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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240326BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20240326BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240326BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20240326BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K5/20
H02K7/14 A
F04D29/58 P
F04D29/42 H
F04D29/42 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022550485
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032706
(87)【国際公開番号】W WO2022059548
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020157788
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 海
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 裕司
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 光
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139497(WO,A1)
【文献】特表2015-535677(JP,A)
【文献】特開2018-157644(JP,A)
【文献】特開昭62-012350(JP,A)
【文献】特開平09-009561(JP,A)
【文献】実開平02-088445(JP,U)
【文献】特開平09-014266(JP,A)
【文献】特開2014-96979(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111416463(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 5/20
H02K 7/14
F04D 29/58
F04D 29/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータを備えた電動モータと、
前記電動モータの駆動によって回転する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられたインペラと、
前記ステータを包囲すると共に、前記ステータが固定されたインナーケースと、
前記インナーケースに外装されるアウター部と、を備え、
前記アウター部は、前記インナーケースの外周面に対面する内周面と、
前記内周面に形成されると共に、冷媒が通過する流路溝と、を備えており、
前記流路溝は、前記回転軸の軸方向に延在する複数の主溝部を備え、
前記複数の主溝部は、前記インナーケースの周方向に並設されており、
前記主溝部の前記インナーケースの周方向の幅は、前記主溝部の前記軸方向の一方の端部から他方の端部に向けて離れるほど広がるように設けられている、回転機械。
【請求項2】
前記インナーケースは、前記回転軸の軸方向の両方の端部を備え、
前記アウター部は、前記内周面を有する側壁と、前記インナーケースの前記両方の端部のうち、一方の前記端部に対面する奥壁と、前記奥壁に設けられると共に、前記流路溝に連通する返し溝部と、を備えている、請求項1記載の回転機械。
【請求項3】
前記複数の主溝部は、前記返し溝部を介して互いに連通している、請求項2記載の回転機械。
【請求項4】
前記側壁は、前記奥壁に対して前記軸方向の反対側に設けられると共に、内径が拡大した段差部を備えており、
前記流路溝は、前記複数の主溝部を互いに連通すると共に、前記段差部で開放された接続溝部を備えており、
前記インナーケースは、前記段差部に当接して前記接続溝部を封止するフランジ部を備えている、請求項3記載の回転機械。
【請求項5】
前記流路溝は、前記冷媒を受け入れる入口と、前記冷媒を排出する出口とを備え、
前記流路溝及び前記返し溝部は、前記入口と前記出口とを接続するワンパス流路を形成する、請求項2~4のいずれか一項記載の回転機械。
【請求項6】
前記返し溝部の流路断面は、前記流路溝の最大流路断面よりも小さい、請求項2~5のいずれか一項記載の回転機械。
【請求項7】
前記奥壁は、前記インペラと前記ステータとの間に配置されており、
前記軸方向で、前記返し溝部の少なくとも一部は、前記インペラに重なるように配置されている、請求項2~6のいずれか一項記載の回転機械。
【請求項8】
前記インナーケースは、前記アウター部の前記内周面に接する外周面を備え、
前記外周面のうち、前記インナーケースの少なくとも前記流路溝に対面する領域は、平坦である、請求項1~7のいずれか一項記載の回転機械。
【請求項9】
前記流路溝は、前記複数の主溝部を互いに連通する接続溝部を備えており、
前記主溝部の一方の端部は前記返し溝部に接続されており、他方の端部は前記接続溝部に接続されている、請求項3記載の回転機械。
【請求項10】
前記接続溝部は、前記周方向に沿って並ぶように複数設けられており、
前記返し溝部は、前記周方向に沿って並ぶように複数設けられており、
前記接続溝部と前記返し溝部とは、前記周方向で交互に配置されている、請求項9記載の回転機械。
【請求項11】
ロータ及びステータを備えた電動モータと、
前記電動モータの駆動によって回転する回転軸と、
前記回転軸に取り付けられたインペラと、
前記ステータを包囲すると共に、前記ステータが固定されたインナーケースと、
前記インナーケースに外装されるアウター部と、を備え、
前記インナーケースは、前記回転軸の軸方向の両方の端部を備え、
前記アウター部は、前記インナーケースの前記両方の端部のうち、一方の前記端部に対面する奥壁と、前記奥壁に設けられると共に、冷媒が通過する奥壁溝部と、前記インナーケースの外周面に対面する内周面と、前記内周面に形成され、前記奥壁溝部に連通して前記冷媒が通過する主溝部と、を備え、
前記主溝部は、前記回転軸の軸方向に延在し、
前記主溝部の前記インナーケースの周方向の幅は、前記主溝部の前記軸方向の一方の端部から他方の端部に向けて離れるほど広がるように設けられている、回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の冷却構造として、例えば、特許文献1~4に係る技術が知られている。また、インペラを備えたターボチャージャーなどの回転機械がある。この種の回転機械は、インペラを、主体的、あるいは補助的に回転させる電動モータを備えている。電動モータの近傍には、冷却流路が設けられており、電動モータの発熱は、冷却流路を通過する冷媒によって抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-033916号公報
【文献】特開2017-99281号公報
【文献】特開昭59-070162号公報
【文献】特開平10-210702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転機械では、電動モータのステータ周りの構造やインペラの配置などによって冷却流路を形成する際の制約も多くなる。その結果として、電動モータの冷却が不十分になってしまうと、各種の問題を生じる可能性があった。
【0005】
本開示は、電動モータを冷却できる回転機械を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ロータ及びステータを備えた電動モータと、電動モータの駆動によって回転する回転軸と、回転軸に取り付けられたインペラと、ステータを包囲すると共に、ステータが固定されたインナーケースと、インナーケースに外装されるアウター部と、を備えている回転機械である。この回転機械において、アウター部は、インナーケースの外周面に対面する内周面と、内周面に形成されると共に、冷媒が通過する流路溝と、を備えている。
【0007】
本開示の一態様は、ロータ及びステータを備えた電動モータと、電動モータの駆動によって回転する回転軸と、回転軸に取り付けられたインペラと、ステータを包囲すると共に、ステータが固定されたインナーケースと、インナーケースに外装されるアウター部と、を備えた回転機械である。この回転機械において、インナーケースは、回転軸の軸方向の両方の端部を備え、アウター部は、インナーケースの両方の端部のうち、一方の端部に対面する奥壁と、奥壁に設けられると共に、冷媒が通過する奥壁溝部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のいくつかの態様によれば、電動モータを冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る回転機械を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る回転機械の一部分を示す分解斜視図である。
図3図3は、モータハウジングの内周面を示す斜視図である。
図4図4は、冷却流路の概略を平面的に展開し、冷却流路を流れる冷媒の流れを模式的に示す説明図である。
図5図5は、他の実施形態に係る回転機械の一部分を示す分解斜視図である。
図6図6は、他の実施形態に係る冷却流路の概略を平面的に展開し、冷却流路を流れる冷媒の流れを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一例は、ロータ及びステータを備えた電動モータと、電動モータの駆動によって回転する回転軸と、回転軸に取り付けられたインペラと、ステータを包囲すると共に、ステータが固定されたインナーケースと、インナーケースに外装されるアウター部と、を備えている回転機械である。この回転機械において、アウター部は、インナーケースの外周面に対面する内周面と、内周面に形成されると共に、冷媒が通過する流路溝と、を備えている。
【0011】
一例に係る回転機械では、電動モータのステータはインナーケースに固定され、インナーケースにはアウター部が外装されている。冷媒が通過する流路溝は、アウター部の内周面に形成されており、流路溝は、インナーケースの周囲に配置される。電動モータのステータは、流路溝を通過する冷媒により、インナーケースを介して冷却される。その結果、電動モータを冷却できる。ここで、流路溝は、アウター部に主体的に形成されている。つまり、内側のインナーケースに関しては、流路溝を形成するための寸法や構造等の制約は少ない。したがって、例えば、インナーケースの肉厚を薄くしてステータを広い範囲で均一に冷却するなどの工夫が容易である。
【0012】
いくつかの例において、インナーケースは、回転軸の軸方向の両方の端部を備え、アウター部は、上記の内周面を有する側壁と、インナーケースの両方の端部のうち、一方の端部に対面する奥壁と、奥壁に設けられると共に、流路溝に連通する返し溝部と、を備えていてもよい。奥壁に冷媒が通過する返し溝部が形成されているので、インナーケースに固定されたステータの一方の端部を冷却することができる。
【0013】
いくつかの例において、流路溝は、軸方向に延在する複数の主溝部を備え、複数の主溝部は、インナーケースの周方向に並設されると共に、返し溝部を介して互いに連通していてもよい。複数の主溝部は、インナーケースの周方向に並設され、互いに、返し溝部によって連通しているので、インナーケースの周方向の広い範囲からステータを冷却することができる。
【0014】
いくつかの例において、側壁は、奥壁に対して軸方向の反対側に設けられると共に、内径が拡大した段差部を備えており、流路溝は、複数の主溝部を互いに連通すると共に、段差部で開放された接続溝部を備えており、インナーケースは、段差部に当接して接続溝部を封止するフランジ部を備えていてもよい。複数の主溝部は、接続溝部を介して互いに連通するため、共通の冷媒を用いて広い範囲を冷却することができる。
【0015】
いくつかの例において、流路溝は、冷媒を受け入れる入口と、冷媒を排出する出口とを備え、流路溝及び返し溝部は、入口と出口とを接続するワンパス流路を形成してもよい。ワンパス流路とすることにより、冷媒の滞留箇所を少なくでき、冷媒の円滑な流れを形成し易くなる。
【0016】
いくつかの例において、返し溝部の流路断面は、流路溝の最大流路断面よりも小さくてもよい。返し溝部での流速が流路溝に対して相対的に速くなり、奥壁での冷却効率の向上に有利になる。
【0017】
いくつかの例において、奥壁は、インペラとステータとの間に配置されており、軸方向で、返し溝部の少なくとも一部は、インペラに重なるように配置されていてもよい。返し溝部を通過する冷媒により、ステータ及びインペラの両方を冷却できる。
【0018】
いくつかの例において、インナーケースは、アウター部の内周面に接する外周面を備え、外周面のうち、インナーケースの少なくとも流路溝に対面する領域は、平坦であってもよい。インナーケースの流路溝に対面する領域が平坦であれば、冷媒の流路となる流路溝を閉塞した際にシール(気密または液密に)することができる。
【0019】
いくつかの例において、流路溝は、複数の主溝部を互いに連通する接続溝部を備えており、主溝部の一方の端部は返し溝部に接続されており、他方の端部は接続溝部に接続されていてもよい。
【0020】
いくつかの例において、接続溝部は、周方向に沿って並ぶように複数設けられており、返し溝部は、周方向に沿って並ぶように複数設けられており、接続溝部と返し溝部とは、周方向で交互に配置されていてもよい。
【0021】
本開示の一例は、ロータ及びステータを備えた電動モータと、電動モータの駆動によって回転する回転軸と、回転軸に取り付けられたインペラと、ステータを包囲すると共に、ステータが固定されたインナーケースと、インナーケースに外装されるアウター部と、を備えている回転機械である。この回転機械において、インナーケースは、回転軸の軸方向の両方の端部を備え、アウター部は、インナーケースの両方の端部のうち、一方の端部に対面する奥壁と、奥壁に設けられると共に、冷媒が通過する奥壁溝部と、を備えている。
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図1及び図2は、本開示における回転機械1の一例を示しており、具体的には電動過給機である。本開示の回転機械1は、電動モータ2と、電動モータ2の駆動によって回転する回転軸3と、回転軸3に取り付けられたコンプレッサインペラ4とを備えている。また、回転機械1は、電動モータ2の駆動を制御するインバータ6を備えている。
【0024】
電動モータ2は、回転軸3に固定されたロータ21と、ロータ21を囲むように配置されたステータ22とを備えている。ステータ22は、ティース22aと、ティース22aに巻回されたコイル22bとを備えている。ステータケース9(インナーケースの一例)は、電動モータ2を包囲するように配置され、特にステータ22を包囲するように配置されている。ステータ22は、ステータケース9の内部に固定されている。
【0025】
ステータケース9は、有底筒状であり、ステータ22が固定された筒状の周壁91を備えている。周壁91は、回転軸3の軸方向Daに沿うように配置されている。ステータケース9は、周壁91の軸方向Daの一方の端部に設けられた底壁92を備えている。底壁92の中央には開口が形成されており、開口には、回転軸3を支持する軸受31が固定されている。ステータケース9は、底壁92に対して反対側の端部を備え、この端部は開放されている。開放された端部の外周には、フランジ部93が形成されている。以下の説明において、ステータケース9の外周面Sbとは、周壁91の外周面91a及び底壁92の外周面92aを意図している。
【0026】
回転機械1は、コンプレッサインペラ4を収容するインペラハウジング70と、電動モータ2を収容するモータハウジング8とを備えている。モータハウジング8は、コンプレッサインペラ4に対して回転軸3の軸方向Daに接続されている。また、回転機械1は、ステータケース9の開放された端部を閉鎖する内蓋部71と、モータハウジング8の開放部を閉鎖する外蓋部72と、を備えている。内蓋部71には、回転軸3が挿通される中央孔が形成されている。内蓋部71と外蓋部72との間には筒状のスリーブ73が設けられている。スリーブ73の内部には、回転軸3を回転自在に支持する軸受32が固定されている。
【0027】
モータハウジング8は、ステータケース9に外装され、実質的に電動モータ2を内部に収容するモータ収容部81(アウター部の一例)と、インバータ6が設置されるインバータ収容部82とを備えている。インバータ収容部82には、電動モータ2の駆動を制御するインバータ6が設置されている。インバータ収容部82にはインバータ6を覆うカバー部61が固定されている。
【0028】
モータ収容部81の内周面Saは、実質的にステータケース9の外周面Sbに当接しており、モータ収容部81の内周面Saとステータケース9の外周面Sbとの間には、冷却流路Fが形成されている。冷却流路Fには、電動モータ2を冷却する冷却液などの冷媒C(図4参照)が通過する。以下、冷却流路Fを形成する構造について説明する。
【0029】
モータ収容部81は、ステータケース9の周壁91を囲む側壁83を備えている。側壁83の軸方向Daの一方の端部には奥壁84(図3参照)が設けられており、反対側である他方の端部(以下、「開放端85」と称する)は開放されている。奥壁84には、回転軸3を回転自在に支持する軸受31が固定されている。側壁83は、ステータケース9の周壁91の外周面91aに対面する内周面83aを備えている。内周面83aには、一方の端部から他方の端部に至る途中で内径が拡大する段差部83bが形成されている。段差部83bにはステータケース9のフランジ部93が当接する。なお、以下の説明において、モータ収容部81の内周面Saとは、側壁83の内周面83a及び奥壁84の内周面84aを意図している。
【0030】
ステータケース9は、側壁83の開放端85から側壁83内に挿入される(図2参照)。ステータケース9はフランジ部93を備え、フランジ部93の外周端93aには、シール部材94が組付けられている。フランジ部93は軸方向Daに移動する。シール部材94は、フランジ部93の移動に追従し、側壁83の内周面83aに摺接した状態で移動する。フランジ部93は段差部83bに当接するまで移動する。フランジ部93が段差部83bに当接することにより、シール部材94は冷却流路Fのシール性(気密性または液密性)を確保する。なお、本実施形態においてシール部材94は、側壁83の内周面83aに摺接した状態で移動する。したがって、フランジ部93が軸方向Daで僅かにずれていても、冷却流路Fの実質的なシール性を確保できる。
【0031】
図2図3及び図4に示されるように、側壁83の内周面83aには、冷媒Cが通過する流路溝11が形成されている。流路溝11は、側壁83の内周面83aに設けられた複数の主溝部12と、複数の主溝部12を連通する接続溝部13とを備えている。冷却流路Fとして把握した場合に、接続溝部13は側壁83の段差部83bで開放されており、段差部83bがステータケース9のフランジ部93に当接することで接続溝部13は封止され、冷却流路Fとしての機能を発揮できるようになっている。
【0032】
主溝部12は、回転軸3の軸方向Daに延在する縦長の溝である。複数の主溝部12は、ステータケース9の周方向Db、つまり回転軸3の回転方向に等間隔で並設されている。また、各主溝部12は、奥壁84から離れるほど幅が広がるようなテーパ状に設けることができる。上述の通り、接続溝部13は側壁83の段差部83bで開放されており、モータハウジング8(モータ収容部81)をダイカストで成形する場合に、接続溝部13はアンダーカットになり難い。更に、主溝部12をテーパ状に設けることで、流路溝11全体としてもアンダーカットになり難くなる。その結果、機械加工などの仕上げ等に伴う負担は軽減され、製造時の作業性を向上して効率的な製造が可能になる。
【0033】
奥壁84の内周面84aは、ステータケース9の底壁92(一方の端部)に対面している。奥壁84の内周面84aには、返し溝部14(奥壁溝部の一例)が形成されている。返し溝部14は、流路溝11に連通されて冷却流路Fの一部となる。返し溝部14は、冷媒Cが連通可能となるように、複数の主溝部12の奥壁84側の端部同士を接続している。一方で、接続溝部13は、奥壁84とは反対側に設けられている。接続溝部13は、冷媒Cが連通可能となるように、複数の主溝部12の端部同士を接続している。つまり、複数の主溝部12の一方の端部は、返し溝部14に接続されており、その結果、隣接する複数の主溝部12は互に連通している。また、複数の主溝部12の他方の端部は、接続溝部13に接続されており、その結果、隣接する複数の主溝部12は互に連通している。
【0034】
ステータケース9をモータ収容部81の内部に装着した際、流路溝11及び返し溝部14は、ステータケース9の外周面Sbによって閉塞され、冷媒Cが通過する冷却流路Fとなる。本実施形態に係る冷却流路Fはワンパス流路を形成する。ワンパス(One-Pass)流路とは、ある2つの場所を結ぶ流路であって、分岐することなく1つに繋がっている流路を意味する。本実施形態では、接続溝部13と返し溝部14とは、周方向Dbで交互に設けられている。接続溝部13を通過した冷媒Cは主溝部12に沿って一方向に流れる(往路の流れ)。その後、冷媒Cは、返し溝部14を通過することで流れは反転され、今度は、隣の主溝部12に沿って反対方向に流れる(復路の流れ)。その結果、往路の流れと復路の流れとが交互に登場するワンパス流路が形成される。ワンパス流路の上流側の端部には冷媒Cを受け入れる入口15aが設けられている。ワンパス流路の下流側の端部には冷媒Cを排出する出口15bが設けられている。ワンパス流路とすることにより、冷媒Cの滞留箇所を少なくでき、冷媒Cの円滑な流れを形成し易くなる。
【0035】
本実施形態に係る流路溝11は、接続溝部13付近の主溝部12の流路断面が最も大きく、最大流路断面になる。これに対し、返し溝部14の流路断面は、最大流路断面よりも小さくなっている。返し溝部14の流路断面を、流路溝11の最大流路断面よりも小さくすることで、返し溝部14での流速が流路溝11に対して相対的に速くなり、奥壁84での冷却ができる。
【0036】
また、返し溝部14が形成された奥壁84は、コンプレッサインペラ4(図1参照)とステータ22との間に設けられている。更に返し溝部14の少なくとも一部は、軸方向Daでコンプレッサインペラ4に重なるように配置されている。その結果、返し溝部14を通過する冷媒Cにより、ステータ22及びコンプレッサインペラ4の両方を冷却できる。なお、「返し溝部14の少なくとも一部は、軸方向Daでコンプレッサインペラ4に重なるように配置される」とは、軸方向Daから奥壁84を見た場合に、返し溝部14の少なくとも一部がコンプレッサインペラ4に重なるように配置されていることを意味する。
【0037】
ステータケース9の外周面Sbの一部である周壁91の外周面91aは、ステータケース9の外周面Sbの一部である。外周面91aは、モータ収容部81の側壁83の内周面83aに接している。外周面91aは、基本的に凹凸の無い円筒状の平坦面であり、少なくとも、流路溝11に対面する領域は平坦になっている。その結果、冷却流路Fとなる流路溝11を閉塞した際にシール(気密または液密に)することができる。
【0038】
次に、実施形態に係る回転機械1の作用、効果を説明する。回転機械1は、ステータケース9と、ステータケース9に外装されるモータ収容部81と、を備えている。冷媒Cが通過する流路溝11は、モータ収容部81の内周面Saに形成されており、流路溝11は、ステータケース9の周囲に配置される。電動モータ2のステータ22は、流路溝11を通過する冷媒Cにより、ステータケース9を介して冷却される。その結果、電動モータ2を冷却できる。また、冷却流路F(冷媒Cが通過する流路溝11)は、ステータケース9とモータ収容部81との間に設けられている。したがって、形状の安定した冷却流路Fを得易くなり、更に狭い範囲に速い流速の冷媒Cを導くことが容易になるので、冷却性能を高め易い。
【0039】
更に本実施形態では、冷却流路Fとなる流路溝11をモータ収容部81に形成するので、ステータケース9については、成形方法の幅が広がる。例えば、ステータケース9をスチール深絞りで成形することも可能であり、その結果、ステータケース9の単品での製造コストを低減できる。更に、ステータケース9の材料をスチールとすることで異種金属の嵌合がなくなるため、品質面での信頼性が向上する。また、ステータケース9はパイプ材からのプレス加工、削り加工等によって製作することもできる。
【0040】
また、流路溝11は、モータ収容部81に主体的に形成されている。つまり、ステータケース9に関しては、流路溝11を形成するための寸法や構造等の制約は少なくなる。その結果、例えば、ステータケース9の肉厚を薄くしてステータ22を広い範囲で均一に冷却するなどの工夫が容易であり、電動モータ2の冷却が可能となる。なお、本実施形態では、ステータケース9の外周面Sbは平坦であり、シール性に優れた形態になっている。しかしながら、ステータケース9の強度や構造に係る制約上、許容されるのであれば、補助的に冷却流路Fの一部となる溝をステータケース9の外周面Sbに設けてもよい。
【0041】
また、モータ収容部81は奥壁84を備え、奥壁84には、流路溝11に連通する返し溝部14が形成されている。奥壁84に返し溝部14を形成することにより、ステータケース9に固定されたステータ22の奥側の端部(一方の端部)を冷却することができる。また、モータ収容部81の側壁83ではなく、奥壁84に返し溝部14を設けているため、モータ収容部81をダイカストで成形する場合に、返し溝部14はアンダーカットになり難く、成形性を向上できる。
【0042】
また、流路溝11は複数の主溝部12を備えている。複数の主溝部12は、ステータケース9の周方向Dbに並設され、更に、返し溝部14を介して互いに連通している。その結果、ステータケース9の周方向Dbの広い範囲からステータ22を冷却することができる。特に、本実施形態に係る複数の主溝部12は、等間隔に並設されているため、ステータ22を均等に冷却する上で有利である。この「等間隔に並設されている」とは、僅かな誤差を許容しながら実質的に等しい間隔で並んでいる状態を意味する。
【0043】
更に複数の主溝部12は、接続溝部13を介して互いに連通するため、共通の冷媒Cを用いて広い範囲を冷却することができる。更に、複数の主溝部12が連通された接続溝部13は段差部83bで開放されているため、モータ収容部81をダイカストで成形する場合に、主溝部12及び接続溝部13はアンダーカットになり難く、成形性を向上できる。
【0044】
次に、図5及び図6を参照し、他の実施形態に係る回転機械1Aについて説明する。なお、他の実施形態に係る回転機械1Aは、上記の回転機械1と同一の構造や構成を備えている。基本的に回転機械1と同様の作用、効果を奏する。したがって、以下の説明では、相違点を中心に説明を行い、同一の構造や構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
回転機械1Aは、ステータ22(図1参照)を包囲すると共に、ステータ22が固定されたステータケース9と、ステータケース9に外装されるモータ収容部81と、を備えている。モータ収容部81の内周面Saは、ステータケース9の外周面Sbに対面する。モータ収容部81は、側壁83を備えており、側壁83の内周面83aは、ステータケース9の周壁91の外周面91aに対面する。側壁83の内周面83aには、冷媒Cが通過する流路溝11が形成されている。
【0046】
流路溝11は、複数の主溝部12と接続溝部13とを備えている。主溝部12は、回転軸3の軸方向Daに長い縦長の溝である。複数の主溝部12は、ステータケース9の周方向Dbに等間隔で並設されている。複数の主溝部12のうち、一の主溝部12には冷媒Cの入口15aが形成されており、入口15aが形成された主溝部12の隣の主溝部12には冷媒Cの出口15bが形成されている。接続溝部13は、入口15aの主溝部12と出口15bの主溝部12とを区画する領域を除き、基本的に周方向Dbの全周に亘って複数の主溝部12を連通可能に接続している。
【0047】
モータ収容部81は、ステータケース9の底壁92に対面する奥壁84を備えている。奥壁84には、返し溝部14が設けられている。返し溝部14は、入口15aの主溝部12と出口15bの主溝部12とを区画する領域を除き、基本的に周方向Dbの全周に亘って複数の主溝部12を連通可能に接続している。
【0048】
回転機械1Aでは、上述の回転機械1と同様に、冷媒Cが通過する流路溝11は、モータ収容部81の内周面Saに形成されている。流路溝11は、ステータケース9の周囲に配置される。電動モータ2のステータ22は、流路溝11を通過する冷媒Cにより、ステータケース9を介して冷却される。その結果、電動モータ2を冷却できる。また、流路溝11は、モータ収容部81に主体的に形成されている。つまり、モータ収容部81の内側のステータケース9に関しては、流路溝11を形成するための寸法や構造等の制約は少ない。したがって、電動モータ2を冷却するための冷却性能を高め易い。なお、本実施形態に係る接続溝部13と返し溝部14とは、複数の主溝部12が全体に亘って接続されるように形成されており、ワンパス流路にはなっていない。
【0049】
本開示は、上記の実施形態のみに限定されない。例えば、上記の実施形態では、回転機械の一例として電動過給機を説明したが、電動モータの駆動で回転するインペラを備えた回転機械に広く適用でき、例えば電動アシスト型の過給機等であってもよい。
【0050】
また、冷却流路を形成する流路溝は、様々な形状を採用することができ、例えば、ステータケースの周方向に沿うような形状や波形の形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1、1A 回転機械
2 電動モータ
3 回転軸
4 コンプレッサインペラ(インペラ)
9 ステータケース
8 モータハウジング
11 流路溝
12 主溝部
13 接続溝部
14 返し溝部(奥壁溝部)
15a 入口
15b 出口
21 ロータ
22 ステータ
81 モータ収容部(アウター部)
83 側壁
84 奥壁
83b 段差部
93 フランジ部
Sa 内周面
Sb 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6