(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240326BHJP
【FI】
A01G31/00 616
A01G31/00 612
(21)【出願番号】P 2020067488
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】澤田 明
(72)【発明者】
【氏名】坪井 悠希
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-28486(JP,A)
【文献】特開2016-202170(JP,A)
【文献】特開2002-281832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 9/00 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と前記枠体を下方から支持する脚部とを有する支持部材と、
通気性を有し前記枠体の周縁に定着され前記枠体の内側に凹部を形成する保持部材と、
前記保持部材の上方に重ねられて前記枠体の内方で液体の貯留を可能とする透湿防水シートと
、
一端が前記枠体に定着されて前記支持部材の外周を囲う遮光部材とを備える
ことを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
前記保持部材が、合成繊維製のネットである
ことを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培装置。
【請求項3】
前記枠体は、前記枠体の周縁に沿って設けられ、上方に開口し開口幅が底部の幅よりも狭い溝を有し、
前記遮光部材と前記保持部材は、それぞれシート状であって、前記遮光部材と前記保持部材の各端部を前記溝に挿入した状態で、前記溝に弾性部材を嵌めることで前記枠体に定着される
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から植物の栽培方法として、水に肥料を溶かして生成した養液に植物の根を浸すことで、植物を生長させる水耕栽培が知られている。水耕栽培装置は、水耕栽培を行う際に利用される装置である。
【0003】
具体的には、水耕栽培装置としては、例えば、枠体と前記枠体を下から支える複数の脚部とを有する支持部材と、枠体の内側に弛んだ状態で枠体に定着されて弛ませた部分に養液を貯留する透湿防水シートと、枠体の開口部を塞ぐように取付けられるとともに複数の孔を有する蓋と、蓋の各孔内に収容されて透湿防水シートに貯留された養液を吸い上げる給水シートを有する播種装置とを備え、当該給水シートに設けられたポケットに植物の種子を保持させることで、種子をポケット内で発芽させて、植物を栽培するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
透湿防水シートは、液体状態の水は通さないが、湿気(水蒸気)は通す性質をもっている。そのため、このような水耕栽培装置によると、養液の温度が上昇した場合に、養液が蒸発して生じた水蒸気は、透湿防水シートを透過して大気中に放出される。すると、この蒸発の際に、養液の熱が奪われるので(気化熱)、気温が上昇したとしても養液の温度上昇を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の水耕栽培装置では、枠体は、上方に開口幅が底部よりも狭い溝をもつフレーム材を矩形に組み合わせた構造となっており、透湿防水シートの一端を当該溝に挿入してから弾性部材を嵌め込むことで、透湿防水シートを枠体に定着している。
【0007】
そのため、透湿防水シートは、弾性部材によって押さえつけられている部分の傷みが早く、寿命が短くなっていた。加えて、透湿防水シートは、通常の防水シートに比べて高価である。したがって、従来の水耕栽培装置では、高価な防水シートの交換頻度が多くなるため、ランニングコストが高くなっていた。
【0008】
また、従来の水耕栽培装置では、植物を栽培すると、透湿防水シートにアオコが付着するため、栽培した植物を収穫する度に、透湿防水シートを洗浄する必要がある。しかしながら、前述したように、透湿防水シートは、弾性部材を枠体の溝に嵌め込むことで、枠体に定着されているため、透湿防水シートの取り外し作業が非常に面倒であった。
【0009】
そこで、本発明では、透湿防水シートの劣化を抑制できるとともに、透湿防水シートの取り外し作業を容易とする水耕栽培装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、枠体と前記枠体を下方から支持する脚部とを有する支持部材と、通気性を有し前記枠体の周縁に定着され前記枠体の内側に凹部を形成する保持部材と、前記保持部材の上方に重ねられて前記枠体の内方で液体の貯留を可能とする透湿防水シートと、一端が前記枠体に定着されて前記支持部材の外周を囲う遮光部材とを備えることを特徴とする。この構成によると、透湿防水シートを、保持部材の上方に重ねるだけで、植物栽培用の水槽を形成できる。よって、透湿防水シートを枠体に固定する必要がなくなる。また、液体を貯留する透湿防水シートと、遮光部材が別々に設けられているため、遮光部材の材質や色などを自由に選択できる。そのため、気温に応じて、遮光部材の材質や色等を変更すれば、液体温度の上昇の抑制や、液体温度の低下の抑制をすることができる。
【0011】
また、本発明では、前記保持部材が、合成繊維製のネットであるとしてもよい。この構成によると、保持部材を金網とする場合に比べて錆や腐食の心配がないため、屋外での使用に適する。また、熱伝導率が比較的低いので、熱を持ちにくい。そのため、透湿防水シートに貯留される液体の温度の上昇を抑制できる。
【0013】
また、本発明では、前記枠体は、前記枠体の周縁に沿って設けられ、上方に開口し開口幅が底部の幅よりも狭い溝を有し、前記遮光部材と前記保持部材は、それぞれシート状であって、前記遮光部材と前記保持部材の各端部を前記溝に挿入した状態で、前記溝に弾性部材を嵌めることで前記枠体に定着されるとしてもよい。この構成によると、弾性部材の弾発力によって、遮光部材と保持部材を枠体に対して強固に定着させることができるので、透湿防水シートを介して保持部材に液体の荷重が作用しても、遮光部材や保持部材が枠体から外れてしまうことが防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水耕栽培装置によれば、透湿防水シートの劣化を抑制してランニングコストを削減できるとともに、透湿防水シートの取り外し作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態の水耕栽培装置の縦断面図である。
【
図2】本実施の形態の水耕栽培装置の斜視図である。
【
図3】本実施の形態の水耕栽培装置の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0017】
本実施の形態の水耕栽培装置1は、
図1に示すように、枠体2と枠体2を下方から支持する脚部3とを有する支持部材4と、通気性を有し枠体2の周縁に定着され枠体2の内側に凹部5を形成する保持部材6と、保持部材6の上方に重ねられて枠体2の内方で液体Lの貯留を可能とする透湿防水シート7とを備える。さらに、水耕栽培装置1は、枠体2の開口部を塞ぐように枠体2に取付けられる蓋8と、蓋8に取付けられる播種装置9とを備える。
【0018】
以下、本実施の形態の水耕栽培装置1の各部について、詳細に説明する。本実施の形態の支持部材4は、
図1,
図2に示すように、枠体2と、枠体2を下方から支持する複数の脚部3とを備える。
【0019】
本実施の形態の枠体2は、
図2に示すように、上下一対の横材2a,2aと、一対の横材2a,2aの一端と他端と中央とにそれぞれ並んで架け渡される三本の縦材2b,2c,dとを組み合わせて構成され、縦材2b,2c間と縦材2c,2d間に二つの開口部(符示せず)を有している。
【0020】
また、各横材2aと各縦材2b,2c,2dは、押出成形により形成された金属製の長手材であって、上方に開口する溝10を軸方向に沿って有している。そして、この溝10は、
図3に示すように、開口幅が底部の幅よりも狭くなるように形成されている。
【0021】
なお、横材2aと縦材2b,2c,2dは、アングル材やチャンネル材等の形材の上面に上記溝10を有するシート定着部材を固定して形成されてもよい。ただし、本実施の形態のように、横材2aと縦材2b,2c,2dに溝10が一体的に形成されている方が、部品点数を削減できるため、好ましい。
【0022】
本実施の形態の脚部3は、地面から垂直に延びる形鋼であって、
図2に示すように、枠体2の下方に各横材2a,2aと各縦材2b,2c,2dの軸方向に沿って所定の間隔で配置されて、枠体2を支持している。さらに、各脚部3の間には、それぞれ、補強フレーム20が架け渡されており、脚部3の荷重に対する強度を高めている。なお、上記形鋼は、後述する水槽Aの重量を支持可能であれば、どのような形状でも良い。
【0023】
また、枠体2の地面からの高さは、任意に設定されればよいが、本例では、枠体2が、80cmから100cmの範囲に位置するように設定されている。このようにすると、枠体2の高さが、おおよそ人の腰の位置あたりの高さになるため、支持部材4上に後述する保持部材6や、透湿防水シート7、蓋8、播種装置9を設置する作業が行いやすくなる。
【0024】
なお、本例では、枠体2は、脚部3の上端に設けられているので、脚部3を含めた支持部材4の高さを80cmから100cmの範囲となるように設定しているが、枠体2が脚部3の途中に設置される場合には、枠体2を、80cmから100cmの範囲の高さに位置するようにすればよい。また、枠体2は、脚部3に対して上下方向に移動可能に装着されてもよく、枠体2の高さ調整が可能であってもよい。
【0025】
なお、本実施の形態の支持部材4の構成は一例であって、脚部3と枠体2を備えていれば、上述した構成には限定されない。例えば、枠体2は一部材で構成されてもよいし、枠体2は円形その他の形状とされてもよい。また、本実施の形態の脚部3の構造も一例であって、任意の構造としてもよい。例えば、脚部3は、各縦材2b,2c,2dの下方に平行に立てて配置される板材と、隣り合う板材の両端間に斜めに架けられるブレースとで構成されてもよい。
【0026】
本実施の形態の保持部材6は、通気性を有する合成繊維製のネットであって、
図1,
図2,
図3に示すように、枠体2の各開口部内に下方に弛ませた状態で枠体2の上方に被せられる。そして、保持部材6は、この状態で枠体2の各縦材2b,2c,2d及び各横材2a,2aに第一弾性部材S1及び第二弾性部材S2で定着されている。本実施の形態では、保持部材6の弛ませた部分で枠体2の内側である縦材2b,2c間及び縦材2c,2d間の二つの開口部にそれぞれ凹部5を形成している。
【0027】
本実施の形態の各弾性部材S1,S2は、波型の金属ばねであって、保持部材6を枠体2に覆い被せて溝10内に入れておき、枠体2に被せられて溝10に入り込んだ保持部材6の上から溝10に嵌め込まれる。すると、保持部材6は、弾性部材S1,S2によって、枠体2に定着される。また、図示しないが、各弾性部材S1,S2は、外周が合成樹脂でコーティングされている。これにより、弾性部材S2,S3が、保持部材6を傷つけてしまうことを防止して、保持部材6の劣化を抑制できるようになっている。
【0028】
本実施の形態の透湿防水シート7は、
図1に示すように、保持部材6の上方に重ねられている。ここで、透湿防水シート7は、液体状態の水は通さないが、湿気(水蒸気)は通す性質をもつシートである。そのため、透湿防水シート7を保持部材6の上方に重ねた状態で、保持部材6の各凹部5,5上に液体Lを注ぐと、透湿防水シート7は、
図1に示すように、液体Lの重さによって各凹部5,5の形状に沿って変形し、液体Lを貯留する水槽Aとして機能する。
【0029】
本実施の形態では、液体Lは、水に肥料を溶かして生成された養液とされている。ただし、液体Lは、植物を栽培可能な液体であれば、養液には限定されず、単なる水であってもよい。
【0030】
なお、本実施の形態では、
図1に示すように、透湿防水シート7の二つの凹部5,5上に液体Lが注がれることで、二列の水槽Aが設けられているが、水槽Aの列数は、一つでも複数でもよい。ただし、水槽Aを三列以上設ける場合は、端以外に配置される水槽Aに対する作業が行いにくくなるため、水槽Aは一列又は二列が好ましい。
【0031】
また、前述したように、透湿防水シート7は、水蒸気を通す性質をもっているため、液体Lの温度が上昇した場合には、液体Lが蒸発して生じた水蒸気が透湿防水シート7を透過して、大気中に放出されることで、液体Lの温度上昇が抑制される。この際、透湿防水シート7が載置されている保持部材6は、通気性を有しており、水蒸気の通過を許容するため、水蒸気が大気中へ放出されるのを妨げない。
【0032】
つまり、本実施の形態の水耕栽培装置1では、液体Lの温度を管理しながら液体Lを循環させる循環装置を設置することなく、液体Lの温度を植物の生育条件に適する温度に保てるため、水耕栽培装置1を安価にできる。
【0033】
なお、本実施の形態では、保持部材6は、合成繊維製のネットとされているが、枠体2の内側に凹部5を形成でき、通気性と、透湿防水シート7に貯留される液体Lの重量を支えることができる強度を備えていれば、材質は特に限定されない。例えば、保持部材6は、金網や、多孔を備えた槽、通気性のある防水紙で形成されてもよい。ただし、保持部材6を合成繊維製のネットとすると、保持部材6を金網とする場合に比べて、錆や腐食の心配がないため、屋外での使用に適する。また、合成繊維製のネットは、防水紙に比べて、強度も高い。加えて、合成繊維は、熱伝導率が比較的低いので、熱を持ちにくく、透湿防水シート7に貯留される液体Lの温度上昇を抑制できる。また、透湿防水シート7としては、例えば、タイベック(登録商標)が適しているが、これ以外であってもよい。
【0034】
また、本実施の形態の水耕栽培装置1は、
図1,
図2,
図3に示すように、一端が枠体2の周縁に第三弾性部材S3で定着されて、支持部材4の外周を囲う遮光部材11を有する。具体的には、本実施の形態の遮光部材11は、
図1,
図2に示すように、一端が枠体2の周縁に配置される各横材2a,2a及び縦材2b,2dに第三弾性部材S3で定着されて、他端側が脚部3に沿って垂れ下がる複数の遮光シート11aで構成されている。なお、第三弾性部材S3は、第一弾性部材S1及び第二弾性部材S2と同様に波型の金属ばねである。
【0035】
このように、支持部材4の外周を囲うように遮光部材11が配置されると、支持部材4の側面側から太陽光が入らず、透湿防水シート7に貯留される液体Lが下方から温められないため、液体Lの温度上昇を抑制できる。
【0036】
また、夏場など気温が高い場合には、遮光部材11の材質を通気性のよい素材としたり、遮光部材11の色を反射率の高い色(例えば、白色)とすれば、液体温度の上昇をさらに抑制できる。反対に、冬場など気温が低く、液体温度が低い場合には、遮光部材11の材質を断熱素材としたり、遮光部材11の色を反射率の低い色(例えば、黒色)とすれば、液体温度の低下を抑制できる。さらに、遮光部材11を反射率の高いものとした場合、病害虫に対する忌避効果も生じるため、病害虫発生のリスクを減らすことができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、遮光部材11は、遮光シート11aとされているが、シート状のものには限定されず、例えば、板状の遮光パネルであってもよい。
【0038】
つづいて、枠体2に保持部材6と遮光シート11aを定着する方法について、説明する。まず、遮光シート11aの端部を枠体2の溝10に挿入した状態で、溝10に第三弾性部材S3を嵌め込む。すると、遮光シート11aは、第三弾性部材S3の弾発力によって、枠体2に定着される。次に、遮光シート11aに重ねるように保持部材6の端部を枠体2の溝10に挿入した状態で、溝10に第一弾性部材S1を嵌め込む。すると、保持部材6は、第一弾性部材S1の弾発力によって、枠体2に定着される。このようにすることで、保持部材6と遮光シート11aの端部は、
図3に示すように、各弾性部材S1,S3の弾発力によって、枠体2に強固に定着される。
【0039】
なお、本実施の形態では、遮光シート11a、保持部材6の順で重ねられて枠体2に定着されているが、保持部材6を先に枠体2に定着させてから、その後に遮光シート11aを重ねて定着してもよい。ただし、透湿防水シート7を介して液体Lの荷重を支える保持部材6の方が、遮光シート11aよりも、損耗しやすい。そのため、保持部材6の方が遮光シート11aよりも交換頻度が多いが、本実施の形態のように、遮光シート11a、保持部材6の順で重ねて枠体2に定着すると、保持部材6を交換する際に、遮光シート11aを取り外す必要がない。そのため、遮光シート11a、保持部材6の順で重ねて枠体2に定着した場合、保持部材6の交換作業が容易となる。
【0040】
また、保持部材6と遮光シート11aの定着方法は、上記方法には限定されず、例えば、遮光シート11aの一端を両面テープを使って、枠体2の溝10に仮止めしてから、遮光シート11aの上に保持部材6の端部を重ねて、その上から弾性部材を溝10に嵌め込むことで、保持部材6と遮光シート11aを枠体2に定着させてもよい。このようにすると、保持部材6と遮光シート11aを一つの弾性部材で枠体2に定着させることができるため、弾性部材の数を少なくできるとともに、弾性部材を溝10に嵌め込む作業にかかる時間を短縮できる。
【0041】
なお、
図2に示すように、保持部材6における、枠体2の中央の縦材2cの上に配置される部分は、第二弾性部材S2によって、中央の縦材2cに定着されている。これにより、いずれか一方の水槽Aに液体Lが注がれて、保持部材6が引っ張られても、保持部材6が動かないようになっている。
【0042】
戻って、枠体2の各開口部には、
図2に示すように、複数の蓋8が隙間なく並べて配置されており、これらの蓋8で、枠体2の開口部を塞ぐことができる。各蓋8は、発泡スチロール製の板材であり、一方のサイドの縦材(2b又は2d)と中央の縦材2cとの間に架け渡され、支持部材4によって支えられている。なお、蓋8の材質は、特に限定されないが、発泡スチロールで形成されると、蓋8を安価かつ軽量にできる。
【0043】
また、各蓋8には、上下に貫通する複数の取付孔8aが設けられている。
図2に示すように、取付孔8aは、細長い矩形の孔であり、五条の取付孔8aが二列に並んで形成されている。そして、一つの取付孔8aに対して、一つの播種装置9が取付けられるようになっている。つまり、本実施の形態においては、一枚の蓋8に、十条の取付孔8aが設けられているので、十の播種装置9を取付けられる。なお、一枚の蓋8に対する取付孔8aの数、即ち、一枚の蓋8に取付ける播種装置9の数は、栽培する植物の種類等に応じて適宜変更できる。
【0044】
また、詳細には説明しないが、播種装置9は、上側に植物の種子を保持可能なポケット(図示せず)を有する給水シート9aと、給水シート9aを保持するとともに蓋8に取付け可能なシート保持部材(図示せず)を備え、蓋8の取付孔8a内に収容されている。そして、播種装置9が蓋8に取付けられた状態で、給水シート9aの下側が透湿防水シート7に貯留された液体Lに浸かるようになっている。このようにすると、液体Lが給水シート9aに吸い上げられて、給水シート9aの略全体が液体Lを含んで湿った状態となる。そのため、給水シート9aのポケットに植物の種子を入れると、種子が給水して発芽する。
【0045】
前述したように、本実施の形態の水耕栽培装置1は、枠体2と枠体2を下方から支持する脚部3とを有する支持部材4と、通気性を有し枠体2の周縁に定着され枠体2の内側に凹部5を形成する保持部材6と、保持部材6の上方に重ねられて枠体2の内方で液体Lの貯留を可能とする透湿防水シート7とを備えている。
【0046】
この構成によると、透湿防水シート7を、保持部材6の上方に重ねるだけで、植物栽培用の水槽Aを形成できる。そのため、透湿防水シート7を枠体2に固定する必要がない。したがって、本実施の形態の透湿防水シート7は、従来のように、透湿防水シート7を弾性部材によって枠体2に定着させる場合に比べて傷みにくく、寿命が長くなる。よって、透湿防水シート7の交換頻度を少なくできるので、ランニングコストを低減できる。加えて、透湿防水シート7は、通常の防水シートに比べて高価であるため、交換頻度が少なくなることによるランニングコストの低減幅が非常に大きい。
【0047】
さらに、水耕栽培装置1では、植物を栽培すると、透湿防水シート7にアオコが付着するため、栽培した植物を収穫する度に、透湿防水シート7を洗浄する必要があるが、本実施の形態の透湿防水シート7は、単に保持部材6の上方に重ねられているだけであるから、透湿防水シート7の取り外しが非常に容易となる。
【0048】
加えて、保持部材6は、植物の栽培中、常に透湿防水シート7に覆われているため、保持部材6の紫外線による劣化も抑制される。そのため、保持部材6の交換頻度も少なくなる。
【0049】
また、本実施の形態の水耕栽培装置1では、保持部材6が、合成繊維製のネットとされている。この構成によると、保持部材6を金網とする場合に比べて、錆や腐食の心配がないため、屋外での使用に適する。また、合成繊維製のネットは、防水紙に比べて、強度も高い。加えて、合成繊維は、熱伝導率が比較的低いので、熱を持ちにくく、透湿防水シート7に貯留される液体Lの温度上昇を抑制できる。ただし、保持部材6は、枠体2の内側に凹部5を形成でき、通気性と、透湿防水シート7に貯留される液体Lの重量を支えることができる強度を備えていれば、材質は特に限定されない。
【0050】
また、本実施の形態の水耕栽培装置1は、一端が枠体2に定着されて、支持部材4の外周を囲う遮光部材11を有している。この構成によると、支持部材4の外周が遮光部材11に囲われるため、支持部材4の側面側から太陽光が入らないようになっている。そのため、透湿防水シート7に貯留された液体Lが太陽光によって下方から温められて、液体Lの温度が上昇してしまうのを抑制できる。
【0051】
さらに、従来の水耕栽培装置では、液体Lを貯留する透湿防水シート7を支持部材4の側方に垂れさせて、透湿防水シート7に遮光部材11の機能を兼ねさせていたが、本実施の形態では、液体Lを貯留する透湿防水シート7と、遮光部材11が別々に設けられているため、従来に比べて、高価な透湿防水シート7の利用量を削減できる。
【0052】
加えて、本実施の形態では、液体Lを貯留する透湿防水シート7と、遮光部材11が別々に設けられているため、遮光部材11の材質や色などを自由に選択できる。そのため、夏場など気温が高い場合には、遮光部材11の材質を通気性のよい素材としたり、遮光部材11の色を反射率の高い色とすれば、液体温度の上昇をさらに抑制できる。反対に、冬場など気温が低く、液体温度が低い場合には、遮光部材11の材質を断熱素材としたり、遮光部材11の色を反射率の低い色とすれば、液体温度の低下を抑制できる。さらに、遮光部材11を反射率の高いものとした場合、病害虫に対する忌避効果も生じるため、病害虫発生のリスクを減らすことができる。
【0053】
ただし、遮光部材11として、透湿防水シート7と同じ材質のシートを利用してもよい。この場合、透湿防水シート7は、通気性に優れるとともに、目が非常に小さく、遮光性にも優れるため、液体温度の上昇を抑制する効果が高くなる。
【0054】
また、本実施の形態の水耕栽培装置1では、枠体2は、枠体2の周縁に沿って設けられ、上方に開口し開口幅が底部の幅よりも狭い溝10を有し、遮光部材11と保持部材6は、それぞれシート状であって、遮光部材11と保持部材6の各端部を溝10に挿入した状態で、溝10に弾性部材S1,S3を嵌めることで枠体2に定着されている。
【0055】
この構成によると、弾性部材S1,S3の弾発力によって、遮光部材11と保持部材6を枠体2に対して強固に定着させることができるので、透湿防水シート7を介して保持部材6に液体Lの荷重が作用しても、遮光部材11や保持部材6が枠体2から外れてしまうことが防止される。さらに、遮光部材11と保持部材6を同一の溝10を利用して枠体2に定着させることができるため、遮光部材11と保持部材6を枠体2に定着させるためにわざわざ別の機構を設ける必要がない。
【0056】
また、本実施の形態では、保持部材6と遮光部材11が可撓性のシート状である場合、各弾性部材S1,S2,S3は、波型の金属ばねとされているが、保持部材6と遮光部材11を枠体2から外れない程度の力で定着させることができれば、各弾性部材S1,S2,S3は、ゴム製であってもよいし、形状も波型には限定されない。
【0057】
また、保持部材6と遮光部材11がシート状である場合であっても、枠体2の横材2a及び縦材2b,2c,2dに溝10を設けない場合には、枠体2への定着を他の定着方法により行ってもよい。例えば、シート状の保持部材6と遮光部材11を横材2a及び縦材2b,2dと、横材2a及び縦材2b,2dに対して平行に配置される長尺の板とで挟んで、当該板と横材2a又は縦材2b,2dとをボルトとナットで締結してもよい。また、保持部材6が金網や槽である場合、保持部材6は、枠体2に固定的に取付けられてもよい。
【0058】
なお、遮光部材11と保持部材6の枠体2への定着方法は、液体Lの荷重が作用しても、枠体2から外れないようになっていれば、上記方法には限定されず、例えば、遮光部材11と保持部材6をビスやテープで枠体2に定着するようにしてもよい。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・水耕栽培装置、2・・・枠体、3・・・脚部、4・・・支持部材、5・・・凹部、6・・・保持部材、7・・・透湿防水シート、10・・・溝、11・・・遮光部材、S1・・・第一弾性部材(弾性部材)、S3・・・第三弾性部材(弾性部材)