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特許7460096竪型ごみ焼却炉及び竪型ごみ焼却炉の燃焼方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】竪型ごみ焼却炉及び竪型ごみ焼却炉の燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20240326BHJP
   F23C 9/08 20060101ALI20240326BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20240326BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F23G5/50 H
F23C9/08 402
F23C99/00 323
F23C99/00 332
F23J15/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023006224
(22)【出願日】2023-01-18
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000136804
【氏名又は名称】株式会社プランテック
(74)【代理人】
【識別番号】100209129
【弁理士】
【氏名又は名称】山城 正機
(72)【発明者】
【氏名】勝井 征三
(72)【発明者】
【氏名】勝井 基明
(72)【発明者】
【氏名】武山 彰宏
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-190364(JP,A)
【文献】特開2022-025655(JP,A)
【文献】特開2021-156492(JP,A)
【文献】実開昭58-066209(JP,U)
【文献】特開昭61-076815(JP,A)
【文献】国際公開第2008/143074(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/056650(WO,A1)
【文献】特開2007-285553(JP,A)
【文献】特開2004-190981(JP,A)
【文献】実開昭58-125705(JP,U)
【文献】国際公開第2009/060885(WO,A1)
【文献】特開2020-197356(JP,A)
【文献】特開2010-175157(JP,A)
【文献】特開2009-236356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23C 9/08
F23C 99/00
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略重力方向に延伸する略筒状の形状を呈する炉本体、
前記炉本体の底部に向けて廃棄物を投入するごみ投入手段、
前記底部に設けられ上方に前記廃棄物を堆積させる灰排出手段、
前記灰排出手段の下方から理論空気比未満の一次燃焼空気を供給することで、下段から灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層される層状反応ゾーン、
前記層状反応ゾーンの上方において前記一次燃焼空気との合計の空気比が1.0以下となるよう二次燃焼空気を供給する二次燃焼空気供給部を備えるとともに当該二次燃焼空気供給部よりも所定距離上方において二次燃焼により発生した燃焼排ガスを炉内横断面略全域にわたって混合するガス整流装置を配設することにより当該ガス整流装置の下方に形成される高温燃焼ゾーン、
を有することを特徴とする竪型ごみ焼却炉。
【請求項2】
前記ガス整流装置の上方において、前記一次燃焼空気及び前記二次燃焼空気との合計の空気比が1.2以下となるよう調整された追加空気、及び、前記燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させず当該燃焼排ガスを冷却する混合流体を供給することで形成されるガス混合ゾーンをさらに備え、
前記ガス混合ゾーンで燃焼され冷却された燃焼排ガスが前記炉本体の頂部から排出される、
請求項1に記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項3】
前記燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させない混合流体として水を使用する、
請求項2に記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項4】
前記燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させない混合流体として浄化後の燃焼排ガスを再循環させた再循環ガスを使用する、
請求項2に記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項5】
前記ガス整流装置が中空構造の耐火物によって構成され、前記中空構造を冷却媒体が流通する、
請求項1~4のいずれかに記載の竪型ごみ焼却炉。
【請求項6】
略重力方向に延伸する略筒状の形状を呈する炉本体の底部に向けて廃棄物を投入し、前記底部に設けられた灰排出手段の上方に廃棄物を堆積させるステップ、
前記灰排出手段の下方から理論空気量未満の一次燃焼空気を供給することで、下段から灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層される層状反応ゾーンを形成するステップ、
前記層状反応ゾーンの上方において前記一次燃焼空気との合計の空気比が1.0以下となるよう二次燃焼空気を供給するとともに当該二次燃焼空気の供給により発生する燃焼排ガスを炉内横断面略全域にわたって混合することで当該混合する領域の下方に高温燃焼ゾーンを形成するステップ、
を有することを特徴とする竪型ごみ焼却炉の燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型ごみ焼却炉及び竪型ごみ焼却炉の燃焼方法に関し、特に、ごみ焼却炉から排出される燃焼排ガス中の未燃ガスを完全燃焼し、ダイオキシン類等の微量有害有機物を分解すると共に窒素酸化物を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、都市ごみや産業廃棄物を焼却処理するためには、高温の焼却炉内に燃焼用空気などの酸化剤を吹き込み完全燃焼し、ダイオキシン類等を分解する。ダイオキシン類を分解するためには、高温状態を生成することが必要である一方で、高温下で酸素が過剰に存在すると、廃棄物に含まれる窒素と酸化剤に含まれる酸素が化学反応を起こすことで窒素酸化物(フューエルNOx)が発生する。また、高温燃焼領域においては、燃焼用空気中に含まれる窒素と酸素が反応することによって窒素酸化物(サーマルNOx)が発生する。廃棄物の焼却に伴い発生したダイオキシン類や窒素酸化物は公害を引き起こす原因物質となるため、国や地方自治体による排出基準が設けられている。
【0003】
煙突から排出される燃焼排ガス中のダイオキシン類濃度を排出基準以下に低減するためにろ過式集じん器入口で活性炭を吹き込んだ入り、触媒により分解する方法が適用されている(特許文献1)。
【0004】
また、煙突から排出される燃焼排ガス中の窒素酸化物濃度を排出基準以下に低減する技術としては、焼却脱硝触媒を用いてアンモニアと反応させ分解する技術が知られている(特許文献2)。
【0005】
このように、排ガス処理装置としてダイオキシン類及び窒素酸化物を除去するための装置を設置することは、効果的にこれらを低減できる一方で、別途そのための装置を設置するためのスペースが必要となり、また除去のための薬剤が必要となる。
【0006】
そこで、発生した後のダイオキシン類や窒素酸化物を分離回収するのではなく、相反する条件で生成するダイオキシン類と窒素酸化物を同時に抑制する廃棄物焼却技術が望まれている。
【0007】
窒素酸化物は酸素が過剰な状態(酸化雰囲気)で燃焼反応が生じることで発生するため、酸素が不足した状態(還元雰囲気)で燃焼反応を生じさせることで、発生を抑制することができる。
【0008】
ここで、図1に、焼却炉において廃棄物を焼却するために用いられる燃焼用空気(温度は300℃と仮定)の空気比と燃焼排ガス温度の関係を示す。空気比1.0は投入された廃棄物を完全燃焼させるために必要な空気を投入したケースを示し、空気比1.0以下では酸素不足の状態、空気比1.0以上では酸素過剰の状態となる。図1に示すように、理論的には、発熱量が一定であると仮定すると空気比が1.0に近いほど燃焼排ガス温度が上がり、空気比が1.0を超えると燃焼排ガス温度が下がる。これは、過剰に供給された空気は燃焼反応に寄与せず、低温のまま燃焼排ガスに混合されるためである。しかしながら、実際には、廃棄物は性状が不均一でしかも焼却炉内に分散して存在するため、空気比を1.0とすると未反応の廃棄物が残存してしまう。そのため、通常では空気比を1.3~2.0として運転するが、酸素が過剰な状態で燃焼反応が進行するため、窒素酸化物が多量に発生することとなる。
【0009】
次に、代表的な炉形式の焼却炉における燃焼用空気の空気比について言及する。
【0010】
例えば、前後又は左右方向に複数配設された火格子の前後の往復運動に伴い、廃棄物が前方に移動しながら徐々に乾燥及び燃焼する型式の焼却炉であるストーカ式焼却炉は、比較的単純な構造でありながら、投入されるごみの水分や発熱量によらず大量の廃棄物を処理することができるため、多くの焼却処理施設において採用されている(特許文献3)。
【0011】
ストーカ式焼却炉に配設される火格子は、廃棄物の流れに沿って、上流側から乾燥ストーカ、燃焼ストーカ及び後燃焼ストーカと呼ばれ、それぞれの火格子には、乾燥状態の廃棄物、燃焼状態の廃棄物、及び、後燃焼状態の灰が薄く広く堆積しつつ移送される。そして、それぞれの火格子の下方から乾燥用空気、燃焼用空気及び後燃焼用空気が供給される。廃棄物はそれぞれの火格子上で薄く広く堆積していることから、燃焼に伴い発生する熱の一部は、他の廃棄物の加熱に使われるがほとんどは高温の燃焼排ガスとして焼却炉から排出される。
【0012】
このような形式のストーカ式焼却炉において、発生する窒素酸化物の量を低空気比燃焼を行うことで低減することは困難である。というのも、乾燥用ストーカ、燃焼用ストーカ及び後燃焼用ストーカそれぞれにおいて空気が供給され、燃焼用ストーカでは還元雰囲気が形成されるものの、後燃焼用ストーカでは酸素が過剰な状態であり燃焼用ストーカの燃え切り点付近で大量の窒素酸化物が発生する。
【0013】
このように、ストーカ式焼却炉においては、火格子上に様々な性状の廃棄物が不均一な状態で広く分散して存在しているため、廃棄物を完全に焼却するために過剰な空気を焼却炉内に供給する必要があり、その結果、大量の窒素酸化物を発生させることになる。また、空気を大量に焼却炉に供給して温度を低下させるとダイオキシン類の分解に支障をきたし、焼却炉から排出される燃焼排ガスの流量も膨大なものとなる。
【0014】
一方、高温の流動砂を用いて廃棄物を焼却する流動層式ごみ焼却炉においては。廃棄物が焼却した際に発生する熱は流動砂の昇温に用いられるため、ストーカ式焼却炉とは異なり、燃焼熱を利用して廃棄物を加熱することができる(特許文献4)。しかしながら、流動層式ごみ焼却炉においては、流動砂を流動させるための空気を大量に供給する必要があるため、空気比を下げることは難しい。また仮に、浄化後の燃焼排ガスを再循環させて空気と混合して炉内に供給したとすると、流動媒体の温度を下げることになり、未燃分が発生してダイオキシン類の分解に支障をきたす恐れが生じる。
【0015】
このように、流動層式ごみ焼却炉を用いたとしても、空気比を下げることで窒素酸化物の発生量を低減することと、ダイオキシン類の分解を両立させることは困難である。
【0016】
このように従来から用いられている焼却炉において、酸素不足の状態で燃焼反応を生じさせることで窒素酸化物の発生量を低減しつつダイオキシン類を確実に分解することは困難である。確実に廃棄物を焼却処理するためには多量の燃焼用空気が必要であり、結果として、大量の窒素酸化物が発生するとともに、炉内温度が低下してダイオキシン類を確実に分解することができず、しかも、排ガス量も削減することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特許第6090766号公報
【文献】特開2013-072571号公報
【文献】特開2006-242490号公報
【文献】特開2006-308226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、窒素酸化物の発生を抑制しつつダイオキシン類を確実に分解することが可能で、かつ、排出される燃焼排ガス流量を削減することが可能な竪型ごみ焼却炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の発明者らは、竪型ごみ焼却炉においては廃棄物が略重力方向に積み重ねられることに着目し、その特性を活かすことで、焼却炉からの窒素酸化物の発生を効果的に抑制しつつダイオキシン類を確実に分解することが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0020】
本発明では、以下のような解決手段を提供する。
【0021】
第1の特徴に係る竪型ごみ焼却炉は、略重力方向に延伸する略筒状の形状を呈する炉本体、炉本体の底部に向けて廃棄物を投入するごみ投入手段、底部に設けられ上方に廃棄物を堆積させる灰排出手段、灰排出手段の下方から理論空気比未満の一次燃焼空気を供給することで、下段から灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層される層状反応ゾーン、層状反応ゾーンの上方において一次燃焼空気との合計の空気比が1.0以下となるよう二次燃焼空気を供給する二次燃焼供給部を備えるとともに二次燃焼空気供給部よりも所定距離上方において二次燃焼により発生した燃焼排ガスを炉内横断面略全域にわたって混合するガス整流装置を配設することにより形成される高温燃焼ゾーン、を備える。
【0022】
第1の特徴に係る発明によれば、略重力方向に延伸する略筒状の形状を呈する炉本体において、底部から上方に廃棄物を堆積するとともに、下方から理論空気比未満の一次燃焼空気を供給するため、下段から灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層される層状反応ゾーンが形成される。このとき、層状反応ゾーンには廃棄物が重力方向に積み重ねられているため、廃棄物の燃焼によって生じた熱が上方の廃棄物を加熱することになる。ここで、層状反応ゾーンには理論空気比未満の一次燃焼空気しか供給されていないため、層状反応ゾーンは強還元領域となり、NOx発生を抑制しながら積層された廃棄物を燃焼させることができる。
【0023】
また、乾燥層から発生するガスには未燃ガス成分が含まれるが、層状反応ゾーンの上方において二次燃焼空気を供給することで、層状反応ゾーンで発生する未燃ガス成分を燃焼することができる。このとき供給される二次燃焼空気の流量は、一次燃焼空気と合わせて空気比1.0以下であるため、供給された二次燃焼空気は略全量が未燃ガス成分の燃焼に用いられ、1000℃を超える高温の燃焼排ガスが発生する。さらに、二次燃焼空気供給部の上方において燃焼排ガスを炉内横断面略全域にわたって混合するガス整流装置を有するため、高温の燃焼排ガスが一時的に滞留しつつ均一に混合され、残存する未燃ガス成分が燃焼するため、低空気比と滞留混合の効果により高温燃焼ゾーンを生成することができる。
【0024】
ここで、高温燃焼ゾーンの生成に供される二次燃焼空気の流量は、一次燃焼空気と合わせて空気比1.0以下であるため、高温燃焼ゾーンは弱還元領域あるいは中性領域となり、高温燃焼時に生成されがちなサーマルNOxの発生を抑制しながら未燃ガス成分を燃焼させることができる。
【0025】
しかも、高温燃焼ゾーンにおいては、二次燃焼空気供給部の上方において燃焼排ガスを炉内横断面略全域にわたって混合するガス整流装置を有するため、高温の燃焼排ガスが一時的に滞留しつつ均一に混合され、未燃ガス成分を確実に燃焼させることができ、ダイオキシン類を確実に分解することができる。
【0026】
このように、空気比が約1.0と理論空気比に極めて近いものであっても、未燃ガス成分を下流側に流出させず完全燃焼させることができる。その結果、全体として酸素不足の状態で燃焼が進行し、窒素酸化物の発生を抑制しつつ未燃ガス成分も確実に燃焼しダイオキシン類を確実に分解することが可能な竪型ごみ焼却炉を提供することができる。しかも、炉本体に供給されるトータルの燃焼用空気は空気比1.0以下と少ないため、発生する燃焼排ガスの流量も抑えることができ、竪型ごみ焼却炉以降の排ガス処理装置をコンパクトに形成することができる。
【0027】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、ガス整流装置の上方において、一次燃焼空気及び二次燃焼空気との合計の空気比が1.2以下となるよう調整された追加空気、及び、燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させず燃焼排ガスを冷却する混合流体を供給することで形成されるガス混合ゾーンをさらに備え、ガス混合ゾーンで燃焼され冷却された燃焼排ガスが炉本体の頂部から排出される。
【0028】
第2の特徴に係る発明によれば、ガス整流装置の上方において、一次燃焼空気及び二次燃焼空気との合計の空気比が1.2以下となるよう調整された追加空気を供給することにより、高温燃焼ゾーンで燃焼しきれなかった未燃ガス成分を燃焼することができる。その際、混合流体を供給することでもたらされる撹拌効果によって、少ない追加空気量であっても確実に未燃ガス成分を燃焼することができる。しかも、混合流体は燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させず燃焼排ガスを冷却するものであるから、低空気比を維持しつつ、一般的な炉出口温度となるまで燃焼排ガスを冷却することができる。また、燃焼排ガスの冷却が略重力方向に延伸する略筒状の炉本体内で行われるため、冷却のためのスペースを別途用意する必要もなく、廃棄物の焼却から燃焼排ガスの冷却までを少ない設置面積の炉本体内で完結することができる。
【0029】
第3の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させず燃焼排ガスを冷却する混合流体として水を使用する。
【0030】
第3の特徴に係る発明によれば、混合流体として水が使用されるため、冷却効率が高く、その結果、燃焼排ガス流量の増加を抑制しつつ燃焼排ガスを効果的に冷却することができる。
【0031】
第4の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明であって、燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させず燃焼排ガスを冷却する混合流体として浄化後の燃焼排ガスを再循環させた再循環ガスを使用する。
【0032】
第4の特徴に係る発明によれば、混合流体として再循環ガスを使用するため、煙突から排出される燃焼排ガスの流量を実質的に増加させることなく、燃焼排ガスを冷却することができる。
【0033】
第5の特徴に係る発明は、第1~第4のいずれかの特徴に係る発明であって、ガス整流装置が中空構造の耐火物によって構成され、中空構造を冷却媒体が流通する。
【0034】
第5の特徴に係る発明によれば、ガス整流装置を中空構造の耐火物によって構成し、内部に冷却媒体を流通させることにより、ガス整流装置における表面温度の過度な上昇を抑制することができ、ガス整流装置におけるクリンカの付着を防止することができる。また、ガス混合ゾーンにおける混合流体の供給量を低減して、煙突から排出される燃焼排ガスの流量を削減する効果も得られる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、窒素酸化物の発生を抑制しつつダイオキシン類を確実に分解することが可能で、かつ、排出される燃焼排ガス流量を削減することが可能な竪型ごみ焼却炉を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、廃棄物を焼却するために用いられる燃焼用空気の空気比と燃焼排ガス温度の関係を示すグラフである。
図2図2は、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉の燃焼方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0038】
[焼却装置の全体構成]
図2を用いて、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉の全体構成を説明する。なお、本実施形態において、上方とは重力方向上方を指し、下方とは重力方向下方を指す。
【0039】
図2に示すように、本実施形態の竪型ごみ焼却炉10は、不定形の一般廃棄物や、産業廃棄物等の廃棄物を焼却処理するものであり、下方から順に灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が形成されるよう廃棄物が堆積される炉本体1、廃棄物を堆積層に向けて間欠的に投入するごみ投入手段2、上方に廃棄物を堆積させるとともに焼却後の残渣である焼却灰を間欠的に排出する灰排出手段3、堆積された廃棄物を一次燃焼するための一次燃焼空気を炉本体1に供給する一次燃焼空気供給部4、一次燃焼によって発生した可燃ガス成分を燃焼させるための二次燃焼空気を炉本体1に供給する二次燃焼空気供給部5、二次燃焼により発生した燃焼排ガスの排気抵抗になるとともに燃焼排ガスの成分が均等になるよう混合するガス整流装置6、及び、未燃ガス成分を燃焼させるための追加空気及び燃焼排ガスを冷却するための混合流体を供給する混合流体供給部7によって構成される。
【0040】
炉本体1は、略重力方向に延伸する略筒状の形状を呈するものであり、後述するように、底部に堆積された廃棄物を下方から供給される一次燃焼空気で燃焼し、炉頂部から燃焼排ガスを排出するものである。つまり、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉10においては、ガス流れは炉本体1の下方が上流側となり上方が下流側となる上向きの流れを形成する。なお、後述するように、炉本体1上部にはガス混合ゾーン1cが形成されるが、ガス混合ゾーン1cにおける炉本体1は水冷壁によって構成される。
【0041】
ごみ投入手段2は、廃棄物を一時的に貯留するホッパ、ホッパから廃棄物を切り出すコンベヤ、コンベヤから切り出された廃棄物を一時的に保持する多重のゲート、及び、炉本体1内に廃棄物を投入するシュートなどによって構成されており、図示しないごみピットからごみクレーンによってごみ投入手段2に供給された廃棄物を一時的に保持するとともに、炉本体1の底部に設けられた灰排出手段3に向けて間欠的に投入する。
【0042】
灰排出手段3は、炉本体1の底部に設置される開閉可能なダンパやゲートによって構成され、燃焼中の廃棄物を載置するとともに、燃焼後の灰を排出するものである。また、廃棄物を載置することが可能であるだけでなく、後述する一次空気供給部4から供給される一次燃焼空気を貫通させることも可能である。なお、図2においては、灰排出手段3としてダンパによって構成されるものを示しているが、これに限ったものではない。
【0043】
一次燃焼空気供給部4は、図示しない送風機、通風路及び空気予熱器等によって生成された一次燃焼空気を、炉本体1の下部でかつ灰排出手段3の下方から炉本体1に供給するものである。
【0044】
二次燃焼空気供給部5は、図示しない送風機、通風路、空気予熱器等によって生成された二次燃焼空気を、一次燃焼によって発生した可燃ガス成分を燃焼させるために、炉本体1の中腹部であって、廃棄物が堆積する位置よりも上方に供給するものである。
【0045】
ガス整流装置6は、二次燃焼空気の供給によって発生した燃焼排ガスの排気抵抗となるとともに燃焼排ガスの成分が均等になるよう混合するためのものであり、二次空気供給部5が配設される高さから所定距離だけ上方に隔てて配置され炉本体1の炉内横断面略全域を覆う耐火物製の蓋部、及び、蓋部に形成される図示しない複数のガス流通部によって構成される。なお、ガス整流装置6通過後の燃焼排ガスが旋回流を形成するような蓋部及びガス流通部の構成としてもよい。また、ガス整流装置6の蓋部を形成する耐火物の内部を中空構造として、中空構造に冷却媒体が流通可能な流路を設ける構成としてもよい。中空構造に流通される冷却媒体としては、水又は炉本体1に供給される前の一次燃焼空気及び/又は二次燃焼空気が用いられる。冷却媒体として一次燃焼空気及び/又は二次燃焼空気が用いられる場合、ガス整流装置6は燃焼用空気を予熱する空気予熱器としても機能する。
【0046】
混合流体供給部7は、ガス整流装置6の上方に設けられ、炉本体1内に未燃ガス成分を燃焼させるための追加空気、及び、燃焼排ガスを冷却するための混合流体を供給するものである。燃焼排ガスを冷却するための混合流体としては、燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させない媒体、具体的には水、もしくは、図示しない排ガス処理手段によって浄化された後の燃焼排ガスを循環させた再循環排ガスが使用される。混合流体供給部7は、竪型ごみ焼却炉1から排出された排ガスの温度を900℃程度以下まで減温するものである。
【0047】
図示しない制御装置は、状況に応じて、一次燃焼空気供給部4から供給される一次燃焼空気の供給量の調整、二次燃焼空気供給部5から供給される二次燃焼空気量の供給量の調整、混合流体供給部7から供給される追加空気や混合流体の供給量の調整、ごみ投入装置2によって廃棄物を投入する間隔調整、灰排出手段3によって焼却灰を排出する間隔調整等を行う。
【0048】
また、炉本体1には、図示しない助燃バーナが配設されており、例えば長期間のメンテナンス後など、炉内温度が低下している場合の立ち上げ運転時などにおいて、補助燃料を燃焼することにより、炉内を昇温し立ち上げ運転を補助するようになっている。
【0049】
なお、炉本体1頂部の排出口から排出された後の燃焼排ガスは、バグフィルタなど図示しない排ガス処理装置を用いて酸性ガス成分やばいじん等の不純物が除去されたのち、煙突から排出される。
【0050】
上記のような配置により、炉本体1には、灰排出手段3の上方において、ガスの流れに沿って、下方から順に灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層されるよう廃棄物が堆積される層状反応ゾーン1aと、層状反応ゾーン1aの上方、具体的には二次燃焼空気供給部5とガス整流装置6との間において、層状反応ゾーン1aで発生した可燃ガス成分を燃焼させる高温燃焼ゾーン1bと、ガス整流装置6の上方において未燃ガス成分を燃焼させるとともに燃焼排ガスを冷却するガス混合ゾーン1cとが形成される。また、ガス混合ゾーン1cの上方であって炉本体1の頂部には燃焼排ガスが排出される排出口が設けられる。
【0051】
このように構成された竪型ごみ焼却炉10においては、理論空気比未満の一次燃焼空気が灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層を順に通ることにより、廃棄物の乾燥から焼却を行うが、そのメカニズムについて説明する。
【0052】
まず、一次燃焼空気供給部4を用いて灰排出手段3を介して供給される一次燃焼空気は灰層を通過後、燃焼層で酸素を消費することで廃棄物中の可燃物を燃焼し、燃焼排ガスとなる。燃焼層で廃棄物を燃焼することで発生した燃焼排ガスは、酸素が消費された高温の不活性ガスであるため、炭化層において不活性雰囲気下で廃棄物を熱分解する。炭化層において廃棄物が熱分解されることによって発生した不活性の熱分解ガスは、乾燥層においてごみ投入手段2から投入された廃棄物を乾燥する。そして、廃棄物が乾燥された後の乾燥層からは水分を含んだ熱分解ガスが排出される。
【0053】
以上のようなメカニズムにより、炉本体1の下方から供給された理論空気比未満の一次燃焼空気が灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層を生成し、層状反応ゾーン1aでは燃焼熱を用いて積極的に熱分解を行い、熱分解によって発生した熱分解ガスを用いて廃棄物の乾燥を行う。そして、一次燃焼空気との合計の空気比が1.0以下となるよう調整された二次燃焼空気が二次燃焼供給部5から供給されることにより、廃棄物の堆積層から発生したガス中の可燃ガス成分を撹拌・混合して燃焼させる構成となっている。
【0054】
また、二次燃焼空気供給部5の上方には所定処理だけ隔ててガス整流装置6が配設されており、二次燃焼空気の供給によって発生した燃焼排ガス中に残留する有害成分を完全に燃焼するために、燃焼排ガスを混合する。また、本実施形態に係るガス整流装置6は炉内横断面略全域を覆う蓋部を有することから燃焼排ガスに対する排気抵抗にもなるため、燃焼排ガスを所定時間にわたって1000℃を超える高温状態に保持する高温燃焼ゾーン1bを形成する。このように、低空気比でありながらも、ダイオキシン類生成の前駆物質である未燃炭素類及び悪臭の原因となる未燃ガス等を高温燃焼ゾーン1bで完全燃焼する。
【0055】
さらに、ガス整流装置6の上方には混合流体供給部7が配設されており、炉本体1に供給される燃焼用空気の総空気比が1.2以下となるよう調整された追加空気を供給することで、高温燃焼ゾーン1bで燃焼しきらなかった未燃ガス成分を燃焼させる。また、混合流体供給部7からは、水、又は、排ガス処理手段によって浄化された後の燃焼排ガスを循環させた再循環排ガスからなる混合流体が供給され、燃焼排ガスと追加空気を攪拌・混合するガス混合ゾーン1cを形成する。このように、水又は浄化後の再循環排ガスという、実質的に酸素濃度を増加させない媒体を供給することで、低空気比を維持しつつも、混合流体による攪拌・混合の効果によってガス混合ゾーン1cで未燃ガス成分を完全燃焼させる。また、混合流体は燃焼排ガスを冷却する効果もあるため、一般的な焼却炉の出口温度と同等の温度まで燃焼排ガスを冷却したうえで排出することが可能となる。
【0056】
このとき、ガス混合ゾーン1cにおける炉本体1は水冷壁によって構成される。ガス混合ゾーン1cにおける炉本体1を水冷壁とすることにより、水冷壁による冷却効果によって、より少ない混合流体で同等の冷却効果を得ることができ、結果として、燃焼排ガス流量を低減することができる。
【0057】
なお、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉10において、一次燃焼空気の空気比は0.35~0.5程度であり、従来のストーカ式焼却炉における一次燃焼空気の空気比(0.8~1.0程度)と比べて、1/3~1/2倍程度の空気比である。また、二次燃焼空気の空気比は0.5~0.65程度であり、追加空気の空気比は0.2~0.3程度である。一次燃焼空気及び二次燃焼用空気の合計の空気比が1.0以下となるよう、また、炉本体1に供給される燃焼用空気の総空気比が1.2以下となるよう、一次燃焼空気供給部4、二次燃焼空気供給部5及び混合流体供給部7から供給される燃焼用空気の供給量が調整される。
【0058】
[竪型ごみ焼却炉10における燃焼フロー]
次に、図3を用いて、本実施形態に係る竪型ごみ焼却炉10を用いた燃焼方法の流れについて説明する。なお、すでに炉本体1内は廃棄物を焼却するのに十分な温度まで昇温されており、炉本体1の底部においては廃棄物の焼却が進行している定常運転の状態であるものとする。
【0059】
まず、図示しない制御装置は、適宜のタイミングでごみ投入手段2を駆動して炉本体1の底部に向けて廃棄物を投入し、底部に設けられた灰排出手段3の上方に廃棄物を堆積させる(ステップS100)。
【0060】
次に、制御装置は、灰排出手段3の下方から理論空気量未満の一次燃焼空気を供給することで、下段から灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層される層状反応ゾーン1aを形成する(ステップS110)。
【0061】
そして、制御装置は、層状反応ゾーン1aの上方において一次燃焼空気との合計の空気比が1.0以下となるよう二次燃焼空気の供給量を調整する。このとき、炉内横断面略全域にわたって混合するようガス整流装置6が配設されているため、当該二次燃焼空気の供給により発生する燃焼排ガスが一時的に滞留して混合され、燃焼排ガス温度が、クリンカが発生しない程度でかつ可燃ガス成分を効果的に燃焼することが可能な温度に維持される高温燃焼ゾーン1bを形成する(ステップS120)。
【0062】
そして、制御装置は、ガス整流装置6の上方における混合流体供給部7から、炉本体1に供給される総空気比が1.2以下となるよう調整された追加空気、及び、燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させない混合流体を供給することでガス混合ゾーン1cを形成する(ステップS130)。ガス混合ゾーン1cにおいては、高温燃焼ゾーン1bで燃え切らなかった未燃ガス成分が追加空気によって燃焼されるとともに、混合流体の供給によって燃焼排ガスは約900℃にまで冷却される。
【0063】
ガス混合ゾーン1cで十分に冷却された燃焼排ガスは、炉本体1の頂部に設けられた排出口から排出される(ステップS140)。
【0064】
このように構成された竪型ごみ焼却炉10の燃焼方法によれば、略重力方向に延伸する略筒状の形状を呈する炉本体1において、底部から上方に廃棄物を堆積するとともに、下方から理論空気比未満の一次燃焼空気を供給するため、下段から灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層される層状反応ゾーン1aが形成される。このとき、層状反応ゾーン1aには廃棄物が重力方向に積み重ねられているため、廃棄物の燃焼によって生じた熱が上方の廃棄物を加熱することになる。ここで、燃焼層においては、局所的には廃棄物に含まれるN分が中間生成物HCNを経てNOに転換されるものの、層状反応ゾーン1aには理論空気比未満の一次燃焼空気しか供給されていないため、層状反応ゾーン1a、特に炭化層、乾燥層及びその上方は強還元領域となり、N分から転換されたNOを還元することができる。このように、層状反応ゾーン1aにおいてはNOxの発生を抑制しながら積層された廃棄物を燃焼させることができる。
【0065】
また、層状反応ゾーン1aの乾燥層から発生するガスには未燃ガス成分が含まれるが、層状反応ゾーン1aの上方において二次空気を供給することで、層状反応ゾーン1aで発生する未燃ガス成分を燃焼する。このとき供給される二次燃焼空気の流量は、一次燃焼空気と合わせて空気比1.0以下に調整されているため、二次燃焼空気が炉内を冷却することはなく、供給された二次燃焼空気は略全量が未燃ガス成分の燃焼に用いられ、クリンカが発生しない程度の高温の燃焼排ガスが発生する。さらに、二次燃焼空気供給部5の上方において燃焼排ガスを炉内横断面略全域にわたって混合するガス整流装置6を有するため、高温の燃焼排ガスが一時的に滞留しつつ均一に混合され、残存する未燃ガス成分が燃焼するため、低空気比と滞留混合の効果により高温燃焼ゾーン1bを生成することができる。二次燃焼空気の供給量は一次燃焼空気と合わせて空気比1.0以下に調整されているため、高温燃焼ゾーン1bは弱還元領域あるいは中性領域となり、ガス中の未燃ガス成分は二次燃焼空気中の酸素と反応して炭化水素ラジカルCHとなってNOをHCNに還元する。このようにして、高温燃焼時に生成されがちなサーマルNOxの発生を抑制しながら未燃ガス成分を燃焼させることができる。しかも、還元領域を生成するのに外部から燃料を供給する必要もなく、発生した熱分解ガス中の未燃ガス成分を利用して還元領域を生成することができる。
【0066】
ここで、本発明においては一次燃焼空気及び二次燃焼空気の合計の空気比が約1.0以下と低いため、窒素酸化物の発生量を抑制することができる一方で、ダイオキシン類発生の原因となる一酸化炭素の発生量が増加する。しかしながら本発明においては、高温燃焼ゾーン1bを形成して高温状態を維持することにより、ダイオキシン類の前駆体を燃焼することができ、結果としてダイオキシン類発生を抑制することができる。
【0067】
さらに、高温燃焼ゾーン1bの上方において追加空気を供給することで、高温燃焼ゾーン1bで燃え切らなかった未燃ガス成分を燃焼する。このとき供給される追加空気の流量は、一次燃焼空気及び二次燃焼空気と合わせて空気比1.2以下に調整されているため、低空気比を維持しながら未燃ガス成分を燃焼する。ここで、追加空気と併せて、酸素濃度を実質的に増加させない混合流体を供給することにより、ガス混合ゾーン1cを生成する。ガス混合ゾーン1cにおいては、混合流体供給に伴う撹拌効果によって、少ない追加空気量であっても確実に未燃ガス成分を燃焼することができる。また、ガス混合ゾーン1cにおいては、HCNはN2の生成反応とNOの再生反応を同時に行うが、ガス混合ゾーン1cの温度は900℃程度であり、空気比も1.2以下と低く調整されているため、NOの再生反応よりもN2の生成反応が主となり、NOxの生成を抑制しつつ未燃ガス成分を燃焼することができる。
【0068】
このように、総空気比が約1.2以下と理論空気比に近いものであっても、未燃ガス成分を下流側に流出させず完全燃焼させることができる。その結果、全体として酸素不足の状態で燃焼が進行し、窒素酸化物の発生を抑制しつつ未燃ガス成分も確実に燃焼しダイオキシン類を確実に分解することが可能な竪型ごみ焼却炉10の燃焼方法を提供することができる。しかも、炉本体1に供給されるトータルの燃焼用空気は空気比1.2以下と少ないため、発生する燃焼排ガスの流量も抑えることができ、竪型ごみ焼却炉10以降の排ガス処理装置をコンパクトに形成することができる。
【0069】
しかも、混合流体は燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させず燃焼排ガスを冷却するものであるから、低空気比を維持しつつ、一般的な炉出口温度となるまで燃焼排ガスを冷却することができる。また、燃焼排ガスの冷却が略重力方向に延伸する略筒状の炉本体内で行われるため、冷却のためのスペースを別途用意する必要もなく、廃棄物の焼却から燃焼排ガスの冷却までを少ない設置面積の炉本体内で完結することができる。
【0070】
そして、燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させない混合流体として水を使用した場合、冷却効率が高く、その結果、燃焼排ガス流量の増加を抑制しつつ燃焼排ガスを効果的に冷却することができる。
【0071】
あるいは、燃焼排ガス中の酸素濃度を実質的に増加させない混合流体として浄化後の燃焼排ガスを再循環させた再循環ガスを使用した場合、竪型ごみ焼却炉10から排出された燃焼排ガスの一部を炉本体1に再循環させるため、実質的に燃焼排ガス流量を増加させずに、燃焼排ガスを冷却することができる。
【0072】
また、ガス整流装置6を中空構造の耐火物によって構成して、内部に冷却媒体を流通させることにより、ガス整流装置6における表面温度の過度な上昇を抑制することができ、ガス整流装置6におけるクリンカの付着を防止することができるとともに、後段における混合流体の供給量を低減して、煙突から排出される燃焼排ガスの流量を削減する効果も得られる。また、ガス整流装置6内部に流通させる冷却媒体として燃焼用空気を使用して空気予熱器として機能させることにより、炉内に供給される前の燃焼用空気を効果的に予熱することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述したこれらの実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0074】
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
この発明の竪型ごみ焼却炉は、家庭ごみ、産業廃棄物、医療廃棄物、下水汚泥等、種々の廃棄物の焼却処理を行うごみ焼却設備に適用することができる。また、本発明の技術は、廃棄物を焼却処理するごみ焼却設備のみならず、バイオマスを含む各種固体燃料を炉本体の下部に堆積させて燃焼する燃焼炉に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 竪型ごみ焼却炉
1 炉本体
1a 層状反応ゾーン
1b 高温燃焼ゾーン
1c ガス混合ゾーン
2 ごみ投入手段
3 灰排出手段
4 一次燃焼空気供給部
5 二次燃焼空気供給部
6 ガス整流装置
7 混合流体供給部

【要約】
【課題】窒素酸化物の発生を抑制しつつダイオキシン類を確実に分解することが可能で、かつ、排出される燃焼排ガス流量を削減することが可能な竪型ごみ焼却炉を提供する。
【解決手段】本発明の竪型ごみ焼却炉は、略重力方向に延伸する略筒状の形状を呈する炉本体1、炉本体の底部に向けて廃棄物を投入するごみ投入手段2、底部に設けられ上方に廃棄物を堆積させる灰排出手段3、灰排出手段の下方から理論空気比未満の一次燃焼空気を供給することで、下段から灰層、燃焼層、炭化層、乾燥層が積層される層状反応ゾーン1a、層状反応ゾーンの上方において前記一次燃焼空気との合計の空気比が1.0以下となるよう二次燃焼空気を供給する二次燃焼供給部5を備えるとともに当該二次燃焼空気供給部よりも所定距離上方において二次燃焼により発生した燃焼排ガスを炉内横断面略全域にわたって混合するガス整流装置6を配設することにより形成される高温燃焼ゾーン1bを有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3