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特許7460127セル連結型雨水貯留装置及びその洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】セル連結型雨水貯留装置及びその洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/03 20060101AFI20240326BHJP
   E03B 3/02 20060101ALI20240326BHJP
   E03B 11/02 20060101ALI20240326BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E03B3/03 B
E03B3/02 Z
E03B11/02 Z
B65D90/00 K
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020063849
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161730
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390013815
【氏名又は名称】学校法人金井学園
(74)【代理人】
【識別番号】100124718
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 建
(74)【代理人】
【識別番号】100136216
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】笠井 利浩
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3167591(JP,U)
【文献】特開2004-150069(JP,A)
【文献】実開昭59-145834(JP,U)
【文献】特開平04-092036(JP,A)
【文献】特開2014-221974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/03
E03B 3/02
E03B 11/02
B65D 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に排水口が設けられると共に内部に雨水を導入する導入口が設けられた水槽を備え、該導入口を介して該水槽に貯留水した雨水を、該排水口から外部へ排水可能な雨水貯留装置において、
内部の水槽と外部とが外壁で画されており、
前記導入口と、前記排水口と、貯留水を吸水するための吸水口と、逆止弁が取り付けられた連通口とが該外壁に穿設されて、該水槽と外部とを接続するセル型雨水タンク(以下、単に「セル」ともいう)が、N個(Nは2以上の自然数)連結されたセル連結型雨水貯留装置であって、
第1セルには、外部から外部雨水を導入する外部雨水導入口がその外壁に穿設されて、外部雨水が該外部雨水導入口を介して第1セルの水槽内部に導入され、
隣接する第kセルと第(k+1)セル(1≦k≦N-1;kは自然数)が、夫々の連通口を介して連結されて通水可能であり、
第kセルの連通口に取り付けられた前記逆止弁により第(k+1)セルから第kセルへの貯留水の逆流を防いで、
第1セルから第Nセル方向に一方向に雨水を流すようにしたセル連結型雨水貯留装置。
【請求項2】
吸水管から吸水した水を、排水管から排水するポンプを備える請求項1に記載のセル連結型雨水貯留装置において、
N個の前記セルは、各水槽内に、前記導入口に接続された洗浄ノズルを備え、
前記ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口に接続され、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続されて、
該吸水管が第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給して、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能な、セル連結型雨水貯留装置。
【請求項3】
N個の前記セルに各々設けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口に電磁バルブが取り付けられ、
該電磁バルブと有線又は無線により接続された制御装置を備えて、
該制御装置が該電磁バルブに開閉信号を送信することにより、該電磁バルブが取り付けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口の開閉を、遠隔制御可能な請求項1に記載のセル連結型雨水貯留装置。
【請求項4】
N個の前記セルに設けられた排水口と導入口と吸水口に夫々取付けられた電磁バルブと、請求項2に記載の洗浄ノズルとポンプとが、共に請求項3に記載の制御装置に有線又は無線により接続されて遠隔制御可能なセル連結型雨水貯留装置において、
前記制御装置が、
第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、該排水口を開いて排水すると共に、
第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口を開き、
前記ポンプにポンピング信号を送信して、該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に供給し、
第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに洗浄信号を送信して該洗浄ノズルを動作させて、
第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能な、セル連結型雨水貯留装置。
【請求項5】
前記水槽の下底部は、下方に突出して最深部を有する凸型下底部であり、該最深部に前記排水口が設けられた、請求項1に記載のセル連結型雨水貯留装置。
【請求項6】
吸水管から吸水した水を、排水管から排水するポンプを備える請求項1に記載のセル連結型雨水貯留装置において、
N個の前記セルは、各水槽内に、前記導入口に接続された洗浄ノズルを備え、
前記ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口に接続され、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続されて、
該吸水管が第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給して、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能であるとともに、
N個の前記セルに各々設けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口に電磁バルブが取り付けられ、
該電磁バルブと有線又は無線により接続された制御装置を備えて、
該制御装置が該電磁バルブに開閉信号を送信することにより、該電磁バルブが取り付けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口の開閉を、遠隔制御可能なセル連結型雨水貯留装置であって、
各セルの各排水口に取り付けられた電磁バルブと有線又は無線により接続された前記制御装置及び前記ポンプを備える機械室を、第Mセル(2≦M≦N;kは自然数)に内蔵し、または、前記セル連結型雨水貯留装置に追加した第(N+1)セルに内蔵する、セル連結型雨水貯留装置。
【請求項7】
N個の前記セルに設けられた排水口と導入口と吸水口に夫々取付けられた電磁バルブと、前記洗浄ノズルと前記ポンプとが、共に前記制御装置に有線又は無線により接続されて遠隔制御可能な請求項6に記載のセル連結型雨水貯留装置において、
前記制御装置が、
第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、該排水口を開いて排水すると共に、
第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口を開き、
前記ポンプにポンピング信号を送信して、該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に供給し、
第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに洗浄信号を送信して該洗浄ノズルを動作させて、
第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能な、セル連結型雨水貯留装置であって、
前記機械室に前記ポンプを備えた、セル連結型雨水貯留装置。
【請求項8】
前記機械室に電源又は蓄電池を備えた、請求項6に記載のセル連結型雨水貯留装置。
【請求項9】
前記セルの外部にソーラーパネルを備え、請求項8に記載の蓄電池に電気エネルギーを供給可能なセル連結型雨水貯留装置。
【請求項10】
第1セルに設けられた外部雨水導入口が雨水分離装置に接続された請求項1に記載のセル連結型雨水貯留装置において、
前記雨水分離装置に接続された外部雨水導入口が設けられ、第1セルとの間に連通口が設けられない初期雨水槽を備える第0セルが、前記N個のセルの他に追加された連結型雨水貯留装置であって、
第0セルには、前記雨水分離装置により選別された初期雨水が前記外部雨水導入口を介して第0セルの水槽内部に導入され、
第1セルには、前記雨水分離装置により選別された初期雨水以外の外部雨水が前記外部雨水導入口を介して第1セルの水槽内部に導入される、セル連結型雨水貯留装置。
【請求項11】
請求項2に記載のセル連結型雨水貯留装置において、第kセルの水槽内を洗浄する洗浄方法であって、
(1)第kセルの排水口を開いて、第kセルの水槽内の貯留水を全て該排水口から排水するステップと、
(2)前記ポンプを動作させて、該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給するステップと、
(3)前記洗浄ノズルが、第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水により第kセルの水槽内を洗浄するステップと、
(4)第kセルの排水口を閉じるステップと、
を含む、セル連結型雨水貯留装置の洗浄方法。
【請求項12】
請求項4に記載のセル連結型雨水貯留装置において、前記制御装置が信号を送信することにより、第kセルの水槽内を洗浄する洗浄方法であって、
(11)前記制御装置が、第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの排水口を開くステップと、
(12)開いた第kセルの排水口から、第kセルの水槽内の貯留水を全て排水するステップと、
(13)前記制御装置が、前記第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口を開ステップと、
(14)前記制御装置が、前記ポンプにポンピング信号を送信して、該ポンプを動作させるステップと、
(15)動作した該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給するステップと、
(16)前記制御装置が、前記洗浄ノズルに洗浄信号を送信して、該洗浄ノズルを動作させるステップと、
(17)動作した該洗浄ノズルが、第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水により第kセルの水槽内を洗浄するステップと、
(18)前記制御装置が第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの排水口を閉じるステップと、
を含む、セル内の洗浄方法。
【請求項13】
縦横の4辺に骨格天井フレームを組んだ長方形の天井フレームを、縦及び/又は横方向に少なくとも1本の補助天井フレームにより複数の長方形に分割した天井フレーム構造と、
長方形を成す4本の骨格架台フレームと少なくとも1本の補助架台フレームとからなる、天井フレーム構造と同形の架台フレーム構造と、
長方形の天井フレーム構造と架台フレーム構造の4隅及び補助架台フレームの両端を夫々骨格サイドフレーム及び補助サイドフレームにより接続するサイドフレーム構造と、
からなる骨格フレーム構造、および、その内部に、
前記架台フレーム構造の補助架台フレームの内点と前記天井フレーム構造の補助天井フレームの内点とを鉛直方向に接続する1又は複数の支柱フレームを含む直方体のタンクフレーム構造に、
骨格天井フレーム、骨格架台フレーム、補助天井フレーム、補助架台フレーム、骨格サイドフレームまたは補助サイドフレームのいずれか4つのフレームにより4方を囲まれる長方形に外部パネルを嵌合させてなり、雨水分離装置と接続されて雨水を注入すると共に、排水口を設けた直方体の雨水タンクにおいて、
前記サイドフレームと前記支柱フレーム間又は2つの前記支柱フレーム間に内部パネルを嵌合させて、直方体の雨水タンクの内部にN個(Nは2以上の自然数)の直方体状の請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のセル連結型雨水貯留装置を構成するセルを形成した、パネル式セル連結型雨水貯留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル連結型雨水貯留装置、パネル式セル連結型雨水貯留装置、及び、その洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化による気候変動が顕著となり、これまでにない豪雨による洪水被害が頻繁に起こっている。その一方で、異常渇水による被害も大きな社会問題になるのは確実であり、国内では大地震等による被災時の給水も大きな問題となっている。
【0003】
雨水貯留槽は貯留水量で(1)雨水タンク(~数百L)(2)小型(~数m)(3)中型(~数百m)(4)大型(~数万m)に分類される。この中で現在商流があるのは、(1)と(4)(ドーム球場のような大型施設に多数例有)であり(2)、(3)は非常に少ない。しかしながら今後の気候変動への対応や「水循環基本法」や「雨水の利用の推進に関する法律」の基本方針改定(今年度実施)の流れから次のターゲットとして、(3)の中型雨水貯留槽の導入が進むと考えられる。
【0004】
(3)の中型雨水貯留槽としては、パネル型雨水貯留槽などがある。パネル型雨水貯留槽は、図6(a)のように、縦横の4辺に骨格天井フレーム12を組んだ長方形に補助天井フレーム14により補強した天井フレーム構造10と、これと同形で4本の骨格架台フレーム22と補助架台フレーム24とからなる架台フレーム構造20と、これら天井フレーム構造10と架台フレーム構造20とを骨格サイドフレーム32、補助サイドフレーム34により接続した骨格フレーム構造3の各外面のフレーム間に、外部パネル4を嵌合させてなり、雨樋や雨水分離装置などと接続して雨水を注入すると共に、排水口を設けた直方体の貯留槽である。パネル型雨水貯留槽は、特許文献1に、雨水タンクの貯水量を容易に変えることのできる組立て式雨水タンクが開示されているように、パネル式であるので、大きさや形状をある程度自由に設定することができるという利点がある。
【0005】
このようなパネル型雨水貯留槽は、図6(b)のように、天井フレーム構造10を支持する複数の支柱フレーム36を含む場合もあるが、その内部構造は基本的には単に貯水するための空間であり、特にその他の機能を持たない。したがって、数百mの大量の雨水を貯水することができるが、その水質は基本的に一定で、散水用、トイレ洗浄水用、飲用水用などの要求水質に対応することは難しい。
【0006】
このような要求水質への対応のように、雨水を雨水タンクに溜めて何らかの用途に利用する場合、最も問題となるのがその水質である。タンク内の雨水を使わない期間が続くと水が滞留して水質悪化を招く可能性が高く、定期的なメンテナンスを行わないと、雨水タンク底部には泥状の物質(底泥)が堆積し、タンク内の水質は低下する。基本的にはタンク内の貯留水を抜いた上で内部を洗浄するので、数百m程度貯水可能な中型雨水貯留槽であれば、洗浄などのメンテナンスはコストと労力を要する。そのため、容量の大きい中型の雨水貯留槽は、内部洗浄のため、貯留槽内に浄水ユニットを組み込む場合があるが、この場合でも中型雨水貯留槽内を一斉に洗浄する必要があり、時間とコストを要する。また、その制御機器や浄水装置に必要な電力を確保する必要があり、離島等の僻地や被災時のライフライン途絶時では使用できない。
【0007】
【文献】特開2003-193521号公報
【文献】特許第6667818号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するため、貯留水量、要求水質(散水、トイレ洗浄水、飲用水等)に柔軟に対応でき、貯留槽内の洗浄が容易で、狭小地や不定形地など設置場所の条件に柔軟に対応して設置することができる中型雨水貯留槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、底部に排水口が設けられると共に内部に雨水を導入する導入口が設けられた水槽を備え、該導入口を介して該水槽に貯留した雨水を、該排水口から外部へ排水可能な雨水貯留装置において、
内部の水槽と外部とが外壁で画されており、前記導入口と、前記排水口と、貯留水を吸水するための吸水口と、逆止弁が取り付けられた連通口とが該外壁に穿設されて、該水槽と外部とを接続するセル型雨水タンク(以下、単に「セル」ともいう)が、N個(Nは2以上の自然数)連結されたセル連結型雨水貯留装置であって、
第1セルには、外部から外部雨水を導入する外部雨水導入口がその外壁に穿設されて、外部雨水が該外部雨水導入口を介して第1セルの水槽内部に導入され、
隣接する第kセルと第(k+1)セル(1≦k≦N-1;kは自然数)が、夫々の連通口を介して連結されて通水可能であり、第kセルの連通口に取り付けられた前記逆止弁により第(k+1)セルから第kセルへの貯留水の逆流を防いで、第1セルから第Nセル方向に一方向に雨水を流すようにした。
【0010】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、吸水管から吸水した水を、排水管から排水するポンプを備える上記セル連結型雨水貯留装置において、
N個の前記セルは、各水槽内に、前記導入口に接続された洗浄ノズルを備え、前記ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口に接続され、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続されて、該吸水管が第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給して、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能である。
【0011】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、N個の前記セルに各々設けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口に電磁バルブが取り付けられ、該電磁バルブと有線又は無線により接続された制御装置を備えて、該制御装置が該電磁バルブに開閉信号を送信することにより、該電磁バルブが取り付けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口の開閉を、遠隔制御可能である。
【0012】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、N個の前記セルに設けられた排水口と導入口と吸水口に夫々取付けられた電磁バルブと、上記洗浄ノズルとポンプとが、共に上記制御装置に有線又は無線により接続されて遠隔制御可能なセル連結型雨水貯留装置において、
前記制御装置が、第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、該排水口を開いて排水すると共に、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口を開き、前記ポンプにポンピング信号を送信して、該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に供給し、第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに洗浄信号を送信して該洗浄ノズルを動作させて、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能である。
【0013】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置において、前記水槽の下底部は、下方に突出して最深部を有する凸型下底部であり、該最深部に前記排水口が設けられている。
【0014】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、吸水管から吸水した水を、排水管から排水するポンプを備える上記セル連結型雨水貯留装置において、
N個の前記セルは、各水槽内に、前記導入口に接続された洗浄ノズルを備え、
前記ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口に接続され、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続されて、
該吸水管が第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給して、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能であるとともに、
N個の前記セルに各々設けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口に電磁バルブが取り付けられ、
該電磁バルブと有線又は無線により接続された制御装置を備えて、
該制御装置が該電磁バルブに開閉信号を送信することにより、該電磁バルブが取り付けられた排水口及び/又は導入口及び/又は吸水口の開閉を、遠隔制御可能なセル連結型雨水貯留装置であって、
各セルの各排水口に取り付けられた電磁バルブと有線又は無線により接続された前記制御装置及び前記ポンプを備える機械室を、第Mセル(2≦M≦N;kは自然数)に内蔵し、または、前記セル連結型雨水貯留装置に追加した第(N+1)セルに内蔵する。
【0015】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、N個の前記セルに設けられた排水口と導入口と吸水口に夫々取付けられた電磁バルブと、前記洗浄ノズルと前記ポンプとが、共に前記制御装置に有線又は無線により接続されて遠隔制御可能な上記セル連結型雨水貯留装置において、
前記制御装置が、
第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、該排水口を開いて排水すると共に、
第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口を開き、
前記ポンプにポンピング信号を送信して、該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に供給し、
第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに洗浄信号を送信して該洗浄ノズルを動作させて、
第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄可能な、セル連結型雨水貯留装置であって、
前記機械室に前記ポンプを備え得る。
あるいは、本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、前記機械室に電源又は蓄電池を備えてもよい。
【0016】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、前記セルの外部にソーラーパネルを備え、上記蓄電池に電気エネルギーを供給可能としてもよい。
【0017】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、第1セルに設けられた外部雨水導入口が雨水分離装置に接続された上記セル連結型雨水貯留装置において、
前記雨水分離装置に接続された外部雨水導入口が設けられ、第1セルとの間に連通口が設けられない初期雨水槽を備える第0セルが、前記N個のセルの他に追加された連結型雨水貯留装置であって、
第0セルには、前記雨水分離装置により選別された初期雨水が前記外部雨水導入口を介して第0セルの水槽内部に導入され、第1セルには、前記雨水分離装置により選別された初期雨水以外の外部雨水が前記外部雨水導入口を介して第1セルの水槽内部に導入される。

II.セル連結型雨水貯留装置の洗浄方法
【0018】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置の洗浄方法は、上記セル連結型雨水貯留装置において、第kセルの水槽内を洗浄する洗浄方法であって、
(1)第kセルの排水口を開いて、第kセルの水槽内の貯留水を全て該排水口から排水するステップと、
(2)前記ポンプを動作させて、該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給するステップと、
(3)前記洗浄ノズルが、第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水により第kセルの水槽内を洗浄するステップと、
(4)第kセルの排水口を閉じるステップと、
を含む。
【0019】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置の洗浄方法は、上記セル連結型雨水貯留装置において、前記制御装置が信号を送信することにより、第kセルの水槽内を洗浄する洗浄方法であって、
(11)前記制御装置が、第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの排水口を開くステップと、
(12)開いた第kセルの排水口から、第kセルの水槽内の貯留水を全て排水するステップと、
(13)前記制御装置が、前記第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口を開くステップと、
(14)前記制御装置が、前記ポンプにポンピング信号を送信して、該ポンプを動作させるステップと、
(15)動作した該ポンプの吸水管が第(k+1)セルの吸水口から吸水した貯留水を、該ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された前記洗浄ノズルに供給するステップと、
(16)前記制御装置が、前記洗浄ノズルに洗浄信号を送信して、該洗浄ノズルを動作させるステップと、
(17)動作した該洗浄ノズルが、第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水により第kセルの水槽内を洗浄するステップと、
(18)前記制御装置が第kセルの排水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの排水口を閉じるステップと、
を含む。

III.パネル式セル連結型雨水貯留装置
【0020】
本発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置は、縦横の4辺に骨格天井フレームを組んだ長方形の天井フレームを、縦及び/又は横方向に少なくとも1本の補助天井フレームにより複数の長方形に分割した天井フレーム構造と、方形を成す4本の骨格架台フレームと少なくとも1本の補助架台フレームとからなる、天井フレーム構造と同形の架台フレーム構造と、長方形の天井フレーム構造と架台フレーム構造の4隅及び補助架台フレームの両端を夫々骨格サイドフレーム及び補助サイドフレームにより接続するサイドフレーム構造と、からなる骨格フレーム構造、および、その内部に、
前記架台フレーム構造の補助架台フレームの内点と前記天井フレーム構造の補助天井フレームの内点とを鉛直方向に接続する1又は複数の支柱フレームを含む直方体のタンクフレーム構造に、骨格天井フレーム、骨格架台フレーム、補助天井フレーム、補助架台フレーム、骨格サイドフレームまたは補助サイドフレームのいずれか4つのフレームにより4方を囲まれる長方形に外部パネルを嵌合させてなり、雨水分離装置と接続されて雨水を注入すると共に、排水口を設けた直方体の雨水タンクにおいて、
前記サイドフレームと前記支柱フレーム間又は2つの前記支柱フレーム間に内部パネルを嵌合させて、直方体の雨水タンクの内部にN個(Nは2以上の自然数)の直方体状の請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のセル連結型雨水貯留装置を構成するセルを形成した。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置は、セル型雨水タンク(セル)を連結した構成なので、セルごとに異なる貯留水量、要求水質(散水、トイレ洗浄水、飲用水等)に柔軟に対応でき、設計の自由度を高めることができる。各セルは、大きさや形状を自由に設定できるので、狭小地や不定形地等での設置工事が可能であり、設置場所の条件に柔軟に対応して設置することができる。
【0022】
すなわち、N個のセルを連結した構成の本発明のセル連結型雨水貯留装置は、隣接する第kセルと第(k+1)セル(1≦k≦N-1;N、kは自然数)が、逆止弁が取り付けられた連通口を介して連結され、第1セルから第Nセル方向に一方向に雨水を流すように構成されている。従って、第1セルから第Nセルに向かって、セル内の水槽の水質は自然に高くなり、後方に連結された番号の大きいセルほど、より高い要求水質に対応することができるように配列されている。
【0023】
また、本発明のセル連結型雨水貯留装置は、ポンプの吸水管が第(k+1)セルの水槽から吸水した貯留水を、ポンプの排水管が第kセルの導入口に接続された洗浄ノズルに供給して、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄することができる。したがって、小容量のセルの水槽を、より水質の高い後続のセル内の貯水で洗浄できて経済的であると共に、全てのセル内の洗浄を一斉に行わなくてもよく、順次行えばよいので労力もコストも低減することができる。
【0024】
上記のように、本発明のセル連結型雨水貯留装置は、第1セルから第Nセルに向かってセル内の水槽は高水質となるので、後方に連結された番号の大きいセルの水槽底部には殆ど底泥が堆積しない。従って、底泥が堆積しやすい番号の小さいセルの水槽を定期的に重点的に洗浄すればよく、セル連結型雨水貯留装置全体の洗浄作業を効率化することができる。
【0025】
本発明のセル連結型雨水貯留装置において、上記のような洗浄工程は、制御装置によりポンプやセル内の吸水口や導入口に取り付けた電磁バルブを遠隔制御して、自動化することもできる。本発明のパネル式セル連結型雨水貯留装置は、パネル式のため、貯留槽内に浄水ユニット(機械室)を組み込み、雨水の浄水に必要な機器を一体化することができる。このように、本発明に係る(パネル式)セル連結型雨水貯留装置は、雨水貯留槽の運用上、必須となる底泥除去等の基本的なメンテナンスの自動化により運用コストを低減することができる。
【0026】
本発明に係る(パネル式)セル連結型雨水貯留装置は、これまで排水していた初期雨水についても貯留し、汚水管内の汚物搬送用水等として集水した雨水を全て利活用する。上述のように、セルごとに異なる貯留水量、要求水質(散水、トイレ洗浄水、飲用水等)に柔軟に対応でき、全ての集水した雨水を有効に使用することができる。
【0027】
また、本発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置は、ソーラーパネル付きの上面パネルを採用することにより、制御機器や浄水装置に必要な電力を自給でき、スタンドアローンな雨水を水源とした給水システムとして機能する。従って、 離島等の僻地や被災時のライフライン途絶時にも稼働させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るセル連結型雨水貯留装置の正面模式図。
図2】本発明に係る他の実施形態のセル連結型雨水貯留装置の正面模式図。
図3】本発明に係るセル(セル型雨水タンク)の斜視模式図。
図4】本発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置の、(a)平面模式図、(b)斜視模式図。
図5】本発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置の平面模式拡大図。
図6】発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置の、(a)骨格フレーム構造の斜視模式図、(b)タンクフレーム構造の斜視模式図、(c)タンクフレーム構造の平面模式図。
図7】本発明に係る初期雨水槽を設けたパネル式セル連結型雨水貯留装置の平面模式拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置の実施形態、実施例について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。

I.セル連結型雨水貯留装置
【0030】
図1に示す本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、従来の雨水貯留装置と同様に、底部に排水口55が設けられると共に、外部の雨樋や雨水分離装置100などと接続された導入口52が設けられた水槽51を備え、導入口52を介して水槽51に貯留水した雨水を、排水口55から外部へ排水可能な雨水貯留装置である。本発明のセル連結型雨水貯留装置1は、従来の雨水貯留装置と比べ、セル型雨水タンク(以下、単に「セル」ともいう)50が多数連結される点に特徴がある。
【0031】
[セル]
すなわち、本発明のセル連結型雨水貯留装置1は、内部の水槽51と外部とが外壁で画されており、導入口52と、排水口55と、貯留水を吸水するための吸水口58と、逆止弁57が取り付けられた連通口56とが、夫々外壁に穿設されて、水槽51と外部とを接続するセル50が(図3参照)、N個連結されたセル連結型雨水貯留装置である。ここで、Nは2以上の自然数であり、セル連結型雨水貯留装置1は、2以上のセル50が連結されて構成される。
【0032】
[連通口]
セル連結型雨水貯留装置1において、第1セルには、雨樋又は雨水分離装置100等から外部雨水を導入する外部雨水導入口52’がその外壁に穿設されて、外部雨水が外部雨水導入口52’を介して第1セルの水槽51内部に導入される。そして、隣接する第kセルと第(k+1)セル(1≦k≦N-1;kは自然数)が、夫々の連通口56を介して連結されて通水可能であるが(図1参照)、第kセルの連通口56に取り付けられた逆止弁57により第(k+1)セルから第kセルへの貯留水の逆流を防ぐことができる。従って、本発明のセル連結型雨水貯留装置1は、第1セルから第Nセル方向に一方向に雨水を流すように構成されている。
【0033】
[バルブ]
また、本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、N個のセル50の各排水口55に手動式又は電磁式のバルブ(手動バルブ又は電磁バルブ)551が取り付けられるのが望ましい。バルブ551を閉めることによりセル50内に雨水貯留させ、バルブ551を開くことによりセル50内の貯留水を底部に設けた排水口55から排水させることができる。
【0034】
さらに、本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、N個のセル50に各々設けられた導入口52、吸水口58にも、夫々手動式又は電磁式のバルブ521、581を取り付けるのが望ましい。バルブ521、581を開閉することにより、セル50内の貯留水を調整することができる。
【0035】
[一般洗浄]
本発明のセル連結型雨水貯留装置1は、吸水管741から吸水した水を、排水管742から排水するポンプ74を用いて、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽51を洗浄することができる。水槽51を洗浄するため、N個のセル50の各水槽51内に、導入口52に接続された洗浄ノズル53を備えるのが好ましい。図1のように、第1セルの外部雨水導入口52’は切替スイッチ101を介して雨水分離装置100と接続されているので、第1セルを洗浄する際は、例えば切替スイッチ101を操作して第1セル内に外部雨水を入れないようにし、第2セル内の貯留水のみが第1セルの導入口52に流入するようにする。なお、このような洗浄は、排水口55、導入口52、吸水口58に取り付けたバルブ551、521、581を開閉させて行うことができるが、バルブ551、521、581は手動式であっても電磁式であってもよい。
【0036】
上記のようにポンプ74を用いて水槽51を洗浄するため、ポンプ74の吸水管741を第(k+1)セルの吸水口58に接続し、ポンプ74の排水管742を第kセルの導入口52に接続する。そして、吸水管741が第(k+1)セルの水槽51から吸水した貯留水を、ポンプ74の排水管742が、第kセルの導入口52に接続された洗浄ノズル53に供給して、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽51を洗浄することができる。
【0037】
[制御装置と電磁バルブ]
このような洗浄を自動化するため、N個のセル50に各々設けられた排水口55、導入口52、吸水口58に電磁バルブ551、521、581を夫々取り付けるのが好ましい。そして、本発明のセル連結型雨水貯留装置1は、各電磁バルブ551、521、581と有線又は無線により接続した制御装置72を備えるのが好適である。制御装置72が電磁バルブ551、521、581に開閉信号を送信することにより、各電磁バルブ551、521、581が取り付けられた排水口55、導入口52、吸水口58の開閉を、遠隔制御することができる。
【0038】
[遠隔洗浄]
N個のセルに設けられた排水口55と導入口52と吸水口58に夫々取付けられた電磁バルブ551、521、581と、洗浄ノズル53とポンプ74とが、共に制御装置72に有線又は無線により接続されて遠隔制御可能なセル連結型雨水貯留装置1において、制御装置72は、遠隔洗浄に際して以下のように電磁バルブ551、521、581、洗浄ノズル53、ポンプ74を制御する。
【0039】
すなわち、制御装置72は、先ず、第kセルの排水口55に取り付けられた電磁バルブ551に開閉信号を送信して、排水口55を開いて排水する。その後、第kセルの導入口52と第(k+1)セルの吸水口58に取り付けられた電磁バルブ521、581に開閉信号を送信して、第kセルの導入口52と第(k+1)セルの吸水口58を開く。そして、ポンプ74にポンピング信号を送信して、ポンプ74の吸水管741が第(k+1)セルの吸水口58から吸水した貯留水を、ポンプ74の排水管742が第kセルの導入口52に供給する。同時に、第kセルの導入口52に接続された洗浄ノズル53に洗浄信号を送信して洗浄ノズル53を動作させて、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽51を洗浄することができる。
【0040】
[凸型下底部]
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、水槽51の下底部は、下方に突出して最深部を有する凸型下底部54であり、最深部に排水口55が設けられている。特許文献2に開示されている凸型下底部は、実用上極めて有効であり、底泥を底部中央の排水口に集中させることができる。
【0041】
[機械室]
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、N個(Nは2以上の自然数)のセル50が連結された請求項1に記載のセル連結型雨水貯留装置において、
各セル50の各排水口55に取り付けられた電磁バルブ551と有線又は無線により接続された制御装置72を備える機械室70を、第Mセル(2≦M≦N;kは自然数)に内蔵し、または、セル連結型雨水貯留装置に追加した第(N+1)セルに内蔵する。
【0042】
[機械室;ポンプ、電源][ソーラーパネル]
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、機械室70に、ポンプ74を備え得る。あるいは、本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、機械室70に電源又は蓄電池を備えてもよい。本発明に係るセル連結型雨水貯留装置1は、セル50の屋根や外壁などの外部にソーラーパネルを備え、上記蓄電池に電気エネルギーを供給できるようにしてもよい。


II.セル連結型雨水貯留装置の洗浄方法
【0043】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置の洗浄方法は、上述したセル連結型雨水貯留装置1において、第kセルの水槽51内を洗浄する洗浄方法であり、以下の(STEP1)~(STEP4)により行うことができる。すなわち、本発明のセル連結型雨水貯留装置の洗浄方法は、
(STEP1)第kセルの排水口55を開いて、第kセルの水槽51内の貯留水を全て排水口55から排水するステップと、
(STEP2)ポンプ74を動作させて、ポンプ74の吸水管741が第(k+1)セルの水槽51から吸水した貯留水を、ポンプ74の排水管742が第kセルの導入口52に接続された洗浄ノズル53に供給するステップと、
(STEP3)洗浄ノズル53が、第(k+1)セルの水槽51から吸水した貯留水により第kセルの水槽51内を洗浄するステップと、
(STEP4)第kセルの排水口55を閉じるステップと、
を含む。
【0044】
本発明に係るセル連結型雨水貯留装置の洗浄方法は、セル連結型雨水貯留装置1において、制御装置72が遠隔制御することにより、第kセルの水槽51内を洗浄する洗浄方法であってもよい。すなわち、本発明のセル連結型雨水貯留装置の洗浄方法は、(STEP11)~(STEP18)からなり、
(11)制御装置72が第kセルの排水口55に取り付けられた電磁バルブ551に開閉信号を送信して、第kセルの排水口55を開くステップと、
(12)開いた第kセルの排水口55から、第kセルの水槽51内の貯留水を全て排水するステップと、
(13)前記制御装置が、前記第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口に取り付けられた電磁バルブに開閉信号を送信して、第kセルの導入口と第(k+1)セルの吸水口を開くステップと、
(14)制御装置72がポンプ74にポンピング信号を送信して、ポンプ74を動作させるステップと、
(15)動作したポンプ74の吸水管741が第(k+1)セルの吸水口58から吸水した貯留水を、ポンプ74の排水管742が第kセルの導入口52に接続された洗浄ノズル53に供給するステップと、
(16)制御装置72が洗浄ノズル53に洗浄信号を送信して、洗浄ノズル53を動作させるステップと、
(17)動作した洗浄ノズル53が、第(k+1)セルの水槽51から吸水した貯留水により第kセルの水槽51内を洗浄するステップと、
(18)制御装置72が第kセルの排水口55に取り付けられた電磁バルブ551に開閉信号を送信して、第kセルの排水口55を閉じるステップと、
を含む。
【0045】
上記のように、洗浄したい水槽51の貯留水を排水した後、後続のセル内の貯水、即ち、一段上の水質の貯留槽内の水を使って内部を洗浄する行程を繰り返す。この際、洗浄目的で排水した槽の上段槽の水は逆止弁57により逆流しない。例えば、槽内洗浄は降雨が予測される時に行い、降雨によって水槽51内が満水となるようにする。どの水槽51まで洗浄するかについては、例えば予測降雨量に応じて決めることにより、流出抑制による内水氾濫緩和効果に繋がる。この洗浄工程は、制御装置72によって自動的または必要に応じて手動で実行できる。


III.パネル式セル連結型雨水貯留装置
【0046】
上述したように、従来のパネル型雨水貯留槽は、天井フレーム構造10と、これと同形の架台フレーム構造20と、これら天井フレーム構造10と架台フレーム構造20とをサイドフレーム構造30により接続した骨格フレーム構造3の各外面のフレーム間に、外部パネル4を嵌合させた構成の貯留槽である(図6(a)参照)。
【0047】
図6(a)のように、天井フレーム構造10は、縦横の4辺に骨格天井フレーム12を組んだ長方形の天井フレームを、縦及び/又は横方向に少なくとも1本の補助天井フレーム14により複数の長方形に分割した構造10である。また、架台フレーム構造20は天井フレーム構造10と同形で、長方形を成す4本の骨格架台フレーム22と少なくとも1本の補助架台フレーム24とからなる。サイドフレーム構造30は、長方形の天井フレーム構造10と架台フレーム構造20の4隅及び補助架台フレーム24の両端を夫々骨格サイドフレーム32及び補助サイドフレーム34により接続して、天井フレーム構造10を支持する。
【0048】
そして、従来のパネル型雨水貯留槽は、その内部に、架台フレーム構造20の補助架台フレーム24の内点と天井フレーム構造10の補助天井フレーム14の内点とを鉛直方向に接続する1又は複数の支柱フレーム36を含む、図6(b)のような直方体のタンクフレーム構造2であってもよい。
【0049】
従来のパネル型雨水貯留槽は、骨格天井フレーム12、骨格架台フレーム22、補助天井フレーム14、補助架台フレーム24、または骨格サイドフレーム32または補助サイドフレーム34のいずれか4つのフレームにより4方を囲まれる長方形に外部パネル4を嵌合させてなり、雨水分離装置100と接続されて雨水を注入すると共に、排水口55を設けた直方体の雨水タンクである。
【0050】
このような従来のパネル型雨水貯留槽を原型として、本発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置1’を構成することができる。すなわち、本発明のパネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、図5のように、サイドフレーム32、34と支柱フレーム36間又は2つの支柱フレーム36間に内部パネル6を嵌合させて、直方体の雨水タンクの内部にN個(Nは2以上の自然数)のセル50を形成して、上述のセル連結型雨水貯留装置1と同様の構造を構成することができる。
【実施例1】
【0051】
[パネル式セル連結型雨水貯留装置1]
実施例1に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、天井フレーム構造10と、これと同形の架台フレーム構造20と、これらを接続するサイドフレーム構造からなる骨格フレーム構造3の各外面のフレーム間に外部パネル4を嵌合させる、従来のパネル型雨水貯留槽と外観は同一であってよい(図6(a)、(b)参照)。
【0052】
上述のように、実施例1のパネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、骨格フレーム構造3の内部に、架台フレーム構造20の補助架台フレーム24の内点と天井フレーム構造10の補助天井フレーム14の内点とを鉛直方向に接続する1又は複数の支柱フレーム36を含み、サイドフレーム32、34と支柱フレーム36間又は2つの支柱フレーム36間に内部パネル6を嵌合させて、直方体の雨水タンクの内部にN個(Nは2以上の自然数)のセル50を形成する。
【0053】
図6(c)に示す実施例1のパネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、支柱フレーム36が2本の場合であり、7枚の内部パネル6を嵌合させて、6個のセル50を形成している。セル50の構成及び機能は、上述のセル連結型雨水貯留装置1と全く同様であり、第1セルから第6セル方向に一方向に雨水を流すように構成されており、ポンプを操作して、第(k+1)セル内の貯留水により第kセルの水槽を洗浄することができる(kは0~5の整数)。
【実施例2】
【0054】
本実施例2のパネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、支柱フレーム36が4本の場合であり、12枚の内部パネル6を嵌合させて、9個のセル50を形成している。各セル50には、その水質に応じて役割を分担させることができ、本実施例では、雨水分離装置100(図4(a)参照)により選別された初期雨水は廃棄し、初期雨水以外の外部雨水を第1セルの第1水槽に貯水するように構成している。
【0055】
まず、上記のように、雨水分離装置100により選別された初期雨水以外の外部雨水は、第1水槽(第1セル)に導入される。そして、第1水槽に導入された雨水は、貯留水が連通口56の高さに達すると、第2水槽(第2セル)に流入し、次々に後続の隣接セル50に流入する。連通口56には逆止弁57が取り付けられているので、後続のセル50に流入した雨水が逆流することはない。
【0056】
本実施例2のパネル式セル連結型雨水貯留装置1’では、図5のように第7セルを機械室70として、制御装置72、ポンプ74、電源や蓄電池などを設置してもよい。第6水槽(第6セル)にまで流入した雨水は高水質なので、さらに機械室70(第7セル)において浄水用ポンプ75を使用するなどして中空糸膜などの精密ろ過後、UV殺菌装置などで殺菌して、逆止弁57が取り付けられた連通口56を利用して、第1浄水槽(第8セル)に貯留させ、洗濯、散水用に用いることができる(図4(a)参照)。そして、第1浄水槽(第8セル)の貯留水にさらに塩素消毒等を行って第2浄水槽(第9セル)に貯留させ、飲用、風呂等に用いることができる(図4(a)参照)。
【0057】
さらに、図4(b)のように、パネル式セル連結型雨水貯留装置1’の屋根にソーラーパネル5を設置し、機械室70に設置した蓄電池に電気エネルギーを蓄えてもよい。ソーラーパネル5付きの上面パネルを屋根に採用することにより、制御装置72等の制御機器や浄水装置に必要な電力を自給でき、スタンドアローンな雨水を水源とした給水システムとして機能させ、 離島等の僻地や被災時のライフライン途絶時にも稼働させることが可能となる。
【実施例3】
【0058】
[初期雨水槽]
実施例3に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、初期雨水槽を設けたセル連結型雨水貯留装置である。図7には、パネル式セル連結型雨水貯留装置1’が図示されているが、パネル式ではないセル連結型雨水貯留装置1についても同様に構成することができる。
【0059】
図7において、パネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、実施例2と同様に、第1セルに設けられた外部雨水導入口52’が雨水分離装置100に接続されている。実施例3に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置1’は、雨水分離装置100に接続された外部雨水導入口52’が設けられ、第1セルとの間に連通口が設けられない初期雨水槽を備える第0セルが、上述のN個のセルの他に追加された連結型雨水貯留装置である。
【0060】
この第0セルには、雨水分離装置100により選別された初期雨水が、外部雨水導入口52’を介して第0セルの水槽内部に導入される。第1セルには、実施例2と同様に、雨水分離装置100により選別された初期雨水以外の外部雨水が前記外部雨水導入口52’を介して第1セルの水槽内部に導入される。
【0061】
このような初期雨水槽を設けたパネル式セル連結型雨水貯留装置1’(又はセル連結型雨水貯留装置1)は、初期雨水を廃棄することなく第0セルの初期雨水槽に貯留し、下水などの用に用いることができ、効率よく雨水を利用することができる。
【0062】
以上、本発明のセル連結型雨水貯留装置、パネル式セル連結型雨水貯留装置およびその洗浄方法について説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではない。
【0063】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るパネル式セル連結型雨水貯留装置は、雨水タンク貯留雨水の水質向上、雨水の利用効率向上、安定した貯蓄雨水の供給などに利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1:セル連結型雨水貯留装置
1’:パネル式セル連結型雨水貯留装置
2:タンクフレーム構造
3:骨格フレーム構造
4:外部パネル
5:ソーラーパネル
6:内部パネル
10:天井フレーム構造
12:骨格天井フレーム
14:補助天井フレーム
16:
20:架台フレーム構造
22:骨格架台フレーム
24:補助架台フレーム
26:
30:サイドフレーム構造
32:骨格サイドフレーム
34:補助サイドフレーム
36:支柱フレーム
50:セル(セル型雨水タンク)
51:水槽
52:導入口
521:バルブ(電磁バルブ)
52’:外部雨水導入口
53:洗浄ノズル
54:凸型下底部
55:排水口
551:バルブ(電磁バルブ)
56:連通口
57:逆止弁
58:吸水口
581:バルブ(電磁バルブ)
70:機械室
72:制御装置
74:ポンプ
741:吸水管
742:排水管
75:浄水用ポンプ
76:送受信器
100:雨水分離装置
101:切替スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7