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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】播種機
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/08 20060101AFI20240326BHJP
   A01G 9/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A01C7/08 320F
A01G9/08 606A
A01G9/08 606B
A01G9/08 605R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020030883
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021132568
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391025914
【氏名又は名称】八鹿鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 辰大
(72)【発明者】
【氏名】田路 光洋
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-284345(JP,A)
【文献】特開2007-53985(JP,A)
【文献】特開平7-16025(JP,A)
【文献】特開2002-45048(JP,A)
【文献】特開平4-237435(JP,A)
【文献】特開平8-289670(JP,A)
【文献】米国特許第4363341(US,A)
【文献】実開平1-109955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00 - 14/00
A01G 9/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗トレイを所定の搬送高さに保持しながら搬送するトレイ搬送装置と、前記トレイ搬送装置上に配置され前記苗トレイに養土を充填する養土充填装置と、前記養土充填装置の下方に配置され、養土が充填される前記苗トレイに振動を付与する振動付与装置と
前記養土充填装置と振動付与装置との両方を駆動する駆動モータと、
前記苗トレイの搬送方向における前記養土充填装置の上流側端部に設けられ、搬送される前記苗トレイを検出する検出レバーとを備え、
前記トレイ搬送装置は、搬送される前記苗トレイを前記搬送高さに支持するガイドレールを有し、
前記振動付与装置は、前記トレイ搬送装置に支持され回転駆動される回転体と、前記回転体に取り付けられ、前記回転体の回転に伴って、前記ガイドレールよりも上方に突出する突出位置と、前記突出位置よりも下方の退避位置との間を繰り返し移動する振動付与部材とを有し、
少なくとも前記トレイ搬送装置により搬送される前記苗トレイが前記振動付与装置の上方を通過するときに、前記回転体が回転駆動され、
前記回転体は円板状部材により形成され、
前記振動付与部材は、前記回転体の周方向に沿って複数設けられ
搬送される前記苗トレイが前記検出レバーの位置に達すると、前記駆動モータによって前記養土充填装置と振動付与装置とが共に駆動される、
ことを特徴とする播種機。
【請求項2】
前記振動付与部材は、前記回転体に回転可能に取り付けられるローラである、
ことを特徴とする請求項1に記載の播種機。
【請求項3】
前記回転体の回転方向は、前記ガイドレールよりも上方に突出する前記振動付与部材が、前記苗トレイの搬送方向とは反対側へ移動する方向である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の播種機。
【請求項4】
前記回転体の回転方向は、前記ガイドレールよりも上方に突出する前記振動付与部材が、前記苗トレイの搬送方向へ移動する方向である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の播種機。
【請求項5】
前記振動付与装置は、前記苗トレイに対する養土の充填位置よりも、前記苗トレイの搬送方向下流側に配置される、
ことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の播種機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、播種機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗トレイを搬送するトレイ搬送装置と、トレイ搬送装置上に配置される養土充填装置とを備え、トレイ搬送装置により搬送される苗トレイに対して養土充填装置により養土を充填し、苗トレイに充填された養土に播種を行う播種機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような播種機においては、養土充填装置のホッパに貯留される養土を苗トレイ上に自重落下させた後に鎮圧ローラにより押し込んで均平している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-149946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、苗トレイ上に自重落下された養土を鎮圧ローラによって均平するだけでは、苗トレイ内における養土の充填量にばらつきが生じることがある。
【0006】
苗トレイ内における養土の充填量にばらつきが生じた場合、充填された養土が少ない部分と多い部分との保水量が異なるため、苗トレイ内において播種された種子に育成むらが発生してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明においては、苗トレイ内における養土の充填量のばらつきを減少することができる播種機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する播種機は、以下の特徴を有する。
即ち、播種機は、苗トレイを所定の搬送高さに保持しながら搬送するトレイ搬送装置と、前記トレイ搬送装置上に配置され前記苗トレイに養土を充填する養土充填装置と、前記養土充填装置の下方に配置され、養土が充填される前記苗トレイに振動を付与する振動付与装置と、前記養土充填装置と振動付与装置との両方を駆動する駆動モータと、前記苗トレイの搬送方向における前記養土充填装置の上流側端部に設けられ、搬送される前記苗トレイを検出する検出レバーとを備え、前記トレイ搬送装置は、搬送される前記苗トレイを前記搬送高さに支持するガイドレールを有し、前記振動付与装置は、前記トレイ搬送装置に支持され回転駆動される回転体と、前記回転体に取り付けられ、前記回転体の回転に伴って、前記ガイドレールよりも上方に突出する突出位置と、前記突出位置よりも下方の退避位置との間を繰り返し移動する振動付与部材とを有し、少なくとも前記トレイ搬送装置により搬送される前記苗トレイが前記振動付与装置の上方を通過するときに、前記回転体が回転駆動され、前記回転体は円板状部材により形成され、前記振動付与部材は、前記回転体の周方向に沿って複数設けられ、搬送される前記苗トレイが前記検出レバーの位置に達すると、前記駆動モータによって前記養土充填装置と振動付与装置とが共に駆動される。
【0009】
これにより、苗トレイ内における養土の充填量のばらつきを減少することができ、苗トレイに播種された種子の育成むらを抑制することが可能である。また、苗トレイに加わる衝撃を緩和して、苗トレイの耐久性向上を図ることができる。
また、苗トレイに付与する振動の振幅を小さくして、効率的に振動を付与することができる。
【0012】
また、前記振動付与部材は、前記回転体に回転可能に取り付けられるローラである。
【0013】
これにより、苗トレイの耐久性を向上することができる。
【0014】
また、前記回転体の回転方向は、前記ガイドレールよりも上方に突出する前記振動付与部材が、前記苗トレイの搬送方向とは反対側へ移動する方向である。
【0015】
これにより、苗トレイに効率的に振動を付与することができる。
【0016】
また、前記回転体の回転方向は、前記ガイドレールよりも上方に突出する前記振動付与部材が、前記苗トレイの搬送方向へ移動する方向である。
【0017】
これにより、苗トレイに対する養土の充填速度を高めることができる。
【0018】
また、前記振動付与装置は、前記苗トレイに対する養土の充填位置よりも、前記苗トレイの搬送方向下流側に配置される。
【0019】
これにより、苗トレイ内における養土の充填量のばらつきをより減少することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、苗トレイ内における養土の充填量のばらつきを減少することができる。また、苗トレイに加わる衝撃を緩和して、苗トレイの耐久性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】播種機の全体構成を示す側面図である。
図2】トレイ搬送装置の前搬送装置および振動付与装置を示す斜視図である。
図3】トレイ搬送装置の前搬送装置および振動付与装置を示す平面図である。
図4】養土充填装置および振動付与装置の駆動機構を示す側面図である。
図5】養土充填装置および振動付与装置を示す側面断面図である。
図6】振動付与装置を示す正面断面図である。
図7】振動付与装置を示す側面図であって、(a)はローラが突出位置にある状態の振動付与装置を示し、(b)はローラが退避位置にある状態の振動付与装置を示す図である。
図8】退避位置にあるローラがガイドレールの上端よりも上方に突出しない高さに位置する振動付与装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明においては、播種機1における苗トレイTの搬送方向の上流側を前側と規定し、下流側を後側として規定する。
【0023】
[播種機の全体構成]
図1に示す播種機1は、本発明に係る播種機の一実施形態である。播種機1は、トレイ搬送装置2と、トレイ供給部3と、養土充填装置4と、潅水装置5と、養土鎮圧装置6と、播種装置7と、覆土装置8と、潅水装置9とを備えている。トレイ搬送装置2上には、トレイ供給部3、養土充填装置4、潅水装置5、養土鎮圧装置6、播種装置7、覆土装置8、および潅水装置9が、搬送方向の上流側(図1における左側)から下流側(図1における右側)へ向けて順に配置されている。
【0024】
また、播種機1は、振動付与装置10を備えている。振動付与装置10は、養土充填装置4の下方に配置されている。
【0025】
トレイ供給部3は、トレイ搬送装置2の搬送方向における上流側端部に配置されている。トレイ供給部3には、複数の苗トレイTが積層されている。トレイ供給部3において最も下方に配置されている苗トレイTがトレイ搬送装置2により養土充填装置4に搬送される。
【0026】
養土充填装置4は、トレイ搬送装置2上に配置されている。養土充填装置4は、トレイ搬送装置2上に配置される機枠41と、機枠41上に配置されるホッパ42と、機枠41内に収容される供給コンベア43および鎮圧ローラ44とを有している。
【0027】
そして、苗トレイTが養土充填装置4の下方に搬送されると、ホッパ41に貯留される養土が供給コンベア43により搬送された後に、供給コンベア43から自重で落下して下方の苗トレイTに充填される。養土充填装置4によって養土が充填される苗トレイTには、振動付与装置10により振動が付与される。また、苗トレイTに充填された養土は、鎮圧ローラ44により均平される。
【0028】
その後、苗トレイTが潅水装置5に搬送されて、潅水装置5にて苗トレイT内の養土に潅水が施される。苗トレイTは、潅水装置5を経た後に養土鎮圧装置6に搬送される。養土鎮圧装置6は、外周面から放射状に突出する突起61aを有した鎮圧ローラ61を備えており、苗トレイT内の養土は、養土鎮圧装置6において鎮圧ローラ61の突起61aにより播種用穴が形成される
【0029】
次に、苗トレイTは播種装置7に搬送される。播種装置7においては、播種ガイド71内の種子が播種ロール72によって繰り出されて、下方の苗トレイT内の養土に播種が行われる。
【0030】
播種が行われた後、苗トレイTは覆土装置8に搬送され、覆土装置8が備えるホッパ81内の覆土が苗トレイT内に送出される。さらに、苗トレイTは潅水装置9に搬送され、潅水装置9において苗トレイT内の覆土に潅水が施されることにより、播種機1における播種作業が完了する。
【0031】
[トレイ搬送装置]
トレイ搬送装置2は、前搬送装置2Fと、中搬送装置2Mと、後搬送装置2Rとを有する。前搬送装置2Fには、トレイ供給部3と、養土充填装置4と、潅水装置5と、振動付与装置10とが配置されている。中搬送装置2Mには、養土鎮圧装置6と、播種装置7とが配置されている。後搬送装置2Rには、覆土装置8と潅水装置9とが配置されている。
【0032】
トレイ搬送装置2は、前搬送装置2F、中搬送装置2M、および後搬送装置2Rを駆動する搬送駆動モータMを有している。搬送駆動モータMは、後搬送装置2Rにおける潅水装置9の下流側に配置されている。
【0033】
前搬送装置2Fと中搬送装置2Mと後搬送装置2Rとは略同じ構成であるため、以下において前搬送装置2Fについて説明し、中搬送装置2Mおよび後搬送装置2Rの説明については省略する。
【0034】
図2図3に示すように、前搬送装置2Fは、脚部21と、搬送フレーム22と、連結フレーム23と、ガイドレール24と、チェーン搬送機構25とを備えている。脚部21は複数設けられており、上下方向に延出する柱部材にて構成されている。
【0035】
搬送フレーム22は左右に一対設けられており、前後方向に延出している。搬送フレーム22は、脚部21の上端部に支持されている。連結フレーム23は、左右方向に延出し、左右の搬送フレーム22を連結している。
【0036】
ガイドレール24は左右の搬送フレーム22の間において前後方向に延出しており、左右に一対設けられている。ガイドレール24は、連結フレーム23に支持されている。ガイドレール24は、トレイ搬送装置2により搬送される苗トレイTを下方から支持する支持部材であり、苗トレイTはガイドレール24に支持されることにより、所定の搬送高さに保持される。また、苗トレイTは、ガイドレール24によって所定の搬送高さに保持されながら、トレイ搬送装置2によって搬送される。
【0037】
チェーン搬送機構25は、左右のガイドレール24の間において前後方向に延出している。チェーン搬送機構25は、前搬送装置2Fの前端部に配置される第1スプロケット25aと、第1スプロケット25aよりも後方に配置される第2スプロケット25bと、第1スプロケット25aと第2スプロケット25bとの間に巻回される第1搬送チェーン25cとを有している。
【0038】
また、チェーン搬送機構25は、第2スプロケット25bと同軸に配置される第3スプロケット25eと、第3スプロケット25eの後方に配置される第4スプロケット25fと、第3スプロケット25eと第4スプロケット25fとの間に巻回される第2搬送チェーン25gとを有している。
【0039】
第1スプロケット25aは、前搬送装置2Fの前端部において搬送フレーム22に回転可能に支持されている。第2スプロケット25bおよび第3スプロケット25eは、第1スプロケット25aの後方において搬送フレーム22に回転可能に支持されている。第2スプロケット25bと第3スプロケット25eとは一体的に回転可能である。第4スプロケット25fは、第3スプロケット25eの後方において搬送フレーム22に回転可能に支持されている。
【0040】
第4スプロケット25fは、左側の搬送フレーム22から左右内側に延出する支持軸25hに支持されており、支持軸25hには中搬送装置2Mの前端部に配置される第1スプロケット25aが、前搬送装置2Fの第4スプロケット25fと一体的に回転可能に支持されている。これにより、中搬送装置2Mに伝達された駆動力が、中搬送装置2Mの第1スプロケット25aおよび前搬送装置2Fの第4スプロケット25fを通じて、前搬送装置2Fに伝達可能となっている。
【0041】
トレイ搬送装置2においては、搬送駆動モータMからの駆動力が後搬送装置2Rの第2搬送チェーン25gに伝達され、さらに後搬送装置2Rの第2搬送チェーン25gから後搬送装置2Rの第1搬送チェーン25c、中搬送装置2Mの第2搬送チェーン25g、中搬送装置2Mの第1搬送チェーン25c、前搬送装置2Fの第2搬送チェーン25g、および前搬送装置2Fの第1搬送チェーン25cへと順に伝達されて、前搬送装置2Fと中搬送装置2Mと後搬送装置2Rとが同時に駆動されるように構成されている。
【0042】
そして、搬送駆動モータMにより駆動される前搬送装置2F、中搬送装置2M、および後搬送装置2Rのチェーン搬送機構25によって、苗トレイTが上流側から下流側へ向かって搬送される。
【0043】
図2に示すように、前搬送装置2Fのチェーン搬送機構25は、第1搬送チェーン25cの外周面から突出する係止突起25dを有している。係止突起25dは、第1搬送チェーン25cが第1スプロケット25aおよび第2スプロケット25bの上側に位置するときに、ガイドレール24よりも上方に突出している(図6参照)。第1搬送チェーン25cは、ガイドレール24よりも上方に突出する係止突起25dが前方から後方へ向けて移動する方向に駆動され、チェーン搬送機構25の駆動時には、係止突起25dが苗トレイTの前端部に係止することで、苗トレイTが後方へ向けて搬送される。
【0044】
[養土充填装置]
図4に示すように、養土充填装置4の供給コンベア43は、駆動ローラ43aと駆動ローラ43aの下流側に配置される従動ローラ43bとの間に巻回されている。養土充填装置4は、機枠41内に収容されるコンベア駆動モータ45を有しており、コンベア駆動モータ45と駆動ローラ43aとの間にコンベア駆動ベルト46が巻回されている。これにより、コンベア駆動モータ45からの駆動力がコンベア駆動ベルト46を介して駆動ローラ43aに伝達され、供給コンベア43が駆動される。
【0045】
コンベア駆動モータ45は、搬送駆動モータMとは個別に駆動することが可能であり、搬送駆動モータMの駆動中にコンベア駆動モータ45の駆動および停止を切り替えることが可能となっている。従って、トレイ搬送装置2により苗トレイTを搬送しながら供給コンベア43の駆動と停止とを切り替えることが可能である。
【0046】
図5に示すように、供給コンベア43は、ホッパ41に貯留される養土が前方へ向けて搬送される方向に駆動される。つまり、供給コンベア43は、ホッパ42内の養土を苗トレイTの搬送方向における下流側から上流側へ向けて搬送する方向に駆動される。供給コンベア43により搬送された養土は、供給コンベア43の前端部から下方へ向けて自重で落下する。供給コンベア43により搬送された養土が下方へ落下する前後方向の位置を、充填位置Fpと規定する。
【0047】
少なくとも搬送される苗トレイTが充填位置Fpに位置しているときに、供給コンベア43を駆動することで、苗トレイTに養土を充填することが可能となる。
【0048】
トレイ搬送装置2における養土充填装置4の前端部に相当する位置には、トレイ検出レバー48が設けられている。トレイ検出レバー48は、搬送フレーム22に回動可能に支持されており、先端部がガイドレール24の上方に突出している。ガイドレール24に支持されながらチェーン搬送機構25により搬送される苗トレイTがトレイ検出レバー48の位置に達すると、トレイ検出レバー48が苗トレイTにより下方に傾倒される。
【0049】
播種機1においては、トレイ検出レバー48が下方に傾倒されるとコンベア駆動モータ45の駆動が開始されるように構成されている。これにより、搬送される苗トレイTが養土の充填位置Fpに到達した時点で供給コンベア43の駆動が開始され、苗トレイTに養土を充填することが可能となっている。
【0050】
[振動付与装置]
図2図5図7に示すように、振動付与装置10は、支持軸11と、回転体12と、ローラ13と、を備えている。支持軸11は、左右方向に延出しており、左右の搬送フレーム22の間に架け渡されている。支持軸11は、左右の搬送フレーム22に回転可能に支持されている。
【0051】
回転体12は円板状部材により形成されており、支持軸11に支持されている。つまり、回転体12は、支持軸11を介してトレイ搬送装置2の搬送フレーム22に支持されている。
【0052】
回転体12は左右に一対設けられており、支持軸11と一体的に回転可能に構成されている。左側の回転体12は、左右方向において左側のガイドレール24とチェーン搬送機構25との間に配置されている。右側の回転体12は、左右方向において、チェーン搬送機構25と右側のガイドレール24との間に配置されている。
【0053】
ローラ13は、回転体12の左右方向における外側面に回転可能に取り付けられている。ローラ13は、振動付与部材の一例である。ローラ13は複数設けられており、回転体12の周方向に沿って互いに間隔を開けて配置されている。ローラ13は、回転体12の外周縁部に取り付けられており、ローラ13の外周縁は、回転体12の外周縁よりも径方向外側へ突出している。ローラ13は、回転体12が支持軸11を中心として自転することにより、支持軸11を中心として公転する。
【0054】
図4に示すように、支持軸11と駆動ローラ43aとの間には駆動ベルト47が巻回されており、駆動ローラ43aからの駆動力が支持軸11に伝達可能に構成されている。つまり、支持軸11は、コンベア駆動モータ45によりコンベア駆動ベルト46および駆動ベルト47を介して駆動可能であり、振動付与装置10はトレイ搬送装置2とは個別に駆動することが可能となっている。
【0055】
従って、搬送される苗トレイTがトレイ検出レバー48の位置に達してトレイ検出レバー48が下方に傾倒されると、コンベア駆動モータ45が駆動されて、供給コンベア43とともに支持軸11が回転駆動され、さらに回転体12が回転駆動されることとなる。これにより、搬送される苗トレイTが振動付与装置10の上方を通過するときに、回転体12を回転駆動することが可能となっている。
【0056】
なお、振動付与装置10の回転体12は、苗トレイTが振動付与装置10の上方を通過するときのみならず、苗トレイTが振動付与装置10に到達する前から駆動されていてもよく、苗トレイTが振動付与装置10を通過した後にも駆動されていてもよい。つまり、振動付与装置10は、少なくともトレイ搬送装置2により搬送される苗トレイTが振動付与装置10の上方を通過するときに、回転体12が回転駆動されるように構成されていればよい。
【0057】
図7に示すように、回転体12の外周縁は、ガイドレール24の上端よりも下方に位置している。各ローラ13は、回転体12の回転に伴って上下方向の位置が変化し、ローラ13の外周縁のガイドレール24の上端からの突出量が、回転体12の回転に伴って変化するように構成されている。
【0058】
図7(a)には、ローラ13の外周縁のガイドレール24の上端からの突出量が最も大きい状態にある振動付与装置10を示している。この場合、ローラ13の外周縁は、ガイドレール24の上端よりも寸法h1だけ上方に突出している。このように、外周縁のガイドレール24の上端からの突出量が最も大きな寸法h1となる、ローラ13の上下方向の位置を突出位置と規定する。
【0059】
また、図7(b)には、ローラ13の外周縁のガイドレール24の上端からの突出量が最も小さい状態にある振動付与装置10を示している。この場合、ローラ13の外周縁は、寸法h1よりも小さな寸法h2だけガイドレール24の上端よりも上方に突出している。つまり、図7(b)に示すローラ13の外周縁は、突出位置にあるローラ13の外周縁よりも下方に位置している。
【0060】
このように、突出位置にあるローラ13よりも下方に位置し、外周縁のガイドレール24の上端からの突出量が最も小さな寸法h2となる、ローラ13の上下方向の位置を退避位置と規定する。
【0061】
本実施形態の振動付与装置10においては、例えば、回転体12の回転に伴って、複数のローラ13(本実施形態においては6個のローラ13)のうち、1個のローラ13または2個のローラ13が順次ガイドレール24の上端よりも上方に突出するように構成されている。そして、1個のローラ13がガイドレール24の上端よりも上方に突出しているときにローラ13は突出位置となる。また、2個のローラ13がガイドレール24の上端よりも上方に突出して同じ高さ位置にあるときに、ローラ13は退避位置となる。これにより、ローラ13は、回転体12の回転に伴って、上下方向において突出位置と退避位置との間を繰り返し移動することとなる。
【0062】
苗トレイTが振動付与装置10の上方を通過しているときにローラ13が突出位置に移動すると、苗トレイTはローラ13によりガイドレール24の上端から寸法h1だけ持ち上げられた状態となる。また、苗トレイTが振動付与装置10の上方を通過しているときにローラ13が退避位置に移動すると、苗トレイTはローラ13によりガイドレール24の上端から寸法h2だけ持ち上げられた状態となる。
【0063】
従って、ローラ13が、回転体12の回転に伴って突出位置と退避位置との間を繰り返し移動すると、振動付与装置10の上方を搬送される苗トレイTは、ガイドレール24の上端から寸法h1だけ持ち上げられた状態と、ガイドレール24の上端から寸法h2だけ持ち上げられた状態とが繰り返し切り替わり、上下方向に繰り返し移動することとなる。
【0064】
つまり、振動付与装置10の上方を通過する苗トレイTには、振動付与装置10によって上下方向の振動が付与される。また、振動付与装置10は養土充填装置4の下方に配置されているため、苗トレイTは、養土充填装置4から養土が充填されているときに振動が付与されることとなる。
【0065】
このように、養土が充填される苗トレイTに振動が付与されることにより、苗トレイTに充填された養土が均されて、苗トレイT内における養土の充填量のばらつきを減少することが可能となる。これにより、苗トレイT内における養土の保水量を均一にすることができ、苗トレイTに播種された種子の育成むらを抑制することが可能となる。
【0066】
特に、養土を均一に充填することが困難である多穴(例えば288穴)の苗トレイTにおいても、各穴に十分な量の養土を隙間なく充填することができ、養土の充填量のばらつきを抑制することが可能となっている。
【0067】
この場合、苗トレイTは、回転体12の回転に伴って突出位置と退避位置との間を移動するローラ13により振動が付与されるため、苗トレイTに加わる衝撃を緩和することができ、苗トレイTの損傷を抑制して耐久性向上を図ることが可能である。
【0068】
ここで、例えば、上下移動するアーム部材の先端部によって苗トレイTの底部を間欠的に殴打することで、苗トレイTをガイドレール24に支持された位置と、ガイドレール24に支持された位置よりも上方の位置との間で移動させるように構成した場合は、苗トレイTに加わる衝撃が大きくなり、苗トレイTの耐久性が低下するおそれがある。
【0069】
一方、本実施形態のように、回転体12の回転に伴って突出位置と退避位置との間を移動するローラ13により苗トレイTを上下動させた場合は、ローラ13が苗トレイTに当接する際の衝撃および苗トレイTの上下方向への移動動作が緩やかなものとなるため、苗トレイTの損傷が抑制され、苗トレイTの耐久性を向上することが可能となる。
【0070】
また、振動付与装置10においては、回転体12には、ローラ13が回転体12の周方向に沿って複数設けられている。従って、回転体12の回転に伴って、ローラ13が突出位置にある状態とローラ13が退避位置にある状態とが短い間隔で切り替わることとなり、苗トレイTに付与する振動の振幅を小さくして、効率的に振動を付与することが可能となっている。
【0071】
なお、振動付与装置10においては、回転体12に取り付ける複数のローラ13の取り付けピッチ、およびローラ13の外径寸法を変更することで、苗トレイTに付与する振動の振幅を適宜調整することが可能である。また、突出位置におけるガイドレール24の上端からの突出寸法h1と、退避位置におけるガイドレール24の上端からの突出寸法h2との差を変更することで、苗トレイTに付与する振動の大きさを適宜設定することが可能である。
【0072】
また、本実施形態においては、ローラ13が退避位置にある状態においては、2個のローラ13が寸法h2だけガイドレール24の上端よりも上方に突出した状態となっている。しかし、図8に示すように、振動付与装置10は、ローラ13が退避位置にある状態において、全てのローラ13がガイドレール24の上端よりも上方に突出しない高さに位置するように構成することもできる。
【0073】
この場合、退避位置にあるローラ13のガイドレール24の上端からの突出寸法h2は0となる。つまり、ローラ13が退避位置にあるときには、苗トレイTがガイドレール24の上端から持ち上げられる寸法が0となり、苗トレイTの底面はガイドレール24に接触することとなる。
【0074】
このように、振動付与装置10においては、ローラ13が突出位置にある状態と退避位置にある状態との間で、ローラ13の外周縁の高さ位置に高低差を付けることができれば、退避位置にあるローラ13がガイドレール24の上端から上方へ突出していても、突出していなくてもよい。
【0075】
また、振動付与装置10においては、苗トレイTに振動を付与する振動付与部材が、回転体12に回転可能に取り付けられるローラ13にて構成されている。従って、搬送される苗トレイTにローラ13が当接したときには、ローラ13が回転しながら苗トレイTとローラ13とが相対的に移動するため、ローラ13と苗トレイTとが擦れて摩耗することが抑制され、苗トレイTの耐久性を向上することが可能となっている。
【0076】
また、振動付与装置10においては、ガイドレール24の上端よりも上方に突出するローラ13が、回転体12の回転に伴って後方から前方へ向かって移動するように構成されている。つまり、回転体12の回転方向は、ガイドレール24の上端よりも上方に突出するローラ13が、苗トレイTの搬送方向とは反対側となる後方から前方へ向かって移動する方向となっている。
【0077】
従って、振動付与装置10上を搬送される苗トレイTにローラ13が当接すると、苗トレイTには、後方から前方へ向かって移動するローラ13により、苗トレイTを搬送方向とは反対側へ戻そうとする力が作用することとなる。これにより、苗トレイTが振動付与装置10上に長時間留まることができ、苗トレイTに効率的に振動を付与することが可能となる。
【0078】
但し、振動付与装置10においては、回転体12の回転方向を、ガイドレール24の上端よりも上方に突出するローラ13が、苗トレイTの搬送方向と同じ方向となる前方から後方へ向かって移動する方向とすることも可能である。このように、ガイドレール24の上端よりも上方に突出するローラ13が苗トレイTの搬送方向へ移動するように構成した場合、トレイ搬送装置2による苗トレイTの搬送が振動付与装置10によって阻害されることがなく、苗トレイTに対する養土の充填速度を高めることが可能となる。
【0079】
また、図5に示すように、振動付与装置10は、苗トレイTに対する養土の充填位置Fpよりも苗トレイTの搬送方向下流側に配置されている。つまり、振動付与装置10は、苗トレイTに対して振動を付与する振動付与位置Vpが、充填位置Fpよりも距離Lだけ後方となる位置に配置されている。
【0080】
これにより、苗トレイTにおける既に養土が充填された部分に振動を付与することができ、苗トレイT内の養土に効率よく振動を付与して、苗トレイT内における養土の充填量のばらつきをより減少することが可能となっている。
【符号の説明】
【0081】
1 播種機
2 トレイ搬送装置
4 養土充填装置
10 振動付与装置
11 支持軸
12 回転体
13 ローラ
24 ガイドレール
Fp 充填位置
Vp 振動付与位置
T 苗トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8