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特許7459965判別装置、判別システム、判別方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】判別装置、判別システム、判別方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022558730
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040746
(87)【国際公開番号】W WO2022091319
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨暉
(72)【発明者】
【氏名】福司 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】オウ シンイ
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-34482(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008689(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0100801(US,A1)
【文献】特開2017-6371(JP,A)
【文献】特開2006-026092(JP,A)
【文献】特開2011-251013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する波形生成手段と、
矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出する検出手段と、
前記踵接地および前記爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、前記歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する判別手段と、を備える判別装置。
【請求項2】
前記波形生成手段は、
前記歩行波形から一歩行周期分の歩行波形を抽出し、
前記判別手段は、
一歩行周期分の前記冠状面内の回転角の歩行波形のピーク値に基づいて、前記歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する請求項1に記載の判別装置。
【請求項3】
前記判別手段は、
前記踵接地のタイミングにおける前記冠状面内の回転角のピーク値と、前記爪先離地のタイミングにおける前記冠状面内の回転角のピーク値との大小関係に基づいて、前記歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する請求項1または2に記載の判別装置。
【請求項4】
前記判別手段は、
前記爪先離地のタイミングにおける前記冠状面内の回転角のピーク値から、前記踵接地のタイミングにおける前記冠状面内の回転角のピーク値を引いた値の符号に基づいて、前記歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の判別装置。
【請求項5】
前記判別手段は、
前記歩行波形の判別結果に応じたラベルを、前記歩行波形に関するデータに付与する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の判別装置。
【請求項6】
左右の各々の足の前記歩行波形に基づいて、左右の各々の足の歩容を解析するための解析モデルが記憶される記憶手段と、
前記解析モデルを用いて、左右の各々の足の前記歩行波形に基づいて、左右の各々の足の歩容を解析する解析手段と、を備える請求項1乃至4のいずれか一項に記載の判別装置。
【請求項7】
前記解析手段は、
左右の各々の足の歩容に関する解析結果に応じた情報を出力する請求項6に記載の判別装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の判別装置と、
歩行波形の計測対象であるユーザの履く一対の履物の各々に配置され、前記ユーザの歩行に応じて空間加速度および空間角速度を計測し、計測した前記空間加速度および前記空間角速度に基づくセンサデータを生成し、生成した前記センサデータを前記判別装置に送信するデータ取得装置と、を備える判別システム。
【請求項9】
コンピュータが、
足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成し、
矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出し、
前記踵接地および前記爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、検証中の前記歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する判別方法。
【請求項10】
足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する処理と、
矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出する処理と、
前記踵接地および前記爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、検証中の前記歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する処理と、をコンピュータに実行させるプログラ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行を判別する判別装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
体調管理を行うヘルスケアへの関心の高まりから、歩行の特徴を含む歩容を計測し、その歩容に応じた情報をユーザに提供するサービスに注目が集まっている。例えば、靴等の履物に慣性計測装置を実装し、ユーザの歩容に関するデータ(以下、歩容データとも呼ぶ)をビックデータとして活用する試みがある。ビックデータとして歩容データを活用するためには、大量に集められた歩容データの各々が、左右いずれの足に由来するのかを明確に区別することが求められる。
【0003】
特許文献1には、人の腰に装着された加速度センサから得られたデータ上において、左足および右足の各々の一歩に対応する区間または時刻を特定する移動運動解析装置について開示されている。特許文献1の装置は、人の左右方向の加速度の波形を二階積分して位置の波形を生成する。特許文献1の装置は、当該位置の波形を移動平均処理して得られる成分が除去された処理済みの位置の波形に基づいて、左足および右足の各々の一歩に対応する区間または時刻を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-220923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、人の腰に装着された加速度センサから得られたデータ上において、左足および右足の各々の一歩に対応する区間または時刻を特定する。左足および右足の各々の歩容の特徴を検証するためには、左右の足に装着されたセンサによって計測されるデータを用いることが好ましい。しかしながら、特許文献1の手法では、左右の足に装着されたセンサによって計測されるデータに基づいて、そのデータが左右いずれの足に由来するのかを判別することはできなかった。
【0006】
本開示の目的は、左右の足に装着されたセンサによって計測されるデータに基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別できる判別装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の判別装置は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する波形生成部と、矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出する検出部と、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する判別部と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の判別方法においては、コンピュータが、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成し、矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出し、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、検証中の歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する。
【0009】
本開示の一態様のプログラムは、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する処理と、矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出する処理と、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、検証中の歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、左右の足に装着されたセンサによって計測されるデータに基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別できる判別装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る判別システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る判別システムのデータ取得装置の配置例を示す概念図である。
図3】第1の実施形態に係る判別システムのデータ取得装置に設定される座標系について説明するための概念図である。
図4】第1の実施形態に係る判別システムの判別装置に適用される人体面について説明するための概念図である。
図5】第1の実施形態に係る判別システムの判別装置が検出する歩行イベントについて説明するための概念図である。
図6】正常な歩行状態における足圧中心(COP:Center Of Pressure)の軌跡の一例を示す概念図である。
図7】第1の実施形態に係る判別システムのデータ取得装置の構成の一例を示すブロック図である。
図8】第1の実施形態に係る判別システムの判別装置の構成の一例を示すブロック図である。
図9】第1の実施形態に係る判別システムの判別装置が生成する歩行波形の一例を示すグラフである。
図10】第1の実施形態に係る判別システムの判別装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図11】第2の実施形態に係る判別システムの構成の一例を示すブロック図である。
図12】第2の実施形態に係る判別システムの判別装置の構成の一例を示すブロック図である。
図13】第2の実施形態に係る判別システムの判別装置の解析結果の表示例について説明するための概念図である。
図14】第2の実施形態に係る判別システムの判別装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図15】第3の実施形態に係る判別装置の構成の一例を示すブロック図である。
図16】各実施形態に係る判別装置を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、本開示に係る第1の実施形態の判別システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の判別システムは、ユーザの歩行パターンに含まれる特徴(歩容とも呼ぶ)に起因するデータ(歩容データとも呼ぶ)を計測する。例えば、歩容データは、足の動きに関する物理量に関する時系列データである。例えば、足の動きに関する物理量は、加速度センサによって計測される加速度(空間加速度とも呼ぶ)や、角速度センサによって計測される角速度(空間角速度とも呼ぶ)などのセンサデータを含む。本実施形態の判別システムは、計測された歩容データを解析することによって、その歩容データが左右いずれの足に由来するのかを判別する。
【0014】
(構成)
図1は、本実施形態の判別システム1の構成を示すブロック図である。判別システム1は、データ取得装置11および判別装置12を備える。データ取得装置11と判別装置12は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。データ取得装置11と判別装置12は、単一の装置で構成してもよい。また、判別システム1の構成からデータ取得装置11を除き、判別装置12だけで判別システム1を構成してもよい。なお、図1にはデータ取得装置11を一つしか図示していないが、本実施形態においては、左右両足に対応付けて、同じデータ取得装置11を一つずつ(計二つ)配置する。
【0015】
データ取得装置11は、左右の足に設置される。例えば、データ取得装置11は、靴等の履物に設置される。本実施形態では、左右の足の足弓の裏側の位置にデータ取得装置11を配置する例について説明する。データ取得装置11は、加速度センサおよび角速度センサを含む。データ取得装置11は、履物を履くユーザの足の動きに関する物理量として、空間加速度や空間角速度などの足の動きに関する物理量を計測する。データ取得装置11が計測する足の動きに関する物理量には、加速度や角速度に加えて、加速度や角速度を積分することによって計算される速度や角度も含まれる。また、データ取得装置11が計測する足の動きに関する物理量には、加速度を二階積分することによって計算される位置も含まれる。データ取得装置11は、計測された物理量をデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)に変換する。データ取得装置11は、変換後のセンサデータを判別装置12に送信する。例えば、データ取得装置11は、ユーザが携帯する携帯端末(図示しない)を介して、判別装置12に接続される。
【0016】
携帯端末(図示しない)は、ユーザによって携帯可能な通信機器である。例えば、携帯端末は、スマートフォンや、スマートウォッチ、携帯電話等の通信機能を有する携帯型の通信機器である。携帯端末は、ユーザの足の動きに関するセンサデータをデータ取得装置11から受信する。携帯端末は、受信されたセンサデータを、判別装置12が実装されたサーバ等に送信する。なお、判別装置12の機能は、携帯端末にインストールされたアプリケーションによって実現されていてもよい。その場合、携帯端末は、受信されたセンサデータを、自身にインストールされたアプリケーションソフトウェア等によって処理する。
【0017】
データ取得装置11は、例えば、加速度センサと角速度センサを含む慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)があげられる。IMUは、3軸の加速度センサと、3軸の角速度センサを含む。また、慣性計測装置の一例として、VG(Vertical Gyro)や、AHRS(Attitude Heading Reference System)、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)があげられる。

【0018】
図2は、データ取得装置11を左右の靴100の中に配置する一例を示す概念図である。図2の例では、データ取得装置11は、左右の足の足弓の裏側に当たる位置に配置される。本実施形態においては、左右の区別なく、同じスペックで生産されたデータ取得装置11を左右の靴100の中に配置する。左右の靴100に配置されるデータ取得装置11の上下の向き(Z軸方向の向き)は、同じ向きであるものとする。そのため、左足に由来するセンサデータと、右足に由来するセンサデータに設定される軸は、左右で共通である。図2の例では、データ取得装置11には、左右方向のx軸、前後方向のy軸、上下方向のz軸を含むローカル座標系が設定される。x軸は左方を正とし、y軸は後方を正とし、z軸は上方を正とする。データ取得装置11に設定される軸の向きは、左右の足で同じであれば、図2の例に限定されない。
【0019】
例えば、データ取得装置11は、靴100の中に挿入されるインソールに配置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の底面に配置される。例えば、データ取得装置11は、靴100の本体に埋設される。データ取得装置11は、靴100から着脱できてもよいし、靴100から着脱できなくてもよい。なお、データ取得装置11は、足の動きに関するセンサデータを取得できさえすれば、足弓の裏側ではない位置に配置されてもよい。また、データ取得装置11は、ユーザが履いている靴下や、ユーザが装着しているアンクレットなどの装飾品に設置されてもよい。また、データ取得装置11は、足に直に貼り付けられたり、足に埋め込まれたりしてもよい。
【0020】
図3は、データ取得装置11を足弓の裏側に設置する場合に、データ取得装置11に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、ユーザが直立した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(左向きが正)、ユーザの背面の方向がY軸方向(後ろ向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。本実施形態においては、データ取得装置11を基準とするx方向、y方向、およびz方向からなるローカル座標系を設定する。
【0021】
図4は、人体に対して設定される面(人体面とも呼ぶ)について説明するための概念図である。本実施形態では、身体を左右に分ける矢状面、身体を前後に分ける冠状面、身体を水平に分ける水平面が定義される。なお、図4のような直立した状態では、世界座標系とローカル座標系が一致する。本実施形態においては、x軸を回転軸とする矢状面内の回転をロール、y軸を回転軸とする冠状面内の回転をピッチ、z軸を回転軸とする水平面内の回転をヨーと定義する。また、x軸を回転軸とする矢状面内の回転角をロール角、y軸を回転軸とする冠状面内の回転角をピッチ角、z軸を回転軸とする水平面内の回転角をヨー角と定義する。
【0022】
本実施形態においては、身体を後ろから見て、冠状面内における反時計回りの回転が正であり、冠状面内における時計回りの回転が負である。y軸を回転軸とする冠状面内の回転に関して、親指側に向かう回転が外転と定義され、小指側に向かう回転が内転と定義される。右足に関しては、身体を後ろから見て、冠状面内における反時計回りの回転(正)が外転であり、冠状面内における時計回りの回転(負)が内転である。左足に関しては、身体を後ろから見て、冠状面内における反時計回りの回転(負)が内転であり、冠状面内における時計回りの回転(負)が外転である。
【0023】
図5は、右足を基準とする一歩行周期について説明するための概念図である。左足を基準とする一歩行周期も、右足と同様である。図5の横軸は、右足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に右足の踵が地面に着地した時点を終点とする右足の一歩行周期を100%として正規化された歩行周期である。片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、さらに、立脚初期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。
【0024】
図5の(a)は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。図5の(b)は、右足の足裏が接地した状態で、左足の爪先が地面から離れる事象(反対足爪先離地)を表す(OTO:Opposite Toe Off)。図5の(c)は、右足の足裏が接地した状態で、右足の踵が持ち上がる事象(踵持ち上がり)を表す(HR:Heel Rise)。図5の(d)は、左足の踵が接地した事象(反対足踵接地)である(OHS:Opposite Heel Strike)。図5の(e)は、左足の足裏が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる事象(爪先離地)を表す(TO:Toe Off)。図5の(f)は、左足の足裏が接地した状態で、左足と右足が交差する事象(足交差)を表す(FA:Foot Adjacent)。図5の(g)は、左足の足裏が接地した状態で、右足の脛骨が地面に対してほぼ垂直になる事象(脛骨垂直)を表す(TV:Tibia Vertical)。図5の(h)は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HS:Heel Strike)。図5の(h)は、図5の(a)から始まる歩行周期の終点に相当するとともに、次の歩行周期の起点に相当する。
【0025】
判別装置12は、ユーザの足の動きに関するセンサデータを取得する。判別装置12は、取得されたセンサデータの時系列データに基づく波形(歩行波形とも呼ぶ)を生成する。判別装置12は、生成された歩行波形から踵接地のタイミングを検出し、踵接地のタイミングを起点とする一歩行周期分の歩行波形を抽出する。判別装置12は、抽出された一歩行周期の歩行波形から爪先離地のタイミングを検出する。判別装置12は、踵接地および爪先離地のタイミングにおけるピッチ角に基づいて、その歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する。歩行波形が左右いずれの足に由来するのかをどのように判別するのかについては後述する。
【0026】
図6は、正常な歩行状態における、地面と足裏との接触面に働く力の分布の中心点である足圧中心(COP:Center Of Pressure)の軌跡の一例を示す概念図である。正常な歩行状態の立脚相においては、踵(A)で接地後、踏みつけ部の小指側(B)から親指側(C)へと曲線状にCOPが遷移し、親指(D)から離地する。踏みつけ部の小指側(B)から親指側(C)へとCOPが遷移する際に、足裏の姿勢は次第に親指側に向けて回転(外転)する。一般に、爪先離地の後、慣性作用によって、足はしばらく外転動作を続けるため、冠状面内における回転角(ピッチ角)のピークは、爪先離地のタイミングよりも後に現れる。
【0027】
〔データ取得装置〕
次に、データ取得装置11の詳細について図面を参照しながら説明する。図7は、データ取得装置11の詳細構成の一例を示すブロック図である。データ取得装置11は、加速度センサ111、角速度センサ112、制御部113、およびデータ送信部115を有する。また、データ取得装置11は、図示しない電源を含む。以下においては、加速度センサ111、角速度センサ112、制御部113、およびデータ送信部115の各々を動作主体として説明するが、データ取得装置11を動作主体とみなしてもよい。
【0028】
加速度センサ111は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ111は、計測した加速度を制御部113に出力する。例えば、加速度センサ111には、圧電型や、ピエゾ抵抗型、静電容量型などの方式のセンサを用いることができる。なお、加速度センサ111に用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0029】
角速度センサ112は、3軸方向の角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ112は、計測した角速度を制御部113に出力する。例えば、角速度センサ112には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。なお、角速度センサ112に用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0030】
制御部113は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々から、3軸方向の加速度および角速度の各々を取得する。制御部113は、取得した加速度および角速度をデジタルデータに変換し、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)をデータ送信部115に出力する。センサデータには、アナログデータの加速度をデジタルデータに変換した加速度データ(3軸方向の加速度ベクトルを含む)と、アナログデータの角速度をデジタルデータに変換した角速度データ(3軸方向の角速度ベクトルを含む)とが少なくとも含まれる。なお、加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えたセンサデータを出力するように構成してもよい。また、制御部113は、取得した加速度データおよび角速度データを用いて、3軸方向の角度データを生成してもよい。
【0031】
例えば、制御部113は、データ取得装置11の全体制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラである。例えば、制御部113は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。制御部113は、加速度センサ111および角速度センサ112を制御して角速度や加速度を計測する。例えば、制御部113は、計測された角速度および加速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)し、変換後のデジタルデータをフラッシュメモリに記憶させる。なお、加速度センサ111および角速度センサ112によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々においてデジタルデータに変換されてもよい。フラッシュメモリに記憶されたデジタルデータは、所定のタイミングでデータ送信部115に出力される。
【0032】
データ送信部115は、制御部113からセンサデータを取得する。データ送信部115は、取得したセンサデータを判別装置12に送信する。データ送信部115は、ケーブルなどの有線を介してセンサデータを判別装置12に送信してもよいし、無線通信を介してセンサデータを判別装置12に送信してもよい。例えば、データ送信部115は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、センサデータを判別装置12に送信するように構成される。なお、データ送信部115の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。
【0033】
〔検出装置〕
次に、判別装置12の詳細について図面を参照しながら説明する。図8は、判別装置12の構成の一例を示すブロック図である。判別装置12は、波形生成部121、検出部123、および判別部125を有する。
【0034】
波形生成部121は、歩行者の履いている履物に設置されたデータ取得装置11(センサ)からセンサデータを取得する。波形生成部121は、センサデータを用いて、データ取得装置11が設置された履物を履いた歩行者の歩行に伴う時系列データ(歩行波形とも呼ぶ)を生成する。波形生成部121は、生成した歩行波形から、一歩行周期分の歩行波形を抽出する。
【0035】
例えば、波形生成部121は、空間加速度や空間角速度などの時系列データを生成する。また、波形生成部121は、空間加速度や空間角速度を積分し、空間速度や空間角度(足底角)、空間軌跡などの時系列データを生成する。波形生成部121は、一般的な歩行周期や、ユーザに固有の歩行周期に合わせて設定された所定のタイミングや時間間隔で時系列データを生成する。波形生成部121が時系列データを生成するタイミングは、任意に設定できる。例えば、波形生成部121は、ユーザの歩行が継続されている期間、時系列データを生成し続けるように構成される。また、波形生成部121は、特定の時刻において、時系列データを生成するように構成されてもよい。
【0036】
検出部123は、波形生成部121によって生成された歩行波形から、データ取得装置11が実装された履物を履いて歩行する歩行者の踵接地のタイミングを検出する。例えば、検出部123は、x軸を回転軸とする矢状面内の回転角(ピッチ角)に基づいて、踵接地のタイミングを検出する。一歩行周期分のロール角の歩行波形には、正のピークと負のピークが現れる。検出部123は、それらのピークのうち、一方を踵接地のタイミング、他方を爪先離地のタイミングとして検出する。踵接地おとび爪先離地のタイミングにおけるピークの正負は、左右の足で逆である。通常、爪先離地のタイミングにおけるロール角の絶対値の方が、踵接地のタイミングにおけるロール角の絶対値よりも大きい。そのため、検出部123は、歩行波形に現れる正負のピークのうち、絶対値の小さい方を踵接地として検出する。
【0037】
検出部123は、踵接地のタイミングを起点とする一歩行周期分の歩行波形を抽出する。検出部123は、一歩行周期分の歩行波形から、爪先離地のタイミングを検出する。例えば、検出部123は、x軸を回転軸とする矢状面内の回転角(ロール角)に基づいて、踵接地のタイミングを検出する。検出部123は、歩行波形に表れる正負のピークのうち、絶対値の大きい方を爪先離地として検出する。
【0038】
判別部125は、爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角(ピッチ角)のピーク値と、踵接地のタイミングにおけるピッチ角のピーク値との差を計算する。判別部125は、踵接地のタイミングにおけるピッチ角のピーク値と、爪先離地のタイミングにおけるピッチ角のピーク値との差の符号(正負)に基づいて、その歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する。言い換えると、判別部125は、踵接地のタイミングにおけるピッチ角のピーク値と、爪先離地のタイミングにおけるピッチ角のピーク値との大小関係に基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する。例えば、判別部125は、歩行波形や、その歩行波形の取得元のセンサデータ等のデータに対して、そのデータが左右のいずれの足に由来するのかを示すラベルを付す。例えば、判別部125は、左右いずれかの足であることを示すラベルが付与されたデータを、図示しないシステムや装置に出力する。例えば、判別部125によってラベルが付与されたデータは、図示しないデータベースに蓄積され、ビックデータとして活用される。
【0039】
図9は、一歩行周期分の冠状面内の回転角(ピッチ角)と、矢状面内の回転角(ロール角)の一例である。右足のピッチ角を実線で示し、左足のピッチ角を破線で示し、右足または左足のロール角を点線で示す。ロール角は、左右の足で相似的な関係にある。そのため、ロール角の正負は左右の足で一致するので、左右の足のうちいずれか一方の波形を示す。
【0040】
右足のピッチ角は、踵接地のタイミングにおける値が負であり、爪先離地のタイミングにおける値が正である。そのため、右足に関しては、爪先離地のタイミングにおけるピーク値(正)と、踵接地のタイミングにおけるピーク値(負)との差の符号は正である。すなわち、判別部125は、爪先離地のタイミングにおけるピーク値と、踵接地のタイミングにおけるピーク値との差が正の場合、その歩行波形が右足に由来すると判別する。
【0041】
一方、左足のピッチ角は、踵接地のタイミングにおける値が正であり、爪先離地のタイミングにおける値が負である。そのため、左足に関しては、爪先離地のタイミングにおけるピーク値(負)と、踵接地のタイミングにおけるピーク値(正)との差の符号は負である。すなわち、判別部125は、爪先離地のタイミングにおけるピーク値と、踵接地のタイミングにおけるピーク値との差が負の場合、その歩行波形が左足に由来すると判別する。
【0042】
(動作)
次に、本実施形態の判別システム1の判別装置12の動作について図面を参照しながら説明する。図10は、判別装置12の動作の概略について説明するためのフローチャートである。判別装置12の動作の詳細は、上述の構成に関する説明の通りである。
【0043】
図10において、まず、判別装置12は、足の動きに関する物理量に関するセンサデータから生成された時系列データ(歩行波形とも呼ぶ)から踵接地を検出し、踵接地を起点とする一歩行周期分の歩行波形を抽出する(ステップS11)。
【0044】
次に、判別装置12は、一歩行周期分の歩行波形から爪先離地を検出する(ステップS12)。
【0045】
次に、判別装置12は、踵接地および爪先離地のタイミングにおけるピッチ角を計算する(ステップS13)。
【0046】
次に、判別装置12は、踵接地および爪先離地のタイミングにおけるピッチ角の差を計算する(ステップS14)。判別装置12は、爪先離地のタイミングにおけるピッチ角から、踵接地のタイミングにおけるピッチ角を引いた値を、ピッチ角の差として算出する。
【0047】
次に、判別装置12は、ピッチ角の差の符号(正負)に基づいて、検証中の歩行波形が、左右のいずれの足の歩行波形であるか判別する(ステップS15)。判別装置12は、ピッチ角の差が正である場合、検証中の歩行波形が右足に由来すると判定する。判別装置12は、ピッチ角の差が負である場合、検証中の歩行波形が左足に由来すると判定する。
【0048】
次に、判別装置12は、検証中の歩行波形を含む歩容データに、データの取得元の足が左右いずれであるのかを示すラベルを付す(ステップS16)。例えば、判別装置12は、ラベルが付された歩容データを、図示しないシステムや装置に出力する。例えば、判別装置12から出力されるデータは、図示しないデータベースに蓄積され、ビックデータとして活用される。
【0049】
以上のように、本実施形態の判別システムは、データ取得装置と判別装置を備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成し、生成したセンサデータを推定装置に送信する。判別装置は、波形生成部、検出部、および判別部を有する。波形生成部は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する。検出部は、矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出する。判別部は、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する。例えば、判別部は、歩行波形の判別結果に応じたラベルを、歩行波形に関するデータに付与する。
【0050】
一般に、左右の足は冠状面において鏡像関係にあるので、取得後の歩行波形が左右どちらの足に由来するのか判別することは難しい。本実施形態によれば、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴から、左右の足の違いを検出できる。そのため、本実施形態の判別装置によれば、左右の足に装着されたセンサによって計測されるデータに基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別できる。
【0051】
本実施形態の一態様において、波形生成部は、歩行波形から一歩行周期分の歩行波形を抽出する。判別部は、一歩行周期分の冠状面内の回転角の歩行波形のピーク値に基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する。例えば、判別部は、踵接地のタイミングにおける冠状面内の回転角のピーク値と、爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角のピーク値との大小関係に基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する。例えば、判別部は、爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角のピーク値から、踵接地のタイミングにおける冠状面内の回転角のピーク値を引いた値の符号に基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別する。本態様によれば、冠状面内の回転角のピーク値の関係に基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別できる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る判別装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の判別装置は、判別結果を用いて歩容を解析する点において、第1の実施形態の判別装置とは異なる。以下において、第1の実施形態と同様の部分については、詳細な説明を省略する。
【0053】
(構成)
図11は、本実施形態の判別システム2の構成を示すブロック図である。判別システム2は、データ取得装置21および判別装置22を備える。データ取得装置21と判別装置22は、有線で接続されてもよいし、無線で接続されてもよい。データ取得装置21と判別装置22は、単一の装置で構成してもよい。また、判別システム2の構成からデータ取得装置21を除き、判別装置22だけで判別システム2を構成してもよい。なお、図11にはデータ取得装置21を一つしか図示していないが、本実施形態においては、左右両足に対応付けて一つずつ(計二つ)のデータ取得装置21を配置する。データ取得装置21は、第1の実施形態のデータ取得装置11と同様の構成である。以下においては、第1の実施形態とは異なる判別装置22について、第1の実施形態との相違点に焦点を当てて説明する。
【0054】
〔判別装置〕
図12は、本実施形態の判別装置22の構成の一例を示すブロック図である。判別装置22は、波形生成部221、検出部223、判別部225、記憶部227、および解析部229を備える。波形生成部221、検出部223、および判別部225は、第1の実施形態の判別装置12の対応する構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0055】
記憶部227は、判別装置22の出力データに含まれる歩行波形を解析するための解析モデルを記憶する。解析モデルは、歩行波形に基づいて、歩容を解析するためのアルゴリズムを含む。解析モデルは、左右の足の各々について構築される。なお、左右の足で同じアルゴリズムを用いることができる場合は、左右両足で共通の解析モデルを構築してもよい。以下に、解析モデルの一例を列挙するが、本実施形態の記憶部227に記憶される解析モデルは、以下の例に限定されない。
【0056】
例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、一歩行周期分の歩行波形を切り出すためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、足底角の歩行波形を用いて、連続する立脚相の各々の真ん中の時刻を検出し、検出された時刻間の波形を一歩行周期分の歩行波形として抽出するモデルである。例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、立脚相と遊脚相を検出するためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、進行方向加速度の歩行波形から検出される爪先離地のタイミングを遊脚相の起点として抽出し、進行方向加速度および高さ方向加速度から検出される踵接地のタイミングを立脚相の起点として抽出するモデルである。
【0057】
例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、歩行イベントを特定するためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、一歩行周期分の歩行波形から抽出される特徴に基づいて、爪先離地や踵接地、反対足踵接地、反対足爪先離地、脛骨垂直、足交差、踵持ち上がり等の歩行イベントを検出するモデルである。例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、左右の足の各々のステップ長を特定するためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、一歩行周期分の進行方向軌跡の歩行波形から一歩分の進行方向軌跡の歩行波形を抽出し、足交差のタイミングを基準として左右の足の各々のステップ長を計算するモデルである。例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、歩行の対称性を推定するためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、空間加速度または空間角速度を用いて左右両足の各々の姿勢角の歩行波形を生成し、左右両足の各々の姿勢角の歩行波形に表れるピークの極値を用いて算出される歩行パラメータの対称性に基づいて、歩行の対称性を推定するモデルである。例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、歩行中の足のぶん回しの軌跡を解析するためのアルゴリズムを含む。
【0058】
例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、外反母趾の進行状態等の足の異常を検出するためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、履物を履いた歩行者の歩行において特徴的な歩行特徴量を抽出し、抽出された歩行特徴量に基づいて、履物を履いて歩行する歩行者の足の異常を検出するモデルである。例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、足の回内/回外の度合を推定するためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、立脚終期における冠状面内の角度波形から抽出される特徴量を用いて、足の回内/回外の度合を推定するモデルである。例えば、解析モデルは、歩行波形に基づいて、足の内旋/外旋の度合を推定するためのアルゴリズムを含む。例えば、解析モデルは、足部の速度ベクトルと姿勢角とを用いて速度ベクトルと足の中心線の成す角度である足角を計算し、算出された足角に基づいて足の内旋/外旋の度合を推定するモデルである。
【0059】
解析部229は、判別部225の出力データを取得する。出力データは、左右いずれの足であるかを示すラベルが付与された歩行波形を含む。解析部229は、取得した出力データに対して、記憶部227に記憶された解析モデルを適用して歩行波形を解析する。例えば、解析部229は、図示しないシステムや装置に解析結果を出力する。例えば、解析部229から出力されるデータは、図示しないデータベースに蓄積され、ビックデータとして活用される。
【0060】
図13は、データ取得装置21が実装された履物200を履いて歩行するユーザの携帯する端末装置260の表示部に、判別装置22の解析部229による解析結果を表示させる一例を示す概念図である。図13は、ユーザの歩行中に蓄積された歩行波形を、足の回内/回外の度合を解析する解析モデルで解析する例である。
【0061】
例えば、解析部229は、左足の歩行波形がセンサ1によって計測され、左足の回内/回外の度合が正常範囲内であることを示す解析結果を出力する。また、解析部229は、右足の歩行波形がセンサ2によって計測され、右足の回内/回外の度合が正常範囲内であることを示す解析結果を出力する。例えば、ユーザが携帯する端末装置260の表示部には、「左足(センサ1)の回内/回外の度合は、正常範囲内です」、「右足(センサ2)の回内/回外の度合は、正常範囲外です」といった情報が表示される。端末装置260の表示部に表示された情報を確認したユーザは、歩行中における自身の左右の足の回内/回外の度合を認識できる。例えば、回内/回外の度合が異常の場合、病院で診察を受けることを薦めるメッセージや、適切な病院の連絡先を、端末装置260の表示部に表示させてもよい。
【0062】
図13の例は、一例であって、本実施形態の判別装置による解析結果の使用方法を限定するものではない。例えば、左右の足のステップ長や、ぶん回しの軌跡、対称性、足角等の歩容に関する情報を端末装置260の表示部に表示させるようにしてもよい。例えば、左右の足の外反母趾の進行状態などに関する情報を端末装置260の表示部に表示させるようにしてもよい。例えば、歩行中に計測された歩行波形に基づいて、履物の左右が間違っていることを、警告音や振動などで通知するようにしてもよい。子供や老人が、履物の左右を間違った状態で歩行を継続した場合、転倒などのリスクがあるが、履物の左右が間違っていることを通知すれば、そのようなリスクを回避できる可能性がある。
【0063】
(動作)
次に、本実施形態の判別システム2の判別装置22の動作について図面を参照しながら説明する。図14は、判別装置22の動作の概略について説明するためのフローチャートである。判別装置22の動作の詳細は、上述の構成に関する説明の通りである。
【0064】
図14において、まず、判別装置22は、足の動きに関する物理量に関するセンサデータから生成された時系列データ(歩行波形とも呼ぶ)から踵接地を検出し、踵接地を起点とする一歩行周期分の歩行波形を抽出する(ステップS21)。
【0065】
次に、判別装置22は、一歩行周期分の歩行波形から爪先離地を検出する(ステップS22)。
【0066】
次に、判別装置22は、踵接地および爪先離地のタイミングにおけるピッチ角を計算する(ステップS23)。
【0067】
次に、判別装置22は、踵接地および爪先離地のタイミングにおけるピッチ角の差を計算する(ステップS24)。判別装置22は、爪先離地のタイミングにおけるピッチ角から、踵接地のタイミングにおけるピッチ角を引いた値を、ピッチ角の差として算出する。
【0068】
次に、判別装置22は、ピッチ角の差の符号(正負)に基づいて、検証中の歩行波形が、左右のいずれの足の歩行波形であるか判別する(ステップS25)。判別装置22は、ピッチ角の差が正である場合、検証中の歩行波形が右足に由来すると判定する。判別装置22は、ピッチ角の差が負である場合、検証中の歩行波形が左足に由来すると判定する。例えば、判別装置22は、検証中の歩行波形に、その歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを示すラベルを付す。
【0069】
歩行波形が左足に由来する場合(ステップS26でYes)、判別装置22は、左足用の解析モデルを用いて歩容解析する(ステップS27)。一方、歩行波形が右足に由来する場合(ステップS26でNo)、判別装置22は、右足用の解析モデルを用いて歩容解析する(ステップS28)。
【0070】
そして、判別装置22は、ステップS27またはステップS28における解析結果を出力する(ステップS29)。例えば、判別装置22による解析結果は、端末装置(図示しない)の表示部に表示されたり、解析結果を用いるシステム(図示しない)に出力されたり、解析結果を蓄積するデータベース(図示しない)に出力されたりする。
【0071】
以上のように、本実施形態の判別システムは、データ取得装置と判別装置を備える。データ取得装置は、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した空間加速度および空間角速度に基づくセンサデータを生成し、生成したセンサデータを推定装置に送信する。判別装置は、波形生成部、検出部、判別部、記憶部、および解析部を有する。波形生成部は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する。検出部は、矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出する。判別部は、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する。記憶部には、左右の各々の足の歩行波形に基づいて、左右の各々の足の歩容を解析するための解析モデルが記憶される。解析部は、解析モデルを用いて、左右の各々の足の歩行波形に基づいて、左右の各々の足の歩容を解析する。例えば、解析部は、左右の各々の足の歩容に関する解析結果に応じた情報を出力する。
【0072】
本実施形態においては、左右の足の各々の解析モデルを用いることによって、左右の足ごとの歩容を解析できる。
【0073】
(第3の実施系鄭)
次に、第3の実施形態に係る判別装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の判別装置は、各実施形態の判別装置を簡略化した構成である。図15は、本実施形態の判別装置32の構成の一例を示すブロック図である。判別装置32は、波形生成部321、検出部323、および判別部325を備える。
【0074】
波形生成部321は、足の動きに関するセンサデータを用いて歩行波形を生成する。検出部323は、矢状面内の回転角の歩行波形から、踵接地および爪先離地のタイミングを検出する。判別部325は、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴に基づいて、歩行波形が左右いずれの足のデータに由来するのかを判別する。
【0075】
本実施形態に係る判別装置は、踵接地および爪先離地のタイミングにおける冠状面内の回転角の歩行波形の特徴から、左右の足の違いを検出できる。そのため、本実施形態の判別装置は、左右の足に装着されたセンサによって計測されるデータに基づいて、歩行波形が左右いずれの足に由来するのかを判別できる。
【0076】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る判別装置の処理を実行するハードウェア構成について、図16の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、図16の情報処理装置90は、各実施形態の判別装置の処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0077】
図16のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。図16においては、インターフェースをI/F(Interface)と略して表記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0078】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、本実施形態に係る判別装置による処理を実行する。
【0079】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
【0080】
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって構成される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0081】
入出力インターフェース95は、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0082】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器を接続するように構成してもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成とすればよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0083】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0084】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置を備え付けてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0085】
以上が、本発明の各実施形態に係る判別装置を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、図16のハードウェア構成は、各実施形態に係る判別装置の演算処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る判別装置に関する処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。また、記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体や、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現してもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0086】
各実施形態の判別装置の構成要素は、任意に組み合わせることができる。また、各実施形態の判別装置の構成要素は、ソフトウェアによって実現してもよいし、回路によって実現してもよい。
【0087】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0088】
1、2 判別システム
11、21 データ取得装置
12、22 判別装置
111 加速度センサ
112 角速度センサ
113 制御部
115 データ送信部
121、221、321 波形生成部
123、223、323 検出部
125、225、325 判別部
227 記憶部
229 解析部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16