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特許7459945光送信装置、光伝送システム及び光送信装置の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】光送信装置、光伝送システム及び光送信装置の方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20240326BHJP
   H04B 10/516 20130101ALI20240326BHJP
【FI】
H04B10/61
H04B10/516
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022539895
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029231
(87)【国際公開番号】W WO2022024292
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正規
(72)【発明者】
【氏名】安部 淳一
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0280910(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0110216(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0178417(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0219559(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0260044(US,A1)
【文献】岡野 貴大ほか,Overlap-Windowed-DFTs-OFDM方式におけるオーバーラップFFTフィルタバンクが伝送特性に与える影響,電子情報通信学会技術研究報告,2018年11月13日,第118巻, 第311号,pp.85-90
【文献】齋藤 晟ほか,柔軟なスペクトルアクセスのためのオーバーラップ長可変型FFTフィルタバンクの検討,電子情報通信学会技術研究報告,2017年01月12日,第116巻, 第409号,pp.17-22
【文献】Wei Jin,Modification of Frequency Estimation Algorithms for Sinusoidal Signals Based on Phase Difference of Overlap FFT,2008 International Conference on Communications, Circuits and Systems,2008年05月,pp. 927-929
【文献】Sichun Wang et al.,Probability density of the phase error of a digital interferometer with overlapped FFT processing,2010 53rd IEEE International Midwest Symposium on Circuits and Systems,2010年08月,pp. 849-852
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00 - 10/90
H04J 14/00 - 14/08
H04L 27/26 - 27/30
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデジタル信号を処理する信号処理手段と、
前記処理された信号を光変調し、前記光変調した光信号を光伝送路へ送信する光送信手段と、を備え、
前記信号処理手段は、
前記デジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成する生成手段と、
前記光信号を受信する光受信装置から通知される、前記光伝送路の伝送路特性、または、前記光受信装置における前記光信号の誤り訂正結果に基づいて、前記周波数シフト量を算出する周波数シフト量算出手段と、
を備える、光送信装置。
【請求項2】
前記伝送路特性、または、前記誤り訂正結果に基づいて、サブキャリア間隔を調整するサブキャリア間隔調整手段を備え、
前記周波数シフト量算出手段は、前記調整されたサブキャリア間隔に基づいて、前記周波数シフト量を算出する、
請求項1に記載の光送信装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記FFT処理のFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズの関係と、前記周波数シフト量とに応じて生じる前記位相オフセットを補償する、
請求項1または2に記載の光送信装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記周波数シフト量が所定の量の場合に前記位相オフセットを補償する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光送信装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記周波数シフト量が変動した場合に前記位相オフセットを補償する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光送信装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記FFTブロックごとに前記位相オフセットを補償する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光送信装置。
【請求項7】
前記生成手段は、
前記周波数シフトされた信号に生じる前記位相オフセットを算出する位相オフセット算出手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号に対し、前記算出された位相オフセットを補償する位相補償手段と、
前記位相オフセットが補償されたサブキャリア信号を前記周波数シフト量で周波数シフトする周波数シフト手段と、
を備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光送信装置。
【請求項8】
光伝送路を介して接続された光送信装置と光受信装置とを備え、
前記光送信装置は、
入力されたデジタル信号を処理する第1の信号処理手段と、
前記処理された信号を光変調し、前記光変調した光信号を前記光伝送路へ送信する光送信手段と、を備え、
前記第1の信号処理手段は、
前記デジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行う第1のFFT処理手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成する第1の生成手段と、
前記光受信装置から通知される、前記光伝送路の伝送路特性、または、前記光受信装置における前記光信号の誤り訂正結果に基づいて、前記周波数シフト量を算出する周波数シフト量算出手段と、
を備え、
前記光受信装置は、
前記送信された光信号を前記光伝送路から受信し、前記受信した光信号を光検波する光受信手段と、
前記光検波された信号をデジタル信号に変換し、前記変換したデジタル信号を処理する第2の信号処理手段と、を備え、
前記第2の信号処理手段は、
前記デジタル信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行う第2のFFT処理手段と、
前記FFT処理されたデジタル信号に含まれるサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア分離信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号を生成する第2の生成手段と、
前記光伝送路の伝送路特性、または、前記受信した光信号の誤り訂正の結果を検出し、前記検出した伝送路特性、または、前記誤り訂正の結果を、前記光送信装置へ通知する通知手段と、
を備える、光伝送システム。
【請求項9】
入力されたデジタル信号を処理することと、
前記処理された信号を光変調し、前記光変調した光信号を光伝送路へ送信することと、を含み、
前記デジタル信号を処理することは、
前記デジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うことと、
前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成することと、
前記光信号を受信する光受信装置から通知される、前記光伝送路の伝送路特性、または、前記光受信装置における前記光信号の誤り訂正結果に基づいて、前記周波数シフト量を算出することと、
を含む、光送信装置の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、光送信装置、光受信装置、光伝送システム及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信ネットワークのトラフィックが急激に増加しており、通信システムの大容量化が望まれている。例えば、基幹系光通信システムでは、1Tbps(Tera bit per second)を超える大容量化の実現に向けて研究が進められている。このような光通信システムでは、光位相変調方式と偏波多重分離技術を組み合わせたデジタルコヒーレント方式が用いられる。
【0003】
関連する技術として、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、デジタルコヒーレント受信機において、周波数偏差を補償する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/072089号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1Tbps以上の光伝送システムでは、伝送性能や回路規模を考慮すると、光位相変調方式と偏波多重分離技術を組み合わせたデジタルコヒーレント方式に、さらにサブキャリア(Sub Carrier:SC)多重方式を適用することが必須である。サブキャリア多重方式を用いることで、1波長当たりの伝送容量が変わらない場合でも、性能劣化や回路負荷を抑えることができるため、大容量化が実現可能となる。
【0006】
光伝送システムにおいてデジタル信号処理によりサブキャリア多重または分離を実現する方法として、オーバーラップ型のFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)を用いる方法が考えられる。しかしながら、オーバーラップ型のFFTを用いてサブキャリア多重または分離を行うと、サブキャリア多重または分離された信号に位相オフセットが生じるという問題がある。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑み、位相オフセットの発生を抑えることが可能な信号処理装置、光送信装置、光受信装置、光伝送システム及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る信号処理装置は、サブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトした信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償された信号を生成する生成手段と、を備えるものである。
【0009】
本開示に係る光送信装置は、入力されたデジタル信号を処理する信号処理手段と、前記処理された信号を光変調し、前記光変調した光信号を光伝送路へ送信する光送信手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記デジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成する生成手段と、を備えるものである。
【0010】
本開示に係る光受信装置は、サブキャリア多重された光信号を光伝送路から受信し、前記受信した光信号を光検波する光受信手段と、前記光検波された信号をデジタル信号に変換し、前記変換したデジタル信号を処理する信号処理手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記デジタル信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、前記FFT処理されたデジタル信号に含まれるサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア分離信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号を生成する生成手段と、を備えるものである。
【0011】
本開示に係る光伝送システムは、光伝送路を介して接続された光送信装置と光受信装置とを備え、前記光送信装置は、入力されたデジタル信号を処理する信号処理手段と、前記処理された信号を光変調し、前記光変調した光信号を前記光伝送路へ送信する光送信手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記デジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成する生成手段と、を備えるものである。
【0012】
本開示に係る光伝送システムは、光伝送路を介して接続された光送信装置と光受信装置とを備え、前記光受信装置は、サブキャリア多重された光信号を前記光伝送路から受信し、前記受信した光信号を光検波する光受信手段と、前記光検波された信号をデジタル信号に変換し、前記変換したデジタル信号を処理する信号処理手段と、を備え、前記信号処理手段は、前記デジタル信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、前記FFT処理されたデジタル信号に含まれるサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア分離信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号を生成する生成手段と、を備えるものである。
【0013】
本開示に係る信号処理方法は、サブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行い、前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトした信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償された信号を生成するものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、位相オフセットの発生を抑えることが可能な信号処理装置、光送信装置、光受信装置、光伝送システム及び信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る信号処理装置の概要を示す構成図である。
図2】実施の形態に係る光送信装置の概要を示す構成図である。
図3】実施の形態に係る光受信装置の概要を示す構成図である。
図4】実施の形態1に係る光送信機の構成例を示す構成図である。
図5】実施の形態1に係る光受信機の構成例を示す構成図である。
図6】基本例の送信側デジタル信号処理部の構成を示す構成図である。
図7】送信側の信号処理の例を示す図である。
図8】送信側の信号処理の例を示す図である。
図9】送信側の信号処理の例を示す図である。
図10】基本例の受信側デジタル信号処理部の構成を示す構成図である。
図11】FFT処理により生じる位相オフセットを説明するための図である。
図12】実施の形態1に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示す構成図である。
図13】実施の形態1に係る送信側デジタル信号処理部の動作例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態1に係る受信側デジタル信号処理部の構成例を示す構成図である。
図15】実施の形態1に係る受信側デジタル信号処理部の動作例を示すフローチャートである。
図16】実施の形態2に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示す構成図である。
図17】実施の形態2に係る受信側デジタル信号処理部の構成例を示す構成図である。
図18】実施の形態3に係る光伝送システムの構成例を示す構成図である。
図19】実施の形態3に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示す構成図である。
図20】実施の形態3に係る信号処理の例を示す図である。
図21】実施の形態3に係る信号処理の例を示す図である。
図22】実施の形態4に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示す構成図である。
図23】実施の形態4に係る受信側デジタル信号処理部の構成例を示す構成図である。
図24】実施の形態に係るコンピュータのハードウェア構成例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図面においては、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。なお、構成図(ブロック図)に付された矢印は説明のための例示であり、信号の種類や方向を限定するものではない。
【0017】
(実施の形態の概要)
図1は、実施の形態に係る信号処理装置の概要を示し、図2は、実施の形態に係る光送信装置の概要を示し、図3は、実施の形態に係る光受信装置の概要を示している。図2の光送信装置と図3の光受信装置は、光伝送路を介して光通信可能に接続されており、光伝送システムを構成する。
【0018】
図1に示すように、信号処理装置10は、FFT処理部11、生成部12を備えている。FFT処理部11は、サブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行う。生成部12は、FFT処理部11によりFFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトした信号であって、オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償された信号を生成する。例えば、生成部12は、周波数シフト量が所定の量の場合、または、周波数シフト量が変動した場合に生じる位相オフセットをFFTブロックごとに補償する。
【0019】
図2に示すように、光送信装置20は、光送信部21、信号処理部22を備えている。信号処理部22は、図1の信号処理装置10を光送信装置に適用した場合の信号処理部であり、入力されたデジタル信号を処理する。光送信部21は、信号処理部22により処理された信号を光変調し、光変調した光信号を光伝送路へ送信する。
【0020】
信号処理部22は、FFT処理部23、生成部24を備えている。図1の信号処理装置10と同様、FFT処理部23は、入力されたデジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行う。生成部24は、FFT処理部23によりFFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成する。
【0021】
図3に示すように、光受信装置30は、光受信部31、信号処理部32を備えている。光受信部31は、サブキャリア多重された光信号を光伝送路から受信し、受信した光信号を光検波する。信号処理部32は、図1の信号処理装置10を適用した場合の信号処理部であり、光検波された信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を処理する。
【0022】
信号処理部32は、FFT処理部33、生成部34を備えている。図1の信号処理装置10と同様、FFT処理部33は、サブキャリア多重されたデジタル信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行う。生成部34は、FFT処理部33によりFFT処理されたデジタル信号に含まれるサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア分離信号であって、オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号を生成する。
【0023】
このように、送信側のサブキャリア配置(多重)または受信側のサブキャリア分離において、オーバーラップ型のFFTを用いてサブキャリア信号を周波数シフトする際、オーバーラップするFFTブロック間に生じる位相オフセットが補償された周波数シフト信号を生成することにより、位相オフセットの発生を抑えることができる。
【0024】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。図4は、本実施の形態に係る光送信機の構成例を示し、図5は、本実施の形態に係る光受信機の構成例を示している。本実施の形態に係る光送信機100と光受信機200は、光ファイバ伝送路300を介して光通信可能に接続されており、光伝送システム1を構成する。例えば、光伝送システム1は、光位相変調方式と偏波多重分離技術を組み合わせたデジタルコヒーレント方式を用いた基幹系波長多重光伝送システムである。
【0025】
図4に示すように、光送信機100は、デジタルコヒーレント光送信機(光送信装置)であり、送信側DSP(Digital Signal Processor)110と光送信フロントエンド回路120を備えている。送信側DSP110は、入力される送信デジタル信号(送信ビット列)を符号化し、光送信フロントエンド回路120で光変調するための信号に変換する。送信側DSP110は、符号化部111、送信側デジタル信号処理部112、DAC(Digital Analog Converter)113-1~113-4を備えている。
【0026】
符号化部111は、送信デジタル信号を、例えば偏波多重QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調用に符号化する。なお、本実施の形態では、QPSK変調信号を偏波多重する例について説明するが、QPSKに限らず、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、32QAM、64QAM等の多値変調を用いてもよい。符号化部111は、送信デジタル信号に対し誤り訂正符号化処理を行った後、X偏波のI(Inphase)成分及びQ(Quadrature)成分、Y偏波のI成分及びQ成分の4レーンの信号にマッピングする。すなわち、符号化部111は、送信デジタル信号を符号化し、X偏波のI成分のXI信号、X偏波のQ成分のXQ信号、Y偏波のI成分のYI信号、Y偏波のQ成分のYQ信号に変換する。
【0027】
送信側デジタル信号処理部112は、符号化部111により符号化された4レーンのデジタル信号を複数のサブキャリアの周波数に配置したサブキャリア多重信号(サブキャリア配置信号)に変換する。送信側デジタル信号処理部112は、入力されたデジタル信号をサブキャリアごとの信号に変換し、各信号の周波数帯をサブキャリアの周波数シフト量により周波数シフトすることでサブキャリア多重(サブキャリア配置)する。
【0028】
DAC113-1~113-4は、送信側デジタル信号処理部112により生成されたデジタルのサブキャリア多重信号をアナログのサブキャリア多重信号に変換する。DAC113-1~113-4は、それぞれサブキャリア多重されたアナログのXI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号を生成し、光送信フロントエンド回路120へ出力する。
【0029】
光送信フロントエンド回路(光送信部)120は、送信側DSP110により処理された信号を光変調及び偏波合成し、生成した光信号を光ファイバ伝送路300を介して光受信機200へ送信する。光送信フロントエンド回路120は、レーザ光源121、増幅器122-1~122-4、MZ変調器(MZM:Mach-Zehnder Modulator)123-1~123-4、偏波合成部124を備えている。
【0030】
レーザ光源121は、キャリア周波数の光源を生成し、生成した光源をMZ変調器123-1~123-4に入力する。増幅器122-1~122-4は、送信側DSP110から出力されたサブキャリア多重後のXI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号を増幅し、それぞれMZ変調器123-1~123-4を駆動する。
【0031】
MZ変調器123-1~123-4は、XI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号に応じて、レーザ光源121の光源に対しIQ変調をかけるIQ光変調器である。MZ変調器123-1~2は、増幅器122-1~122-2を介したXI信号及びXQ信号に基づいて、X偏波のIQ変調光信号を生成する。MZ変調器123-3~4は、増幅器122-3~122-4を介したYI信号及びYQ信号に基づいて、Y偏波のIQ変調光信号を生成する。偏波合成部124は、生成されたX偏波のIQ変調光信号とY偏波のIQ変調光信号を偏波合成し、合成した光信号を光ファイバ伝送路300へ送信する。これにより、シングルキャリア上に、サブキャリア多重、位相変調、偏波多重された光信号が伝搬される。
【0032】
図5に示すように、光受信機200は、デジタルコヒーレント光受信機(光受信装置)であり、受信側DSP210と光受信フロントエンド回路220を備えている。光受信フロントエンド回路(光受信部)220は、光ファイバ伝送路300から光信号を受信し、コヒーレント検波を行う。光受信フロントエンド回路220は、レーザ光源221、偏波分離部222、90度ハイブリッド回路223-1~223-2、増幅器224-1~224-4を備えている。
【0033】
レーザ光源221は、送信側のレーザ光源121と同じ周波数の局部発振光を生成し、生成した局部発振光を90度ハイブリッド回路223-1~223-2に入力する。偏波分離部222は、光送信機100から送信された偏波合成後の光信号を光ファイバ伝送路300を介して受信し、受信した光信号をX偏波及びY偏波に偏波分離する。
【0034】
90度ハイブリッド回路223-1~223-2は、偏波分離部222により偏波分離された光信号とレーザ光源221の局所発振光とを干渉させてコヒーレント検波を行い、4レーンのアナログの電気信号に変換するコヒーレント光検波器である。90度ハイブリッド回路223-1は、受信した光信号のX偏波を、I成分及びQ成分に分離した後、光電変換し、XI信号、XQ信号を生成する。90度ハイブリッド回路223-2は、受信した光信号のY偏波を、I成分及びQ成分に分離した後、光電変換し、YI信号、YQ信号を生成する。増幅器224-1~224-4は、生成されたXI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号をそれぞれ増幅し受信側DSP210へ出力する。
【0035】
受信側DSP210は、光受信フロントエンド回路220によりコヒーレント検波された信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を復号化する。受信側DSP210は、ADC(Analog Digital Converter)211-1~211-4、受信側デジタル信号処理部212、誤り訂正部213、デジタル信号再生部214を備えている。ADC211-1~211-4は、増幅器224-1~224-4により増幅されたアナログのXI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号をそれぞれデジタル信号に変換する。
【0036】
受信側デジタル信号処理部212は、ADC211-1~211-4により生成された4レーンのデジタル信号の波形歪みの補償及び信号等化処理を行い、また、サブキャリア多重されているデジタル信号をサブキャリア分離し復号用のデジタルのXI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号に変換する。受信側デジタル信号処理部212は、入力されたデジタル信号(サブキャリア多重信号)の周波数帯を各サブキャリアの周波数シフト量により周波数シフトすることでサブキャリア分離し、分離したサブキャリア信号を復号用のデジタル信号に変換する。
【0037】
誤り訂正部213は、受信側デジタル信号処理部212により生成された4レーンの復号用のデジタル信号に対し誤り訂正処理を行う。デジタル信号再生部214は、誤り訂正部213により誤り訂正された4レーンのデジタル信号をデマッピングし復号化することで受信デジタル信号(受信ビット列)を再生する。
【0038】
<基本例の送信側デジタル信号処理部>
ここで、本実施の形態適用前の基本例の送信側デジタル信号処理部及び受信側デジタル信号処理部について説明する。
【0039】
図6は、基本例の送信側デジタル信号処理部の構成を示している。図6に示すように、基本例の送信側デジタル信号処理部901は、送信側サブキャリア分離部401、FFT部402-1~402-m(mはサブキャリア数)、送信側サブキャリア配置部403、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部404、周波数シフト設定部405を備えている。
【0040】
送信側サブキャリア分離部401は、入力されるデジタル信号D11を各サブキャリアのサブキャリア信号D12SC1~D12SCmに分離する。入力されるデジタル信号D11は、例えば、符号化部111により符号化された信号である。デジタル信号D11は、符号化されたXI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のいずれかに対応していてもよいし、XI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のうちの複数に対応していてもよい。例えば、送信側サブキャリア分離部401は、シリアル-パラレル変換によりデジタル信号D11をサブキャリア信号D12SC1~D12SCmに変換してもよいし、フレーム構成に応じてデジタル信号D11をサブキャリア信号D12SC1~D12SCmに分離してもよい。なお、送信側サブキャリア分離部401の代わりに、符号化部111をサブキャリアごとに設け、符号化されたサブキャリア信号を送信側デジタル信号処理部に入力してもよい。
【0041】
FFT部(FFT処理部)402-1~402-mは、それぞれサブキャリア信号D12SC1~D12SCmをFFT処理し、周波数領域のサブキャリアFFT信号D13SC1~D13SCmに変換する。FFT部402は、入力信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うオーバーラップ型のFFT部であり、所定のFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズでFFT処理を行う。なお、オーバーラップ型のFFTをオーバーラップFFTと呼ぶ場合がある。
【0042】
送信側サブキャリア配置部403は、周波数領域のサブキャリアFFT信号D13SC1~D13SCmを各サブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトし、周波数シフトした信号を周波数領域に配置したサブキャリア配置信号D14を生成する。送信側サブキャリア配置部403は、FFT処理されたサブキャリア信号を周波数シフト量で周波数シフトする周波数シフト部でもある。周波数シフト設定部405は、送信側サブキャリア配置部403に対し、各サブキャリアの周波数シフト量を設定する。
【0043】
IFFT部(IFFT処理部)404は、周波数領域のサブキャリア配置信号D14をIFFT処理し、時間領域のサブキャリア多重信号D15に変換する。IFFT部404は、変換したサブキャリア多重信号D15をDAC113へ出力する。なお、サブキャリア多重信号D15は、入力されるデジタル信号D11と同様、XI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のいずれかに対応していてもよいし、XI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のうちの複数に対応していてもよい。
【0044】
図7は、サブキャリアSC1~SC4の周波数シフトの例を示し、図8は、サブキャリアSC1~SC4を周波数領域に配置したスペクトルの例を示し、図9は、MZ変調後のサブキャリアSC1~SC4の光変調信号のスペクトルを示している。なお、ここでは、一例としてサブキャリア数を4としているが、サブキャリア数は4に限らず任意の値としてもよい。以下の説明においても同様である。図7に示すように、サブキャリアSC1~SC4の周波数シフト量をそれぞれ+ΔF1~+ΔF4とすると、送信側サブキャリア配置部403は、サブキャリアFFT信号D13SC1~D13SCmの周波数をそれぞれ+ΔF1~+ΔF4シフトする。そうすると、図8に示すように、周波数シフト後に周波数領域に配置されたサブキャリアSC1~SC4(サブキャリア配置信号D14)は、所定のサブキャリア間隔を有するスペクトルとなる。図8のサブキャリアSC1~SC4の周波数領域の信号に対しIFFT部404がIFFT処理を行い、その後、MZ変調器123によりMZ変調されると、図9に示すように、MZ変調成分をそれぞれ含む所定のサブキャリア間隔の光変調信号スペクトルとなる。
【0045】
<基本例の受信側デジタル信号処理部>
図10は、基本例の受信側デジタル信号処理部の構成を示している。図10に示すように、基本例の受信側デジタル信号処理部902は、FFT部501、受信側サブキャリア分離部502、IFFT部503-1~503-m、受信側サブキャリア多重部504、周波数シフト設定部505を備えている。
【0046】
FFT部501は、入力されるサブキャリア多重信号D21をFFT処理し、周波数領域のサブキャリア多重FFT信号D22に変換する。入力されるサブキャリア多重信号D21は、受信したサブキャリア多重されているデジタル信号であり、例えば、ADC211を介して入力される信号である。サブキャリア多重信号D21は、AD変換されたXI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のいずれかに対応していてもよいし、XI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のうちの複数に対応していてもよい。FFT部501は、オーバーラップ型のFFT部であり、所定のFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズでFFT処理を行う。
【0047】
受信側サブキャリア分離部502は、周波数領域のサブキャリア多重FFT信号D22における複数のサブキャリア信号を、各サブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトし、サブキャリアごとに分離した周波数領域のサブキャリア分離信号D23SC1~D23SCmを生成する。受信側サブキャリア分離部502は、FFT処理されたサブキャリア信号を周波数シフト量で周波数シフトする周波数シフト部でもある。周波数シフト設定部505は、受信側サブキャリア分離部502に対し、各サブキャリアの周波数シフト量を設定する。各サブキャリアの周波数シフト量は、送信側と同じである。IFFT部503-1~503-mは、それぞれ周波数領域のサブキャリア分離信号D23SC1~D23SCmをIFFT処理し、時間領域のサブキャリア信号D24SC1~D24SCmに変換する。
【0048】
受信側サブキャリア多重部504は、変換されたサブキャリアごとのサブキャリア信号D24SC1~D24SCmをデジタル信号D25に多重する。受信側サブキャリア多重部504は、多重したデジタル信号D25を誤り訂正部213へ出力する。デジタル信号D25は、入力されるサブキャリア多重信号D21と同様、XI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のいずれかに対応していてもよいし、XI信号、XQ信号、YI信号、YQ信号のうちの複数に対応していてもよい。例えば、受信側サブキャリア多重部504は、パラレル-シリアル変換によりサブキャリア信号D24SC1~D24SCmをデジタル信号D25に変換してもよいし、フレーム構成に応じてサブキャリア信号D24SC1~D24SCmをデジタル信号D25に多重してもよい。なお、受信側サブキャリア多重部504に代わりに、誤り訂正部213及びデジタル信号再生部214(復号化部)をサブキャリアごとに設け、サブキャリア信号ごとに復号化してもよい。
【0049】
<位相オフセットの検討>
次に、本実施の形態の課題となるオーバーラップFFT処理を用いた周波数シフトにより生じる位相オフセットについて説明する。図11は、図6の送信側デジタル信号処理部のFFT部402及び図10の受信側デジタル信号処理部のFFT部501において実行されるオーバーラップFFT処理を示している。
【0050】
図11に示すように、FFT部402及び501では、入力信号を所定の長さの入力ブロックに分割し、分割した各入力ブロックを1個前の入力ブロックの後半の所定の長さ(オーバーラップサイズNoverlap)のデータと合わせる。これにより、データの長さがFFTブロックサイズ(ウィンドウサイズ)NFFTのFFTブロック(FFT処理ブロック)がそれぞれ生成される。FFT部402及び501は、生成されたFFTブロックのそれぞれをFFT処理し、周波数領域の信号に変換する。変換された周波数領域の信号は周波数シフトされた後、IFFT処理されて出力信号(出力ブロック)として出力される。
【0051】
このように、送信側デジタル信号処理部でサブキャリア配置する際及び受信側デジタル信号処理部でサブキャリア分離する際、オーバーラップ型のFFTを用いた周波数シフト処理を行うことで、周波数軸上に各サブキャリアの信号を配置する。しかしながら、基本例を検討した結果、周波数シフト処理によりFFTブロック間に位相オフセットが生じることを発明者は見出した。すなわち、オーバーラップ型のFFTを用いた周波数シフト処理では、入力信号を複数に分割したFFTブロックとその前後のFFTブロックとの間で位相オフセットが生じる。例えば、図11では、FFTブロック1とオーバーラップするFFTブロック2の間、及び、FFTブロック2とオーバーラップするFFTブロック3の間で位相オフセットが生じる。また、伝送路に応じてサブキャリアの周波数配置を動的に変更した場合にも、同様に位相オフセットが生じる。このため、基本例の構成では、位相オフセットの発生により、光受信機において最終的に復元されたビット列に誤りが生じるという問題がある。
【0052】
オーバーラップするFFTブロック間で位相オフセットが発生する条件は、特定の周波数シフト量の場合と、サブキャリア配置(周波数シフト量)が変更された場合である。これらの場合に発生する位相オフセット量は、以下のように求められる。
【0053】
まず、周波数シフト量Δfは、FFTブロックサイズNFFTと周波数シフト数n(nはFFT点数)から、次の式(1)となる。なお、式(1)においてfsampleは、サンプリング周波数である。
【数1】
【0054】
図11のt=(NFFT-1/2Noverlap)×Δtにおける、FFTブロック1の位相回転量Φ1は次の式(2)となり、FFTブロック2の位相回転量Φ2は次の式(3)となる。
【数2】
【数3】
【0055】
そうすると、Φ1とΦ2の位相オフセットは、式(2)と式(3)の差により、式(1)を用いると、次の式(4)となる。
【数4】
【0056】
また、サブキャリア配置を変更した場合の位相オフセットは、式(2)と同様に求まり、式(1)を用いると、次の式(5)となる。
【数5】
【0057】
このように、FFTブロック間で発生する位相オフセットは、特定の周波数シフト量の場合とサブキャリア配置が変更された場合のいずれも、上記の式(4)及び式(5)のように、FFTブロックサイズNFFT、オーバーラップサイズNoverlap、サブキャリアの周波数シフト数n(周波数シフト量)から求められる。
【0058】
本実施の形態では、送信側デジタル信号処理部と受信側デジタル信号処理部において、この位相オフセットをFFTブロック毎に補償することでビット誤りが生じないサブキャリア多重を実現する。なお、以下では、送信側デジタル信号処理部及び受信側デジタル信号処理部において位相オフセットを補償する例について説明するが、送信側デジタル信号処理部及び受信側デジタル信号処理部のいずれか一方で位相オフセットを補償してもよい。
【0059】
<実施の形態1の送信側デジタル信号処理部>
図12は、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示している。図12に示すように、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部112は、図6の基本例の構成に加えて、FFTパラメータ取得部406、位相オフセット算出部407、位相補償部408を備えている。
【0060】
FFTパラメータ取得部406は、FFT部402-1~402-mのオーバーラップFFT処理のためのFFTパラメータを取得する。FFTパラメータ取得部406は、FFTパラメータとして、FFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapを取得する。例えば、メモリなどの記憶部に記憶されたパラメータを取得してもよいし、FFT部402-1~402-mから取得してもよい。FFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapは、FFT部402-1~402-m(全てのサブキャリア)で同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0061】
位相オフセット算出部407は、周波数シフトされた各サブキャリア信号に生じる位相オフセットを算出する。位相オフセット算出部407は、周波数シフト設定部405が設定する各サブキャリアの周波数シフト数n(周波数シフト量)、FFTパラメータ取得部406が取得した各サブキャリアのFFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapを用いて、各サブキャリアの位相オフセットを算出する。
【0062】
位相補償部408は、送信側サブキャリア配置部403の周波数シフトによって生じる各サブキャリア信号の位相オフセットを補償する。この例では、位相補償部408は、送信側サブキャリア配置部403による周波数シフト及びサブキャリア配置の前にサブキャリア信号の位相オフセットを補償する。具体的には、位相補償部408は、FFT処理された各サブキャリア信号に対し、位相オフセット算出部407により算出された各サブキャリアの位相オフセットを補償する。なお、送信側サブキャリア配置部403による周波数シフト及びサブキャリア配置の後にサブキャリア信号の位相オフセットを補償してもよい。位相補償部408は、特定の周波数シフト量の場合とサブキャリア配置が変更された場合に生じる位相オフセットを補償する。例えば、送信側サブキャリア配置部403、位相オフセット算出部407、位相補償部408は、周波数シフトされるとともに位相オフセットが補償された信号を生成する生成部を構成する。
【0063】
図13は、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部の動作例を示している。図13に示すように、まず、送信側デジタル信号処理部112は、デジタル信号からサブキャリア信号を生成する(S101)。送信側サブキャリア分離部401は、シリアル-パラレル変換やフレーム構成に応じた分離により、符号化部111から入力されるデジタル信号D11をサブキャリア信号D12SC1~D12SCmに分離する。
【0064】
次に、送信側デジタル信号処理部112は、サブキャリア信号に対しFFT処理を行う(S102)。FFT部402-1~402-mは、送信側サブキャリア分離部401により生成されたサブキャリア信号D12SC1~D12SCmに対し、予め設定されたFFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapでオーバーラップFFT処理を行い、周波数領域のサブキャリアFFT信号D13SC1~D13SCmに変換する。
【0065】
一方、送信側デジタル信号処理部112は、サブキャリア信号の位相オフセットを算出する(S103)。位相オフセット算出部407は、FFTブロックサイズNFFT、オーバーラップサイズNoverlap、周波数シフト数nを用いて、各サブキャリアの位相オフセットを算出する。具体的には、位相オフセット算出部407は、特定の周波数シフト量の場合、上記の式(4)にFFTブロックサイズNFFT、オーバーラップサイズNoverlap、周波数シフト数nを入力することで位相オフセットを算出し、サブキャリア配置が変更された場合、上記の式(5)にFFTブロックサイズNFFT、オーバーラップサイズNoverlap、周波数シフト数nを入力することで位相オフセットを算出する。例えば、まず周波数シフト量が設定されたタイミングで、上記の式(4)により位相オフセットを算出し、その後、サブキャリア配置(周波数シフト量)が変更されたタイミングで、上記の式(5)により位相オフセットを算出する。
【0066】
次に、送信側デジタル信号処理部112は、サブキャリア信号の位相オフセットを補償する(S104)。位相補償部408は、位相オフセット算出部407により算出された各サブキャリアの位相オフセットに基づいて、FFT部402-1~402-mにより変換された周波数領域のサブキャリアFFT信号D13SC1~D13SCmに生じる位相オフセットをFFTブロックごとに補償し、補償後(補償済)のサブキャリアFFT信号D13’SC1~D13’SCmを生成する。位相補償部408は、FFT処理された各サブキャリア信号の位相を、位相オフセット算出部407が上記の式(4)または式(5)により算出した位相オフセット分だけ逆回転させる。位相補償部408は、FFT処理のFFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapの関係と、周波数シフト数n(周波数シフト量)とに応じて生じる位相オフセットを補償すると言える。具体的には、特定の周波数シフト量の場合は次の式(6)の位相補償量で各サブキャリア信号に対し位相補償を行い、サブキャリア配置が変更された場合は次の式(7)の位相補償量で各サブキャリア信号に対し位相補償を行う。
【数6】
【数7】
【0067】
次に、送信側デジタル信号処理部112は、サブキャリア信号の周波数シフト及び配置を行う(S105)。送信側サブキャリア配置部403は、位相補償部408により位相オフセットが補償された周波数領域のサブキャリアFFT信号D13’SC1~D13’SCmを、周波数シフト設定部405から設定された各サブキャリアの周波数シフト量(周波数シフト数n)で周波数シフトし、周波数領域に配置したサブキャリア配置信号D14’を生成する。このサブキャリア配置信号D14’は、位相オフセット補償後(補償済)のサブキャリア配置信号となる。
【0068】
次に、送信側デジタル信号処理部112は、サブキャリア信号に対しIFFT処理を行う(S106)。IFFT部404は、送信側サブキャリア配置部403により配置された位相オフセット補償後のサブキャリア配置信号D14’に対しIFFT処理を行い、時間領域のサブキャリア多重信号D15に変換し、変換したサブキャリア多重信号D15をDAC113へ出力する。
【0069】
<実施の形態1の受信側デジタル信号処理部>
図14は、本実施の形態に係る受信側デジタル信号処理部の構成例を示している。図14に示すように、本実施の形態に係る受信側デジタル信号処理部212は、図10の基本例の構成に加えて、FFTパラメータ取得部506、位相オフセット算出部507、位相補償部508を備えている。
【0070】
FFTパラメータ取得部506は、送信側のFFTパラメータ取得部406と同様、FFT部501のFFTパラメータであるFFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapを取得する。例えば、FFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapは、全てのサブキャリアで同じである。
【0071】
位相オフセット算出部507は、送信側の位相オフセット算出部407と同様、周波数シフト設定部505が設定する周波数シフト数n、FFTパラメータ取得部506が取得したFFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapを用いて、各サブキャリアの位相オフセットを算出する。
【0072】
位相補償部508は、送信側の位相補償部408と同様、位相オフセット算出部507により算出された各サブキャリアの位相オフセットに基づいて、受信側サブキャリア分離部502の周波数シフトによって生じる各サブキャリアの位相オフセットを補償する。例えば、受信側サブキャリア分離部502、位相オフセット算出部507、位相補償部508は、周波数シフトされるとともに位相オフセットが補償された信号を生成する生成部を構成する。
【0073】
図15は、本実施の形態に係る受信側デジタル信号処理部の動作例を示している。図15に示すように、まず、受信側デジタル信号処理部212は、サブキャリア多重信号に対しFFT処理を行う(S201)。FFT部501は、ADC211を介して入力されるサブキャリア多重信号D21に対し、予め設定されたFFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapでオーバーラップFFT処理を行い、周波数領域のサブキャリア多重FFT信号D22に変換する。
【0074】
次に、受信側デジタル信号処理部212は、サブキャリア信号の周波数シフト及び分離を行う(S202)。受信側サブキャリア分離部502は、FFT部501により変換された周波数領域のサブキャリア多重FFT信号D22における複数のサブキャリア信号を、周波数シフト設定部505から設定された各サブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトし、周波数領域でサブキャリアごとに分離したサブキャリア分離信号D23SC1~D23SCmを生成する。
【0075】
一方、受信側デジタル信号処理部212は、サブキャリア信号の位相オフセットを算出する(S203)。位相オフセット算出部507は、送信側の位相オフセット算出部407と同様、特定の周波数シフト量の場合、上記の式(4)により位相オフセットを算出し、サブキャリア配置が変更された場合、上記の式(5)により位相オフセットを算出する。
【0076】
次に、受信側デジタル信号処理部212は、サブキャリア信号の位相オフセットを補償する(S204)。位相補償部508は、送信側の位相補償部408と同様、周波数シフトされた各サブキャリア信号に対し、特定の周波数シフト量の場合は上記の式(6)の位相補償量、サブキャリア配置が変更された場合は上記の式(7)の位相補償量でFFTブロックごとに位相補償を行い、補償後のサブキャリア分離信号D23’SC1~D23’SCmを生成する。
【0077】
次に、受信側デジタル信号処理部212は、サブキャリア信号に対しIFFT処理を行う(S205)。IFFT部503は、位相補償部508により位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号D23’SC1~D23’SCmに対しIFFT処理を行い、時間領域のサブキャリア信号D24SC1~D24SCmに変換する。
【0078】
次に、受信側デジタル信号処理部212は、サブキャリア信号からデジタル信号を生成する(S206)。受信側サブキャリア多重部504は、パラレル-シリアル変換やフレーム構成に応じた多重により、サブキャリア信号D24SC1~D24SCmをデジタル信号D25に多重し、多重したデジタル信号D25を誤り訂正部213へ出力する。
【0079】
以上のように、本実施の形態では、光位相変調方式と偏波多重分離技術を組み合わせたデジタルコヒーレント光送信機及び光受信機において、サブキャリア多重及び分離の際にオーバーラップ型のFFTを用いた周波数シフトにより生じる位相オフセットを算出し、FFTブロックごとに位相オフセットを補償するようにした。これにより、適切に位相オフセットの発生を抑えることができるため、光受信機においてビット誤りが生じないサブキャリア多重を実現することができる。
【0080】
(実施の形態2)
以下、図面を参照して実施の形態2について説明する。本実施の形態では、実施の形態1の構成において、オーバーラップサイズNoverlapとFFTブロックサイズNFFTを特定の関係に設定する例について説明する。
【0081】
図16は、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示している。図16に示すように、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部112は、実施の形態1と比べて、FFTパラメータ取得部406の代わりに、FFTパラメータ設定部409を備えている。
【0082】
FFTパラメータ設定部409は、FFT部402-1~402-mに対しオーバーラップFFT処理のためのFFTパラメータを設定する。FFTパラメータ設定部409は、FFTパラメータとして、FFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapを設定する。
【0083】
FFTパラメータ設定部409は、FFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapが所定の関係となるように、具体的には、オーバーラップサイズNoverlap=FFTブロックサイズNFFT×1/2となるように設定する。そうすると、位相補償部408における位相補償量は、特定の周波数シフト量の場合は次の式(8)となり、サブキャリア配置が変更された場合は次の式(9)となる。このため、実部または虚部に符号を乗算することで位相オフセットを補償できるため、位相補償部408を軽微な回路で実現できる。
【数8】
【数9】
【0084】
図17は、本実施の形態に係る受信側デジタル信号処理部の構成例を示している。図17に示すように、本実施の形態に係る受信側デジタル信号処理部212は、実施の形態1と比べて、FFTパラメータ取得部506の代わりに、FFTパラメータ設定部509を備えている。
【0085】
FFTパラメータ設定部509は、送信側と同様、FFT部501に対し、オーバーラップサイズNoverlap=FFTブロックサイズNFFT×1/2となるように、オーバーラップサイズNoverlapとFFTブロックサイズを設定する。位相補償部508の位相補償量は、送信側と同様、特定の周波数シフト量の場合は上記の式(8)となり、サブキャリア配置が変更された場合は上記の式(9)となる。
【0086】
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1の構成において、オーバーラップサイズNoverlapとFFTブロックサイズNFFTを特定の関係とすることで、位相補償部を軽微な回路構成とすることができる。
【0087】
(実施の形態3)
以下、図面を参照して実施の形態3について説明する。本実施の形態では、実施の形態1及び2の構成において、サブキャリア配置を動的に変更する具体例について説明する。
【0088】
図18は、本実施の形態に係る光伝送システム1の構成例を示している。図18に示すように、本実施の形態に係る光伝送システム1は、実施の形態1と同様の光送信機100及び光受信機200を備えている。
【0089】
本実施の形態では、光受信機200から光送信機100へサブキャリア配置を最適化するための伝送路特性及び誤り訂正数を通知する。なお、伝送路特性及び誤り訂正数のいずれか一方を通知してもよいし、その他の伝送品質情報等を通知してもよい。光受信機200から光送信機100へ通知する手段は特に限定されないが、例えば、光ファイバ伝送路300と異なる任意の伝送路を介して通知する。
【0090】
受信側デジタル信号処理部212は、受信信号に基づいて伝送路特性を検出し、検出した検出した伝送路特性を送信側デジタル信号処理部112へ通知する検出部(不図示)を備える。例えば、WDM(Wavelength Division Multiplexing)伝送における隣接チャネルやROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)による帯域狭窄などの伝送路特性を検出し通知する。また、誤り訂正部213は、受信信号に対する誤り訂正処理の検証結果である誤り訂正数を送信側デジタル信号処理部112へ通知する。なお、誤り訂正数に限らず、誤り訂正率などの誤り訂正結果やその他の復号結果情報を通知してもよい。
【0091】
図19は、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示している。図19に示すように、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部112は、実施の形態1の構成に加えて、サブキャリア間隔調整部410を備えている。
【0092】
サブキャリア間隔調整部410は、光受信機200から通知された伝送路特性及び誤り訂正数に基づいて、各サブキャリアのサブキャリア間隔を調整する。本実施の形態では、周波数シフト設定部405は、サブキャリア間隔調整部410により調整されたサブキャリア間隔に基づいて、各サブキャリアの周波数シフト数nを算出し、算出された周波数シフト数nを送信側サブキャリア配置部403に設定する。周波数シフト設定部405は、伝送路特性または誤り訂正数に基づいて、各サブキャリアの周波数シフト数n(周波数シフト量)を算出する算出部でもある。また、位相オフセット算出部407は、算出及び設定された周波数シフト数に基づいて各サブキャリアの位相オフセットを算出する。
【0093】
図20は、伝送路特性及び誤り訂正数による最適化前のFFT処理後の信号スペクトルを示し、図21は、伝送路特性及び誤り訂正数による最適化後のFFT処理後の信号スペクトルを示している。例えば、サブキャリアSC1~SC4のサブキャリア間隔(周波数シフト)をそれぞれ+ΔF1~+ΔF4として、最適化前に図20のようなサブキャリア配置であるとする。この場合に、伝送路特性及び誤り訂正数から、サブキャリアSC1とサブキャリアSC4の伝送品質が悪いと推定されると、サブキャリア間隔調整部410は、図21のようにサブキャリア間隔+ΔF1~+ΔF4を調整し、サブキャリアSC1とサブキャリアSC4の間隔を広げる。これにより、サブキャリアSC1とサブキャリアSC4の伝送品質を改善することができる。
【0094】
以上のように、本実施の形態によれば、受信側デジタル信号処理部で検出した伝送路の特性や誤り訂正部で検証した誤り訂正数から、サブキャリア間隔を動的に調整し、周波数シフト数と位相補償量を変化させることで周波数利用効率の最適化を実現することができる。
【0095】
(実施の形態4)
以下、図面を参照して実施の形態4について説明する。本実施の形態では、実施の形態1~3の構成において、位相オフセットを生じさせないように周波数シフト量を設定する例について説明する。
【0096】
図22は、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部の構成例を示している。図22に示すように、本実施の形態に係る送信側デジタル信号処理部112は、実施の形態1と比べて、位相補償部408を備えていない。すなわち、送信側デジタル信号処理部112は、送信側サブキャリア分離部401、FFT部402-1~402-m、送信側サブキャリア配置部403、IFFT部404、周波数シフト設定部405、FFTパラメータ取得部406、位相オフセット算出部407を備えている。
【0097】
本実施の形態では、位相オフセット算出部407は、各サブキャリアの位相オフセットを算出し、FFTブロックサイズNFFT及びオーバーラップサイズNoverlapに基づき、位相オフセットが生じない周波数オフセットを送信側サブキャリア配置部403に設定する。位相オフセット算出部407は、周波数シフトされた信号の位相オフセットが所定の量となるように周波数シフト量を算出する周波数シフト量算出部でもある。具体的には、位相オフセット算出部407は、所定の量が2πの整数倍となるように周波数シフト量を算出する。送信側サブキャリア配置部403は、位相オフセット算出部407により算出された周波数シフト量で周波数シフトを行うことにより、位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号D14’を生成する。例えば、送信側サブキャリア配置部403、位相オフセット算出部407は、周波数シフトされるとともに位相オフセットが補償された信号を生成する生成部を構成する。
【0098】
各サブキャリアの位相オフセットは、実施の形態1と同様に、特定の周波数シフト量の場合、上記の式(4)により求められ、サブキャリア配置が変更された場合、上記の式(5)により求められる。この位相オフセットが2πの整数倍となるように周波数シフトを設定することで、位相オフセットの発生を抑えることができる。
【0099】
例えば、オーバーラップサイズNoverlap=FFTブロックサイズNFFT×1/2とすると、特定の周波数シフト量の場合、n=2の整数倍に制限すると、位相オフセットは次の式(10)となり、サブキャリア配置が変更された場合、n=4の整数倍に制限すると、位相オフセットは次の式(11)となる(kは任意の整数である)。このため、オーバーラップサイズNoverlap=FFTブロックサイズNFFT×1/2のとき、位相オフセット算出部407は、特定の周波数シフト量の場合、各サブキャリアの周波数シフト数をn=2の整数倍となるように設定し、サブキャリア配置が変更された場合、各サブキャリアの周波数シフト数をn=4の整数倍となるように設定する。
【数10】
【数11】
【0100】
また、オーバーラップサイズNoverlap=FFTブロックサイズNFFT×1/4とすると、特定の周波数シフト量の場合、n=4の整数倍に制限すると、位相オフセットは次の式(12)となり、サブキャリア配置が変更された場合、n=8の整数倍に制限すると、位相オフセットは次の式(13)となる。このため、オーバーラップサイズNoverlap=FFTブロックサイズNFFT×1/4のとき、位相オフセット算出部407は、特定の周波数シフト量の場合、各サブキャリアの周波数シフト数をn=4の整数倍となるように設定し、サブキャリア配置が変更された場合、各サブキャリアの周波数シフト数をn=8の整数倍となるように設定する。
【数12】
【数13】
【0101】
図23は、本実施の形態に係る受信側デジタル信号処理部の構成例を示している。図22に示すように、本実施の形態に係る受信側デジタル信号処理部212は、実施の形態1と比べて、位相補償部508を備えていない。すなわち、受信側デジタル信号処理部212は、FFT部501、受信側サブキャリア分離部502、IFFT部503-1~503-m、受信側サブキャリア多重部504、周波数シフト設定部505、FFTパラメータ取得部506、位相オフセット算出部507を備えている。
【0102】
本実施の形態では、位相オフセット算出部507は、送信側と同様、各サブキャリアの位相オフセットを算出し、位相オフセットが生じない周波数オフセットを受信側サブキャリア分離部502に設定する。受信側サブキャリア分離部502は、位相オフセット算出部507により算出された周波数シフト量で周波数シフトを行うことにより、位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号D23’SC1~D23’SCmを生成する。例えば、受信側サブキャリア分離部502、位相オフセット算出部507は、周波数シフトされるとともに位相オフセットが補償された信号を生成する生成部を構成する。
【0103】
以上のように、本実施の形態によれば、FFTブロックサイズNFFT、オーバーラップサイズNoverlapに基づき、位相オフセットを生じさせない周波数シフト量を設定することで、位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号及びサブキャリア分離信号を生成することができる。このため、位相補償部を設けることなく、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0104】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0105】
上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。各装置及び各機能(処理)を、図24に示すような、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ41及び記憶装置であるメモリ42を有するコンピュータ40により実現してもよい。例えば、メモリ42に実施形態における方法(各装置における方法)を行うためのプログラムを格納し、各機能を、メモリ42に格納されたプログラムをプロセッサ41で実行することにより実現してもよい。
【0106】
これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0107】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0108】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0109】
(付記1)
サブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトした信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償された信号を生成する生成手段と、
を備える、信号処理装置。
(付記2)
前記生成手段は、前記FFT処理のFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズの関係と、前記周波数シフト量とに応じて生じる前記位相オフセットを補償する、
付記1に記載の信号処理装置。
(付記3)
前記生成手段は、前記周波数シフト量が所定の量の場合に前記位相オフセットを補償する、
付記1または2に記載の信号処理装置。
(付記4)
前記生成手段は、前記周波数シフト量が変動した場合に前記位相オフセットを補償する、
付記1または2に記載の信号処理装置。
(付記5)
前記生成手段は、前記FFTブロックごとに前記位相オフセットを補償する、
付記1乃至4のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記6)
前記生成手段は、
前記周波数シフトされた信号に生じる前記位相オフセットを算出する位相オフセット算出手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号に対し、前記算出された位相オフセットを補償する位相補償手段と、
前記位相オフセットが補償されたサブキャリア信号を前記周波数シフト量で周波数シフトする周波数シフト手段と、
を備える、付記1乃至5のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記7)
前記生成手段は、
前記FFT処理されたサブキャリア信号を前記周波数シフト量で周波数シフトする周波数シフト手段と、
前記周波数シフトされた信号に生じる前記位相オフセットを算出する位相オフセット算出手段と、
前記周波数シフトされた信号に対し、前記算出された位相オフセットを補償する位相補償手段と、
を備える、付記1乃至5のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記8)
前記FFT処理のFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズが所定の関係となるように設定する設定手段を備え、
前記位相オフセット算出手段は、前記設定されたFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズに基づいて、前記位相オフセットを算出する、
付記6または7に記載の信号処理装置。
(付記9)
前記所定の関係は、前記オーバーラップサイズ=前記FFTブロックサイズ×1/2である、
付記8に記載の信号処理装置。
(付記10)
前記生成手段は、
前記周波数シフトされた信号の前記位相オフセットが所定の量となるように前記周波数シフト量を算出する周波数シフト量算出手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号を前記算出された周波数シフト量で周波数シフトする周波数シフト手段と、
を備える、付記1乃至5のいずれか一項に記載の信号処理装置。
(付記11)
前記周波数シフト量算出手段は、前記FFT処理のFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズに基づいて、前記周波数シフトされた信号に前記位相オフセットが生じないように前記周波数シフト量を算出する、
付記10に記載の信号処理装置。
(付記12)
前記所定の量は、2πの整数倍である、
付記10または11に記載の信号処理装置。
(付記13)
入力されたデジタル信号を処理する信号処理手段と、
前記処理された信号を光変調し、前記光変調した光信号を光伝送路へ送信する光送信手段と、を備え、
前記信号処理手段は、
前記デジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成する生成手段と、
を備える、光送信装置。
(付記14)
前記信号処理手段は、
前記デジタル信号から前記サブキャリア信号を分離する分離手段と、
前記サブキャリア配置信号をIFFT処理するIFFT処理手段と、
を備える、付記13に記載の光送信装置。
(付記15)
前記信号処理手段は、光受信装置から通知される、前記光伝送路の伝送路特性、または、光受信装置における誤り訂正結果に基づいて、前記周波数シフト量を算出する周波数シフト量算出手段を備える、
付記13または14に記載の光送信装置。
(付記16)
サブキャリア多重された光信号を光伝送路から受信し、前記受信した光信号を光検波する光受信手段と、
前記光検波された信号をデジタル信号に変換し、前記変換したデジタル信号を処理する信号処理手段と、を備え、
前記信号処理手段は、
前記デジタル信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、
前記FFT処理されたデジタル信号に含まれるサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア分離信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号を生成する生成手段と、
を備える、光受信装置。
(付記17)
前記信号処理手段は、
前記サブキャリア分離信号をIFFT処理するIFFT処理手段と、
前記IFFT処理されたサブキャリア分離信号を多重化する多重手段と、
を備える、付記16に記載の光受信装置。
(付記18)
前記信号処理手段は、前記光伝送路の伝送路特性を検出し、前記検出した伝送路特性を光送信装置へ通知する検出手段を備える、
付記16または17に記載の光受信装置。
(付記19)
前記信号処理手段により処理された信号を誤り訂正処理し、前記誤り訂正の結果を光送信装置へ通知する誤り訂正手段を備える、
付記16乃至18のいずれか一項に記載の光受信装置。
(付記20)
光伝送路を介して接続された光送信装置と光受信装置とを備え、
前記光送信装置は、
入力されたデジタル信号を処理する信号処理手段と、
前記処理された信号を光変調し、前記光変調した光信号を前記光伝送路へ送信する光送信手段と、を備え、
前記信号処理手段は、
前記デジタル信号から分離されたサブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、
前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア配置信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア配置信号を生成する生成手段と、
を備える、光伝送システム。
(付記21)
前記信号処理手段は、
前記デジタル信号から前記サブキャリア信号を分離する分離手段と、
前記サブキャリア配置信号をIFFT処理するIFFT処理手段と、
を備える、付記20に記載の光伝送システム。
(付記22)
光伝送路を介して接続された光送信装置と光受信装置とを備え、
前記光受信装置は、
サブキャリア多重された光信号を前記光伝送路から受信し、前記受信した光信号を光検波する光受信手段と、
前記光検波された信号をデジタル信号に変換し、前記変換したデジタル信号を処理する信号処理手段と、を備え、
前記信号処理手段は、
前記デジタル信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行うFFT処理手段と、
前記FFT処理されたデジタル信号に含まれるサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトしたサブキャリア分離信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償されたサブキャリア分離信号を生成する生成手段と、
を備える、光伝送システム。
(付記23)
前記信号処理手段は、
前記サブキャリア分離信号をIFFT処理するIFFT処理手段と、
前記IFFT処理されたサブキャリア分離信号を多重化する多重手段と、
を備える、付記22に記載の光伝送システム。
(付記24)
サブキャリア信号をFFTブロックごとにオーバーラップさせてFFT処理を行い、
前記FFT処理されたサブキャリア信号をサブキャリアの周波数シフト量で周波数シフトした信号であって、前記オーバーラップするFFTブロック間で生じる位相オフセットが補償された信号を生成する、
信号処理方法。
(付記25)
前記生成では、前記FFT処理のFFTブロックサイズ及びオーバーラップサイズの関係と、前記周波数シフト量とに応じて生じる前記位相オフセットを補償する、
付記24に記載の信号処理方法。
【符号の説明】
【0110】
1 光伝送システム
10 信号処理装置
11 FFT処理部
12 生成部
20 光送信装置
21 光送信部
22 信号処理部
23 FFT処理部
24 生成部
30 光受信装置
31 光受信部
32 信号処理部
33 FFT処理部
34 生成部
40 コンピュータ
41 プロセッサ
42 メモリ
100 光送信機
110 送信側DSP
111 符号化部
112 送信側デジタル信号処理部
113 DAC
120 光送信フロントエンド回路
121 レーザ光源
122 増幅器
123 MZ変調器
124 偏波合成部
200 光受信機
210 受信側DSP
211 ADC
212 受信側デジタル信号処理部
213 誤り訂正部
214 デジタル信号再生部
220 光受信フロントエンド回路
221 レーザ光源
222 偏波分離部
223 90度ハイブリッド回路
224 増幅器
300 光ファイバ伝送路
401 送信側サブキャリア分離部
402 FFT部
403 送信側サブキャリア配置部
404 IFFT部
405 周波数シフト設定部
406 FFTパラメータ取得部
407 位相オフセット算出部
408 位相補償部
409 FFTパラメータ設定部
410 サブキャリア間隔調整部
501 FFT部
502 受信側サブキャリア分離部
503 IFFT部
504 受信側サブキャリア多重部
505 周波数シフト設定部
506 FFTパラメータ取得部
507 位相オフセット算出部
508 位相補償部
509 FFTパラメータ設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24