(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20240326BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240326BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60T7/12 C
G06T7/00 660B
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2023003076
(22)【出願日】2023-01-12
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】池田 真悟
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-145314(JP,A)
【文献】特開2010-149767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
G06T 7/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ブレーキと減速度を段階的に設定する補助ブレーキとを用いる第1ブレーキ制御モード又は前記主ブレーキを用いる第2ブレーキ制御モードのいずれかにより車両を減速させる減速制御部と、
前記車両に乗車している乗員が前記車両に備えられた座席に着席しているか否かを判定する判定部と、
前記乗員が前記座席に着席していると前記判定部が判定した場合は、前記第1ブレーキ制御モードを選択し、前記乗員が前記座席に着席していないと前記判定部が判定した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択する選択部と、
を有するブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記車両の車内を撮像した車内撮像画像を取得する取得部をさらに有し、
前記判定部は、前記車内撮像画像から抽出された前記乗員の体勢に基づいて、前記乗員が前記座席に着席しているか否かを判定する、
請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記車内撮像画像から抽出された、前記座席に着席していない前記乗員の手が前記車両に備えられた支持具に接触しているか否かを判定し、
前記選択部は、前記座席に着席していない前記乗員の手が前記支持具に接触していると前記判定部が判定した場合は、前記第1ブレーキ制御モードを選択し、前記乗員の手が前記支持具に接触していないと判定した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択する、
請求項2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記車両の車内の床面において前記座席が備えられていない領域に作用する重量を取得する取得部をさらに有し、
前記判定部は、前記重量に基づいて前記乗員が前記座席に着席しているか否かを判定する、
請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記車両が走行する経路を含む地図情報を記憶する記憶部と、
前記車両の位置を示す位置情報を取得する取得部と、をさらに有し、
前記選択部は、前記乗員が着席していると前記判定部が判定し、且つ前記地図情報に含まれる前記経路における停止位置から所定距離だけ手前の位置に前記車両が達した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択する、
請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記車両の進行方向前方を撮像した車外撮像画像を取得し、
前記選択部は、前記車外撮像画像に含まれる横断帯を横断する人がいることを検出し、且つ前記地図情報が示す前記横断帯の位置と前記横断帯より手前を走行する前記車両の位置との距離が所定距離に達した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択する、
請求項5に記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記選択部は、前記車両の位置と前記車両が停止する位置との距離及び前記車両の速度に基づいて、前記車両の減速度を特定し、前記減速度が閾値以上である場合は前記第2ブレーキ制御モードを選択し、前記減速度が閾値未満である場合は前記第1ブレーキ制御モードを選択する、
請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のブレーキブレンディング制御装置は、運転者がブレーキペダルを操作したことに応じて車両の速度を減速させる主ブレーキと、排気ブレーキ又はリターダを用いて車両の速度を減速させる補助ブレーキとを組み合わせて車両の制動を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助ブレーキは、減速度を「強」「弱」のように段階的に設定するため、補助ブレーキを用いた場合に車速を滑らかに低下させられない場合がある。このため、乗員が車両に備えられた座席に着席していない状態で補助ブレーキを用いて減速させると、乗員が姿勢を崩してしまい乗員の安全性を損なうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両に乗車した乗員に適したブレーキ制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るブレーキ制御装置は、主ブレーキと減速度を段階的に設定する補助ブレーキとを用いる第1ブレーキ制御モード又は前記主ブレーキを用いる第2ブレーキ制御モードのいずれかにより車両を減速させる減速制御部と、前記車両に乗車している乗員が前記車両に備えられた座席に着席しているか否かを判定する判定部と、前記乗員が前記座席に着席していると前記判定部が判定した場合は、前記第1ブレーキ制御モードを選択し、前記乗員が前記座席に着席していないと前記判定部が判定した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択する選択部と、を有する。
【0007】
前記車両の車内を撮像した車内撮像画像を取得する取得部をさらに有し、前記判定部は、前記車内撮像画像から抽出された前記乗員の体勢に基づいて、前記乗員が前記座席に着席しているか否かを判定してもよい。
【0008】
前記判定部は、前記車内撮像画像から抽出された、前記座席に着席していない前記乗員の手が前記車両に備えられた支持具に接触しているか否かを判定し、前記選択部は、前記座席に着席していない前記乗員の手が前記支持具に接触していると前記判定部が判定した場合は、前記第1ブレーキ制御モードを選択し、前記乗員の手が前記支持具に接触していないと判定した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択してもよい。
【0009】
前記車両の車内の床面において前記座席が備えられていない領域に作用する重量を取得する取得部をさらに有し、前記判定部は、前記重量に基づいて前記乗員が前記座席に着席しているか否かを判定してもよい。
【0010】
前記車両が走行する経路を含む地図情報を記憶する記憶部と、前記車両の位置を示す位置情報を取得する取得部と、をさらに有し、前記選択部は、前記乗員が着席していると前記判定部が判定し、且つ前記地図情報に含まれる前記経路における停止位置から所定距離だけ手前の位置に前記車両が達した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択してもよい。
【0011】
前記取得部は、前記車両の進行方向前方を撮像した車外撮像画像を取得し、前記選択部は、前記車外撮像画像に含まれる横断帯を横断する人がいることを検出し、且つ前記地図情報が示す前記横断帯の位置と前記横断帯より手前を走行する前記車両の位置との距離が所定距離に達した場合は、前記第2ブレーキ制御モードを選択してもよい。
【0012】
前記選択部は、前記車両の位置と前記車両が停止する位置との距離及び前記車両の速度に基づいて、前記車両の減速度を特定し、前記減速度が閾値以上である場合は前記第2ブレーキ制御モードを選択し、前記減速度が閾値未満である場合は前記第1ブレーキ制御モードを選択してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両に乗車した乗員に適したブレーキ制御を行うという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
【
図2】車内カメラ2が撮像する領域を示す図である。
【
図3】車両Sが停止位置で停止する動作を説明するための図である。
【
図4】ブレーキ制御装置10における処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<車両Sの概要>
図1は、本実施形態に係る車両Sの概要を説明するための図である。
図1に示す車両Sは、車外カメラ1と、車内カメラ2と、重量センサ3と、速度センサ4と、位置特定装置5と、主ブレーキ6と、補助ブレーキ7と、ブレーキ制御装置10と、を備える。車両Sは、例えば、自動操舵により走行する路線バスであり、走行中の車両Sを減速させる機能を有する。
【0016】
車外カメラ1は、車両Sの進行方向前方を撮像して生成した車外撮像画像をブレーキ制御装置10に送信する。車内カメラ2は、車両Sの車内を撮像して生成した車内撮像画像をブレーキ制御装置10に送信する。
【0017】
重量センサ3は、車両Sの車内の床面において座席が備えられていない領域に作用する重量(すなわち、座席に着席していない人、及び床面に置かれた物の重量)を検出してブレーキ制御装置10に送信する。速度センサ4は、車両Sの速度を検出してブレーキ制御装置10に送信する。
【0018】
位置特定装置5は、車両Sの位置を特定する処理を実行する。一例として、位置特定装置5は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の外部の測位システム(不図示)から受信した電波に基づいて車両Sの位置を特定する。他の例として、位置特定装置5は、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の三次元レーザ(不図示)が車両Sの周囲の物体を測定することにより生成した点群データに基づいて車両Sの位置を特定する。位置特定装置5は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0019】
主ブレーキ6は、ディスクブレーキ、ドラムブレーキの少なくともいずれかである。ディスクブレーキは、ブレーキパッドをブレーキロータに押し付けて発生させた摩擦力により車両Sを減速させるブレーキである。ドラムブレーキは、車輪とともに回転するブレーキドラムの内側にブレーキライニングを押し付けて発生させた摩擦力により車両Sを減速させるブレーキである。
【0020】
補助ブレーキ7は、車両Sの推進軸の回転に負荷を与えることで車両Sを減速させるリターダ、及び車両Sのエンジンの回転抵抗を利用してエンジンブレーキの効果を高めることにより車両Sを減速させる排気ブレーキである。補助ブレーキ7の減速度は、例えば「強」「弱」のように段階的に設定することができる。一例として、車両Sは、補助ブレーキ7の減速度が「強」である場合、排気ブレーキ及びリターダを併用して減速し、補助ブレーキ7の減速度が「弱」である場合、排気ブレーキ又はリターダのいずれかを用いて減速する。
【0021】
ブレーキ制御装置10は、主ブレーキ6及び補助ブレーキ7から選択した1以上のブレーキを用いて、自動操舵により走行中の車両Sを減速させる処理を実行する。ブレーキ制御装置10は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
【0022】
車両Sが補助ブレーキ7を用いて減速することで、主ブレーキ6が備えるブレーキパッド、ブレーキシュー等の消耗品の消耗を抑えることができる。しかしながら、補助ブレーキ7の減速度は段階的に設定されるため、車両Sは、補助ブレーキ7を用いると車両Sの速度を滑らかに低下させられない場合がある。その結果、車両Sの乗員が体勢を崩してしまい、安全性を損なう可能性がある。
【0023】
そこで、ブレーキ制御装置10は、車内カメラ2が生成した車内撮像画像から抽出した乗員の体勢又は重量センサ3が検出した重量に基づいて、乗員が着席しているか否かを判定し、判定した結果に応じて車両Sの減速に用いるブレーキを選択する。具体的には、ブレーキ制御装置10は、乗員が着席している場合は主ブレーキ6及び補助ブレーキ7を選択し、乗員が着席していない場合は主ブレーキ6を選択する。これにより、乗員が体勢を崩しやすい場合は補助ブレーキ7を用いずに車両Sを減速できるため、乗員の安全性を確保しやすくなる。
以下、ブレーキ制御装置10の構成及び動作を詳細に説明する。
【0024】
<ブレーキ制御装置10の構成>
ブレーキ制御装置10は、記憶部11と、制御部12と、を有する。制御部12は、取得部121と、判定部122と、選択部123と、減速制御部124と、を有する。
【0025】
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶している。記憶部11は、自動操舵により走行中の車両Sを減速させるための各種の情報を記憶している。一例として、記憶部11は、車両Sが走行する経路を含む地図情報を記憶する。
【0026】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部121、判定部122、選択部123及び減速制御部124として機能する。なお、制御部12は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部12により実現される各部の構成を説明する。
【0027】
取得部121は、車外カメラ1が車両Sの進行方向前方を撮像した車外撮像画像を取得する。取得部121は、車外カメラ1から取得した車外撮像画像を記憶部11に記憶させる。
【0028】
取得部121は、車内カメラ2が車両Sの車内を撮像した車内撮像画像を取得する。車内撮像画像は、車両Sの車内において座席が備えられていない領域(すなわち、車両Sに備えられた座席に着席していない乗員又は床面に置かれた物が存在する可能性がある領域)を撮像して生成した画像である。
図2は、車内カメラ2が撮像する領域を示す図である。
図2は、車両Sを上から見た図であり、車両Sの運転者が乗車する領域A1、車両Sに乗員が乗車する領域A2及び車内カメラ2が撮像する領域Uが示されている。
図2においては、車両Sに備えられた座席を斜線で示す。取得部121は、領域Uに存在する乗員又は物を車内カメラ2が撮像して生成した車内撮像画像を取得し、記憶部11に記憶させる。
【0029】
取得部121は、重量センサ3から車両Sの車内の床面において座席が備えられていない領域Uに作用する重量を取得する。取得部121は、速度センサ4から車両Sの速度を取得する。取得部121は、位置特定装置5から車両Sの位置を示す位置情報を取得する。位置情報は、例えば、世界座標系に対応する座標で示す情報である。
【0030】
判定部122は、車両Sに乗車している乗員が車両Sに備えられた座席に着席しているか否かを判定する。判定部122は、例えば、車両Sに乗車している複数の乗員のうち1以上の乗員が座席に着席していない場合は「乗員が着席していない」と判定し、複数の乗員の全員が座席に着席している場合は「乗員が着席している」と判定する。
【0031】
判定部122は、重量センサ3が検出した重量に基づいて乗員が座席に着席しているか否かを判定する。判定部122は、例えば、取得部121が重量センサ3から取得した、
図2に示す領域Uに作用する重量が1以上の人の体重であるか否かを判定することにより、乗員が座席に着席しているか否かを判定する。
【0032】
判定部122は、車内撮像画像から抽出された乗員の体勢に基づいて、乗員が座席に着席しているか否かを判定してもよい。判定部122は、例えば、取得部121が取得した車内撮像画像に含まれる人(すなわち乗員)を示す画像を抽出し、抽出した画像が示す人の体勢が車両Sに備えられた座席に着席した体勢であるか否かを判定する。なお、着席していない体勢は、立位の他に、車椅子、ベビーカーなどの移動機器に乗った体勢、杖などの補助器具を用いた体勢を含む。
【0033】
さらに、判定部122は、車内撮像画像から抽出された、座席に着席していない乗員の手が車両Sに備えられた支持具に接触しているか否かを判定してもよい。支持具は、例えば、吊革、又は握り棒等の支柱である。このように動作することで、判定部122は、座席に着席していない乗員が支持具を掴んでいるか否かを判定できるため、当該乗員が車両Sの減速により体勢を崩しやすいか否かを判定できる。
【0034】
選択部123は、乗員が座席に着席していると判定部122が判定した場合は、第1ブレーキ制御モードを選択し、乗員が座席に着席していないと判定部122が判定した場合は、第2ブレーキ制御モードを選択する。第1ブレーキ制御モードは、主ブレーキ6と段階的に設定する補助ブレーキ7とを用いて車両Sを減速させる方法であり、第2ブレーキ制御モードは、主ブレーキ6を用いて車両Sを減速させる方法である。
【0035】
選択部123がこのように動作することで、ブレーキ制御装置10は、乗員が座席に着席していない場合は補助ブレーキ7を用いずに車両Sを減速させるため、当該乗員の安全性を損なわないように車両Sを減速できる。その結果、車両Sの乗員に適したブレーキ制御を行うことができる。
【0036】
選択部123は、座席に着席していない乗員の手が支持具に接触していると判定部122が判定した場合は、第1ブレーキ制御モードを選択し、乗員の手が支持具に接触していないと判定部122が判定した場合は、第2ブレーキ制御モードを選択してもよい。選択部123がこのように動作することで、ブレーキ制御装置10は、座席に着席していない乗員が吊革等の支持具を掴んで自身を支えている場合は、補助ブレーキ7を用いて車両Sを減速できる。その結果、補助ブレーキ7を使用する頻度を高くすることができるため、主ブレーキ6が有する消耗品の消耗を抑えることができる。
【0037】
ところで、路線バスが自動操舵により走行する場合は、設定された経路を走行することが考えられる。そして、設定された経路には、停留所、一時停止線のように、停止することが予め決められた位置(以下、「停止位置」という)が含まれている。そこで、選択部123は、乗員が着席していると判定部122が判定し、且つ地図情報に含まれる経路における停止位置から所定距離だけ手前の位置に車両Sが達した場合は、第2ブレーキ制御モードを選択する。所定距離は、車両Sが停止するための制動距離よりも長い距離であり、記憶部11に記憶されている。所定距離は、車両Sの速度に応じて定められていてもよい。
【0038】
図3は、車両Sが停止位置で停止する動作を説明するための図である。
図3においては、一時停止を示す標識Rに対応する一時停止線の位置Lで車両Sが停止する。
図3に示す距離Tは、記憶部11に記憶された所定距離である。
図3において、選択部123は、所定時間ごとに取得部121が取得した車両Sの先頭の位置が、地図情報が示す位置Lから距離Tだけ手前の位置Kに達したか否かを判定する。選択部123は、車両Sの先頭の位置が位置Kに達した場合、第2ブレーキ制御モードを選択する。
【0039】
選択部123がこのように動作することで、乗員が着席していると判定部122が判定した場合であっても、停止することが予め決められた位置においては、選択部123が第2ブレーキ制御モードを選択することができる。その結果、ブレーキ制御装置10は、乗員が着席している場合であっても、停止位置に停止する際には第2ブレーキ制御モード(すなわち、主ブレーキ6)を用いて車両Sを滑らかに減速させることができるため、乗員の乗り心地を向上させることができる。
【0040】
また、選択部123は、車外撮像画像に含まれる横断帯を横断する人がいることを検出し、且つ地図情報が示す横断帯の位置と横断帯より手前を走行する車両Sの位置との距離が所定距離に達した場合は、第2ブレーキ制御モードを選択してもよい。選択部123は、例えば、取得部121が取得した車外撮像画像から、車両Sの進行方向前方にある横断帯を横断中の人、又は当該横断帯を横断するために停止している人を検出する。そして、選択部123は、地図情報が示す横断帯の位置と取得部121が取得した車両Sとの距離が所定距離に達したことにより第2ブレーキ制御モードを選択する。選択部123がこのように動作することで、ブレーキ制御装置10は、停止位置と異なる位置で停止する場合であっても、車両Sを滑らかに減速させることができる。
【0041】
道路を横断する歩行者、損壊した道路、又は道路に置かれた障害物を走行中の車両Sが直前に検出した場合、車両Sは、停止位置で停止する際の減速度よりも大きい減速度(いわゆる、急ブレーキ)で車両Sを減速させる。この場合、補助ブレーキ7を用いると、車両Sの後輪がスリップすることにより安全に停止できない場合がある。そこで、選択部123は、車両Sの位置と車両Sが停止する位置との距離及び車両Sの速度に基づいて、車両Sの減速度を特定し、減速度が閾値以上である場合は第2ブレーキ制御モードを選択し、減速度が閾値未満である場合は第1ブレーキ制御モードを選択する。閾値は、車両Sが走行する路面の摩擦係数に応じて定められた値であり、記憶部11に記憶されている。選択部123は、例えば、記憶部11を参照することにより、外部装置(不図示)から取得した摩擦係数に対応する閾値を特定する。
【0042】
選択部123は、例えば、車外撮像画像に含まれる歩行者、損壊箇所、又は障害物の位置と車両Sの位置との距離、及び取得部121が取得した車両Sの車速に基づいて、車両Sが当該距離よりも短い距離で停止するための減速度を特定する。選択部123は、特定した減速度が記憶部11に記憶された閾値以上である場合は、第2ブレーキ制御モードを選択し、特定した減速度が閾値未満である場合は、第1ブレーキ制御モードを選択する。これにより、車両Sが停止する際の減速度に適したブレーキ制御を行うことができる。
【0043】
減速制御部124は、第1ブレーキ制御モード又は第2ブレーキ制御モードのいずれかにより車両Sを減速させる。例えば、減速制御部124は、選択部123が第1ブレーキ制御モードを選択した場合、主ブレーキ6と補助ブレーキ7とを用いて車両Sを減速させる。減速制御部124は、選択部123が第2ブレーキ制御モードを選択した場合、主ブレーキ6を用いて車両Sを減速させる。
【0044】
<ブレーキ制御装置10における処理シーケンス>
図4は、ブレーキ制御装置10における処理シーケンスの例を示す図である。
図4に示す処理シーケンスは、乗員が着席しているか否かを判定部122が車内撮像画像を用いて判定し、選択部123が判定部122の判定結果に基づいて第1ブレーキ制御モード又は第2ブレーキ制御モードのいずれかを選択する動作を示す。ブレーキ制御装置10は、
図4に示す処理シーケンスを一定時間ごとに繰り返す。
【0045】
取得部121は、車内カメラ2から車内撮像画像を取得する(S11)。判定部122は、車内撮像画像から車両Sに乗車した乗員を示す画像を抽出し、当該乗員が座席に着席しているか否かを判定する(S12)。1以上の乗員が座席に着席していないと判定した場合(S12のYES)、判定部122は、当該1以上の乗員の手が車両Sに備えられた支持具に接触しているか否かを判定する(S13)。1以上の乗員の手が支持具に接触していないと判定した場合(S13のNO)、選択部123は、第2ブレーキ制御モードを選択する(S14)。
【0046】
判定部122が、乗員が座席に着席していると判定した場合(S12のNO)、又は座席に着席していない乗員の手が支持具に接触していると判定した場合(S13のYES)、選択部123は、車両Sの位置と停止位置とを取得する。選択部123は、例えば、取得部121が取得した位置情報が示す車両Sの位置と記憶部11に記憶された地図情報が示す停止位置とを取得し(S15)、車両Sの位置と地図情報が示す停止位置との距離を特定する(S16)。
【0047】
選択部123が特定した距離が所定距離に達した場合(S17のYES)、選択部123は、第2ブレーキ制御モードを選択する(S14)。選択部123が特定した距離が所定距離に達していない場合(S17のNO)、選択部123は、第1ブレーキ制御モードを選択する(S18)。
【0048】
ブレーキ制御装置10は、処理を終了する操作が行われていない場合(S19のNO)、ステップS11からステップS18までの処理を繰り返す。処理を終了する操作が行われた場合(S19のYES)、ブレーキ制御装置10は、処理を終了する。
【0049】
<ブレーキ制御装置10による効果>
以上説明したように、ブレーキ制御装置10は、車両Sに乗車している乗員が車両Sに備えられた座席に着席しているか否かを判定する判定部122と、乗員が座席に着席していると判定した場合は、主ブレーキ6と補助ブレーキ7とを用いて車両Sを減速させる第1ブレーキ制御モードを選択し、乗員が座席に着席していないと判定した場合は、主ブレーキ6を用いて車両Sを減速させる第2ブレーキ制御モードを選択する選択部123と、を有する。
【0050】
ブレーキ制御装置10がこのように構成されることで、車両Sの乗員が座席に着席していない場合は、補助ブレーキ7を用いずに車両Sを滑らかに減速させることができるため、座席に着席していない乗員の体勢が崩れることを抑えられる。その結果、乗員に適したブレーキ制御を行うことができる。さらに、車両Sの乗員が座席に着席している場合は、補助ブレーキ7を用いて車両Sを減速させるため、主ブレーキ6が備える消耗品の消耗を抑えられる。
【0051】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0052】
1 車外カメラ
2 車内カメラ
3 重量センサ
4 速度センサ
5 位置特定装置
6 主ブレーキ
7 補助ブレーキ
10 ブレーキ制御装置
11 記憶部
12 制御部
121 取得部
122 判定部
123 選択部
124 減速制御部
【要約】
【課題】車両に乗車した乗員に適したブレーキ制御を行う。
【解決手段】ブレーキ制御装置10は、主ブレーキ6と減速度を段階的に設定する補助ブレーキ7とを用いる第1ブレーキ制御モード又は主ブレーキ6を用いる第2ブレーキ制御モードのいずれかにより車両を減速させる減速制御部124と、車両に乗車している乗員が車両に備えられた座席に着席しているか否かを判定する判定部122と、乗員が座席に着席していると判定部122が判定した場合は、第1ブレーキ制御モードを選択し、乗員が座席に着席していないと判定部122が判定した場合は、第2ブレーキ制御モードを選択する選択部123と、を有する。
【選択図】
図1