(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】X状クロス脚構造及び折畳みベッド
(51)【国際特許分類】
A47C 17/72 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A47C17/72
(21)【出願番号】P 2021089803
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000111867
【氏名又は名称】パール金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084102
【氏名又は名称】近藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】高波 文雄
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06618879(US,B1)
【文献】米国特許第07661159(US,B1)
【文献】中国実用新案第204306457(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 17/72
A47C 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚杆をX状に交差して、交差部を枢結して脚開閉自在としたクロス脚において、開脚時の上下位置となる脚杆の上下辺間に、一方端を固定軸で枢結し、他方端を脚杆にスライド自在に設けたスライド体に枢結したリンク杆を架設すると共に、所定角度に開脚した際のスライド体位置に、スライド体と脚杆
を当該開脚状態でロックして保持する係止部を設けてなることを特徴とするX状クロス脚構造。
【請求項2】
スライド体を脚杆下辺側に設けてなる請求項1記載のX状クロス脚構造。
【請求項3】
リンク杆をクロス脚の左右一対となるように設けてなる請求項1又は2記載のX状クロス脚構造。
【請求項4】
係止部を、脚杆に設けた突出付勢したボタン部と、スライド体に設けたボタン嵌合孔及びボタン嵌合孔周囲に設けた傾斜面
、並びにボタン嵌合孔に嵌合したボタン部に対する押込み部とで構成してなる請求項1乃至3記載の何れかのX状クロス脚構造。
【請求項5】
脚杆を角管で形成し、
板状のリンク杆を脚杆の開脚方向の側面位置で枢結してなる請求項1乃至4記載の何れかのX状クロス脚構造。
【請求項6】
請求項1乃至
5記載の何れかのX状クロス脚を適宜間隔離して3個縦列し、中間クロス脚の頂部に設けたT状連結部と、前後クロス脚の各頂部に設けたΓ状連結部との間に、側杆を、各連結部と回動可能に連結して架設し、クロス脚開脚状態で緊張する大きさの帆布を側杆間に張設してなることを特徴とする折畳みベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差箇所を枢結して開閉自在として種々の折畳み家具等に採用されている汎用性を備えるX状クロス脚構造及び前記X状クロス脚を使用した折畳みベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
折畳み構造の家具(使用目的が屋内外に関わらず椅子、ベンチ、ベッド等)には、複数の並列させたX状クロス脚の隣接脚の上端間を差渡杆で連結して折畳み構造とした脚構造を採用しているものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1,2,3には、適宜間隔をあけて並列させた3個のクロス脚の上端を側杆(差渡杆)で連結し、対向する側杆間に帆布(座布や寝布)を張設して、折畳み可能なベッド・ベンチを形成する構造が開示されており、特にクロス脚を開脚状態で維持させる手段(使用可能状態を維持する手段)として、特許文献1には、側枠をクロス脚杆の上下端に架設し、上下側枠をターンバックル付き緊張杆で連結する手段が開示されており、特許文献2,3には、対向する側杆の両端間を端杆で連結する構造が採用されている。
【0004】
また特許文献2,3には、長尺の側枠を中間部分で分離し、前記分離箇所をクロス脚の上端のT状連結部で連結し、両端のクロス脚の上端と側杆端部をΓ状連結部で連結し、端杆を分離した後、クロス脚を閉じ、閉じた両端のクロス脚は側杆上方に添わせ、側杆をT状連結部で折り曲げて中間クロス脚に添わせることで全体を折畳む構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭55-55639号公報。
【文献】実開昭55-43466号公報。
【文献】特許2582747号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロス脚の開脚状態を維持する手段としてと、特許文献1記載のターンバックル付き緊張杆を採用する場合は、クロス脚の下方にも側杆を差し渡す必要があり、折畳み時のコンパクト化の実現が困難である。また特許文献2,3に示された端杆を採用する手段においては、側杆間に張設した帆布を緊張状態として保持し、当該保持状態で端杆を側杆端部に装着固定する必要があり、装着操作が非常に面倒である。更に端杆には、帆布に荷重が加わった際(器具の使用時)に、端杆で側杆間の緊張を保持する負担も加わり、折損し易いので、相応の強度を必要とするものである。
【0007】
そこで本発明は、端杆を採用しない新規な開脚保持機構(ロック機構)を備えるX状クロス脚構造を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載に係るX状クロス脚構造は、脚杆をX状に交差して、交差部を枢結して脚開閉自在としたクロス脚において、開脚時の上下位置となる脚杆の上下辺間に、一方端を固定軸で枢結し、他方端を脚杆にスライド自在に設けたスライド体に枢結したリンク杆を架設すると共に、所定角度に開脚した際のスライド体位置に、スライド体と脚杆を当該開脚状態でロックして保持する係止部を設けてなることを特徴とするものである。
【0009】
而してクロス脚の開閉動作に伴い、リンク杆によってスライド体が移動することになり、所定の開脚角度に達する位置でスライド体と脚杆が係止され、クロス脚が当該開脚角度で固定保持される。
【0010】
また請求項2記載に係るX状クロス脚構造は、上記構成のクロス脚構造において、特にスライド体を脚杆下辺側に設けてなるもので、家具などの脚として採用した際において、係止部の操作が容易となる。
【0011】
また請求項3記載に係るX状クロス脚構造は、上記構成のクロス脚構造において、特にリンク杆をクロス脚の左右一対となるように設けてなるもので、リンク杆がクロス脚に加わる荷重に対して左右バランスのとれた補強杆として機能する
【0012】
また請求項4記載に係るX状クロス脚構造は、上記構成のクロス脚構造において、特に係止部を、脚杆に設けた突出付勢したボタン部と、スライド体に設けたボタン嵌合孔及びボタン嵌合孔周囲に設けた傾斜面、並びにボタン嵌合孔に嵌合したボタン部に対する押込み部とで構成してなるものである。
【0013】
従ってクロス脚の開脚操作において、開脚方向にクロス脚を動作させ、スライド体がボタン部に至ると、ボタン部が傾斜面によって下圧され、ボタン嵌合孔の位置で突出して嵌合してクロス脚が固定状態となる。また閉脚操作においては、押込み部を押圧してボタン部を嵌合孔から押し出しながら閉脚動作を行うことで、クロス脚は容易に閉脚できる。
【0014】
また請求項5記載に係るX状クロス脚構造は、上記構成のクロス脚構造において、特に脚杆を角管で形成し、板状のリンク杆を脚杆の開脚方向の側面位置で枢結してなるもので、スライド体が捩じることなくスムーズにスライド移動して、ボタン部と嵌合孔の位置がずれることが無い。
【0015】
また本発明の請求項6記載に係る折畳みベッドは、前記した何れかの構成のX状クロス脚を適宜間隔離して3個縦列し、中間クロス脚の両頂部に設けたT状連結部と、前後クロス脚の各頂部に設けたΓ状連結部との間に、側杆を、各連結部と回動可能に連結して架設し、クロス脚開脚状態で緊張する大きさの帆布を側杆間に張設してなることを特徴とするものである。
【0016】
而して折畳み時は、開脚状態の各クロス脚を閉脚し、前後クロス脚を側杆上に折畳み、更にクロス脚を添わせた前後側杆を閉脚した中間クロス脚に添わせると全体が折畳まれることになり、また使用状態の移行に際しては、前記の折畳み状態を逆に動作させ、側杆の間隔を広げるようにクロス脚を開脚し、所定の開脚角度(帆布が張られる状態)に至ると、スライド体とボタン部を係止し、開脚状態(帆布緊張状態)でクロス脚が固定されることになる。従って、端杆を組み込むことなく、帆布を緊張させた使用状態に容易に移行させることができるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成は上記のとおりで、クロス脚の開脚操作に伴うリンク杆の所定位置での係止によって容易に開脚状態を保持でき、ベッドなどに採用することで、使用状態への移行操作が非常に容易になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】同折畳み状態から使用状態への移行状態を示す説明図。
【
図3】同リンク杆とスライド体の動作説明図で、(イ)はロック状態への動作(ロ)はロック状態を示し(ハ)はロック状態のスライド体の横断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態は本発明のX状クロス脚を使用した折畳みベッドを示したもので、折畳みベッドは、角管で形成された3個のクロス脚1(前端クロス脚1a、中間クロス脚1b、後端クロス脚1c)と、側杆2(前側杆2a、後側杆2b)と、帆布3で構成される。
【0020】
クロス脚1は、脚杆11をX状に交差して、交差部を枢結して脚開閉自在としたもので、折畳み形状を考慮して、一方の脚杆11aは、中間部分(枢結箇所)を他方脚杆11bが貫通可能とする連結板12で接続して形成しているものである。
【0021】
前記のクロス脚1には、開脚保持機構(ロック機構)を備えているもので、開脚保持機構は、リンク杆13とスライド体14と脚杆11の下方辺外側面に突出させたボタン部15(係止部)で構成され、リンク杆13は、開脚したクロス脚1の上下辺に左右対称に設けたもので、上端を脚杆11の上辺適宜位置(上辺の略中間位置)に枢結し、下端をスライド体14に枢結したものである。
【0022】
スライド体14は、各筒状で形成して脚杆11の下方辺にスライド自在に外挿してなるもので、ボタン部15に対応するボタン嵌合孔(係止部)141を設けると共に、ボタン嵌合孔141の周囲に、スライド体14の移動でボタン部15を押圧する傾斜面142に設けたものである。更に前記ボタン嵌合孔141の上方には、ボタン部15で押し上げられる操作ボタン143を付設してなる。
【0023】
ボタン部15は、クロス脚1の所定の開脚角度に対応するリンク杆13の下端位置に脚杆11の下方辺外側面から出没自在に且つバネ材151を内装して突出付勢するように設けたものである。
【0024】
折畳みベッドは、前記のクロス脚1を3個(前端クロス脚1a、中間クロス脚1b、後端クロス脚1c)縦列させて、各クロス脚1の脚杆11の前後上端部間を側杆2(前側杆2a、後側杆2b)で連結するもので、各連結箇所は折畳み機能を備えるように所定の枢結構造で連結したものである。
【0025】
即ち中間クロス脚1bの頂部に設けたT状連結部21と、前後クロス脚1a,1cの各頂部に設けたΓ状連結部22との間に、各側杆2(前側杆2a、後側杆2b)を、各連結部21,22と回動可能に連結して架設するものである。
【0026】
帆布3は寝台面若しくは座面を形成するもので、対向する側杆2間に張設するものであるが、予めクロス脚1の所定角度で開脚した際(開脚保持機構のロック時)の側杆2の位置で緊張する大きさとする。
【0027】
而して上記折畳みベッドの使用時(クロス脚の開脚保持機構の動作)及び収納時(折畳み)の各部の動作について次に説明する。
【0028】
ベッド使用に際しては、
図2に示すように閉脚状態のクロス脚1を開脚すると帆布3が伸長されると共に、スライド体14が脚杆1の下方へ移動し、ボタン部15位置に達すると、ボタン部15は傾斜面142で押し下げされ、ボタン嵌合孔141の位置において付勢力で突出してボタン嵌合孔141に嵌合する。前記の嵌合によってクロス脚1は当該開脚角度で固定状態(ロック状態)となる。同時に帆布3も緊張状態となり、ベッドが使用可能状態となる。
【0029】
従って本折畳みベッドは、クロス脚1を開脚操作することで、帆布3を緊張させると同時にクロス脚1が開脚状態でロックされることになり、ベッドへの移行作業を非常に容易にしたものである。
【0030】
また折畳みベッドの折畳みは、
図3(ロ)に示すロック状態から、操作ボタン143を下圧してボタン部15を押し下げながらスライド体14を上方に移動させると、ロック状態が解除され、
図4に示すようにクロス脚1(1a,1b,1c)を閉脚して側杆2を揃えて密着させる。
【0031】
次に前後クロス脚1a,1cをΓ状連結部22の枢結軸を中心に回動して夫々側管2a,2bに添わせる。更に前記の前クロス脚1a及び前側杆2aと、後クロス脚1c及び後側杆2bとを、T状連結部21の枢結軸を中心に回動して各々中間クロス脚1bに添わせると、全体が棒状に束ねられることになる。
【0032】
尚本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、開脚保持機構(ロック機構)は、スライド体が脚杆の所定位置でロックされるものであれば良いもので、その他適宜な構造を採用することができる。また折畳みベッドも前後方向で折畳み可能な構造を示したが、単に側杆を添わせる構造でも良い。
【符号の説明】
【0033】
1(1a,1b,1c) クロス脚
11 脚杆
12 連結板
13 リンク杆
14 スライド体
141 ボタン嵌合孔(係止部)
142 傾斜面
143 操作ボタン
15 ボタン部
151 バネ材
2(2a,2b) 側杆
21 T状連結部
22 Γ状連結部
3 帆布