に設けられた回転体(3)の位置を検出する位置検出装置において、
導電体から形成されて前記回転体に固定されるターゲット(30)と、
前記ターゲットに対して軸心方向に対向する位置で前記固定体に固定されるインダクティブコイル(40)と、
前記インダクティブコイルに交流電流を印加した際に前記ターゲットに流れる渦電流により変化する前記インダクティブコイルのインダクタンスの変化により前記ターゲットの位置を検出する受発信回路(41)と、
軸心周りに筒状に形成されて前記回転体に固定され、軸心に交差する方向に磁束が飛ぶ磁界を形成する磁気回路部(10)と、
前記固定体に固定されて前記磁気回路部の内周面(101)より径方向内側の領域に設けられ、前記磁気回路部が形成する磁界に応じた信号を出力する磁気検出部(20)と、
前記磁気回路部と前記ターゲットとを樹脂にインサートした状態で一体に構成する樹脂部(50)を備え、
前記ターゲットと前記インダクティブコイルと前記受発信回路とによりインダクティブセンサが構成され、前記磁気回路部と前記磁気検出部により磁石型回転角センサが構成されている位置検出装置。
【請求項5】
固定体(2)に対して所定の軸心(CL)周りに回転可能または揺動可能に設けられた回転体(3)の位置を検出する位置検出装置において、
導電体から形成されて前記回転体に固定されるターゲット(30)と、
前記ターゲットに対して軸心方向に対向する位置で前記固定体に固定されるインダクティブコイル(40)と、
前記インダクティブコイルに交流電流を印加した際に前記ターゲットに流れる渦電流により変化する前記インダクティブコイルのインダクタンスの変化により前記ターゲットの位置を検出する受発信回路(41)と、
軸心周りに筒状に形成されて前記回転体に固定され、軸心に交差する方向に磁束が飛ぶ磁界を形成する磁気回路部(10)と、
前記固定体に固定されて前記磁気回路部の内周面(101)より径方向内側の領域に設けられ、前記磁気回路部が形成する磁界に応じた信号を出力する磁気検出部(20)と、を備え、
前記ターゲットと前記インダクティブコイルと前記受発信回路とによりインダクティブセンサが構成され、前記磁気回路部と前記磁気検出部により磁石型回転角センサが構成されており、
前記ターゲットは、前記磁気回路部の前記内周面より径方向内側の領域に配置されている位置検出装置。
【請求項6】
前記磁気回路部の径方向から視たとき、前記ターゲットの少なくとも一部と、前記磁気回路部の一部とが径方向に重なっている、請求項5に記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記受発信回路の出力信号から導き出される前記回転体の位置と、前記磁気検出部の出力信号から導き出される前記回転体の位置との差を算出した値と所定の閾値とを比較し、前記受発信回路の出力信号と前記磁気検出部の出力信号とが正常か否かを自己診断する処理回路(47)をさらに備える、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【請求項8】
前記磁気回路部は、軸心に垂直な断面形状が円弧状の第1円弧状磁石(15)の両端部と円弧状の第2円弧状磁石(16)の両端部とが接続されて筒状に構成されており、
前記第1円弧状磁石は径方向外側にS極、径方向内側にN極が着磁され、
前記第2円弧状磁石は径方向外側にN極、径方向内側にS極が着磁されている、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【請求項9】
車両に搭載されるブレーキバイワイヤ式のブレーキペダル装置において、
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の位置検出装置(1)と、
前記車両に直接または間接的に固定される前記固定体と、
前記回転体としてのシャフト(90)と、
前記シャフトに固定されて、前記シャフトの軸心周りに揺動するブレーキペダル(61)と、を備えるブレーキペダル装置。
【請求項10】
前記車両の制動を行うブレーキ回路(120)の構成部材と前記ブレーキペダルとが機械的に接続されておらず、前記位置検出装置の出力信号に基づいて前記車両に搭載される電子制御装置(110)が前記ブレーキ回路を駆動制御して前記車両の制動を行う完全なブレーキバイワイヤシステムに用いられるものである、請求項9に記載のブレーキペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置および、それを備えたブレーキペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定体に対して所定の軸心周りに回転可能または揺動可能に設けられた回転体の位置を検出する位置検出装置が知られている。なお、本明細書において揺動とは、所定の軸心周りに所定角度範囲で正方向および逆方向に回転することをいう。
【0003】
特許文献1に記載の位置検出装置は、インダクティブセンサと磁石型回転角センサといった2つの位置検出手段により、回転体の位置検出に冗長性を有している。具体的には、インダクティブセンサの備えるターゲットと磁石型回転角センサの備える磁石は、回転体に固定され、回転体と共に回転する。一方、インダクティブセンサの備えるコイルと磁石型回転角センサの備える磁気抵抗素子は、磁石の径方向外側に配置された基板に実装されている。なお、基板は、回転しない固定体に固定されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の位置検出装置は、磁石型回転角センサの備える円筒状の磁石の径方向外側に設けられた基板に磁気抵抗素子が実装されており、その磁気検出素子より径方向外側の空間が開放されている。そのため、この位置検出装置は、磁気抵抗素子の径方向外側の空間から外乱磁界が侵入すると、磁気抵抗素子がその外乱磁界の影響を受けるので、磁気抵抗素子の出力信号の信頼性が低下することが懸念される。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、回転体の位置検出に対して冗長性を有し、且つ、出力信号の信頼性を向上した位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1、2、4、5に係る発明は、固定体(2)に対して所定の軸心(CL)周りに回転可能または揺動可能に設けられた回転体(3)の位置を検出する位置検出装置において、ターゲット(30)、インダクティブコイル(40)、受発信回路(41)、磁気回路部(10)および磁気検出部(20)を備えている。
ターゲットは、導電体から形成されて回転体に固定される。インダクティブコイルは、ターゲットに対して軸心方向に対向する位置で固定体に固定される。受発信回路は、インダクティブコイルに交流電流を印加した際にターゲットに流れる渦電流により変化するインダクティブコイルのインダクタンスの変化によりターゲットの位置を検出する。
磁気回路部は、軸心周りに筒状に形成されて回転体に固定され、軸心に交差する方向に磁束が飛ぶ磁界を形成する。磁気検出部は、固定体に固定されて磁気回路部の内周面(101)より径方向内側の領域に設けられ、磁気回路部が形成する磁界に応じた信号を出力する。
ターゲットとインダクティブコイルと受発信回路とによりインダクティブセンサが構成され、磁気回路部と磁気検出部により磁石型回転角センサが構成されている。
さらに請求項1に係る発明は、インダクティブコイルと受発信回路とが実装される回路基板(42)をさらに備え、磁気検出部は、樹脂インサート成形により固定体と一体に形成され、固定体の基部(2a)から磁気回路部の径方向内側の領域に延出するように設けられており、回路基板は、固定体のうち磁気回路部側を向く面に設けられ、磁気検出部が挿通する孔(45)を有している。
請求項2に係る発明は、磁気検出部とインダクティブコイルと受発信回路とが実装される回路基板をさらに備え、回路基板は、固定体のうち磁気回路部側を向く面に設けられており、磁気検出部は、回路基板から磁気回路部の径方向内側の領域に延出するように設けられている。
請求項4に係る発明は、磁気回路部とターゲットとを樹脂にインサートした状態で一体に構成する樹脂部(50)をさらに備えている。
請求項5に係る発明は、ターゲットは、磁気回路部の内周面より径方向内側の領域に配置されている。
【0008】
これによれば、筒状に形成された磁気回路部が磁気シールドとして機能し、磁気回路部の径方向外側の領域から、磁気回路部の径方向内側の領域に外乱磁界が侵入することが防がれる。そのため、磁気回路部の径方向内側の領域に設けられた磁気検出部が外乱磁界の影響を受けることが無いので、磁気検出部の出力信号の信頼性を向上できる。
【0009】
さらに、位置検出装置は、ターゲット、インダクティブコイルおよび受発信回路を有するインダクティブセンサと、磁気回路部および磁気検出部を有する磁石型回転角センサといった異なる方式の位置検出手段を備えている。これにより、この位置検出装置は、回転体の位置検出に冗長性を有することで信頼性をより向上できる。
【0010】
請求項9に係る発明は、車両に搭載されるブレーキバイワイヤ式のブレーキペダル装置に関するものである。ブレーキペダル装置は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の位置検出装置(1)と、車両に直接または間接的に固定される固定体と、回転体としてのシャフト(90)と、そのシャフトに固定されてシャフトの軸心周りに揺動するブレーキペダル(61)と、を備えている。
【0011】
これによれば、ブレーキペダル装置は、請求項1に記載の位置検出装置を備えることで、磁気検出部への外乱磁界の侵入を防ぐと共に、インダクティブセンサと磁石型回転角センサによりシャフトの揺動角の検出に冗長性を有するものとなる。
【0012】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る位置検出装置において回転体の軸心に平行な断面図である。
【
図4】第1実施形態に対する第1の変形例において回転体の軸心に平行な断面図である。
【
図5】第1実施形態に対する第2の変形例において回転体の軸心に平行な断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る位置検出装置において回転体の軸心に平行な断面図である。
【
図7】第3実施形態に係る位置検出装置において、
図3に対応する箇所の断面図である。
【
図8】第4実施形態に係る位置検出装置において、
図2に対応する箇所の断面図である。
【
図9】第5実施形態に係るブレーキペダル装置が使用されるブレーキバイワイヤシステムの概略構成図である。
【
図10】第5実施形態に係るブレーキペダル装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の位置検出装置1は、固定体2に対して所定の軸心CL周りに回転可能または揺動可能に設けられた回転体3の位置を検出するものである。位置検出装置1は、例えば、車両に搭載されるブレーキペダル装置、アクセルペダル装置、電動モータまたはギヤ機構などが備える種々の回転体3の位置検出に用いることが可能である。
【0016】
なお、以下の説明では、回転体3の軸心CLに垂直な仮想平面上に描いた仮想円における径方向を単に「径方向」といい、その径方向において軸心CLに近い側を「径方向内側」といい、軸心CLから遠い側を「径方向外側」という。また、軸心CLの延びる方向を「軸心方向」という。
【0017】
位置検出装置1は、磁気回路部10、磁気検出部20、ターゲット30、インダクティブコイル40および受発信回路41などを備えている。磁気回路部10および磁気検出部20は、磁石型回転角センサを構成している。一方、ターゲット30、インダクティブコイル40および受発信回路41は、インダクティブセンサを構成している。位置検出装置1は、磁石型回転角センサとインダクティブセンサといった異なる方式の位置検出手段を備えることで、回転体3の位置検出に冗長性を有している。
【0018】
図1および
図2に示すように、回転体3には、磁石型回転角センサの一部を構成する筒状の磁気回路部10と、インダクティブセンサの一部を構成するターゲット30とが固定されている。
【0019】
磁気回路部10は、2個の永久磁石11、12と2個の円弧状のヨーク13、14により筒状に形成され、回転体3の軸心CL周りに設けられている。2個の永久磁石11、12と2個の円弧状のヨーク13、14は、閉磁気回路を構成している。なお、閉磁気回路とは、永久磁石11、12とヨーク13、14とが接触しており、磁束の流れるループが閉じている回路である。
【0020】
2個の永久磁石11、12は、軸心CLを挟んで径方向の一方と他方に配置されている。以下の説明では、2個の永久磁石11、12のうち軸心CLを挟んで径方向の一方に配置される磁石を第1磁石11と呼び、径方向の他方に配置される磁石を第2磁石12と呼ぶ。また、2個のヨーク13、14のうち一方のヨークを第1ヨーク13と呼び、他方のヨークを第2ヨーク14と呼ぶ。
【0021】
第1ヨーク13は、周方向の一方の端部が第1磁石11のN極に接続され、周方向の他方の端部が第2磁石12のN極に接続されている。第2ヨーク14は、周方向の一方の端部が第1磁石11のS極に接続され、周方向の他方の端部が第2磁石12のS極に接続されている。そのため、
図2の破線の矢印Mに示すように、磁気回路部10の径方向内側の領域には、第1ヨーク13から第2ヨーク14に向かって軸心CLに交差する方向に磁束が飛ぶ磁界が形成される。
図1に示すように、その磁界は、磁気回路部10の径方向から視たとき、ターゲット30と磁気回路部10とが径方向に重なっていない範囲に形成される。
【0022】
回転体3と共に磁気回路部10が軸心CL周りに回転または揺動すると、磁気回路部10の径方向内側の領域に形成される磁界の向きが変化する。磁気回路部10の径方向内側の領域(具体的には、後述する樹脂部50の凹部51の内側の領域)には、磁石型回転角センサの一部を構成する磁気検出部20が設けられている。磁気回路部10は、筒状に形成されて磁気検出部20の周囲を囲っていることで、磁気回路部10の径方向外側の領域から、磁気回路部10の径方向内側の領域(すなわち、磁気検出部20が設けられる領域)に外乱磁界が侵入することを防ぐ磁気シールドとして機能する。なお、磁気検出部20の詳細については後述する。
【0023】
ターゲット30は、筒状の磁気回路部10の内周面101より径方向内側の領域に配置されている。なお、磁気回路部10の内周面101より径方向内側の領域とは、磁気回路部10に対して軸心方向にずれた位置も含む範囲である。
図1に示すように、第1実施形態では、ターゲット30と磁気回路部10とは、磁気回路部10の径方向から視たとき、ターゲット30の少なくとも一部と、磁気回路部10の一部とが径方向に重なるように設けられている。
図1では、磁気回路部10の径方向から視たとき、ターゲット30と磁気回路部10とが径方向に重なる範囲を両矢印OLで示している。
【0024】
ターゲット30は、金属などの導電体から形成されており、軸心CLの周りに設けられている。ターゲット30は、例えば、3個の外側円弧部311~313と、3個の内側円弧部321~323と、その外側円弧部311~313と内側円弧部321~323とを接続する6個の接続部331~336とを有している。3個の外側円弧部311~313は、周方向に略等間隔に配置されている。3個の内側円弧部321~323は、外側円弧部311~313よりも径方向内側で、周方向に略等間隔に配置されている。周方向に隣り合う外側円弧部311~313と内側円弧部321~323とは、周方向にずれた位置(すなわち、外側円弧部311~313と内側円弧部321~323の周方向の端部を除き径方向に重ならない位置)に設けられている。6個の接続部331~336は、径方向に延びて外側円弧部311~313の周方向の端部と、内側円弧部321~323の周方向の端部とを接続している。
なお、ターゲット30の有する外側円弧部311~313、内側円弧部321~323、接続部331~33の個数および形状などは、任意に設定可能である。
【0025】
磁気回路部10とターゲット30とは、樹脂部50により一体に構成されている。具体的には、樹脂部50は、磁気回路部10とターゲット30とを樹脂インサート成形により一体に構成している。これにより、磁気回路部10とターゲット30とがサブアッシー化されると共に、磁気回路部10とターゲット30との位置ずれが防がれる。樹脂部50の中央には、固定体2側から回転体3側へ向かって凹む凹部51が設けられている。その凹部51の内側に、磁石型回転角センサの一部を構成する磁気検出部20が設けられる。
【0026】
樹脂部50は、回転体3に固定されている。すなわち、サブアッシー化された磁気回路部10とターゲット30は、樹脂部50を介して回転体3に固定される。その状態で、磁気回路部10の中心と、ターゲット30の中心と、回転体3の軸心CLとが一致する。そして、磁気回路部10とターゲット30は、回転体3と共に、回転体3の軸心CL周りに回転または揺動する。
【0027】
一方、固定体2には、磁石型回転角センサの一部を構成する磁気検出部20と、インダクティブセンサの一部を構成するインダクティブコイル40および受発信回路41が実装された回路基板42とが固定されている。すなわち、インダクティブコイル40および受発信回路41は、回路基板42に実装された状態で固定体2に固定されている。なお、以下の説明では、インダクティブコイル40を単に「コイル40」という。
【0028】
磁気検出部20は、例えば、2個の磁気抵抗素子(以下、「MR素子」という)または2個のホール素子を有して構成されている。MR素子は、感磁面に対して水平方向の磁界の角度に応じて電気抵抗値が変化する素子である。ホール素子は、感磁面に対して垂直方向の磁界の強さに応じたホール電圧を出力する素子である。磁気検出部20が2個のMR素子で構成される場合、2個のMR素子は、回転部の角度に応じてそれぞれの抵抗値が異なるように配置されている。これにより、2個のMR素子の抵抗値の差を算出することで、温度変化に対して正確な角度検出を行うことが可能である。なお、磁気検出部20が2個のホール素子で構成される場合にも、2個のホール素子は、回転部の角度に応じてそれぞれの出力電圧が異なるように配置されている。
【0029】
第1実施形態では、磁気検出部20およびその磁気検出部20から延びるターミナル21(以下、「磁気検出部用ターミナル21」という)は、樹脂インサート成形により、固定体2を構成する樹脂と一体に構成されている。磁気検出部20は、固定体2の基部2aから固定体2を形成する樹脂の一部と共に磁気回路部10の径方向内側の領域(具体的には、樹脂部50の凹部51の内側の領域)に延出するように設けられている。
【0030】
また、回路基板42に接続されるターミナル43(以下、「インダクティブセンサ用ターミナル43」という)も、樹脂インサート成形により、固定体2を構成する樹脂と一体に構成されている。すなわち、固定体2を構成する樹脂と、磁気検出部20と、磁気検出部用ターミナル21と、インダクティブセンサ用ターミナル43とは、樹脂インサート成形により一体に構成されている。
【0031】
回路基板42は、固定体2のうち磁気回路部10側を向く面に固定されている。回路基板42と固定体2との接続は、例えば、回路基板42に設けられたスルーホール44に対し、固定体2から突出するインダクティブセンサ用ターミナル43の先端が挿通され、そのスルーホール44とインダクティブセンサ用ターミナル43の先端とがはんだにより電気接合される。回路基板42の中央部には、磁気検出部20が挿通する孔45が設けられている。磁気検出部20は、その回路基板42の孔45を通り、磁気回路部10の径方向内側の領域(具体的には、樹脂部50の凹部51の内側の領域)に設けられる。
【0032】
回路基板42には、コイル40および受発信回路41が実装されている。そのコイル40は、ターゲット30に対して軸心方向に対向する位置に設けられている。回路基板42のうちコイル40の軸心方向の厚みT1は、ターゲット30における軸心方向の厚みT2よりも小さい。
【0033】
図3では、回路基板42にコイル40が実装される領域をクロスハッチングで示している。また、
図3では、回路基板42に実装されるコイル40の形状の一例を示しているが、コイル40の形状はそれに限るものでなく、種々の形状を採用できる。コイル40の形状は、例えば周方向を横軸としたサインカーブとされている。コイル40は、1パターンの発信コイルTxと、2パターンの受信コイルRx-sin、Rx-cosを含んでいる。
【0034】
受発信回路41は、基板に実装される集積回路(すなわち、IC)として構成されている。受発信回路41は、コイル40に交流電流を印加し、コイルパターン上を移動するターゲット30に生じる渦電流の物理的原理を利用し、コイル40のインダクタンスの変化によりターゲット30の位置を検出する。
【0035】
第1実施形態では、インダクティブセンサから2出力が得られる構成とされている。具体的には、例えば、1パターンの発信コイルTxと、2パターンの受信コイルRx-sin、Rx-cos(すなわち、Rx-sinが1パターンと、Rx-cosが1パターン)と、2個の受発信回路41により、2出力とする構成とすることが可能である。この場合、1パターンの発信コイルTxに対して2つの信号Tx1、Tx2を印加し、受発信回路41内の1つの発信機で発信可能である。
【0036】
或いは、2パターンの発信コイルTxと、2パターンの受信コイルRx-sin、Rx-cos(すなわち、Rx-sinが1パターンと、Rx-cosが1パターン)と、2個の受発信回路41により、2出力とする構成とすることも可能である。この場合、2パターンの発信コイルTxそれぞれに対して2つの信号Tx1、Tx2を印加し、受発信回路41内の2つの発信機で発信可能である。
【0037】
なお、2個の受発信回路41(すなわち、2個のICチップ)は、1個のパッケージとしてもよく、或いは、2個のパッケージとしてもよい。
【0038】
以上説明した構成により、固定体2に対して回転体3が軸心CL周りに回転または揺動すると、回転体3に固定された磁気回路部10およびターゲット30も回転体3と共に回転または揺動する。その際、固定体2側に固定された磁気検出部20は、磁気回路部10が形成する磁界の向きに応じた信号を出力する。また、固定体2側に固定された回路基板42に実装される受発信回路41は、ターゲット30の位置に応じた信号を出力する。
【0039】
以上説明した第1実施形態の位置検出装置1は、次の作用効果を奏する。
(1)第1実施形態では、筒状に形成された磁気回路部10が磁気シールドとして機能し、磁気回路部10の径方向外側の領域から、磁気回路部10の径方向内側の領域に外乱磁界が侵入することが防がれる。そのため、磁気回路部10の径方向内側の領域に設けられた磁気検出部20が外乱磁界の影響を受けることが無いので、位置検出装置1は、磁気検出部20の出力信号の信頼性を向上できる。
さらに、位置検出装置1は、ターゲット30、コイル40および受発信回路41を有するインダクティブセンサと、磁気回路部10および磁気検出部20を有する磁石型回転角センサといった異なる方式の位置検出手段を備えている。これにより、この位置検出装置1は、回転体3の位置検出に冗長性を有することで信頼性を向上できる。
【0040】
(2)第1実施形態では、磁気検出部20は、樹脂インサート成形により固定体2と一体に形成され、固定体2の基部2aから磁気回路部10の径方向内側の領域に延出するように設けられている。そして、回路基板42は、磁気検出部20が挿通する孔45を有している。これにより、磁気検出部20の周りを囲むように回路基板42を設けることができる。
【0041】
(3)第1実施形態では、回路基板42のうちコイル40の軸心方向の厚みT1は、ターゲット30における軸心方向の厚みT2よりも小さい。これにより、固定体2のうち磁気回路部10側を向く面にターゲット30よりも厚みの小さいコイル40を固定したことで、位置検出装置1における軸心方向の体格を小型化できる。
【0042】
(4)第1実施形態では、磁気回路部10とターゲット30とは樹脂部50にインサートされた状態で一体に構成されている。これによれば、磁気回路部10とターゲット30とを樹脂部50によりサブアッシー化することで部品点数を少なくし、回転体3に対する組み付け性を向上できる。さらに、サブアッシー化により、磁気回路部10の中心と、ターゲット30の中心と、回転体3の軸心CLとを、容易に同軸に設けることができる。そのため、位置検出装置1が備える磁石型回転角センサとインダクティブセンサの出力信号の信頼性を向上できる。
【0043】
(5)第1実施形態では、インダクティブセンサの一部を構成するターゲット30は、磁気回路部10の内周面101より径方向内側の領域に配置されている。
これによれば、磁気回路部10と磁気検出部20との間の領域を有効に利用してターゲット30を配置することが可能である。そのため、位置検出装置1は、径方向の体格を小型化することができる。
【0044】
(6)第1実施形態では、磁気回路部10の径方向から視たとき、ターゲット30の少なくとも一部と、磁気回路部10の一部とは、径方向に重なる位置に設けられている。
仮に、第1実施形態の構成とは異なり、ターゲット30と磁気回路部10とを軸心方向にずれた位置に設けた場合、ターゲット30の軸心方向の厚み分、位置検出装置1における軸心方向の体格が大型化するおそれがある。それに対し、第1実施形態の位置検出装置1は、ターゲット30と磁気回路部10とを上記のように配置したことで、軸心方向の体格を小型化することができる。
【0045】
(第1実施形態の第1の変形例)
上記第1実施形態の第1の変形例について説明する。
図4に示すように、第1の変形例では、ターゲット30と磁気回路部10とは、軸心方向にずれた位置に設けられている。すなわち、磁気回路部10の径方向から視たとき、ターゲット30と磁気回路部10とは径方向に重ならないように設けられている。この場合、磁気回路部10における軸方向の厚みを小さくすれば、位置検出装置1の軸方向の体格を小型化することが可能である。したがって、第1の変形例も、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0046】
(第1実施形態の第2の変形例)
上記第1実施形態の第2の変形例について説明する。
図5に示すように、第1の変形例では、磁気回路部10の径方向から視たとき、ターゲット30の全部と磁気回路部10の一部とが径方向に重なるように設けられている。第2の変形例は、位置検出装置1の軸方向の体格をより小型化することができる。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して固定体2側に配置される部材の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0048】
図6に示すように、第2実施形態では、回路基板42に対し、磁気検出部20、その磁気検出部20から延びる磁気検出部用ターミナル21、コイル40、および受発信回路41などが実装されている。その回路基板42は、固定体2のうち磁気回路部10側を向く面に設けられている。すなわち、磁気検出部20と磁気検出部用ターミナル21とコイル40と受発信回路41とは、回路基板42に実装された状態で、固定体2に固定されている。
【0049】
第2実施形態では、磁気検出部20は、回路基板42から磁気回路部10の径方向内側の領域(具体的には、樹脂部50の凹部51の内側の領域)に延出するように設けられている。磁気検出部用ターミナル21のうち磁気検出部20とは反対側の端部は、回路基板42に設けられた中央スルーホール46と導通している。
【0050】
一方、固定体2には、固定体側ターミナル22が設けられている。固定体側ターミナル22は、樹脂インサート成形により、固定体2を構成する樹脂と一体に構成されている。固定体側ターミナル22のうち固定体2から回転体3側に突出する先端部は、回路基板42に設けられた中央スルーホール46に挿通され、はんだにより電気接合される。これにより、固定体2と回路基板42とが固定されると共に、磁気検出部用ターミナル21と中央スルーホール46と固定体側ターミナル22とが導通する。
【0051】
なお、インダクティブセンサ用ターミナル43も、樹脂インサート成形により、固定体2を構成する樹脂と一体に構成されている。インダクティブセンサ用ターミナル43も、回路基板42に設けられたスルーホール44に挿通され、はんだにより電気接合される。
【0052】
以上説明した第2実施形態の位置検出装置1では、磁気検出部20とコイル40と受発信回路41とが回路基板42に実装されている。そして、回路基板42は、固定体2のうち磁気回路部10側を向く面に設けられている。これにより、磁気検出部20と複数のコイルパターンとの位置ずれを防ぐことができる。そのため、位置検出装置1が備える磁石型回転角センサとインダクティブセンサの出力信号の信頼性を向上できる。
【0053】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態等に対して自己診断用の処理回路を設けたものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0054】
図7に示すように、第3実施形態では、回路基板42に、インダクティブセンサの出力信号と磁石型回転角センサの出力信号とが正常か否かを自己診断する処理回路47が設けられている。この処理回路47は、受発信回路41の出力信号から導き出される回転体3の位置と、磁気検出部20の出力から導き出される回転体3の位置との差を算出する。そして、処理回路47は、その算出した値(以下、「出力差」という)と、予め記憶領域に記憶された所定の閾値とを比較し、その出力差が所定の閾値よりも小さい場合、受発信回路41の出力信号および磁気検出部20の出力信号がいずれも正しいと判定する。一方、処理回路47は、その出力差が所定の閾値より大きい場合、受発信回路41の出力信号および磁気検出部20の出力信号の少なくとも一方が間違いであると判定する。そして、処理回路47は、その判定結果を外部に伝達する。
【0055】
なお、処理回路47は、
図7に示したように受発信回路41とは別にパッケージされていてもよく、或いは、図示は省略するが受発信回路41と一体にパッケージされていてもよい。
【0056】
以上説明した第3実施形態では、位置検出装置1は、受発信回路41の出力信号と磁気検出部20の出力信号とが正常か否かを自己診断する処理回路47を備えることで、インダクティブセンサの出力信号の信頼性および磁石型回転角センサの出力信号の信頼性を向上できる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第1実施形態等に対して磁気回路部10の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図8に示すように、第4実施形態では、磁気回路部10は、軸心CLに垂直な断面形状が円弧状に形成された第1円弧状磁石15および第2円弧状磁石16により筒状に構成され、回転体3の軸心CL周りに設けられている。なお、第4実施形態の磁気回路部10は、ヨーク13、14を有していない。
【0059】
第1円弧状磁石15は径方向外側にS極、径方向内側にN極が着磁されている。一方、第2円弧状磁石16は径方向外側にN極、径方向内側にS極が着磁されている。そのため、
図8の破線の矢印Mに示すように、磁気回路部10の径方向内側の領域には、第1円弧状磁石15から第2円弧状磁石16に向かって軸心CLに交差する方向に磁束が飛ぶ磁界が形成される。
【0060】
回転体3と共に磁気回路部10が軸心CL周りに回転または揺動すると、磁気回路部10の径方向内側の領域に形成される磁界の向きが変化する。磁気回路部10の径方向内側の領域(具体的には、樹脂部50の凹部51の内側の領域)に設けられる磁気検出部20は、磁気回路部10が形成する磁界の向きに応じた信号を出力する。第4実施形態においても、磁気回路部10は、筒状に形成されて磁気検出部20の周囲を囲っていることで、磁気回路部10の径方向外側の領域から、磁気回路部10の径方向内側の領域に外乱磁界が侵入することを防ぐ磁気シールドとして機能する。
【0061】
以上説明した第4実施形態では、位置検出装置1が備える磁気回路部10を、第1円弧状磁石15と第2円弧状磁石16により筒状に構成することで、磁気回路部10を構成する部品点数を少なくできる。
【0062】
(第5実施形態)
第5実施形態について、
図9~
図11を参照して説明する。第5実施形態は、第1実施形態等で説明した位置検出装置1をブレーキペダル装置60に適用した例である。
【0063】
第5実施形態で説明するブレーキペダル装置60は、車両に搭載され、運転者の踏力により踏み込み操作されるオルガン式のペダル装置である。オルガン式のペダル装置とは、ブレーキペダル61のうち運転者に踏まれる部位が揺動の軸心CLに対して車両搭載時の天地方向における上方に配置される構成のものをいう。
【0064】
まず、第5実施形態のブレーキペダル装置60が使用されるブレーキバイワイヤシステム100について、
図9を参照して説明する。なお、
図9では、信号線を破線で示している。
【0065】
図9に示すように、ブレーキバイワイヤシステム100とは、ブレーキペダル装置60に設けられる位置検出装置1から出力される電気信号に基づき、車両に搭載される電子制御装置110(以下、ECU110という)の駆動制御によりブレーキ回路120が車両の制動に必要な油圧を発生させてホイールシリンダ131~134を駆動するシステムである。ECU110は、Electronic Control Unitの略である。
【0066】
図9に例示したブレーキバイワイヤシステム100では、ECU110が第1ECU111と第2ECU112とで構成されている。ブレーキペダル装置60の位置検出装置1から出力される電気信号は、第1ECU111と第2ECU112に伝送される。
【0067】
なお、
図9では、位置検出装置1と第1ECU111とが1本の信号線で接続され、位置検出装置1と第2ECU112とが1本の信号線で接続されている例を示しているが、これに限らない。位置検出装置1の備える磁石型回転角センサおよびインダクティブセンサが複数の出力をする構成の場合、位置検出装置1と第1ECU111は、複数の信号線で接続されていてもよく、位置検出装置1と第2ECU112も、複数の信号線で接続されていてもよい。
【0068】
第1ECU111と第2ECU112は、図示しないマイコンおよび駆動回路などを有している。第1ECU111と第2ECU112はいずれもブレーキ回路120を駆動制御することが可能である。
【0069】
ブレーキ回路120として、例えば、図示しないマスターシリンダ内を往復移動するマスターピストンの動作によりブレーキ液の液圧を増加させ、各車輪に配置されたホイールシリンダ131~134を駆動する構成を採用することができる。なお、各車輪に配置されたホイールシリンダ131~134は、それぞれの車輪に設けられたブレーキパッドを駆動する。ブレーキパッドは、それに対応するブレーキディスクと摩擦接触し、各車輪が制動されることで車両が減速する。
【0070】
また、ブレーキ回路120は、ECU110からの制御信号に応じて、通常制御、ABS制御およびVSC制御などを行うことも可能である。ABSはAnti-lock Braking Systemの略であり、VSCはVehicle Stability Controlの略である。
【0071】
なお、ブレーキ回路120として、上述したようなマスターシリンダによりブレーキ回路120を流れるブレーキ液に液圧を発生させるものに限らず、例えば、液圧ポンプの駆動によりブレーキ回路120を流れるブレーキ液に液圧を発生させる構成としてもよく、或いは、電動ブレーキを採用してもよい。
【0072】
次に、ブレーキペダル装置60について、
図10および
図11を参照して説明する。なお、
図10および
図11に記載した座標は、ブレーキペダル装置60が車両に搭載された状態の上下方向、前後方向、左右方向を示すものである。
【0073】
図10および
図11に示すように、ブレーキペダル装置60は、ハウジング70、ベースプレート80、シャフト90、ブレーキペダル61および位置検出装置1などを備えている。なお、ハウジング70およびベースプレート80は、「車両に直接または間接的に固定される固定体2」の一例に相当する。
【0074】
ハウジング70は、シャフト90、位置検出装置1および図示しない反力発生機構を保持または覆う部材である。ハウジング70は、ハウジング本体71とハウジングカバー72を有している。ハウジング本体71の内側には、位置検出装置1および反力発生機構などを配置するための空間が設けられている。また、ハウジング本体71には、シャフト90を回転可能に支持するためのシャフト受部73が設けられている。ハウジングカバー72は、ハウジング本体71の側面に設けられ、ハウジング本体71の内側に形成される空間の側面開口部を塞いでいる。
【0075】
ベースプレート80は、ハウジング70のうち車両前方側の部位から車両後方側の部位に亘り連続して延びている。ベースプレート80は、例えば金属など、ハウジング70に比べて強度の高い材料により構成されている。ベースプレート80は、ボルト81などにより車両のフロア4またはダッシュパネルに固定される。そのベースプレート80に対してハウジング70が固定される。すなわち、ハウジング70は、ベースプレート80を介して車体に固定される。ベースプレート80は、ハウジング70の剛性を高める機能を有している。
【0076】
図11に示すように、シャフト90は、ハウジング本体71に設けられたシャフト受部73に回転可能または揺動可能に支持されている。詳細には、ハウジング本体71に設けられたシャフト受部73には、シャフト90を支持するための円筒状の軸受74が取り付けられており、シャフト90は、その軸受74に支持されている。したがって、シャフト90は、シャフト受部73の中心(すなわち、軸受74の中心)を軸心CLとして揺動可能である。
【0077】
図10および
図11に示すように、シャフト90は、例えば円柱状の金属を複数回折り曲げた形状とされており、軸部91、固定部92および連結部93を有している。軸部91は、シャフト受部73の中心線(すなわちシャフト90の軸心CL)と平行に延び、シャフト受部73に配置される部位である。固定部92は、ブレーキペダル61に固定される部位である。固定部92は、ブレーキペダル61のうち運転者からの踏力を受ける面とは反対側の面(以下、「ブレーキペダル61の裏面」という)に設けられた固定金具62に固定されている。連結部93は、軸部91と固定部92とを連結する部位である。シャフト90が軸部91、固定部92および連結部93を有することで、シャフト90の軸心CLとブレーキペダル61とを離れた位置に配置し、その軸心CLの周りの領域に位置検出装置1を容易に設けることが可能である。
【0078】
ブレーキペダル61は、例えば金属または樹脂などにより板状に形成され、フロア4に対して斜めに配置される。具体的には、ブレーキペダル61は、その上端部が車両前方となり、下端部が車両後方となるように斜めに配置される。そして、ブレーキペダル61のうち上側の部位には、運転者に踏まれる部位として厚肉部63が設けられている。厚肉部63は軸心CLに対して車両搭載時の天地方向における上方に配置されている。
【0079】
上述したように、ブレーキペダル61の裏面とシャフト90の固定部92とは、固定金具62によって固定されている。そのため、ブレーキペダル61は、シャフト90と同一の軸心CL周りに揺動する。すなわち、ブレーキペダル61の軸心CLとシャフト90の軸心CLとは同一である。ブレーキペダル61は、運転者の踏力の増加および減少に応じて、軸心CL周りに所定角度範囲内で正回転方向および逆回転方向に揺動する。
【0080】
図示は省略するが、ハウジング70内には、運転者がブレーキペダル61に印加される踏力に対する反力を発生させる反力発生機構が設けられている。反力発生機構は、1つまたは複数の弾性部材またはアクチュエータなどで構成することが可能である。ブレーキペダル装置60は、反力発生機構を備えることで、車両のブレーキ回路120に設けられるマスターシリンダとブレーキペダル61との機械的な接続を廃止しても、マスターシリンダとブレーキペダル61とが接続している場合(すなわち、油圧による反力が得られる場合)と同様の反力を得ることが可能である。
【0081】
本実施形態のブレーキペダル装置60は、ブレーキペダル61とシャフト90とが同一の軸心CL周りに揺動する構成である。そのため、車両走行を制御するために運転者が踏み込み操作したブレーキペダル61の操作量(すなわち、ブレーキペダル61の揺動角)は、シャフト90の揺動角と同一である。そのブレーキペダル61およびシャフト90の揺動角は、シャフト90の軸心CL上およびその軸心CLの周りに設けられた位置検出装置1により直接検出される。
【0082】
図11に示すように、位置検出装置1は、磁気回路部10、磁気検出部20、ターゲット30、コイル40および受発信回路などを備えている。磁気回路部10および磁気検出部20は、磁石型回転角センサを構成しており、ターゲット30、コイル40および受発信回路は、インダクティブセンサを構成している。位置検出装置1として、第1~第4実施形態で説明した構成を採用することが可能である。
【0083】
磁気回路部10とターゲット30とは、樹脂部50により一体に構成され、サブアッシー化されている。その樹脂部50は、ボルト52などにより、回転体3としてのシャフト90の一端に固定されている。その状態で、磁気回路部10の中心と、ターゲット30の中心と、シャフト90の軸心CLとが一致する。そして、磁気回路部10とターゲット30は、シャフト90と共に、シャフト90の軸心CL周りに揺動する。
【0084】
一方、固定体2としてのセンサ保持部75には、コイル40および受発信回路が実装された回路基板42と、磁気検出部20とが固定されている。センサ保持部75は、ハウジング本体71に固定されている。すなわち、センサ保持部75も、ハウジング70およびベースプレート80と同じく、「車両に直接または間接的に固定される固定体2」の一例に相当する。センサ保持部75とハウジング70との位置決めは、センサ保持部75の外周縁に設けられた突起76が、ハウジング70に設けられた開口の内壁面77に嵌合することで行われる。その状態で、センサ保持部75に設けられた磁気検出部20と、回路基板42に設けられたコイル40と、シャフト90の軸心CLとの位置ずれを防ぐことができる。
【0085】
図10は、ブレーキペダル61に対して運転者の踏力が印加されていない状態を示している。図示は省略するが、ブレーキペダル61に対して運転者の踏力が印加されると、ブレーキペダル61とシャフト90は軸心CL周りに揺動し、ブレーキペダル61のうち軸心CLに対して車両上方の部位がフロア4側またはダッシュパネル側に移動する。このとき、位置検出装置1は、ブレーキペダル61およびシャフト90の揺動角を検出する。そして、位置検出装置1は、その揺動角に応じた電気信号を、車両に搭載されたECU110に出力する。ECU110は、ブレーキ回路120を駆動制御して車両の制動に必要な液圧を発生させ、その液圧によりブレーキパッドを駆動して車両を減速または停止させる。
【0086】
以上説明した第5実施形態のブレーキペダル装置60は、第1~第4実施形態で説明した位置検出装置1を備えることで、磁気検出部20への外乱磁界の侵入を防ぐと共に、磁石型回転角センサとインダクティブセンサによりシャフト90の揺動角の検出に冗長性を有するものとなる。
【0087】
また、このブレーキペダル装置60は、車両の制動を行うブレーキ回路120の構成部材(例えば、マスターシリンダ)とブレーキペダル61とが機械的に接続されていない、完全なブレーキバイワイヤシステム100に用いられる。上述したブレーキペダル装置60は、位置検出装置1の出力信号の信頼性が高く、且つ、シャフト90の揺動角の検出に冗長性を有するので、完全なブレーキバイワイヤシステム100に用いられるブレーキペダル装置60に適用するのに好ましいものである。
【0088】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、インダクティブセンサを構成するコイル40およびターゲット30を軸心CLの周りに360°の範囲(すなわち、全周に亘る範囲)に設けたが、これに限らず、360°より小さい所定の角度範囲(すなわち、扇状または円弧状の範囲)に設けてもよい。
【0089】
(2)上記第5実施形態では、ブレーキペダル装置60は、オルガン式のものを説明したが、これに限らず、ペンダント式としてもよい。なお、ペンダント式のペダル装置とは、ブレーキペダル61のうち運転者に踏まれる部位が揺動の軸心CLに対して車両搭載時の天地方向における下方に配置される構成のものをいう。
【0090】
(3)上記第5実施形態では、ブレーキペダル装置60は、完全なブレーキバイワイヤシステム100に使用されるものとして説明したが、これに限らず、通常のブレーキバイワイヤシステム100に使用してもよい。なお、通常のブレーキバイワイヤシステム100とは、位置検出装置1の出力信号に基づいてECU110がブレーキ回路120を駆動制御する構成であると共に、ブレーキ回路120に設けられるマスターシリンダとブレーキペダル61とが機械的に接続されている構成とされているものをいう。
【0091】
(4)上記第5実施形態では、ブレーキバイワイヤシステム100の備えるECU110が第1ECU111と第2ECU112で構成されているものについて説明したが、これに限らず、ECU110は1個で構成されていてもよく、または、3個以上で構成されていてもよい。
【0092】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0093】
1 位置検出装置
2 固定体
3 回転体
10 磁気回路部
20 磁気検出部
30 ターゲット
40 インダクティブコイル
41 受発信回路
101 内周面
CL 軸心