(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電池パックおよび電動車両
(51)【国際特許分類】
H02H 7/18 20060101AFI20240326BHJP
H01M 50/583 20210101ALI20240326BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02H7/18
H01M50/583
H02J7/00 S
H02J7/00 302A
(21)【出願番号】P 2022507145
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008755
(87)【国際公開番号】W WO2021182337
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2020043758
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】馬場 誠
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隆男
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/014350(WO,A1)
【文献】特開2009-273208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/00
H02H 7/10 - 7/20
H01M 50/50 - 50/598
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の出力端子と、制御部と、
少なくとも第1の電池ユニットおよび第2の電池ユニットを含む複数の電池ユニットとを有する電池パックであって、
前記
第1の電池ユニットおよび前記第2の電池ユニットのそれぞれは、直列接続された複数の電池ブロックと、正極端子および負極端子を有し、
前記電池ブロックは、1個の電池または並列接続された複数の電池を有し、
前記一対の出力端子のうち少なくとも一方の出力端子と、当該一方の出力端子に対応する前記正極端
子との間に、
ヒーター付ヒューズが接続されており、
前記
ヒーター付ヒューズが前記制御部によって溶断可能とされて
おり、
前記第1の電池ユニットと前記第2の電池ユニットとが並列接続されており、
前記第1の電池ユニットの正極端子および前記第2の電池ユニットの正極端子のそれぞれに対して、異なる前記ヒーター付ヒューズが接続されており、
前記制御部は、前記電池ブロックが過充電状態であるか否かを判別し、
前記電池ブロックの過充電状態を検知した場合には、前記過充電状態の電池ブロックを有する電池ユニットに接続される前記ヒーター付ヒューズを、前記過充電状態の電池ブロックを含まない電池ユニットに接続される前記ヒーター付ヒューズよりも先に溶断させる
電池パック。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の電池ブロックのそれぞれ
が前記過充電状態であるか否かを判
別する
請求項
1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記制御部を複数有し、
複数の前記電池ユニットのそれぞれに対して前記制御部が接続されている
請求項1
または2に記載の電池パック。
【請求項4】
異なる前記電池ユニットのそれぞれにおける前記電池ブロックの接続中点同士が、前記
ヒーター付ヒューズとは異なる他のヒューズを介して接続されている
請求項1から
3までの何れかに記載の電池パック。
【請求項5】
前記一対の出力端子の一方と前記
ヒーター付ヒューズとの間に充放電制御スイッチが直列に接続されている
請求項1から
4までの何れかに記載の電池パック。
【請求項6】
請求項1から
5までの何れかに記載の電池パックを有する電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の用途が拡大している。例えば、二次電池の代表例であるリチウムイオン二次電池の用途は、種々の電子機器だけでなく、自動車、バイク、電動飛行体等にも拡大してきている。リチウムイオン二次電池は、用途によっては1個(単セル)ではなく、複数個使用される場合がある。複数個のリチウムイオン二次電池が使用される場合に、そのうちの所定のリチウムイオン二次電池に内部ショート等の異常が発生し得る。下記の特許文献1には、かかる異常が発生したリチウムイオン二次電池を、ヒューズを使用して回路的に切り離すことにより、安全性を確保するようにした電池モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ヒューズが溶断するタイミングをコントロールできないため、異常が生じたリチウムイオン二次電池を回路的に切り離すことができない虞があった。
【0005】
従って、本発明は、ヒューズを適切なタイミングで溶断できるようにすることで、異常が生じた二次電池を回路的に確実に切り離すことができる電池パックおよび電動車両を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
一対の出力端子と、制御部と、少なくとも第1の電池ユニットおよび第2の電池ユニットを含む複数の電池ユニットとを有する電池パックであって、
第1の電池ユニットおよび第2の電池ユニットのそれぞれは、直列接続された複数の電池ブロックと、正極端子および負極端子を有し、
電池ブロックは、1個の電池または並列接続された複数の電池を有し、
一対の出力端子のうち少なくとも一方の出力端子と、当該一方の出力端子に対応する正極端子との間に、ヒーター付ヒューズが接続されており、
ヒーター付ヒューズが制御部によって溶断可能とされており、
第1の電池ユニットと第2の電池ユニットとが並列接続されており、
第1の電池ユニットの正極端子および第2の電池ユニットの正極端子のそれぞれに対して、異なるヒーター付ヒューズが接続されており、
制御部は、電池ブロックが過充電状態であるか否かを判別し、
電池ブロックの過充電状態を検知した場合には、過充電状態の電池ブロックを有する電池ユニットに接続されるヒーター付ヒューズを、過充電状態の電池ブロックを含まない電池ユニットに接続されるヒーター付ヒューズよりも先に溶断させる
電池パックである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の少なくとも実施形態によれば、ヒューズを適切なタイミングで溶断できるので、異常が生じた二次電池を回路的に確実に切り離すことができる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態において考慮すべき問題に関する説明がなされる際に参照される図である。
【
図2】
図2は、一実施形態において考慮すべき問題に関する説明がなされる際に参照される図である。
【
図3】
図3は、一実施形態において考慮すべき問題に関する説明がなされる際に参照される図である。
【
図4】
図4は、一実施形態において考慮すべき問題に関する説明がなされる際に参照される図である。
【
図5】
図5は、一実施形態にかかる電池パックの概略的な構成例を示す図である。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、一実施形態にかかるヒーター付ヒューズの構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、一実施形態にかかる電池パックの詳細な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行われる。
<一実施形態において考慮すべき問題>
<一実施形態>
<変形例>
<応用例>
以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
【0010】
<一実施形態において考慮すべき問題>
始めに、本発明の理解を容易とするために、一実施形態において考慮すべき問題について説明する。
【0011】
図1は、一般的な電池パック(電池パック1)の構成例を示す図である。なお、
図1において示される矢印は、電流の流れを模式的に示しており、その太さは電流の大きさを示している。矢印の太さが太いほど電流が大きいことを示しており、矢印の太さが細いほど電流が小さいことを示している。
【0012】
電池パック1は、電池部2と、電池部2の正極側から導出される正極端子TAと、電池部2の負極側から導出される負極端子TBとを有している。
【0013】
電池部2は、例えば8個の二次電池および7個のヒューズを有している。二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池の単セル(以下、単に電池と称する)である。電池11および電池12が直列接続されており、電池13および電池14が直列接続されており、電池15および電池16が直列接続されており、電池17および電池18が直列接続されている。
【0014】
電池11および電池12の接続中点と、電池13および電池14の接続中点とがヒューズ21を介して接続されている。また、電池13および電池14の接続中点と、電池15および電池16の接続中点とがヒューズ22を介して接続されている。また、電池15および電池16の接続中点と、電池17および電池18の接続中点とがヒューズ23を介して接続されている。
【0015】
正極端子TAと電池11の正極側との間には、ヒューズ25が接続されている。正極端子TAと電池13の正極側との間には、ヒューズ26が接続されている。正極端子TAと電池15の正極側との間には、ヒューズ27が接続されている。正極端子TAと電池17の正極側との間には、ヒューズ28が接続されている。
【0016】
ここで、電池18が内部ショートした例を考える。内部ショートによって短絡電流が流れる。具体的には、電池12、電池14および電池16から放電された電流が、
図1に示すように電池部2の下段側のループRP1を流れる。電池12から放電された電流C12は、ヒューズ21を経由後、電池14から放電された電流C14と合成され電流CAとなる。電流CAはヒューズ22を経由後、電池16から放電された電流C16と合成され電流CBとなる。電流CBがヒューズ23を流れる。
【0017】
ヒューズ23を流れる電流は、ヒューズ21およびヒューズ22のそれぞれを流れる電流より大きい(単純化すれば、ヒューズ23を流れる電流は、ヒューズ21を流れる電流の3倍となる。)。このため、
図2に示すように、ヒューズ23がヒューズ21およびヒューズ22よりも先に溶断する。
【0018】
その後、
図2に示すように、電池11~電池16から放電された電流は、電池部2のループRP2を流れる。ヒューズ25、ヒューズ26およびヒューズ27のそれぞれに流れる電流(電流CC)の大きさは略等しい。一方で、ヒューズ28を流れる電流は、ヒューズ25、ヒューズ26およびヒューズ27のそれぞれに流れる電流を合成した電流3CCとなる。このため、
図3に示すように、ヒューズ28がヒューズ25、ヒューズ26およびヒューズ27のそれぞれよりも先に溶断する。これにより、内部ショートが発生した電池18は開回路、すなわち、電池パック1内において回路的に切り離される。従って、電池18の充放電ができないようになるため、電池18の発熱や発火を防止することができ、電池パック1の安全性を担保することができる。
【0019】
なお、電池18以外の電池に内部ショートが発生した場合でも、同様にして電池パック1の安全性が担保される。
【0020】
図4は、一般的な電池パックの他の例にかかる電池パック(電池パック1A)の構成例を示す図である。電池パック1Aが電池パック1と構成上、異なる点は、電池部2に代えて電池部2Aを有している点である。電池部2Aは、上述した電池15~電池18、および、ヒューズ23、ヒューズ27、ヒューズ28を有している(各構成の接続関係は、電池部2と同じである。)。
【0021】
電池18に内部ショートが発生した例を考える。
図4に示すように、電池16から放電された電流C16によってヒューズ23が溶断された後、電池15および電池16から放電された電流CCがヒューズ27を経由して、ヒューズ28にも流れる。
【0022】
ヒューズ27およびヒューズ28に流れる電流の大きさは同じである。このため、ヒューズ27およびヒューズ28の何れが先に溶断するかはわからない。例えば、ヒューズ27がヒューズ28よりも先に溶断してしまった場合には、内部ショートが発生した電池18を回路的に切り離すことができないため、電池18の充放電が継続してしまうという問題がある。どの電池で内部ショートが発生するかについては予測できないため、特定のヒューズのみを溶断しやすい特性のヒューズにすることも現実的に不可能である。従って、ヒューズを溶断させるタイミングをコントロールできることが望まれる。また、例えば、
図4に示す回路のように、直列接続された電池群の並列接続数が2であるときに、当該電池群のそれぞれに接続されているヒューズを溶断させるタイミングをコントロールできることが望まれる。以上の点を踏まえつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0023】
<一実施形態>
[本明細書で用いられる用語の定義]
始めに、本明細書で用いられる用語の定義について説明する。
「電池」・・・所謂、1個の電池(単セル)を意味する。なお、本実施形態では、リチウムイオン二次電池の単セルを電池の例として説明するが、他の電池であっても構わない。
「電池ブロック」・・・1個の電池または並列接続された複数の電池を有するブロックを意味する。
「電池ユニット」・・・複数の電池ブロックが直列接続されたユニットを意味する。異なる電池ユニットのそれぞれが有する電池ブロックは同数である。
「電池部」・・・複数の電池ユニットを含む構成を意味する。
【0024】
[本実施形態にかかる電池パック]
(概略的な構成)
図5は、本実施形態にかかる電池パック(電池パック10)の概略的な構成例を示す図である。電池パック10は、電池部20を有している。電池部20の正極側から正極端子TAが導出されている。電池部20の負極側から負極端子TBが導出されている。正極端子TAおよび負極端子TBが一対の出力端子に対応している。
【0025】
電池パック10は、電池ユニット30と、制御IC(Integrated Circuit)35と、ヒーター付ヒューズ38と、電池ユニット40と、制御IC45と、ヒーター付ヒューズ48と、ヒューズ50とを有している。電池ユニット30およびヒーター付ヒューズ38を含む構成と、電池ユニット40およびヒーター付ヒューズ48を含む構成とが並列接続されている。なお、本実施形態では、制御IC35および制御IC45のそれぞれが制御部に対応している。
【0026】
第1の電池ユニットの一例である電池ユニット30は、電池ブロック31および電池ブロック32が直列接続された形態を有している。電池ブロック31および電池ブロック32の具体的な構成例については後述される。また、電池ユニット30は、正極端子T1および負極端子T2を有している。
【0027】
制御IC35は、電池ユニット30およびヒーター付ヒューズ38に接続されている。制御IC35は、電池ブロック31および電池ブロック32のそれぞれの状態を判別する。例えば、制御IC35は、電池ブロック31および電池ブロック32のそれぞれの電圧を測定し、それぞれの電池ブロックが過充電状態であるか否かを判別する。そして、制御IC35は、過充電状態である電池ブロックが存在する場合には、当該電池ブロックに対して直列に接続されているヒーター付ヒューズ、すなわち、ヒーター付ヒューズ38が有するヒーターへの電流を制御する。かかる制御により、ヒーター付ヒューズ38が溶断可能とされる。
【0028】
ヒーター付ヒューズ38は、一対の出力端子のうちの一方の出力端子である正極端子TAと、正極端子TAに対応する正極端子との間、すなわち、正極端子TAと、同じ極性側の電池ユニット30の正極端子T1との間に接続されている。ヒーター付ヒューズ38は、制御IC35の制御に応じて溶断可能とされている。
【0029】
第2の電池ユニットの一例である電池ユニット40は、直列接続された電池ブロック41および電池ブロック42を有している。電池ブロック41および電池ブロック42の具体的な構成例については後述される。また、電池ユニット40は、正極端子T3および負極端子T4を有している。
【0030】
制御IC45は、電池ユニット40およびヒーター付ヒューズ48に接続されている。制御IC45は、電池ブロック41および電池ブロック42のそれぞれの状態を判別する。例えば、制御IC45は、電池ブロック41および電池ブロック42のそれぞれの電圧を測定し、それぞれの電池ブロックが過充電状態であるか否かを判別する。そして、制御IC45は、過充電状態である電池ブロックが存在する場合には、当該電池ブロックに対して直列に接続されているヒーター付ヒューズ、すなわち、ヒーター付ヒューズ48が有するヒーターへの電流を制御する。かかる制御により、ヒーター付ヒューズ48が溶断可能とされる。
【0031】
ヒーター付ヒューズ48は、一対の出力端子のうちの一方の出力端子である正極端子TAと、対応する正極端子との間、すなわち、正極端子TAと、同じ極性側の電池ユニット40の正極端子T3との間に接続されている。ヒーター付ヒューズ48は、制御IC35の制御に応じて溶断可能とされている。
【0032】
ヒューズ50は、ヒーター付ヒューズ38およびヒーター付ヒューズ48とは異なる他のヒューズである。ヒューズ50としては、電流ヒューズ等の一般的なヒューズを適用することができる。異なる電池ユニットのそれぞれにおける電池ブロックの接続中点同士が、ヒューズ50を介して接続されている。具体的には、電池ユニット30における電池ブロック31および電池ブロック32の間の接続中点P1と、電池ユニット40における電池ブロック41および電池ブロック42の間の接続中点P2とが、ヒューズ50を介して接続されている。なお、本明細書における接続中点とは、回路的な接続経路における任意の位置であり、必ずしも当該接続経路における中央である必要は無い。
【0033】
(ヒーター付ヒューズについて)
次に、ヒーター付ヒューズの一例について説明する。
図6Aに示すように、ヒーター付ヒューズ38は、正極端子TAと正極端子T1との間で直列接続される2個のヒューズ38Aおよびヒューズ38Bと、ヒューズ38Aとヒューズ38Bとの間の接続中点P38に一端側が接続されるヒーター38Cを有している。ヒーター38Cは、抵抗式ヒーター等の発熱体である。
【0034】
ヒューズ38Aの一端側(接続中点P38とは反対側)が、電池E1を介してグランドに接続されている。また、ヒーター38Cの他端側が、スイッチSW1を介して、グランドに接続されている。スイッチSW1は、制御IC35によってオン/オフされるスイッチであり、ヒーター付ヒューズ38の近傍に設けられている。電池E1は、例えば、過充電状態となっている電池ブロック(詳細は後述)である。
【0035】
通常、スイッチSW1はオフされている。ヒューズ38Aおよびヒューズ38Bを溶断する必要がある場合には、ヒーター付ヒューズ38を動作させる制御が制御IC35により行われる。具体的には、制御IC35によってスイッチSW1がオンされる。スイッチSW1がオンされることで、
図6Aにおける電流ループRPAに電流が流れる。かかる制御IC35による電流を流す制御によりヒーター38Cに電流が流れ、ヒーター38Cが発熱する。その熱によってヒューズ38Aおよびヒューズ38Bが溶断する。このように、ヒーター付ヒューズ38は、通常の電流ヒューズ等と同様にヒューズに流れる過大な電流により溶断するとともに、ヒーター38Cに電流を流すことで所定のタイミングでヒューズ38Aおよびヒューズ38Bを溶断することが可能なデバイスである。
【0036】
図6Bに示すように、ヒーター付ヒューズ48は、正極端子TAと正極端子T3との間で直列接続される2個のヒューズ48Aおよびヒューズ48Bと、ヒューズ48Aとヒューズ48Bとの間の接続中点P48に一端側が接続されるヒーター48Cを有している。ヒーター48Cは、抵抗式ヒーター等の発熱体である。
【0037】
ヒューズ48Aの一端側(接続中点P48とは反対側)が、電池E2を介してグランドに接続されている。ヒーター48Cの他端側が、スイッチSW2を介して、グランドに接続されている。スイッチSW2は、制御IC45によってオン/オフされるスイッチであり、ヒーター付ヒューズ48の近傍に設けられている。電池E2は、例えば、過充電状態となっている電池ブロック(詳細は後述)である。
【0038】
通常、スイッチSW2はオフされている。ヒューズ48Aおよびヒューズ48Bを溶断する必要がある場合には、ヒーター付ヒューズ48を動作させる制御が制御IC45により行われる。具体的には、制御IC45によってスイッチSW2がオンされる。スイッチSW2がオンされることで、
図6Bにおける電流ループRPBに電流が流れる。かかる制御IC45による電流を流す制御によりヒーター48Cに電流が流れ、ヒーター48Cが発熱する。その熱によってヒューズ48Aおよびヒューズ48Bが溶断する。このように、ヒーター付ヒューズ48は、通常の電流ヒューズ等と同様にヒューズに流れる過大な電流により溶断するとともに、ヒーター48Cに電流を流すことで所定のタイミングでヒューズ48Aおよびヒューズ48Bを溶断することが可能なデバイスである。
【0039】
[本実施形態にかかる電池パックの詳細な構成例]
図7は、本実施形態にかかる電池パック10の詳細な構成例を示す図である。電池ユニット30は、例えば、直列接続された14個の電池ブロック(電池ブロック311a、電池ブロック311b・・・電池ブロック311n)を有している。なお、個々の電池ブロックを区別する必要が無い場合には、電池ブロック311と適宜、略称する。
【0040】
電池ブロック311は、4個の電池が並列接続された構成を有している。並列接続される電池数は適宜変更可能であるものの、何れかの電池で内部ショートが発生した場合に生じる短絡電流によって電池の温度が一定以上にならない範囲で適切に設定される。
【0041】
電池ユニット40は、例えば、直列接続された14個の電池ブロック(電池ブロック411a、電池ブロック411b・・・電池ブロック411n)を有している。なお、個々の電池ブロックを区別する必要が無い場合には、電池ブロック411と適宜、略称する。
【0042】
電池ブロック411は、4個の電池が並列接続された構成を有している。並列接続される電池数は適宜変更可能であるものの、何れかの電池で内部ショートが発生した場合に生じる短絡電流によって電池の温度が一定以上にならない範囲で適切に設定される。
【0043】
ヒューズ50は、(電池ブロック数-1)個、すなわち13個のヒューズ(ヒューズ50a、ヒューズ50b・・・ヒューズ50m)を有している。例えば、電池ブロック311aと電池ブロック311bとの間の接続中点と、電池ユニット40の電池ブロック411aと電池ブロック411bとの間の接続中点とが、ヒューズ50aを介して接続されている。他の電池ブロックの接続中点同士も同様にしてヒューズを介して接続されている。
【0044】
また、電池パック10は、AFE(Analog Front End)71と、MPU(Micro Processing Unit)72と、充放電制御スイッチ73とを有している。充放電制御スイッチ73は、充電制御スイッチ73Aおよび放電制御スイッチ73Bを有している。
【0045】
AFE71は、保護ICの一種であり、各電池ブロックの電圧や、電池パック10内の回路を流れる充電電流や放電電流を測定する。そして、AFE71は、測定結果を上位のICであるMPU72に送信する。
【0046】
MPU72は、電池パック1の保護動作等の動作を統括的に制御する。また、MPU72は、電池パック10が適用される電子機器側(ホスト側)と、通信端子COMを介した通信を行う。
【0047】
充放電制御スイッチ73は、AFE71によってオン/オフが制御されるスイッチである。充放電制御スイッチ73としては、例えば、FET(Field Effect Transistor)を使用することができる。充放電制御スイッチ73は、正極側のパワーラインPLA上において、正極端子TAとヒーター付ヒューズ38またはヒーター付ヒューズ48とに対して直列に接続されている。
【0048】
[電池パックの動作例]
(充放電制御スイッチのオン/オフ制御)
次に、本実施形態にかかる電池パック10の動作例について説明する。始めに、充放電制御スイッチ73に対するオン/オフ制御について説明する。
【0049】
上述したように、AFE71は、各電池ブロックの電圧や、電池パック10内の回路を流れる充電電流や放電電流の測定結果をMPU72に送信する。MPU72は、送信された測定結果に基づいて、電流経路の遮断の要否を判断する。電流経路を遮断する必要がある場合には、MPU72は、AFE71に制御コマンドを出力する。制御コマンドに応じてAFE71が充電制御スイッチ73Aや放電制御スイッチ73Bを適宜オン/オフすることにより、電流経路が遮断される。
【0050】
例えば、MPU72が電池部20に異常等がなく問題なく充放電できると判断した場合には、MPU72は、充電制御スイッチ73Aと放電制御スイッチ73BとをオンにするようにAFE71を制御する。また、MPU72は、電池部20の電圧が過充電禁止電圧に達した場合等の充電を禁止する必要がある場合には、少なくとも充電制御スイッチ73AをオフするようにAFE71を制御する。また、MPU72は、電池部20の電圧が過放電禁止電圧に達した場合等の放電を禁止する必要がある場合には、少なくとも放電制御スイッチ73BをオフするようにAFE71を制御する。また、MPU72は、電池部20が深放電して再充電禁止領域に達した場合には、充電制御スイッチ73Aおよび放電制御スイッチ73BをオフするようにAFE71を制御して充放電を停止する。
【0051】
(ヒーター付ヒューズの溶断制御)
次に、ヒーター付ヒューズ38およびヒーター付ヒューズ48の溶断制御について説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜を考慮して、
図5に示した電池ユニット30および電池ユニット40の構成を例にして、ヒーター付ヒューズの溶断制御について説明する。また、電池ユニット40の電池ブロック42に内部ショートが発生したものとして説明する。
【0052】
電池ブロック42に内部ショートが発生した後、電池ブロック32からの電流がヒューズ50に流れることで、ヒューズ50が溶断する。そして、電池ユニット30からの電流がヒーター付ヒューズ38およびヒーター付ヒューズ48を経由して電池ユニット40に流れる。
【0053】
ここで、ヒーター付ヒューズ48がヒーター付ヒューズ38よりも先に溶断すれば、内部ショートが発生した電池ブロック42を電気的に切り離すことができる。従って、正極端子TAおよび負極端子TBを介して電池パック1に充電電圧が印加された場合であっても電池パック1の安全性を担保することができる。一方で、ヒーター付ヒューズ38がヒーター付ヒューズ48よりも先に溶断した場合には、電池ブロック42を電気的に切り離すことができない。この状態で、電池パック1に対する充電が行われると、電池ブロック42は内部ショートが発生していることから電圧は上がらず、電池ブロック41の電圧のみが上がる。電池ブロック41の電圧が上がることで電池ブロック41が過充電状態(電圧が閾値(電池の場合は例えば、4.3V)以上の状態)となる。
【0054】
かかる電池ブロック41の過充電状態が制御IC45により検出される。電池ブロック41の過充電状態を検出した制御IC45は、過充電状態の電池ブロック41と直列接続されているヒーター付ヒューズ48を動作させる必要があると判断する。そして、制御IC45は、ヒーター付ヒューズ48に電流を流す制御(上述したスイッチSW2をオンする制御)を行う。かかる制御により、電池ブロック41の電力を利用してヒーター48Cに電流を流すことができ、ヒーター48Cの熱によってヒューズ48Aおよびヒューズ48Bを溶断することができる。従って、電池ブロック42を含む電池ユニット40を電気的に切り離すことができる。
【0055】
電池ブロック42以外の電池ブロックに内部ショートが発生した場合でも同様の処理が行われる。例えば、電池ブロック32に内部ショートが発生し、電池ブロック31の過充電状態が検出された場合には、ヒーター付ヒューズ38を動作させる制御が制御IC35により行われる。また、電池ブロック311や電池ブロック411を構成する何れかの電池が内部ショートを起こした場合でも同様の処理が行われる。
【0056】
[効果]
以上、説明した本実施形態によれば、例えば、以下の効果を得ることができる。
内部ショートが発生した電池ブロックを電気的に確実に切り離すことができるので、電池ブロックの内部ショートに伴う発熱や発火等を防止でき、電池パックの安全性を担保することができる。
上述した具体例において、仮にヒーター付ヒューズ48がヒーター付ヒューズ38よりも先に溶断した場合には何れの電池ブロックも過充電状態とならないので、ヒーター付ヒューズ38を溶断する制御が行われない。従って、電池ユニット30の使用を継続することができる。
【0057】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0058】
上述した一実施形態において、制御ICが、過充電状態ではなく他の状態を判別することにより、ヒーター付ヒューズを動作させる必要性を判断するようにしてもよい。例えば、制御ICが、電池ブロック同士の電圧バランスの状態を判別してもよい。充電が行われた際に、直列接続された電池ブロックの一方の電圧が上がる一方、他方の電池ブロックの電圧が略変化しない場合には、当該他方の電池ブロックに内部ショートが発生していることから、制御ICが、ヒーター付ヒューズを動作させる必要性があると判断してもよい。充電が行われずとも、電池ブロック同士の電圧差が一定以上になると電池ブロックに内部ショートが発生しているとしてヒーター付ヒューズを動作させる必要があると判断してもよい。このような制御により、異常が発生した電池をより早く切り離すことができる。また、制御ICは、充電が行われても電圧が略変化しない状態の電池ブロックの有無を判断し、そのような電池ブロックが有る場合に、ヒーター付ヒューズを動作させる必要性が有ると判断するようにしてもよい。これらの条件を組み合わせて、制御ICがヒーター付ヒューズを動作させる必要性の有無を判断するようにしてもよい。
【0059】
上述した一実施形態では、過充電状態の電池ブロックの電力を利用してヒーター付ヒューズを動作させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電池パックに定電流源を設け、当該定電流源からヒーター付ヒューズのヒーターに対して電流を流すことにより、ヒーターを発熱させるようにしてもよい。また、電池パックが有する複数のヒーター付ヒューズうち、一部または全部のヒーター付ヒューズが電池パックの負極端子と電池ユニットの負極端子との間に接続されてもよい。また、ヒーター付ヒューズの動作不良に備え、電池パックの正極端子と電池ユニットの正極端子の間、および、電池パックの負極端子と電池ユニットの負極端子の間の両方に、ヒーター付ヒューズが接続されていてもよい。
【0060】
上述した一実施形態において、AFEがMPUによる制御ではなく電圧等の測定結果に基づいて自律的に保護動作の必要性を判断し、判断結果に応じて充放電制御スイッチを適宜オン/オフするようにしてもよい。また、MPUが、AFEから送信された測定結果を電子機器側に送信することにより、電子機器側のマイクロコンピュータによって保護動作の必要性が判断されてもよい。
【0061】
上述した一実施形態において、制御ICが、AFEやMPUと通信を行うようにしてもよい。例えば、制御ICがMPUと通信を行うことで、制御ICが、所定のヒーター付ヒューズを溶断したことをMPUに通知するようにしてもよい。そして、MPUがヒーター付ヒューズの交換を促すユーザーへの報知やエラーメッセージ等を表示や音声により行うようにしてもよい。
【0062】
上述した一実施形態において、充放電制御スイッチは、負極側のパワーラインPLB上において、負極端子TBと、電池ユニットの負極側に接続されるヒーター付ヒューズとに対して直列に接続されていてもよい。また、制御ICおよびAFEが一体化された構成等、電池パックの構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜、変更することができる。また、上述した一実施形態における電池ユニットの接続数、電池ブロックの接続数、電池ブロックの構成(電池の個数や接続態様)等は、適宜、変更することができる。
【0063】
上述した実施形態、変形例で説明した事項は、適宜組み合わせることが可能である。また、実施形態で説明された材料、工程等はあくまで一例であり、例示された材料等に本発明の内容が限定されるものではない。
【0064】
<応用例>
本発明にかかる電池パック10は、電動工具、電動車両、各種の電子機器等に搭載又は電力を供給するために使用することができる。
【0065】
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例として、
図8に、シリーズハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両(HV)の構成例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンを動力とする発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0066】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力駆動力変換装置(直流モータ又は交流モータ。以下単に「モータ603」という。)、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608としては、本発明の電池パック10が適用され得る。
【0067】
バッテリ608の電力によってモータ603が作動し、モータ603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。エンジン601によって産み出された回転力によって、発電機602で生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度を制御したりする。
【0068】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ603に回転力として加わり、この回転力によって生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。またバッテリ608は、ハイブリッド車両600の充電口611を介して外部の電源に接続されることで充電することが可能である。このようなHV車両を、プラグインハイブリッド車(PHV又はPHEV)という。
【0069】
なお、本発明に係る二次電池を小型化された一次電池に応用して、車輪604、605に内蔵された空気圧センサシステム(TPMS: Tire Pressure Monitoring system)の電源として用いることも可能である。
【0070】
以上では、シリーズハイブリッド車を例として説明したが、エンジンとモータを併用するパラレル方式、又は、シリーズ方式とパラレル方式を組み合わせたハイブリッド車に対しても本発明は適用可能である。さらに、エンジンを用いない駆動モータのみで走行する電気自動車(EV又はBEV)や、燃料電池車(FCV)に対しても本発明は適用可能である。また、本発明は、電動自転車に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
10・・・電池パック
30、40・・・電池ユニット
31、32、41、42・・・電池ブロック
35、45・・・制御IC
38、48・・・ヒーター付ヒューズ
38C、48C・・・ヒーター
73・・・充放電制御スイッチ
TA・・・電池パックの正極端子
TB・・・電池パックの負極端子
T1、T3・・・電池ユニットの正極端子
T2、T4・・・電池ユニットの負極端子