IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 二葉産業株式会社の特許一覧

特許7460074線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置
<>
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図1
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図2
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図3
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図4
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図5
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図6
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図7
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図8
  • 特許-線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 13/00 20060101AFI20240326BHJP
   C25D 13/16 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C25D13/00 304
C25D13/00 307D
C25D13/00 307F
C25D13/16 A
C25D13/16 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020080342
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172874
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】505045997
【氏名又は名称】二葉産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠間 敦嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 政史
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-239896(JP,A)
【文献】特開平07-320573(JP,A)
【文献】特開平03-216139(JP,A)
【文献】特開2004-107700(JP,A)
【文献】特開2017-115120(JP,A)
【文献】特開平10-160345(JP,A)
【文献】特表2002-538612(JP,A)
【文献】特開2006-017455(JP,A)
【文献】特開平11-222689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着塗装槽と焼付炉とレーザー剥離機を一列に配置し、電着塗装槽の入口側に配置された送り出し装置から送り出された線状又は帯状のワークを、焼付炉の出口側に配置された巻取り装置で張力を加えて巻き取ることにより、ワークを他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽と焼付炉とを通過させ、ワークの表面への絶縁被膜の電着塗装と焼付を連続的に行い、更に一定速度で移動するワークWに対して、レーザー剥離機から一定時間間隔で間欠的にレーザー光源を照射することにより、ワークWに一定ピッチの導通部を形成することを特徴とする線状又は帯状のワークの電着塗装方法。
【請求項2】
一列に配置された電着塗装槽及び焼付炉と、
電着塗装槽の入口側に配置され、線状又は帯状のワークを送り出す送り出し装置と、
焼付炉の出口側に配置され、ワークを張力を加えて巻き取ることにより、ワークを他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽と焼付炉とを一定速度で通過させる巻取り装置と
焼付炉を通過したワークWに対して、一定時間間隔で間欠的にレーザー光源を照射することにより、ワークWに一定ピッチの導通部を形成するレーザー剥離機とを備えたことを特徴とする線状又は帯状のワークの電着塗装装置。
【請求項3】
電着塗装槽はその入口側壁面と出口側壁面にワークを通過させるスリットを備え、槽内液をポンプアップしながらこれらのスリットから流出させることにより、電着塗装槽の液面をワークの通過位置よりも高くしたことを特徴とする請求項2に記載の線状又は帯状のワークの電着塗装装置。
【請求項4】
焼付炉が赤外線ヒータによりワーク表面の電着塗装膜を加熱する構造であることを特徴とする請求項2又は3に記載の線状又は帯状のワークの電着塗装装置。
【請求項5】
焼付炉と巻取り装置との間に、ワークに対してレーザー光線を照射して電着塗装膜を部分的に剥離するレーザー剥離機を配置し、その前後に冷却ゾーンを形成したことを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の線状又は帯状のワークの電着塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状又は帯状のワークの表面に絶縁被膜を連続的に形成するために用いられる線状又は帯状のワークの電着塗装方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電着塗装技術は自動車ボディ等の塗装技術として、かなり古くから知られている。例えば特許文献1には、自動車ボディをハンガーで吊るして予備電着槽と本電着槽の内部を移動させ、電着塗装を行う方法が記載されている。
【0003】
またワークが線状又は帯状である場合には、特許文献2に示されるように、フープ式の電着塗装装置も知られている。特許文献2に示されるフープ式の電着塗装装置は、送り出し装置から送り出された線状又は帯状のワークを多数のガイドローラを用いて折り曲げながら電着塗装槽内を通過させ、出口側の巻取り装置で巻き取る構造である。
【0004】
しかし線状又は帯状のワークの表面に絶縁被膜を連続的に形成したい場合には、電着塗装された絶縁被膜が焼付け前の状態では非常に傷付き易く、ガイドローラと接触させると容易に剥がれたり接触痕が形成されたりするため、従来型のフープ式の電着塗装装置は用いることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-26696号公報
【文献】特開平3-145187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、線状又は帯状のワークの表面に均一な絶縁被膜を連続的に形成することができる、線状又は帯状のワークの電着塗装方法及び電着塗装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の線状又は帯状のワークの電着塗装方法は、電着塗装槽と焼付炉とレーザー剥離機を一列に配置し、電着塗装槽の入口側に配置された送り出し装置から送り出された線状又は帯状のワークを、焼付炉の出口側に配置された巻取り装置で張力を加えて巻き取ることにより、ワークを他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽と焼付炉とを通過させ、ワークの表面への絶縁被膜の電着塗装と焼付を連続的に行い、更に一定速度で移動するワークWに対して、レーザー剥離機から一定時間間隔で間欠的にレーザー光源を照射することにより、ワークWに一定ピッチの導通部を形成することを特徴とするものである。
【0008】
また上記の課題を解決するためになされた本発明の線状又は帯状のワークの電着塗装装置は、一列に配置された電着塗装槽及び焼付炉と、電着塗装槽の入口側に配置され、線状又は帯状のワークを送り出す送り出し装置と、焼付炉の出口側に配置され、ワークを張力を加えて巻き取ることにより、ワークを他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽と焼付炉とを一定速度で通過させる巻取り装置と、焼付炉を通過したワークWに対して一定時間間隔で間欠的にレーザー光源を照射することにより、ワークWに一定ピッチの導通部を形成するレーザー剥離機とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
なお、電着塗装槽はその入口側壁面と出口側壁面にワークを通過させるスリットを備え、槽内液をポンプアップしながらこれらのスリットから流出させることにより、電着塗装槽の液面をワークの通過位置よりも高くした構造とすることができる。また、焼付炉が赤外線ヒータによりワーク表面の電着塗装膜を加熱する構造であることが好ましい。さらに、焼付炉と巻取り装置との間に、ワークに対してレーザー光線を照射して電着塗装膜を部分的に剥離するレーザー剥離機を配置し、その前後に冷却ゾーンを形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電着塗装槽の入口側に配置された送り出し装置から送り出された線状又は帯状のワークを、焼付炉の出口側に配置された巻取り装置で張力を加えて巻き取ることにより、ワークを給電用ローラ以外の他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽と焼付炉とを通過させるので、ワークの表面に電着塗装された絶縁被膜を何物にも接触させることなく焼付けることができる。このため、線状又は帯状のワークの表面に均一な絶縁被膜を連続的に形成することができる。また、一定速度で移動するワークWに対して、レーザー剥離機から一定時間間隔で間欠的にレーザー光源を照射することにより、ワークWに一定ピッチの導通部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態を示す正面図である。
図3】電着塗装槽の平面図である。
図4】電着塗装槽の正面図である。
図5】電着塗装槽の断面図である。
図6】要部の斜視図である。
図7】焼付炉の平面図である。
図8】焼付炉の断面図である。
図9】レーザー剥離機の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。
先ず図1図2により、実施形態のフープ式の電着塗装装置の全体構成を説明する。
【0013】
これらの図において、10は電着塗装槽、11はその後段に配置された焼付炉である。これらの電着塗装槽10と焼付炉11は、一列に配置されている。12は電着塗装槽10の入口側に配置された送り出し装置であり、線状又は帯状のワークWを送り出す装置である。本実施形態ではワークWは銅線であり、送り出し装置12としてはアンコイラーが用いられている。しかしワークWは必ずしも線材に限られるものではなく、連続的に巻き取ることが可能であれば、帯状のものであってもよい。送り出し装置12はブレーキを掛けながらワークWを送り出している。
【0014】
13は焼付炉11の出口側に配置された巻取り装置であり、送り出し装置12から送り出されたワークWを張力を加えて巻き取る装置である。図1に示すように、この巻取り装置13は巻取りローラ14と張力調整機構15とを備え、送り出し装置12から送り出されたワークWに適切な張力を加えることにより、ワークWを弛ませることなく直線状に維持しながら移動させる機能を持つ。このため、ワークWを他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽10と焼付炉11とを通過させることができる。張力調整機構15は一対のローラ間でワークWを挟む構造であり、ワークWの張力はこの張力調整機構15の回転制御と、送り出し装置12側のブレーキとにより一定に制御されている。
【0015】
なお図示の実施形態においては、送り出し装置12と電着塗装槽10との間に前処理槽16が設けられている。前処理槽16ではワークWの表面に付着した汚れや油分等が除去される。しかし前処理槽16は必要に応じて設置されるものであり、本発明の必須構成要素ではない。
【0016】
図3図6に示すように、電着塗装槽10は外側槽18と内側槽19の二重構造となっており、上記したように一直線に張られたワークWを非接触状態で通過させることができるように、各槽の入口側壁面と出口側壁面にワークを通過させるスリット20が形成されている。電着塗装槽10の入口には給電用ローラ21が設けられ、ワークWはこの給電用ローラ21を通過した後は巻取り装置13に達するまで、他の物体と接触することがない。この実施形態の給電用ローラ21はメインローラ21aとその側方に配置された2個の補助ローラ21bとからなり、線状又は帯状のワークWをこれらのローラ間で押圧しながら給電している。しかし線状又は帯状のワークWに給電可能であれば、この構造に限定されるものではない。
【0017】
内側槽19の内部には複数枚の電極板22が配置されている。また外側槽18と内側槽19の内部は電着塗装液で満たされている。電着塗装槽10の下部側方にはポンプ23が設置されており、図5に示すように外側槽18から吸引した電着塗装液を吐出口24から内側槽19の底面に供給している。内側槽19に供給された電着塗装液はスリット20から外側槽18に流下し、ポンプ23で循環される。
【0018】
このように槽内液である電着塗装液をポンプアップしながらこれらのスリット20から流出させることにより、電着塗装槽10の内側槽19の液面をワークWの通過位置よりも高くしている。このため一直線に張られてスリット20の内部を通過するワークWは、電着塗装液に浸漬された状態のまま内側槽19の内部を通過することとなり、その間にワークWの表面に絶縁被膜が電着塗装される。
【0019】
焼付炉11の内部には、多数の赤外線ヒータ25が配置されており、ワークWの表面の電着塗装膜を急速加熱して焼き付けを行う。赤外線ヒータ25は図8に示すようにワークWを挟むように両側に配置されている。また長手方向にも複数組が配置されている。この実施形態では4組の赤外線ヒータ25が配置され、ワークWを200℃程度に加熱する。しかし赤外線ヒータ25の組数や温度は、ワークWのサイズや電着塗装膜の種類等に応じて、適宜設定することができる。
【0020】
この実施形態で用いた赤外線ヒータ25はセラミック板の内部にニクロム線のような電熱抵抗体を埋設し、電着塗装膜の吸収波長に合致した波長の赤外線を輻射できるものである。図8に示すようにセラミック板は弯曲させておき、輻射熱がワークWに集中するようにしておくことが好ましい。炉内温度は複数の温度センサ26により検出され、4組の赤外線ヒータ25の出力を調節する。
【0021】
このような構造を採用することにより焼付炉11の全長を短縮し、焼付炉11の内部においてもワークWを非接触状態で通過させる。ワークの断面積や材質にも依るが、焼付炉11の全長が長くなるとワークWが自重により垂れ下がり、ワークWを他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽10と焼付炉11とを通過させることが難しくなる。このため、赤外線ヒータ25の出力を高めて焼付炉11の全長をできるだけ短縮し、対向配置した赤外線ヒータ25の間を直線状態を維持したままワークWを通過させるようにすることが好ましい。
【0022】
このようにして焼付炉11を通過する間に電着塗装膜は焼き付けられて均一の強い被膜となるので、巻取り装置13で巻き取ることができる。
【0023】
なおこの実施形態では、焼付炉11と巻取り装置13との間に、ワークWに対してレーザー光線を照射して電着塗装膜を部分的に剥離するレーザー剥離機17が配置されている。レーザー剥離機17は図9に示すようにボックスの内部にレーザー光源27を配置したもので、図9ではワークWの両側からレーザー光線を照射し、ワークWの両側の電着塗装膜を剥離する。これによってワークWの金属線を部分的に露出させた導通部28を形成することができる。一定速度で移動するワークWに対して一定時間間隔で間欠的にレーザー光源27を照射することにより、ワークWに一定ピッチの導通部28を形成することができる。なおワークWの片面に導通部28を形成する場合には、レーザー光源27は片側のみ作動させればよい。
【0024】
このレーザー剥離機17の前後の部分は冷却ゾーン29として利用することができ、この実施形態では自然放冷によりワークWを冷却しているが、冷却ゾーン29に冷却装置を設置して強制冷却を行うことも可能である。
【0025】
以上に説明したように本発明によれば、線状又は帯状のワークWを他の物体と接触させない直線状態を維持したまま電着塗装槽10と焼付炉11とを通過させることにより、ワークWの表面に均一な絶縁被膜を連続的に形成することができる。
【符号の説明】
【0026】
W ワーク
10 電着塗装槽
11 焼付炉
12 送り出し装置
13 巻取り装置
14 巻取りローラ
15 張力調整機構
16 前処理槽
17 レーザー剥離機
18 外側槽
19 内側槽
20 スリット
21 給電用ローラ
21a メインローラ
21b 補助ローラ
22 電極板
23 ポンプ
24 吐出口
25 赤外線ヒータ
26 温度センサ
27 レーザー光源
28 導通部
29 冷却ゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9