(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両用空調制御装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20240326BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240326BHJP
F24F 11/86 20180101ALI20240326BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20240326BHJP
F24F 110/22 20180101ALN20240326BHJP
【FI】
B60H1/32 623B
B60H1/32 623C
B60H1/32 623G
B60H1/32 623H
F24F11/64
F24F11/86
F24F110:12
F24F110:22
(21)【出願番号】P 2023025740
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2019087839の分割
【原出願日】2019-05-07
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】沢田 琢満
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 道生
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-129247(JP,A)
【文献】特開2009-183924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F24F 11/64
F24F 11/86
F24F 110/12
F24F 110/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータから冷風が導入されるダクトと、冷媒ガスを圧縮するコンプレッサとを備える冷房システムを制御する車両用空調制御装置において、
前記ダクトに結露が発生するとの結露判定を行う結露判定部と、
前記結露判定部が結露判定すると、前記コンプレッサを停止する制御部とを有
し、
前記結露判定部は、車室が所定の開閉機構によって車両の外部に対して連続して開放される開時間が所定時間以上であって、前記エバポレータの温度が所定の第1温度以下、かつ、外気温が所定の第2温度以上であって、外湿度が所定湿度以上である場合に、前記結露判定を行うことを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
エバポレータから冷風が導入されるダクトと、冷媒ガスを圧縮するコンプレッサとを備える冷房システムを制御する車両用空調制御装置において、
前記ダクトに結露が発生するとの結露判定を行う結露判定部と、
前記結露判定部が結露判定すると、前記コンプレッサを停止する制御部とを有し、
前記結露判定部は、
車室が所定の開閉機構によって車両の外部に対して連続して開放される開時間が所定時間以上のときに、前記エバポレータの温度に基づいて前記ダクトの外表面温度を推定し、
前記推定した外表面温度が、外気温と、外湿度と、外気温と外湿度とに基づく露点を示す露点温度マップとに基づいて取得した露点よりも低いときに前記結露判定を行うことを特徴とす
る車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記所定時間は、前記外気温が一定である場合には、前記外湿度が高いほど短い時間に設定されることを特徴とする請求項
1または
2に記載の車両用空調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、冷房システムが設置されている。冷房システムは、インストルメントパネル内などに配置された空調ユニット(HVACとも称される)から吹き出される冷風によって車室内の快適性を保つ。冷風は、エバポレータを通過することで発生し、さらにダクトに導入され車室内に向けて吹き出される。
【0003】
特許文献1には、自動車の車室内空調用冷凍サイクルの冷却能力を調整して車室内の空調制御を行う自動車用空調制御方法が記載されている。この自動車用空調制御方法では、車室内空調用冷凍サイクルの作動による車室内空調安定時に、車室開閉部の開放による車室開放量が所定レベルに達したことを判定する。
【0004】
特許文献1では、この判定時に冷凍サイクルの冷却能力をそれまでの冷却能力より低下させることによって、車室内空調時における車室開閉部の開放に対して車載動力源の動力をその時の空調状態に応じて適切に節減できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両では、夏季など外気温と湿度が高い温暖湿潤状態で車室の車室開閉部(開閉機構)すなわち車両用ドアや窓あるいはサンルーフなどが所定時間以上開いていると、温度と湿度が高い外気が車室内に入り込む。このとき、車両の冷房システムが冷房運転中であれば、冷風が導入されるダクトの外表面の温度と、外気が入り込んだ車室内の温度との温度差によって、ダクトの外表面に結露が発生する場合がある。ダクトの外表面に結露が発生すると、ダクトの下方に配置されたハーネスなどの電装部品に結露水が滴下し、電装部品に不具合が生じるおそれがある。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、単に、車室開閉部の開放量に基づいて冷凍サイクルの冷却能力を低下させているに過ぎず、乗員の快適性を確保したり、ダクトの結露を防止したりするための対策は何ら講じられていない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、車室の開放時にダクトに結露が発生することを防止しつつ、乗員の快適性を損なうことがない車両用空調制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用空調制御装置の代表的な構成は、車両の冷房システムを備え、冷房システムを制御する車両用空調制御装置において、冷房システムは、冷媒ガスを圧縮するコンプレッサと、コンプレッサに冷媒配管を介して接続され冷媒によって冷却されるエバポレータと、冷却されたエバポレータを通過することで発生する冷風が導入されるダクトとを有し、車両用空調制御装置は、車室が所定の開閉機構によって車両の外部に対して連続して開放される開時間を計測する第1センサと、エバポレータの温度を計測する第2センサと、外気温を計測する第3センサと、外湿度を計測する第4センサと、第1センサで計測された開時間が所定時間以上であって、第2センサで計測されたエバポレータの温度が所定の第1温度以下であって、第3センサで計測された外気温が所定の第2温度以上であって、第4センサで計測された外湿度が所定湿度以上である場合に、ダクトに結露が発生するとの結露判定を行う結露判定部と、結露判定部が結露判定すると、コンプレッサを停止する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車室の開放時にダクトに結露が発生することを防止しつつ、乗員の快適性を損なうことがない車両用空調制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用空調制御装置を示す図である。
【
図2】
図1の車両用空調制御装置の露点温度マップを示す図である。
【
図3】
図1の車両用空調制御装置の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の結露判定の処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図4の結露判定の処理とは異なる他の結露判定の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調制御装置の代表的な構成は、車両の冷房システムを備え、冷房システムを制御する車両用空調制御装置において、冷房システムは、冷媒ガスを圧縮するコンプレッサと、コンプレッサに冷媒配管を介して接続され冷媒によって冷却されるエバポレータと、冷却されたエバポレータを通過することで発生する冷風が導入されるダクトとを有し、車両用空調制御装置は、車室が所定の開閉機構によって車両の外部に対して連続して開放される開時間を計測する第1センサと、エバポレータの温度を計測する第2センサと、外気温を計測する第3センサと、外湿度を計測する第4センサと、第1センサで計測された開時間が所定時間以上であって、第2センサで計測されたエバポレータの温度が所定の第1温度以下であって、第3センサで計測された外気温が所定の第2温度以上であって、第4センサで計測された外湿度が所定湿度以上である場合に、ダクトに結露が発生するとの結露判定を行う結露判定部と、結露判定部が結露判定すると、コンプレッサを停止する制御部とを有することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、車室の開時間が所定時間以上になったことを条件として、結露判定部は、エバポレータの温度が所定の第1温度以下の場合に、外気温が所定の第2温度以上かつ外湿度が所定湿度以上であれば結露判定を行う。そして制御部は、結露判定されたとき、すなわちダクトに結露が発生する状況下にあるときのみ、コンプレッサを停止する。このため、冷房システムの冷房運転が停止されて、ダクトの結露を確実に防止できる。なお制御部は、結露判定されると冷房運転を停止するため、燃費の悪化も抑制できる。
【0014】
また制御部は、結露判定がされないときは冷房運転を停止しないため、乗員の快適性を損なうこともない。さらに結露判定部は、エバポレータの温度が所定の第1温度以下の場合にのみ結露判定を行う。つまり、冷房運転の開始時など、エバポレータが十分には冷却されず温度がまだ低くない状況、すなわちダクトの外表面の温度も低くなく結露が発生しない状況においては、制御部は、冷房運転を停止しないため、乗員の快適性が損なわれない。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調制御装置の他の代表的な構成は、車両の冷房システムを備え、冷房システムを制御する車両用空調制御装置において、冷房システムは、冷媒ガスを圧縮するコンプレッサと、コンプレッサに冷媒配管を介して接続され冷媒によって冷却されるエバポレータと、冷却されたエバポレータを通過することで発生する冷風が導入されるダクトとを有し、車両用空調制御装置は、車室が所定の開閉機構によって車両の外部に対して連続して開放される開時間を計測する第1センサと、エバポレータの温度を計測する第2センサと、外気温を計測する第3センサと、外湿度を計測する第4センサと、外気温と外湿度とに基づく露点を示す露点温度マップと、ダクトに結露が発生するとの結露判定を行う結露判定部と、結露判定部が結露判定すると、コンプレッサを停止する制御部とを有し、結露判定部は、第1センサで計測された開時間が所定時間以上のときに、第2センサで計測されたエバポレータの温度に基づいて、ダクトの外表面温度を推定し、第3センサで計測された外気温と、第4センサで計測された外湿度と、露点温度マップとに基づいて露点を取得し、推定したダクトの外表面温度が取得した露点よりも低いときに結露判定を行うことを特徴とする。
【0016】
上記構成では、結露判定部は、エバポレータの温度に基づいてダクトの外表面温度を推定する。ダクトには、冷却されたエバポレータを通過することで発生する冷風が導入される。このため、ダクトの外表面温度は、エバポレータの温度から推定可能である。また結露判定部は、外気温と外湿度とに基づく露点を示す露点温度マップを用いて、実際に計測された外気温と外湿度から、露点を取得する。なお露点は、気温と相対湿度から水蒸気圧(湿り空気中の水蒸気分圧)を求め、その水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度を求めることで得られる。さらに結露判定部は、推定されたダクトの外表面温度が、取得した露点よりも低いとき結露判定を行う。そして制御部は、結露判定されたとき、すなわちダクトに結露が発生する状況下にあるときのみ、コンプレッサを停止するため、冷房システムの冷房運転が停止されて、ダクトの結露を確実に防止できる。なお制御部は、結露判定されると冷房運転を停止するため、燃費の悪化も抑制できる。また制御部は、結露判定がされないときは冷房運転を停止しないため、乗員の快適性を損なうこともない。
【0017】
上記の所定時間は、外気温が一定である場合には、外湿度が高いほど短い時間に設定されるとよい。ここで外気温が一定であれば外湿度が高いほど、露点は高くなり、ダクトの外表面に結露がより発生し易い状況となる。このような状況下では、車室の開時間の閾値である所定時間をより短く設定することにより、ダクトの外表面に結露が発生する前に、結露判定部は結露判定を行うことができる。これにより、制御部は、ダクトの外表面に結露が発生する前にコンプレッサを停止できるため、結露をより確実に防止できる。
【実施例】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る車両用空調制御装置100を示す図である。車両用空調制御装置100は、車両の冷房システム102を備え、この冷房システム102を制御する装置である。冷房システム102は、冷媒ガスを圧縮するコンプレッサ104と、空調ユニット(HVAC)106と、ダクト108とを有する。
【0020】
空調ユニット106は、車両のインストルメントパネル内に配置されていて、例えばエバポレータ110とブロアファン112とを有する。さらに空調ユニット106には、車両用空調制御装置100の一部であるサーミスタ114が配置されている。エバポレータ110は、コンプレッサ104に冷媒配管116を介して接続されていて冷媒によって冷却される。なお冷房システム102では、不図示のエキスパンションバルブ(膨張弁)が、高温高圧の液化された冷媒をエバポレータ110内に噴射して、冷媒を急激に膨張させて気化させ、低温低圧で霧状の冷媒にする。エバポレータ110は、エキスパンションバルブからの霧状の冷媒をチューブ内に通過させ、この気化の際にチューブ間のフィンを介して周囲の空気から潜熱を奪う。これによりエバポレータ110は冷却される。
【0021】
冷却されたエバポレータ110に、ブロアファン112の風を通過させることで矢印Aに示す冷風が発生する。冷風は、矢印Aに示すようにダクト108に導入され、ダクト108の吹出口118から車室内に吹き出す。このようにして冷房システム102は、車室内を冷房することができる。
【0022】
車両用空調制御装置100は、上記サーミスタ114に加え、ドア開閉センサ120と、外気温センサ122と、湿度センサ124とを有する。ドア開閉センサ120は、第1センサであって、車室が所定の開閉機構(ここでは車両用ドア126)によって車両の外部に対して連続して開放される開時間を計測する。なお所定の開閉機構としては、車両用ドア126に限られず、窓やサンルーフであってもよい。
【0023】
また上記サーミスタ114は、第2センサであって、エバポレータ110の温度を計測する。外気温センサ122は、第3センサであって、外気温を計測する。湿度センサ124は、第4センサであって、外湿度を計測する。なお外気温センサ122および湿度センサ124は、車両の例えばパワーユニットルーム内に配置されている。
【0024】
ここで車両では、夏季など外気温と湿度が高い温暖湿潤状態で車室の車両用ドア126が所定時間以上開いていると、温度と湿度が高い外気が車室内に入り込む。このとき、車両の冷房システム102が冷房運転中であれば、冷風が導入されるダクト108の外表面の温度と、外気が入り込んだ車室内の温度との温度差によって、ダクト108の外表面に結露が発生する場合がある。このような場合、ダクト108の下方に配置されたハーネスなどの電装部品に結露水が滴下し、電装部品に不具合が生じるおそれがある。
【0025】
そこで車両用空調制御装置100はさらに、電子制御ユニット(ECU)128と、ボディコントロールモジュール(BCM)130とを備える。ECU128およびBCM130は、詳細は後述するが、ダクト108の結露を防止するよう冷房システム102を制御する。ECU128は、コンプレッサ制御部132と、結露判定部134と、メモリ136とを有する。BCM130は、ブロアファン出力制御部138を有する。
【0026】
結露判定部134は、後述する所定の場合にダクト108に結露が発生するとの結露判定を行う。メモリ136は、結露判定の際に用いられる露点温度マップ140(
図2参照)を記憶している。コンプレッサ制御部132は、結露判定部134が結露判定すると、冷房システム102のコンプレッサ104を停止する。ブロアファン出力制御部138は、結露判定部134が結露判定すると、コンプレッサ104の停止と同時に、冷房システム102のブロワファン112を停止する。
【0027】
図2は、
図1の車両用空調制御装置100の露点温度マップ140を示す図である。露点温度マップ140は、メモリ136に記憶されていて、外気温と外湿度とに基づく露点を示す。なお露点は、気温と相対湿度から水蒸気圧(湿り空気中の水蒸気分圧)を求め、その水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度を求めることで得られる。
【0028】
一例として、露点温度マップ140は、外気温25℃以上、外湿度60%以上であれば、露点が16.7℃以上であることを示している。つまり、外気温25℃以上であって、外湿度60%以上である場合に、ダクト108の外表面温度が16.7℃以下であれば、ダクト108の外表面に結露が発生するおそれがある。
【0029】
さらに本実施例では、冷房システム102の冷房運転中に結露試験を行い、外気温25℃のとき、サーミスタ114で計測されるエバポレータ110の温度が何℃以下でダクト108の外表面温度が17℃以下になるかを確認した。結露試験の結果、ダクト108の外表面温度が17℃以下になるとき、エバポレータ110の温度は10℃以下であった。このように結露試験では、ダクト108の外表面温度について、露点温度マップ140で示される露点16.7℃よりも高い温度17℃を設定している。このようにすれば、ダクト108の外表面に結露が発生する前に、すなわちダクト108の外表面温度が17℃になった時点で、ダクト108の外表面に結露が発生する状況下にあるとの結露判定が可能となる。
【0030】
つまり結露判定は、エバポレータ110の温度、外気温および外湿度にそれぞれ閾値を設定し、さらに設定された閾値と実際に計測したエバポレータ110の温度、外気温および外湿度を比較することで可能となる(
図4参照)。本実施例では、一例としてエバポレータ110の温度の閾値である第1温度を10℃、外気温の閾値である第2温度を25℃、外湿度の閾値である所定湿度を60%にそれぞれ設定している。設定された各閾値は、メモリ136に予め記憶し、結露判定の際、メモリ136から読み出せばよい。
【0031】
以下、車両用空調制御装置100の動作について説明する。
図3は、
図1の車両用空調制御装置100の処理を示すフローチャートである。
図4は、
図3の結露判定の処理を示すフローチャートである。
【0032】
図3に示すようにECU128は、結露判定部134が結露判定した否かを判定する(ステップS100)。ステップS100の結露判定では、
図4に示すように、まず結露判定部134がドア開閉センサ120で計測された車両用ドア126の開時間が所定時間(ここでは10分)以上であるか否かを判定する(ステップS200)。結露判定部134は、車両用ドア126の開時間すなわち車室が車両の外部に対して開放される時間が所定時間未満であると(No)、結露判定をせず(ステップS202)、処理を終了する。
【0033】
一方、ステップS200で車両用ドア126の開時間が所定時間以上であると(Yes)、これを条件として以下の各処理を行う。なお開時間の所定時間とは、任意に設定可能な閾値であってメモリ136に予め記憶し、ステップS200の処理の際、メモリ136から読み出せばよい。
【0034】
ステップS200の後、結露判定部134は、サーミスタ114で計測されたエバポレータ110の温度が第1温度(ここでは10℃)以下であるか否かを判定する(ステップS204)。エバポレータ110の温度が第1温度以下であれば(Yes)、結露判定部134は、冷房システム102が冷房運転中であると判定し、さらにステップS206の処理を行う。一方、エバポレータ110の温度が第1温度より高い温度であれば(No)、結露判定部134は、ステップS202に進み、結露判定しない。
【0035】
つぎに結露判定部134は、外気温センサ122で計測された外気温が第2温度(ここでは25℃)以上であるか否かを判定し(ステップS206)、第2温度以上であれば(Yes)、ステップS208の処理を行う。一方、外気温が第2温度より低い温度であれば(No)、結露判定部134は、ステップS202に進み、結露判定しない。
【0036】
さらに結露判定部134は、外湿度センサ124で計測された外湿度が所定湿度(ここでは60%)以上であるか否かを判定する(ステップS208)。そして結露判定部134は、外湿度が所定湿度以上であれば(Yes)、ダクト108に結露が発生するとの結露判定を行う(ステップS210)。一方、ステップS208で外湿度が所定湿度未満であれば(No)、結露判定部134は、ステップS202に進み、結露判定しない。
【0037】
このように結露判定部134は、車両用ドア126の開時間が所定時間以上であることを条件として、エバポレータ110の温度が第1温度以下であって、外気温が第2温度以上であって、外湿度が所定湿度以上である場合に、結露判定を行う。なお結露判定部134の結露判定では、外気温が第2温度以上であるか否かを判定した後、外湿度が所定湿度以上であるか否かを判定したが、これに限られず、ステップS206、S208を入れ替えて外湿度の判定後に外気温を判定してもよい。
【0038】
再び
図3に戻って説明する。ステップS100で結露判定部134が結露判定すると(Yes)、コンプレッサ制御部132は、冷房システム102のコンプレッサ104を停止し(ステップS102)、冷房運転を停止する。なお結露判定部134が結露判定すると、BCM130のブロワファン制御部138は、コンプレッサ104が停止すると同時にブロワファン112も停止してもよい。
【0039】
一方、ステップS100で結露判定部134が結露判定しないと(No)、コンプレッサ制御部132は、コンプレッサ104を停止せず(ステップS104)、冷房システム102の冷房運転を継続する。さらにECU128は、ステップS102、S104の後、イグニッションがOFFか否かを判定する(ステップS106)。ECU128は、イグニッションがONであれば(No)、再びステップS100に戻り、結露判定部134が結露判定した否かを判定し、イグニッションがOFFであれば(Yes)、処理を終了する。
【0040】
このように車両用空調制御装置100では、結露判定されたとき、すなわちダクト108に結露が発生する状況下にあるときのみ、コンプレッサ104を停止するため、冷房システム102の冷房運転が停止されて、ダクト108の結露を確実に防止できる。
【0041】
ここで冷房システム102の作動時には、ラジファンが強制的に回転し、これに追従してエンジンに直結しているコンプレッサ104が強制的に回転するため、エンジンの回転数も上昇する。つまり車両用空調制御装置100では、結露判定されるとコンプレッサ104を停止することにより、燃費の悪化も抑制できる。ただしコンプレッサ104は、エンジンに直結しているものに限らず、電気自動車などに搭載された電動コンプレッサであってもよい。この場合であっても、車両用空調制御装置100は、結露判定されると電動コンプレッサを停止するため、燃費の悪化を抑制できる。
【0042】
また車両用空調制御装置100では、結露判定がされないときは冷房運転を停止しないため、乗員の快適性を損なうこともない。さらにECU128の結露判定部134は、エバポレータ110の温度が第1温度以下の場合にのみ結露判定を行う。つまり車両用空調制御装置100では、冷房運転の開始時など、エバポレータ110が十分には冷却されず温度がまだ低くない状況、すなわちダクト108の外表面の温度も低くなく結露が発生しない状況では冷房運転を停止しない。このため、乗員の快適性が損なわれない。
【0043】
図5は、
図4の結露判定の処理とは異なる他の結露判定の処理を示すフローチャートである。
図4に示すステップS100の結露判定では、エバポレータ110の第1温度(10℃)、外気温の第2温度(25℃)および外湿度の所定湿度(60%)を閾値として、予めメモリ136に記憶していたが、これに限定されない。すなわち結露判定部134は、
図5のステップS100Aに示すように、これらの閾値を用いることなく結露判定を行ってもよい。
【0044】
具体的には結露判定部134は、ドア開閉センサ120で計測された車両用ドア126の開時間が所定時間(ここでは10分)以上であるか否かを判定し(ステップS200)、所定時間未満であると(No)、結露判定しない(ステップS202)。一方、ステップS200で車両用ドア126の開時間が所定時間以上であると(Yes)、これを条件として以下の各処理を行う。
【0045】
まず結露判定部134は、メモリ136から露点温度マップ140を読み出し(ステップS300)、つぎにサーミスタ114でエバポレータ110の温度を計測し、この温度に基づいて、ダクト108の外表面温度を推定する(ステップS302)。ここでダクト108には、冷却されたエバポレータ110を通過することで発生する冷風(
図1の矢印A参照)が導入される。このためダクト108の外表面温度は、エバポレータ110の温度から推定可能である。なお冷房システム102の冷房運転を予め行って、エバポレータ110の温度とダクト108の外表面温度との対応関係を予め取得し、これをメモリ136に記憶し、推定の際にメモリ136から読み出すようにしてもよい。
【0046】
つぎに結露判定部134は、外気温センサ122で外気温を計測し(ステップS304)、湿度センサ124で外湿度を計測する(ステップS306)。そして結露判定部134は、計測された外気温および外湿度と、読み出した露点温度マップ140とに基づいて露点を取得する(ステップS308)。
【0047】
さらに結露判定部134は、推定したダクト108の外表面温度が取得した露点よりも低いか否かを判定する(ステップS310)。ステップS310でダクト108の外表面温度が露点よりも低いとき(Yes)、結露判定部134は、ダクト108に結露が発生するとの結露判定を行う(ステップS210)。ステップS210の後、車両用空調制御装置100は、
図3に示すステップS102に進んでコンプレッサ104を停止し、冷房システム102の冷房運転を停止する。
【0048】
一方、ステップS310でダクト108の外表面温度が露点以上であれば(No)、結露判定部134は、ステップS202に進み、結露判定しない。ステップS202の後、車両用空調制御装置100は、
図3に示すステップS104に進んでコンプレッサ104を停止せず、冷房システム102の冷房運転を継続する。
【0049】
このように車両用空調制御装置100では、
図5に示すステップS100Aの結露判定の処理を行うことで、ダクト108に結露が発生する状況下にあるときのみ、コンプレッサ104を停止し、ダクト108の結露を確実に防止できる。また車両用空調制御装置100は、結露判定されると冷房運転を停止するため、燃費の悪化も抑制できる。さらに車両用空調制御装置100は、結露判定がされないときは冷房システム102の冷房運転を停止しないため、乗員の快適性を損なうこともない。
【0050】
上記実施例では、ステップS200の処理で閾値として用いられる車両用ドア126の開時間の所定時間を、一例として10分としたが、これに限られず、適宜変更してもよい。すなわち所定時間は、外気温が一定である場合には、外湿度が高いほど短い時間に設定してもよい。ここで外気温が一定であれば外湿度が高いほど、露点は高くなり、ダクト108の外表面に結露がより発生し易い状況となる。
【0051】
このような状況下では、車両用ドア126の開時間の閾値である所定時間をより短く設定することにより、ダクト108の外表面に結露が発生する前に、結露判定部134は結露判定を行うことができる。このようにすれば、車両用空調制御装置100では、ダクト108の外表面に結露が発生する前にコンプレッサ104を停止できるため、結露をより確実に防止できる。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、車両用空調制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100…車両用空調制御装置、102…冷房システム、104…コンプレッサ、106…空調ユニット、108…ダクト、110…エバポレータ、112…ブロワファン、114…サーミスタ、116…冷媒配管、118…ダクトの吹出口、120…ドア開閉センサ、122…外気温センサ、124…湿度センサ、126…車両用ドア、128…電子制御ユニット、130…ボディコントロールモジュール、132…コンプレッサ制御部、134…結露判定部、136…メモリ、138…ブロワファン出力制御部、140…露点温度マップ