(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】非侵襲的診断用センサを備える高圧油圧システム
(51)【国際特許分類】
G01L 23/10 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G01L23/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070667
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】102019000006429
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520126859
【氏名又は名称】オーエムティー デジタル エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッポ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】カツッチ フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】チアボネロ ロレンゾ
(72)【発明者】
【氏名】ビオリノ アンドレア
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517867(JP,A)
【文献】特開昭57-122334(JP,A)
【文献】特開昭59-111032(JP,A)
【文献】特開昭58-070028(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03109453(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧油圧システムであって、
加圧流体を含む油圧チャンバと、
前記油圧チャンバの少なくとも一部を囲み、かつ、一体型ダイヤフラムを有する壁
であって、前記一体型ダイヤフラムは、前記壁に直接、一体的な部分として形成され、前記油圧チャンバは、少なくとも、前記一体型ダイヤフラムの下面と、前記高圧油圧システムの噴射針の対向する上側ヘッド表面とによって区切られている、壁と、
圧電センサであって、前記一体型ダイヤフラムにより、前記油圧チャンバに含まれている前記加圧流体から分離され、かつ、検出軸を有し、前記圧電センサは、前記検出軸に沿って前記圧電センサを圧縮する力に関連する電気信号を発生させる、圧電センサと、
前記圧電センサと、前記一体型ダイヤフラムとの間で前記検出軸に沿って、弾性力を印加するように配置される弾性要素であって、前記弾性要素および前記圧電センサとは、前記油圧チャンバに含まれている前記加圧流体の圧力の変動により生成される前記検出軸方向における前記一体型ダイヤフラムの変形が、前記弾性要素が、前記圧電センサと、前記一体型ダイヤフラムとの間で前記検出軸の方向に沿って印加する、前記弾性力の変動を引き起こすように配置される、弾性要素とを備える、
油圧システム。
【請求項2】
前記弾性要素および前記圧電センサは、前記検出軸の方向において、前記圧電センサが前記弾性要素により生成される前記弾性力だけを受けるように配置される、
請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
前記一体型ダイヤフラムは、前記壁の厚みを薄くした部分により形成される、
請求項1または2に記載の油圧システム。
【請求項4】
前記一体型ダイヤフラムは、前記壁に形成されるブラインドホールの底に配置され、その中には前記圧電センサが収容されている
請求項3に記載の油圧システム。
【請求項5】
前記圧電センサは、
互いに平行で、前記検出軸に対して垂直な、それぞれ第1の面およびそれぞれ第2の面を有する2つのディスク状要素であって、前記ディスク状要素のうちの少なくとも1つは圧電素子である、2つのディスク状要素と、
前記検出軸に対して垂直な、導電材料の薄い板で形成される電極であって、2つの前記ディスク状要素の前記第1の面は、前記電極の反対側の面に接触している、電極と、
導電性材料の2つの支持要素であって、それぞれの支持面は、前記ディスク状要素のそれぞれの第2の面に支えられている、2つの支持要素とを備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載の油圧システム。
【請求項6】
前記弾性要素は、前記一体型ダイヤフラムと、前記支持要素の1つの面との間で前記検出軸の方向に圧縮される、
請求項5に記載の油圧システム。
【請求項7】
前記圧電センサは、前記電極の外側で前記検出軸と同軸に配置される環形状の絶縁要素を有し、前記絶縁要素は、前記ディスク状要素の外縁および前記電極の外縁に面する内側表面を有する、
請求項5に記載の油圧システム。
【請求項8】
前記絶縁要素は、前記検出軸の方向の寸法が、前記2つの支持要素の前記支持面の間の距離より短く、1つの支持要素の前記支持面の外周部分に支えられているベース面を有する、
請求項7に記載の油圧システム。
【請求項9】
前記ディスク状要素の両方が圧電素子であり、前記ディスク状要素の前記第1の面が陽極端子面で、前記ディスク状要素の前記第2の面が陰極端子面である、
請求項5に記載の油圧システム。
【請求項10】
高圧油圧システムであって、
加圧流体を含む油圧チャンバと、
前記油圧チャンバの少なくとも一部を囲み、かつ、一体型ダイヤフラムを有する壁と、
圧電センサであって、前記一体型ダイヤフラムにより、前記油圧チャンバに含まれている前記加圧流体から分離され、かつ、検出軸を有し、前記圧電センサは、前記検出軸に沿って前記圧電センサを圧縮する力に関連する電気信号を発生させる、圧電センサと、
前記圧電センサと、前記一体型ダイヤフラムとの間で前記検出軸に沿って、弾性力を印加するように配置される弾性要素であって、前記弾性要素および前記圧電センサとは、前記油圧チャンバに含まれている前記加圧流体の圧力の変動により生成される前記検出軸方向における前記一体型ダイヤフラムの変形が、前記弾性要素が、前記圧電センサと、前記一体型ダイヤフラムとの間で前記検出軸の方向に沿って印加する、前記弾性力の変動を引き起こすように配置される、弾性要素とを備え、
前記圧電センサは、
互いに平行で、前記検出軸に対して垂直な、それぞれ第1の面およびそれぞれ第2の面を有する2つのディスク状要素であって、前記ディスク状要素のうちの少なくとも1つは圧電素子である、2つのディスク状要素と、
前記検出軸に対して垂直な、導電材料の薄い板で形成される電極であって、2つの前記ディスク状要素の前記第1の面は、前記電極の反対側の面に接触している、電極と、
導電性材料の2つの支持要素であって、それぞれの支持面は、前記ディスク状要素のそれぞれの第2の面に支えられている、2つの支持要素とを備え、
前記支持要素のうちの1つは、その下面から、前記検出軸の方向に突出し、前記弾性要素の中央孔に係合する軸方向の突起を有する、
油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して高圧油圧システムに関連し、システムの動作の非侵襲的診断用センサを備える高圧油圧システムに関する。
【0002】
本発明は、とりわけ、その用途として、例えば、大型船舶エンジンといった、大型ディーゼルエンジンおよびデュアルフューエルエンジン用の燃料噴射システムの診断を見込んで開発されたものである。以下の説明において、この特定の使用分野について、とはいえ、一般性を失うことなく参照することになであろう。
【背景技術】
【0003】
油圧システムの分野、とりわけディーゼルエンジンの高圧噴射システムにおいて、複雑なシステムの動作診断のための重要なデータを取得できる診断システムの開発への関心が高まっている。
【0004】
これにより、油圧のような特徴的な動作パラメータを測定可能な低コストセンサの開発が促されている。
【0005】
燃料噴射システムの分野において、力および/または圧力を測定するためのセンサ、ならびに、とりわけ、燃料噴射器に固定して噴射針の閉止時間を特定するように構成されるセンサが提案されてきている。例えば、欧州特許第3001167号は、互いに平行に配置され、各々関連する電極を有する2つの端面を有する、少なくとも1つの圧電材料のセンサ素子を備えるセンサアセンブリを説明している。互いに電気的に絶縁された電極は、センサ素子に接触していることが想定される。
【0006】
モニターされる構成要素にセンサを一体化させた油圧システムもまた提案されている(例えば、欧州特許第3026254号および欧州特許第3034855号)。
【0007】
コモンレール燃料噴射器においてセンサが設置されるのは、しばしば、加圧アキュムレータから、噴射針封止領域の上流側に配置されている燃料分配チャンバに向かって流体を運ぶ孔に隣接する領域である。動作中に噴射器が発生する摂動は、このラインまで伝搬しないので、これにより、噴射器の制御バルブではなく、噴射器の動作データの検出ができる。
【0008】
診断目的での、圧力センサの理想的な位置は、噴射器の制御チャンバの近くであろう。しかし、この領域のサイズが小さく、制御チャンバ内に存在する流体の圧力が高いことに起因し、小型のセンサ素子を使用する必要があろう。したがって、それらが持ちこたえ得る荷重および変形の観点から限定される。問題は、一般に、小さな空間内で(数千バールのオーダーの)非常な高圧により生じる変形を管理する必要があることである。
【0009】
米国特許出願公開第2014027534号には、噴射針が閉じる瞬間を決定するために、噴射針の開閉中の圧力変動を検出するような圧電圧力センサを含むコモンレール噴射システム用の燃料噴射器が説明されている。圧力センサは、低圧領域に配置され、制御バルブのロッドにより生成される軸方向の力により負荷を受ける。米国特許出願公開第2014027534号に記載されているセンサは、制御チャンバの下流側に配置され、メモリ付きオリフィスによってそこへ接続されたチャンバ内の圧力を検出することを目的としている。したがって、この明細書に記載されるセンサは、制御チャンバ内の圧力を代表する信号を直接検出することはできない。実際には、バルブが開いているときにセンサによって読み取られる圧力は、制御チャンバの圧力と排出圧力との間の中間レベルにあり、このレベルは、バルブシートを横切る圧力低下によってもまた決定される。オリフィス中間チャンバシステムは、バルブが閉じているときに、制御チャンバ内の圧力信号と、センサによって検出された圧力信号との間に遅れを生じさせる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、コスト効果が高く、かつ非侵襲的な手段で、油圧システム内部の流体の圧力に関連する信号を検出する高圧油圧システムを提供することである。
【0011】
本発明によると、請求項1の主題を形成する特性を有する高圧油圧システムにより、この目的が実現される。
【0012】
本発明の特徴的な要素は、センサを構成し、かつ、異なる油圧システムへの一体化を可能にする、高感度素子および支持要素の具体的なの構成ならびに形態である。このセンサにより提供される電気信号は、従来技術を通して、または、人工知能によって、油圧システムの動作の診断に使用できる。
【0013】
とりわけ、センサが、小型であること、高温耐性であること、および、異なる剛性を有する構成要素に対して一体化が適用できることにより、噴射システムに応用する場合は、コモンレール噴射器の制御容積内の圧力を検出するのに適したものになり、それにより、噴射器全体の一連の動作診断パラメータを得ることができる。
【0014】
特許請求の範囲は、本発明に関連してここに提供される開示の不可欠な部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
ここで、添付の、純粋に非限定的な例として与えられる図面を参照して、本発明は詳細に記載されるであろう。
【
図1】コモンレール噴射システムの噴射器の部分断面図である。
【
図2】
図1において、矢印IIで示した部分の縮尺を拡大した断面図である。
【
図3】
図2のIII-IIIの線に沿った断面図である。
【
図4】
図3のIV-IVの線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、高圧油圧システムを示す。示される例において、油圧システムは、コモンレール噴射システム用の噴射器10からなる。噴射器10は、燃料分配チャンバ14を有する噴霧器12を有し、燃料分配チャンバ14は、バルブシート16を有する。噴射針18は、分配チャンバ14内に延在し、バルブシート16と協働するシール面20を有する。噴射針18は、その長手軸Aに沿って、シール面20がバルブシート16に接触する閉位置と、シール面20がバルブシート16から離間している開位置との間で移動可能である。バネ22は、噴射針18を閉位置に向かって押す傾向がある。噴霧器12は、複数の噴射孔24を有し、分配チャンバ14内に配置されている加圧燃料は、噴射針18が開位置にあるときに、その噴射孔を通って霧状にされる。
【0017】
分配チャンバ14は、高圧ポンプから入ってくる加圧燃料で充填されている蓄圧容積(accumulation volume)に接続されている。蓄圧容積は、また、油圧ラインを介して油圧チャンバ34に接続されており、油圧ラインには、第1のメモリ付きオリフィス36が配置されている。油圧チャンバ34は、タンクへとつながる排出ラインに接続されている。排出ラインには、制御バルブ42が配置されている。制御バルブ42は、電気制御される2位置バルブであり、開位置では、油圧チャンバ34を排出ラインへと接続し、閉位置では、油圧チャンバ34を排出ラインから分離する。第2のメモリ付きオリフィス44は、制御バルブ42の上流側に配置される。
【0018】
噴射器10は、噴霧器12のヘッド表面52に油圧シール接触するように配置される壁50を有する。壁50は、油圧チャンバ34の少なくとも一部分を囲む。壁50には、メモリ付きオリフィス36、44が形成され、同様に壁50に形成される孔54、56のそれぞれを通じ、油圧チャンバ34に接続される。
【0019】
図2を参照すると、壁50は、油圧チャンバ34に含まれている流体の圧力が作用する反応面58を有する。油圧チャンバ34に面している反応面58の一部に、孔54、56が開いている。孔54およびオリフィス36は、
図2に示される構成に関して、いくつかの実施形態において、交換し得る。
【0020】
壁50の反応面58は、噴霧器12の分配チャンバ14に向かって開かれている壁50のシート60に形成され得る。ブッシング62は、シート60内に部分的に収容され、噴射針18のヘッド部分が中へとスライドする孔64を有している。
【0021】
油圧チャンバ34は、壁50の反応面58、噴射針18のヘッド表面66、および、ガイドブッシング62の環状部分68によって区切られる。
【0022】
図2、
図3および
図4を参照すると、噴射器10は、噴射器10の動作を示す電気信号を提供する圧電センサ70を有している。
【0023】
センサ70は、油圧チャンバ34に含まれている加圧流体から完全に分離されている。センサ70により提供される電気信号は、油圧チャンバ34内の流体の圧力の変化によって発生する壁50の変形を示す。圧電センサ70は、油圧チャンバ34内の流体の圧力に関連する電気信号を提供する圧力トランスデューサである。センサ70は、センサ70が圧力変動を検出できる方向に沿った方向を構成する検出軸Aを有する。検出軸Aは、噴射器10の長手軸と一致してよい。
【0024】
壁50は、壁50の厚みを薄くした部分により形成される一体型ダイヤフラム120を含む。ダイヤフラム120は、油圧チャンバ34に含まれている加圧流体と直接接触している第1の表面122と、第1の表面122の反対側の第2の表面124とを有する。第2の表面124は、油圧チャンバ34内に含まれる加圧流体に接触していない。ダイヤフラム120の第1の表面122は、反応面58の一部分からなる。
【0025】
示した実施形態において、ダイヤフラム120は、センサ70が収容されているブラインドホール72の底に配置される。ブラインドホール72は、壁50に形成され、センサ70の検出軸Aと同軸の側面74と、ダイヤフラム120の第2の表面124を形成している底面とを有する。
【0026】
センサ70は、2つのディスク状要素78、80を含む。2つのディスク状要素78、80は、それぞれ第1の面78'、80'と、それぞれ第2の面78"、80"とを有する。2つのディスク状要素の各々の第1の面78'、80'および第2の面78"、80"は、互いに平行で、検出軸Aに対して垂直な平坦面であり、軸Aに対して垂直な平面に、円形の形状を有し得る(
図4)。
【0027】
2つのディスク状要素のうちの少なくとも1つは、圧電素子であり、検出軸Aの方向に圧縮荷重を受けたとき、第1の面78'、80'に正電荷の、第2の面78"、80"に負電荷の蓄積が起こる。電荷の量により、面78'、80'および/または面78"、80"の間に電位差が発生し、それは、検出軸Aの方向における圧力の増加に比例して増加する。
【0028】
一実施形態において、両方のディスク状要素78、80は、圧電素子である。この場合、ディスク状要素78、80の第1の面78'、80'は、陽極端子面であり、ディスク状要素78、80の第2の面78"、80"は陰極端子面である。
【0029】
可能な変形例においては、2つのディスク状要素78、80のうちの1つだけが、圧電素子であり、2つのディスク状要素78、80の他方は、圧電特性を有さない絶縁要素であり得る。
【0030】
導電材料の薄い壁で形成される電極82は、2つのディスク状要素78、80の間に配置され、前述の電極82は、検出軸Aに対して垂直である。2つのディスク状要素78、80の第1の面78'、80'は、電極82の反対側の面に接触している。電極82は、圧電素子78,80の直径よりわずかに大きい直径を有する円形の形状でよい。
【0031】
センサ70は、導電性材料の2つの支持要素84、86を含んでよい。2つの支持要素84、86は、それぞれの支持面88、90を有し、ディスク状要素78、80の対応する第2の面78"、80"で支えられている。支持要素84、86の側壁は、孔72の側面74に接触し得る。
【0032】
2つの圧電素子78、80の間に配置される電極82は、センサ70の陽極を構成する。陰極は、壁50を通してグラウンドに電気的に接続されている支持体84、86からなる。
【0033】
図3および
図4を参照すると、電極82は、検出軸Aに対して垂直方向に外側に延在する突出部分92を有してよく、突出部分92には、電気ケーブル94の一端が接続され、2つの支持体84、86の間で検出軸Aの方向に作用している力に比例する振幅のアナログ電気信号が伝達される。
【0034】
センサ70は、電極82の外側に、軸Aと同軸に配置されている環状の絶縁要素96を含む。絶縁要素96は、ディスク状要素78、80の外縁および電極82の外縁に面する内側表面98を有し、検出軸Aに関して、ディスク状要素78、80と、電極82との間でセンタリングできる。絶縁要素96は、電極82およびディスク状要素78、80が、噴射器の金属構成要素から電気的に絶縁されることを保証する。絶縁要素96は、検出軸Aの方向の寸法が、支持要素84、86の支持面88、90の間の距離より短く、1つの支持要素84の面88の外周部分に支えられるベース面100を有する。
【0035】
センサ70は、壁50に対して、検出軸Aの方向に押し付けられている。例えば、センサ70の支持要素86の上面110は、壁50の上面116で支えられている本体114の下面112に隣接して配置され得る。
【0036】
噴射器10は、例えば、カップバネによって、検出軸Aと同軸に形成され、センサ70と、ダイヤフラム120との間で検出軸Aの方向に弾性力を印加するように配置されている、少なくとも1つの弾性要素102を有してよい。弾性要素102およびセンサ70は、センサ70が、検出軸Aの方向には、弾性要素102よって生成される弾性力だけを受けるように配置される。
【0037】
示した例において、弾性要素102は、ダイヤフラム120の第2の表面124と、支持要素84の下面104との間で軸方向に圧縮されている。支持要素84は、検出軸Aの方向に下面104から突出し、弾性要素102の中央孔108に係合する軸方向の突起106を有してよい。弾性要素102は、センサ70を、本体114の下面112に対して、検出軸Aの方向に圧縮する。
【0038】
センサ70は、弾性要素102が圧電センサ70と、ダイヤフラム120との間で前述の検出軸Aに沿って印加する弾性力に関連する電気信号を発生する。動作中、油圧チャンバ34内の流体の周期的な圧力変動は、検出軸Aの方向にダイヤフラム120の周期的な変形を引き起こす。流体の圧力の変動により引き起こされるダイヤフラム120の変形は、検出軸Aの方向に、ダイヤフラム120の第2の表面124の変形を引き起こす。検出軸Aの方向への第2の表面124の変形は、同様に、弾性要素102がセンサ70に印加する弾性力に変動を引き起こし、したがって、センサ70により生成される電気信号が変動する。センサ70により生成される電気信号は、したがって、油圧チャンバ34に含まれている流体の圧力の瞬間値に直接関連する。
【0039】
ダイヤフラム120の変形に起因する力は、弾性要素102だけによってセンサへ伝達され、これにより、(油圧チャンバ34内の圧力の作用の下での)センサ70への過度の荷重を生成するダイヤフラム120の変形が防げられる。
【0040】
弾性要素102の剛性は、ダイヤフラム120の厚さと、油圧チャンバ34の圧力とにより大きさが決められている。弾性要素102の寸法および形状を適切に選択することによって、圧電素子78、80の動作範囲と互換性のある力がダイヤフラム120の変形により発生するように弾性要素102の剛性を適合させ得る。
【0041】
設計段階で弾性要素102の剛性を変化させることが可能であるため、ダイヤフラム120の適切な厚さが保証できる。
【0042】
両方のディスク状要素78、80が、圧電素子の場合、圧電素子78、80が面して、向かい合う構成により、単一の圧電素子を使用するセンサに関して、センサ70の感度は倍になり、陽極と、陰極との間の電気的絶縁要素として同じ圧電素子78、80を使用するので、その構造が簡略化され、センサ70が受ける荷重を支持する要素スタックに、さらなる絶縁材料の要素を導入することを避けられる。
【0043】
センサ70は、非常に小さい寸法を有し、壁50のメモリ付きオリフィス36、44の間に簡単に収容し得る。センサ70は、流体に少しも接触せずに、かつ、油圧チャンバ34の形状を全く変更することなく、油圧チャンバ34の油圧を間接的に測定することを提供できる。センサ70により、ダイヤフラム120の変形を優れた信号/ノイズで検出し得る。
【0044】
センサ70により検出される油圧チャンバ34内の油圧は、噴射器10の動作についての診断情報を得るように処理し得る。
【0045】
図面は、例により、本発明によるセンサ70をコモンレール噴射器において応用することを示す。しかしながら、本発明によるセンサ70は、例えば、アキュムレータ、パイプ、ポンプ、バルブ要素などのような、他の任意の種類の高圧油圧システムにおいて使用できることが理解される。
【0046】
一般に、センサ70は、加圧流体に曝される面を有し、流体の圧力の変化に起因して変形する油圧システムの任意の構成要素に取り付け得る。
【0047】
したがって、センサ70を隔てているダイヤフラムの変形のおかげで、センサ70は、加圧流体を含む容積から、加圧流体に直接接触せずに流体の圧力を検出可能である。
【0048】
センサ70が、弾性要素102によって生成される弾性力の作用だけを検出軸Aの方向において受けるという条件で、弾性要素102は、図面に示されるものと異なって配置され得る。例えば、弾性要素は、本体114の面112と、第2の支持要素84の上面110との間に配置され得る。
【0049】
もちろん、本発明の原理を損なうことなく、構造の詳細および実施形態は、記載されおよび示されるものに関して広く変更され得、これにより、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することはない。
(項目1)
高圧油圧システムであって、
加圧流体を含む油圧チャンバと、
前記油圧チャンバの少なくとも一部を囲み、かつ、一体型ダイヤフラムを有する壁と、
圧電センサであって、前記一体型ダイヤフラムにより、前記油圧チャンバに含まれている前記加圧流体から分離され、かつ、検出軸を有し、前記圧電センサは、前記検出軸に沿って前記圧電センサを圧縮する力に関連する電気信号を発生させる、圧電センサと、
前記圧電センサと、前記一体型ダイヤフラムとの間で前記検出軸に沿って、弾性力を印加するように配置される弾性要素であって、前記弾性要素および前記圧電センサとは、前記油圧チャンバに含まれている前記加圧流体の圧力の変動により生成される前記検出軸方向における前記一体型ダイヤフラムの変形が、前記弾性要素が、前記圧電センサと、前記一体型ダイヤフラムとの間で前記検出軸の方向に沿って印加する、前記弾性力の変動を引き起こすように配置される、弾性要素とを備える、
油圧システム。
(項目2)
前記弾性要素および前記圧電センサは、前記検出軸の方向において、前記圧電センサが前記弾性要素により生成される前記弾性力だけを受けるように配置される、
項目1に記載の油圧システム。
(項目3)
前記一体型ダイヤフラムは、前記壁の厚みを薄くした部分により形成される、
項目1または2に記載の油圧システム。
(項目4)
前記一体型ダイヤフラムは、前記壁に形成されるブラインドホールの底に配置され、その中には前記圧電センサが収容されている
項目3に記載の油圧システム。
(項目5)
前記圧電センサは、
互いに平行で、前記検出軸に対して垂直な、それぞれ第1の面およびそれぞれ第2の面を有する2つのディスク状要素であって、前記ディスク状要素のうちの少なくとも1つは圧電素子である、2つのディスク状要素と、
前記検出軸に対して垂直な、導電材料の薄い板で形成される電極であって、2つの前記ディスク状要素の前記第1の面は、前記電極の反対側の面に接触している、電極と、
導電性材料の2つの支持要素であって、それぞれの支持面は、前記ディスク状要素のそれぞれの第2の面に支えられている、2つの支持要素とを備える、
項目1から4のいずれか1項に記載の油圧システム。
(項目6)
前記弾性要素は、前記一体型ダイヤフラムと、前記支持要素の1つの面との間で前記検出軸の方向に圧縮される、
項目5に記載の油圧システム。
(項目7)
前記圧電センサは、前記電極の外側で前記検出軸と同軸に配置される環形状の絶縁要素を有し、前記絶縁要素は、前記ディスク状要素の外縁および前記電極の外縁に面する内側表面を有する、
項目5に記載の油圧システム。
(項目8)
前記絶縁要素は、前記検出軸の方向の寸法が、前記2つの支持要素の前記支持面の間の距離より短く、1つの支持要素の前記支持面の外周部分に支えられているベース面を有する、
項目7に記載の油圧システム。
(項目9)
前記ディスク状要素の両方が圧電素子であり、前記ディスク状要素の前記第1の面が陽極端子面で、前記ディスク状要素の前記第2の面が陰極端子面である、
項目5に記載の油圧システム。
(項目10)
前記支持要素のうちの1つは、その下面から、前記検出軸の方向に突出し、前記弾性要素の中央孔に係合する軸方向の突起を有する、
項目5に記載の油圧システム。