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特許7459875炭化珪素半導体装置の製造方法及び炭化珪素半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置の製造方法及び炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20240326BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/28 301S
H01L21/28 301B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652M
H01L29/78 658F
H01L29/78 653A
H01L29/78 658G
H01L29/78 658Z
H01L29/78 655A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021533073
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2020027284
(87)【国際公開番号】W WO2021010382
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2019131806
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】玉祖 秀人
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-058587(JP,A)
【文献】特開2003-158259(JP,A)
【文献】特開2019-075472(JP,A)
【文献】特開2001-185507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素基板を準備する工程と、
前記炭化珪素基板の一方の主面の上に絶縁膜を成膜する工程と、
前記絶縁膜にコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールの底面において、前記一方の主面を露出させる工程と、
前記コンタクトホールの底面及び側面、前記絶縁膜の上面にSi膜を形成する工程と、
前記コンタクトホールの底面における前記Si膜を除去し、前記一方の主面を露出させる工程と、
前記コンタクトホールの底面及び前記Si膜の上にNi膜を成膜する工程と、
前記Ni膜を成膜した後、熱処理を行う工程と、
を有し、
前記熱処理により、前記コンタクトホールの底面には、前記炭化珪素基板に含まれるSiと前記Ni膜によりオーミック電極となる第1の合金層が形成され、前記絶縁膜の上面には、前記Si膜と前記Ni膜により第2の合金層が形成される炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理の温度は、800℃以上、1100℃以下である請求項1に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記Ni膜を成膜する工程の後で前記熱処理を行う工程の前の状態において、前記絶縁膜の上面の前記Si膜及び前記Ni膜に含まれる単位面積あたりのSi原子の数とNi原子の数との和に対するSi原子の数の比率は、33%以上、67%以下である請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記Ni膜の膜厚は、5nm以上、100nm以下である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記Si膜の膜厚は、5nm以上、100nm以下であり、前記Ni膜の膜厚は、5nm以上、100nm以下である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理を行う工程の後、前記Ni膜のうち前記炭化珪素基板及び前記Si膜のどちらとも反応していない部分をウェットエッチングにより除去する工程を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2の合金層は、前記コンタクトホールの側面にも形成される請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板と、
前記第1主面上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜に設けられたコンタクトホールと、
前記コンタクトホールの底面において前記炭化珪素基板と接触しているNiとSiとを含む第1の合金層と、
前記絶縁膜の上面に設けられたNiとSiとを含む第2の合金層と、
を有し、
前記第2の合金層に含まれるSiの濃度は、前記第1の合金層に含まれるSiの濃度よりも高く、
前記第1の合金層は、前記炭化珪素基板とオーミックコンタクトしている炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記第2の合金層は、前記コンタクトホールの側面にも設けられている請求項8に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記第2の合金層に含まれるSi原子とNi原子の和に対するSi原子の比率は、33%以上、67%以下である請求項8または請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記第2の合金層の上のバリア層と、
前記バリア層の上の配線層と、
を有する請求項8から請求項1のいずれか一項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記バリア層は、TiNまたはTaNである請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
前記配線層は、Alを含む金属である請求項1または請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置の製造方法及び炭化珪素半導体装置に関する。
【0002】
本出願は、2019年7月17日出願の日本出願第2019-131806号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
炭化珪素半導体装置の製造工程においては、ソース電極を形成する工程がある。ソース電極を形成する工程は、例えば、最初に、炭化珪素基板の表面に、酸化シリコン等により絶縁膜を形成し、絶縁膜の一部を炭化珪素基板の表面が露出するまで除去することにより、コンタクトホールを形成する。次に、炭化珪素基板の表面及び絶縁膜の上面を含む全面に、Ni(ニッケル)膜を成膜し、熱処理をすることにより、炭化珪素基板に含まれるSi(シリコン)とNiとによりNiSi合金を形成し、オーミック電極を形成する。このように形成されたオーミック電極により、ソース電極が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2005-276978号公報
【文献】日本国特開2017-175115号公報
【文献】日本国特開2012-99598号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の炭化珪素半導体装置の製造方法は、炭化珪素基板を準備する工程と、炭化珪素基板の一方の主面の上に絶縁膜を成膜する工程と、絶縁膜にコンタクトホールを形成し、コンタクトホールの底面において、一方の主面を露出させる工程と、コンタクトホールの底面及び側面、絶縁膜の上面にSi膜を形成する工程と、コンタクトホールの底面におけるSi膜を除去し、一方の主面を露出させる工程と、コンタクトホールの底面及びSi膜の上にNi膜を成膜する工程と、Ni膜を成膜した後、熱処理を行う工程と、を有する。熱処理により、コンタクトホールの底面には、炭化珪素基板に含まれるSiとNi膜によりオーミック電極となる第1の合金層が形成され、絶縁膜の上面には、Si膜とNi膜により第2の合金層が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、半導体装置の製造方法の工程図(1)である。
図2図2は、半導体装置の製造方法の工程図(2)である。
図3図3は、Ni膜を成膜して熱処理を行った後の状態のSEM像(1)である。
図4図4は、Ni膜を成膜して熱処理を行った後の状態のSEM像(2)である。
図5図5は、半導体装置の製造方法の工程図(3)である。
図6図6は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法のフローチャートである。
図7図7は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図(1)である。
図8図8は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図(2)である。
図9図9は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図(3)である。
図10図10は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図(4)である。
図11図11は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図(5)である。
図12図12は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図(6)である。
図13図13は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法においてNi膜を成膜して熱処理を行った後の状態のSEM像である。
図14図14は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図(7)である。
図15図15は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図である。
図16図16は、本開示の実施形態の半導体装置の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
Niはドライエッチングが困難であることから微細加工が難しく、Ni膜が層間絶縁膜の上に形成されたままの状態で熱処理を行うと、Niが凝集してしまう。このようなNiが凝集した状態のものの上に、TiN等によりバリア層を成膜しても、バリア層にひびや割れが生じ、バリア層のひびや割れが生じている部分を通り、外部より、Na(ナトリウム)やK(カリウム)が、炭化珪素半導体装置に進入する場合がある。このようなNaやKが、炭化珪素半導体装置に進入すると、炭化珪素半導体装置の信頼性の低下を招くため、好ましくない。
【0008】
このため、信頼性の低下を招くことなく、層間絶縁膜のコンタクトホールに、オーミック電極を形成できる炭化珪素半導体装置の製造方法が求められている。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、信頼性の低下を招くことなく、層間絶縁膜のコンタクトホールに、オーミック電極を形成できる。
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0012】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置の製造方法は、炭化珪素基板を準備する工程と、前記炭化珪素基板の一方の主面の上に絶縁膜を成膜する工程と、前記絶縁膜にコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールの底面において、前記一方の主面を露出させる工程と、前記コンタクトホールの底面及び側面、前記絶縁膜の上面にSi膜を形成する工程と、前記コンタクトホールの底面における前記Si膜を除去し、前記一方の主面を露出させる工程と、前記コンタクトホールの底面及び前記Si膜の上にNi膜を成膜する工程と、前記Ni膜を成膜した後、熱処理を行う工程と、を有し、前記熱処理により、前記コンタクトホールの底面には、前記炭化珪素基板に含まれるSiと前記Ni膜によりオーミック電極となる第1の合金層が形成され、前記絶縁膜の上面には、前記Si膜と前記Ni膜により第2の合金層が形成される。
【0013】
これにより、信頼性の低下を招くことなく、層間絶縁膜のコンタクトホールに、オーミック電極を形成できる。
【0014】
〔2〕 前記熱処理の温度は、800℃以上、1100℃以下である。
【0015】
これにより、信頼性の低下を招くことなく、層間絶縁膜のコンタクトホールに、オーミック電極を形成できる。
【0016】
〔3〕 前記Ni膜を成膜する工程の後で前記熱処理を行う工程の前の状態において、前記絶縁膜の上面の前記Si膜及び前記Ni膜に含まれる単位面積あたりのSi原子の数とNi原子の数との和に対するSi原子の数の比率は、33%以上、67%以下である。
【0017】
一般に、前記熱処理温度までには、NiSi、NiSi、NiSiのいずれかが形成される。もとのSiとNiの比率がこの範囲に入っていれば、これらの化合物の組み合わせにより、未反応なNiやSiをなくすことができるからである。
【0018】
〔4〕 前記Ni膜の膜厚は、5nm以上、100nm以下である。
【0019】
これにより、所望のオーミック電極を形成できるからである。
【0020】
〔5〕 前記Si膜の膜厚は、5nm以上、100nm以下であり、前記Ni膜の膜厚は、5nm以上、100nm以下である。
【0021】
これにより、所望のオーミック電極を形成できるからである。
【0022】
〔6〕 前記熱処理を行う工程の後、前記Ni膜のうち前記炭化珪素基板及び前記Si膜のどちらとも反応していない部分をウェットエッチングにより除去する工程を有する。
【0023】
これにより、後工程でNiが他の金属と反応し変形することを防げる。
【0024】
〔7〕 前記第2の合金層は、前記コンタクトホールの側面にも形成される。
【0025】
コンタクトホールの側面はエッチングダメージを受けやすいため、この領域を安定的なニッケルシリサイドで保護できるからである。
【0026】
〔8〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板と、前記第1主面上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜に設けられたコンタクトホールと、前記コンタクトホールの底面において前記炭化珪素基板と接触しているNiとSiとを含む第1の合金層と、前記絶縁膜の上面に設けられたNiとSiとを含む第2の合金層と、を有し、前記第1の合金層は、前記炭化珪素基板とオーミックコンタクトしている。
【0027】
これにより、層間絶縁膜のコンタクトホールに、オーミック電極が形成されている半導体装置において、信頼性の低下を防げる。
【0028】
〔9〕 前記第2の合金層に含まれるSiの濃度は、前記第1の合金層に含まれるSiの濃度よりも高い。
【0029】
第1の合金層は、前記熱処理時にニッケルと炭化珪素が反応することにより形成されるため、主にNiSiと未反応のカーボンにより構成されている。そのため、Siの比率は少なくとも33%以下となっているためである。
【0030】
〔10〕 前記第2の合金層は、前記コンタクトホールの側面にも設けられている。
【0031】
コンタクトホールの側面はエッチングダメージを受けやすいため、この領域を安定的なニッケルシリサイドで保護できるからである。
【0032】
〔11〕 前記第2の合金層に含まれるSi原子とNi原子の和に対するSi原子の比率は、33%以上、67%以下である。
【0033】
一般に、前記熱処理温度までには、NiSi、NiSi、NiSiのいずれかが形成される。もとのSiとNiの比率がこの範囲に入っていれば、これらの化合物の組み合わせにより、未反応なNiやSiをなくすことができるからである。
【0034】
〔12〕 前記第2の合金層の上のバリア層と、前記バリア層の上の配線層と、を有する。
【0035】
第2の合金層は表面が平坦であるため、第2の合金層の上にバリア層を形成し、バリア層の上に配線層を形成した構造であっても、バリア層がひびや割れることはなく、外部よりNaやKが進入することを防げる。
【0036】
〔13〕 前記バリア層は、TiNまたはTaNである。
【0037】
バリア層がTiNまたはTaNにより形成されている場合であっても、外部よりNaやKが進入することを防げる。
【0038】
〔14〕 前記配線層は、Alを含む金属である。
【0039】
配線層がAlにより形成されている場合であっても、外部よりNaやKが進入することを防げる。
【0040】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0041】
最初に、炭化珪素半導体装置の製造方法において、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールに、オーミック電極を形成する工程について説明する。
【0042】
図1に示されるように、炭化珪素基板10の表面となる主面10aの上に、コンタクトホール21を有する層間絶縁膜となる絶縁膜20を形成し、更に、スパッタリングにより、Ni膜30を成膜する。これにより、絶縁膜20の上面20a、コンタクトホール21の側面21b、コンタクトホール21の底面21aにおいて露出している炭化珪素基板10の主面10aに、Ni膜30が形成される。
【0043】
一般的に、Ni膜30のドライエッチングは困難であり、ウェットエッチングでは絶縁膜20の上面20aのNi膜30のみを除去することは容易ではないことから、絶縁膜20の上面20aにNi膜30が形成されたままの状態で、後の工程の熱処理が行われる。
【0044】
具体的には、図2に示されるように、800℃~1100℃の温度で、熱処理を行うことにより、オーミック電極を形成する。具体的には、800℃~1100℃の温度で、熱処理を行うことにより、コンタクトホール21の底面に形成されたNi膜に含まれるNiと炭化珪素基板10に含まれるSiとにより、NiSi合金層31が形成される。このように形成されたNiSi合金層31がオーミック電極となる。この際、熱処理により、絶縁膜20の上面20aのNi膜30は、凝集しNi凝集部30aが形成される。
【0045】
図3及び図4は、この状態の上面をSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)により観察したSEM像であり、図3における倍率は、500倍であり、図4における倍率は、20000倍である。図3及び図4において、白い部分がNi凝集部30aであり、黒い部分が絶縁膜20である。
【0046】
次に、図5に示されるように、バリアメタルとなるTiN膜40を形成し、更に、TiN膜40の上にAl(アルミニウム)を成膜することにより、配線層50を形成する。絶縁膜20の上面20aには、部分的にNi凝集部30aが形成されているため、絶縁膜20の上面20a及びNi凝集部30aの上に成膜されたTiN膜40は、ひびや割れ等が生じやすい。
【0047】
配線層50を形成しているAlは、外部より侵入したNa、Kを通しやすいため、TiN膜40に、ひびや割れ等が生じていると、配線層50及びTiN膜40のひびや割れ等を通り、炭化珪素半導体装置の内部に侵入する場合がある。このようなNaやKが、炭化珪素半導体装置の内部に進入すると、炭化珪素半導体装置の信頼性の低下を招くため、好ましくない。
【0048】
尚、図1に示される工程の後、絶縁膜20の上面20aに形成されているNi膜30を除去することができれば、上記のようなNi凝集部30aは形成されない。しかしながら、上記のように、Ni膜30のドライエッチングは困難であり、ウェットエッチングでは絶縁膜20の上面20aのNi膜30のみを除去することは容易ではない。このため、絶縁膜20の上面20aの上のNi膜30が形成されたままの状態で、オーミック電極を形成するための熱処理が行われる。
【0049】
(半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態における半導体装置の製造方法について、図6から図14に基づき説明する。図6は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法のフローチャートである。図7図14は、本開示の実施形態の半導体装置の製造方法の工程図である。
【0050】
最初に、図7に示されるように、一方の主面10aと、他方の主面10bとを有する炭化珪素基板10を準備し(ステップS1)、炭化珪素基板10の一方の主面10aに、層間絶縁膜となる膜厚が0.8μmの絶縁膜20をCVD(chemical vapor deposition)法により形成する(ステップS2)。絶縁膜20は、酸化シリコンにより形成されている。
【0051】
次に、図8に示されるように、絶縁膜20にコンタクトホール21を形成する(ステップS3)。具体的には、絶縁膜20の上面20aに、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光及び現像を行うことにより、コンタクトホール21が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、RIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域の絶縁膜20を除去し、炭化珪素基板10の主面10aを露出させることによりコンタクトホール21を形成する。この後、不図示のレジストパターンは、有機溶剤等により除去する。これにより、底面21aが炭化珪素基板10の主面10aとなり、側面21bが絶縁膜20となるコンタクトホール21が形成される。
【0052】
次に、図9に示されるように、コンタクトホール21の底面21a及び側面21b、絶縁膜20の上面20aを覆うSi膜130をスパッタリングにより成膜する(ステップS4)。成膜されるSi膜130の膜厚は、5nm以上、100nm以下である。Si膜130の膜厚は、Si膜130のうち絶縁膜20の上面20aを覆う部分の厚さである。
【0053】
次に、図10に示されるように、コンタクトホール21の底面21aのSi膜130を除去する。具体的には、コンタクトホール21の底面21aの形状に対応する開口部を有する不図示のレジストパターンを形成し、RIE等のドライエッチングにより、レジストパターンの形成されていない領域のSi膜130を除去する。エッチングガスには、フッ素系、または、塩素系のエッチングガスを用いる。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。これにより、コンタクトホール21の底面におけるSi膜130が除去され、炭化珪素基板10の主面10aが露出する(ステップS5)。尚、絶縁膜20の上面20a及びコンタクトホール21の側面21bに形成されたSi膜130は、そのまま残る。
【0054】
次に、図11に示されるように、コンタクトホール21の底面21aの炭化珪素基板10の主面10a、Si膜130の上に、Ni膜140をスパッタリングにより成膜する(ステップS6)。成膜されるNi膜140の膜厚は、5nm以上、100nm以下である。Ni膜140の膜厚は、Ni膜140のうち、Si膜130を介して絶縁膜20の上面20aを覆う部分の厚さである。Si膜130及びNi膜140は、コンタクトホール21の底面21aにおいて、成膜されたSi膜130及びNi膜140の厚さ方向に積算される単位面積当たりのNiとSiとの原子の数が、Ni>Si/2となるような膜厚で形成する。尚、厚さ方向とは、Si膜130及びNi膜140の膜厚方向を意味するものとし、Si膜130及びNi膜140の膜面に対し垂直な方向である。
【0055】
次に、図12に示されるように、800℃以上、1100℃以下、例えば、約1000℃の温度で熱処理を行う(ステップS7)。これにより、コンタクトホール21の底面21aにおいては、炭化珪素基板10に含まれるSiとNi膜140のNiとが反応し、NiSi合金による第1の合金層141が形成される。また、コンタクトホール21の側面21b及び絶縁膜20の上面20aにおいては、Si膜130に含まれるSiとNi膜140のNiとが反応し、NiSi合金による第2の合金層142が形成される。即ち、第1の合金層141は、炭化珪素基板10を形成しているSiCに含まれるSiとNi膜140のNiとの反応により形成されており、第2の合金層142は、Si膜130のSiとNi膜140のNiとの反応により形成されている。よって、この熱処理により、第1の合金層141と、第2の合金層142とが同時に形成される。この熱処理の温度は炭化珪素基板10の温度である。例えば、この熱処理は炉を用いて行われ、炭化珪素基板10の温度は炉内温度と実質的に等しい。
【0056】
このため、Siの濃度は、第2の合金層142は、第1の合金層141よりも高い。第1の合金層141は、熱処理時にニッケルと炭化珪素が反応することにより形成されるため、主にNiSiと未反応のカーボンにより構成されている。そのため、Siの比率は少なくとも33%以下となっているためである。また、Cの濃度は、第1の合金層141は、第2の合金層142よりも高い。第1の合金層141は、炭化珪素基板10に含まれるCが第1の合金層141に進入する場合があるのに対し、第2の合金層142は、そのようなCの進入はないからである。
【0057】
このように形成された第2の合金層142においては、Ni膜140に含まれるNiは、Si膜130に含まれるSiと反応し、NiSi合金が形成されるため、Ni凝集部が形成されることはない。このため、絶縁膜20の上面20aの第2の合金層142の表面は平坦である。
【0058】
図13は、この状態の上面をSEMにより観察したSEM像であり、倍率は20000倍である。
【0059】
次に、図14に示されるように、絶縁膜20の上面20aの第2の合金層142の上に、バリアメタルによりバリア層151を形成し、更に、バリア層151の上にAlにより配線層152を形成する。配線層152はAl以外には、銅(Cu)等の金属により形成してもよい。また、バリア層151は、TiNまたはTaNにより形成されている。
【0060】
本実施形態においては、第2の合金層142の表面は平坦であるため、第2の合金層の142の上にバリア層151を形成しても、バリア層151において、割れやひびが発生することはない。よって、外部からのNaやKの進入を防ぐことができ、炭化珪素半導体装置の信頼性を向上できる。
【0061】
本実施形態においては、第1の合金層141におけるSiの濃度は、33原子数%以下であることが好ましく、第2の合金層142におけるSiの濃度は、33原子数%以上、67原子数%以下であることが好ましい。一般に、熱処理温度までには、NiSi、NiSi、NiSiのいずれかが形成される。もとのSiとNiの比率がこの範囲に入っていれば、これらの化合物の組み合わせにより、未反応なNiやSiをなくすことができるからである。また、絶縁膜20の上面20aのSi膜130及びNi膜140に含まれる単位面積あたりのSi原子の数とNi原子の数との和に対するSi原子の数の比率は、33原子数%以上、67原子数%以下が好ましい。
【0062】
尚、Ni膜140の膜厚が厚い場合には、約1000℃の温度で熱処理を行っても、図15に示されるように、第1の合金層141及び第2の合金層142の上に、未反応のNi膜140が残ってしまう。この場合には、未反応のNi膜140、すなわちNi膜140のうち炭化珪素基板10及びSi膜130のどちらとも反応していない部分をウェットエッチングにより除去した後、図14に示されるように、バリア層151の成膜、配線層152の形成を行う。
【0063】
また、本実施形態においては、図11に示される状態では、コンタクトホール21の側面21bは、Si膜130により覆われているため、コンタクトホール21の側面21bを形成する酸化シリコンとNi膜140とは直接接触していない。よって、約1000℃の温度で熱処理を行っても、絶縁膜20にNiが進入することはなく、絶縁膜20が劣化することはない。尚、酸化シリコンにより形成された絶縁膜にNi膜が直接接触している場合には、加熱温度が500℃程度で、絶縁膜にNiが進入するため、絶縁膜が劣化する。
【0064】
(半導体装置)
次に、本実施形態における半導体装置の一例について説明する。本実施形態における半導体装置は、図16に示されるように、例えば、縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。具体的には、本実施形態における半導体装置は、炭化珪素基板10と、第1の合金層141と、第2の合金層142と、配線層152と、ゲート絶縁膜25と、ゲート電極71とを有する。ゲート電極71は、層間絶縁膜となる絶縁膜20に覆われており、絶縁膜20の上面20a等には、第2の合金層142が形成されている。炭化珪素基板10は、第1のn層11、第2のn層12、pボディ層13、nソース領域14、p領域18を有する。第1のn層11及びnソース領域14は、第2のn層12よりも多く不純物元素がドープされている。p領域18は、pボディ層13よりも多くの不純物元素がドープされている。
【0065】
第1の合金層141は、ソース電極であり、本実施形態における製造方法により製造したものであり、炭化珪素基板10の一方の主面10a(図中の上面)上において、nソース領域14にオーミックコンタクトしている。第1の合金層141の厚さは、例えば、100~200nm程度である。また、配線層152は、ソース配線を形成する層である。
【0066】
ゲート電極71は、炭化珪素基板10の一方の主面10a(図中の上面)上にゲート絶縁膜25を介して設けられており、pボディ層13の表面側であるチャネル領域13aに対向している。また炭化珪素基板10の他方の主面10b(図中の下面)上にはドレイン電極72が設けられている。
【0067】
尚、炭化珪素基板10のドレイン電極72に面する側にpコレクタ層が形成されることによって、縦型MOSFETの代わりに縦型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が構成されてもよい。また炭化珪素基板に形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれる構造(トレンチゲート構造)が用いられてもよい。
【0068】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 炭化珪素基板
10a 一方の主面
10b 他方の主面
11 第1のn層
12 第2のn層
13 pボディ層
13a チャネル領域
14 nソース領域
18 p領域
20 絶縁膜
20a 上面
21 コンタクトホール
21a 底面
21b 側面
25 ゲート絶縁膜
30 Ni膜
30a Ni凝集部
31 NiSi合金層
40 TiN膜
50 配線層
71 ゲート電極
72 ドレイン電極
130 Si膜
140 Ni膜
141 第1の合金層
142 第2の合金層
151 バリア層
152 配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
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図16