(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20240326BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240326BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240326BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20240326BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240326BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240326BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K5/544
C08L83/04
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2023534788
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2022027223
(87)【国際公開番号】W WO2023286728
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021117662
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鵜木 君光
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆秀
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117904(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137989(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/195883(WO,A1)
【文献】特開2012-246367(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C08K 3/00-13/08
C08L 83/00-83/16
H01L 23/29、23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)硬化促進剤と、を含む、半導体封止用樹脂組成物であって、
硬化剤(B)は、フェノール樹脂(B1)と活性エステル樹脂(B2)と、を含み、
フェノール樹脂(B1)は、ビフェニルアラルキル構造を有し、
活性エステル樹脂(B2)は、一般式(1)で表される構造を有し、
【化1】
(一般式(1)において、Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲であり、
一般式(1)においてBは、一般式(B)で表される構造であり、
【化2】
(一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基
、置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。nは0~4の整数である。)
硬化促進剤(C)は、テトラフェニルホスホニウム-4,4’-スルフォニルジフェノラート、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート、4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラートからなる群より選択される1種または2種以上を含
み、
エポキシ樹脂(A)に対する硬化剤(B)の当量比((B)/(A))が0.60~0.90であり、
エポキシ樹脂(A)に対するフェノール樹脂(B1)の当量比((B1)/(A))が0.10~0.55であり、
エポキシ樹脂(A)に対する活性エステル樹脂(B2)の当量比((B2)/(A))が0.10~0.60である、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)に対する硬化剤(B)の当量比((B)/(A))が0.60~0.80であり、
エポキシ樹脂(A)に対するフェノール樹脂(B1)の当量比((B1)/(A))が0.20~0.55であり、
エポキシ樹脂(A)に対する活性エステル樹脂(B2)の当量比((B2)/(A))が0.17~0.45である、請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(B)で表される構造は、一般式(B-1)~(B-6)から選択される少なくとも1つである、半導体封止用樹脂組成物。
【化3】
(一般式(B-1)~(B-6)中、R
1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、またはアラルキル基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、またはフェニル基であり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、
nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である。)
【請求項4】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(1)において、Aが、一般式(A)で表される構造を有する、半導体封止用樹脂組成物。
【化4】
(一般式(A)中、R
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、lは0または1であり、mは1以上の整数である)
【請求項5】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
フェノール樹脂(B1)の含有量
(重量部)と活性エステル樹脂(B2)の含有量
(重量部)の比率が、25:75~75:25である、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
硬化促進剤(C)が、
(C1)テトラフェニルホスホニウム-4,4’-スルフォニルジフェノラートと、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケートとの組み合わせ、または
(C2)テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケートと、4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラートとの組み合わせ、
である、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
硬化促進剤(C)が、前記半導体封止用樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上2.0質量%以下の量で含まれる、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
さらにカップリング剤(D)を含む、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項
8に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
カップリング剤(D)が2級アミノシランカップリング剤である、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって
エポキシ樹脂(A)が、ビフェニルアラルキル構造を有する、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂(A)が、ビフェニルアラルキル型樹脂およびジシクロペンタジエン型樹脂から選択される少なくとも1種を含む、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
さらにシリコーンオイル(E)を含む、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
さらに無機充填剤(F)を含む、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項
13に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
無機充填剤(F)が、シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種である、半導体封止用樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
下記条件で測定された当該半導体封止用樹脂組成物のゲルタイムが50秒以上80秒以下である、半導体封止用樹脂組成物。
(条件)
175℃に加熱した熱板上で当該半導体封止用樹脂組成物を溶融した後、へらで練りながら硬化するまでの時間(単位:秒)を測定し、当該時間をゲルタイムとする。
【請求項16】
半導体素子と、
請求項1~
15のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、前記半導体素子を封止する封止材と、
を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等を封止するための材料として、熱硬化性の樹脂組成物(封止用樹脂組成物)が知られている。
【0003】
特許文献1、2には、エポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、所定の平均粒径を有する無機充填材とを含む封止用樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献3には、多官能エポキシ樹脂及び二官能エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、を含む封止用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/065872号
【文献】国際公開第2020/065873号
【文献】国際公開第2020/066856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に記載の従来の封止用樹脂組成物においては、成形時の収縮率が高く製品の歩留まりが低く、さらに得られた封止材の機械強度が低く、また誘電特性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、硬化剤としてフェノール樹脂と活性エステル樹脂とを併用し、所定の硬化促進剤を含む半導体封止用樹脂組成物を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0008】
[1](A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)硬化促進剤と、を含む、半導体封止用樹脂組成物であって、
硬化剤(B)は、フェノール樹脂(B1)と活性エステル樹脂(B2)と、を含み、
活性エステル樹脂(B2)は、一般式(1)で表される構造を有し、
【化1】
(一般式(1)において、Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲であり、
一般式(1)においてBは、一般式(B)で表される構造であり、
【化2】
(一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。nは0~4の整数である。)
硬化促進剤(C)は、テトラフェニルホスホニウム-4,4’-スルフォニルジフェノラート、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート、4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラートからなる群より選択される1種または2種以上を含む、半導体封止用樹脂組成物。
[2] [1]に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(B)で表される構造は、一般式(B-1)~(B-6)から選択される少なくとも1つである、半導体封止用樹脂組成物。
【化3】
(一般式(B-1)~(B-6)中、R
1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、またはアラルキル基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、またはフェニル基であり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である。)
[3] [1]または[2]に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(1)において、Aが、一般式(A)で表される構造を有する、半導体封止用樹脂組成物。
【化4】
(一般式(A)中、R
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、lは0または1であり、mは1以上の整数である)
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
フェノール樹脂(B1)の含有量と活性エステル樹脂(B2)の含有量の比率が、25:75~75:25である、半導体封止用樹脂組成物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
さらにカップリング剤(D)を含む、半導体封止用樹脂組成物。
[6] [5]に記載の半導体封止用樹脂組成であって、
カップリング剤(D)が2級アミノシランカップリング剤である、半導体封止用樹脂組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成であって
エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B1)の少なくとも一方が、ビフェニルアラルキル構造を有する、半導体封止用樹脂組成物。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成であって
フェノール樹脂(B1)が、ビフェニルアラルキル構造を有する、半導体封止用樹脂組成物。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成であって、
エポキシ樹脂(A)が、ビフェニルアラルキル型樹脂およびジシクロペンタジエン型樹脂から選択される少なくとも1種を含む、半導体封止用樹脂組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
さらにシリコーンオイル(E)を含む、半導体封止用樹脂組成物。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
さらに無機充填剤(F)を含む、半導体封止用樹脂組成物。
[12] [11]に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
無機充填剤(F)が、シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種である、半導体封止用樹脂組成物。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
当該半導体封止用樹脂組成物のゲルタイムが50秒以上80秒以下である、半導体封止用樹脂組成物。
[14] 半導体素子と、
[1]~[13]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、前記半導体素子を封止する封止材と、
を備える、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は成形時の収縮率が低く製品の歩留まりに優れ、さらに当該組成物から得られる硬化物は、機械強度および誘電特性に優れる。言い換えれば、本発明の半導体封止用樹脂組成物はこれらの特性のバランスに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【
図2】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0012】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、を含む、
以下、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物(以下、封止用樹脂組成物とも記載する)に含まれる各成分について説明する。
【0013】
[エポキシ樹脂(A)]
エポキシ樹脂(A)は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。
【0014】
エポキシ樹脂(A)は、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0015】
本発明の効果の観点から、エポキシ樹脂(A)は、好ましくは、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型多官能エポキシ樹脂、オルソクレゾール型二官能エポキシ樹脂、ビフェニル型二官能エポキシ樹脂、ビスフェノール型二官能エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型二官能エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。エポキシ樹脂(A)は、ビフェニルアラルキル型多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型二官能エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0016】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の含有量は、成形時に好適な流動性を得て充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる装置の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0017】
[硬化剤(B)]
本実施形態において、硬化剤(B)は、フェノール樹脂(B1)と活性エステル樹脂(B2)と、を含む。
【0018】
(フェノール樹脂(B1))
フェノール樹脂(B1)としては、本発明の効果を奏する範囲で封止用樹脂組成物に一般に使用されるものを用いることができる。
【0019】
フェノール樹脂(B1)は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本実施形態において、フェノール樹脂(B1)は、本発明の効果の観点から、ビフェニルアラルキル構造を備えることが好ましく、具体的にはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましい。ビフェニルアラルキル構造を備えるフェノール樹脂は低吸湿、低弾性であり信頼性に優れる。
本実施形態においては、エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B1)のうち一方または両方が、ビフェニルアラルキル構造を有することが好ましい。
【0021】
(活性エステル樹脂(B2))
活性エステル樹脂(B2)は、以下の一般式(1)で表される構造を有する樹脂を用いることができる。
【0022】
【0023】
式(1)において、「B」は、式(B)で表される構造である。
【0024】
【0025】
式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基である。置換されたアリーレン基の置換基は炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。前記基の置換基としては、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
Yとして好ましくは、単結合、メチレン基、-CH(CH3)2-、エーテル結合、置換されていてもよいシクロアルキレン基、置換されていてもよい9,9-フルオレニレン基等が挙げられる。
nは0~4の整数であり、好ましくは0または1である。
Bは、具体的には、下記一般式(B1)または下記一般式(B2)で表される構造である。
【0026】
【0027】
上記一般式(B1)および上記一般式(B2)中、ArおよびYは、一般式(B)と同義である。
【0028】
Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。
【0029】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、フェノール樹脂(B1)とともに特定の活性エステル樹脂(B2)を含むことにより、成形時の収縮率が低く製品の歩留まりに優れ、さらに機械強度および低誘電正接に優れた硬化物(封止材)が得られる。
【0030】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物に用いられる活性エステル樹脂(B2)は、式(B)で表される活性エステル基を有する。エポキシ樹脂(A)と活性エステル樹脂(B2)との硬化反応において、活性エステル樹脂(B2)の活性エステル基はエポキシ樹脂のエポキシ基と反応して2級の水酸基を生じる。この2級の水酸基は、活性エステル樹脂(B2)のエステル残基により封鎖される。そのため、硬化物の誘電正接が低減される。
【0031】
一実施形態において、上記式(B)で表される構造は、以下の式(B-1)~式(B-6)から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0032】
【0033】
式(B-1)~(B-6)において、
R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
R2はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、
nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である。
【0034】
上記式(B-1)~(B-6)で表される構造は、いずれも配向性が高い構造であることから、これを含む活性エステル樹脂(B2)を用いた場合、得られる樹脂組成物の硬化物は、低誘電率および低誘電正接を有するとともに、金属に対する密着性に優れ、そのため半導体封止材料として好適に用いることができる。
中でも、低誘電率および低誘電正接の観点から、式(B-2)、式(B-3)または(B-5)で表される構造を有する活性エステル樹脂(B2)が好ましく、さらに式(B-2)のnが0である構造、式(B-3)のXがエーテル結合である構造、または式(B-5)において二つのカルボニルオキシ基が4,4’-位にある構造を有する活性エステル樹脂(B2)がより好ましい。また各式中のR1はすべて水素原子であることが好ましい。
【0035】
式(1)における「Ar’」はアリール基であり、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、3,5-キシリル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、2-ベンジルフェニル基、4-ベンジルフェニル基、4-(α-クミル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等であり得る。中でも、特に誘電率および誘電正接の低い硬化物が得られることから、1-ナフチル基または2-ナフチル基であることが好ましい。
【0036】
本実施形態において、式(1)で表される活性エステル樹脂(B2)における「A」は、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、このようなアリーレン基としては、例えば、1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物と、フェノール性化合物とを重付加反応させて得られる構造が挙げられる。
【0037】
前記1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物は、例えば、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンの多量体、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、リモネン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、耐熱性に優れる硬化物が得られることからジシクロペンタジエンが好ましい。尚、ジシクロペンタジエンは石油留分中に含まれることから、工業用ジシクロペンタジエンにはシクロペンタジエンの多量体や、他の脂肪族或いは芳香族性ジエン化合物等が不純物として含有されることがあるが、耐熱性、硬化性、成形性等の性能を考慮すると、ジシクロペンタジエンの純度90質量%以上の製品を用いることが望ましい。
【0038】
一方、前記フェノール性化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、硬化性が高く硬化物における誘電特性に優れる活性エステル樹脂(B2)となることからフェノールが好ましい。
【0039】
好ましい実施形態において、式(1)で表される活性エステル樹脂(B2)における「A」は、式(A)で表される構造を有する。式(1)における「A」が以下の構造である活性エステル樹脂(B2)を含む樹脂組成物は、その硬化物が低誘電率、低誘電正接であり、インサート品に対する密着性に優れる。
【0040】
【0041】
式(A)において、
R3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
lは0または1であり、mは1以上の整数である。
【0042】
式(1)で表される活性エステル硬化剤のうち、より好ましいものとして、下記式(1-1)、式(1-2)および式(1-3)で表される樹脂が挙げられ、特に好ましいものとして、下記式(1-3)で表される樹脂が挙げられる。
【0043】
【0044】
式(1-1)中、R1及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0045】
【0046】
式(1-2)中、R1及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0047】
【0048】
式(1-3)中、R1及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0049】
本発明で用いられる活性エステル樹脂(B2)は、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール性水酸基を有するアリール基が複数結節された構造を有するフェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)とを反応させる、公知の方法により製造することができる。
【0050】
上記フェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)との反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜調整することができるが、中でも、より硬化性の高い活性エステル樹脂(B2)が得られることから、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.25~0.90モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.10~0.75モルの範囲となる割合で各原料を用いることが好ましく、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.50~0.75モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.25~0.50モルの範囲となる割合で各原料を用いることがより好ましい。
【0051】
また、活性エステル樹脂(B2)の官能基当量は、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の合計を樹脂の官能基数とした場合、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、200g/eq以上230g/eq以下の範囲であることが好ましく、210g/eq以上220g/eq以下の範囲であることがより好ましい。
【0052】
本実施形態の硬化剤(B)は、フェノール樹脂(B1)および活性エステル樹脂(B2)を組み合わせて含む。
これにより、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は成形時の収縮率が低く製品の歩留まりに優れ、さらに当該組成物から得られる硬化物は、機械強度および低誘電正接に優れる。
【0053】
本実施形態においては、エポキシ樹脂(A)に対する硬化剤(B)の当量比(硬化剤(B)/エポキシ樹脂(A))は、本発明の効果の観点から、0.50~1.00、好ましくは0.52~0.95、より好ましくは0.55~0.90、特に好ましくは0.60~0.80とすることができる。
【0054】
本実施形態においては、エポキシ樹脂(A)に対する活性エステル樹脂(B2)の当量比(活性エステル樹脂(B2)/エポキシ樹脂(A))は、0.10~0.60、好ましくは0.12~0.50、より好ましくは0.15~0.47、特に好ましくは0.17~0.45とすることができる。
これにより、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は硬化性に優れることから、成形時の収縮率がより低く製品の歩留まりにより優れ、さらに当該組成物から得られる硬化物は、機械強度および低誘電正接にさらに優れる。
前記当量比(B2/A)が上限値を超えると、エポキシ基が開環した際に発生する水酸基を活性エステルでキャップし易くなるため誘電正接が低下する。しかしながら、本実施形態のように、フェノール硬化剤(B1)と活性エステル樹脂(B2)とを併用する硬化剤(B)においては、前記当量比(B2/A)の上限値を超えると、フェノール硬化剤(B1)のフェノール水酸基と活性エステル樹脂(B2)の活性エステルとが作用し、エポキシ樹脂(A)の硬化に影響を与えることから、硬化性(スパイラルフロー、ゲルタイムなど)がバラつき、耐熱性(Tgなど)や機械特性(曲げ強度・曲げ弾性率など)が低下し、さらに均質な誘電特性(硬化体内の誘電特性の均質性)が制御し難くなる、などの問題が生じる。
【0055】
本実施形態においては、エポキシ樹脂(A)に対するフェノール樹脂(B1)の当量比(フェノール樹脂(B1)/エポキシ樹脂(A))は、本発明の効果の観点から、0.10~0.70、好ましくは0.15~0.65、より好ましくは0.18~0.60、特に好ましくは0.20~0.55とすることができる。
【0056】
本発明の効果の観点から、硬化剤(B)は、フェノール樹脂(B1)の含有量(重量部)と、活性エステル樹脂(B2)の含有量(重量部)の比率を、25:75~75:25、好ましくは30:70~70:30とすることができる。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物において、フェノール樹脂(B1)および活性エステル樹脂(B2)を含む硬化剤(B)とエポキシ樹脂(A)との配合量は、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、硬化剤(B)中の活性基の合計1当量に対して、エポキシ樹脂中のエポキシ基が0.8~1.2当量となる割合であることが好ましい。ここで、硬化剤(B)中の活性基とは、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基を指す。
【0058】
本実施形態の組成物において、硬化剤(B)は、封止樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.2質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上7質量%以下の量で用いられる。
硬化剤(B)を上記範囲で含むことにより、得られる硬化物はより優れた誘電特性を有することができ、低誘電正接にさらに優れる。
【0059】
[硬化促進剤(C)]
硬化促進剤(C)は、テトラフェニルホスホニウム-4,4’-スルフォニルジフェノラート、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート、4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラートからなる群より選択される1種または2種以上を含む。本実施形態においては、2種含むことができる。
【0060】
封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化特性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0061】
[カップリング剤(D)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、カップリング剤(D)を含むことができる。
カップリング剤(D)として、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシランが挙げられる。封止材と金属部材との密着性を向上する観点から、カップリング剤(D)は、好ましくはエポキシシランまたはアミノシランであり、より好ましくは2級アミノシランである。同様の観点から、カップリング剤(D)は、好ましくはフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1つ以上である。
【0062】
封止用樹脂組成物中のカップリング剤(D)の含有量は、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。
また、樹脂粘度の増粘抑制の観点から、封止用樹脂組成物中のカップリング剤(D)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0063】
[シリコーンオイル(E)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、低応力剤としてシリコーンオイル(E)を含むことができる。これにより、封止用樹脂組成物により電子素子等を封止して得られる成形体の反りを抑制することができる。
【0064】
シリコーンオイル(E)は、たとえばエポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、およびポリエーテル変性シリコーンオイル等の有機変性シリコーンオイルを含むことが好ましい。これらの中でも、樹脂成分中にシリコーンオイル(E)を微分散させて、反りの抑制に寄与する観点からは、ポリエーテル変性シリコーンオイルを含むことがとくに好ましい。
【0065】
シリコーンオイル(E)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、シリコーンオイル(E)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。シリコーンオイル(E)の含有量をこのような範囲に制御することによって、封止用樹脂組成物により電子素子等を封止して得られる成形体の反り抑制に寄与することが可能である。
【0066】
本実施形態においては、シリコーンオイル(E)以外のその他の低応力剤を含むことができ、具体例として、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー、シリコーンレジン等のシリコーン;アクリロニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。
【0067】
[無機充填剤(F)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、無機充填材(F)を含むことができる。
無機充填材(F)として、一般的に半導体封止用樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。また、無機充填材(F)は表面処理がなされているものであってもよい。
【0068】
無機充填材(F)の具体例として、溶融シリカ等、結晶シリカ、非晶質二酸化珪素等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
無機充填材(F)は、汎用性に優れている観点から、好ましくはシリカを含む。シリカの形状としては、球状シリカ、破砕シリカ等が挙げられる。
【0070】
無機充填材(F)の平均径(D50)は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
ここで、無機充填材(F)の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することにより取得することができる。
【0071】
また、無機充填材(F)の最大粒径は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
【0072】
また、無機充填材(F)の比表面積は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは1m2/g以上であり、より好ましくは3m2/g以上であり、また、好ましくは20m2/g以下であり、より好ましくは10m2/g以下である。
【0073】
封止用樹脂組成物中の無機充填材(F)の含有量は、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、得られる半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の無機充填材(F)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対してたとえば97質量%以下であってもよく、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0074】
[その他の成分]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上述した成分以外の成分を含んでもよく、たとえば流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。また、封止用樹脂組成物は、たとえば、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンズアミドおよび3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールのうち1以上をさらに含んでもよい。
【0075】
離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;パラフィン;およびエルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドからなる群から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
封止用樹脂組成物中の離型剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化物の離型性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0076】
イオン捕捉剤の具体例として、ハイドロタルサイトが挙げられる。
封止用樹脂組成物中のイオン捕捉剤の含有量は、封止材の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0077】
難燃剤の具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンが挙げられる。
封止用樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、封止材の難燃性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0078】
着色剤の具体例として、カーボンブラック、ベンガラが挙げられる。
封止用樹脂組成物中の着色剤の含有量は、封止材の色調の好ましいものとする観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
【0079】
酸化防止剤の具体例として、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物が挙げられる。
【0080】
<封止用樹脂組成物>
本実施形態の封止用樹脂組成物は、常温(25℃)で固体であり、その形状は封止用樹脂組成物の成形方法等に応じて選択することができ、たとえばタブレット状;粉末状、顆粒状等の粒子状;シート状が挙げられる。
【0081】
また、封止用樹脂組成物の製造方法については、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、粉砕後、成形して粒子状またはシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。たとえば、タブレット状に打錠成形して粒子状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また、たとえば真空押し出し機によってシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また得られた封止用樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
なお、活性エステル樹脂(B2)の融点が高い場合には、予めフェノール樹脂(B1)と活性エステル樹脂(B2)とを溶融混合して均一に混合することが好ましい。
【0082】
本実施形態において得られる封止用樹脂組成物は、硬化剤(B)としてフェノール樹脂(B1)および活性エステル樹脂(B2)を含むため、収縮率が低く製品の歩留まりに優れ、さらに機械強度および誘電特性に優れた硬化物を得ることができる。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、トランスファー成型、射出成型、または圧縮成型に用いることができる。
また、本実施形態において得られる封止用樹脂組成物を用いることにより、製品信頼性に優れる半導体装置を得ることができる。
【0083】
次に、封止用樹脂組成物またはその硬化物の物性について説明する。
本実施形態の封止用樹脂組成物のゲルタイムは、50秒以上80秒以下であることが好ましく、55秒以上70秒以下がより好ましい。
封止用樹脂組成物のゲルタイムを上記下限値以上とすることにより、充填性に優れたパッケージが得られる。一方、封止用樹脂組成物のゲルタイムを上記上限値以下とすることにより、成形性が良好となる。
【0084】
本実施形態の封止用樹脂組成物から得られる硬化物は、曲げ強度が高く、従来の硬化物に比べて曲げ弾性率の上り幅が小さいため、機械強度および製品信頼性に優れた封止材を提供することができる。
本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、120秒の条件で硬化させたときの硬化物の、常温(25℃)における曲げ弾性率が、15,000MPa以上、好ましくは16,000MPa以上、より好ましくは17,000MPa以上である。上限値は特に限定されないが30,000MPa以下とすることができる。
【0085】
本実施形態の封止用樹脂組成物を175℃、120秒の条件で硬化させたときの硬化物は、常温(25℃)における曲げ強度が、60MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは100MPa以上である。上限値は特に限定されないが200MPa以下とすることができる。
【0086】
本実施形態において、封止用樹脂組成物の成形収縮率の上限値は、0.14%以下とすることが好ましく、0.13%以下とすることがより好ましく、0.12%以下とすることが特に好ましい。上記成形収縮率の上限値を低く抑えることにより、成形体の反りを抑制することができる。一方、封止用樹脂組成物の成形収縮率の下限値は、たとえば-0.5%以上とすることが好ましく、-0.3%以上とすることがより好ましい。上記成形収縮率の収縮率を上記範囲内とすることにより、成形体の脱型をより容易にすることができる。上記成形収縮率の測定は、たとえば封止用樹脂組成物を用いて、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)により金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で作製した試験片に対して、JIS K 6911に準じて行うことができる。
【0087】
本実施形態の硬化物の周波数5GHzにおける誘電率は、4.0以下、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.6以下とすることができる。これにより、硬化物を低誘電率材料に適用することができる。
【0088】
本実施形態の硬化物は、周波数5GHzで測定したときの誘電正接(tanδ)が、0.007以下であり、好ましくは0.006以下、より好ましくは0.005以下とすることができる。これにより、硬化物の誘電特性をより一層向上させることができる。
【0089】
本実施形態において、封止用樹脂組成物および硬化物の物性は、当該封止用樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、当該封止用樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、制御することが可能である。
【0090】
<半導体装置>
本実施形態における半導体装置は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止されているものである。半導体素子の具体例としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子は、好ましくは、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子である。
【0091】
半導体装置の基材は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0092】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、たとえば、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
以下、図面を参照してさらに具体的に説明する。
【0093】
図1および
図2は、いずれも、半導体装置の構成を示す断面図である。なお、本実施形態において、半導体装置の構成は、
図1および
図2に示すものには限られない。
まず、
図1に示した半導体装置100は、基板30上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止してなる封止材50と、を備えている。
封止材50は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成されている。
【0094】
また、
図1には、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、
図1に示すように、基板30のうちの半導体素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成される。半導体素子20は、基板30上に搭載され、かつワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。ここで、ワイヤ40としては、限定されないが、たとえば、Ag線、Ni線、Cu線、Au線、Al線が挙げられ、好ましくは、ワイヤ40はAg、NiまたはCuあるいはこれらの1種以上を含む合金で構成される。
【0095】
封止材50は、たとえば半導体素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように半導体素子20を封止する。
図1に示す例においては、半導体素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。
本実施形態において、封止材50は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。このため、半導体装置100においては、封止材50とワイヤ40との密着性に優れており、これにより、半導体装置100は信頼性に優れるものである。
封止材50は、たとえば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
【0096】
図2は、本実施形態における半導体装置100の構成を示す断面図であって、
図1とは異なる例を示すものである。
図2に示す半導体装置100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、半導体素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。また、封止材50は、
図1に示す例と同様にして、本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0097】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
<実施例1~12、比較例1~3(封止用樹脂組成物の製造)>
表1、2に記載された各成分を記載された量比で混合し、混合物を得た。混合は、常温でヘンシェルミキサーを用いて行った。
その後、その混合物を、70~100℃でロール混練し、混練物を得た。得られた混練物を冷却し、その後、粉砕し、封止用樹脂組成物を得た。表1、2に記載の各成分は以下の通り。
【0100】
(無機充填材)
・無機充填材1:シリカ(マイクロン社製、製品名:TS-6026、平均径9μm)
・無機充填材2:微粉シリカ(アドマテックス社製、製品名:SC-2500-SQ、平均径0.6μm)
・無機充填材3:微粉シリカ(アドマテックス社製、製品名:SC-5500-SQ、平均径1.6μm)
【0101】
(難燃剤)
・難燃剤1:水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、Dp5μm)
【0102】
(カップリング剤)
・シランカップリング剤1:N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、CF-4083)
・シランカップリング剤2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM803P)
・シランカップリング剤3:3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、AZ-6137)
【0103】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000L、エポキシ当量273g/eq)
・エポキシ樹脂2:ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(DIC社製、エピクロンHP-7200L、エポキシ当量246g/eq)
【0104】
(硬化剤)
・フェノール樹脂:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS、水酸基当量200g/eq)
・活性エステル樹脂1:下記調製方法で調製した活性エステル樹脂
(活性エステル樹脂1の調製方法)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ジクロライド279.1g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン1338gとを仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。次いで、α-ナフトール96.5g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を219.5g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し不揮発分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂1を得た。得られた活性エステル樹脂1の構造を確認したところ、上述の式(1-1)においてR1及びR3が水素原子、Zがナフチル基、lが0の構造を有していた。活性エステル樹脂1の繰り返し単位の平均値kは、反応等量比から算出したところ0.5~1.0の範囲であった。また、活性基当量は247g/eqであった。
【0105】
・活性エステル樹脂2:下記調製方法で調製した活性エステル樹脂
(活性エステル樹脂2の調製方法)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1,3-ベンゼンジカルボン酸ジクロリド203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン1338gとを仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。次いで、α-ナフトール96.5g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を219.5g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し不揮発分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂2を得た。得られた活性エステル樹脂の構造を確認したところ、上述の式(1-3)においてR
1及びR
3が水素原子、Zがナフチル基、lが0の構造を有していた。活性エステル樹脂2の繰り返し単位の平均値kは、反応等量比から算出したところ0.5~1.0の範囲であった。得られた活性エステル樹脂2は具体的に以下の化学式で表される構造を有していた。また、活性基当量は209g/eqであった。
【化13】
【0106】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウム4,4'-スルフォニルジフェノラート
・硬化促進剤2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
・硬化促進剤3:4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラート
【0107】
(イオン捕捉剤)
・イオン捕捉剤1:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(協和化学工業社製、DHT-4H)
【0108】
(ワックス(離型剤))
・ワックス1:酸化ポリエチレンワックス(クラリアント・ジャパン社製、リコワックス PED191)
・ワックス2:カルナバワックス(東亜合成社製、TOWAX-132)
【0109】
(着色剤)
・カーボンブラック:ERS-2001(東海カーボン社製)
【0110】
(低応力剤)
・低応力剤1:カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(宇部興産社製、CTBN1008SP)
・低応力剤2:エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル(東レダウコーニング社製、FZ-3730)
【0111】
<評価>
各例で得られた樹脂組成物または当該組成物を用いて以下の方法で評価用試料を作製し、得られた試料の密着性および信頼性を以下の方法で評価した。
[スパイラルフロー(SF)]
実施例および比較例の封止用樹脂組成物を用いてスパイラルフロー試験を行った。
試験は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で封止用樹脂組成物を注入し、流動長を測定することにより行った。数値が大きいほど、流動性が良好であることを示す。
【0112】
[ゲルタイム(GT)]
175℃に加熱した熱板上で実施例および比較例の封止用樹脂組成物をそれぞれ溶融後、へらで練りながら硬化するまでの時間(単位:秒)を測定した。
【0113】
(ガラス転移温度、線膨張係数(α1およびα2)、)
以下のような手順で測定した。
(1)トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力10.0MPa、硬化時間120秒の条件で封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×3mmの成形品を得た。
(2)得られた成形品を、オーブンを用いて175℃で4時間加熱し、十二分に硬化させた。そして、測定用の試験片(硬化物)を得た。
(3)熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。測定結果から、ガラス転移温度Tg(℃)、40~80℃における線膨張係数(α1)、および、190~230℃における線膨張係数(α2)を算出した。α1とα2の単位はppm/℃であり、ガラス転移温度の単位は℃である。
【0114】
[機械的強度の評価(曲げ強度および曲げ弾性率)]
封止用樹脂組成物を、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製「KTS-30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力10.0MPa、硬化時間120秒の条件で金型に注入成形した。これにより、幅10mm、厚み4mm、長さ80mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間の条件で後硬化させた。これにより、機械的強度の評価用の試験片を作製した。そして、試験片の260℃または常温(25℃)における曲げ強度(MPa)および曲げ弾性率(MPa)を、JIS K 6911に準拠して測定した。
【0115】
(煮沸吸水率)
各実施例および比較例について、得られた封止用樹脂組成物の硬化物の煮沸吸水率を、以下のように測定した。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を成形した。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、この試験片の煮沸処理前の質量と24時間純水中で煮沸処理後の質量を測定した。この測定結果に基づいて煮沸処理前後における質量変化を算出した結果から、試験片の煮沸吸水率を百分率で得た。表1における単位は質量%である。
【0116】
(成形収縮率)
各実施例および比較例について、得られた樹脂組成物について、成形(ASM:as Mold)を行った後の成形収縮率(ASM後)を測定し、当該成形後、本硬化させて誘電体基板を作製することを想定した加熱条件(PMC:Post Mold Cure)で成形収縮率(PMC後)を評価した。
まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で作製した試験片に対して、JIS K 6911に準じて成形収縮率(ASM後)を得た。
さらに、得られた試験片を175℃で4時間加熱処理し、JIS K 6911に準じて成形収縮率(ASM後)を測定した。
【0117】
(空洞共振器法による誘電率および誘電正接の評価)
まず、樹脂組成物を用いて、試験片を得た。
具体的には、実施例および比較例で調製した樹脂組成物を、Si基板に塗布し、120℃で4分間プリベークを行い、塗布膜厚12μmの樹脂膜を形成した。
これを、窒素雰囲気下、オーブンを用いて200℃で90分加熱し、フッ酸処理(2質量%フッ酸水溶液に浸漬)した。フッ酸から基板を取り出した後に、硬化膜をSi基板から剥離して、これを試験片とした。
測定装置は、ネットワークアナライザHP8510C、シンセサイズドスイーパHP83651AおよびテストセットHP8517B(全てアジレント・テクノロジー社製)を用いた。これら装置と、円筒空洞共振器(内径φ42mm、高さ30mm)とを、セットアップした。
上記共振器内に試験片を挿入した状態と、未挿入状態とで、共振周波数、3dB帯域幅、透過電力比などを、周波数5GHzで測定した。そして、これら測定結果をソフトウェアで解析的に計算することで、誘電率(Dk)および誘電正接(Df)の誘電特性を求めた。なお、測定モードはTE011モードとした。
【0118】
【0119】
【0120】
表1、2に記載のように、硬化剤としてフェノール樹脂と活性エステル樹脂とを併用し、さらに所定の硬化促進剤を含む半導体封止用樹脂組成物を用いることにより、成形時の収縮率が低く製品の歩留まりに優れることが想定された、さらに、当該組成物から得られる硬化物は、機械強度および誘電特性に優れることが確認された。すなわち、本発明の半導体封止用樹脂組成物はこれらの特性のバランスに優れることが確認された。
【0121】
この出願は、2021年7月16日に出願された日本出願特願2021-117662号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0122】
20 半導体素子
30 基板
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ワイヤ
50 封止材
60 半田ボール
100 半導体装置