(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240326BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/087 331
G03G9/097 365
(21)【出願番号】P 2023072679
(22)【出願日】2023-04-26
(62)【分割の表示】P 2019048829の分割
【原出願日】2019-03-15
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成真
(72)【発明者】
【氏名】川本 結加
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 絵理奈
(72)【発明者】
【氏名】大空 憲政
(72)【発明者】
【氏名】吉原 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 則之
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-96850(JP,A)
【文献】特開2017-9756(JP,A)
【文献】特開2017-116590(JP,A)
【文献】特開2013-134433(JP,A)
【文献】特開2015-125255(JP,A)
【文献】特開2012-203045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、
および、ヒドロキシ基を有する低分子量化合物を含むトナー粒子と、
シリカ粒子を含む外添剤と、
を有し、
トナーを水中に分散させ、乾燥させる処理を実施した後、前記トナー粒子の表面を0.5μm×0.5μm四方で区分した複数の領域において、Si量を定量したときのSi量の変動係数と、前記処理前のSi量の変動係数との変化幅((処理後のSi量の変動係数)-(処理前のSi量の変動係数))が0.05以上%0.60以下であ
り、
前記結着樹脂が、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体からなるポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールの平均炭素数Cpと前記低分子量化合物の炭素数CLとの差の絶対値が、|Cp-CL|≦8である静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記処理後のSi量の変動係数が0.20以上0.80以下である請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記処理後のSi量の変動係数が0.25以上0.70以下である請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記トナー粒子に対する前記低分子量化合物の含有量が500ppm以上50,000ppm以下であり、
前記トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率が15質量%以上50質量%以下である
請求項1~請求項3のいずれか1項に静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記低分子量化合物が、フェノール化合物、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル化合物、及びアルコール化合物から選択される少なくとも1種である請求項1
~請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記低分子量化合物がアルコール化合物である請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記低分子量化合物の含有量が1,000ppm以上40,000ppm以下である請求項4に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記低分子量化合物の含有量が2,000ppm以上30,000ppm以下である請求項7に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記シリカ粒子の含水率が0.5質量%以上5.0質量%以下である請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記トナー粒子の比表面積の測定値B1と、体積平均粒径から求められる計算上の前記トナー粒子の比表面積B2と、の比B1/B2が1.2以上5.0以下である請求項1~請求項
9のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
【請求項12】
請求項1~請求項
10のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項13】
請求項
11に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項14】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項
11に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項15】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項
11に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など、静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在さまざまな分野で利用されている。
従来、電子写真法においては、感光体や静電記録体上に種々の手段を用いて静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーと呼ばれる検電性粒子を付着させて静電潜像(トナー像)を現像し、記録媒体表面に転写し、加熱等により定着する、という複数の工程を経て、可視化する方法が一般的に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「着樹脂及び結晶性ポリエステルを含有するトナー粒子と、無機微粒子とを有する非磁性トナーであって、結晶性ポリエステルの、融点(Tm)が60℃以上100℃以下であり、重量平均分子量(Mw)が20000以上50000以下であり、トナー粒子100.0質量部に対して、無機微粒子を1.5質量部以上3.0質量部以下含有し、無機微粒子の30.0質量%以上がシリカ微粒子であり、かつ、シリカ微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)が4.0nm以上15.0nm以下であり、無機微粒子の遊離率が10.0質量%以上25.0質量%以下であり、無機微粒子によるトナー粒子の被覆率の変動係数が6.0%以下である非磁性トナー」が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、「なくとも結着樹脂及び離型剤を含有し、外添剤として無機微粒子が2種類以上添加され、該外添剤のうちの1種類以上がシリカであるトナーであって、
該トナーを分散剤に分散させてなるトナー分散液に、超音波振動を加えたときに、前記トナーから脱離するシリカがシリカ全添加量に対して20%となるときの前記超音波振動の照射エネルギー量が8kJ以上14kJ以下であり、50%となるときのエネルギー量が70kJ以上130kJ以下であるトナー。」が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献3には、「トナー母粒子に外添剤が添加された静電荷像現像用トナーであって、上記外添剤は、数平均1次粒子径が20nm以上80nm未満であり、最小粒子径と数平均1次粒子径との比(最小粒子径/数平均1次粒子径)が0.5以上であり、最大粒子径と数平均1次粒子径との比(最大粒子径/数平均1次粒子径)が1.7以下であり、上記トナー母粒子の表面で単分散している粒子である静電荷像現像用トナー。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-125256号公報
【文献】特開2017-015817号公報
【文献】特開2011-043759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、結着樹脂を含むトナー粒子とシリカ粒子を含む外添剤とを有する静電荷像現像用トナーにおいて、特定の処理後のSi量の変動係数と特定の処理前のSi量の変動係数との変化幅((処理後のSi量の変動係数)-(処理前のSi量の変動係数))が0.05未満または0.60超えである場合、ヒドロキシ基を有する低分子量化合物の含有量が500ppm未満若しくは50,000ppm超えの場合、又は、トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率が15質量%未満若しくは50質量%超えである場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0009】
<1>
結着樹脂を含むトナー粒子と、
シリカ粒子を含む外添剤と、
を有し、
トナーを水中に分散させ、乾燥させる処理を実施した後、前記トナー粒子の表面を0.5μm×0.5μm四方で区分した複数の領域において、Si量を定量したときのSi量の変動係数と、前記処理前のSi量の変動係数との変化幅((処理後のSi量の変動係数)―(処理前のSi量の変動係数))が0.05以上%0.60以下である静電荷像現像用トナー。
<2>
前記処理後のSi量の変動係数が0.20以上0.80以下である<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
<3>
前記処理後のSi量の変動係数が0.25以上0.70以下である<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
<4>
結着樹脂、および、ヒドロキシ基を有する低分子量化合物を含むトナー粒子と、
シリカ粒子を含む外添剤と、
を有し、
前記トナー粒子に対する前記低分子量化合物の含有量が500ppm以上50,000ppm以下であり、
前記トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率が15質量%以上50質量%以下である静電荷像現像用トナー。
<5>
前記低分子量化合物が、フェノール化合物、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル化合物、及びアルコール化合物から選択される少なくとも1種である<4>に記載の静電荷像現像用トナー。
<6>
前記低分子量化合物がアルコール化合物である<5>に記載の静電荷像現像用トナー。
<7>
前記低分子量化合物の含有量が1,000ppm以上40,000ppm以下である<5>に記載の静電荷像現像用トナー。
<8>
前記低分子量化合物の含有量が2,000ppm以上30,000ppm以下である<6>に記載の静電荷像現像用トナー。
<9>
前記結着樹脂が、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体からなるポリエステル樹脂を含む<1>~<8>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<10>
前記結着樹脂が、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体からなるポリエステル樹脂を含み、
前記ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールの平均炭素数Cpと前記低分子量化合物の炭素数CLとの差の絶対値が、|Cp-CL|≦8である<4>~<8>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<11>
前記シリカ粒子の含水率が0.5質量%以上5.0質量%以下である<1>~<10>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<12>
前記トナー粒子の比表面積の測定値B1と、体積平均粒径から求められる計算上の前記トナー粒子の比表面積B2と、の比B1/B2が1.2以上5.0以下である<1>~<11>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<13>
<1>~<12>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
<14>
<1>~<12>のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
<15>
<13>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<16>
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
<13>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
<17>
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<13>に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0010】
<1>に係る発明によれば、結着樹脂を含むトナー粒子とシリカ粒子を含む外添剤とを有する静電荷像現像用トナーにおいて、特定の処理後のSi量の変動係数と特定の処理前のSi量の変動係数との変化幅((処理後のSi量の変動係数)-(処理前のSi量の変動係数))が0.05未満または0.60超えである場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<2>又は<3>に係る発明によれば、前記処理後のSi量の変動係数が0.20未満又は0.80超えである場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
【0011】
<4>、<5>又は<6>に係る発明によれば、ヒドロキシ基を有する低分子量化合物の含有量が500ppm未満若しくは50,000ppm超えの場合、又は、トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率が15質量%未満若しくは50質量%超えである場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<7>、又は<8>に係る発明によれば、低分子量化合物の含有量が1,000ppm未満又は40,000ppm超えである場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
【0012】
<9>に係る発明によれば、結着樹脂がスチレンアクリル樹脂である場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
【0013】
<10>に係る発明によれば、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールの平均炭素数Cpと前記低分子量化合物の炭素数CLとの差の絶対値|Cp-CL|が、8を超える場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
【0014】
<11>に係る発明によれば、シリカ粒子の含水率が0.5質量%未満又は5.0質量%超えである場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
<12>に係る発明によれば、トナー粒子の比表面積の測定値B1と、体積平均粒径から求められる計算上のトナー粒子の比表面積B2と、の比B1/B2が1.2未満又は5.0超えである場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像用トナーが提供される。
【0015】
<13>、<14>、<15>、<16>又は<17>に係る発明によれば、結着樹脂を含むトナー粒子とシリカ粒子を含む外添剤とを有する静電荷像現像用トナーにおいて、特定の処理後のSi量の変動係数と特定の処理前のSi量の変動係数との変化幅((処理後のSi量の変動係数)-(処理前のSi量の変動係数))が0.05未満または0.60超えであるトナーを適用した場合、ヒドロキシ基を有する低分子量化合物の含有量が500ppm未満若しくは50,000ppm超えのトナーを適用した場合、又は、トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率が15質量%未満若しくは50質量%超えであるトナーを適用した場合に比べ、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置又は画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【
図3】トナー粒子の表面を0.5μm×0.5μm四方で区分した複数の領域において、Si量を定量する方法およびSi量の変動係数を算出する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」ともいい、「静電荷像現像剤」を単に「現像剤」ともいう。
【0018】
<静電荷像現像用トナー>
第一実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂を含むトナー粒子と、シリカ粒子を含む外添剤と、を有する。
そして、トナーを水中に分散させ、乾燥させる処理を実施した後、前記トナー粒子の表面を0.5μm×0.5μm四方で区分した複数の領域において、Si量を定量したときのSi量の変動係数と、前記処理前のSi量の変動係数との変化幅((処理後のSi量の変動係数)-(処理前のSi量の変動係数)、以下、「特定の処理前後のSi量の変動係数変化幅」とも称する)は、0.05以上0.60以下である。
【0019】
第一実施形態に係るトナーは、上記構成により、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する。その理由は、次の通り推測される。
【0020】
従来、トナーは、トナーカートリッジ内で熱が加わると、トナー粒子表面に外添剤が全体的に埋没する。このようなトナーは転写性が低下するため、転写残トナーが増加する。なお、転写残トナーとは、トナー画像の転写後に像保持体に残留するトナーを示す。
転写残トナーは、クリーニングブレードでかきとられ、トナー回収経路を経て、回収容易等に送られる。転写残トナーの回収経路で詰まりが発生することがある。回収経路で詰まりが起こると、転写残トナーの回収ができず、装置内でのトナーの吹き出し等により記録媒体の汚れを引き起こすことがある。
特に、インアウト(つまり、用紙を送る方向に対し左右)で画像密度に差がある場合、回収経路内で転写残トナーの滞留が起こり、トナーの凝集体を形成しやすく、詰まりを引き起こすことがある。
【0021】
これは、トナーに熱が加わることによって、外添剤がトナー粒子に埋没することによって、トナー粒子間の付着量が強くなり、トナー粒子が密に充填した状態が形成されるためと考えられる。
【0022】
一方、トナーのガラス転移温度Tg、トナーの結着樹脂の分子量等を調整すると、熱による外添剤埋没が抑制される。
しかし、その場合には、現像手段内で付与される機械的負荷により、トナー粒子から外添剤が脱離しやすくなる。そのため、転写残トナーも、外添剤離脱により外添剤量が低下する。そうすると、やはり、転写残トナーが増加し、また、トナー粒子間の付着量が強くなり、転写残トナーの回収経路で詰まりが生じ、記録媒体の汚れを引き起こすことがある。
【0023】
それに対して、第一実施形態に係るトナーは、トナー粒子1個の表面において、外添剤としてのシリカ粒子が高い付着力で付着した領域と、外添剤としてのシリカ粒子が低く付着した領域とが分布している構造としている。
具体的には、特定の処理前後のSi量の変動係数変化幅を0.05以上0.60以下としている。
【0024】
ここで、「トナー粒子の表面を0.5μm×0.5μm四方で区分した複数の領域毎におけるSi量」は、各領域毎における、外添剤としてのシリカ粒子の存在量を示している。そして、Si量の変動係数が大きい程、トナー粒子に均一に近い状態でシリカ粒子が付着していることを示し、Si量の変動係数が小さい程、トナー粒子に不均一に近い状態でシリカ粒子が付着していることを示しめしている。
つまり、処理前後のSi量の変動係数の変化幅が上記範囲となることは、処理前に比べて、処理後の方がトナー粒子に不均一近い状態でシリカ粒子が付着していることを示しめしている。
よって、処理前後のSi量の変動係数の変化率が上記範囲となることは、トナー粒子1個中で、外添剤としてのシリカ粒子が高い付着力で付着した領域と、外添剤としてのシリカ粒子が低く付着した領域とが分布している構造としている。
【0025】
上記構造を有するトナーに熱が加わると、強い付着力でトナー粒子に付着している領域のシリカ粒子はトナー粒子に埋没する一方で、弱い付着力でトナー粒子に付着しているシリカ粒子は埋没し難い状態となる。そのため、弱い付着力でトナー粒子に付着しているシリカ粒子がトナー粒子同士のスペーサ機能を発揮し、転写残トナーの増加、トナー粒子同士の付着力の増加を抑制する。その結果、トナーに熱が加わっても、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生が抑制される。
【0026】
また、上記構造を有するトナーに機械的負荷が付与されても、弱い付着力でトナー粒子に付着しているシリカ粒子から離脱する傾向にあるが、強い付着力でトナー粒子に付着している領域のシリカ粒子はトナー粒子から離脱し難い傾向となる。そのため、高い付着力でトナー粒子に付着している領域のシリカ粒子が転写残トナーの増加、トナー粒子同士の付着力の増加を抑制する。その結果、トナーに熱が加わらなくても、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生が抑制される。
【0027】
以上から、第一実施形態に係るトナーは、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制すると推測される。
【0028】
一方、第二実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、結着樹脂、および、ヒドロキシ基を有する低分子量化合物を含むトナー粒子と、シリカ粒子を含む外添剤と、を有する。
そして、トナー粒子に対する低分子量化合物の含有量は、500ppm以上50,000ppm以下であり、トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率が15質量%以上50質量%以下である。
【0029】
第二実施形態に係るトナーは、上記構成により、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する。その理由は、次の通り推測される。
【0030】
ヒドロキシ基を有する低分子量化合物は、外添剤としてのシリカ粒子に対する付着性が高い。そのため、トナー粒子の表面に低分子量化合物が存在すると、トナー粒子に対する付着力が高まる。
【0031】
一方、トナー粒子が、テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分が、比率15%以上50%以下で含むと、低分子量化合物がトナー粒子全体に拡散し難くなる。それにより、トナー粒子1個の表面で、低分子量化合物が多く存在する領域と少なく存在する領域とが形成される。
【0032】
つまり、トナー粒子1個の表面において、低分子量化合物が多く存在する領域が「外添剤としてのシリカ粒子が高い付着力で付着した領域」となり、低分子化合物が少なく存在する領域が「外添剤としてのシリカ粒子が低く付着した領域」となり、互いの領域が分布している構造となる。
【0033】
そのため、第二実施形態に係るトナーも、第一実施形態に係るトナーと同様に、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制すると推測される。
【0034】
以下、第一及び第二実施形態に係るトナーのいずれにも該当するトナー(以下「本実施形態に係るトナー」とも称する)について詳細に説明する。ただし、本発明のトナーの一例は、第一及び第二実施形態に係るトナーのいずれか一方に該当するトナーであればよい。
【0035】
以下、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーについて詳細に説明する。
【0036】
(Si量の変動係数)
本実施形態に係るトナーにおいて、特定の処理前後のSi量の変動係数変化幅は、0.05以上0.60以下であり、記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、0.10以上0.55以下が好ましく、0.15以上0.50以下がより好ましい。
【0037】
また、特定の処理後のSi量の変動係数は、記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、0.20以上0.80以下が好ましく、0.25以上%0.75以下がより好ましく、0.30以上0.70以下がさらに好ましい。
【0038】
ここで、トナーを水中に分散させ、乾燥させる処理は、具体的には、次の工程を有する処理である。
1)トリトンX-100(富士フイルム和光純薬製)0.2質量%水溶液100mLに、トナー2gを添加した水溶液を調製する工程。
2)マグネチックスターラー「HS-360(アズワン株式会社」により、回転数250rpmで、調製した溶液を10分攪拌した後、この溶液を遠心分離機にかけ、トナー粒子から脱離したシリカ粒子を除去する工程。
3)トナー粒子から脱離したシリカ粒子を除去した後、温度40℃、時間24時間でトナーを乾燥する工程。
【0039】
トナー粒子の表面を0.5μm×0.5μm四方で区分した複数の領域において、Si量を定量する方法およびSi量の変動係数を算出する方法は、エネルギー分散型X線分光装置(EDX装置)付き走査型電子顕微鏡(SEM)を利用する。具体的には、次の通りである。
まず、SEMでトナー粒子1個を倍率20,000倍で観察する。観察したトナー粒子1個の表面を、0.5μm×0.5μm四方の領域に区分する(
図3参照、なお、
図3中、TNはトナー粒子、SiO
2はシリカ粒子を示す。)。この区分は、トナー粒子1個の表面において、0.5μm×0.5μm四方の領域が最大数含まれるようにする。
次に、EDX装置により、加速電圧5kVの条件で、区分した複数の領域毎の元素分析を実施し、Si元素の含有量(質量%)を測定する。
そして、区分した複数の領域毎のSi量に基づき、式:Si量の変動係数=(標準偏差)/(平均値)により、Si量の変動係数を算出する。
上記操作を10個のトナー粒子に対して実施し、得られたSi量の変動係数の平均値を算出する。
【0040】
(トナーの構成)
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、外添剤と、を有する。
【0041】
トナー粒子は、結着樹脂、およびヒドロキシ基を有する低分子量化合物を含む。トナー粒子は、必要に応じて、着色剤、離型剤、その他添加剤等を含有してもよい。
なお、トナー粒子は、例えば、イエロートナー粒子、マゼンタトナー粒子、シアントナー粒子、ブラックトナー粒子等のトナー粒子の他、白色トナー粒子、透明トナー粒子、光輝性トナー粒子等であってもよく、特に制限はない。
【0042】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0044】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0045】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、45℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0048】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0049】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0050】
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、40質量%以上98質量%以下が好ましく、50質量%以上96質量%以下がより好ましく、60質量%以上94質量%以下がさらに好ましい。
【0051】
-低分子量化合物-
低分子量化合物は、ヒドロキシ基を有する。ここで、低分子量化合物とは、分子量50以上600以下(好ましくは60以上500以下、より好ましくは80以上400以下)の有機化合物を意味する。
【0052】
低分子量化合物としては、フェノール化合物、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル化合物、アルコール化合物、多価アルコールのエステル化合物等が挙げられる。なお、低分子量化合物は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
これらの中でも、低分子量化合物としては、記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、フェノール化合物、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル化合物、及びアルコール化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0054】
フェノール化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物である。フェノール化合物としては、水酸基を1個含む置換フェノール類(フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等)、水酸基を2個含む置換フェノール類(カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールZ等)、水酸基を3個以上含む置換フェノール類(ピロガロール、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシベンゼン等)が挙げられる。
【0055】
ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル化合物としては、例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、サリチル酸、及びそのエステル化合物等が挙げられる。
【0056】
アルコール化合物は、アルコール性水酸基を有する化合物である。アルコール化合物としては、次のアルコール化合物が挙げられる。
・1価のアルコールとして、脂肪族アルコール(カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール等)芳香族アルコール(ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、サリチルアルコール、ジフェニルメタノール等)
2価のアルコールとして、脂肪族ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)
・芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンプロピレンオキサイド付加物等))、
3価以上の多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)
【0057】
多価アルコールのエステル化合物としては、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド等の水酸基を有するエステル化合物等が挙げられる。
【0058】
特に、低分子量化合物としては、記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、アルコール化合物がより好ましく、1価また2価以上の芳香族アルコールが好ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0059】
ここで、結着樹脂として、ポリエステル樹脂を適用した場合、記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールの平均炭素数Cpと低分子量化合物の炭素数CLとの差の絶対値|Cp-CL|が、|Cp-CL|≦8であることが好ましく、|Cp-CL|≦7がより好ましく、|Cp-CL|≦6がさらに好ましい。
ポリエステル樹脂と低分子量化合物との関係を上記関係とすると、低分子量化合物がトナー粒子全体に適度に拡散し難くなる。そのため、トナー粒子1個の表面において、低分子量化合物が多く存在する領域(つまり外添剤としてのシリカ粒子が高い付着力で付着した領域)と、低分子化合物が少なく存在する領域(つまり、外添剤としてのシリカ粒子が低く付着した領域と、の互いの領域が、均一に近い状態で分布している構造となる傾向が高くなる。
その結果、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制し易くなる。
【0060】
低分子量化合物の含有量は、500ppm以上50,000ppm以下である。記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、低分子量化合物の含有量は、1,000ppm以上40,000ppm以下が好ましく、2,000ppm以上30,000ppm以下がより好ましく、2,500ppm以上25,000ppm以下がさらに好ましい。なお、ppmは質量基準である。
【0061】
低分子量化合物の含有量は、次の通り測定する。
1)トナー1gを10mlのメタノール中に分散させ、超音波照射を行い、上澄み液を抽出する。
2)得られた上澄み液を用いて、H-NMRによってヒドロキシ基を有する低分子量化合物を同定する。
3)濃度既知の特定された低分子量化合物を含むメタノール溶液を、高速液体クロマトグラフ(HPLC)により測定し、得られたスペクトルから検量線を作成する。
4)高速液体クロマトグラフ(HPLC)により得られた上澄み液を測定し、得られたスペクトルと検量線から、特定された低分子量化合物の含有量を算出する。
【0062】
なお、高速液体クロマトグラフ(HPLC)の装置及び条件は下記のとおりである。
分析装置:LaChromElite L-2000、日立ハイテクノロジーズ
カラム:Gelpack GL-W520-S(直径7.8mm×300mm)、日立化成
検出器:L-2455型ダイオードアレイ検出器、日立ハイテクノロジーズ
測定波長:UV190nm~400nm
定量波長:UV284nm
移動相:50mMリン酸水素2カリウム
送液速度:1.0mL/min
サンプル注入量:10μL
【0063】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0065】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0066】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0067】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0068】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0069】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0070】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
なお、低分子量化合物は、トナー粒子の少なくとも表面に存在していることがよく、芯部及び被覆部に含まれていてもよい。
【0071】
トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分(以下「THF可溶分」とも称する)のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定(以下「GPC測定」とも称する。)によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率は、15質量%以上50質量%以下(好ましくは20質量%以上45質量%以下、より好ましくは22質量%以上42質量%以下)である。
トナー粒子のTHF可溶分のGPC測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率を上記範囲とすることで、低分子量化合物がトナー粒子全体に拡散し難くなる。その結果、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制する。
【0072】
ここで、トナー粒子のTHF可溶分のGPC測定における分子量分布、および分子量50,000以上の成分比率は、次の通り測定する。
まず、測定対象となるトナー粒子(又はトナー)0.5mgをTHF(テトラヒドロフラン)1gに溶解させ、超音波分散をかけた後に、濃度が0.5%となるように調整し、この溶解成分をGPCにより測定する。
GPC装置として「HLC-8120GPC、SC-8020(東ソー製)」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM-H(東ソー製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHFを用いる。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、RI(Refractive Index)検出器を用いて実験を行う。また、検量線は東ソー製「polystylene標準試料TSK standard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製する。また、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
そして、得られた分子量分布(つまり、GPCチャート)から、分子量50,000以上の面積を積分して、分子量50,000以上の成分比率を算出する。
【0073】
トナー粒子の比表面積の測定値B1と、体積平均粒径から求められる計算上のトナー粒子の比表面積B2と、の比B1/B2は、記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、1.2以上5.0以下が好ましく、1.4以上4.5以下がより好ましく、1.5以上4.0以下がさらに好ましい。
測定値B1と比表面積B2との比率を上記範囲にすると、トナー粒子表面に適度な凹凸が形成されると考えられる。そのため、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制し易くなる。
【0074】
ここで、トナー粒子の比表面積の測定値B1は、記録媒体の汚れの発生抑制の観点から、0.5m2/g以上10.0m2/g以下が好ましく、0.6m2/g以上8.0m2/g以下がより好ましい。
一方、体積平均粒径から求められる計算上のトナー粒子の比表面積B2は、0.4m2/g以上5m2/g以下が好ましく、0.5m2/g以上4.0m2/g以下がより好ましい。
【0075】
トナー粒子の比表面積の測定値B1は、窒素吸着法による測定値である。具体的には、BET式を用い、窒素吸着法の一点法により測定する。なお、平衡相対圧は0.3とする。
【0076】
一方、体積平均粒径から求められる計算上のトナー粒子の比表面積B2は、次の通り測定する。
B2=(トナー粒子の表面積)/{(トナー粒子の比重)×(トナー粒子の体積)} ここでトナーの体積平均粒径をD50vとしたとき、
(トナーの表面積)=4×π×(D50v/2)2、
(トナーの体積)=4/3×π×(D50v/2)3
である。
【0077】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0078】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0079】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0080】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0081】
(外添剤)
外添剤としては、シリカ粒子が適用される。
シリカ粒子の体積平均粒径は、40nm以上400nm以下が好ましく、50nm以上300nm以下がより好ましく、55nm以上250nm以下がさらに好ましく、60nm以上200nm以下が最も好ましい。
シリカ粒子の平均粒径を上記範囲にすると、トナー粒子に対する付着力が制御され易く、かつトナー粒子間のスペーサー機能が発揮され易くなる。そのため、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制し易くなる。
【0082】
ここで、シリカ粒子の体積平均粒径は、次の方法により測定される。
シリカ粒子の一次粒子を、走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)装置((株)日立製作所製:S-4100)により観察して画像を撮影し、この画像を画像解析装置(LUZEXIII、(株)ニレコ製)に取り込み、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの面積を測定し、この面積値から円相当径を算出する。この円相当径の算出を、シリカ粒子100個について実施する。そして、得られた円相当径の体積基準の累積頻度における50%径(D50v)をシリカ粒子の体積平均粒径とする。
なお、電子顕微鏡は1視野中にシリカ粒子が10個以上50個以下程度写るように倍率を調整し、複数視野の観察を合わせて一次粒子の円相当径を求める。
【0083】
シリカ粒子の平均円形度は、0.75以上1.0以下が好ましく、0.9以上1.0以下がより好ましく、0.92以上0.98以下がさらに好ましい。
シリカ粒子の平均円形度を上記範囲にすると、より球状に近いシリカ粒子となり、トナー粒子に対する付着力が制御され易く、かつトナー粒子間のスペーサー機能が発揮され易くなる。そのため、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制し易くなる。
【0084】
ここで、シリカ粒子の平均円形度は、次の方法により測定される。
まず、シリカ粒子の円形度は、シリカ粒子の一次粒子を、SEM装置により観察し、得られた一次粒子の平面画像解析から、下記式により算出される「100/SF2」として得られる。
・式:円形度(100/SF2)=4π×(A/I2)
〔式中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を、Aは一次粒子の投影面積を表す。〕
そして、シリカ粒子の平均円形度は、上記平面画像解析によって得られた一次粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0085】
シリカ粒子の含水率は、0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.6質量%以上4.5質量%以下がより好ましく、0.8質量%以上4.0質量%以下がさらに好ましい。
シリカ粒子の含水率を上記範囲にすると、トナー粒子に対する付着力が制御され易くなる。そのため、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制し易くなる。
【0086】
ここで、シリカ粒子の含水率は、次の通り測定される。
まず、メタノール及び水の1:1混合溶液にトナーを加え、懸濁させて超音波をかけた後、遠心分離機によりトナー粒子と外添剤とに分離し、シリカ粒子を含む懸濁液である上澄み液を取り出す。次に、上澄み液を乾燥させて乾燥された外添剤を得た後、その乾燥されたシリカ粒子を30℃80%の恒温槽に24h保管する。そして、恒温槽に保管した後のシリカ粒子を加熱乾燥式の水分率計で水分率を測定する。
【0087】
シリカ粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、シリカ粒子100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下である。
【0088】
シリカ粒子の含有量は、トナー粒子に対して0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以上4.6質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上4.2質量%以下が更に好ましい。
【0089】
外添剤としては、シリカ粒子以外の外添剤を併用してもよい。
他の外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4等が挙げられる。
【0090】
他の外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0091】
他の外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0092】
他の外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0093】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0094】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0095】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0096】
ここで、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合において、トナー粒子への低分子量化合物の配合方法について制限はないが、例えば、樹脂粒子分散液に配合し、低分子量化合物を配合した樹脂粒子分散液中で、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する方法が挙げられる。
【0097】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0098】
-樹脂粒子分散液準備工程-
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0099】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0100】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0103】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0104】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0105】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0106】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0107】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0108】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0109】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0110】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0111】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0112】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0113】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0114】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0115】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0116】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0117】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0118】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0119】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0120】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0121】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0122】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0123】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0124】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0125】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0126】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0127】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0128】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0129】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0130】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0131】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0132】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0133】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0134】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0135】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0136】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0137】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0138】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0139】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0140】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0141】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0142】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0143】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0144】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0145】
<ポリエステル樹脂分散液の調製>
[ポリエステル樹脂分散液(P1-a)の調製]
・テレフタル酸:80モル部
・イソフタル酸:20モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:20モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:80モル部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間を要して温度を210℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら0.5時間を要して230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。このようにして、ポリエステル樹脂(P1)を合成した。得られたポリエステル樹脂(P1)の重量平均分子量(Mw)は、20,000であった。
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂(P1)100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間攪拌した。
次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下し、乳化を行った。滴下終了後、乳化液を室温(20℃乃至25℃)に戻し、攪拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2-ブタノールを1,000ppm以下まで低減させ、イオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整して、体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)とした。
【0146】
[ポリエステル樹脂分散液(P1-b)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物1.0部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-b)を得た。
【0147】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-c)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、ビスフェノールAエチレンキサイド付加物0.15部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-c)を得た。
【0148】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-d)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物2.0部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-d)を得た。
【0149】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-e)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物0.3部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-e)を得た。
【0150】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-f)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、12-ヒドロキシステアリン酸1.0部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-f)を得た。
【0151】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-g)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、ミリスチルアルコール1.0部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-g)を得た。
【0152】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-h)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、1,12ドデカンジオール1.0部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-h)を得た。
【0153】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-i)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物4.0部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-i)を得た。
【0154】
〔ポリエステル樹脂分散液(P1-j)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P1)100部を投入する際、ビスフェノールAエチレンキサイド付加物0.09部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1-j)を得た。
【0155】
[ポリエステル樹脂分散液(P2-a)の調製]
・テレフタル酸:80モル部
・イソフタル酸:15モル部
・トリメリット酸無水物:5モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:20モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:80モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P2-a)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P2-a)の重量平均分子量(Mw)は、95,000であった。
【0156】
〔ポリエステル樹脂分散液(P2-b)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P2-a)の調整において、ポリエステル樹脂(P2)100部を投入する際、ビスフェノールAエチレンキサイド付加物7.0部を投入した以外は同様にして体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P2-b)を得た。
【0157】
〔ポリエステル樹脂分散液(P3)の調製]
・テレフタル酸:80モル部
・イソフタル酸:17モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:20モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:80モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P3)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P3)の重量平均分子量(Mw)は、55,000であった。
【0158】
〔ポリエステル樹脂分散液(P4)の調製]
・テレフタル酸:78モル部
・イソフタル酸:15モル部
・トリメリット酸無水物:7モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:20モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:80モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P4)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P4)の重量平均分子量(Mw)は、124,000であった。
【0159】
〔ポリエステル樹脂分散液(P5)の調製]
・テレフタル酸:80モル部
・イソフタル酸:15モル部
・トリメリット酸無水物:5モル部
・プロピレングリコール:80モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:20モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1-a)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P6)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P6)の重量平均分子量(Mw)は、95,000であった。
【0160】
<着色剤粒子分散液の調製>
[着色剤粒子分散液(1)の調製]
・カーボンブラックRegal330(キャボットコーポレーション社製):100部
・イオン性界面活性剤(テイカ社製、テイカパワーBN2060):10部
・イオン交換水:400部
上記成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製)により、240MPaで10分間処理し、着色剤粒子分散液(1)(固形分濃度:20質量%)を得た。
【0161】
<着色剤粒子分散液の調製>
[離型剤粒子分散液(1)の調製]
・パラフィンワックス(日本精蝋社製HNP9):100部
・アニオン性界面活性剤(テイカ社製、テイカパワーBN2060):2部
・イオン交換水:400部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径210nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(1)(固形分量20質量%)を得た。
【0162】
<着色剤粒子分散液の調製>
[シリカ粒子(1)の調製]
水、メタノール、アンモニア水を十分混合した後、加熱しながらテトラメトキシシランとアンモニア水を滴下した。次に、反応により得られたシリカゾル懸濁液にヘキサメチルジシラザン(HMDS)を添加して疎水化処理を行い、シリカゾルを乾燥してシリカ粒子を得た。その後、シリカ粒子を粉砕することにより、体積平均粒径D50v160nm、シリカ粒子(1)を得た。シリカ粒子(1)の含水率は1.7質量%であった。
【0163】
[シリカ粒子(2)の調製]
シリカ粒子(1)の調整において、ヘキサメチルジシラザンの添加量を調整し、体積平均粒径D50v160nmのシリカ粒子(2)を得た。シリカ粒子(2)の含水率は5.2質量%であった。
【0164】
[シリカ粒子(3)の調製]
シリカ粒子(1)の調整においてヘキサメチルジシラザンの添加量を調整し、D50v 160nmのシリカ粒子(3)を得た。シリカ粒子(3)の含水率は0.7質量%であった。
【0165】
[シリカ粒子(4)の調製]
シリカ粒子(1)の調整において滴下条件を調整し、D50v 38nmのシリカ粒子(4)を得た。シリカ粒子(4)の含水率は2.6質量%であった。
【0166】
[シリカ粒子(5)の調製]
シリカ粒子(1)の調整において滴下条件を調整し、D50v 420nmのシリカ粒子(5)を得た。シリカ粒子(5)の含水率は1.4質量%であった。
【0167】
<実施例1>
〔トナー粒子(1)の作製〕
・樹脂粒子分散液(P1-b):300部(仕込み樹脂粒子分散液)
・樹脂粒子分散液(P2-a):300部(仕込み樹脂粒子分散液)
・離型剤粒子分散液(1):50部
・着色剤粒子分散液(1):50部
上記成分を円筒ステンレス容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)により4,000rpmでせん断力を加えながら10分間分散して混合した。次いで、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液1.75部を徐々に滴下して、ホモジナイザーの回転数を5,000rpmにして15分間分散して混合し、原料分散液とした。
その後、4枚パドルの撹拌翼を用いた撹拌装置、及び、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、撹拌回転数を700rpmにしてマントルヒーターにて加熱し始め、45℃にて凝集粒子の成長を促進させた。またこの際、0.3Nの硝酸や1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて分散液のpHを2.2乃至3.5の範囲に制御した。上記pH範囲で2時間ほど保持し、凝集粒子を形成した。
【0168】
次に、追加樹脂粒子分散液として、樹脂粒子分散液(P1-b):150部、樹脂粒子分散液(P2-a):150部を添加し、前記凝集粒子の表面に結着樹脂の樹脂粒子を付着させた。更に47℃に昇温し、光学顕微鏡及びマルチサイザーIIで粒子の大きさ及び形態を確認しながら凝集粒子を整えた。その後、キレート剤(HIDS、(株)日本触媒製)2.25部を添加し、次いで、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.8に調整し、15分間保持した。その後、凝集粒子を融合させるためにpHを8.0に上げた後、7585℃まで昇温させた。光学顕微鏡で凝集粒子が融合したのを確認した後、1.0℃/分の降温速度で冷却した。その後20μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥してトナー粒子(1)を得た。得られたトナー粒子(1)の体積平均粒子径は5.6μmであった。
【0169】
(トナー(1)の作製)
・トナー粒子(1) :100部
・シリカ粒子(1) : 2.3部
上記組成をヘンシェルミキサーにより周速20m/sで15分間の混合を行い、トナー(1)を得た。
【0170】
<実施例2~実施例17、比較例1~5>
表1に従って、トナー粒子(1)の作製において、仕込み樹脂粒子分散液、追加樹脂粒子分散液の種類及び部数を変更し、また、シリカ粒子の種類及び部数を変更した以外は、実施例1と同様にして、各トナーを得た。
【0171】
<評価>
-各種測定-
得られた各例のトナーに関し、既述の方法に従って、下記特性を測定した。
・処理前後のSi量の変動係数の変化幅((処理後のSi量の変動係数)―(処理前のSi量の変動係数))(表中、単に「Si量変動係数変化幅」と表記)
・処理後のSi量の変動係数(表中、単に「Si量変動係数」と表記)
・低分子量化合物の含有量
・トナー粒子のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ測定によって得られた分子量分布における分子量50,000以上の成分比率(表中、「分子量5万以上成分比率」と表記)
・トナー粒子の比表面積の測定値B1と、体積平均粒径から求められる計算上のトナー粒子の比表面積B2と、その比B1/B2
・ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールの平均炭素数Cpと前記低分子量化合物の炭素数CLとの差の絶対値|Cp-CL|
【0172】
(用紙汚れ)
富士ゼロックス製DocuCentre-V 7080Nの現像機及びトナーカートリッジに充填した。
次に、トナーカートリッジを48℃の環境で1週間保管したもの、及び室温(25℃)で保管したものを準備した。
そして、48℃の環境で1週間保管したトナーカートリッジを富士ゼロックス製DocuCentre-V 7080Nに装着した。そして、この装置により、画像密度30%の帯状チャートをA4紙に30,000枚出力した。その後、白紙を出力し、用紙上の汚れを目視で観察し、下記評価基準で評価した。
一方、室温(25℃)で保管したナーカートリッジを富士ゼロックス製DocuCentre-V 7080Nに装着した。そして、この装置により、上記同様にして、用紙上の汚れを目視で観察し、下記評価基準で評価した。
【0173】
-評価基準-
A: 目視で用紙上の汚れが全く見られない。
B: 目視で極めて軽微な汚れが見られるものの問題ないレベルである。
C: 目視で軽微な汚れが見られるものの許容できるレベルである。
D: 目視で汚れが見られ、許容できないレベルである。
E: 目視で汚れが顕著である。
【0174】
【0175】
【0176】
以上から、本実施例のトナーは、比較例のトナーに比べ、トナーの高温保管後および常温保管後の用紙汚れが低減されていることがわかる。
そのため、本実施例のトナーは、トナーに対する熱の付与の有無に関わらず、転写残トナーの回収経路詰まりに起因する記録媒体の汚れの発生を抑制することがわかる。
【符号の説明】
【0177】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写ベルトクリーニング装置(中間転写体クリーニング手段の一例)
P 記録紙(記録媒体の一例)
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(像保持体クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)