(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】コーヒー残渣の処理方法、汚泥の処理方法及び廃液の処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20240326BHJP
B09B 3/10 20220101ALI20240326BHJP
C02F 11/12 20190101ALI20240326BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240326BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20240326BHJP
【FI】
B09B5/00 E ZAB
B09B3/10
C02F11/12
C02F1/00 C
C02F1/00 Z
B09B101:70
(21)【出願番号】P 2020067283
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】510227436
【氏名又は名称】株式会社タクトテクノロジ
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(73)【特許権者】
【識別番号】520119105
【氏名又は名称】株式会社SHOU CREATE
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100102185
【氏名又は名称】多田 繁範
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(73)【特許権者】
【識別番号】521561259
【氏名又は名称】難波 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】難波 脩
(72)【発明者】
【氏名】大越 安吾
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-022944(JP,A)
【文献】特開2018-199095(JP,A)
【文献】特開平03-242299(JP,A)
【文献】特開2019-082267(JP,A)
【文献】特開2011-147903(JP,A)
【文献】特開平06-343997(JP,A)
【文献】特開2007-326911(JP,A)
【文献】特開2002-84910(JP,A)
【文献】特開2010-75772(JP,A)
【文献】特開平7-315972(JP,A)
【文献】特開2001-170932(JP,A)
【文献】特開平11-165155(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0031619(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0006913(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00-5/00
C02F11/00-11/20
C02F1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー残渣を厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片に付着して、前記コーヒー残渣の水分を前記木材薄片に移行させ、前記コーヒー残渣の含水率を低減する含水率低減工程と、
前記木材薄片と前記コーヒー残渣とを分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記木材薄片を乾燥させる乾燥工程とを備える
コーヒー残渣の処理方法。
【請求項2】
前記含水率低減工程は、
対向するように保持したローラにより前記木材薄片に付着した前記コーヒー残渣を前記木材薄片に押圧して、前記コーヒー残渣の水分の前記木材薄片への移行を促進する
請求項1に記載のコーヒー残渣の処理方法。
【請求項3】
コーヒー残渣を厚み0.05mm以上、0.5mm以下の第1の木材薄片に付着して、前記コーヒー残渣の水分を前記第1の木材薄片に移行させ、前記コーヒー残渣の含水率を低減する第1の含水率低減工程と、
前記第1の木材薄片と前記コーヒー残渣とを分離する第1の分離工程と、
前記第1の分離工程で分離された前記コーヒー残渣と汚泥とを混合して、前記汚泥を顆粒状化する混合工程と、
顆粒状化した前記汚泥を厚み0.05mm以上、0.5mm以下の第2の木材薄片に付着して、顆粒状化した前記汚泥の水分を前記第2の木材薄片に移行させ、前記汚泥の含水率を低減する第2の含水率低減工程と、
前記第2の木材薄片と顆粒状化した前記汚泥とを分離する第2の分離工程と、
前記第2の分離工程で分離された前記第2の木材薄片を乾燥させる乾燥工程とを備える
汚泥の処理方法。
【請求項4】
前記第1の含水率低減工程は、
対向するように保持したローラにより前記第1の木材薄片に付着した前記コーヒー残渣を前記第1の木材薄片に押圧して、前記コーヒー残渣の水分の前記第1の木材薄片への移行を促進する
請求項3に記載の汚泥の処理方法。
【請求項5】
前記第2の含水率低減工程は、
対向するように保持したローラにより前記第2の木材薄片に付着した顆粒状化した前記汚泥を前記第2の木材薄片に押圧して、顆粒状化した前記汚泥の水分の前記第2の木材薄片への移行を促進する
請求項3又は請求項4に記載の汚泥の処理方法。
【請求項6】
廃液に、厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片を浸漬して、前記廃液の水分を前記木材薄片に移行させ、前記廃液を濃縮する濃縮工程と、
前記木材薄片を前記廃液から分離する分離工程と、
前記分離工程で分離した前記木材薄片を乾燥させる乾燥工程とを備える
廃液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー残渣の処理方法、汚泥の処理方法及び廃液の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料製造工場で発生するコーヒー残渣、下水処理で発生する下水汚泥、し尿処理で発生するし尿汚泥、各種の廃水処理施設で発生する汚泥等は、含水率を低減して減容化した後、処理している。
【0003】
これらのコーヒー残渣、汚泥等は、含水率が高いことにより、含水率を低減するために多量のエネルギーを必要としている。このため含水率を低減するために種々の工夫が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、乾燥用の気体を供給しながら回転ドラムで乾燥対象を搬送することにより、効率良く乾燥対象の含水率を低減する構成が提案されている。
また特許文献2には、乾燥対象を放置して自然乾燥により乾燥対象の含水率を低減する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-038160号公報
【文献】特開2014-185307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでこの種の含水率の低減は、迅速かつ効率良く実行することが望まれる。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、従来に比して迅速かつ効率良く含水率を低減することができる、コーヒー残渣の処理方法、汚泥の処理方法及び廃液の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
係る課題を解決するため、請求項1の発明は、コーヒー残渣の処理方法に関して、
コーヒー残渣を厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片に付着して、前記コーヒー残渣の水分を前記木材薄片に移行させ、前記コーヒー残渣の含水率を低減する含水率低減工程と、
前記木材薄片と前記コーヒー残渣とを分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記木材薄片を乾燥させる乾燥工程とを備える。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、
前記含水率低減工程は、
対向するように保持したローラにより前記木材薄片に付着した前記コーヒー残渣を前記木材薄片に押圧して、前記コーヒー残渣の水分の前記木材薄片への移行を促進する。
【0010】
請求項3の発明は、汚泥の処理方法に関して、
コーヒー残渣を厚み0.05mm以上、0.5mm以下の第1の木材薄片に付着して、前記コーヒー残渣の水分を前記第1の木材薄片に移行させ、前記コーヒー残渣の含水率を低減する第1の含水率低減工程と、
前記第1の木材薄片と前記コーヒー残渣とを分離する第1の分離工程と、
前記第1の分離工程で分離された前記コーヒー残渣と汚泥とを混合して、前記汚泥を顆粒状化する混合工程と、
顆粒状化した前記汚泥を厚み0.05mm以上、0.5mm以下の第2の木材薄片に付着して、顆粒状化した前記汚泥の水分を前記第2の木材薄片に移行させ、前記汚泥の含水率を低減する第2の含水率低減工程と、
前記第2の木材薄片と顆粒状化した前記汚泥とを分離する第2の分離工程と、
前記第2の分離工程で分離された前記第2の木材薄片を乾燥させる乾燥工程とを備える。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、
前記第1の含水率低減工程は、
対向するように保持したローラにより前記第1の木材薄片に付着した前記コーヒー残渣を前記第1の木材薄片に押圧して、前記コーヒー残渣の水分の前記第1の木材薄片への移行を促進する。
【0012】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4の構成において、
前記第2の含水率低減工程は、
対向するように保持したローラにより前記第2の木材薄片に付着した顆粒状化した前記汚泥を前記第2の木材薄片に押圧して、顆粒状化した前記汚泥の水分の前記第2の木材薄片への移行を促進する。
【0013】
請求項6の発明は、廃液の処理方法に関して、
廃液に、厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片を浸漬して、前記廃液の水分を前記木材薄片に移行させ、前記廃液を濃縮する濃縮工程と、
前記木材薄片を前記廃液から分離する分離工程と、
前記分離工程で分離した前記木材薄片を乾燥させる乾燥工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下の効果を奏することができる。
【0015】
請求項1の構成によれば、厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片へのコーヒー残渣の付着により、コーヒー残渣の水分を木材薄片に移行させて、コーヒー残渣の含水率を迅速かつ効率良く低減することができる。またこのように水分の移行した厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片においては、放置、送風等により短時間で効率良く含水率を低減することができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。これにより従来に比して迅速かつ効率良くコーヒー残渣の含水率を低減することができる。
【0016】
また請求項2の構成によれば、対向するように保持したローラにより木材薄片に付着したコーヒー残渣を木材薄片に押圧することにより、コーヒー残渣と木材薄片との接触表面積を増大させて、木材薄片への水分の移行を促進することができ、短時間でコーヒー残渣の含水率を低減することができる。
【0017】
請求項3の構成によれば、厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片へのコーヒー残渣の付着により、コーヒー残渣の水分を第1の木材薄片に移行させて、コーヒー残渣の含水率を迅速かつ効率良く低減することができる。またこのように水分の移行した厚み0.05mm以上、0.5mm以下の第1の木材薄片においては、放置、送風等により短時間で効率良く含水率を低減することができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。
またこのようにして含水率の低減したコーヒー残渣と汚泥とを混合して、汚泥を顆粒状化した後、厚み0.05mm以上、0.5mm以下の第2の木材薄片への付着により、汚泥の水分を第2の木材薄片に移行させて、汚泥の含水率を迅速かつ効率良く低減することができる。またこのように水分の移行した厚み0.05mm以上、0.5mm以下の第2の木材薄片においては、放置、送風等により短時間で効率良く含水率を低減することができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。
これらにより従来に比して迅速かつ効率良く汚泥の含水率を低減することができる。
【0018】
また請求項4の構成によれば、対向するように保持したローラにより第1の木材薄片に付着したコーヒー残渣を第1の木材薄片に押圧することにより、コーヒー残渣と第1の木材薄片との接触表面積を増大させて、第1の木材薄片への水分の移行を促進することができ、短時間でコーヒー残渣の含水率を低減することができる。
【0019】
またさらに請求項5の構成によれば、対向するように保持したローラにより第2の木材薄片に付着した汚泥を第2の木材薄片に押圧することにより、汚泥と第2の木材薄片との接触表面積を増大させて、第2の木材薄片への水分の移行を促進することができ、短時間で汚泥の含水率を低減することができる。
【0020】
またさらに請求項6の構成によれば、厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片を廃液に浸漬することにより、迅速かつ効率良く廃液を濃縮することができる。またこのように水分の移行した厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片においては、放置、送風等により短時間で効率良く含水率を低減することができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。これにより従来に比して迅速かつ効率良く廃液を濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコーヒー残渣の処理工程を示すフローチャートである。
【
図2】
図1の処理工程の含水率低減工程S1における含水率の変化の実験結果を示す図である。
【
図3】
図1の処理工程の乾燥工程S3における含水率の変化の実験結果を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るコーヒー残渣の処理の含水率低減工程の説明に供する断面図である。
【
図5】押圧の繰り返しによるコーヒー残渣の含水率の変化を示す図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る処理工程を示すフローチャートである。
【
図7】
図6の処理工程の含水率低減工程S12における含水率の変化の実験結果を示す図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る含水率低減工程の説明に供する断面図である。
【
図9】本発明の第5実施形態に係る廃液の処理工程の説明を示すフローチャートである。
【
図10】
図9の処理工程における含水率の変化の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を詳述する。
【0023】
なお、以下において、木材薄片は、木材を切削して得られる厚みの薄い切削片であり、一般的に弾力性を有する。以下の実施形態に適用される木材薄片は、厚みが0.05mm以上、0.5mm以下であり、好ましくは厚みが0.05mm以上、0.3mm以下、より好ましくは厚みが0.05mm以上、0.2mm以下である。後述する各工程の処理を実行可能な強度を十分に確保して、短時間で水分を吸収すると共に、吸収した水分を短時間で放出し、さらには体積当たりの吸水量を十分に確保するためである。
また以下の実施形態に適用される木材薄片は、長さが1cm以上、30cm以下、好ましくは長さが1cm以上、20cm以下、より好ましくは長さが2cm以上、15cm以下であり、幅が1cm以上、3cm以下である。
また以下の実施形態に適用される木材薄片は、その含水率が20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であることが望ましい。なお木材から削り出された切削片は、常温常湿の環境下に放置しておくだけで平均約15%の含水率で安定する。しかしながら熱乾燥したり、又は風乾したりすることにより、15%以下に調整することができる。
木材薄片の作成に供する木材は、例えば杉、ヒノキ、カエデ等、種々の木材を適用することができるものの、吸水吸湿性の高い樹種を適用することがより好ましい。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るコーヒー残渣の処理工程を示すフローチャートである。
この処理工程は、高含水コーヒー残渣の含水率を低減して低含水コーヒー残渣を生成する。ここでこの低含水コーヒー残渣は、種々の対象物に混入して含水率調整材料として使用することができる。
【0025】
この処理工程は、含水率低減工程S1において、処理対象である高含水コーヒー残渣を木材薄片に付着して、コーヒー残渣の水分を木材薄片に移行させ、コーヒー残渣の含水率を低減する。
より具体的に、含水率低減工程S1は、高含水コーヒー残渣と木材薄片との混合により高含水コーヒー残渣を木材薄片に付着する。ここで混合比は、コーヒー残渣の含水率、木材薄片の含水率によって異なるものの、重量比で高含水コーヒー残渣:木材薄片=5:1~2:1が好ましい。混合には、各種の混合機、攪拌機を適用することができ、手作業により混合するようにしてもよい。また水分の移行を十分なものとするために、一定時間(例えば2時間程度)、撹拌、放置することが望ましい。
【0026】
この処理工程は、続く分離工程S2において、含水率低減工程S1により含水率の低減したコーヒー残渣と木材薄片とを分離し、コーヒー残渣及び木材薄片をそれぞれ回収する。ここで含水率の低下したコーヒー残渣は、木材薄片に対する付着性が低下する。これにより例えばふるい機により簡易にコーヒー残渣と木材薄片とを分離することができる。またこのようにふるい機によりコーヒー残渣と木材薄片とを分離する場合にあっても、木材薄片は、十分な弾性を備えることにより、損傷を回避することができる。
【0027】
この処理工程においては、この分離工程S2で分離されたコーヒー残渣が含水率調整材料として出荷される。なおこの処理工程では、目標とする含水率に応じて、この分離工程S2で分離されたコーヒー残渣により含水率低減工程S1、分離工程S2を繰り返し、目標の含水率によるコーヒー残差の含水率調整材料が生産される。
【0028】
乾燥工程S3は、この分離工程S2で分離された木材薄片を乾燥させて含水率低減工程S1に提供する。これによりこの処理工程は、木材薄片を繰り返し使用して木材薄片を有効利用する。
木材薄片は、気液相転移によって等温条件化においても水分の蒸発が促進されるため、放置による自然乾燥、送風等によっても短時間で十分に乾燥させることができ、これにより短時間で効率良く含水率を低減することができる。これにより木材薄片は、短時間で効率良く再利用可能とすることができる。
この実施形態において、乾燥工程S3は、木材薄片を自然乾燥により乾燥させる。なお分離工程S2で分離されるコーヒー残渣の目標とする含水率に応じて、温風の送風等により一段と木材薄片の含水率を低減するようにしてもよい。
【0029】
図2は、この処理工程の含水率低減工程S1における含水率の変化の実験結果を示す図である。この実験では、含水率68.6%のコーヒー残渣と、含水率15.8%の木材薄片とを重量比1:2の割合で混合して、コーヒー残渣を木材薄片に付着させた後、汎用のドラム式攪拌機により120分間攪拌混合した。なお木材薄片の材質は、スプルス材である。
分離回収後のコーヒー残渣の含水率は46.0%であり、木材薄片の含水率は23.3%であった。
これにより短時間で十分にコーヒー残渣の含水率を低減できることが判る。
【0030】
図3は、この処理工程の乾燥工程S3における含水率の変化の実験結果を示す図である。この実験では、分離工程S2で分離回収した木材薄片を約3cm厚により広げて、屋内で自然乾燥させた。なおこの屋内での自然乾燥の条件は、室温10.5℃、湿度49.0%(いずれも平均)である。なお木材薄片は、
図2について上述した実験に使用したものを使用した。24時間経過後の木材薄片の含水率は17.6%から10.2%に低下した。これにより自然乾燥によっても十分に含水率を低減して木材薄片を再利用できることを確認することができた。
【0031】
以上の構成によれば、コーヒー残渣を厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片に付着して、コーヒー残渣の水分を木材薄片に移行させた後、コーヒー残渣と木材薄片とを分離し、分離した木材薄片を乾燥させることにより、コーヒー残渣の含水率を迅速かつ効率良く低減することができる。また木材薄片においては、短時間で効率良く含水率を低減することができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。これにより従来に比して迅速かつ効率良くコーヒー残渣の含水率を低減することができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態に係る処理工程の含水率低減工程S1の説明に供する断面図である。この実施形態に係る含水率低減工程S1は、対向するように保持したローラにより木材薄片に付着したコーヒー残渣を木材薄片に押圧して、コーヒー残渣の水分の木材薄片への移行を促進する。
この実施形態に係る処理工程は、この含水率低減工程S1に関する構成が異なる点を除いて、第1実施形態に係る処理工程と同一に構成される。
【0033】
すなわち含水率低減工程S1は、回転軸がほぼ水平方向であるローラ5a、5bが一定の間隔だけ隔てて対向するように筐体4に収納されて保持され、このローラ5a、5bの上方に、投入ダクト1が設けられる。含水率低減工程S1は、この投入ダクト1に、処理対象物(コーヒー残渣の付着した木材薄片)2が投入され、ローラ5a、5bの回転(矢印により示す)により、この投入ダクト1に投入された処理対象物2がローラ5a、5b間を通過して排出ダクト3から排出される。
含水率低減工程S1は、このローラ5a、5b間を通過する際に、ローラ5a、5bにより木材薄片に付着したコーヒー残渣を木材薄片に押圧する。
【0034】
ここでローラ5a、5bは、処理対象物2が破損(コーヒー残渣の圧潰、木材薄片の破損)しないように、コーヒー残渣、木材薄片の弾性限界に応じた押圧力であって、コーヒー残渣と木材薄片との接触表面積を十分に増大させることが可能な押圧力により、処理対象物2を押圧するように形成される。これによりローラ5a、5bは、金属材料により形成してもよく、いわゆるゴムローラにより形成してもよく、各種の材料を広く適用することができる。
【0035】
含水率低減工程S1は、目的とする含水率に応じて、排出ダクト3から排出された処理対象物2を投入ダクト1に再投入し、ローラ5a、5bによる押圧を繰り返す。
【0036】
図5は、この押圧の繰り返しによるコーヒー残渣の含水率の変化を示す図である。この
図5の含水率の変化は、実験により求めたものであり、含水率68.6%のコーヒー残渣10kgを、含水率11.9%の木材薄片(材質:スプルス材)2kgに付着させて処理対象物2を形成した。またローラ5a、5bにステンレス製ローラを適用して、ローラ5a、5b間に2mmのギャップが形成されるように配置した。この実験は、このローラ5a、5b間に処理対象物2を繰り返し通過させてローラ5a、5bにより押圧するようにして、10回通過させる毎に、コーヒー残渣を分離した後、含水率11.9%の木材薄片に付着し直した。30回経過後におけるコーヒー残渣の含水率は32.2%であった。
この
図5によれば、押圧の繰り返しにより含水率が低下することが判る。
なおこれにより連続配置したローラにより繰り返し押圧するようにしてもよく、ベルト間に挟持して搬送するようにして連続して一定時間押圧するようにしても良い。
【0037】
以上の構成によれば、対向するように保持したローラにより木材薄片に付着したコーヒー残渣を木材薄片に押圧することにより、コーヒー残渣と木材薄片との接触表面積を増大させて、木材薄片への水分の移行を促進することができ、短時間でコーヒー残渣の含水率を低減することができる。
【0038】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態に係る汚泥の処理工程を示すフローチャートである。
この処理工程は、汚泥の含水率を低減する。
ここで汚泥、下水汚泥、し尿汚泥、化学系汚泥、食品系汚泥等の有機性汚泥、赤泥、藻土かす、廃白土等の無機性汚泥を適用することができる。
【0039】
処理工程は、第1実施形態又は第2実施形態の処理工程により、コーヒー残渣の含水率を低減し、低含水のコーヒー残渣を生成する。
この処理工程は、混合工程S11において、この低含水のコーヒー残渣と汚泥とを混合して、汚泥を顆粒状化する。
ここで高含水の汚泥と低含水のコーヒー残渣とを混合すると、コーヒー残渣が核材として機能して汚泥が凝集して顆粒状化する。この顆粒状化は、汚泥の含水率、汚泥とコーヒー残渣との混合比によって変化するものの、一般的な処理工程により排出される汚泥の場合(含水率60~90%である)、重量比で汚泥:コーヒー残渣=1:1以上2:1以下の混合比により混合することが好ましい。
続いてこの処理工程は、含水率低減工程S12において、顆粒状化した汚泥を木材薄片に付着して、顆粒状化した汚泥の水分を木材薄片に移行させ、汚泥の含水率を低減する。
ここで混合比は、混合物(顆粒状化した汚泥)の含水率、木材薄片の含水率によって異なるものの、重量比で混合物:木材薄片=5:1~2:1が好ましい。混合には、各種の混合機、攪拌機を適用することができ、手作業により混合するようにしてもよい。また水分の移行を十分なものとするために、一定時間(例えば2時間程度)、撹拌、放置することが望ましい。
【0040】
この処理工程は、続く分離工程S13において、含水率低減工程S12により含水率の低減した混合物と木材薄片とを分離し、混合物及び木材薄片をそれぞれ回収する。ここで含水率の低下した混合物は、木材薄片に対する付着性が低下する。これにより例えばふるい機により簡易に混合物と木材薄片とを分離することができる。またこのようにふるい機により混合物と木材薄片とを分離する場合にあっても、木材薄片は、十分な弾性を備えることにより、損傷を回避することができる。
【0041】
この処理工程においては、目標とする含水率に応じて、この分離工程S13で分離された混合物により含水率低減工程S12、分離工程S13が繰り返される。
汚泥が有機性汚泥である場合、この分離工程S13で分離された混合物は、コーヒー残渣が分離されて、又はコーヒー残渣と汚泥との混合物のまま、焼却工程、埋め立て工程等に搬送され処理される。また汚泥が無機性汚泥である場合、分離工程S13で分離された混合物は、コーヒー残渣が分離されて、又はコーヒー残渣と汚泥との混合物のまま、埋め立て等の処理に供される。
この実施形態では、混合物の含水率が低下していることにより、分離工程S13で分離された混合物は十分に減容化されており、これにより以降の処理工程における処理、搬送を簡略化することができる。
【0042】
またこの工程は、乾燥工程S14において、この分離工程S13で分離された木材薄片を乾燥させて含水率低減工程S12に提供する。これによりこの処理工程は、木材薄片を繰り返し使用して木材薄片を有効利用する。
このように汚泥の含水率を低減する場合にあっても、木材薄片は、自然乾燥、送風等によって短時間で十分に乾燥させることができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。
なおこの実施形態では、乾燥工程S14は、木材薄片を自然乾燥により乾燥させる。なお分離工程S13で分離される混合物の目標とする含水率に応じて、温風の送風により一段と木材薄片の含水率を低減するようにしてもよい。
【0043】
図7は、この処理工程の含水率低減工程S12における含水率の変化の実験結果を示す図である。この実験では、含水率76.5%の汚泥と含水率14.4%のコーヒー残渣を重量比1:1の割合で混合し、含水率43.7%の混合物を作製した。さらにこの混合物を、重量比1:3の割合で含水率12.5%の木材薄片(材質:スプルス材)に付着し、市販のドラム式攪拌機により120分間攪拌した。分離回収後の混合物の含水率は22.8%であり、木材薄片の含水率は17.6%であった。
これにより短時間で十分に汚泥の含水率を低減できることが判る。
【0044】
以上の構成によれば、コーヒー残渣と混合して汚泥を顆粒状化した後、厚み0.05mm以上、0.5mm以下の木材薄片に付着して、木材薄片に水分を移行させた後、分離し、分離した木材薄片を乾燥させることにより、汚泥の含水率を迅速かつ効率良く低減することができる。また木材薄片においては、短時間で効率良く含水率を低減することができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。これにより従来に比して迅速かつ効率良く汚泥の含水率を低減することができる。
【0045】
〔第4実施形態〕
図8は、本発明の第4実施形態に係る処理工程の含水率低減工程S12の説明に供する断面図である。この実施形態に係る含水率低減工程S12は、対向するように保持したローラにより木材薄片に付着した顆粒状化した汚泥を木材薄片に押圧して、顆粒状化した汚泥の水分の木材薄片への移行を促進する。
この実施形態に係る処理工程は、この含水率低減工程S12に関する構成が異なる点を除いて、第3実施形態に係る処理工程と同一に構成される。
【0046】
また含水率低減工程S12は、対向するように1対のローラ5a、5bが筐体4に収納されて保持され、このローラ5a、5bの上方に設けられた投入ダクト1に、処理対象物(顆粒状化した汚泥の付着した木材薄片)2が投入されてローラ5a、5b間を通過して排出ダクト3から排出される。
含水率低減工程S12は、このローラ5a、5b間を通過する際に、ローラ5a、5bにより木材薄片に付着した顆粒状化した汚泥を木材薄片に押圧する。
【0047】
ここでローラ5a、5bは、処理対象物2が破損(顆粒状化した汚泥の圧潰、木材薄片の破損)しない押圧力であって、かつ顆粒状化した汚泥と木材薄片との接触表面積を十分に増大させることが可能な押圧力により、処理対象物2を押圧するように形成される。これによりローラ5a、5bは、金属材料により形成してもよく、いわゆるゴムローラにより形成してもよく、種々の構成を広く適用することができる。
【0048】
含水率低減工程12は、目的とする含水率に応じて、排出ダクト3から排出された処理対象物2を投入ダクト1に再投入し、ローラ5a、5bによる押圧を繰り返す。
なおこれにより連続配置したローラにより繰り返し押圧するようにしてもよく、ベルト間に挟持して搬送するようにして連続して一定時間押圧するようにしても良い。
【0049】
以上の構成によれば、対向するように保持したローラにより顆粒状化した汚泥を木材薄片に押圧することにより、顆粒状化した汚泥と木材薄片との接触表面積を増大させて、木材薄片への水分の移行を促進することができ、短時間で顆粒状化した汚泥の含水率を低減することができる。
【0050】
〔第5実施形態〕
図9は、本発明の第5実施形態に係る廃液の処理工程を示すフローチャートである。
この処理工程は、廃液に、木材薄片を浸漬して廃液を濃縮する。ここで廃液は、有機物を含むもの、無機物を含むもの、有機物、無機物の双方を含むものを広く適用することができる。
【0051】
この処理工程は、濃縮工程S21において、処理対象の廃液に木材薄片を浸漬して、廃液の水分を木材薄片に移行させ、廃液を濃縮する。ここで浸漬する木材薄片の量は、所望する濃縮率に応じて種々に設定することができ、木材薄片の量を増大させることにより濃縮率を増大させることができる。また木材薄片に十分に水分を吸収させて、少ない投入量により大きな濃縮率を確保する観点より、一定時間(例えば数時間)、浸漬したまま放置することが望ましい。
【0052】
この処理工程は、続いて分離工程S22において、廃液から木材薄片を引き上げて木材薄片を分離する。この処理工程では、目標とする濃縮率(除去する水分量)に応じて、この分離工程S22で木材薄片を分離した廃液により濃縮工程S21、分離工程S22を繰り返す。このようにして濃縮されて分離工程S22で木材薄片を分離した廃液が、最終処分工程に搬送される。この処理工程では、この搬送に供する廃液が十分に濃縮されていることにより、十分に減容化されており、簡易に搬送して処理することができる。
【0053】
この処理工程は、乾燥工程S23において、この分離工程S22で分離した木材薄片を乾燥し、濃縮工程S21に提供する。これによりこの処理工程は、木材薄片を繰り返し使用して木材薄片を有効利用する。
この実施形態において乾燥工程S23は、木材薄片を自然乾燥により乾燥させる。なお分離工程S22で分離される廃液の目標とする濃縮率に応じて、温風の送風により一段と木材薄片の含水率を低減するようにしてもよい。
【0054】
図10は、実験によるこの一連の処理工程S21、S22、S23における木材薄片の含水率の変化を示す図である。
この実験では、70Lの汚水に含水率13.9%の木材薄片(材質:スプルス材)1kgを1時間浸漬した後、分離回収した。分離回収後の木材薄片の重量は3.3kg、含水率は77.4%であった。
この分離回収した木材薄片を約4cm厚により広げて、屋内で自然乾燥させた。96時間経過後の木材薄片の含水率は77.4%から13.1%へと低下した。なおこの屋内での自然乾燥の条件は、室温8.4℃、湿度63.5%(いずれも平均)である。
これにより木材薄片を十分に再利用できることが判る。
【0055】
図11は、自然乾燥時間による木材薄片の含水率の変化を、おが粉との対比により示す図である。
この実験では、木材薄片10kg及びおが粉10kgをそれぞれ300Lの水に1時間浸漬した後分離し、屋内で自然乾燥させた。なおこの屋内での自然乾燥の条件は、室温11.1℃、湿度49.7%(いずれも平均)である。
木材薄片は、おが粉に比して吸収する水分量が少ないものの、おが粉に比して自然乾燥による時間経過により含水率の低下が大きく、これにより短時間で再利用可能であることが判る。
【0056】
なおこの廃液の処理は、六価クロムなどの重金属を含む廃液、水溶液による廃液の処理にも適用することができる。この場合、重金属等の含有物が水分と共に木材薄片に吸収され、木材薄片における水分の吸収、乾燥の繰り返しにより、木材薄片に蓄積されることになる。これにより濃縮された廃液と共に、木材薄片を処理して、廃液を処理することができる。
【0057】
またクロロエチレン、ベンゼン等の溶剤の混入した廃液、トリチウム水を含む廃液の処理にも適用することができる。この場合、これら溶剤、トリチウム水が廃液の水分と共に木材薄片に吸収されることにより、木材薄片における水分の吸収、乾燥の繰り返しにより、これら溶剤、トリチウム水を空気中に飛散させることができ、これにより廃液を処理することができる。
【0058】
この実施形態によれば、木材薄片を廃液に浸漬することにより、迅速かつ効率良く廃液を濃縮することができる。またこのように水分の移行した木材薄片は、放置、送風等により短時間で効率良く含水率を低減することができ、これにより短時間で効率良く再利用可能とすることができる。これにより従来に比して迅速かつ効率良く廃液を濃縮することができる。
【0059】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 投入ダクト
2 処理対象物
3 排出ダクト
4 筐体
5a、5b ローラ
S1、S12 含水率低減工程
S11 混合工程
S13、S2、S22 分離工程
S21 濃縮工程
S3、S14、S23 乾燥工程