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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ヒートポンプサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/56 20110101AFI20240326BHJP
【FI】
F24F1/56
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022029274
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023125274
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-03-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔太
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-085155(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025325(WO,A1)
【文献】中国実用新案第212204809(CN,U)
【文献】特開平05-106870(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155615(WO,A1)
【文献】特開2013-124822(JP,A)
【文献】特開2008-196777(JP,A)
【文献】中国実用新案第215077552(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00-1/68
F24F 5/00
F24F 13/20
B65D 85/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器と、前記熱交換器に空気を送風するファンを内部に格納する筐体を有し、前記筐体が前記ファンの回転により前記熱交換器で冷媒と熱交換した空気を前記筐体の外部に吹き出すための吹出口を設けて前記筐体の前面の一部を形成する前面パネルと、前記前面パネルの上方に配置される天面パネルとを有する室外機を備えたヒートポンプサイクル装置であって、
前記筐体には、前記室外機の運搬用の取手部が少なくとも3つ設けられ、前記取手部は前記筐体の背面側の両角部近傍と前記筐体の前面側の一方の角部近傍にそれぞれ配置され、
前記取手部は、前記筐体を上面から見たときに、隣り合う前記取手部をそれぞれ結んで形成される領域内に前記室外機の重心が存在する位置に設けられ、
前記筐体は、前面側の他方の角部側に、前記取手部よりも上方に手掛部を備え、前記手掛部は、前記前面パネルの上端から前方に延びた後、その先端から更に上方に延びる屈曲部と前記天面パネルの前端から下方に延びる前端部とが連結されて断面コ字状の構造体として形成される、
ことを特徴とするヒートポンプサイクル装置。
【請求項2】
前記取手部は、前記筐体を側面から見たときに、隣り合う前記取手部を結んだ仮想線よりも下方の領域内に前記重心が存在する位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプサイクル装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記熱交換器を支持する底面パネルと、前記底面パネルより上方に配置される天面パネルと、前記底面パネルと前記天面パネルとの間に配置されて前記筐体の内部と外部とを区画する側面パネル部とを有し、
複数の前記取手部は、前記側面パネル部に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプサイクル装置。
【請求項4】
前記熱交換器に空気を送風するファンを有し、
前記側面パネル部は、前記ファンの回転により前記熱交換器で冷媒と熱交換した空気を前記筐体の外部に吹き出すための吹出口を有し、前記筐体の前面の一部を形成する前面パネルと、前記熱交換器を挟んで前記前面パネルと反対側に配置され、前記筐体の背面の一部を形成する背面パネルと、前記筐体の右側面の一部を形成する右側面パネルと、前記筐体の左側面の一部を形成する左側面パネルと、を有し、
複数の前記取手部は、前記筐体の角部の近傍にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプサイクル装置。
【請求項5】
前記筐体を上面から見たときに、前記室外機の重心が、前記筐体の前記右側面パネル側あるいは前記左側面パネル側の一方に偏っている場合、
前記重心が偏った一方の側面パネル側に配置される前記取手部の前記筐体の前記底面パネルからの高さが、他方の側面パネル側に配置される前記取手部の前記底面パネルからの高さより高いことを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプサイクル装置。
【請求項6】
前記重心が偏った一方の側面パネル側には、前記筐体の角部近傍に配置される2つの取手部を有し、
2つの前記取手部は、前記底面パネルからそれぞれ同じ高さ位置に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のヒートポンプサイクル装置。
【請求項7】
前記前面パネルに設けられる取手部を第1取手部、前記背面パネルに設けられる取手部を第2取手部、前記右側面パネルに設けられる取手部を第3取手部、前記左側面パネルに設けられる取手部を第4取手部、としたとき、
前記第1取手部は、前記前面パネルにおける前記左側面パネル側に配置され、
前記第2取手部は、前記背面パネルにおける前記右側面パネル側に配置され、
前記第3取手部は、前記右側面パネルにおける前記前面パネル側に配置され、
前記第4取手部は、前記左側面パネルにおける前記背面パネル側に配置されることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のヒートポンプサイクル装置。
【請求項8】
前記吹出口を覆うように前記前面パネルに配置されるファンガードを有し、
前記天面パネルから所定の距離をおいて前記ファンガードを前記前面パネルに配置することで、前記天面パネルと前記ファンガードとの間に形成される前記手掛部が前記第1取手部であることを特徴とする請求項7に記載のヒートポンプサイクル装置。
【請求項9】
圧縮機と、冷媒と水とを熱交換させる水冷媒熱交換器とを有し、
前記筐体の内部には、前記熱交換器およびファンが配置される熱交換室と、前記圧縮機および前記水冷媒熱交換器が配置される機械室とが設けられ、
前記筐体は、前記機械室の一部を覆い前記筐体から着脱可能なサービスパネルを有し、
前記取手部は、前記サービスパネルを避けた前記側面パネル部に設けられることを特徴とする請求項3から8のいずれか一項に記載のヒートポンプサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬、設置用の取手部を筐体に備えた室外機を有するヒートポンプサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプサイクル装置に用いられる室外機は、冷媒を圧縮する圧縮機、冷媒と空気との熱交換を行う熱交換器、熱交換器に空気を送るファンなどを備え、これら各機器を筐体内に格納している。この種の室外機では、空調能力が高くなるにつれて圧縮機や熱交換器が大型化するため、室外機自体も大型で重量が重くなる傾向にある。このため、従来、室外機の筐体の周囲に該室外機を保持するための取手部を複数設け、大型かつ重量物である室外機を複数の作業者(例えば2人)が運搬、設置作業を可能とするものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、例えば、筐体の外部に空気を吹き出すための吹出口が形成された側を筐体の前面とした場合、筐体の前面、背面、および、左側面にそれぞれ取手部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-143952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室外機は、筐体内部に格納される圧縮機や熱交換器などの回路構成部品の配置構成によって重量バランスが異なる。このため、室外機の上面視において、該室外機の重心位置が筐体の中心から外れて偏ることがある。重心位置が偏っていると、取手部の配置によっては、室外機の運搬、設置作業の際に、作業者が各取手部から受ける力が異なることでバランスが崩れて作業が困難となる問題が生じる。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、室外機の運搬、設置作業が容易となる取手部の配置を有するヒートポンプサイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示するヒートポンプサイクル装置の一態様は、熱交換器を内部に格納する筐体を有し、筐体には、室外機の運搬用の取手部が少なくとも3つ設けられ、取手部は、筐体を上面から見たときに、隣り合う取手部をそれぞれ結んで形成される領域内に室外機の重心が存在する位置に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示するヒートポンプサイクル装置の一態様によれば、室外機の運搬、設置作業が容易となる取手部を有する室外機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置の冷媒回路と水回路の一例を示す回路構成図である。
図2図2は、室外機を前面側から見た外観斜視図である。
図3図3は、室外機を背面側から見た外観斜視図である。
図4図4は、室外機の内部構造を示す斜視図である。
図5図5は、図2のV-V線で示す断面をX方向から見た室外機の手掛部の部分断面図である。
図6図6は、筐体に形成された手掛部及び取手部の位置と、室外機の重心位置との関係を示す室外機を上面から見た図である。
図7図7は、筐体に形成された取手部の位置と、室外機の重心位置との関係を示す室外機を前面から見た図である。
図8図8は、室外機を持ち上げた際の取手部の高さ位置の関係を、室外機を前面から見た模式図である。
図9図9は、作業者が膝の曲げ伸ばしにより荷物を持ち上げる動作を示す模式図である。
図10図10は、室外機に設けられた取手部の位置を示す上面図である。
図11図11は、3人の作業者が室外機を運搬している状態を示す図である。
図12図12は、変形例に係る室外機を前面から見た部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本願の開示するヒートポンプサイクル装置の実施例を詳細に説明する。なお、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜変形しても良い。
【実施例
【0010】
<ヒートポンプサイクル装置の構成>
図1は、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置の冷媒回路と水回路の一例を示す回路構成図である。ヒートポンプサイクル装置1は室外機2と室内機3とを備え、これら室外機2と室内機3とは水配管により接続されて水回路4を形成する。ヒートポンプサイクル装置1は、室外機2及び室内機3の水回路4に冷水または温水を循環させることにより、室内機3が配置された部屋(空間)の冷房または暖房を行う。なお、図1では、ヒートポンプサイクル装置1は1台の室内機3を備えたものを例示したが、室外機2に並列接続された複数台の室内機3を備えたものであってもよい。
【0011】
図1に示すように、室外機2は、圧縮機11と、四方弁12と、室外熱交換器(熱交換器)13と、室外膨張弁14と、水冷媒熱交換器15と、アキュムレータ16と、室外ファン(ファン)17とを有する。これら圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、室外膨張弁14、水冷媒熱交換器15及びアキュムレータ16は、それぞれ冷媒配管18により接続されて冷媒回路10を形成する。この冷媒回路10は、室外機2の内部で完結して冷凍サイクルを構成する。また、水冷媒熱交換器15には、冷媒配管18とは別に水配管19が接続されている。この水配管19は、室外機2の外部に延びて室内機3の室内ユニット23(後述する)に接続されて水回路4を形成する。
【0012】
圧縮機11は、例えば、運転容量を変更できる高圧容器型の能力可変型圧縮機であり、吸入した低圧のガス冷媒を圧縮して高圧のガス冷媒を吐出する。圧縮機11の冷媒吐出側には四方弁12が接続され、冷媒吸入側にはアキュムレータ16が接続されている。
【0013】
四方弁12は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切替えるための弁であり、第1のポート12A~第4のポート12Dを備えている。第1のポート12Aは、圧縮機11の冷媒吐出側と接続されている。第2のポート12Bは、室外熱交換器13の一方の冷媒出入口13Aと接続されている。第3のポート12Cは、アキュムレータ16の冷媒流入側と接続されている。そして、第4のポート12Dは、水冷媒熱交換器15の一方の冷媒出入口15Aと接続されている。
【0014】
室外熱交換器13は、例えば、フィンチューブ熱交換器が用いられる。室外熱交換器13は、冷媒と室外ファン17の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気とを熱交換させる。室外熱交換器13の他方の冷媒出入口13Bは、室外膨張弁14を介して、水冷媒熱交換器15の他方の冷媒出入口15Bと接続されている。室外熱交換器13は、ヒートポンプサイクル装置1が冷房運転を行う場合に凝縮器として機能して、ガス冷媒を凝縮(液化)させる。また、室外熱交換器13は、ヒートポンプサイクル装置1が暖房運転を行う場合に蒸発器として機能して、液冷媒を蒸発(気化)させる。
【0015】
室外膨張弁14は、室外熱交換器13の他方の冷媒出入口13Bと水冷媒熱交換器15の他方の冷媒出入口15Bとの間に設けられている。室外膨張弁14は、例えば電子膨張弁であり、弁開度を調整することで、室外膨張弁14を通過する液冷媒を減圧(膨張)する。
【0016】
水冷媒熱交換器15は、例えばプレート熱交換器が用いられる。水冷媒熱交換器15は、冷媒回路10を循環する冷媒と水回路4を循環する水とを熱交換する。水冷媒熱交換器15は、ヒートポンプサイクル装置1が冷房運転や除霜運転を行う場合に蒸発器として機能して、液冷媒を蒸発(気化)させる。また、水冷媒熱交換器15は、ヒートポンプサイクル装置1が暖房運転を行う場合に凝縮器として機能して、ガス冷媒を凝縮(液化)させる。水冷媒熱交換器15は、水入口15Cと水出口15Dとを有し、これら水入口15Cと水出口15Dにそれぞれ水配管19が接続されて水回路4の一部を構成する。また、例えば、水入口15C側には、水回路4に水を循環させる循環ポンプ21が設けられ、水出口15D側には、水回路4内に進入した空気を抜くための空気抜き弁22が設けられる。
【0017】
アキュムレータ16の冷媒流入側は、四方弁12の第3のポート12Cと接続され、冷媒流出側は圧縮機11の冷媒流入側と接続される。アキュムレータ16は、中空の高圧容器として形成され、内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離して、ガス冷媒のみを圧縮機11に吸入させる。
【0018】
室外ファン17は、室外熱交換器13の近傍に配置され、該室外熱交換器13に向けて空気を送る。具体的には、室外ファン17は、室外機2の後述する吸込口44から該室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器13において冷媒と熱交換した外気を後述する吹出口41から室外機2の外部へ放出する。
【0019】
一方、室内機3は、室内ユニット23を有する。室内ユニット23は、例えば、床暖房装置やラジエタが用いられる。室内ユニット23の一方の冷媒出入口23Aは、水冷媒熱交換器15の水出口15Dと接続されている。また、室内ユニット23の他方の冷媒出入口23Bは、循環ポンプ21を介して、水冷媒熱交換器15の水入口15Cと接続されている。これにより、室内ユニット23は、水配管19により水冷媒熱交換器15と接続されて水回路4を構成し、この水回路4を循環する水が室内ユニット23において放熱あるいは吸熱を行うことで、室内機3が設置された空調空間の暖房あるいは冷房が行われる。
【0020】
<運転時の動作>
次に、ヒートポンプサイクル装置1の運転時の冷媒の流れと水の流れについて説明する。尚、図1における破線矢印は暖房運転時の冷媒の流れを示し、実線矢印は冷房運転時の冷媒の流れを示している。
【0021】
ヒートポンプサイクル装置1が暖房運転を行う場合、四方弁12は、第1のポート12Aと第4のポート12Dとが連通し、第2のポート12Bと第3のポート12Cとが連通するように切替えられる。これにより、冷媒回路10は、水冷媒熱交換器15が凝縮器として機能し、室外熱交換器13が蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。
【0022】
冷媒回路10が上記の状態で圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出された冷媒は、四方弁12に流入し、四方弁12から水冷媒熱交換器15に流入する。水冷媒熱交換器15に流入した高温のガス冷媒は、循環ポンプ21の動作により水冷媒熱交換器15の水回路4を循環する水との間で熱交換することで凝縮する。一方、水回路4を循環する水は、水冷媒熱交換器15で冷媒によって加熱されて温水となる。この温水は、水回路4の水配管19を通じて、室内機3の室内ユニット23に流入する。そして、室内ユニット23で温水が放熱することで、室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
【0023】
水冷媒熱交換器15で水と熱交換して凝縮した液冷媒は、室外膨張弁14を通過して減圧された後、室外熱交換器13に流入する。室外熱交換器13に流入した冷媒は、室外ファン17の回転によって室外機2内に流入した外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器13で蒸発したガス冷媒は、四方弁12、アキュムレータ16の順に通過し、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0024】
また、ヒートポンプサイクル装置1が冷房運転あるいは除霜運転を行う場合、四方弁12は、第1のポート12Aと第2のポート12Bとが連通し、第3のポート12Cと第4のポート12Dとが連通するように切替えられる。これにより、冷媒回路10は、水冷媒熱交換器15が蒸発器として機能し、室外熱交換器13が凝縮器として機能する冷房サイクルとなる。
【0025】
冷媒回路10が上記の状態で圧縮機11が駆動すると、圧縮機11から吐出された冷媒は、四方弁12に流入し、四方弁12から室外熱交換器13に流入する。室外熱交換器13に流入した高温のガス冷媒は、室外ファン17の回転により室外機2内に取り込まれた室外空気との間で熱交換することで凝縮する。なお、除霜運転を行っている場合は、室外熱交換器13で発生した霜が、室外熱交換器13に流入する冷媒の熱によって融解される。
【0026】
室外熱交換器13で凝縮した液冷媒は、室外膨張弁14を通過して減圧され後、水冷媒熱交換器15に流入する。水冷媒熱交換器15に流入した液冷媒は、循環ポンプ21の運転により水冷媒熱交換器15の水回路4を循環する水との間で熱交換することで蒸発する。一方、水回路4を循環する水は、水冷媒熱交換器15で冷媒によって冷却されて冷水となる。この冷水は、水回路4の水配管19を通じて、室内機3の室内ユニット23に流入する。そして、室内ユニット23で冷水によって室内の空気が吸熱されることで、室内機3が設置された室内の冷房が行われる。なお、除霜運転を行っている場合は、室内温度の低下を抑制するために循環ポンプ21を停止させて水回路4における水の循環を止める。
【0027】
水冷媒熱交換器15で蒸発したガス冷媒は、四方弁12、アキュムレータ16の順に通過し、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0028】
<室外機の構造>
次に、室外機2の外観および内部構造について説明する。図2は、室外機を前面側から見た外観斜視図であり、図3は、室外機を背面側から見た外観斜視図である。図4は、室外機の内部構造を示す斜視図である。なお、以下に述べる前後、上下及び左右といった方向は、室外機2を設置した状態で、後述する吹出口41から空気が吹き出される方向を前方とし、前面側から室外機2を見た場合の方向を示している。
【0029】
図2及び図3に示すように、室外機2は、左右方向(幅方向)の寸法の方が前後方向(奥行方向)の寸法よりも大きい直方体箱形状の筐体30を備える。この筐体30は、設置面に対向するように配置される底板(底面パネル)31と、底板31よりも高さ方向の上方に配置される天面パネル32と、底板31と天面パネル32とを接続し、筐体30の内部と外部とを区画する側面パネル部33とを備えている。
【0030】
筐体30の内部は、図4に示すように、底板31に立設された仕切り板34によって、熱交換室RAと機械室RBとに区分けされている。熱交換室RAには、該熱交換室RAの背面側に室外熱交換器13が配置され、前面側に室外ファン17が配置される。室外熱交換器13は、上面(天面パネル32側)から見たときにL字形状に屈曲されて形成され、熱交換室RAの背面側から左側面側に沿わせて底板31に支持されている。
【0031】
室外ファン17は、底板31に立設された一対の支持部材35,35に取り付けられている。室外ファン17は、いわゆる軸流ファンであり、図示しないファンモータによる室外ファン17の回転駆動により、室外機2の外側、すなわち室外熱交換器13の背面側に形成される吸込口44(後述する)および左側面側に形成される吸込開口46(後述する)から外気を熱交換室RA内に吸い込む。そして、室外熱交換器13で冷媒と熱交換した後の空気を熱交換室RAの前面側に形成された吹出口41(後述する)から前方に吹き出す。このように、室外機2は、前面側から熱交換後の空気を吹き出す前面吹き出しタイプの室外機である。
【0032】
機械室RBの下部空間には、冷媒回路10の一部を構成する圧縮機11、アキュムレータ16、四方弁12(図1)、室外膨張弁14(図1)などの回路構成部品が配置され、それぞれの回路構成部品は冷媒配管18により接続される。圧縮機11及びアキュムレータ16は、底板31に固定されている。また、機械室RBの下部空間には、水回路4の一部を構成する水冷媒熱交換器15、空気抜き弁22、循環ポンプ21などの回路構成部品が配置され、それぞれの回路構成部品は水配管19により接続される。この実施例では、水冷媒熱交換器15は、機械室RB(筐体30)の下部空間における背面側と右側面側との角部の近くに配置され、背面側に後述する水配管19の接続口47が設けられている。
【0033】
また、機械室RBの上部空間には、室外機2の動作を制御するための電装部品を有する電装ユニット25が配置されている。この電装ユニット25は、制御基板27と、電源線や制御線などの配線が接続されるターミナル部26と、を備え、仕切り板34に固定されている。この実施例では、ターミナル部26は、機械室RBの上部空間における右側面側の近くに、該右側面側に向けて配置されている。
【0034】
次に、筐体30の側面パネル部33について説明する。側面パネル部33は、複数のパネル部材を組み合わせて形成されている。本実施例では、図2及び図3に示すように、側面パネル部33は、前面パネル36と、背面パネル37と、右側面パネル38と、左側面パネル39と、サービスパネル40とを備える。これら前面パネル36、背面パネル37、右側面パネル38及び左側面パネル39は、筐体30を上面から見たときに、筐体30の隣接する2つの面と、これら2つの面に挟まれる角部とを含んだL字形状にそれぞれ形成されている。
【0035】
具体的には、前面パネル36は、筐体30の前面の一部を形成する第1前面部36Aと、筐体30の左側面の一部を形成する第1左側面部36Bとを一体に備える。背面パネル37は、筐体30の背面の一部を形成する第1背面部37Aと、筐体30の右側面の一部を形成する第1右側面部37Bとを一体に備える。右側面パネル38は、筐体30の右側面の一部を形成する第2右側面部38Aと、筐体30の前面の一部を形成する第2前面部38Bとを一体に備える。左側面パネル39は、筐体30の左側面の一部を形成する第2左側面部39Aと、筐体30の背面の一部を形成する第2背面部39Bとを一体に備える。
【0036】
前面パネル36の第1前面部36Aは、熱交換室RAの前面側に配置され、右側面パネル38の第2前面部38Bは、機械室RBの前面側に配置される。これら第1前面部36A及び第2前面部38Bは、左右に並べて配置され、筐体30の前面を形成する。第1前面部36Aには、熱交換室RA内部で熱交換された空気が吹き出す吹出口41が形成される。この吹出口41は、例えば円形のベルマウス41Aを有し、このベルマウス41A内に室外ファン17の一部が配置される。前面パネル36の前方には、吹出口41を覆う網状のファンガード42が設けられている。このファンガード42は、該ファンガード42を上方から見たときに、L字形状に形成され、前面パネル36の第1前面部36Aから第1左側面部36Bに沿って配置されている。このファンガード42は、該ファンガード42の上端部(上部側の端部)42Aと天面パネル32との間に所定の間隔をあけて、前面パネル36に固定されている。また、第1前面部36Aにおける吹出口41の上方には、左右(幅)方向に延在する遮水板43が設けられている。
【0037】
背面パネル37の第1背面部37Aと左側面パネル39の第2背面部39Bとは、間隔をあけて左右に並べて配置され、筐体30の背面を形成する。これら第1背面部37Aと第2背面部39Bとの間には、室外熱交換器13が露出して配置され、この露出した領域が吸込口44となる。この吸込口44の後方には、網状のフィンガード45が設けられている。また、第1背面部37Aは、機械室RBの背面側に配置されており、第1背面部37Aの下部には、上記した水回路4の水配管19に接続するための一対の接続口47,47が設けられている。
【0038】
右側面パネル38の第2右側面部38Aと背面パネル37の第1右側面部37Bとは、間隔をあけて前後に並べて配置され、筐体30の右側面を形成する。これら第2右側面部38Aと第1右側面部37Bとの間には、上記したサービスパネル40が着脱自在に配置されている。このサービスパネル40を取り外すことにより、機械室RB内にアクセスすることができ、電装ユニット25や各種回路構成部品のメンテナンスを容易に実行できる。
【0039】
左側面パネル39の第2左側面部39Aと前面パネル36の第1左側面部36Bとは、前後に並べて配置され、筐体30の左側面を形成する。第2左側面部39Aは、室外熱交換器13の一部と対向し、この第2左側面部39Aには、複数の吸込開口46が形成されている。
【0040】
また、室外機2は重量物であるため、筐体30の側面パネル部33には、室外機2を運搬するための複数の取手部51,52,53が設けられている。これらの取手部51~53は、それぞれ筐体30の角部近傍に配置されている。一方、室外機2の意匠性向上の観点から、筐体30の前面パネル36には、目立たない外観で取手部として機能する手掛部50が設けられている。
【0041】
<手掛部>
次に、手掛部50について説明する。図5は、図2のV-V線で示す断面をX方向から見た室外機の手掛部の部分断面図である。手掛部50は、図5に示すように、前面パネル36に配置されるファンガード42の上端部42Aと天面パネル32との間に形成され、室外機2の運搬時や移設(設置)時に作業員の手指が挿入されて、該室外機2を保持するための部位である。前面パネル36の第1前面部36Aは、天面パネル32の前端部32Aよりも後方に配置されており、手掛部50は、第1前面部36Aの上端を前方に折り曲げた屈曲部36A1と天面パネル32の前端部32Aとを連結して形成されている。
【0042】
具体的には、天面パネル32は、前端部32A(前方側の端部)が下方に折り曲げられており、屈曲部36A1は、前方に折り曲げられた第1屈曲部36A11とその先端を更に上方に折り曲げた第2屈曲部36A12とを有する。そして、第1前面部36Aの第2屈曲部36A12と天面パネル32の前端部32Aとをねじで固定することにより、手掛部50は、筐体30の天面前部が前方に庇状に延出した構造体として形成される。なお、第1屈曲部36A11に、上方に向けて凹となる凹部を設けて、作業者の把持をより行いやすくするようにしてもよい。
【0043】
これにより、手掛部50に手指を掛けて、室外機2を運搬時に保持することができる。また、手掛部50は、ファンガード42の上端部42Aと天面パネル32との間に、筐体30の構造体の一部として形成される。このため、特に前面側から室外機2を見た場合であっても、手掛部50がいわゆる取手部として視認されにくいので、室外機2の意匠性を損なうことを防止できる。
【0044】
また、本実施例では、図2に示すように、手掛部50は、前面パネル36における第1前面部36Aの幅方向(左右方向)に沿って形成されている。このため、作業者は、手掛部50を保持する箇所を任意に選択することができ、運搬、設置時の作業性の向上を図ることができる。
【0045】
<取手部>
次に取手部について説明する。図6は、筐体に形成された手掛部及び取手部の位置と、室外機の重心位置との関係を示す室外機を上面から見た図である。図7は、筐体に形成された取手部の位置と、室外機の重心位置との関係を示す室外機を前面から見た図である。この図6、7では、取手部の位置を示すために室外機が備える部品を適宜省略している。また、図8は、室外機を持ち上げた際の取手部の高さ位置の関係を、室外機を前面から見た模式図である。図9は、作業者が膝の曲げ伸ばしにより荷物を持ち上げる動作を示す模式図である。上記したように、本実施例では、室外機2は、第1取手部として機能する手掛部50の他に3つ(複数)の第2取手部51、第3取手部52、第4取手部53を備えている。これら第2取手部51~第4取手部53は、それぞれ筐体30の側面パネル部33に設けられ、該筐体30の内側に突出する凹みであり、室外機2の運搬、設置時に作業者の手指が掛かる部位である。一般に、室外機2は、筐体30内部に格納される圧縮機11や室外熱交換器13などの回路構成部品の配置によって重量バランス(重心位置)が異なる。このため、室外機2を複数の作業者が取手部を把持して運搬、設置する作業を容易にするために、取手部の配置位置が重要となる。
【0046】
本実施例では、手掛部(第1取手部)50と、3つの第2取手部51~第4取手部53とは、図6に示すように、筐体30を上面から見たときに、室外機2の重心Gの位置を取り囲んで配置されている。すなわち、筐体30を上面から見たときに、隣り合う第1取手部(手掛部)50~第4取手部53をそれぞれ第1仮想線VLで結んで形成される第1仮想領域VA内に室外機2の重心Gが存在するように、第2取手部51~第4取手部53及び手掛部50が配置されている。
【0047】
ここで、室外機2の重心Gは、室外機2を構成する各構成部品の質量に対して働く重力の合力の作用点をいい、例えば、室外機2を吊り下げた際に該室外機2をバランス良く支持することができる点をいう。室外機2の重心Gは、室外機2の各構成部品の集合体とみなし、各構成部品の重量および重心から既知の数式を用いて算出することができる。また、CAD(computer-aided design)ソフトを用いて、室外機2の設計図面から該室外機2の重心Gを求めることもできる。
【0048】
室外機2を持ち上げる場合、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53には、それぞれ上向きの力が加えられる。上記したように、室外機2の重心Gは、第1仮想領域VAの内側に存在するため、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53に加わる上向きの力が、室外機2の重心Gに加わる下向きの力(重力)を囲むこととなる。このため、室外機2を持ち上げたときに、室外機2に加わる上向きの力と下向きの力とが釣り合い易くなり、室外機2が回転しようとする力を抑えることができる。このため、重量物である室外機2を安定な状態で運搬して設置することができる。
【0049】
また、第2取手部51~第4取手部53は、図7に示すように、筐体30を前面(側面)から見たときに、重心Gの位置よりも高い位置に設けられている。すなわち、隣り合う第2取手部51~第4取手部53をそれぞれ第2仮想線(仮想線)VL1で結び、筐体30を前面(側面)から見たときに、この第2仮想線VL1よりも下方の第2仮想領域VA1内に室外機2の重心Gが存在するように、第2取手部51~第4取手部53が配置されている。
【0050】
この構成によれば、重心Gの位置よりも高い位置で室外機2を持ち上げて保持することができるため、室外機2を持ち上げる際に該室外機2が回転しようとする力を抑制することができる。このため、重量物である室外機2を安定な状態で運搬して設置することができる。
【0051】
また、第2取手部51~第4取手部53は、図2及び図3に示すように、それぞれ側面パネル部33の角部近傍に設けられている。具体的には、第2取手部51は、筐体30の背面における右側面側、すなわち背面パネル37の第1背面部37Aに設けられている。また、第3取手部52は、筐体30の右側面における前面側、すなわち右側面パネル38の第2右側面部38Aに設けられている。また、第3取手部52は、左側面における背面側、すなわち左側面パネル39の第2左側面部39Aから第2背面部39Bに跨って、該左側面パネル39の角部に設けられている。
【0052】
このように、第2取手部51~第4取手部53は、それぞれ側面パネル部33の角部近傍に設けることにより、これら第2取手部51~第4取手部53間の距離を離して配置することができる。室外機2を複数人数で運搬することができ、運搬、設置の作業性の向上を図ることができる。
【0053】
室外機2は、機械室RBに圧縮機11や水冷媒熱交換器15などといった回路構成部品が多数配置されている。このため、室外機2を上面から見た場合、図6に示すように、室外機2を上面から見たときの重心Gの位置は室外機2の中心から機械室RB側、すなわち筐体30の右側面(右側面パネル38の第2右側面部38A)側に大きく偏っている。この場合、室外機2を安定して運搬するために、第2取手部51~第4取手部53が設けられる高さ位置を工夫している。
【0054】
本実施例では、重心Gが偏った側に配置される取手部、すなわち背面パネル37の第1背面部37Aに配置される第2取手部51と、右側面パネル38の第2右側面部38Aに配置される第3取手部52とは、それぞれ底板31から同じ高さH1の位置に設けられている。この構成によれば、一人もしくは二人の作業員が、第2取手部51及び第3取手部52に手を掛けて室外機2を持ち上げた場合に、作業者が受ける力に差異が生じることを抑制することができる。このため、この力の差異に起因して室外機2が前後方向に倒れることを抑制することができ、室外機2を安定して運搬することができる。
【0055】
また、反対側の左側面パネル39に配置される第4取手部53は、底板31から高さH2の位置に設けられている。第2取手部51及び第3取手部52の底板31からの高さH1は、第4取手部53の底板31からの高さH2より高く設定されている。重心Gの位置が偏っている室外機2を持ち上げる場合、重心Gに近い側の第2取手部51及び第3取手部52により大きな重量負荷がかかる。本実施例では、重心Gに近い側の第2取手部51及び第3取手部52の高さH1を、重心Gから遠い側の第4取手部53の高さH2より高くしている。このため、図8に示すように、室外機2を持ち上げた際に、重量負荷の大きい(いわゆる重い)側の第2取手部51及び第3取手部52を持ち上げる高さを、重量負荷の小さい(いわゆる軽い)側の第4取手部53を持ち上げる高さよりも低く抑えることができる。これにより、第2取手部51及び第3取手部52側を保持して、室外機2を運搬する作業員の負担を軽減しつつ、図8に示すように室外機2を持ち上げた際の第2取手部51及び第3取手部52の底板31からの高さと第4取手部の底板31から高さが同じとなって、室外機2を安定して運搬することができる。
【0056】
また、本実施例では、重心Gに近い側の第2取手部51及び第3取手部52の底板31からの高さH1は、450(mm)以上500(mm)以下に設定される。また、重心Gから遠い側の第4取手部53の底板31からの高さH2は、410(mm)以上460(mm)以下に設定される。高さH1、H2をそれぞれ上記した範囲に設定することにより、一般的な体格を有する成人(例えば男性)の作業者Mが、図9に示すように、室外機2を持ち上げる場合に、この作業者Mは、腰や腕を伸ばした状態で、膝の伸展のみで必要な高さまで室外機2を持ち上げることができる。このため、作業者の運搬時の身体的なダメージを軽減することができ、室外機2を安全かつ効率的に運送することができる。さらに、高さH1、H2をそれぞれ上記した範囲に設定することにより、作業者は、室外機2の底板31と設置面との高さを、運搬用のスキットや設置用の脚部の高さ寸法よりも高く持ち上げることができる。このため、室外機2を設置場所に安全に設置することができる。
【0057】
また、本実施例では、上記した背面パネル37に設けられる第2取手部51は、筐体30における機械室RB側の角部付近に配置されている。この機械室RBには、圧縮機11や水冷媒熱交換器15といった重量の重い回路構成部材が配置されているため、熱交換室RAと比べて重い機械室RB側の角部付近に第2取手部51を配置することにより、室外機2の運搬作業の作業性がより向上する。
【0058】
また、本実施例では、第2取手部51~第4取手部53は、サービスパネル40を避けた側面パネル部33、すなわち背面パネル37、右側面パネル38及び左側面パネル39にそれぞれ設けられている。この構成によれば、サービスパネル40を外して、機械室RB内の機器の作業をしている場合に、例えば、結線時に配線がターミナル部26に届かないといった事態が生じたとしても、第2取手部51~第4取手部53を用いて室外機2を容易に移動することができる。
【0059】
次に、室外機2の運搬動作について説明する。図10は、室外機2に設けられた取手部の位置を示す上面図であり、図11は、3人の作業者が室外機2を運搬している状態を示す図である。上記したように、室外機2の筐体30には、第1取手部として機能する手掛部50と、第2取手部51~第4取手部53とが設けられている。手掛部50は、前面パネル36の第1前面部36Aに設けられ、第2取手部51は、背面パネル37の第1背面部37Aに設けられている。また、第3取手部52は、右側面パネル38の第2右側面部38Aに設けられ、第4取手部53は、左側面パネル39の第2左側面部39Aと第2背面部39Bとの角部に設けられている。このため、本実施例では、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53間の距離をそれぞれ離して配置することができるとともに、図10に白抜き矢印で示すように、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53に作業者の手が進入する方向が重なることがない。
【0060】
このため、図11に示すように、例えば3人の作業者によって重量物である室外機2を運搬することが容易となる。図11の例では、第1作業者M1が1人で比較的重量の軽い熱交換室RA(図6)側を持ち上げ、第2作業者M2及び第3作業者M3の2人が比較的重量の重い機械室RB(図6)側を持ち上げる。この場合、第1作業者M1は、右手が第1取手部(手掛部)50に掛けられ、左手が第4取手部53に掛けられる。一方、第2作業者M2は、右手が第2取手部51に掛けられ、左手は筐体30の右側面を保持する。また、第3作業者M3は、右手が第3取手部52に掛けられ、左手が第1取手部(手掛部)50に掛けられる。このように、3人の第1作業者M1~第3作業者M3が室外機2の周囲に間隔をあけて該室外機2を持ち上げるため、室外機2を安定して運搬することができる。
【0061】
以上、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2は、室外熱交換器13を内部に格納する筐体30を有し、筐体30には、室外機2の運搬用の第1取手部(手掛部)50~第4取手部53が設けられる。筐体30を上面から見たときに、隣り合う取手部をそれぞれ結んで形成される第1仮想領域VA内に室外機2の重心Gが存在する位置に、第1取手部50~第4取手部53が設けられる。この構成によれば、筐体30を上面から見たときに、室外機2の重心Gが第1仮想領域VAの内側に位置するため、第1取手部50~第4取手部53に加わる上向きの力が、室外機2の重心Gに加わる下向きの力を囲むこととなる。このため、室外機2を持ち上げたときに、室外機2に加わる上向きの力と下向きの力とが釣り合い易くなり、室外機2が回転しようとする力を抑えることができる。このため、重量物である室外機2を安定な状態で容易に運搬して設置することができる取手部の配置を実現できる。
【0062】
また、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2において、第2取手部51~第4取手部53は、筐体30を側面から見たときに、隣り合う取手部を結んだ第2仮想線VL1よりも下方の第2仮想領域VA1内に重心が存在する位置に設けられる。この構成によれば、重心Gの位置よりも高い位置で室外機2を持ち上げて保持することができるため、室外機2を持ち上げる際に該室外機2が回転しようとする力を抑制することができる。このため、重量物である室外機2を安定な状態で運搬して設置することができる取手部の配置を実現できる。
【0063】
また、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2において、筐体30は、室外熱交換器13を支持する底板31と、底板31より上方に配置される天面パネル32と、底板31と天面パネル32との間に配置されて筐体30の内部と外部とを区画する側面パネル部33とを有し、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53は、側面パネル部33に設けられる。この構成によれば、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53を用いて、室外機2を安定な状態で運搬して設置することができる。
【0064】
また、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2は、室外熱交換器13に空気を送風する室外ファン17を有し、側面パネル部33は、ファンの回転により室外熱交換器13で冷媒と熱交換した空気を筐体30の外部に吹き出すための吹出口41を有し、筐体30の前面の一部を形成する前面パネル36と、室外熱交換器13を挟んで前面パネル36と反対側に配置され、筐体の背面の一部を形成する背面パネル37と、筐体30の右側面の一部を形成する右側面パネル38と、筐体30の左側面の一部を形成する左側面パネル39と、を有し、第2取手部51~第4取手部53は、筐体30の角部の近傍にそれぞれ配置されている。この構成によれば、筐体の四隅に分散して第2取手部51~第4取手部53を設けることで、室外機2の運搬、設置作業の作業性が向上することができる。
【0065】
また、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2において、筐体30を上面から見たときに、室外機2の重心Gが、筐体30の右側面パネル38側に偏っている場合、重心Gが偏った右側面パネル38側に配置される第2取手部51及び第3取手部52の底板31からの高さH1は、反対側の左側面パネル39側に配置される第4取手部53の底板31からの高さH2より高く設定されている。この構成によれば、室外機2を持ち上げた際に、重量負荷の大きい(いわゆる重い)側の第2取手部51及び第3取手部52を持ち上げる高さを、重量負荷の小さい(いわゆる軽い)側の第4取手部53を持ち上げる高さよりも低く抑えることができる。これにより、第2取手部51及び第3取手部52側を保持して、室外機2を運搬する作業員の負担を軽減し、室外機2を安定して運搬することができる。
【0066】
また、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2において、室外機2の重心Gが偏った右側面パネル38側には、筐体30の角部近傍に配置される2つの第2取手部51及び第3取手部52を有し、2つの第2取手部51及び第3取手部52は、底板31からそれぞれ同じ高さH1の位置に設けられている。この構成によれば、一人もしくは二人の作業員が、第2取手部51及び第3取手部52に手を掛けて室外機2を持ち上げた場合に、作業者が受ける力に差異が生じることを抑制することができる。このため、この力の差異に起因して室外機2が前後方向に倒れることを抑制することができ、室外機2を安定して運搬することができる。
【0067】
また、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2において、前面パネル36に設けられる取手部を第1取手部(手掛部)50、背面パネル37に設けられる取手部を第2取手部51、右側面パネル38に設けられる取手部を第3取手部52、左側面パネル39に設けられる取手部を第4取手部53、としたとき、第1取手部(手掛部)50は、前面パネル36における左側面パネル39側に配置され、第2取手部51は、背面パネル37における右側面パネル38側に配置され、第3取手部52は、右側面パネル38における前面パネル36側に配置され、第4取手部53は、左側面パネル39における背面パネル37側に配置される。この構成によれば、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53間の距離をそれぞれ離して配置することができる。このため、室外機2を複数人数で運搬することができ、運搬、設置の作業性の向上を図ることができる。
【0068】
また、本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2は、吹出口41を覆うように前面パネル36に配置されるファンガード42を有し、天面パネル32から所定の距離をおいてファンガード42を前面パネル36に配置することで、天面パネル32とファンガード42との間に形成される手掛部50が第1取手部である。この構成によれば、室外機2の前面側の意匠性を損なうことなく、室外機2の運搬、設置の作業性の向上を図ることができる。
【0069】
本実施例に係るヒートポンプサイクル装置1の室外機2は、圧縮機11と、冷媒と水とを熱交換させる水冷媒熱交換器15とを有し、筐体30の内部には、室外熱交換器13および室外ファン17が配置される熱交換室RAと、圧縮機11および水冷媒熱交換器15が配置される機械室RBとが設けられ、筐体30は、機械室RBの一部を覆い筐体30から着脱可能なサービスパネル40を有し、第1取手部(手掛部)50~第4取手部53は、サービスパネル40を避けた前面パネル36、背面パネル37、右側面パネル38及び左側面パネル39にそれぞれ設けられている。この構成によれば、サービスパネル40を外して、機械室RB内の機器の作業をしている場合に、例えば、結線時に配線がターミナル部26に届かないといった事態が生じたとしても、第1取手部(手掛部)5~第4取手部53を用いて室外機2を容易に移動することができる。
【0070】
次に、本実施例の変形例について説明する。図12は、変形例に係る室外機を前面から見た部分拡大正面図である。上記した実施例では、手掛部50は、前面パネル36の第1前面部36Aの幅方向に沿って形成された構成を説明したが、これに限るものではない。例えば、図12に示すように、室外機2Aの筐体30Aは、ファンガード142を備え、このファンガード142は、上端部(上部側の端部)142Aの幅方向中央部分が天面パネル32まで延出している。このように、手掛部50が、前面パネル36の第1前面部36Aの幅方向における両側にのみ形成されていてもよく、この構成においても、作業者は、手掛部50に手指を挿入して室外機2Aを保持することができ、意匠性を損なうことなく室外機2Aを容易に運搬することができる。
【0071】
以上、本開示におけるヒートポンプサイクル装置の室外機の一実施例について説明したが、これに限るものではない。例えば、本実施例では、筐体30に第2取手部51~第4取手部53の3つの取手部を設けた構成としたが、4つ以上の取手部を設けてもよい。また、背面パネル37、右側面パネル38及び左側面パネル39にそれぞれ取手部を1つずつ設けた構成としたが、各パネルに2つ以上の取手部を設けてもよい。また、本実施例では、重心Gから遠い側の筐体30の左側面(左側面パネル39)に第4取手部53を1つ設けた構成としたが、この左側面の両角部にそれぞれ取手部を設けてもよい。この場合、底板31から各取手部までの高さは、同一とすることが好ましい。また、本実施例では、筐体30の前面側に第1取手部として機能する手掛部50を設けたが、前面パネル36に第2取手部51~第4取手部53と同様な構成の第1取手部を設けてもよい。さらには、本実施例では、ヒートポンプサイクル装置として室外機2と室内機3の間で水を循環させて空調運転を行うものを説明したが、室外機に水冷媒熱交換器を持たず室内機に冷媒を供給し室内熱交換器で冷媒を放熱あるいは吸熱させて空調運転を行う空気調和機であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ヒートポンプサイクル装置
2、2A 室外機
11 圧縮機
13 室外熱交換器(熱交換器)
15 水冷媒熱交換器
17 室外ファン(ファン)
30、30A 筐体
31 底板(底面パネル)
32 天面パネル
32A 前端部(前方側の端部)
33 側面パネル部
36 前面パネル
36A 第1前面部
36A1 屈曲部
36A11 第1屈曲部
36A12 第2屈曲部
36B 第1左側面部
37 背面パネル
37A 第1背面部
37B 第1右側面部
38 右側面パネル
38A 第2右側面部
38B 第2前面部
39 左側面パネル
39A 第2左側面部
39B 第2背面部
40 サービスパネル
41 吹出口
42、142 ファンガード
42A、142A 上端部(上部側の端部)
50 手掛部(第1取手部)
51 第2取手部
52 第3取手部
53 第4取手部
G 重心
RA 熱交換室
RB 機械室
VA 第1仮想領域(筐体を上面から見たときに、隣り合う取手部をそれぞれ結んで形成される領域)
VA1 第2仮想領域(筐体を側面から見たときに、隣り合う取手部を結んだ仮想線よりも下方の領域)
VL 第1仮想線
VL1 第2仮想線(仮想線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12