(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】較正システム、較正装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 3/02 20060101AFI20240326BHJP
G01J 3/50 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01J3/02 C
G01J3/50
(21)【出願番号】P 2021504026
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008081
(87)【国際公開番号】W WO2020179629
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019039795
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】永井 浩大
(72)【発明者】
【氏名】出石 聡史
(72)【発明者】
【氏名】上松 幹夫
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-207225(JP,A)
【文献】米国特許第08525997(US,B1)
【文献】特開2012-215570(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046829(WO,A1)
【文献】特開2010-228452(JP,A)
【文献】特開2015-121507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段と、
測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別手段と、
前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正手段と、
を備え、
前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれることを特徴とする較正システム。
【請求項2】
前記組み合わせ情報は、予めテーブルとして前記記憶手段に記憶されている請求項1に記載の較正システム。
【請求項3】
前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定位置を特定する情報が含まれ、
前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定位置に基づいて最適な組み合わせを判別する請求項1または2に記載の較正システム。
【請求項4】
前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定角度を特定する情報が含まれ、
前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定角度に基づいて最適な組み合わせを判別する請求項1~3のいずれかに記載の較正システム。
【請求項5】
前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定環境の情報が含まれ、
前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定環境に基づいて最適な組み合わせを判別する請求項1~4のいずれかに記載の較正システム。
【請求項6】
前記判別手段は、第1の測色装置により測定された測定対象物を示す前記第2の識別情報が、前記記憶手段に記憶されている組み合わせ情報の中に存在しない場合、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを前記組み合わせ情報の中から判別する請求項1~5のいずれかに記載の較正システム。
【請求項7】
前記記憶手段は、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを判別するための重みの初期値テーブルを記憶している請求項6に記載の較正システム。
【請求項8】
前記判別手段により判別された組み合わせの評価をユーザーが入力可能である請求項6または7に記載の較正システム。
【請求項9】
前記測定対象物の分光放射特性と測定に用いられた第1の測色装置の分光応答度とに基づく補正係数を第1の補正係数とし、第1の測定装置による測定値を第2の測定装置で得られる値に較正するための補正係数を第2の補正係数とし、第1の補正係数と第2の補正係数を関連付けるための補正係数を第3の補正係数とするとき、前記記憶手段に記憶されている組み合わせには前記第3の補正係数が含まれており、
前記較正手段は、前記第1の補正係数を算出するとともに、算出された第1の補正係数と、前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記第3の補正係数とから前記第2の補正係数を算出し、算出された前記第2の補正係数を用いて測定値を補正する請求項1~8のいずれかに記載の較正システム。
【請求項10】
前記第1の測色装置の分光応答度は前記第1の測色装置に記憶されている請求項1~9のいずれかに記載の較正システム。
【請求項11】
前記第1の測色装置の分光応答度は前記記憶手段に記憶されている請求項1~9のいずれかに記載の較正システム。
【請求項12】
前記組み合わせ情報には、前記第2の測色装置を特定するための第3の識別情報が、前記第1の識別情報、前記第2の識別情報及び前記分光放射特性と関連付けて組み合わされている請求項1~11のいずれかに記載の較正システム。
【請求項13】
少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段と、
測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別手段と、
前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正手段と、
を備え、
前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれることを特徴とする較正装置。
【請求項14】
少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた外部のデータベース装置と通信可能であり、
測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別手段と、
前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正手段と、
を備え、
前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれることを特徴とする較正装置。
【請求項15】
前記組み合わせ情報は、予めテーブルとして前記記憶手段に記憶されている請求項13または14に記載の較正装置。
【請求項16】
前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定位置を特定する情報が含まれ、
前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定位置に基づいて最適な組み合わせを判別する請求項13~15のいずれかに記載の較正装置。
【請求項17】
前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定角度を特定する情報が含まれ、
前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定角度に基づいて最適な組み合わせを判別する請求項13~16のいずれかに記載の較正装置。
【請求項18】
前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定環境の情報が含まれ、
前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定環境に基づいて最適な組み合わせを判別する請求項13~17のいずれかに記載の較正装置。
【請求項19】
前記判別手段は、第1の測色装置により測定された測定対象物を示す前記第2の識別情報が、前記記憶手段に記憶されている組み合わせ情報の中に存在しない場合、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを前記組み合わせ情報の中から判別する請求項13~18のいずれかに記載の較正装置。
【請求項20】
前記記憶手段は、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを判別するための重みの初期値テーブルを記憶している請求項19に記載の較正装置。
【請求項21】
前記判別手段により判別された組み合わせの評価をユーザーが入力可能である請求項19または20に記載の較正装置。
【請求項22】
前記測定対象物の分光放射特性と測定に用いられた第1の測色装置の分光応答度とに基づく補正係数を第1の補正係数とし、第1の測定装置による測定値を第2の測定装置で得られる値に較正するための補正係数を第2の補正係数とし、第1の補正係数と第2の補正係数を関連付けるための補正係数を第3の補正係数とするとき、前記記憶手段に記憶されている組み合わせには前記第3の補正係数が含まれており、
前記較正手段は、前記第1の補正係数を算出するとともに、算出された第1の補正係数と、前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記第3の補正係数とから前記第2の補正係数を算出し、算出された前記第2の補正係数を用いて測定値を補正する請求項13~21のいずれかに記載の較正装置。
【請求項23】
前記第1の測色装置の分光応答度は前記第1の測色装置に記憶されている請求項13~22のいずれかに記載の較正装置。
【請求項24】
前記第1の測色装置の分光応答度は前記記憶手段に記憶されている請求項13~22のいずれかに記載の較正装置。
【請求項25】
前記組み合わせ情報には、前記第2の測色装置を特定するための第3の識別情報が、前記第1の識別情報、前記第2の識別情報及び前記分光放射特性と関連付けて組み合わされている請求項13~24のいずれかに記載の較正装置。
【請求項26】
少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた較正装置のコンピュータに、
測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれるプログラム。
【請求項27】
少なくとも3個のカラーチャンネルを含
む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するため
の複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた外部のデータベース装置と通信可能な較正装置のコンピュータに、
測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別ステップと、
前記判別ステップにより判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも3個のカラーチャンネルを含む刺激値タイプの測色装置の較正を行う際に使用される較正システム、較正装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
等色関数に近似した分光応答度を持つ色彩輝度計のような、光学フィルタなどで波長選択をした光をセンサで受光し、光強度に応じた刺激値を測定値とする刺激値タイプの測色装置は、光学フィルタやセンサの分光特性で形成される測色装置の分光応答度と、例えば等色関数のような目標とする分光応答度の差異に起因する測定誤差を持つ。
【0003】
そこで、測色装置の分光応答度と測定対象物の分光放射特性の情報を利用し、下記式(1)で示されるような測定値を補正する係数を算定し、その補正係数で測定値を補正する技術が知られている(例えば特許文献1及び特許文献2)。
P * S * CM1 = P * CMF・・・(1)
上記式(1)において、Pは目標光源の発光スペクトルの個々のスペクトル値である行列、Sは測定器のフィルタのスペクトル感度の個々のスペクトル値である行列、CMFは、CIE1931で定められた基準のスペクトル評価関数の個々のスペクトル値である行列、CM1は較正行列(補正係数)を表す。
【0004】
即ち、
図15に示すように、工場等において、測定対象物の分光放射特性(分光データ)を分光測色方式による測色装置(分光測定器ともいう)で測定しておくとともに、刺激値タイプの測色装置(フィルタ測定器ともいう)の分光応答度を予め測定しておく。そして、フィルタ測定器の分光応答度と測定対象物の分光放射特性とから補正係数CM1を算定し、フィルタ測定器による実際の測定値を補正係数で補正することにより、正しい測定値を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9163990号公報
【文献】特開2012-215570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2では、測定対象物の分光放射特性を測定する分光測定器と光学フィルタを用いたフィルタ測定器の組み合わせは考慮されていない。また、測定対象物の分光放射特性は測定位置や測定角度等にも依存する。つまり、参照となる測定対象物の分光放射特性、フィルタ測定器、及び誤差の起因となる様々なパラーメーターからなる複数の組み合わせに対し、それぞれ補正係数CM1が存在する。従って、適正な補正係数CM1を算出して精度の高い較正を行うためには、複数の組み合わせの中から最適な組み合わせを選定しなければならないが、特許文献1及び2にはこのような考え方は示されていない。
【0007】
しかも、測定対象物の分光放射特性やフィルタ測定器の分光応答度等を、較正の都度測定し、測定結果から補正係数を算定していたのでは、測定対象物や分光測定器が変更されるたびに分光放射特性等を測定しなければならず、効率が悪く、較正作業に時間を要することになる。
【0008】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、少なくとも3個のカラーチャンネルを含む刺激値タイプの測色装置で測定対象物を測定する場合に、測定条件が異なっても精度の高い較正を容易に効率よく行うことができる較正システム、較正装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段と、測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別手段と、前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正手段と、を備え、前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれることを特徴とする較正システム。
(2)前記組み合わせ情報は、予めテーブルとして前記記憶手段に記憶されている前項1に記載の較正システム。
(3)前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定位置を特定する情報が含まれ、前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定位置に基づいて最適な組み合わせを判別する前項1または2に記載の較正システム。
(4)前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定角度を特定する情報が含まれ、前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定角度に基づいて最適な組み合わせを判別する前項1~3のいずれかに記載の較正システム。
(5)前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定環境の情報が含まれ、前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定環境に基づいて最適な組み合わせを判別する前項1~4のいずれかに記載の較正システム。
(6)前記判別手段は、第1の測色装置により測定された測定対象物を示す前記第2の識別情報が、前記記憶手段に記憶されている組み合わせ情報の中に存在しない場合、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを前記組み合わせ情報の中から判別する前項1~5のいずれかに記載の較正システム。
(7)前記記憶手段は、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを判別するための重みの初期値テーブルを記憶している前項6に記載の較正システム。
(8)前記判別手段により判別された組み合わせの評価をユーザーが入力可能である前項6または7に記載の較正システム。
(9)前記測定対象物の分光放射特性と測定に用いられた第1の測色装置の分光応答度とに基づく補正係数を第1の補正係数とし、第1の測定装置による測定値を第2の測定装置で得られる値に較正するための補正係数を第2の補正係数とし、第1の補正係数と第2の補正係数を関連付けるための補正係数を第3の補正係数とするとき、前記記憶手段に記憶されている組み合わせには前記第3の補正係数が含まれており、前記較正手段は、前記第1の補正係数を算出するとともに、算出された第1の補正係数と、前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記第3の補正係数とから前記第2の補正係数を算出し、算出された前記第2の補正係数を用いて測定値を補正する前項1~8のいずれかに記載の較正システム。
(10)前記第1の測色装置の分光応答度は前記第1の測色装置に記憶されている前項1~9のいずれかに記載の較正システム。
(11)前記第1の測色装置の分光応答度は前記記憶手段に記憶されている前項1~9のいずれかに記載の較正システム。
(12)前記組み合わせ情報には、前記第2の測色装置を特定するための第3の識別情報が、前記第1の識別情報、前記第2の識別情報及び前記分光放射特性と関連付けて組み合わされている前項1~11のいずれかに記載の較正システム。
(13)少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段と、測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別手段と、前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正手段と、を備え、前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれることを特徴とする較正装置。
(14)少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた外部のデータベース装置と通信可能であり、
測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別手段と、前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正手段と、を備え、前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれることを特徴とする較正装置。
(15)前記組み合わせ情報は、予めテーブルとして前記記憶手段に記憶されている前項13または14に記載の較正装置。
(16)前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定位置を特定する情報が含まれ、前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定位置に基づいて最適な組み合わせを判別する前項13~15のいずれかに記載の較正装置。
(17)前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定角度を特定する情報が含まれ、前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定角度に基づいて最適な組み合わせを判別する前項13~16のいずれかに記載の較正装置。
(18)前記組み合わせ情報における各組み合わせには測定環境の情報が含まれ、前記判別手段は、測定に用いられた第1の測色装置の測定環境に基づいて最適な組み合わせを判別する前項13~17のいずれかに記載の較正装置。
(19)前記判別手段は、第1の測色装置により測定された測定対象物を示す前記第2の識別情報が、前記記憶手段に記憶されている組み合わせ情報の中に存在しない場合、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを前記組み合わせ情報の中から判別する前項13~18のいずれかに記載の較正装置。
(20)前記記憶手段は、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを判別するための重みの初期値テーブルを記憶している前項19に記載の較正装置。
(21)前記判別手段により判別された組み合わせの評価をユーザーが入力可能である前項19または20に記載の較正装置。
(22)前記測定対象物の分光放射特性と測定に用いられた第1の測色装置の分光応答度とに基づく補正係数を第1の補正係数とし、第1の測定装置による測定値を第2の測定装置で得られる値に較正するための補正係数を第2の補正係数とし、第1の補正係数と第2の補正係数を関連付けるための補正係数を第3の補正係数とするとき、前記記憶手段に記憶されている組み合わせには前記第3の補正係数が含まれており、前記較正手段は、前記第1の補正係数を算出するとともに、算出された第1の補正係数と、前記判別手段により判別された組み合わせに含まれている前記第3の補正係数とから前記第2の補正係数を算出し、算出された前記第2の補正係数を用いて測定値を補正する前項13~21のいずれかに記載の較正装置。
(23)前記第1の測色装置の分光応答度は前記第1の測色装置に記憶されている前項13~22のいずれかに記載の較正装置。
(24)前記第1の測色装置の分光応答度は前記記憶手段に記憶されている前項13~22のいずれかに記載の較正装置。
(25)前記組み合わせ情報には、前記第2の測色装置を特定するための第3の識別情報が、前記第1の識別情報、前記第2の識別情報及び前記分光放射特性と関連付けて組み合わされている前項13~24のいずれかに記載の較正装置。
(26)少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた較正装置のコンピュータに、測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別ステップと、前記判別ステップにより判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正ステップと、を実行させるためのプログラムであって、前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれるプログラム。
(27)少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された前記測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた外部のデータベース装置と通信可能な較正装置のコンピュータに、測定対象物の測定を行った前記第1の測色装置の較正を行う際に、前記第1の測色装置の第1の識別情報及び前記測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、前記記憶手段に記憶されている複数の前記組み合わせ情報の中から判別する判別ステップと、前記判別ステップにより判別された組み合わせに含まれている前記測定対象物の分光放射特性と、測定を行った前記第1の測色装置の分光応答度に基づいて、前記第1の測色装置による測定値を補正する較正ステップと、を実行させるためのプログラムであって、前記組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれるプログラム。
【発明の効果】
【0010】
前項(1)及び(13)に記載の発明によれば、少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、第1の測色装置の各分光応答度と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報が、予め記憶手段に記憶されている。組み合わせ情報には、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれている。そして、測定対象物の測定を行った第1の測色装置の較正を行う際に、第1の測色装置の第1の識別情報及び測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせが、記憶手段に記憶されている複数の組み合わせ情報の中から判別され、判別された組み合わせに含まれている測定対象物の分光放射特性と、測定を行った第1の測色装置の分光応答度に基づいて、第1の測色装置による測定値が補正される。
【0011】
このように、記憶手段に予め記憶されている複数の組み合わせの中から、実際に使用される第1の測色装置と測定対象物に対応する最適な組み合わせが選択され、選択された組み合わせに含まれる分光放射特性が第1の測色装置の較正に用いられるから、測定に使用される第1の測色装置や測定対象物が変わっても、条件に適応した精度の高い較正を容易に行うことができる。しかも、測定対象物の分光放射特性やフィルタ測定器の分光応答度等を、較正の都度測定し、測定結果から補正係数を算定する必要はなくなるから、短時間で効率よく較正作業を行うことができる。
【0012】
前項(2)及び(15)に記載の発明によれば、判別手段は、記憶手段に記憶されている組み合わせ情報のテーブルの中から、最適な組み合わせを判別することができる。
【0013】
前項(3)及び(16)に記載の発明によれば、第1の測定装置の測定位置をも考慮して、最適な組み合わせを判別することができるから、より高精度の較正を行うことができる。
【0014】
前項(4)及び(17)に記載の発明によれば、第1の測定装置の測定角度をも考慮して、最適な組み合わせを判別することができるから、より高精度の較正を行うことができる。
【0015】
前項(5)及び(18)に記載の発明によれば、第1の測定装置の測定環境の情報をも考慮して、最適な組み合わせを判別することができるから、より高精度の較正を行うことができる。
【0016】
前項(6)及び(19)に記載の発明によれば、第1の測色装置により測定された測定対象物を示す第2の識別情報が、組み合わせ情報の中に存在しない場合、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせが組み合わせ情報の中から判別される。
【0017】
前項(7)及び(20)に記載の発明によれば、重みの初期値テーブルに基づいて、分光放射特性の近似する測定対象物についての組み合わせを判別することができる。
【0018】
前項(8)及び(21)に記載の発明によれば、ユーザーは判別された組み合わせの評価を入力可能であるから、最適な組み合わせの判別に、入力された評価を参考にすることができる。
【0019】
前項(9)及び(22)に記載の発明によれば、測定対象物の分光放射特性と測定に用いられた第1の測色装置の分光応答度とに基づく補正係数を第1の補正係数とし、第1の測定装置による測定値を第2の測定装置で得られる値に較正するための補正係数を第2の補正係数とし、第1の補正係数と第2の補正係数を関連付けるための補正係数を第3の補正係数とするとき、記憶手段に記憶されている組み合わせには第3の補正係数が含まれているから、第1の補正係数を算出するとともに、算出された第1の補正係数と、判別された組み合わせに含まれている第3の補正係数とから第2の補正係数を算出し、算出された第2の補正係数を用いて測定値を補正することができる。
【0020】
前項(10)及び(23)に記載の発明によれば、第1の測色装置の分光応答度を第1の測色装置から呼び出すことができる。
【0021】
前項(11)及び(24)に記載の発明によれば、第1の測色装置の分光応答度を記憶手段から呼び出すことができる。
【0022】
前項(12)及び(25)に記載の発明によれば、組み合わせ情報には、第2の測色装置を特定するための第3の識別情報が、第1の識別情報、第2の識別情報及び分光放射特性と関連付けて組み合わされているから、この第3の識別情報で特定される第2の測色装置をユーザーが保持している場合、この第2の測色装置を用いて再度、測定対象物の分光放射特性を測定し、その結果に基づいて補正を行うというような処理が可能となる。
【0023】
前項(14)に記載の発明によれば、記憶手段に予め記憶されている複数の組み合わせの中から、実際に使用される第1の測色装置と測定対象物に対応する最適な組み合わせが選択され、選択された組み合わせに含まれる分光放射特性が第1の測色装置の較正に用いられるから、測定に使用される第1の測色装置や測定対象物が変わっても、条件に適応した精度の高い較正を容易にかつ効率的に行うことができる。しかも、記憶手段は較正装置とは異なる外部のデータベース装置に備えられているから、組み合わせ情報をデータベース装置により集中的に管理でき、必要に応じて較正装置がデータベース装置に接続して必要な情報を取得することができる。
【0024】
前項(26)に記載の発明によれば、少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、第1の測色装置の各分光応答度と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報であって、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれている組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた較正装置のコンピュータに、測定対象物の測定を行った第1の測色装置の較正を行う際に、第1の測色装置の第1の識別情報及び測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、記憶手段に記憶されている複数の組み合わせ情報の中から判別し、判別された組み合わせに含まれている測定対象物の分光放射特性と、測定を行った第1の測色装置の分光応答度に基づいて、第1の測色装置による測定値を補正する処理を、実行させることができる。
【0025】
前項(27)に記載の発明によれば、少なくとも3個のカラーチャンネルを含む複数個の刺激値タイプの第1の測色装置をそれぞれ特定するための複数個の第1の識別情報と、1個又は複数個の測定対象物を特定するための1個又は複数個の第2の識別情報と、1個又は複数個の分光測色方式による第2の測色装置により測定された測定対象物の分光放射特性が、関連付けて組み合わされた複数の組み合わせ情報であって、測定対象物が同じで第1の測色装置が異なる複数の組み合わせ情報が含まれている組み合わせ情報を予め記憶する記憶手段を備えた外部のデータベース装置と通信可能な較正装置のコンピュータに、測定対象物の測定を行った第1の測色装置の較正を行う際に、第1の測色装置の第1の識別情報及び測定対象物の第2の識別情報に基づいて、測定を行った第1の測色装置と測定対象物と該測定対象物の分光放射特性の最適な組み合わせを、記憶手段に記憶されている複数の組み合わせ情報の中から判別し、判別された組み合わせに含まれている測定対象物の分光放射特性と、測定を行った第1の測色装置の分光応答度に基づいて、第1の測色装置による測定値を補正する処理を、実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明の一実施形態に係る較正システムの概略構成を示す図である。
【
図2】データベースサーバに格納保存されている組み合わせテーブルの一例を示す図である。
【
図3】
図2の組み合わせテーブルの下で、
図1に示した較正システムにおける較正装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】組み合わせテーブルの他の例を示す図である。
【
図5】
図4の組み合わせテーブルの下で、
図1に示した較正システムにおける較正装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】組み合わせテーブルのさらに他の例を示す図である。
【
図7】
図6の組み合わせテーブルの下で、
図1に示した較正システムにおける較正装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】(A)は工場出荷時における補正係数の関係を示す図、(B)はユーザー利用時における補正係数の関係を示す図である。
【
図10】
図1に示した較正システムにおける較正装置のさらに他の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図11】ニューラルネットワークの一例を示す図である。
【
図12】(A)~(C)は2つの測定対象物(ディスプレイパネル)を比較した場合におけるスペクトル形状の相違を説明するための図である。
【
図13】重みの初期値テーブルの一例を示す図である。
【
図14】この発明の他の実施形態に係る較正装置の構成を示す図である。
【
図15】基本となる較正方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、この発明の一実施形態に係る較正システムの概略構成を示す図である。この較正システムは、測定対象物1を測定する第1の測色装置2と、第1の測色装置2からの測定データを受信して第1の測色装置2の較正を行う較正装置3と、データベースサーバ4とを備えている。
【0028】
測定対象物1としてこの実施形態では液晶等のディスプレイパネルを例示するが、ディスプレイパネルに限定されない。
【0029】
第1の測色装置2は、光学フィルタなどで波長選択をした光をセンサで受光し、光強度に応じた刺激値を測定値とする刺激値タイプの測色装置であり、少なくとも3個のカラーチャンネルを含んでいる。つまり、分光透過性の異なる3つ以上のフィルタと、フィルタを介して受け取られた光を、対応する測定信号に変換するための3個以上のセンサを有している。以下、第1の測色装置をフィルタ測定器ともいう。
【0030】
較正装置3は、パーソナルコンピュータで構成されており、CPU31とRAM32とハードディスク等の不揮発メモリ33の他、機能的に測定部34と判別部35と較正部36と通信部37を備えている。
【0031】
CPU31は較正装置3の全体を統括的に制御するものであり、RAM32はCPU31が不揮発メモリ33等に格納された動作プログラムに従って動作する際の作業領域を提供する。
【0032】
不揮発メモリ33はCPU31の動作プログラムや各種のデータを保存する。各種のデータの一例としては、フィルタ測定器2から取得された、被測定物の生データ(Rawデータ)である測定データ、フィルタ測定器2を特定するための識別情報であるフィルタ測定器ID、フィルタ測定器2の分光応答度等がある。
【0033】
測定部34は、フィルタ測定器2から測定データを取得するとともに、フィルタ測定器IDと分光応答度を取得する。取得された測定データ、フィルタ測定器ID、分光応答度は、上述したように不揮発メモリ33に保存される。また、測定が行われる測定対象物1を特定するための測定対象物ID(ディスプレイタイプ(Display Type)ともいう)も取得する。測定対象物IDは例えばユーザー入力に基づいて取得される。フィルタ測定器ID等もユーザー入力に基づいて取得されても良い。
【0034】
判別部35は、精度の高い較正を行うために、データベースサーバ4に格納されている組み合わせ情報の中から、実際の測定に用いられるフィルタ測定器2と測定対象物1に適合する最適な組み合わせを判別するが、この点については後述する。
【0035】
較正部36は、判別部35により判別された最適な組み合わせに含まれている測定対象物1の分光放射特性等を用いて、フィルタ測定器2の較正を行う。
【0036】
通信部37は、ネットワーク5を介して較正装置3をデータベースサーバ4やフィルタ測定器2等と接続するための通信インターフェースである。
【0037】
データベースサーバ4は、パーソナルコンピュータ等によって構成され、記憶部41を備えると共に、この記憶部41に、フィルタ測定器2の較正を行うための複数の組み合わせ情報を組み合わせテーブルとして保持している。
【0038】
組み合わせテーブルについて詳細に説明すると、前述したように、フィルタ測定器2は分光応答度と等色関数のような目標とする分光応答度の差異に起因する測定誤差を持つことから、フィルタ測定器2の分光応答度と測定対象物1の分光放射特性の情報を利用し、補正計数を算定して測定値を補正することで、フィルタ測定器2の較正を行うことが望ましい。
【0039】
しかし、測定対象物1の分光放射特性、フィルタ測定器2、及び誤差の起因となる様々なパラーメーターからなる複数の組み合わせに対し、それぞれ補正係数が存在する。従って、適正な補正係数を算出して精度の高い較正を行うためには、複数の組み合わせの中から最適な組み合わせを選定しなければならない。しかも、測定対象物1の分光放射特性等をその都度測定し、測定結果から補正係数を算定していたのでは、測定対象物1が変更されるたびに分光放射特性等を測定しなければならず、効率が悪く、較正作業にも時間を要することになる。
【0040】
そこで、この実施形態では、種類の異なる複数のフィルタ測定器2と種類の異なる複数の測定対象物1と、分光測色方式による第2の測色装置(以下、分光測定器ともいう)5を組み合わせて、測定対象物1の分光放射特性を分光測定器5により予め測定しておく。また、フィルタ測定器2の分光応答度も測定しておく。
【0041】
前述したように、測定対象物1及びフィルタ測定器2にはそれらを特定するための測定対象物ID(ディスプレイタイプ)やフィルタ測定器IDが付与されているが、この実施形態では、望ましい形態として、分光測定器5にも分光測定器IDが付与されている。そして、得られた分光放射特性と、分光放射特性を測定した分光測定器5のIDと、フィルタ測定器2のIDと、測定対象物1のIDとを関連付けて組み合わせテーブルとしてデータベースサーバ4の記憶部41に格納保存しておく。
【0042】
図2にデータベースサーバ4に格納保存されている組み合わせテーブルの一例を示す。この組み合わせテーブルでは、フィルタ測定器IDと、測定対象物ID(Display Type)と、分光測定器IDと、分光放射特性が関連付けられて記憶されている。また、図示は省略したが、フィルタ測定器ID、測定対象物ID、分光測定器ID等と関連付けて各フィルタ測定器2の分光応答度も、このテーブルに規定されていても良いし、フィルタ測定器2自体に記憶保持されても良い。
【0043】
この組み合わせテーブルを用い、較正装置3は、実際の測定に用いるフィルタ測定器2のIDと測定対象物1のIDが入力(Input)されることで、組み合わせテーブルの各組み合わせ情報の中から、それらのフィルタ測定器ID及び測定対象物IDが含まれる組み合わせを最適な組み合わせとして判別し、対応する分光測定器5とそれによって測定された測定対象物1の分光放射特性を特定(Output)することができるようになっている。
【0044】
次に、
図1に示した較正システムにおける較正装置3の動作を、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
まず、フィルタ測定器2の工場出荷時等に、フィルタ測定器2と各種の測定対象物1と各種の分光測定器5を組み合わせて、測定対象物1の分光放射特性を測定し、その結果を、フィルタ測定器ID、測定対象物ID、分光測定器IDと関連付けて、組み合わせ情報としてデータベースサーバ4の記憶部41に組み合わせテーブルとして保存する。また、フィルタ測定器2の分光応答度も測定し、フィルタ測定器2自体に記憶保持させ、あるいはデータベースサーバ4の組み合わせテーブルにフィルタ測定器IDと関連付けて保存しておく。これを繰り返すことで、データベースサーバに多数の組み合わせ情報を蓄積する。
【0046】
ユーザーは出荷されたフィルタ測定器2を用いて測定対象物1の測定を行うが、較正装置3の測定部34は、フィルタ測定器2から測定データ、フィルタ測定器ID、分光応答度を取得すると共に、ユーザー入力等によって測定対象物1のディスプレイタイプを取得する(ステップS01)。
【0047】
次に、較正装置3の判別部35は、データベースサーバ4にネットワークを介してアクセスし、データベースサーバ4の組み合わせテーブルから組み合わせ情報を取得する(ステップS01)。
【0048】
判別部35は更に、取得した組み合わせ情報と、測定部34で取得されたフィルタ測定器ID及びディスプレイタイプを比較し、組み合わせ情報の中から、フィルタ測定器ID及びディスプレイタイプが合致する組み合わせを判別する(ステップS01)。そして、判別された組み合わせに含まれている分光測定器IDで示される分光測定器5及び分光放射特性を、実際に使用されるフィルタ測定器2及び測定対象物1に対応する最適な分光測定器5及び分光放射特性として決定する(ステップS01)。
【0049】
例えば、
図2の組み合わせテーブルにおいて、フィルタ測定器IDがa、ディスプレイタイプが丸数字1であれば、分光測定器IDはA、分光放射特性はαと決定される。
【0050】
次に、較正部36は決定された分光放射特性と、フィルタ測定器2の分光応答度を用いて補正係数(第1の補正係数に相当)CM1を算定し(ステップS02)、算定された補正係数CM1を用いて測定データ(Rawデータ)を補正する(ステップS03)。
【0051】
このように、この実施形態では、データベースサーバ4に予め関連付けて記憶されている、フィルタ測定器2と測定対象物1と分光測定器5と測定対象物1の分光放射特性の組み合わせからなる複数の組み合わせ情報の中から、実際に使用されるフィルタ測定器2と測定対象物1に対応する最適な組み合わせが選択され、選択された組み合わせに含まれる分光放射特性がフィルタ測定器2の較正時の補正係数の算定に用いられるから、測定に使用されるフィルタ測定器2や測定対象物1が変わっても、あるいはユーザーが最適な分光測定器5を保持していなくても、条件に適応した精度の高い較正を容易かつ効率的に行うことができる。
【0052】
また、この実施形態では、組み合わせ情報に分光測定器5を特定するための分光測定器IDが含まれているから、この分光測定器IDで特定される分光測定器5をユーザーが保持している場合、この分光測定器5を用いて再度、測定対象物1の分光放射特性を測定し、その結果に基づいて補正係数CM1を算定してもよい。この場合、分光放射特性が既に得られていることから、トレーサビィリティ(追跡可能性)の高い較正を行うことができる。
[第2の実施形態]
上述した第1の実施形態において、
図2に示した組み合わせテーブルに規定される多数の組み合わせ情報は、フィルタ測定器ID、測定対象物1のディスプレイタイプ、分光測定器ID、分光放射特性がそれぞれ関連付けられたものであった。
【0053】
しかし、補正係数CM1は、測定対象物における測定位置によっても相違するため、測定位置が異なっていれば精度の高い較正を行うことができない。
【0054】
そこで、この実施形態では、各種の組み合わせの下で測定対象物1における測定位置を変えて予め分光放射特性の測定を行い、
図4の組み合わせテーブルに示すように、測定位置を特定するための情報をもフィルタ測定器ID、ディスプレイタイプ、分光測定器ID、分光放射特性と関連付けて組み合わせテーブルに保持しておく。
【0055】
図1の較正システムにおいて、
図4の組み合わせテーブルを用いる場合の較正装置3の動作を、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
フィルタ測定器2を用いた測定対象物1の測定の較正を行う際に、較正装置3の測定部34は、フィルタ測定器2から測定データ、フィルタ測定器ID、分光応答度を取得すると共に、ユーザー入力等によって測定位置の情報、ディスプレイタイプを取得する(ステップS11)。
【0057】
次に、較正装置3の判別部35は、データベースサーバ4にネットワークを介してアクセスし、データベースサーバ4の組み合わせテーブルから組み合わせ情報を取得する(ステップS11)。
【0058】
判別部35は更に、取得した組み合わせ情報と、測定部34で取得されたフィルタ測定器ID、ディスプレイタイプ及び測定位置を比較し、組み合わせ情報の中から、フィルタ測定器ID、ディスプレイタイプ及び測定位置が合致する組み合わせを判別する(ステップS11)。そして、判別された組み合わせに含まれている分光測定器IDで示される分光測定器5及び分光放射特性を、測定に使用されているフィルタ測定器2及び測定対象物1に対応する最適な分光測定器5及び分光放射特性として決定する(ステップS11)。
【0059】
例えば、フィルタ測定器IDがa、ディスプレイタイプが丸数字1、測定位置が測定位置1であれば、分光測定器IDはA、分光放射特性はαと決定される。
【0060】
次に、較正部36は決定された分光放射特性と、フィルタ測定器2の分光応答度を用いて補正係数CM1を算定し(ステップS12)、算定された補正係数CM1を用いて測定データを補正する(ステップS13)。
【0061】
このように、この実施形態では、データベースサーバ4に予め記憶されている組み合わせ情報の中に、測定位置を特定するための情報も含まれているから、測定位置を考慮して最適な組み合わせを判別することができ、より高精度の較正を行うことができる。
[第3の実施形態]
補正係数CM1は、測定対象物における測定位置のみならず測定角度によっても相違するため、測定角度が異なっていれば精度の高い較正を行うことができない。
【0062】
そこで、この実施形態では、各種の組み合わせの下で測定対象物1における測定位置のみならず測定角度を変えて予め測定を行い、
図6の組み合わせテーブルに示すように、測定位置及び測定角度を特定するための情報をもフィルタ測定器ID、ディスプレイタイプ、分光測定器ID、分光放射特性と関連付けて組み合わせテーブルに保持しておく。
【0063】
図1の較正システムにおいて、
図6の組み合わせテーブルを用いる場合の較正装置3の動作を、
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0064】
フィルタ測定器2を用いた測定対象物1の測定の較正を行う際に、較正装置3の測定部34は、フィルタ測定器2から測定データ、フィルタ測定器ID、分光応答度を取得すると共に、ユーザー入力等によって測定位置及び測定角度の情報、ディスプレイタイプを取得する(ステップS21)。
【0065】
次に、較正装置3の判別部35は、データベースサーバ4にネットワークを介してアクセスし、データベースサーバ4の組み合わせテーブルから組み合わせ情報を取得する(ステップS21)。
【0066】
判別部35は更に、取得した組み合わせ情報と、測定部34で取得されたフィルタ測定器ID、ディスプレイタイプ、測定位置及び測定角度を比較し、組み合わせ情報の中から、フィルタ測定器ID、ディスプレイタイプ、測定位置及び測定角度が合致する組み合わせを判別する(ステップS21)。そして、判別された組み合わせに含まれている分光測定器IDで示される分光測定器5及び分光放射特性を、測定に使用されているフィルタ測定器2及び測定対象物1に対応する最適な分光測定器5及び分光放射特性として決定する(ステップS21)。例えば、フィルタ測定器IDがa、ディスプレイタイプが丸数字1、測定位置が測定位置1、測定角度がθであれば、分光測定器IDはA、分光放射特性はαと決定される。
【0067】
次に、較正部36は決定された分光放射特性と、フィルタ測定器2の分光応答度を用いて補正係数CM1を算定し(ステップS22)、算定された補正係数CM1を用いて測定データを補正する(ステップS23)。
【0068】
このように、この実施形態では、データベースサーバ4に予め記憶されている組み合わせ情報の中に、測定位置のほか測定角度を特定するための情報も含まれているから、測定角度をも考慮して最適な組み合わせを判別することができ、より高精度の較正を行うことができる。
【0069】
なお、組み合わせテーブルには、測定位置と測定角度の両方ではなく測定角度についての情報のみが含まれていても良い。
[第4の実施形態]
分光測定器5とフィルタ測定器2では、それぞれの測定値を比較すると違いが生じる。そこで、その測定値の違いから補正係数を算出し、フィルタ測定器2の測定データに補正を加える技術(任意較正)がある。
【0070】
ここで、Value[Spectrometer]を分光データから得られる個々の刺激値である行列、Value[Filter type measuring instrument]]をフィルタ測定器で得られる測定データ(Rawデータ)の個々の刺激値である行列、CM2を較正行列(第2の補正係数)とすると、
Value[Spectrometer] = CM2 * Value[Filter type measuring instrument]]・・・(2)
で表される。
【0071】
フィルタ測定器2の分光応答度を取得するために用いる光源(分光測定器)と測定対象物1であるディスプレイパネルでは、偏光特性や指向性などの光学特性が異なるため、前述した第1の補正係数(CM1)と上記の第2の補正係数(CM2)は完全には一致しない。
【0072】
そこで、
図8の任意較正の説明図に示すように、工場出荷前に事前に同じ測定対象物1であるディスプレイパネルを、分光測定器5とフィルタ測定器1を用いて、同タイミングで測定し、第1の補正係数(CM1)、第2の補正係数(CM2)を求める。求めたCM1とCM2の差分を、工場出荷時における補正係数の関係を示す
図9(A)のように第3の補正係数(CM3)とすると、ユーザー利用時における補正係数の関係を示す
図9(B)のように、
CM2’ = CM1’ + CM3 = CM1’ + (CM2 ・ CM1)・・・(3)
となる。ここで、CM1’、CM2’はユーザーが実際にフィルタ測定器を使用している時の第1及び第2の補正係数を表す。なお、第3の補正係数(CM3)の求め方は下記式(4)のように第1の補正係数(CM1)と第2の補正係数(CM2)の比であっても構わない。
CM2’ = CM1’ * (CM2 / CM1))・・・(4)
そして、フィルタ測定器2や測定対象物1に識別情報(ID)を付与しておき、個々のフィルタ測定器2の分光応答度、個々の測定対象物1の測定に用いたフィルタ測定器2と分光放射特性の情報、更には第3の補正係数(CM3)をそれぞれ関連付けて組み合わせテーブルとして保持しておく。
【0073】
フィルタ測定器2による測定対象物1の実際の測定の際、利用しているフィルタ測定器2のIDと測定対象物1のIDを、較正装置3の測定部34は、取得した測定データ(Rawデータ)とセットにして保持する。そして、フィルタ測定器IDと測定対象物IDに合致する組み合わせを組み合わせ情報の中から判別し、その組み合わせに含まれている分光測定器IDと分光放射特性と第3の補正係数(CM3)を決定する。
【0074】
そして、フィルタ測定器2の分光応答度と分光放射特性とから第1の補正係数(CM1’)を算定し、この第1の補正係数(CM1’)と第3の補正係数(CM3)とから、式(3)又は式(4)から第2の補正係数(CM2’) を導き、この第2の補正係数(CM2’)を用いて測定値を補正する。
【0075】
このように、第3の補正係数(CM3)を組み合わせテーブルに保持させておくことで、任意較正を測定前に毎回実施する必要がなくなり、作業者の負担を減少させることができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。
【0076】
例えば、フィルタ測定器2や測定対象物1等に識別情報であるIDを付けておき、個々のフィルタ測定器2の分光応答度、個々の測定対象物1の測定に用いた測定器情報と分光放射特性の情報をそれぞれそれらIDとセットにして(関連付けて)組み合わせテーブルとして保持しておく。そして、
図10のフローチャートに示すように、実際の測定の際、較正装置3と一体で又は別体で備えられた外部環境測定器6により取得された、温度や湿度、場所、外光(測定場所の照度)、外部電場磁場、測定器の振動、測定場所のクリーン度、電源の安定性、更には測定に携わった作業者のIDなど、測定環境の情報(測定環境パラメータ)を、測定データとセットにして保持しておくことで、測定環境の傾向を分析することができる。また、ユーザーは判別部35に読み込まれた組み合わせテーブルに測定環境の情報(測定環境パラメータ)を追加してもよい。なお、
図10のフローチャートにおいて、測定環境の情報(測定環境パラメータ)を測定データとセットにして保持しておくこと以外は、
図5のフローチャートと同じであるので、同一のステップ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0077】
また、複数台のフィルタ測定器2を用いて、同じ測定対象物1を管理する場合、データベースサーバ4に蓄積された各ロットや各測定器の測定値から、特異に測定値が変化する、もしくは線形に変化するロットや測定器を見つけることで、事前に不良予測を行うようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、組み合わせテーブルに保持されている組み合わせ情報の中から、実際の測定に使用しているフィルタ測定器2と測定対象物1のIDが合致している組み合わせを選択した。しかし、これらの組み合わせ情報を多数蓄積していくことで、いわゆるAI(人工知能)等を用いることにより、測定対象物1と同じIDが組み合わせ情報の中に存在しない場合であっても、分光放射特性の近似する測定対象物1についての組み合わせを取得することができる。
【0079】
この場合、望ましくは、分光放射特性の近似する測定対象物1についての組み合わせを判別するための重みの初期値テーブルが、組み合わせテーブルと共にデータベースサーバ4に記憶されていても良い。
【0080】
ここで、重みの初期値テーブルの一例について説明する。重みの初期値テーブルとは、測定対象物の分光放射特性のスペクトル形状から異なる測定対象物(ディスプレイパネル)の測定であっても、似たスペクトル形状を持つ測定対象物のID(ディスプレイタイプ)を特定するためのテーブルを意味し、例えばニューラルネットワークにおける重み係数Wをさす。
【0081】
ニューラルネットワークの一例を示すと、ニューラルネットワークとは、
図11のような模式図であらわされる。
図11のo1
1 、o2
1 、o3
1 はそれぞれの波長で差が大きければ1を、差が小さければ0を出力する(下記のステップ関数:uが閾値bより大きければ1、小さければ0を出力する)。
【0082】
【0083】
また、o12 、o22 は、それぞれ以下の式で求められる。
o12 =o11 *W11 + o21 * W21 + o31 * W31
o22 = o11* W12 + o21 * W22 + o31 * W32
そして、o12 、o22 それぞれの値から一致、不一致を判断する仕組みである。
【0084】
2つの測定対象物(ディスプレイパネル)(片方はLED、もう片方はOLED)を比較する場合において、LEDとOLEDのスペクトル形状は、
図12(A)~(C)の通り、450nmでは相対強度の差はなく、550nmでは相対強度の差が少しあり、650nmでは相対強度の差が大きくある。
【0085】
この前提のもとに、
図13に示す重み係数W(重みの初期値テーブル)を定める。一例を示すと、二つの測定対象物1があり、比較すると450nmでは差がないが、550nm、650nmでは差がある場合(o1
1 = 0、o2
1= 1、o3
1= 1)、この時、o1
2 、o2
2は重みの初期値テーブル(
図13)と合わせて、
o1
2 = 0 * 0.01 + 1 * 0.6 + 1 * 0.9 = 1.5
o2
2 = 0 * 0.01 + 1 * 0.3 + 1 * 0.1 = 0.4
と求められる。つまり、不一致の確率は、79 %[1.5 / (1.5 + 0.4) * 100]、一致の確率は、21 %[0.4 / (1.5 + 0.4) * 100]となる。
【0086】
以上の例は3カ所の波長での比較の例であったが、可視光域全域(380nm~780nm)で1nmごと(401カ所)の比較を実施することで、より精度よく比較を実施することができる。
【0087】
このように、重みの初期値テーブルを参照することで、共通性のある測定対象物1を有している組み合わせを選択することができ、近似した補正係数を算定することができる。
【0088】
また、選択した組み合わせにおいて測定対象物IDを共通性のある測定対象物IDに置き換えた新たな組み合わせを、更新装置が自動的に作成してデータベースサーバに蓄積していってもよい。また、近似する組み合わせの評価をユーザーが入力できるようにし、この評価に基づいて新たな組み合わせを自動的に作成してデータベースサーバに蓄積していってもよい。これにより、ユーザー等が新たな組み合わせテーブルを作成しなくても、組み合わせ情報が増えていくから、組み合わせテーブルの作成の手間が軽減される。
【0089】
また、以上の実施形態では、組み合わせテーブルがデータベースサーバ4に保存されており、較正装置3がデータベースサーバ4から組み合わせ情報をネットワークを介して取得するものとした。しかし、
図14に示すように、較正装置3内の不揮発メモリ(記憶部)33に組み合わせテーブルが保存蓄積されていても良い。この構成では、較正装置3は外部のデータベースサーバ4から組み合わせ情報を取得する必要はなくなる。なお、
図14の較正装置3の動作は、上記のように組み合わせ情報を自装置内で取得する点を除いて、
図1に示した較正システムにおける較正装置3の動作と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、少なくとも3個のカラーチャンネルを含む刺激値タイプの測色装置の較正を行う際に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 被測定対象物
2 フィルタ測定器(第1の測色装置)
3 較正装置
31 CPU
33 不揮発メモリ
34 測定部
35 判別部
36 較正部
37 通信部
4 データベースサーバ
41 記憶部
5 分光測定器(第2の測色装置)
6 外部環境測定部