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特許7459929二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240326BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20240326BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240326BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/378
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022508647
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011669
(87)【国際公開番号】W WO2021186537
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 拳
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英司
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157132(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/121692(WO,A1)
【文献】特開2019-045351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0202299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/392
G01R 31/378
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の蓄電量を横軸としたQ-dQ/dV曲線における二つの特徴点又はこれと数学的に等価な二つの点の間の容量をαとし、
前記Q-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうちのいずれかの極値点又はこれと数学的に等価な点におけるdQ/dV値をβとし、
前記αと前記βとの積をXとし、
校正サンプルにおける前記Xと前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、
前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する、二次電池の制御装置。
【請求項2】
前記二つの特徴点は、いずれも前記複数の極値点のうちのいずれかである、請求項1に記載の二次電池の制御装置。
【請求項3】
前記二つの特徴点は、前記複数の極値点のうちのいずれかの極値点を挟む二点である、請求項1に記載の二次電池の制御装置。
【請求項4】
前記二つの特徴点に挟まれる極値点は、二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の電圧を横軸としたV-dQ/dV曲線において、3.6V以上3.8V以下の電圧範囲に表れる極大点である、請求項3に記載の二次電池の制御装置。
【請求項5】
前記dQ/dVを算出するdQ/dV算出手段と、
前記Q-dQ/dV曲線における前記二つの特徴点を選択し、前記二つの特徴点の間の容量を求める二点間容量算出手段と、
前記Q-dQ/dV曲線における前記複数の極値点のうちのいずれかの極値点を選択し、前記極値点におけるdQ/dV値を求める強度算出手段と、
前記二つの特徴点の間の容量と前記dQ/dV値との積を求める積算手段と、
前記積算手段で求められた値に基づいて、前記二次電池の劣化度合いを補正値に補正する補正手段と、を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池の制御装置。
【請求項6】
二次電池と請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の制御装置とを備える、電池パック。
【請求項7】
前記二次電池は、正極に活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)及びリチウムマンガン酸化物(LMO)を含む、請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の蓄電量を横軸としたQ-dQ/dV曲線における二つの特徴点又はこれと数学的に等価な二つの点の間の容量をαとし、
前記Q-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうちのいずれかの極値点又はこれと数学的に等価な点におけるdQ/dV値をβとし、
前記αと前記βとの積をXとし、
校正サンプルにおける前記Xと前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、
前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する、二次電池の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の状態の指標としてSOC(State of Charge)やSOH(State of Health)が知られている。SOCは、二次電池の残容量を示す指標であり、SOHは電池の劣化状態を示す指標である。SOCは、満充電容量に対する残容量の割合である。SOHは、初期の満充電から満放電までの容量に対する劣化時の満充電から満放電までの容量の割合である。
【0003】
例えば、特許文献1には、二次電池の充電時に、電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVと二次電池の電圧Vから得られるV-dQ/dV曲線の極大点の電圧値から容量低下率(SOHに対応する)を推定する方法が記載されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、二次電池の放電時に、dQ/dVを求め、電圧に対するdQ/dVの変化量の最大値からSOHを求める方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-19709号公報
【文献】特開2016-9659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池が充放電サイクルを繰り返すと、実際のSOHの値から推定されるSOHの値がずれる場合がある。特許文献1及び2に記載の方法では、実際のSOHの値と推定されるSOHの値との誤差を十分小さくすることができない。
【0007】
本開示は上記問題に鑑みてなされたものであり、二次電池の劣化状態を適正値に補正できる、二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)第1の態様にかかる二次電池の制御装置は、二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の蓄電量を横軸としたQ-dQ/dV曲線における二つの特徴点又はこれと数学的に等価な二つの点の間の容量をαとし、前記Q-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうちのいずれかの極値点又はこれと数学的に等価な点におけるdQ/dV値をβとし、前記αと前記βとの積をXとし、校正サンプルにおける前記Xと前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する。
【0010】
(2)上記態様にかかる二次電池の制御方法において、前記二つの特徴点は、いずれも前記複数の極値点のうちのいずれかであってもよい。
【0011】
(3)上記態様にかかる二次電池の制御方法において、前記二つの特徴点は、前記複数の極値点のうちのいずれかの極値点を挟む二点であってもよい。
【0012】
(4)上記態様にかかる二次電池の制御方法において、前記二つの特徴点に挟まれる極値点は、二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の電圧を横軸としたV-dQ/dV曲線において、3.6V以上3.8V以下の電圧範囲に表れる極大点であってもよい。
【0013】
(5)上記態様にかかる二次電池の制御方法は、前記dQ/dVを算出するdQ/dV算出手段と、前記Q-dQ/dV曲線における前記二つの特徴点を選択し、前記二つの特徴点の間の容量を求める二点間容量算出手段と、前記Q-dQ/dV曲線における前記複数の極値点のうちのいずれかの極値点を選択し、前記極値点におけるdQ/dV値を求める強度算出手段と、前記二つの特徴点の間の容量と前記dQ/dV値との積を求める積算手段と、前記積算手段で求められた値に基づいて、前記二次電池の劣化度合いを補正値に補正する補正手段と、を有してもよい。
【0014】
(6)第2の態様にかかる電池パックは、二次電池と上記態様にかかる二次電池の制御装置とを備える。
【0015】
(7)上記態様にかかる電池パックにおいて、前記二次電池は、正極に活物質として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)及びリチウムマンガン酸化物(LMO)を含んでもよい。
【0016】
(8)第3の態様にかかる二次電池の制御方法は、二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の蓄電量を横軸としたQ-dQ/dV曲線における二つの特徴点又はこれと数学的に等価な二つの点の間の容量をαとし、前記Q-dQ/dV曲線に表れる複数の極値点のうちのいずれかの極値点又はこれと数学的に等価な点におけるdQ/dV値をβとし、前記αと前記βとの積をXとし、校正サンプルにおける前記Xと前記校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる定数をA、Bとした際に、前記二次電池の劣化度合いSOHを、SOH=AX+B ・・・(1)に補正する。
【発明の効果】
【0017】
上記態様に係る二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法は、二次電池の劣化状態を適正値に補正できる。
また上記態様に係る二次電池の制御装置、電池パックおよび二次電池の制御方法は、二次電池の安全性を高め、エネルギーの安定供給に寄与し、持続可能な開発目標に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態にかかる電池パックのブロック図である。
図2】第1実施形態にかかる二次電池のQ-dQ/dV曲線及びQ-V曲線の一例である。
図3】校正サンプルの劣化度合いと2つの特徴点の間の容量と特定の極値点におけるdQ/dV値との積との関係を示す図である。
図4】第1実施形態にかかる二次電池の断面図である。
図5】劣化の指標値と二次電池のSOHとの関係を示した図である。
図6】第2実施形態にかかる二次電池のQ-dQ/dV曲線及びQ-V曲線の一例である。
図7】第2実施形態にかかる二次電池のV-dQ/dV曲線の一例である。
図8】劣化の指標値と二次電池のSOHとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる電池パック100のブロック図である。電池パック100は、二次電池10と制御装置20とを備える。二次電池10と制御装置20との間では信号の通信が行われる。信号の通信は、有線でも無線でもよい。
【0021】
二次電池10は、例えば、リチウム二次電池である。二次電池10の具体的な構成は後述する。二次電池10は、使用に伴い劣化する。二次電池10の劣化の指標がSOHである。SOHは、「劣化時の満充電から満放電までの容量(Ah)/初期の満充電から満放電までの容量(Ah)×100」で表される。SOHを適切に評価することは、電池の寿命延長に繋がる。
【0022】
制御装置20は、二次電池10を制御する制御装置(コントローラー)である。制御装置20は、例えば、マイコンである。
【0023】
制御装置20は、例えば、二次電池10の劣化度合いをSOH=AX+B ・・・(1)に補正する制御プログラムを有する。以下、制御装置20の具体的な例を用いて、制御装置20について説明する。
【0024】
制御装置20は、例えば、dQ/dV算出手段21と二点間容量算出手段22と強度算出手段23と積算出手段24と補正手段25とを有する。dQ/dV算出手段21、二点間容量算出手段22、強度算出手段23、積算出手段24及び補正手段25は、例えば、制御装置20に格納されたプログラムである。
【0025】
dQ/dV算出手段21は、二次電池10の電圧及び蓄電量をモニターする。dQ/dV算出手段21は、単位時間当たりの電圧の変化量と蓄電量の変化量からdQ/dVを算出する。dQ/dVの算出は充電時に行っても、放電時に行ってもよい。dQ/dVの算出は充電時に行うことが好ましい。
【0026】
dQ/dV算出手段21は、算出されたdQ/dVを基に、Q-dQ/dV曲線を描く。図2は、Q-dQ/dV曲線及びQ-V曲線の一例である。図2に示すグラフG1は、Q-dQ/dV曲線である。Q-dQ/dV曲線は、横軸が二次電池の蓄電量(容量)であり、縦軸がdQ/dVである。図2に示すグラフG2は、Q-V曲線である。Q-V曲線は、横軸が二次電池の蓄電量(容量)であり、縦軸が二次電池の電圧である。Q-dQ/dV曲線は、充放電試験によって測定したQ-V曲線を電圧で微分したものである。
【0027】
図2に示すように、Q-dQ/dV曲線は、複数の極値点を有する。極値点は、極大点と極小点とがある。図2において、P1、P2、P3、P4が極大点であり、B1、B2、B3が極小点である。Q-dQ/dV曲線における極大点は、横軸を蓄電量とし縦軸を電圧とした充放電曲線(Q-V曲線)において電圧が平坦な部分に対応する。すなわち、所定のステージの電池反応が生じている部分に対応する。Q-dQ/dV曲線における極小点は、充放電曲線(Q-V曲線)において電圧の変動が大きい部分に対応する。すなわち、所定のステージの電池反応が開始した点又は終了した点に対応する。
【0028】
dQ/dV算出手段21で求められたQ-dQ/dV曲線のデータは、二点間容量算出手段22と強度算出手段23とのそれぞれに送られる。
【0029】
二点間容量算出手段22は、二つの特徴点C1,C2間の容量ΔQを求める。容量ΔQは、指標αの一例である。特徴点C1の座標を(X1、Y1)、特徴点C2の座標を(X2、Y2)とすると、容量ΔQは|X2-X1|である。
【0030】
二つの特徴点C1、C2の選択は任意である。二つの特徴点C1、C2は、Q-dQ/dV曲線における特異的な点であることが好ましい。Q-dQ/dV曲線は、例えば、二次電池の充電過程に描かれる。そのため、特徴点C1、C2がQ-dQ/dV曲線における特異的な点でないと、特徴点C1、C2に至ったと機械的に判断することが難しくなるためである。
【0031】
例えば、二つの特徴点C1、C2として、複数の極値点のうちのいずれかをそれぞれ選択する。極値点は、極大点でも極小点でもよい。二つの特徴点C1,C2間の容量は、Q-dQ/dV曲線におけるピーク間容量、ボトム間容量、またはピーク・ボトム間容量となる。
【0032】
例えば、図2では、極大点P2を特徴点C1とし、極小点B3を特徴点C2としている。極大点P2は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から2番目に表れる電圧安定領域に伴う極値点(極大点)である。極小点B3は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧変動領域に伴う極値点(極小点)である。ここで初期とは、10回以内の充放電サイクルを示す。極大点P2は、例えば、負極のグラファイトのステージ構造において、ステージ2Lとステージ2との共存状態に基づく電圧安定領域に伴う極値点である。極小点B3は、二次電池10の正極活物質に含まれるマンガン酸化物の六方晶の単相反応が完了することに伴う極小点である。
【0033】
強度算出手段23は、Q-dQ/dV曲線における複数の極値点のうちのいずれかの極値点を選択し、極値点におけるdQ/dV値を求める。選択された極値点におけるdQ/dV値は、指標βの一例である。選択された極値点の座標を(X3,Y3)とすると、指標βはY3である。
【0034】
極値点の選択は任意であり、極大点P1、P2、P3、P4のいずれでも、極小点B1、B2、B3のいずれでもよい。強度算出手段23は、極値点を二点間容量算出手段22において特徴点C1,C2として選択した極値点と無関係に選択する。極値点として極小点B1、B2、B3を用いると、二次電池10の劣化度合いを示す関係式(1)の決定係数Rが大きくなり、実際のSOHの値と推定されるSOHの値との誤差が小さくなる。極値点として極小点B1を用いると、二次電池10の劣化度合いを示す関係式(1)の決定係数Rが特に大きくなる。また極値点として、極大点P2、P3又は極小点B2、B3を用いると、補正頻度を増やすことができ、実際のSOHの値と推定されるSOHの値との誤差が小さくできる。極大点P2、P3及び極小点B2、B3は、電池の一般的な使用態様において通過頻度が多いためである。
【0035】
例えば、図2では、極大点P3を選択し、極大点P3のdQ/dV値を指標βとして算出する。極大点P3は、二次電池の初期の充放電試験において、満放電状態から3番目に表れる電圧安定領域に伴う極値点(極大点)である。極大点P3は、例えば、マンガン酸化物の立方晶の単相反応に基づく電圧安定領域に伴う極値点である。
【0036】
二点間容量算出手段22で求められた容量ΔQと強度算出手段23で求められたdQ/dV値とは、それぞれ積算出手段24へ送られる。積算出手段24は、二つの特徴点C1、C2の間の容量ΔQとdQ/dV値との積Xを算出する。積Xは、例えば、容量ΔQとdQ/dV値とを掛け合わせたものである。
【0037】
補正手段25は、積算出手段24から送られた積Xに基づいて、二次電池10のSOHを推定する。補正手段は、推定されたSOHを補正値として、二次電池10のSOHを補正する。
【0038】
補正値は、以下の式(1)を満たす。
SOH=AX+B ・・・(1)
式(1)において、SOHは二次電池の推定される劣化度合いであり、補正値である。式(1)において、Xは積算出手段24で算出された積である。式(1)において、A、Bは、定数である。
【0039】
A、Bの定数は校正サンプルにおける積Xと校正サンプルの劣化度合いとの関係から予め求められる。A、Bの定数は、特徴点C1,C2となる極値点及びdQ/dV値の算出に用いられた極値点の組み合わせによって異なる。A、Bの定数は、校正サンプルによって事前に求められ、補正手段25に予め記憶されている。
【0040】
ここで、A、Bの定数の求め方について説明する。まず校正サンプルを準備する。校正サンプルは、実際に使用される二次電池10と同じ材料、同じ容量で作製する。同じ材料及び同じ容量で作製された校正サンプルの劣化挙動は、実際に使用される二次電池10の劣化挙動と近似する。
【0041】
次いで、校正サンプルの充放電試験を行い、Q-dQ/dV曲線を得る。校正サンプルは、充放電サイクルを繰り返すと劣化し、Q-dQ/dV曲線の形が変化する。校正サンプルが劣化すると、例えば、極値点の縦軸(dQ/dV)の位置が下がり、極値点の横軸(Q)の位置がシフトする。校正サンプルの劣化に伴うQ-dQ/dV曲線の極値点の縦軸(dQ/dV)方向及び横軸(V)方向へのシフトの挙動は、二次電池10の劣化に伴う極値点のシフトの挙動と略一致する。
【0042】
次いで、校正サンプルのQ-dQ/dV曲線における二つの特徴点を選択し、これらの特徴点間の容量を求める。校正サンプルにおいて選択される二つの特徴点は、実際に使用される二次電池10において選択される二つの特徴点と同じある。換言すると、実際に使用される二次電池10は、二つの特徴点として、校正サンプルにおいて選択された二つの特徴点を選択する。例えば、二つの特徴点として、二つの極値点を選択する。
【0043】
また校正サンプルのQ-dQ/dV曲線における複数の極値点から一つの極値点を選択し、この極値点におけるdQ/dV値を求める。校正サンプルにおいて選択される一つの極値点は、実際に使用される二次電池10においてdQ/dV値を求める際に用いられる極値点と同じある。換言すると、実際に使用される二次電池10は、dQ/dV値を求める際に用いる極値点として、校正サンプルにおいて選択された極値点を選択する。
【0044】
校正サンプルにおいて、二つの特徴点の間の容量と特定の極値点におけるdQ/dV値は、充放電サイクルを所定回数行うごとに求める。そして二つの特徴点の間の容量と特定の極値点におけるdQ/dV値とを求めるたびにこれらの積を算出する。またこれらの積を算出した時点における校正サンプルの劣化度合い(SOH)も求める。校正サンプルの劣化度合い(SOH)は、当該サイクル回数において満充電から満放電までの容量(Ah)を初期の満充電から満放電までの容量(Ah)で割ることで求められる。校正サンプルは、実際の二次電池10の使用態様と異なり、充電途中に放電を行ったり、放電途中に充電を行うことがないため、実測値としてSOHを求めることができる。
【0045】
図3は、校正サンプルの劣化度合いと、二つの特徴点の間の容量と特定の極値点におけるdQ/dV値との積と、の関係を示す。図3に示すように、校正サンプルの劣化度合いと、二つの特徴点の間の容量と特定の極値点におけるdQ/dV値との積と、の間には、線形相関がある。
【0046】
次いで、図3に示す校正サンプルのプロットに回帰直線を引く。回帰直線の傾きが定数Aであり、回帰直線の切片が定数Bである。回帰直線の決定係数Rが大きいほど、回帰直線の線形相関が強く、SOHの推定精度が高まる。
【0047】
補正手段25は、求められた補正値を二次電池10に送る。二次電池10のSOHの値は補正値に置き換えられる。補正値への置き換えは、例えば、充電時において、選択した極小点をすべて通過した後に行う。補正値への置き換えは、例えば、充電時において、選択した極値点をすべて通過する毎に行う。当該補正は、補正値が得られた時点で行ってもよい。また当該補正は、補正値が得られた後に、補正値が得られた時点における保有値(補正前の値)と補正値との差分を、補正が行われる時点における保有値に加えることで行ってもよい。また当該補正は、補正値が得られた時点における保有値と補正値との差分にあたる値が、補正完了点における保有値に対して加えられるように、補正値取得点から補正完了点まで徐々に値を補正していってもよい。
【0048】
SOHを補正値に置き換えると、例えば、連続的に変化するSOHの値が不連続に変化する。読みだされるSOHの値が不連続に変化したということは、補正が行われたと推定できる。また補正された時点における補正値が、上記関係式(1)を満たす場合、第1実施形態にかかる二次電池の制御方法が行われたと推定できる。
【0049】
図4は、第1実施形態にかかる二次電池の模式図である。二次電池10は、例えば、発電素子4と外装体5と電解液(図示略)とを備える。外装体5は、発電素子4の周囲を被覆する。外装体5は、例えば、金属箔5Aを高分子膜(樹脂層5B)で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムである。発電素子4は、接続された一対の端子6によって外部と接続される。電解液は、外装体5内に収容され、発電素子4内に含浸している。
【0050】
発電素子4は、正極2と負極3とセパレータ1とを備える。セパレータ1は、正極2と負極3とに挟まれる。セパレータ1は、例えば、電気絶縁性の多孔質構造を有するフィルムである。セパレータ1は、公知のものを用いることができる。
【0051】
正極2は、正極集電体2Aと正極活物質層2Bとを有する。正極活物質層2Bは、正極集電体2Aの少なくとも一面に形成されている。正極活物質層2Bは、正極集電体2Aの両面に形成されていてもよい。正極集電体2Aは、例えば、導電性の板材である。正極活物質層2Bは、例えば、正極活物質と導電助材とバインダーとを有する。
【0052】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンとカウンターアニオンのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させる。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム(LCO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(NCM)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)である。正極活物質層2Bは、これらの正極活物質を複数含んでもよい。正極活物質は、例えば、LMOで表されるものでもよい。Mは、Co、Ni、Al、Mn、Feからなる群から選択されるいずれか一つの遷移金属元素である。正極活物質は、これらに限られず公知のものを用いることができる。導電助材及びバインダーは公知のものを用いることができる。
【0053】
負極3は、負極集電体3Aと負極活物質層3Bとを有する。負極活物質層3Bは、負極集電体3Aの少なくとも一面に形成されている。負極活物質層3Bは、負極集電体3Aの両面に形成されていてもよい。負極集電体3Aは、例えば、導電性の板材である。負極活物質層3Bは、例えば、正極活物質と導電助材とバインダーとを有する。
【0054】
負極活物質は、イオンを吸蔵・放出可能な化合物であればよく、公知のリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質を使用できる。負極活物質は、例えば、グラファイトである。負極活物質は、金属リチウム、シリコン化合物等でもよい。
【0055】
電解液は、外装体5内に封入され、発電素子4に含浸している。電解液は、公知のものを用いることができる。
【0056】
第1実施形態にかかる電池パック100は、制御装置20によって二次電池10のSOHを適切な値に補正できる。
【0057】
第1実施形態にかかる制御装置20は、Q-dQ/dV曲線における二つの特徴点の間の容量と極値点におけるdQ/dV値との積を利用して、二次電池10のSOHを補正する。二つの特徴点の間の容量は、劣化に伴うQ-dQ/dV曲線の横軸(Q)方向の変化の情報を含む。極値点におけるdQ/dV値は、劣化に伴うQ-dQ/dV曲線の縦軸(dQ/dV)方向の変化の情報を含む。劣化に伴うQ-dQ/dV曲線の形の変化を、異なる2方向の形状変化の情報を有する値を利用して特定することで、二次電池10の劣化状態を正確に把握することができる。
【0058】
図5は、劣化の指標値と二次電池10のSOHとの関係を示した図である。図5に示すaのグラフは、二つの特徴点の間の容量(指標α)のみを劣化の指標値として用いた図である。aのグラフの横軸は容量であり、縦軸はSOHである。aのグラフにおける二つの特徴点は二つの極値点であり、極大点P4と極小点B1である。図5に示すbのグラフは、極値点におけるdQ/dV値(指標β)のみを劣化の指標値として用いた図である。bのグラフの横軸はdQ/dV値であり、縦軸はSOHである。bのグラフにおける極値点は、極小点B1である。図5に示すcのグラフは、二つの特徴点の間の容量(指標α)と極値点におけるdQ/dV値(指標β)との積Xを劣化の指標値として用いた図である。cのグラフの横軸は、二つの特徴点の間の容量とdQ/dV値との積であり、縦軸はSOHである。
【0059】
図5に示すcのグラフは、a及びbのグラフより線形性が高い。図5に示すcのグラフは、劣化の指標値がQ-dQ/dV曲線の横軸(Q)方向の変化の情報、及び、縦軸(dQ/dV)方向の変化の情報を含んでいるためと考えられる。図5に示すaのグラフは、劣化の指標値がQ-dQ/dV曲線の横軸(Q)方向の変化の情報のみを有し、図5に示すbのグラフは、劣化の指標値がQ-dQ/dV曲線の縦軸(dQ/dV)方向の変化の情報のみを有している。
【0060】
また図5に示すcのグラフは、充放電サイクルを0℃で行った低温劣化試験と、充放電サイクルを60℃で行った高温劣化試験とで、同じ回帰直線が引ける。すなわち、劣化の指標値として、二つの特徴点の間の容量(指標α)と極値点におけるdQ/dV値(指標β)との積Xを利用すると、二次電池10を様々な温度条件での使用した場合にも、二次電池10のSOHを正確に推定することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0062】
例えば、二つの特徴点の間の容量に変えて、二つの特徴点と数学的に等価な二つの点の容量を積の算出に用いてもよく、極値点におけるdQ/dV値に変えて、極値点と数学的に等価な点におけるdQ/dV値を積の算出に用いてもよい。ここで「数学的に等価な点」とは、数学的な変換により等価な関係にある点をいう。例えば、Q-dQ/dV曲線は、Q-V曲線を電圧Vで微分したものである。したがって、dQ/dVの極値点のそれぞれは、通常のQ-V曲線における変曲点と数学的に等価である。またQ-dQ/dV曲線は、数学的な変換によりV-dQ/dV曲線に書き換えることもできる。
【0063】
例えば、Q-V曲線において傾きの逆数が、最大または最小となる2つの変曲点を選択し、この2つの変曲点の間の容量を用いて、補正値を算出してもよい。また例えば、Q-V曲線における変曲点の傾きを用いて、補正値を算出してもよい。この場合、校正サンプルにおいて定数A,Bを導出する場合においても、Q-V曲線の変曲点を用いる。この場合、補正の算出に用いる指標が変わるだけであり、二つの特徴点の間の容量とdQ/dV値の積を用いる場合と同様の手順で推定される補正値(SOH)を算出できる。
【0064】
「第2実施形態」
第2実施形態にかかる電池パックは、二点間容量算出手段22における特徴点の選択の仕方が、第1実施形態にかかる電池パックと異なる。その他の構成は、第1実施形態にかかる電池パックと同じであり、同様の構成についての説明は省く。
【0065】
二点間容量算出手段22は、二つの特徴点C1’,C2’間の容量ΔQ’を求める。特徴点C1’の座標を(X1’、Y1’)、特徴点C2の座標を(X2’、Y2’)とすると、容量ΔQ’は|X2’-X1’|である。ΔQ’は、指標αの一例である。
【0066】
二つの特徴点C1’、C2’は、複数の極値点のうちのいずれかの極値点を挟む二点である。二つの特徴点C1’、C2’は、例えば、隣接する2つの極値点のdQ/dV値の差を所定の比率で分割し、dQ/dV値が小さい方の極値点を基準に、所定の比率分だけ縦軸方向にシフトした位置にある。二つの特徴点C1’、C2’は、例えば、特定の極値点と特定の極値点に対して高容量側に隣接する極値点との縦軸方向の中点を通り横軸と平行な直線とQ-dQ/dV曲線とが交差する位置にある。二つの特徴点C1’、C2’の幅は、例えば、一つの極値点の半値幅である。
【0067】
二つの特徴点C1’、C2’に挟まれる極値点は、二次電池の電圧の変化量に対する蓄電量の変化量の割合であるdQ/dVを縦軸とし、前記二次電池の電圧を横軸としたV-dQ/dV曲線において、3.6V以上3.8V以下の電圧範囲に表れる極大点である。図7は、Q-dQ/dV曲線をV-dQ/dV曲線に変換した図である。極大点P2は、3.6V以上3.8V以下の電圧範囲に表れる極大点である。極大点P2は、劣化に伴う変化が大きく、当該点を劣化の指標に用いると、二次電池10のSOHを正確に推定することができる。
【0068】
第2実施形態にかかる電池パックは、第1実施形態にかかる電池パック100と同様の効果が得られる。
【0069】
図8は、劣化の指標値と二次電池10のSOHとの関係を示した図である。図8に示すaのグラフは、二つの特徴点の間の容量(指標α)のみを劣化の指標値として用いた図である。二つの特徴点は、極大点P2を挟む2点であり、極大点P2と極小点B2との間を縦軸方向に3分割し、極小点B2から1/3の高さ位置にある2点である。aのグラフの横軸は容量であり、縦軸はSOHである。図8に示すbのグラフは、極値点におけるdQ/dV値(指標β)のみを劣化の指標値として用いた図である。bのグラフの横軸はdQ/dV値であり、縦軸はSOHである。図8に示すcのグラフは、二つの特徴点の間の容量ΔQ’(指標α)と極値点におけるdQ/dV値(指標β)との積Xを劣化の指標値として用いた図である。
【0070】
aのグラフは回帰直線の決定係数Rが0.784であり、bのグラフは回帰直線の決定係数Rが0.004であるのに対し、cのグラフは回帰直線の決定係数Rが0.934である。すなわち、cのグラフは、a及びbのグラフより線形性が高い。第1実施形態において示したのと同様に、cのグラフは、劣化の指標値がQ-dQ/dV曲線の横軸(Q)方向の変化の情報、及び、縦軸(dQ/dV)方向の変化の情報を含んでいるためと考えられる。
【0071】
またcのグラフは、充放電サイクルを0℃で行った低温劣化試験と、充放電サイクルを60℃で行った高温劣化試験とで、同じ回帰直線が引ける。すなわち、劣化の指標値として、極値点を挟む2点間の容量ΔQ’と極値点におけるdQ/dV値との積Xを利用した場合においても、様々な温度領域で、二次電池10のSOHを正確に推定することができる。
【実施例
【0072】
「実施例1」
実施例1の二次電池としてリチウムイオン二次電池を作製した。まず、正極を準備した。正極活物質としてLiNi0.33Mn0.33Co0.33(NCM)とLiMn(LMO)を混合したもの、導電材としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を準備した。NCMとLMOとの重量比は、8:2とした。これらを溶媒中で混合し、塗料を作製し、アルミ箔からなる正極集電体上に塗布した。正極活物質と導電材とバインダーの質量比は、95:2:3とした。塗布後に、溶媒は除去した。正極活物質の目付量が10.0mg/cmの正極シートを作製した。
【0073】
次いで負極を準備した。負極活物質としてグラファイト、バインダーとしてスチレン・ブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を準備した。これらを蒸留水に分散させ、塗料を作製し、銅箔からなる負極集電体上に塗布した。負極活物質とバインダーおよび増粘剤は質量比で95:3:2とした。塗布後に乾燥させ、負極活物質の目付量が10.0mg/cmの負極シートを作製した。
【0074】
上記で作製した正極および負極と、セパレータを介して積層した。セパレータには、ポリエチレンとポリプロピレンの積層体を用いた。得られた発電部を調製した電解液に含浸させてから外装体内に封入した後、真空シールし、評価用のリチウム二次電池を作製した。電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DEC)が等量混合された溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)1.5mol/Lを溶解させたものとした。
【0075】
リチウム二次電池の充放電サイクルを繰り返しながら、1000サイクル目における実測のSOHと推定のSOHとの差を求めた。充放電サイクルは、0℃の低温環境で行った。
【0076】
1回の充放電の条件は、0.2Cに相当する定電流で、終止電圧4.2Vまで充電し、その後0.2Cに相当する定電流で3.0Vまで放電した。1Cは、電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.2CCとはその1/5の電流値を表す。実測のSOHは、各サイクルの満充電から満放電までの容量を初回の満充電から満放電までの容量で割り、100をかけることで求めた。推測のSOHは、上述の関係式(1)から求められた補正値である。また上述のように、推測のSOHは、Q-V曲線における変曲点を用いて、求められた補正値であってもよい。本実施例は、変曲点をより鮮明に捉えるためにdQ/dVの極値点を用いた。
【0077】
実施例1は、容量ΔQ(指標α)を求める特徴点として極大点P2と極小点B3とを選択し、dQ/dV値(指標β)を求める極値点として極大点P2を用いた。
【0078】
「実施例2~5」
実施例2~5は、容量ΔQを求める2つの極値点及びdQ/dV値を求める極値点の選択が、実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0079】
実施例2は、容量ΔQを求める特徴点として極大点P2と極小点B3とを選択し、dQ/dV値を求める極値点として極大点P3を用いた。
【0080】
実施例3は、容量ΔQを求める特徴点として極大点P2と極小点B3とを選択し、dQ/dV値を求める極値点として極小点B3を用いた。
【0081】
実施例4は、容量ΔQを求める特徴点として極大点P2と極小点B2とを選択し、dQ/dV値を求める極値点として極大点P3を用いた。
【0082】
実施例5は、容量ΔQを求める特徴点として極大点P2と極大点P3とを選択し、dQ/dV値を求める極値点として極大点P3を用いた。
【0083】
「実施例6~8」
実施例6~8は、容量ΔQ’ (指標α)を求める特徴点として特定の極値点を挟む2点を用いた点、及び、dQ/dV値(指標β)を求める極値点の選択が、実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0084】
実施例6は、極大点P2を挟む2点を特徴点として選択し、dQ/dV値を求める極値点として極大点P3を用いた。特徴点は、極大点P2と極小点B2の縦軸方向の中点の高さ位置にある。
【0085】
実施例7は、極大点P2を挟む2点を特徴点として選択し、dQ/dV値を求める極値点として極大点P4を用いた。特徴点は、極大点P2と極小点B2の縦軸方向の中点の高さ位置にある。
【0086】
実施例8は、極大点P3を挟む2点を特徴点として選択し、dQ/dV値を求める極値点として極大点P4を用いた。特徴点は、極大点P3と極小点B3の縦軸方向の中点の高さ位置にある。
【0087】
「比較例1」
比較例1は、補正をおこなわず、積算電流量から推測のSOHを求めた。
【0088】
「比較例2~4」
比較例2~4は、劣化に伴う2つの特徴点間の容量ΔQ(指標α)の変化を用いて、推定のSOHを求めた。2つの特徴点は、いずれも極値点とした。
【0089】
比較例2は、容量ΔQを求める特徴点として極大点P2と極小点B2とを選択し、これらの間の容量を用いて、推定のSOHを求めた。
【0090】
比較例3は、容量ΔQを求める特徴点として極大点P2と極大点P3とを選択し、これらの間の容量を用いて、推定のSOHを求めた。
【0091】
比較例4は、容量ΔQを求める特徴点として極大点P2と極小点B3とを選択し、これらの間の容量を用いて、推定のSOHを求めた。
【0092】
「比較例5,6」
比較例5,6は、劣化に伴う2つの特徴点間の容量ΔQ’ (指標α)の変化を用いて、推定のSOHを求めた。2つの特徴点は、特定の極値点を挟む2点とした。
【0093】
比較例5は、極大点P2を挟む2点を特徴点として選択し、これらの間の容量ΔQ’を用いて、推定のSOHを求めた。特徴点は、極大点P2と極小点B2の縦軸方向の中点の高さ位置にある。
【0094】
比較例6は、極大点P3を挟む2点を特徴点として選択し、これらの間の容量ΔQ’を用いて、推定のSOHを求めた。特徴点は、極大点P3と極小点B3の縦軸方向の中点の高さ位置にある。
【0095】
「比較例7~10」
比較例7~10は、劣化に伴う特定の極値点のdQ/dV値(指標β)の変化を用いて、推定のSOHを求めた。
【0096】
比較例7は、dQ/dV値を求める極値点として特徴点として極大点P2を選択し、極大点P2のdQ/dV値の変化を用いて、推定のSOHを求めた。
【0097】
比較例8は、dQ/dV値を求める極値点として特徴点として極大点P3を選択し、極大点P3のdQ/dV値の変化を用いて、推定のSOHを求めた。
【0098】
比較例9は、dQ/dV値を求める極値点として特徴点として極小点B3を選択し、極小点B3のdQ/dV値の変化を用いて、推定のSOHを求めた。
【0099】
比較例10は、dQ/dV値を求める極値点として特徴点として極大点P4を選択し、極大点P4のdQ/dV値の変化を用いて、推定のSOHを求めた。
【0100】
実施例1~8及び比較例1~10の二次電池のサイクル試験の結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示すように、2つのパラメータの積を用いた実施例1~8は、いずれか一方のパラメータのみを用いた比較例1~10より実測のSOHと推定のSOHとの間の誤差が小さかった。実施例1~8は、劣化によって位置が変化する極値点の縦軸(dQ/dV)方向の変化の情報と、横軸(Q)方向の変化の情報を含んでいるためと考えられる。
【0103】
「実施例9」
実施例9は、容量ΔQを求める2つの極値点及びdQ/dV値を求める極値点の組み合わせを変更して、それぞれの場合における関係式(1)の回帰直線の決定係数Rを求めた。実施例9は、実施例1と同様の二次電池を用いた。回帰直線の決定係数Rが大きいほど、高い線形相関を有する。したがって、決定係数Rが大きいほど、推定のSOHと実測のSOHとの誤差が小さくなると言える。実施例9の結果を表2にまとめる。
【0104】
【表2】
【0105】
(実機検証)
本発明に係るSOH推定過程を制御部(制御装置)に組み込んだ蓄電池を用意した。蓄電池(電池パック)は、制御部と安全機構とを含むバッテリーマネジメントシステムと、10個のリチウムイオン二次電池セルとを中心に構成した。用意した蓄電池に対し、室温で0.2Cのレートで満放電をおこない、その後、室温で0.2Cのレートで満充電をおこない、蓄電池を実使用の初期状態とした。この充電の際に、各電圧におけるdQ/dV値を得てQ-dQ/dV曲線を取得すると共に、制御部のソフトウェア上のSOHを記録した。
【0106】
上記の過程で初期状態となった蓄電池を意図的に劣化させるため、100サイクル充放電工程をおこなった。ここで、100サイクル充放電工程は、以下の要素を少なくとも含む評価工程を有する。
1)45℃の温度環境下において0.5Cのレートで満放電とした後に、0.5Cのレートで満充電をおこなう、というサイクルを100回繰り返す。
2)最後の満放電(すなわち、100サイクル目の満放電)の後に、再び室温で0.2Cのレートでの満充電をおこない、充電時の各電圧におけるdQ/dV値を得てQ-dQ/dV曲線を取得する。
3)得られた100サイクル充放電工程後のQ-dQ/dV曲線と、上記の初期状態におけるQ-dQ/dV曲線と、を比較する。
4-1)極値点形状の変化が認められた場合、蓄電池内のリチウムイオン二次電池に劣化が生じたものと判断して、制御部のソフトウェア上のSOH値を記録する。
4-2)極値点形状の変化が認められなかった場合、ふたたび上記1)~3)の作業を繰り返す。
本実機検証では、この100サイクル充放電工程(上記1)~4-2)の作業)を、初期状態とは異なる三つのQ-dQ/dV曲線と、同じく三つのSOH値と、が得られるまで繰り返した。これにより、リチウムイオン二次電池の三つの劣化状態(以下、第一の劣化状態、第二の劣化状態、第三の劣化状態、という。)におけるそれぞれのQ-dQ/dV曲線とSOH値とを得た。
【0107】
第一の劣化状態のQ-dQ/dV曲線と、第二の劣化状態のQ-dQ/dV曲線と、第三の劣化状態のQ-dQ/dV曲線と、をそれぞれ出力し、二つの特徴点の間の容量と極値点におけるdQ/dV値との積を算出した。得られたそれぞれの積をX軸に、それぞれの劣化状態における制御部から出力されたSOH値をY軸にとり、プロットをおこなったところ、Y=AX+Bの式で表される良好な直線関係が得られた。このことから、本実機検証で用意した蓄電池では、本発明の方法によるSOHの補正が機能していることが確認できた。
【符号の説明】
【0108】
10 二次電池
20 制御装置
21 dQ/dV算出手段
22 二点間容量算出手段
23 強度算出手段
24 積算出手段
25 補正手段
100 電池パック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8