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特許7459934複数のダイアフラム厚さ有する横方向励起フィルムバルク音響共振器及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】複数のダイアフラム厚さ有する横方向励起フィルムバルク音響共振器及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/64 20060101AFI20240326BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20240326BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H03H9/64 Z
H03H3/08
H03H9/25 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022513503
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 US2020045654
(87)【国際公開番号】W WO2021041016
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】62/892,980
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/904,152
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/988,213
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤンチェフ ヴェントシスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド ロバート ビー.
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/138810(WO,A1)
【文献】特開2018-093487(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052129(WO,A1)
【文献】特開2013-214954(JP,A)
【文献】特開2004-096677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基板と、
第1前面及び第1背面を有する単結晶圧電プレートであって、前記第1背面は前記基板の前記表面に取り付けられ、前記単結晶圧電プレートの部分は、前記基板のそれぞれのキャビティにまたがる複数のダイアフラムを形成する、単結晶圧電プレートと、
前記ダイアフラムは、前記単結晶圧電プレートの部分であって、第2前面及び第2背面を有し、
前記第1前面に形成された導体パターンであって、複数の共振器の複数のインターデジタル変換器(IDT)を含む、導体パターンと、
を備える、フィルタデバイスであって、
前記複数のIDTのうち少なくとも第一のIDTのインターリーブされたフィンガが、第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数のIDTのうち少なくとも第二のIDTのインターリーブされたフィンガが、前記第一の厚さよりも小さい第二の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数の共振器は、少なくとも1つのシャント共振器と少なくとも2つの直列共振器とを含み、
前記少なくとも1つのシャント共振器は、前記少なくとも2つの直列共振器間のノードに接続されており、
前記少なくとも1つのシャント共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記ノードに接続される前記少なくとも2つの直列共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第二の厚さを有するダイアフラム上に配置される、
フィルタデバイス。
【請求項2】
表面を有する基板と、
第1前面及び第1背面を有する単結晶圧電プレートであって、前記第1背面は前記基板の前記表面に取り付けられ、前記単結晶圧電プレートの部分は、前記基板のそれぞれのキャビティにまたがる複数のダイアフラムを形成する、単結晶圧電プレートと、
前記ダイアフラムは、前記単結晶圧電プレートの部分であって、第2前面及び第2背面を有し、
前記第1前面に形成された導体パターンであって、複数の共振器の複数のインターデジタル変換器(IDT)を含む、導体パターンと、
を備える、フィルタデバイスであって、
前記複数のIDTのうち少なくとも第一のIDTのインターリーブされたフィンガが、第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数のIDTのうち少なくとも第二のIDTのインターリーブされたフィンガが、前記第一の厚さよりも小さい第二の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数の共振器は、複数のシャント共振器と複数の直列共振器とを含み、
全ての前記シャント共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
全ての前記直列共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第二の厚さを有するダイアフラム上に配置される、
フィルタデバイス。
【請求項3】
前記複数のIDTのうちの1つ又は複数のインターリーブされたフィンガが、前記第一の厚さと前記第二の厚さの中間の他の厚さを有するそれぞれのダイアフラムに配置される、請求項1又は2に記載のフィルタデバイス。
【請求項4】
前記複数のダイアフラムが、
前記第一の厚さを有する少なくとも1つのダイアフラムと、
前記第二の厚さを有する少なくとも1つのダイアフラムと、
前記第一の厚さと前記第二の厚さの中間の1つ又は複数の追加厚さを有する1つ又は複数のダイアフラムと、
を備える、請求項1又は2に記載のフィルタデバイス。
【請求項5】
前記単結晶圧電プレート及び全てのIDTは、各IDTに印加されるそれぞれの無線周波数信号が、それぞれの前記ダイアフラム内のそれぞれの剪断一次音響モードを励起するように構成される、請求項1又は2に記載のフィルタデバイス。
【請求項6】
全ての前記剪断一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、それぞれの前記ダイアフラムの前記第2前面及び前記第2背面に実質的に直交している、請求項5に記載のフィルタデバイス。
【請求項7】
前記単結晶圧電プレートがニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのいずれかである、請求項5に記載のフィルタデバイス。
【請求項8】
前記第二の厚さが200nm以上であり、
前記第一の厚さが1000nm以下である、請求項1又は2に記載のフィルタデバイス。
【請求項9】
前記複数のIDTのそれぞれは、それぞれのキャビティにまたがるそれぞれのダイアフラム上に配置される、請求項1又は2に記載のフィルタデバイス。
【請求項10】
フィルタデバイスの製造方法であって、
対向する第1前面及び第1背面並びに第一の厚さを有する単結晶圧電プレートの前記第1背面を基板の表面に貼り付けるステップと、
前記単結晶圧電プレートの部分を前記第一の厚さから前記第一の厚さよりも小さい第二の厚さまで選択的に薄くするステップと、
前記基板にキャビティを形成するステップであって、単結晶圧電プレートの部分がそれぞれのキャビティにまたがる複数のダイアフラムであって、前記ダイアフラムは、前記単結晶圧電プレートの部分であって、第2前面及び第2背面を有するダイアフラムを形成するようにする、ステップと、
前記第1前面に導体パターンを形成するステップであって、前記導体パターンは複数の共振器の複数のインターデジタル変換器(IDT)を含む、ステップと、
を含み、
前記複数のIDTのうち少なくとも第一のIDTのインターリーブされたフィンガが、前記第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数のIDTのうち少なくとも第二のIDTのインターリーブされたフィンガが、前記第一の厚さよりも小さい第二の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数の共振器は、少なくとも1つのシャント共振器と少なくとも2つの直列共振器とを含み、
前記少なくとも1つのシャント共振器は、前記少なくとも2つの直列共振器間のノードに接続されており、
前記少なくとも1つのシャント共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記ノードに接続される前記少なくとも2つの直列共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第二の厚さを有するダイアフラム上に配置される、
製造方法。
【請求項11】
フィルタデバイスの製造方法であって、
対向する第1前面及び第1背面並びに第一の厚さを有する単結晶圧電プレートの前記第1背面を基板の表面に貼り付けるステップと、
前記単結晶圧電プレートの部分を前記第一の厚さから前記第一の厚さよりも小さい第二の厚さまで選択的に薄くするステップと、
前記基板にキャビティを形成するステップであって、単結晶圧電プレートの部分がそれぞれのキャビティにまたがる複数のダイアフラムであって、前記ダイアフラムは、前記単結晶圧電プレートの部分であって、第2前面及び第2背面を有するダイアフラムを形成するようにする、ステップと、
前記第1前面に導体パターンを形成するステップであって、前記導体パターンは複数の共振器の複数のインターデジタル変換器(IDT)を含む、ステップと、
を含み、
前記複数のIDTのうち少なくとも第一のIDTのインターリーブされたフィンガが、前記第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数のIDTのうち少なくとも第二のIDTのインターリーブされたフィンガが、前記第一の厚さよりも小さい第二の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
前記複数の共振器は、複数のシャント共振器と複数の直列共振器とを含み、
全ての前記シャント共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第一の厚さを有するダイアフラム上に配置され、
全ての前記直列共振器の前記IDTの前記フィンガは、前記第二の厚さを有するダイアフラム上に配置される、
製造方法。
【請求項12】
前記単結晶圧電プレートの追加部分を選択的に薄くして、前記第一の厚さと前記第二の厚さの中間の第三の厚さにするステップをさらに含み、
前記複数のIDTのうち少なくとも第三のIDTのインターリーブされたフィンガが、前記第三の厚さを有するダイアフラム上に配置される、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記単結晶圧電プレートの追加部分を選択的に薄くして、前記第一の厚さと前記第二の厚さの中間の1つ又は複数の追加厚さにするステップをさらに含む、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記単結晶圧電プレート及び全てのIDTは、各IDTに印加されるそれぞれの無線周波数信号が、それぞれの前記ダイアフラム内のそれぞれの剪断一次音響モードを励起するように構成される、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項15】
全ての前記剪断一次音響モードの音響エネルギーの流れの方向が、それぞれの前記ダイアフラムの前記第2前面及び前記第2背面に実質的に直交している、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記単結晶圧電プレートがニオブ酸リチウム及びタンタル酸リチウムのいずれかである、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第二の厚さが200nm以上であり、
前記第一の厚さが1000nm以下である、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項18】
前記複数のIDTのそれぞれは、それぞれのキャビティにまたがるそれぞれのダイアフラム上に配置される、請求項10又は11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響波共振器を用いた高周波フィルタに関し、特に通信機器に使用されるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)フィルタは、一部の周波数を通過させ、他の周波数を停止させるように構成された2ポートデバイスであり、「通過」は比較的低い信号損失で送信することを意味し、「停止」はブロックすること又は大幅に減衰させることを意味する。フィルタを通過する周波数の範囲は、フィルタの「通過帯域」と呼ばれる。このようなフィルタによって停止される周波数の範囲は、フィルタの「阻止帯域」と呼ばれる。一般的なRFフィルタは、少なくとも1つの通過帯域と、少なくとも1つの阻止帯域を有する。通過帯域又は阻止帯域の特定の要件は、特定の用途に依存する。例えば、「通過帯域」は、フィルタの挿入損失が1dB、2dB、又は3dBなどの定義された値よりも優れている周波数範囲として定義され得る。「阻止帯域」は、フィルタの拒否が用途に応じて20dB、30dB、40dB、又はそれ以上などの定義された値よりも大きい周波数範囲として定義され得る。
【0003】
RFフィルタは、情報が無線リンクを介して送信される通信システムで使用される。例えば、RFフィルタは、セルラーベースステーション、携帯電話及びコンピューティングデバイス、衛星トランシーバ及び地上局、IoT(Internet of Things)デバイス、ラップトップコンピュータ及びタブレット、固定ポイント無線リンク、及び他の通信システムのRFフロントエンドにあり得る。RFフィルタは、レーダ、電子及び情報戦システムでも使用される。
【0004】
RFフィルタは、通常、特定の用途ごとに、挿入損失、拒否、絶縁、電力処理、直線性、サイズ及びコストなどの性能パラメータ間の最良の妥協点を実現するために多くの設計上のトレードオフを必要とする。特定の設計及び製造方法と機能強化は、これらの要件の1つ又は複数を同時に実現できる。
【0005】
無線システムにおけるRFフィルタの性能の向上は、システム性能に幅広い影響を与える可能性がある。RFフィルタの改善を活用して、セルサイズの拡大、バッテリ寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、コストの削減、セキュリティの強化、信頼性の向上などのシステム性能の改善を実現できる。これらの改善は、無線システムの多くのレベルで、例えば、RFモジュール、RFトランシーバ、モバイル又は固定サブシステム、又はネットワークレベルなどで、個別に又は組み合わせて実現できる。
【0006】
通信チャネルの帯域幅をより広くしたいという要望は、必然的に高い周波数の通信帯域を使用することになる。現在のLTETM(Long Term Evolution)(登録商標)仕様では、3.3GHz~5.9GHzの周波数帯域が定義されている。これらの帯域は、現在使用されてない。無線通信の将来の提案では、最大28GHzの周波数のミリ波通信帯域が含まれている。
【0007】
現在の通信システム用の高性能RFフィルタは、一般に、弾性表面波(SAW)共振器、バルク音響波(BAW)共振器、フィルムバルク音響波共振器(FBAR)、及びその他のタイプの音響共振器を含む音響波共振器を組み込んでいる。しかしながら、これらの既存技術は、将来の通信ネットワークで提案されているより高い周波数及び帯域幅での使用には適していない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)の概略平面図及び2つの概略断面図を含む。
図2図1のXBARの一部分の概略拡大断面図である。
図3図1のXBARの代替の概略断面図である。
図4】XBARにおける剪断音響モードを示す図である。
図5】7つのXBARを組み込んだバンドパスフィルタの概略ブロック図である。
図6A】シャント共振器と直列共振器との間の周波数分離を設定するために、誘電体層を有するフィルタの概略断面図である。
図6B】シャント共振器と直列共振器の間の周波数分離を設定するために、異なる圧電ダイアフラム厚さを有するフィルタの概略断面図である。
図7】圧電ダイアフラムの厚さを制御するためのプロセスを示す一連の概略断面図である。
図8】XBARを用いて実装されたフィルタを製造するためのプロセスのフローチャートである。
図9】XBARを用いて実装されたフィルタを製造するための別のプロセスのフローチャートである。
図10】XBARを用いて実装されたフィルタを製造するための別のプロセスのフローチャートである。
図11】XBARを用いて実装されたフィルタを製造するための別のプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この説明全体を通して、図に表示される要素には、3桁又は4桁の参照番号が割り当てられる。ここで、下2桁は要素に固有であり、上1桁又は上2桁は要素が最初に導入された図番号である。図と共に説明されていない要素は、同じ参照番号を有する前述の要素と同じ特性及び機能を有すると推定され得る。
【0010】
(装置の説明)
図1は、横方向励起フィルムバルク音響共振器(XBAR)100の簡略化された概略上面図及び直交断面図を示す。共振器100などのXBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、及びマルチプレクサを含む様々なRFフィルタで使用し得る。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタでの使用に特に適している。
【0011】
XBAR100は、それぞれ平行な前面112及び背面114を有する圧電プレート110の1つの面上に形成された薄膜導体パターンから構成される。圧電プレートは、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ酸ランタンガリウム、窒化ガリウム、又は窒化アルミニウムなどの圧電材料の薄い単結晶層である。圧電プレートは、前面と背面に対するX、Y、Z結晶軸の方向が既知で一貫しているようにカットされる。この特許で提示されている例では、圧電プレートはZカットされている。つまり、Z軸は表面に垂直である。しかしながら、XBARは、他の結晶学的配向を有する圧電プレート上に製造されてもよい。
【0012】
圧電プレート110の背面114は、圧電プレート110に機械的支持を提供する基板120に取り付けられている。基板120は、例えば、シリコン、サファイア、石英、又は他の何らかの材料であり得る。圧電プレート110は、ウェーハボンディングプロセスを用いて基板に結合しても、基板120上に成長させもて、あるいは他の何らかの方法で基板に取り付けてもよい。圧電プレート110は、基板に直接取り付けても、あるいは1つ又は複数の中間材料層を介して基板に取り付けてもよい。
【0013】
XBAR100の導体パターンは、インターデジタル変換器(IDT)130を含む。IDT130は、第一のバスバー132から延びるフィンガ136などの第一の複数の平行なフィンガと、第二のバスバー134から延びる第二の複数のフィンガとを含む。第一及び第二の複数の平行なフィンガは、インターリーブされている。インターリーブされたフィンガは、一般にIDTの「アパーチャ」と呼ばれる距離APにわたってオーバーラップする。IDT130の最も外側のフィンガ間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。
【0014】
第一及び第二のバスバー132、134は、XBAR100の第一の端子として機能する。IDT130の2つのバスバー132、134の間に印加される無線周波数又はマイクロ波信号は、圧電プレート110内の音波を励起する。以下で詳述するように、励起音響波は、圧電プレート110の表面に直交する方向に沿って伝播するバルク剪断波であり、これはまた、IDTフィンガによって生成された電界の方向に垂直又は横方向である。したがって、XBARは、横方向励起フィルムバルク波共振器と見なされる。
【0015】
IDT130を含む圧電プレート110の一部分が、基板120に接触することなくキャビティ125上に懸架されるように、キャビティ140が基板120内に形成される。「キャビティ」は、「中実体内の空の空間」という従来の意味を有する。キャビティ140は、基板120を完全に貫通する穴(断面A-A及び断面B-Bに示されるように)又は基板120の凹部(以下の図3に示すように)であり得る。キャビティ140は、例えば、圧電プレート110及び基板120が取り付けられる前又は後に、基板120を選択的にエッチングすることによって形成され得る。図1に示すように、キャビティ140は、IDT130のアパーチャAP及び長さLよりも広い範囲を有する長方形の形状を有する。XBARのキャビティは、規則的なポリゴンや不規則なポリゴンなど、様々な形状を有してもよい。XBARのキャビティは、辺の数が4つより多くても、少なくてもよく、それらの辺は直線であっても、曲線であってもよい。
【0016】
キャビティ140上に懸架された圧電プレートの一部分115は、マイクロフォンのダイアフラムに物理的に類似しているので、本明細書では「ダイアフラム」(より良い用語がないため)と呼ばれる。キャビティ140の全周囲又はほぼ全周囲の周りで圧電プレート110の残りの部分に連続的でシームレスに接続することができる。
【0017】
図1の提示を容易にするために、IDTフィンガの幾何学的ピッチ及び幅は、XBARの長さ(寸法L)及びアパーチャ(寸法AP)に関して著しく誇張されている。一般的なXBARは、IDT110に10を超える平行なフィンガを有する。XBARは、IDT110に数百、場合によっては数千の平行なフィンガを有することがある。同様に、断面図のフィンガの太さも著しく誇張されている。
【0018】
図2は、図1のXBAR100の詳細な概略断面図を示す。圧電プレート110は、厚さtsを有する圧電材料の単結晶層である。tsは、例えば、100nm~1500nmであり得る。3.4GHz~6GHzのLTETMバンド(例えば、バンド42、43、46)のフィルタで使用する場合、厚さtsは、例えば、200nm~1000nmであり得る。
【0019】
前面誘電体層214は、圧電プレート110の前面に任意選択で形成され得る。XBARの「前面」は、定義上、基板とは反対側を向いている表面である。前面誘電体層214は、厚さtfdを有する。前面誘電体層214は、IDTフィンガ238の間に形成される。図2には示されていないが、前面誘電体層214は、またIDTフィンガ238上に堆積されてもよい。背面誘電体層216は、圧電プレート110の背面に任意選択で形成され得る。背面誘電体層216は、厚さtbdを有する。前面誘電体層214及び背面誘電体層216は、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの非圧電誘電体材料であってもよい。tfd及びtbdは、例えば、0~500nmであり得る。tfd及びtbdは、通常、圧電プレートの厚さtsよりも小さい。tfd及びtbdは、必ずしも等しくなく、前面誘電体層214及び背面誘電体層216は、必ずしも同じ材料である必要はない。前面誘電体層214及び背面誘電体層216の一方又は両方は、2つ以上の材料の複数の層から形成され得る。
【0020】
IDTフィンガ238は、アルミニウム又は実質的にアルミニウム合金、銅又は実質的に銅合金、ベリリウム、金、又は何らかの他の導電性材料であり得る。フィンガと圧電プレート110との間の接着を改善するために、及び/又はフィンガを不動態化又はカプセル化するために、クロム又はチタンなどの他の金属の薄い(導体の総厚に対して)層をフィンガの下及び/又は上に形成することができる。IDTのバスバー(図1の132、134)は、フィンガと同じ材料又は異なる材料で製造することができる。
【0021】
寸法pは、IDTフィンガの中心間の間隔又は「ピッチ」であり、これはIDTのピッチ及び/又はXBARのピッチと呼ばれる場合がある。寸法wは、IDTフィンガの幅又は「マーク」である。XBARのIDTは、表面音響波(SAW)共振器で使用されるIDTとは実質的に異なる。SAW共振器では、IDTのピッチは、共振周波数での音響波長の半分である。さらに、SAW共振器IDTのマーク対ピッチ比は、典型的には、0.5に近い(つまり、マーク又はフィンガの幅は、共振時の音響波長の約4分の1である)。XBARでは、IDTのピッチpは、フィンガの幅wの2~20倍であり得る。さらに、IDTのピッチpは、典型的には、圧電スラブ212の厚さtsの2~20倍である。XBARのIDTフィンガの幅は、共振時の音響波長の4分の1に制限されない。例えば、XBARのIDTフィンガの幅は500nm以上であり得るので、IDTは光学リソグラフィーを使用して製造することができる。IDTフィンガの厚さは、100nmから幅wにほぼ等しい値まであり得る。IDTのバスバー(図1の132、134)の厚さは、IDTフィンガの厚さと同じであっても、それより大きくてよい。
【0022】
図3は、図1で定義された断面A-Aに沿った代替の断面図を示す。図3Aでは、圧電プレート310が基板320に取り付けられている。オプションの誘電体層322が、圧電プレート310と基板320との間に挟まれていることもある。基板320を完全には貫通しないキャビティ340が、XBARのIDTを含む圧電プレート310の部分の下で基板に形成される。キャビティ340は、例えば、圧電プレート310を取り付ける前に基板320をエッチングすることによって形成され得る。あるいは、キャビティ340は、圧電プレート310に設けられた1つ又は複数の開口部を通って基板に到達する選択的エッチャントで基板320をエッチングすることによって形成され得る。
【0023】
図3に示されるXBAR300は、(圧電プレート310を取り付ける前又は後に)キャビティ340が基板320の前側からエッチングされるので、本明細書では「前側エッチング」構成と呼ばれる。図1のXBAR100は、圧電プレート110を取り付けた後、キャビティ140が基板120の裏側からエッチングされるので、本明細書では「裏側エッチング」構成と呼ばれる。
【0024】
XBARにおいて関心のある主要な音響モードの図解である。図4は、圧電プレート410及び3つのインターリーブされたIDTフィンガ430を含むXBAR400の小さな部分を示す。RF電圧は、インターリーブされたフィンガ430に印加される。この電圧は、フィンガ間に時間とともに変化する電界を生成する。「電界」とラベル付けされた矢印によって示されるように、電界の方向は、圧電プレート410の表面に対して横方向、又は平行である。圧電プレートの誘電率が高いので、電界は、空気に比べてプレートに非常に集中する。横方向電界は、圧電プレート410において剪断変形を導入し、したがって剪断モード音響モードを強く励起する。この文脈では、「剪断変形」は、材料内の平行な平面が平行のままであり、相互に平行移動しながら一定の距離を維持する変形として定義される。「剪断音響モード」は、媒体の剪断変形をもたらす媒体内の音波として定義される。XBAR400の剪断変形は、曲線460によって表され、隣接する小さな矢印は、原子運動の方向及び大きさの概略的な表示を提供する。原子運動の程度と、圧電プレート410の厚さとは、視覚化を容易にするために著しく誇張されている。原子運動は主に横方向(すなわち、図4に示されるように水平)であるが、励起された一次剪断音響モードの音響エネルギーの流れの方向は、矢印465によって示されるように、圧電プレートの表面に実質的に垂直である。
【0025】
図4を考慮すると、IDTフィンガ430の直下には本質的に電界がなく、したがって、音響モードは、フィンガの下の領域470において最小限にのみ励起される。これらの領域では、エバネセントな音響運動が発生する可能性がある。音響振動はIDTフィンガ430の下で励起されないので、IDTフィンガ430に結合される音響エネルギーは低く(例えば、SAW共振器内のIDTのフィンガと比較して)、これはIDTフィンガにおける粘性損失を最小限に抑える。
【0026】
剪断音響波共振に基づく音響共振器は、現在の最先端のフィルムバルク音響共振器(FBAR)及び、厚さ方向に電界を印加するソリッドマウント共振器バルク音響波(SMR BAW)デバイスよりも優れた性能を達成できる。このようなデバイスでは、音響モードは、原子運動と厚さ方向の音響エネルギーの流れの方向とで圧縮される。さらに、剪断波XBAR共振の圧電結合は、他の音響共振器と比較して高くなることがある(>20%)。したがって、高い圧電結合により、かなりの帯域幅を有するマイクロ波及びミリ波フィルタの設計と実装が可能になる。
【0027】
図5は、XBARを使用する高周波バンドパスフィルタ500の概略回路図である。フィルタ500は、4つの直列共振器510A、510B、510C、510D及び3つのシャント共振器520A、520Bを含む従来のラダーフィルタアーキテクチャを有する。4つの直列共振器510A、510B、510C、及び510Dは、第一のポートと第二のポートとの間に直列に接続されている。図5に示すように、第一及び第二のポートは、それぞれ「イン」及び「アウト」とラベル付けされている。しかしながら、フィルタ500は対称であり、いずれのポートもフィルタの入力又は出力として機能する。3つのシャント共振器520A、520B、510Cは、直列共振器間のノードから接地に接続されている。全てのシャント共振器及び直列共振器は、XBARである。図5には示されていないが、全ての共振器は、電気的に並列に接続された複数のサブ共振器に分割されてもよい。各サブ共振器は、それぞれのダイアフラムを備えてもよい。
【0028】
フィルタ500は、表面を有する基板と、平行な前面及び背面を有する単結晶圧電プレートと、基板の表面と単結晶圧電プレートの背面との間に挟まれた音響ブラッグ反射器とを含んでもよい。基板、音響ブラッグ反射器、及び圧電プレートは、図5の矩形510で表される。単結晶圧電プレートの前面に形成された導体パターンは、4つの直列共振器510A、510B、510C、510D及び3つのシャント共振器520A、520B、520Cのそれぞれのためのインターデジタル変換器(IDT)を含む。IDTの全ては、各IDTに印加されるそれぞれの無線周波数信号に応答して、単結晶圧電プレートに剪断音響波を励起するように構成される。
【0029】
フィルタ500のようなラダーフィルタにおいて、シャント共振器の共振周波数は、典型的には、直列共振器の共振周波数よりも低い。SM XBAR共振器の共振周波数は、部分的にはIDTのピッチによって決定される。また、IDTのピッチは、インピーダンス及びパワーハンドリング能力など、他のフィルタパラメータにも影響を与える。広帯域のフィルタ用途では、IDTピッチの違いだけで、並列共振器と直列共振器の共振周波数に必要な差を設けることは現実的ではないことがある。
【0030】
米国特許第10,601,392号明細書に記載されているように、第一の厚さt1を有する第一の誘電体層(破線の長方形525によって表される)は、シャント共振器520A、520B、520Cの一部又は全部のIDTの上に堆積されてもよい。t1よりも小さい第二の厚さt2を有する第二の誘電体層(破線の長方形515によって表される)は、直列共振器510A、510B、510C、510DのIDTの上に堆積されてもよい。第二の誘電体層は、シャント共振器及び直列共振器の両方の上に堆積されてもよい。厚さt1と厚さt2との間の差は、直列共振器と分流共振器との間の周波数オフセットを規定する。個々の直列共振器又は分流共振器は、それぞれのIDTのピッチを変えることによって、異なる周波数に同調させることができる。一部のフィルタでは、同時係属出願第16/924,108号明細書に記載されているように、異なる厚さの2つ以上の誘電体層が使用される場合がある。
【0031】
代替又は追加として、シャント共振器510A、510B、510C、510Dは、厚さt3を有する圧電プレート上に形成されてもよく、直列共振器は、t3より小さい厚さt4を有する圧電プレート上に製造されてもよい。厚さt3とt4との差は、直列共振器と分流共振器との間の周波数オフセットを規定する。個々の直列共振器や分路共振器は、それぞれのIDTのピッチを変えることによって、異なる周波数にチューニングすることができる。一部のフィルタでは、3つ以上の異なる圧電プレートの厚さを使用して、追加の周波数チューニング能力を提供することができる。
【0032】
図6Aは、シャント共振器と直列共振器の周波数を分離するために、誘電体厚さを使用するフィルタ600Aのシャント共振器及び直列共振器に関する概略断面図である。圧電プレート610Aは、基板620に取り付けられている。圧電プレートの部分は、基板620のキャビティ640にまたがるダイアフラムを形成する。フィンガ630のようにインターリーブされたIDTフィンガが、ダイアフラム上に形成されている。厚さt1を有する第一の誘電体層650は、シャント共振器のIDTの上に形成される。厚さt2を有する第二の誘電体層655は、シャント共振器及び直列共振器の両方の上に堆積される。代替として、厚さt1+t2を有する単一の誘電体層を、シャント共振器及び直列共振器の両方の上に堆積してもよい。直列共振器上の誘電体層は、その後、マスク乾式エッチングプロセスを使用して、厚さt2まで薄くしてもよい。いずれの場合も、シャント共振器上の誘電体層の全体厚さ(t1+t2)と第二の誘電体層の厚さt2との間の差が、直列共振器とシャント共振器との間の周波数オフセットを規定する。
【0033】
第二の誘電体層655は、フィルタ600Aの表面を封止し、不動態化する役割も果たすことができる。第二の誘電体層は、第一の誘電体層と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。第二の誘電体層は、異なる材料の2つ以上のサブ層の積層体であってもよい。代替として、追加の誘電体パッシベーション層(図6Aには図示せず)が、フィルタ600Aの表面上に形成されてもよい。さらに、後述するように、最終誘電体層(すなわち、第二の誘電体層655又は追加の誘電体層のいずれか)の厚さは、フィルタ600Aの周波数を微細にチューニングするために、局所的にチューニングされてもよい。したがって、最終誘電体層は、「パッシベーション及びチューニング層」と呼ぶことができる。
【0034】
図6Bは、圧電プレートの厚さを利用してシャント共振器と直列共振器の周波数を分離するフィルタ600Bのシャント共振器と直列共振器を示す概略断面図である。圧電プレート610Bは、基板620に取り付けられている。圧電プレートの部分は、基板620のキャビティ640にまたがるダイアフラムを形成する。フィンガ630のようにインターリーブされたIDTフィンガがダイアフラム上に形成される。シャント共振器のダイアフラムは、厚さt3を有する。圧電プレート610Bは、直列共振器の振動板がt3よりも小さい厚さt4を有するように、選択的に薄くされる。t3とt4との差は、直列共振器と分流共振器との間の周波数オフセットを規定する。パッシベーション及びチューニング層655は、シャント共振器及び直列共振器の両方の上に堆積される。
【0035】
(方法の説明)
図7は、圧電ダイアフラムの厚さを制御するためのプロセスを示す一連の概略断面図である。ビューAは、基板720に結合された不均一な厚さを有する圧電プレート710を示している。圧電プレート710は、例えば、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムであり得る。基板720は、シリコン、又は前述したような何らかの他の材料であり得る。圧電プレート710の図示された厚さの変化は、著しく誇張されている。厚さの変化は、圧電プレートの厚さの10%を超えてはならず、数%以下のこともある。
【0036】
ビューBは、光源732及び検出器734を含む光学的厚さ測定ツール730を用いた圧電プレート厚さの光学的測定を示す。光学的厚さ測定ツール730は、例えば、エリプソメータ/反射率計であってもよい。光学的厚さ測定ツール730は、圧電プレート710の表面から、及び圧電プレート710と基板720との間の界面から反射された光を測定する。圧電プレート上の特定の測定点からの反射光は、複数の光の波長、入射角、及び/又は偏光状態を用いて測定されてもよい。複数の測定結果は、測定点における圧電プレートの厚さを決定するために処理される。
【0037】
測定プロセスを繰り返して、圧電プレートの表面上の複数の測定点で圧電プレートの厚さを決定する。複数の点は、例えば、プレートの表面上の測定点のグリッド又はマトリックスを形成してもよい。測定データは、圧電プレートの厚さのマップを提供するために処理され、補間され得る。
【0038】
ビューCは、材料除去ツールを使用して圧電プレートから過剰な材料を除去することを示す。この文脈では、「過剰な材料」は、プレートの目標厚さを超えて延びる圧電プレートの部分として定義される。除去されるべき過剰な材料は、ビューCで陰影が付けられている。材料除去ツールは、例えば、走査型イオンミル740、フッ素ベースの反応性イオンエッチングを採用したツール、又は他の何らかのツールであってもよい。走査型イオンミル740は、高エネルギーイオンのビーム745を圧電プレートの表面上に走査させる。イオンビーム745の圧電プレートへの入射により、昇華又はスパッタリングによって表面の材料を除去する。イオンビーム745は、ラスターパターンで圧電プレートの表面上を1回又は複数回走査されてもよい。イオンビーム745のイオン電流又は滞在時間をラスター走査中に変化させ、圧電プレートの厚さのマップに従って圧電プレート上の各点から除去される材料の深さを制御することができる。その結果、ビューDに示すように、厚さの均一性が実質的に改善された圧電プレートが得られる。圧電プレート上の任意の点における厚さは、プレートの目標厚さに実質的に等しくてもよい。ここで「実質的に等しい」とは、測定精度及び材料除去ツールの能力によって制限されるように、可能な限り等しいという意味である。
【0039】
ビューEは、圧電プレートの選択された部分を薄くするための選択的除去を示す。圧電プレートの選択された部分は、例えば、先に図5Bに示されたような直列共振器のためのダイアフラムを提供するために薄くされることがある。圧電プレートの選択された部分は、ツールが圧電プレートの薄くされるべき領域を区別するのに十分な空間分解能を有する場合、走査型イオンミル又は他の走査材料除去ツールを用いて薄くされてもよい。代替として、走査型又は非走査型材料除去ツール750又はエッチングプロセスを用いて、マスク752によって画定された圧電プレートの表面の部分から材料を除去してもよい。その結果、ビューFに示すように、直列共振器のダイアフラムに適した低減された厚さ領域760を有する圧電プレートが得られる。
【0040】
図8は、XBARを組み込んだフィルタを製造するためのプロセス800を示す簡略化されたフローチャートである。具体的には、プロセス800は、図7Aに示すように、シャント共振器上に周波数設定誘電体層を使用して、フィルタデバイスを製造するためのものである。プロセス800は、805でデバイス基板と、犠牲基板上に配置された圧電材料の薄いプレートとから開始される。プロセス800は、895で、完成したフィルタデバイスで終了する。図8のフローチャートには、主要なプロセスステップのみが含まれている。様々な従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、監視、試験など)は、図8に示されるステップの前、間、後、及び最中に実行され得る。
【0041】
図8は、一般に、単一のフィルタデバイスを製造するためのプロセスを説明しているが、複数のフィルタデバイスは、(基板に結合された圧電プレートからなる)共通のウェーハ上に同時に製造され得る。この場合、プロセス800の各ステップは、ウェーハ上の全てのフィルタデバイス上で同時に実行され得る。
【0042】
図8のフローチャートは、デバイス基板にいつ、どのようにキャビティを形成するかが異なるXBARを製造するためのプロセス800の3つの変形例を捕らえている。キャビティは、ステップ810A、810B、又は810Cで形成されてもよい。これらのステップのうちの1つだけが、プロセス800の3つの変形例のそれぞれにおいて実行される。
【0043】
圧電プレートは、例えば、ニオブ酸リチウムであっても、タンタル酸リチウムであってもよく、そのいずれもが、Zカット、回転Zカット、又は回転YXカットであってもよい。圧電プレートは、何らかの他の材料及び/又は何らかの他のカットであり得る。デバイス基板は、好ましくはシリコンであり得る。デバイス基板は、エッチング又は他の処理によって深いキャビティの形成を可能にする何らかの他の材料であり得る。
【0044】
プロセス800の変形例では、815で圧電プレートが基板に結合される前に、810Aで、1つ又は複数のキャビティがデバイス基板に形成される。フィルタデバイスの各共振器に対して別個のキャビティが形成されてもよい。1つ又は複数のキャビティは、従来のフォトリソグラフィー及びエッチング技術を使用して形成することができる。典型的には、810Aで形成されたキャビティは、デバイス基板を貫通せず、その結果として得られる共振器デバイスは、図3に示すような断面を有する。
【0045】
815で、圧電プレートがデバイス基板に結合される。圧電プレートとデバイス基板とは、ウェーハボンディングプロセスによって結合され得る。典型的には、デバイス基板と圧電プレートとの合わせ面は、高度に研磨されている。酸化物又は金属などの中間材料の1つ又は複数の層が、圧電プレート及びデバイス基板の一方又は両方の合わせ面上に形成又は堆積され得る。一方又は両方の合わせ面は、例えば、プラズマ処理を使用して活性化し得る。次に、圧電プレートとデバイス基板又は中間材料層との間に分子結合を確立するために、合わせ面をかなりの力で一緒に押圧し得る。
【0046】
820で、犠牲基板を除去することができる。例えば、圧電プレートと犠牲基板は、圧電プレートとなるものと犠牲基板との間の境界を定義する平面に沿って結晶構造に欠陥を作り出すためにイオン注入された圧電材料のウェーハであり得る。820で、ウェーハは、例えば熱衝撃によって欠陥面に沿って分割され得、犠牲基板を分離し、圧電プレートをデバイス基板に結合したままにする。圧電プレートの露出表面は、犠牲基板が取り外された後、何らかの方法で研磨又は処理することができる。
【0047】
非圧電基板に積層された単結晶圧電材料の薄いプレートは、市販されている。本出願の時点では、ニオブ酸リチウムとタンタル酸リチウムの両方のプレートが、シリコン、石英、及び溶融シリカを含む様々な基板に結合されて利用可能である。他の圧電材料の薄いプレートは、現在又は将来的に利用できるようになる可能性がある。圧電プレートの厚さは、300nm~1000nmの間である。基板がシリコンの場合、圧電プレートと基板との間にSiOの層が配置されてもよい。市販の圧電プレート/デバイス基板積層体が使用される場合、プロセス800のステップ810A、815、及び820は実行されない。
【0048】
各XBARのIDTを含む第一の導体パターンは、圧電プレートの前面側に1つ又は複数の導体層を堆積して、パターン化することによって845で形成される。導体層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、又は何らかの他の導電性金属であってもよい。任意選択で、他の材料の1つ又は複数の層が、導体層の下(すなわち、導体層と圧電プレートの間)及び/又は導体層の上に配置されてもよい。例えば、チタン、クロム、又は他の金属の薄膜を使用して、導体層と圧電プレートとの間の接着を改善してもよい。第一の導体パターンの部分(例えばIDTバスバーやIDT間の相互接続部)の上に、金、アルミニウム、銅又は他の導電性の高い金属による第二の導体パターンを形成してもよい。
【0049】
各導体パターンは、圧電プレートの表面上に導体層と、任意選択で、1つ又は複数の他の金属層を順に堆積させることによって、845で形成されてもよい。その後、過剰な金属は、パターン化されたフォトレジストを介してエッチングすることによって除去されてもよい。導体層は、例えば、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、湿式化学エッチング、又は他のエッチング技術によってエッチングすることができる。
【0050】
あるいは、各導体パターンは、リフトオフプロセスを使用して845で形成されてもよい。フォトレジストは、圧電プレート上に堆積され、導体パターンを規定するようにパターン化されてもよい。導体層と、任意選択で、1つ又は複数の他の層とを、圧電プレートの表面上に順に堆積させてもよい。その後、フォトレジストを除去して、これにより、過剰な材料を除去し、導体パターンを残してもよい。
【0051】
850で、1つ又は複数の周波数設定誘電体層が、圧電プレートの前面上に誘電体材料の1つ又は複数の層を堆積させることによって形成されてもよい。例えば、誘電体層は、シャント共振器の上に形成して、直列共振器の周波数に対するシャント共振器の周波数を下げることができる。1つ又は複数の誘電体層は、物理的気相成長法、原子層堆積法、化学的気相成長法、又は他の方法などの従来の堆積技術を使用して堆積されてもよい。誘電体層の堆積を圧電プレートの選択された領域に限定するために、(フォトマスクを使用する)1つ又は複数のリソグラフィプロセスを使用してもよい。例えば、シャント共振器のみを覆うように誘電体層を限定するために、マスクを用いてもよい。
【0052】
855で、パッシベーション/チューニング誘電体層が、圧電プレート及び導体パターンの上に堆積される。パッシベーション/チューニング誘電体層は、フィルタの外部の回路への電気接続のためのパッドを除いて、フィルタの全表面を覆ってもよい。プロセス800のいくつかの実施態様では、パッシベーション/チューニング誘電体層は、デバイス基板内のキャビティが810B又は810Cのいずれかにおいてエッチングされた後に形成されてもよい。
【0053】
プロセス800の第二の変形例では、810Bで、1つ又は複数のキャビティがデバイス基板の背面に形成される。フィルタデバイスの各共振器に対して別個のキャビティを形成してもよい。1つ又は複数のキャビティを、異方性又は配向依存性の乾式エッチング又は湿式エッチングを使用して、デバイス基板の背面から圧電プレートまで穴を開けて形成してもよい。この場合、結果として得られる共振器デバイスは、図1に示すような断面を有することになる。
【0054】
プロセス800の第三の変形例では、810Cで、圧電プレートの開口部を介して導入されるエッチャントを用いて基板をエッチングすることにより、デバイス基板に凹部の形態の1つ又は複数のキャビティを形成してもよい。フィルタデバイスの各共振器に対して別個のキャビティが形成されてもよい。810Cで形成された1つ又は複数のキャビティは、デバイス基板を貫通せず、その結果として得られる共振器デバイスは、図3に示すような断面を有する。
【0055】
理想的には、キャビティが810B又は810Cで形成された後、ウェーハ上のフィルタデバイスのほとんど又は全てが、一連の性能要件を満たすことになる。しかしながら、通常のプロセス公差によって、850及び855で形成される誘電体層の厚さなどのパラメータの変動、845で形成される導体及びIDTフィンガの厚さ及び線幅の変動、並びに圧電プレートの厚さの変動がもたらされる。これらの変動は、フィルタデバイスの性能を一連の性能要件から逸脱させる一因となる。
【0056】
性能要件を満たすフィルタデバイスの歩留まりを改善するために、855で、共振器上に堆積されたパッシベーション/チューニング層の厚さを選択的に調整することによって、周波数チューニングが実行されてもよい。フィルタデバイスの通過帯域の周波数は、パッシベーション/チューニング層に材料を加えることによって下げることができ、フィルタデバイスの通過帯域の周波数は、パッシベーション/チューニング層から材料を除去することによって上げることができる。典型的には、プロセス800は、最初は必要な周波数範囲よりも低いが、パッシベーション/チューニング層の表面から材料を除去することによって所望の周波数範囲にチューニングさせることができる通過帯域を有するフィルタデバイスを製造するようにバイアスされる。
【0057】
860で、プローブカード又は他の手段を使用して、フィルタとの電気接続を行うと、無線周波数(RF)試験及び入出力伝達関数などのフィルタ特性の測定が可能になる。典型的には、RF測定は、共通の圧電プレート及び基板上に同時に製造されたフィルタデバイスの全て、又は大部分に対して行われる。
【0058】
865で、グローバル周波数チューニングは、例えば、先に説明したような走査型イオンミルのような選択的材料除去ツールを用いてパッシベーション/チューニング層の表面から材料を除去することによって実行され得る。「グローバル」チューニングは、個々のフィルタデバイスと同等又はそれ以上の空間分解能で実行される。グローバルチューニングの目的は、各フィルタデバイスの通過帯域を所望の周波数範囲に向けて移動させることである。860からのテスト結果は、ウェーハ上の二次元位置の関数として、除去されるべき材料の量を示すグローバル等高線マップを生成するために処理されてもよい。次に、選択的材料除去ツールを用いて、等高線マップに材料が従って除去される。
【0059】
870では、865で行われたグローバル周波数チューニングの追加又は代替として、ローカル周波数チューニングが行われることがある。「ローカル」周波数チューニングは、個々のフィルタデバイスよりも小さい空間分解能で実行される。860からの試験結果は、各フィルタデバイスにおいて除去されるべき材料の量を示すマップを生成するために処理されてもよい。ローカル周波数チューニングは、材料が除去される領域の大きさを制限するために、マスクの使用を必要とする場合がある。例えば、第一のマスクを使用してシャント共振器のみにチューニングを制限し、その後、第二のマスクを使用して直列共振器のみにチューニングを制限することができる(又は、その逆も可能)。これにより、フィルタデバイスの帯域下端(シャント共振器のチューニングによる)と帯域上端(直列共振器のチューニングによる)との独立したチューニングを行うことができるようになる。
【0060】
865及び/又は870での周波数チューニングの後、フィルタデバイスは、875で完成する。875で起こり得るアクションには、デバイスと外部回路との間の接続を行うために、ボンディングパッド、若しくははんだバンプ又は他の手段の形成(そのようなパッドが845で形成されなかった場合)、複数のフィルタデバイスを含むウェーハからの個々のフィルタデバイスの切り出し、他のパッケージング手順、及び追加の試験が含まれる。各フィルタデバイスが完成した後、プロセスは、895で終了する。
【0061】
図9は、XBARを組み込んだフィルタを製造するためのプロセス800の簡略化されたフローチャートである。プロセス900は、905でデバイス基板と、基板と圧電材料のプレートとから開始され、995で、完成したフィルタで終了する。図9のフローチャートには、主要なプロセスステップのみが含まれている。様々な従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、監視、試験など)は、図9に示されるステップの前、間、後、及び最中に実行され得る。
【0062】
図9のフローチャートは、基板にいつ、どのようにキャビティを形成するかが異なるフィルタを製造するためのプロセス900の3つの変形例を捕らえている。キャビティは、ステップ810B又は810Cで形成されてもよい。これらのステップのうちの1つだけが、プロセス900の2つの変形例のそれぞれにおいて実行される。
【0063】
815~875までの参照番号を有するプロセスステップは、図8のプロセス800の対応するステップと本質的に同じである。これらのステップの説明は、繰り返されない。プロセス900とプロセス800との間の大きな違いは、キャビティが810B又は810Cで形成される前に、RF試験960及び周波数チューニング965が実行されることである。共振器の領域がまだ基板に取り付けられている間にチューニングが実行されると、基板は圧電プレートに機械的サポートを提供し、材料がパッシベーション/チューニング誘電体層から除去されるときに発生する熱のシンクとして機能する。これによって、プロセス800のように、キャビティが形成された後にチューニングが行われる場合に発生し得るダイアフラムへの損傷が回避される。
【0064】
共振器の領域がまだ基板に取り付けられている間にチューニングが実行されるので、960でのRF試験は、フィルタの実際の性能パラメータを測定することができない。代わりに、960でのRF試験は、キャビティが形成された後のフィルタの性能と相関し得る他のパラメータを測定する。960でのRF試験は、キャビティが形成された後もまだ存在し得る、又は存在し得ない他の音響モードの共振周波数を測定してもよい。これらのモードには、セザワモード、レイリーモード、及び様々なバルク音響モードが含まれる得る。例えば、フィルタデバイスの入出力伝達関数及び/又は個々の共振器のアドミタンスは、共通の圧電プレート及び基板上に同時に製造されたフィルタデバイスの全て又は大部分で測定され得る。
【0065】
960からの試験結果は、フィルタデバイスの性能を予測するために処理され、次いで、ウェーハ上の二次元位置の関数として除去されるべき材料の量を示す等高線マップを生成するために使用される。例えば、ニュートラルネットワークは、0~1GHzの周波数範囲にわたる共振器のアドミタンスを、等高線マップ上の特定の場所で除去されるべき材料の量の予測に変換するようにトレーニングできる。
【0066】
965で、フィルタデバイスの周波数は、960で生成された等高線マップに従ってパッシベーション/チューニング層の表面から材料を除去することによって選択的にチューニングされる。材料は、例えば、前述の走査型イオンミルのような選択的材料除去ツールを使用して除去され得る。グローバル及び/又はローカル周波数チューニングは、上述したように、965で実行することができる。周波数チューニング後、プロセス900は、プロセス800に関して前述したように完了することができる。
【0067】
図10は、XBARを組み込んだフィルタを製造するためのプロセス1000を示す簡略化されたフローチャートである。具体的には、プロセス1000は、2つ以上の異なる圧電ダイアフラム厚さを有するフィルタデバイスを製造するためのものである。例えば、デバイスは、図6Bに示すように、直列共振器とシャント共振器とに対して異なるダイアフラム厚さを有し得る。プロセス1000は、1005で基板と、犠牲基板上に置かれた圧電材料のプレートとから開始され、1095で、完成したフィルタデバイスで終了する。図10のフローチャートには、主要なプロセスステップのみが含まれている。様々な従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、監視、試験など)は、図10に示されるステップの前、間、後、及び最中に実行され得る。
【0068】
図10のフローチャートは、基板にいつ、どのようにキャビティを形成するかが異なるXBARデバイスを製造するためのプロセス1000の3つの変形例を捕らえている。キャビティは、ステップ810A、810B、又は810Cで形成され得る。これらのステップのうちの1つだけが、プロセス1000の3つの変形例のそれぞれにおいて実行される。
【0069】
815~875までの参照番号を有するプロセスステップは、図8のプロセス800の対応するステップと本質的に同じである。これらのステップの説明は、繰り返されない。プロセス1000とプロセス800との間の大きな違いは、ステップ1030と1035の追加である。
【0070】
1030で、圧電プレートの選択された領域を薄くする。例えば、直列共振器のダイアフラムとなる圧電プレートの領域を、図7のビューEに示すように、薄くしてもよい。薄くすることは、イオンミルなどの走査材料ツールを使用して行うことができる。あるいは、薄くする領域をマスクで定義し、イオンミル、スパッタエッチングツール、又は湿式もしくは乾式エッチングプロセスを使用して材料を除去してもよい。いずれの場合も、ウェーハの表面上で除去する材料の深さを正確に制御することが必要である。薄くした後、圧電プレートは、2つ以上の異なる厚さを有する領域に分割されることになる。
【0071】
圧電プレートから材料が除去された後に残る表面は、特にイオンミル又はスパッタエッチツールが1030で使用される場合、損傷する可能性がある。損傷した表面を修復するために、アニール又は他の熱処理などの何らかの形態の後処理を1035で実行してもよい。
【0072】
圧電プレートを1030で選択的に薄くして、任意の表面損傷を1035で修復した後、プロセス1000の残りのステップ(図10に示すように)は、プロセス800の対応ステップと同じであってもよく、この場合、RF試験860及び周波数チューニング865は、810A、810B、又は810Cでキャビティが形成された後に行われる。あるいは、プロセス1000の残りのステップ(図10には図示せず)は、プロセス900の対応するステップと同じであってもよく、この場合、RF試験960及び周波数チューニング965は、キャビティが810B又は810Cで形成される前に行われる。850における周波数設定誘電体層の形成は、必ずしもプロセス000の間に行われる必要はない。
【0073】
図11は、XBARを組み込んだフィルタを製造するためのプロセス1100を示す簡略化されたフローチャートである。具体的には、プロセス1000は、図7で以前に示したように、圧電プレートの厚さの均一性を改善するために、追加のステップを伴うフィルタデバイスを製造するためのものである。図11のフローチャートには、主要なプロセスステップのみが含まれている。様々な従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、洗浄、検査、ベーキング、アニーリング、監視、試験など)は、図10に示されるステップの前、間、後、及び最中に実行され得る。815~875までの参照番号を有するプロセスステップは、図8のプロセス800の対応するステップと本質的に同じである。プロセスステップ1030及び1035は、図10のプロセス1000の対応するステップと本質的に同じである。これらのステップの説明は、繰り返されない。
【0074】
図11のフローチャートは、基板にいつ、どのようにキャビティを形成するか、またシャント共振器の周波数が直列共振器の周波数からどのようにオフセットされるかが異なるXBARを製造するためのプロセス1100の複数の変形例を捕らえている。キャビティは、ステップ810B又は810Cで形成されてもよい。これらのステップのうちの1つだけが、プロセス1100の任意の変形例のそれぞれにおいて実行される。850でシャント共振器の上に周波数設定誘電体層を形成することによって、シャント共振器の周波数を直列共振器の周波数からオフセットすることができる。あるいは、1030で直列共振器のダイアフラムを形成する圧電プレートを薄くすることによって、シャント共振器の周波数を直列共振器の周波数からオフセットすることもできる。これらのステップの一方又は両方が、プロセス1100の任意の変形例において実行される。
【0075】
プロセス1100と前述したプロセスとの間の主な違いは、ステップ1120及び1125が追加されていることである。1120で、圧電プレート厚さの光学的測定は、例えばエリプソメータ/反射計などの光学的厚さ測定ツールを用いて行われる。光学的厚さ測定ツールは、圧電プレートの表面から、及び圧電プレートと基板との間の界面から反射される光を測定することができる。圧電プレート上の特定の測定点からの反射光は、複数の光の波長、入射角、及び/又は偏光状態を用いて測定されてもよい。複数の測定結果を処理して、測定点における圧電プレートの厚さを決定する。
【0076】
測定プロセスを繰り返して、圧電プレートの表面上の複数の測定点における圧電プレートの厚さを決定する。複数の点は、例えば、プレートの表面上の測定点のグリッド又はマトリックスを形成してもよい。測定データを処理し、補間することで、圧電プレートの厚さのマップを提供することができる。
【0077】
1125で、過剰な材料は、先に図7のビューCに示したように、材料除去ツールを用いて圧電プレートから除去される。材料除去ツールは、例えば、走査型イオンミル又は他のツールであってもよい。走査型イオンミルは、高エネルギーイオンビームを圧電プレートの表面上に走査させる。イオンビームが圧電プレートに入射することにより、昇華又はスパッタリングによって表面の材料が除去される。イオンビームは、圧電プレートの表面に1回又は複数回、ラスターパターンで走査することができる。イオンビームのイオン電流又は滞在時間をラスター走査中に変化させ、圧電プレートの厚さのマップに従って圧電プレート上の各点から除去される材料の深さを制御することができる。その結果、厚さの均一性が著しく改善された圧電プレートが得られる。圧電プレート上の任意の点における厚さは、先に定義したように、目標厚さに実質的に等しくてもよい。
【0078】
任意選択で、直列共振器のダイアフラムになる予定の圧電プレートの部分を1030で薄くしてもよい。1125及び/又は1030で生じた圧電プレートの露出表面への損傷は、前述したように、1035での後処理によって除去されてもよい。
【0079】
プロセス1100の残りのステップ(図11に示すように)は、プロセス800の対応するステップと同じであってもよい。但し、1030で圧電プレートを選択的に薄くする場合、850で周波数設定誘電体層を形成することが行われ場合があることを除く。いずれの場合も、RF試験860及び周波数調整865/870は、810B又は810Cでキャビティが形成された後に行われてもよい。あるいは、プロセス1100の残りのステップ(図11に図示せず)は、プロセス900の対応するステップと同じであってよく、RF試験960及び周波数チューニング965は、キャビティが810B又は810Cで形成される前に行われる。
【0080】
(結びのコメント)
この説明全体を通して、示される実施形態及び実施例は、開示又は特許請求される装置及び手順に対する制限ではなく、模範と見なされるべきである。本明細書に提示される例の多くは、方法動作又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの動作及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせることができることを理解されたい。フローチャートに関しては、ステップを追加することも、より少なくすることもでき、示されているステップを組み合わせて、あるいはさらに改良して、本明細書に記載の方法を達成することもできる。一実施形態に関連してのみ論じられる動作、要素、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「複数」とは2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、アイテムの「セット」は、そのようなアイテムの1つ又は複数を含み得る。本明細書で使用される場合、書面による説明又は特許請求の範囲において、「備える」、「含む」、「携える」、「有する」、「含有する」、「関与する」などの用語は、オープンエンドであると理解されるべきであり、つまり、これに限定されない。クレームに関して、それぞれ「からなる」及び「本質的にからなる」の移行句のみが、クローズエンド又はセミクローズエンドの移行句である。クレーム要素を変更するためのクレームでの「第一」、「第二」、「第三」などの序数詞の使用は、それ自体では、あるクレーム要素の他のクレーム要素に対するいかなる優先性、優先順位、又は順序、又は方法の動作が実行される時間的な順序を意味するものではなく、クレーム要素を区別するのに、特定の名称を有するあるクレーム要素を同じ名称を有する別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用することで(但し、序数詞を使用するため)、これらのクレーム要素を区別するためである。本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、列挙されたアイテムが代替物であることを意味するが、代替物は、列挙されたアイテムの任意の組み合わせも含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11